説明

プラント制御ロジック設計支援装置、プログラムおよびプラント制御ロジック設計支援方法

【課題】プラント制御システムの生産性・保守性を向上する。
【解決手段】プラント制御ロジック設計支援装置は、ハードウェアシンボル記憶部、ソフトウェアシンボル記憶部、作画部を備える。前記ハードウェアシンボル記憶部には制御対象のハードウェアの動作仕様をシンボルの形態で表示するハードウェアシンボルが保存されている。前記ソフトウェアシンボル記憶部にはハードウェアを制御する制御ロジックをシンボルの形態で表示するソフトウェアシンボルが記憶されている。前記作画部はCAD形式の図面を作成するための画面を表示し、前記画面上における当該シンボルの配置および接続の操作に応じて対応するハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルを読み出し、当該シンボルを配置および接続して、当該シンボルが接続された全体の制御構成を表現するCADデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばプラント制御ロジック設計支援装置、プログラムおよびプラント制御ロジック設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントや化学プラント等の制御を行うプラント制御装置において、ポンプやバルブ等のプラント制御機器を制御するための制御ロジックと呼ばれるソフトウェア(以後、制御ロジックまたは制御ロジック図と称す)を、設計・製作・保守するための装置としてプラント制御ロジック設計支援装置がある。
【0003】
近年のプラント制御ロジック設計支援装置においては、CAD(Computer Aided Design)が導入されるようになり、CADを用いて制御ロジックを設計・製作・保守することが一般的となってきている。
【0004】
CAD導入に伴い、CADを用いて作画した制御ロジック図をそのままプリントアウトし、プラント制御装置のソフトウェアのドキュメントとするのが一般的となってきている。このため、制御ロジックは印刷に便利なようにシート単位で管理されるようになってきた。
【0005】
そして、このようなプラント制御ロジック設計支援装置を用いて設計・製作された制御ロジックは、コンパイルと呼ばれるプラント制御装置本体で実行可能な実行ファイルへの変換を行った後、プラント制御装置へダウンロードされる。
【0006】
しかしながら、このような従来のプラント制御ロジック設計支援装置では、プラント制御ロジック設計支援装置からプリントアウトされる制御ロジック図に記載される範囲は、あくまでもプラント制御装置で実行処理させたい制御ロジックというソフトウェアの範囲に限られるのが一般的である。
【0007】
これはプラント制御ロジック設計支援装置が、そもそもプラント制御装置で実行させる制御ロジックというソフトウェアを設計・製作・保守するためのものであることから、当然のことであるとも言える。
【0008】
一方、プラント制御システムという広い視野で見ると、プラントを制御するための構成要素としては、制御ロジックというソフトウェアだけではなく、ポンプ、ファン、バルブ等のプラント制御機器、そして温度、圧力、流量等の各種センサー類等の現場機器も重要な構成要素である。
【0009】
また、これらの現場機器とプラント制御装置とを結ぶインターフェースもプラント制御システムという観点からは重要な構成要素である。つまり、制御ロジックというソフトウェアと、現場機器というハードウェアが組み合わされて始めてプラント制御システムが機能するのである。
別々のドキュメントで表現されていたソフトウェアに関する情報とハードウェアに関する情報を、同一のCADシート上に作画するようにすることで、制御ロジックと現場機器とのインターフェース部分の設計及び保守性の向上を図る技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−265734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、ソフトウェアに関するシンボル(図示情報)とハードウェアに関するシンボルを同一のCADシート上に作画し、その作画したCADシートのデータをプラント制御装置にダウンロードするためには、ソフトウェア情報のみを抽出する必要があり、このソフトウェア情報の抽出に複雑な処理を要するという問題があった。
【0012】
また、従来の場合、CADシート上に作画されたハードウェアとソフトウェアの、シンボル同士の接続状態が適切であるかは、ハードウェアの名称とソフトウェアの制御ロジックの内容を精査すれば新人のオペレータでも判断できるものの、制御対象となるハードウェア固有の制御ロジックと、ハードウェアを制御するソフトウェアの制御ロジックとの組み合わせまでを考慮して互いの接続状態が適切であるかどうかを判断するにはある程度の経験と知識を要する。
【0013】
さらに、ソフトウェアの制御ロジックは、制御対象となるハードウェアの“運転指令”や“停止指令”などの、ハードウェアがソフトウェアにより制御されるための基本的な条件信号(以下“コア条件”と記載する)と、それ以外の“電気故障”や“メンテナンス中”などの、ハードウェアが制御されるには本来関係のない条件信号(以下“付帯条件”と記載する)が組み合わされて構成されるものであるが、これら全ての条件が同じCADシートに混在して信号の呼び合いを行っていることで、条件信号の取り合いミスなどを引き起こす場合がある。
【0014】
一般に産業用として制御対象となるハードウェアは、ポンプやファン等の回転機器やバルブ類に大きく分類され、バルブについても電動弁や電磁弁、ピストン弁、調節弁など多岐に亘る種別があり、プラント制御装置が入力すべき信号の種類はさまざまで、この多岐に亘る信号を網羅的に備えるハードウェア情報を扱うことは、逆に無駄なインターフェース情報を入力することになり、保守や変更管理が煩雑になる等の弊害も多く、またハードウェア情報を示すシンボルとソフトウェアを示すシンボルを、誤って不適切に組み合わせて設計してしまうヒューマンエラーが発生することが考えられる。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、CADの画面上におけるオブジェクトの配置により、プラント制御ロジックを設計するにあたり、プラント制御ロジックというソフトウェア命令語シンボルだけではなく、制御対象となる機器の全てを網羅できる共通的なハードウェア命令語シンボルを設定することで、プラント制御システムの生産性・保守性を向上することができるプラント制御ロジック設計支援装置、プログラムおよびプラント制御ロジック設計支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置は、ハードウェアシンボル記憶部、ソフトウェアシンボル記憶部、作画部を備える。前記ハードウェアシンボル記憶部には制御対象のハードウェアの動作仕様をシンボルの形態で表示するためのハードウェアシンボルが保存されている。前記ソフトウェアシンボル記憶部には前記ハードウェアを制御する制御ロジックをシンボルの形態で表示するためのソフトウェアシンボルが記憶されている。前記作画部はCAD形式の図面を作成するための画面を表示し、前記画面上における当該シンボルの配置および接続の操作により、前記ハードウェアシンボル記憶部および前記ソフトウェアシンボル記憶部からそれぞれ対応するハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルを読み出し、操作に応じて当該シンボルを配置および接続して、当該シンボルが接続された全体の制御構成を表現するCADデータを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の概要構成を示す図である。
【図2】ハードウェア登録を行う対話画面の一例を示す図である。
【図3】回転機器制御ロジックを構成するCADシートの作画例を示す図である。
【図4】電動弁制御ロジックを構成するCADシートの作画例を示す図である。
【図5】電磁弁制御ロジックを構成するCADシートの作画例を示す図である。
【図6】第2の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。
【図7】判定条件記憶部の内容(判定条件)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は第1の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。
この実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置は、例えばCPU、メモリ、ハードディスク装置、マウス、キーボードなどの入力装置、モニタ等の表示装置、外部の機器と通信するための通信インターフェースなどを有するコンピュータにより実現される。
【0019】
このプラント制御ロジック設計支援装置の基本的な機能は、ハードディスク装置にインストールされたプラント制御ロジック設計支援プログラムの処理をCPUが実行することにより実現される。プラント制御ロジック設計支援プログラムはComputer Aided Design(以下「CAD」と称す)ソフトウェアの一種であり、このプログラムを起動することにより、コンピュータは、図1のような構成のプラント制御ロジック設計支援装置として機能する。
【0020】
すなわち、この実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置は、図1に示すように、ソフトウェア命令語シンボル記憶部11と、ハードウェア命令語シンボル記憶部12と、制御ロジック作画部13と、ハードウェア登録部14と、CADデータ保存部15と、コンパイル&書き込み部16とを有する。
【0021】
ソフトウェア命令語シンボル記憶部11には、本来のソフトウェアである、ハードウェアを制御するための制御ロジック機能を持つソフトウェア命令語シンボルが記憶されている。具体的には、ソフトウェア命令語シンボルは、例えば電動弁、電磁弁、回転機器等といったハードウェアを制御するための制御ロジックを表す。すなわちソフトウェア命令語シンボル記憶部11にはハードウェアを制御する制御ロジックをシンボルの形態で表示するためのソフトウェアシンボルが記憶されている。
【0022】
ハードウェア命令語シンボル記憶部12には、ハードウェアが持つインターフェース信号およびハードウェア固有の制御ロジックを属性情報として持つハードウェア命令語シンボルが記憶されている。すなわちハードウェア命令語シンボル記憶部12には制御対象のハードウェアの動作仕様をシンボルの形態で表示するためのハードウェアシンボルが保存されている。
【0023】
制御ロジック作画部13は、CAD機能により制御ロジックを作画するシート(以下これを「CADシート」と称す)を表示装置17の画面に表示し、オペレータにより、画面上でハードウェア命令語シンボルおよび・またはソフトウェア命令語シンボルに対する配置または接続の操作がなされると、当該シンボルをソフトウェア命令語シンボル記憶部11、ハードウェア命令語シンボル記憶部12からそれぞれ読み出し、読み出したシンボルをCADシート上で組み合わせて配置および接続線で接続(結線)することにより、ソフトウェアとハードウェアがインターフェース接続されることを表現するように作画する。
【0024】
すなわち制御ロジック作画部13は、CAD形式の図面を作成するための画面(図3乃至図5参照)を表示し、画面上において当該シンボルの配置および接続の操作が行われることにより、ハードウェア命令語シンボル記憶部12およびソフトウェア命令語シンボル記憶部11からそれぞれ対応するハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルを読み出し、操作に応じて当該シンボルを配置および接続し、当該シンボルが接続された全体の制御構成を表現するCADデータを生成する作画部として機能する。
【0025】
CADシートの生成過程で、ハードウェア命令語シンボルとソフトウェア命令語シンボルとの間が信号線にて接続操作された場合、制御ロジック作画部13は、ハードウェア命令語シンボル記憶部12に設定されたハードウェア命令語シンボルの動作仕様がソフトウェア命令語シンボルの制御ロジックに適合する場合にハードウェア命令語シンボルとソフトウェア命令語シンボルとの間の信号線を接続する。
【0026】
ハードウェア登録部14は、図2に示すハードウェア登録画面20を表示装置17に表示し、ポンプやファン、バルブ等のハードウェア種別がオペレータにより入力装置10にて入力または選択(カーソルなどのオブジェクトへの移動と確定指示)されることで、ハードウェア命令語シンボルに作画されたハードウェア固有のロジックの附属情報をハードウェア命令語シンボル記憶部12に登録する。
【0027】
図2に示すように、ハードウェア登録画面20には、機器種別の欄21、プラント制御装置からの入力信号の欄22、ロジック図の欄23、プラント制御装置への出力信号の欄24、確定ボタン25、キャンセルボタン26などが設けられている。
【0028】
機器種別の欄21には、例えば電動弁、電磁弁、回転機器などの機器名称が入力される。プラント制御装置からの入力信号の欄22には、例えばD00001、D00002などの、プラント制御装置2からの入力信号の識別子であるIDが入力される。
【0029】
ロジック図の欄23には、オブジェクト部品の操作によりオブジェクト部品どうしが組み合わされ、また接続されて作図されるロジック図が入力される。プラント制御装置への出力信号の欄24には、例えばDI0004、DI0005、DI0006、DI0007などの、プラント制御装置2への出力信号の識別子であるIDが入力される。
【0030】
確定ボタン25は、入力データおよび作画データの内容を確定するための指示ボタンでありオペレータによるクリック操作で指示される。キャンセルボタン26は、入力データおよび作画データの内容を保存せずに取り消すためのボタンであり、オペレータによるクリック操作で指示される。
【0031】
オペレータは、表示装置17にハードウェア登録画面20を表示させた後、入力装置10を操作してハードウェア登録画面20からハードウェア種別を選択し、プラント制御装置2からの入力信号が“開/閉指令”または“運転/停止指令”であるのか、またプラント制御装置2への出力信号が“全開/全閉状態”または“運転中/停止中”なのかを示す信号名称とは別の附属情報をハードウェア命令語シンボル記憶部12に登録する。
【0032】
また、ハードウェア命令語シンボルに作画された固有の制御ロジックを表示し、ハードウェア単体での制御ロジックに特殊仕様があれば、その内容を、附属情報としてキー入力するなどしてハードウェア命令語シンボル記憶部12に登録する。附属情報とは、例えばハードウェアが制御されるのに本来関係のない条件などである。条件とは、ハードウェアが例えば弁などであれば“全開状態”、“全閉状態”などであり、ポンプであれば“運転中”、“停止中”、“電気故障中”などいったハードウェアの状況(状態情報)を示す情報である。
【0033】
コンパイル&書き込み部16は、CADデータ保存部15に保存されたCADデータ(図3に例示するCADシート31のデータ)を読み取り、ソフトウェア命令語とハードウェア命令語をプラント制御装置2で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルをプラント制御装置2にダウンロードする。すなわちコンパイル&書き込み部16は、CADデータ保存部15に保存されたCADデータを、プラント制御装置2で実行可能な実行ファイルへ変換し、プラント制御装置2へ実行ファイルを出力する。
【0034】
なおハードウェア命令語シンボルは、ソフトウェア命令語シンボルと同じ方法で作画したものであるため、プラント制御装置2へダウンロードするだけで、シミュレータとしての動作が可能となる。
【0035】
CADデータ保存部15には、制御ロジック作画部13によって生成されるCADデータがシート単位に保存される。つまりCADデータ保存部15には、CADデータが保存可能である。
【0036】
コンパイル&書き込み部16は、CADデータ保存部5に保存されたCADデータをプラント制御装置2で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルを、プラント制御装置2からの要求によりプラント制御装置2へダウンロード(送信)する。
【0037】
以下、説明を簡単にするために、制御ロジックまたは制御ロジック図等のプラント機器を制御するためのソフトウェアのことを単に「ソフトウェア」と称し、ポンプやバルブといったプラント制御機器および、これらの現場機器とプラント制御装置とを結ぶインターフェースも含めて単に「ハードウェア」と称す。
【0038】
本実施形態では、ハードウェア固有のロジックをソフトウェアのシンボルと同じシンボルで設定し、これらのシンボルを1枚のCADシート上に作画可能とするとともに、シンボル同士を直接結線することにより付帯情報に関する接続表現を可能とする。
【0039】
以下、この第1実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置に動作を説明する。
この第1実施形態の場合、ソフトウェア命令語シンボル記憶部11には、制御ロジック作画部13にて必要となる多くのソフトウェア命令語シンボルが保存されている。ソフトウェア命令語シンボルに関しては、従来と同様にポンプやバルブ等のハードウェアを制御するための制御ロジックを表しており、バルブが停止中の場合はバルブの停止指令をハードウェアに対して出力しないようにロックするなどの制御ロジックが、シンボルの内部に記憶されている。
【0040】
ハードウェア命令語シンボル記憶部12には、後述するハードウェア情報登録部14により登録されたハードウェア命令語が保存されている。
【0041】
制御ロジック作画部13は、CADシート2にオブジェクト部品を配置して制御ロジックを作画することが可能なCAD機能を有しており、CAD機能によりCADシート上にソフトウェア命令語シンボルとハードウェア命令語シンボルを含む制御ロジックを作画し、CADデータ保存部15に保存する。
【0042】
この制御ロジック作画部13により制御ロジックが作画されたCADシートの一例を図3に示す。
【0043】
例えばハードウェアが、ある特定範囲の電圧源の電動機を動力源とする回転機器である場合、制御ロジック作画部13は、回転機器の接点信号の種別が制御ロジックに適合する場合にハードウェア命令語シンボルとソフトウェア命令語シンボルとの間の信号線を接続する。
【0044】
図3に示す例のCADシート31は、回転機器の制御ロジックを作画した例であり、左側から入力される信号線C1(A回転機器起動指令、A回転機器停止指令、A回転機器強制停止など)の先に、論理和、論理積といった演算を表すソフトウェア命令語シンボルA1と、ソフトウェア命令語と同じ演算を表すもののソフトウェア命令語シンボルとは異なる枠線で表現されたハードウェア命令語シンボルB1とを配置し、これら命令語シンボルA1,B1を信号線C2で結線することで回転機器の制御ロジックを構成し、制御ロジックの演算結果を示す信号をシート右側へ出力するように信号線C3を配置して作画したものである。
【0045】
ハードウェアの動作仕様を、ソフトウェア命令語シンボルを使って表現するというのは一見矛盾するようにも思われるが、ポンプやバルブのようなプラント機器については、起動指令/停止指令、開指令/閉指令というプラント制御装置2からの動作指令信号をハードウェアの入力信号と考え、起動状態/停止状態、全開状態/全閉状態や、電気故障やメンテナンス中いう機器の状態を表す信号をハードウェアからの出力信号と考えると、ソフトウェアの制御ロジックと同じ形態でハードウェアの動作仕様についても表現可能であることが判る。また、ポンプやバルブといったプラント制御機器の動作仕様についても、フリップフロップ等の制御ロジックで使用する命令語シンボルで表すことが可能である。
【0046】
また、この図3のCADシート31を見ると明らかなように、ハードウェア命令語シンボルの一部の出力信号から、ソフトウェア命令語シンボルの入力信号へ折り返す表現となっている。
【0047】
これは、制御対象のハードウェアが電気故障中またはメンテナンス中であるかなどの、ハードウェアの付帯条件がソフトウェア命令語シンボルの内部で論理演算の一部に加えられることを、他のシートと呼び合うことなく1枚のシートで表現可能であることを示している。
【0048】
このように、これまではソフトウェアの信号呼び合いのみで表現していた制御ロジックから、同様の形態にてソフトウェアとハードウェアの信号呼び合いを1枚のシートで表現している。
【0049】
言い換えると、ソフトウェアとハードウェアの間のインターフェースを他のドキュメントやシートと呼び合うことなく1枚のCADシートで表現していると言える。
【0050】
さらに、シートの左側からソフトウェア命令語シンボルへ入力される信号は、ハードウェアのコア条件だけとなり、ハードウェアの付帯条件については、ハードウェア命令語シンボルからソフトウェア命令語シンボルへ折り返し直接結線されることで、ハードウェアのコア条件と付帯条件の信号区分が明確に区別された表現となる。
【0051】
ハードウェアが、例えばある特定範囲の電圧源の電動機を動力源とする例えば電動弁などである場合、図4に示すように、電動弁を含む制御ロジックを構成するCADシート32を作画する過程において、制御ロジック作画部13は、電動弁の接点信号の種別が制御ロジックに適合する場合に、ハードウェア命令語シンボルB2とソフトウェア命令語シンボルA2との間の信号線C2を接続する。
【0052】
また、ハードウェアが、例えば上記電動弁により空気を作動させて開閉する弁装置の一つである電磁弁などである場合、図5に示すように、電磁弁を含む制御ロジックを構成するCADシート33を作画する過程において、制御ロジック作画部13は、電磁弁の接点信号の種別が制御ロジックに適合する場合に、ハードウェア命令語シンボルB3とソフトウェア命令語シンボルA3との間の信号線C2を接続する。
【0053】
上記図4のCADシート32および図5のCADシート33は、それぞれ図3に示した回転機器の制御ロジックの作画例のCADシート31とは異なるソフトウェア命令語シンボルA2,A3を用いて作図したものであるが、ハードウェア命令語シンボルに関しては、図4のCADシート32および図5のCADシート33のハードウェア命令語シンボルB2,B3は、それぞれCADシート31と同じシンボルを使用してCADシートが作図されている。
【0054】
これは、プラント制御装置2からの入力信号と出力信号の数が同じであれば、異なるソフトウェア命令語にて同じハードウェア命令語シンボルを用いて結線することが可能であることを示している。
【0055】
ハードウェア情報登録部14は、制御ロジック作画部13にて制御ロジックが作画されたCADシート31のデータから、ハードウェア命令語シンボルに対し、ポンプやバルブ等のハードウェア種別を選択し、プラント制御装置からの入力およびプラント制御装置2への出力信号の意味や、ハードウェア固有の制御ロジックに関連する情報を、附属情報としてハードウェア命令語シンボルに書き込む。
【0056】
このようにこの第1の実施形態によれば、プラント制御ロジック設計支援装置にてソフトウェアとハードウェアの情報を、CADにより1枚のシートに作画することが可能となる。また、ハードウェアに関する情報は、複数のハードウェア種別から選択することで、多岐に亘るハードウェアの種別を1つのハードウェア命令語シンボルとして表現することができる。
【0057】
さらに、ソフトウェア命令語シンボルとハードウェア命令語シンボルとの接続を同じCADシート内に配置し互いのシンボルを接続する、つまりハードウェアのコア条件を示す信号と付帯条件を示す信号が区別された結線を行う表現にしたことで、ハードウェアのコア条件を示す信号は、シートの左側からの信号に着目すればよく、誤って付帯条件を示す信号を呼び合うような結線ミスの発生をなくすることができる。
(第2実施形態)
図6は第2実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。なお第2実施形態を説明するにあたり第1実施形態と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0058】
図6に示すように、この第2実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置は、図1に示した第1実施形態の構成に加えて、判定条件記憶部18とハードウェア判定部19とを有している。
【0059】
図7に示すように、判定条件記憶部18には、ソフトウェア命令語シンボルとハードウェア命令語シンボルとの組み合わせについてそれぞれ正否を示す判定条件が設定されている。この例では、例えば回転機器制御ソフトウェアと回転機器ハードウェアとの組み合わせは「○」、つまり組み合わせ可能と設定されている。電動弁制御ソフトウェアと回転機器ハードウェアとの組み合わせは「×」、つまり組み合わせ不可と設定されている。
【0060】
ハードウェア判定部19は、制御ロジック作画部13により作成されたCADデータの中で、結線されたハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルとの適正を予め設定された判定条件に基づいて判定し、適切と判定したCADデータをCADデータ保存部15に保存する一方、不適切と判定した場合、CADデータにエラーが存在する旨を報知する判定部として機能する。
【0061】
つまり、ハードウェア判定部19は、制御ロジック作画部13により作成されたCADデータのうち、ソフトウェアシンボルに登録される制御対象となるハードウェアの種別と、ハードウェアシンボル記憶部に登録されたハードウェアの種別とが正しい組み合わせであるか否かを判定する。
【0062】
より具体的には、ハードウェア判定部19は、判定条件記憶部18の判定条件を参照してソフトウェア命令語シンボルとハードウェア命令語シンボルとの不適切な組み合わせが適切か不適切かを判定し、不適切な組み合わせを検出した場合、不適切な組み合わせの内容を表示装置17へ出力し、オペレータに報知する。
【0063】
報知方法としては、不適切な組み合わせのソフトウェア命令語シンボルとハードウェア命令語シンボルの名称を含むメッセージを出力してもよく、シート上のシンボルどうしの接続箇所の色を例えば赤色などに変えるなどの明示をしてもよい。
【0064】
続いてこの第2実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の動作を説明する。なお第1実施形態との差分について説明する。
【0065】
この第2実施形態では、ハードウェア判定部19は、制御ロジック作画部13により作成されたCADデータを取り込み、ソフトウェア命令語シンボルに登録される制御対象とするハードウェアとハードウェア命令語シンボルに登録されるハードウェア種別との組み合わせが正しいものであるかを、図7に例示した判定記憶部18のデータを用いて判定し、その判定結果に応じてCADデータをCADデータ保存部15に保存・非保存とする。
【0066】
ここで、例えばソフトウェア命令語シンボルに登録される制御対象と、図2に例示したハードウェア登録画面20内のハードウェア種別にて選択されたハードウェアが同一、つまり適切な組み合わせであれば、CADデータをそのままCADデータ保存部15へ渡し保存する。
【0067】
一方、ソフトウェア命令語シンボルとハードウェア命令語シンボルとが異なる組み合わせ、つまり不適切な組み合わせであれば、エラーメッセージを表示装置17へ出力し、オペレータへエラーの内容を通知し、CADデータ保存部15へCADデータを渡さない(非保存とする)。
【0068】
このようにこの第2実施形態によれば、作画データを読み出してハードウェアとソフトウェアの命令語シンボルの組み合わせが異なることを、CADデータを保存する前の段階でオペレータへ通知することで、プラント制御装置2へ不適切な制御ロジックをプラント制御装置2へ書き込む前にオペレータに気付かせることができる。
【0069】
以上のように上記第1および第2実施形態によれば、ハードウェア命令語シンボルに属性情報として登録されたハードウェア情報を用いてソフトウェア情報との組み合わせが不適切なものをコンパイル&書き込み部16へ渡さなくすることで、プラント制御装置2の設計段階でハードウェアとの入出力信号の取り合いミスが発生しなくなる。また、取り合いミスを解消するための設計後戻り作業も発生しなくなる。
【0070】
さらに、CADシート上でハードウェア情報を含んだ制御ロジックとして構成できるため、制御ロジックの生産性と保守性を向上することができる。
【0071】
すなわち、プラント制御ロジックというソフトウェア命令語シンボルだけではなく、制御対象となる機器の全てを網羅できる共通的なハードウェア命令語シンボルを備えることで、プラント制御システムの生産性・保守性を向上することができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0073】
また上記実施形態に示した各構成要素を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…プラント制御ロジック設計支援装置、2…プラント制御装置、11…ソフトウェア命令語シンボル記憶部、12…ハードウェア命令語シンボル記憶部、13…制御ロジック作画部、14…ハードウェア情報登録部、15…CADデータ保存部、16…コンパイル&書き込み部、17…表示装置、18…判定条件記憶部、19…ハードウェア判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象のハードウェアの動作仕様をシンボルの形態で表示するためのハードウェアシンボルが保存されたハードウェアシンボル記憶部と、
前記ハードウェアを制御する制御ロジックをシンボルの形態で表示するためのソフトウェアシンボルが記憶されたソフトウェアシンボル記憶部と、
CAD形式の図面を作成するための画面を表示し、前記画面上における当該シンボルの配置および接続の操作により、前記ハードウェアシンボル記憶部および前記ソフトウェアシンボル記憶部からそれぞれ対応するハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルを読み出し、操作に応じて当該シンボルを配置および接続し、当該シンボルが接続された全体の制御構成を表現するCADデータを生成する作画部と
を具備することを特徴とするプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項2】
前記CADデータを保存可能なCADデータ保存部と、
前記作画部により作成されたCADデータの中で、結線されたハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルとの適正を予め設定された判定条件に基づいて判定し、適切と判定したCADデータを前記CADデータ保存部に保存する一方、不適切と判定した場合、前記CADデータにエラーが存在する旨を報知する判定部と
を具備することを特徴とする請求項1記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記作画部により作成されたCADデータのうち、前記ソフトウェアシンボルに登録される制御対象となるハードウェアの種別と、前記ハードウェアシンボル記憶部に登録されたハードウェアの種別とが正しい組み合わせであるかを判定することを特徴とする請求項2記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項4】
前記CADデータ保存部に保存されたCADデータを、前記ハードウェアを制御する制御装置で実行可能な実行ファイルへ変換し、当該制御装置へ実行ファイルを出力するコンパイル&書き込み部をさらに具備することを特徴とする請求項2記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項5】
前記作画部は、
前記ハードウェアシンボルに設定された前記ハードウェアの動作仕様が前記制御ロジックに適合する場合に前記ハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルとの間の信号線を接続することを特徴とする請求項1記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項6】
前記作画部は、
前記ハードウェアが、ある特定範囲の電圧源の電動機を動力源とする回転機器、ある特定範囲の電圧源の電動機を動力源とする電動弁、この電動弁により空気を作動させて開閉する弁装置の場合、前記回転機器、前記電動弁および前記弁装置の接点信号の種別が前記制御ロジックに適合する場合に前記信号線を接続することを特徴とする請求項4記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項7】
コンピュータを動作させるプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
制御対象のハードウェアの動作仕様をシンボルの形態で表示するためのハードウェアシンボルが保存されたハードウェアシンボル記憶部と、
前記ハードウェアを制御する制御ロジックをシンボルの形態で表示するためのソフトウェアシンボルが記憶されたソフトウェアシンボル記憶部と、
CAD形式の図面を作成するための画面を表示し、前記画面上における当該シンボルの配置および接続の操作により、前記ハードウェアシンボル記憶部および前記ソフトウェアシンボル記憶部からそれぞれ対応するハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルを読み出し、操作に応じて当該シンボルを配置および接続して、当該シンボルが接続された全体の制御構成を表現するCADデータを生成する作画部
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
制御対象のハードウェアの動作仕様をシンボルの形態で表示するためのハードウェアシンボルをハードウェアシンボル記憶部に保存し、
前記ハードウェアを制御する制御ロジックをシンボルの形態で表示するためのソフトウェアシンボルをソフトウェアシンボル記憶部に記憶し、
CAD形式の図面を作成するための画面を表示し、前記画面上における当該シンボルの配置および接続の操作により、前記ハードウェアシンボル記憶部および前記ソフトウェアシンボル記憶部からそれぞれ対応するハードウェアシンボルとソフトウェアシンボルを読み出し、操作に応じて当該シンボルを配置および接続し、当該シンボルが接続された全体の制御構成を表現するCADデータを生成する
ことを特徴とするプラント制御ロジック設計支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247867(P2012−247867A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117340(P2011−117340)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】