説明

プラント運用訓練システム

【課題】プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、その訓練の質的低下を伴うことなく、むしろ、その訓練の質的向上を図りつつ、指導員の負担を軽減させること。
【解決手段】本発明では、プラント状態を仮想的に作り出すシミュレーションを実行して、プラント状態に応じて定められた連絡先を選択するとともにその連絡先と的確な対話を行うコミュニケーション訓練を可能とするプラント運用訓練システムにおいて、その連絡先を代役する指導員が連絡元の訓練員と交わす各種の対話をモデル対話として記憶しておき、コミュニケーション訓練の実施中に、シミュレーションによるプラント状態に応じて適切なモデル対話を特定して指導員に提示する訓練支援部4を備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの運用訓練を支援する技術に係り、特に、プラントの状態に応じて正しい連絡先を選択し且つその連絡先と的確な対話を行うコミュニケーション訓練を支援するプラント運用訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、原子力発電プラントのように大規模且つ複雑にして高度の安全が強く求められるプラントが広く運用されている。かかるプラントを適切に運用するためには、オペレータ又は将来的にオペレータとなる者を対象とし、プラントの通常運転のみならず各種のプラント異常を想定した総合的な訓練が必要となる。
【0003】
従来のプラント運用訓練システムは、特許文献1〜3に開示されている。これらのプラント運用訓練システムは、原子力発電プラントの炉心反応度やタービン駆動力となる水蒸気の温度、圧力及び流量などのプロセス量、ポンプやタービンなどのプラント機器の動作など(総じてプラント状態)に関わる模擬計算(シミュレーション)を実行し、実機のプラント状態を仮想的に作り出すシミュレータを備えている。即ち、仮想的なプラント操作を可能とし、訓練の実効が図られている。
【0004】
併せて、このようなシミュレーションを行うにあたり、プラント機器に想定される事故・事象(トラブル)の時系列的な発生と連鎖を事象ステップとして定めた訓練シナリオが用いられている。この訓練シナリオは、トラブルの事象ステップに従ったプラント状態をシミュレータに模擬計算させるプログラムとして用意される。従って、訓練員はシミュレータによって提供されるトラブル発生時のプラント状態を仮想体験することとなり、これもまた訓練の実効性を高めるものとして期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−45638号公報
【特許文献2】特開平1−39589号公報
【特許文献3】特開平5−83911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、プラントの運用訓練においては、プラント状態に応じて定められた所定の連絡先(トラブル検証先となるプラント機器の設置随所(現場)やトラブル報告先として割り当てられた外部当局など)を正しく選択し、選択した連絡先と的確な対話(トラブルの検証や報告に関わる応答など)を行うコミュニケーション訓練が広く実施されている。
【0007】
従来のプラント運用訓練システムは、シミュレーションの実行によってプラント状態に応じた正しい連絡先を選択する訓練を可能にする。しかしながら、選択した連絡先と的確な対話を行うためのコミュニケーション訓練を行う場合、指導員の負担は大きい。
【0008】
つまり、連絡先はプラント状態に応じて多岐にわたって定められるうえ、1名ないし数名の指導員が複数の連絡先当局を代役するのが通常となっており、指導員には高度の技量習得が要求される。また、1名の指導員が何役も演じることにより、連絡元の個々の訓練員に対して十分な指導が行きわたらず、訓練の質的低下をもたらしかねない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、その訓練の質的低下を伴うことなく、むしろ、その訓練の質的向上を図りつつ、指導員の負担を軽減できるプラント運用訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明に係るプラント運用訓練システムでは、プラント状態を仮想的に作り出すシミュレーションを実行して、プラント状態に応じて定められた連絡先を選択するとともにその連絡先と的確な対話を行うコミュニケーション訓練を可能とするプラント運用訓練システムにおいて、その連絡先を代役する指導員が連絡元の訓練員と交わす各種の対話をモデル対話として記憶しておき、コミュニケーション訓練の実施中に、シミュレーションによるプラント状態に応じて適切なモデル対話を特定して指導員に提示する訓練支援部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、その訓練の質的低下を伴うことなく、むしろ、その訓練の質的向上を図りつつ、指導員の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るプラント運用訓練システムの第1実施形態を示す図。
【図2】本発明に係るプラント運用訓練システムの第2実施形態を示す図。
【図3】本発明に係るプラント運用訓練システムの第3実施形態を示す図。
【図4】本発明に係るプラント運用訓練システムの第4実施形態を示す図。
【図5】本発明に係るプラント運用訓練システムの第5実施形態を示す図。
【図6】本発明に係るプラント運用訓練システムの第6実施形態を示す図。
【図7】本発明に係るプラント運用訓練システムの第7実施形態を示す図。
【図8】本発明に係るプラント運用訓練システムの第8実施形態を示す図。
【図9】本発明に係るプラント運用訓練システムの第9実施形態を示す図。
【図10】本発明に係るプラント運用訓練システムの第10実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態のプラント運用訓練システム1は、プラント操作の訓練のほか、トラブル発生時にプラント状態に応じて定められた連絡先を選択してその連絡先と的確な対話を行うためのコミュニケーション訓練を支援するシステムである。
【0015】
プラント運用訓練システム1は、原子力発電プラントの制御室に訓練員が配備され、訓練員の連絡先がトラブル検証先となるプラント機器の設置随所(現場)やトラブル報告先として割り当てられた外部当局(何れも図示省略)とされた場合のコミュニケーション訓練を支援するシステム構成例であり、図1に示すように、インストラクタ・コンソール2、シミュレータ3及び訓練支援部4を備えている。
【0016】
なお、訓練員が配備されるプラントの制御室5は、図1に示すように、構内放送に用いられる放送機器(スピーカ)501、電話機などの通信機器502、オペレータの手動によるプラント操作を可能とするスイッチ類が配置される制御盤503、プロセス量を表示したりプラント機器のトラブルを報知する計装盤504を備えている。
【0017】
[インストラクタ・コンソール]
インストラクタ・コンソール2は、指導員が駐在して訓練の統括拠点となる。このインストラクタ・コンソール2は、LAN(Local Area Network)を介して制御室5の放送機器501や通信機器502と接続され、指導員がトラブル発生時の連絡先を代役して、プラント構内のみで訓練員のコミュニケーション訓練を行えるように構成されている。
【0018】
[シミュレータ]
シミュレータ3は、シミュレーション実行部301及びシミュレーションデータ格納部302を有している。
シミュレーション実行部301は、インストラクタ・コンソール2に駐在する指導員の操作を受け、シミュレーションデータ格納部302から必要なデータを取り込み、原子力発電プラントの炉心反応度やタービン駆動力となる水蒸気の温度、圧力及び流量などのプロセス量ならびにプラント機器の出力といったプラント状態のシミュレーションを実行する。そして、シミュレーション実行部301は、シミュレーションの結果をシミュレーション実行部301に格納する。
【0019】
シミュレーションデータ格納部302に格納されるデータは、プラント機器(プロセス量を計測するセンサ、制御棒やその駆動機構などの制御機構、制御信号の伝送路等)や、プラント機器にトラブルを発生させるシミュレーション条件(マルファンクション)などである。
【0020】
[訓練支援部]
訓練支援部4は、コミュニケーション訓練時の指導員の負担軽減を図るもので、訓練シナリオ記憶部401、連絡先記憶部402、モデル対話記憶部403、モデル対話分類部404、通信データ取得部405、訓練シナリオ実行部406、及び、モデル対話提示部407を有する。
【0021】
訓練シナリオ記憶部401は、「訓練シナリオ」を記憶する。訓練シナリオは、プラント機器に関わるトラブルの時系列的な発生と連鎖を事象ステップとして定めたものであり、この事象ステップに従うプラント状態のシミュレーションをシミュレータ3に実行させるプログラムである。
【0022】
なお、訓練シナリオは、例えば、制御棒1本が落下して挿入不能となり(事象ステップ1)→中性子束が定格の120%まで上昇したところでスクラムが作動し(事象ステップ2)→燃料棒の破損ないし炉心の損傷が発生する(事象ステップ3)とか、原子炉定格運転中に大地震などによって外部電源が喪失し(事象ステップ1)→原子炉が自動停止し(事象ステップ2)→炉心冷却機能が全停止し(事象ステップ3)→炉心が損傷する(事象ステップ4)などのように様々に定義される。実際は、最終的な結果に至らないように、トラブル発生の初期段階でオペレータにより適切なプラント操作が行われるとともに、所定の連絡先にトラブルの報告が為される。
【0023】
連絡先記憶部402は、訓練シナリオごとに且つその事象ステップごとに、訓練員が連絡すべき正しい「連絡先」を複数記憶する。連絡先は、プラントの制御室5に配備される訓練員が連絡すべき現場随所やトラブル報告先であり、予め策定されるものである。
【0024】
モデル対話記憶部403は、制御室5に配備される訓練員とインストラクタ・コンソール2に駐在する指導員(連絡先の代役)との間で交わされるべき正しい「対話」をモデル対話として複数記憶する。1つ1つのモデル対話には、モデル対話を特定するためのインデックスが付加される。
【0025】
モデル対話分類部404は、訓練シナリオ記憶部401に記憶された訓練シナリオ、連絡先記憶部402に記憶された連絡先、及び、モデル対話記憶部403に記憶されたモデル対話を読み込み、訓練シナリオごとに、その事象ステップごとに、更に連絡先ごとに、指導員が訓練員と交わすべき適切な対話の内容を関連付けて記憶する。即ち、モデル対話分類部404は、各種の訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに、モデル対話のインデックスを規定どおりに関連付けて記憶する。
【0026】
通信データ取得部405は、訓練中の指導員と訓練員の通信を取得し、訓練員が選択した連絡先を特定するための情報を記憶する。
【0027】
訓練シナリオ実行部406は、シミュレーションデータ格納部302に格納されているプラント状態のシミュレーション結果を逐次読み込み、プラント状態の進展に基づいて、シミュレーション実行部301に訓練シナリオの次の事象ステップを与えるタイミングを判断する。
【0028】
また、訓練シナリオ実行部406は、モデル対話分類部404に記憶されているモデル対話のインデックスの中から、訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられているモデル対話のインデックスを特定する。訓練シナリオ実行部406における現在の事象ステップの判断は、訓練シナリオ記憶部401に記憶されている訓練シナリオとシミュレーションデータ格納部302のシミュレーション結果(プラント状態)とのマッチングを行うことにより、シミュレーションによるプラント状態が訓練シナリオの何れの事象ステップに相当するかを特定することにより行われる。
【0029】
モデル対話提示部407は、訓練シナリオ実行部406から訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられているモデル対話のインデックスを受け取る。そして、モデル対話提示部407は、受け取ったモデル対話のインデックスと同一のインデックスが付加されているモデル対話をモデル対話記憶部403から抽出し、指導員が駐在するインストラクタ・コンソール2のモニタ画面等に表示し、指導員にモデル対話を提示する。このとき、モデル対話は、訓練シナリオの事象ステップごとに且つ訓練員が選択した連絡先の情報とともに提示される。なお、連絡先の情報は、通信データ取得部405や訓練シナリオ実行部406などから取得される。
【0030】
次に、効果を説明する。
【0031】
プラント運用訓練システム1では、シミュレータ3によりプラント状態が仮想的に作り出される。このため、プラント状態に応じて定められた既定の連絡先を選択し、その連絡先と的確な対話を行うコミュニケーション訓練が可能となる。
【0032】
ここで、コミュニケーション訓練においては、連絡先はプラント状態に応じて多岐にわたって定められるうえ、1名又は数名の指導員が複数の連絡先を代役するのが通常となっている。このコミュニケーション訓練に際して従来のプラント運用訓練システムを用いると、指導員に高度の技量習得ならびに身体的負担が要求されるほか、1名の指導員が複数の通報先を演じることとなって連絡元の個々の訓練員に対して十分な指導が行きわたらず、訓練の質的低下をもたらす点が問題となっていた。
【0033】
これに対し、プラント運用訓練システム1の訓練支援部4は、訓練シナリオ記憶部401、連絡先記憶部402、モデル対話記憶部403、モデル対話分類部404、訓練シナリオ実行部406、モデル対話提示部407を備えている。このため、訓練シナリオの事象ステップに従い刻々変化する多様なプラント状態が作り出されることで多様なコミュニケーション訓練が行えることに加え、各々のコミュニケーション訓練に際し、訓練シナリオの事象ステップ或いはプラント状態に応じて適切なモデル対話が指導員に逐次提示されていく。要するに、プラント運用訓練システム1にあっては、
(1)プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、訓練場面に応じて適切なモデル対話を指導員に提示することができ、訓練の質的向上を図りつつ指導員の負担を軽減できる。
【0034】
(第2実施形態)
図2は本発明に係るプラント運用訓練システムの第2実施形態を示す図である。
【0035】
本実施形態は、第1実施形態のプラント運用訓練システム1における訓練支援部4の構成を変更した例である。以下、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「A」を付して説明する。
【0036】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Aの訓練支援部4Aは、図1に示すように、音声−文字変換部408A、プラント状態記憶部409A、訓練履歴記憶部410A、及び、モデル対話作成支援部411Aを有する。
【0037】
音声−文字変換部408Aは、制御室5の訓練員とインストラクタ・コンソール2の指導員との間で交わされた訓練中の対話(音声データ)を文字データに変換する。音声データから文字データへの変換は、公知の技術を用いて行なわれる。音声データは、通信データ取得部405が取得する。
【0038】
プラント状態記憶部409Aは、シミュレーションデータ格納部302からシミュレーション結果たるプラント状態を継続的に取得する。なお、プラント状態は、選択された訓練シナリオに基づくシミュレーションの進行のほか、訓練の内容変更(指導員による訓練シナリオの変更)があった場合などに変化する。
【0039】
訓練履歴記憶部410Aは、音声−文字変換部408Aから訓練中に指導員と訓練員が交わした対話の文字データを受け取る。また、プラント状態記憶部409Aから刻々変化するプラント状態を受け取り、訓練シナリオ実行部406から実行済みの訓練シナリオ及びその事象ステップの情報を取得する。そして、訓練履歴記憶部410Aは、指導員と訓練員が交わした対話の文字データとその対話が交わされたときのプラント状態や訓練シナリオの事象ステップとを対応付けて記憶する。更に、この訓練履歴記憶部410Aは、通信データ取得部405から、訓練員が選択した連絡先を特定するための情報を記録する。
【0040】
モデル対話作成支援部411Aは、訓練シナリオの事象ステップやこれに基づくシミュレーションによるプラント状態を検索条件として受け付け、ユーザから検索条件を受け取ったとき、検索条件に合致する対話の文字データを訓練履歴記憶部410Aから抽出して随所のモニタ画面に表示する。即ち、モデル対話作成支援部411Aは、過去の訓練で交わされた対話の文字データのうち、ユーザ所望の条件(プラント状態や訓練シナリオなど)に合致する対話の文字データを抽出し、そのユーザに提示する。
【0041】
次に、効果を説明する。
【0042】
プラント運用訓練システム1Aにあっては、第1実施形態の(1)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(2)訓練で指導員と訓練員が交わした対話の内容と、その対話が交わされた訓練場面との関係をユーザに提供できる。従って、プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、モデル対話の新規追加や既記憶のモデル対話の修正等の要否判断を容易にすることで訓練の質的向上を図りつつ、指導員の負担を軽減できる。
【0043】
(第3実施形態)
図3は本発明に係るプラント運用訓練システムの第3実施形態を示す図である。
【0044】
本実施形態は、第1実施形態のプラント運用訓練システム1における訓練支援部4の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「B」を付して説明する。
【0045】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Bの訓練支援部4Bは、図3に示すように、システムデータ記憶部412B、システムデータ分類部413B、訓練シナリオ実行部406B、及び、システム画像提示部414Bを備えている。
【0046】
システムデータ記憶部412Bは、指導員が訓練員に指示を与えるうえで有用な「システムデータ」をインデックスとともに記憶する。システムデータは、インストラクタ・コンソール2や制御室5のモニタにプラントのシステム構成を表示させるプログラムとして用意され、原子炉建屋やタービン建屋に設けられる各種の機器・配管の設計図や配置図のほか、プラントのプロセス量、インターロック・システムや非常用炉心冷却装置(ECCS)といった安全システムの制御ロジックなどを画像にて説示する。なお、システムデータは、指導員と訓練員の意思疎通の円滑化の観点から任意に作成される。
【0047】
システムデータ分類部413Bは、訓練シナリオ記憶部401に記憶されている訓練シナリオ、連絡先記憶部402に記憶されている連絡先、及び、システムデータ記憶部412Bに記憶されているシステムデータを読み込み、訓練シナリオごとに、その事象ステップごとに、更に連絡先の別ごとに、プラント状態に応じた適切なシステムデータを関連付けて記憶する。即ち、システムデータ分類部413Bは、訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに、モデル対話のインデックスを関連付けて記憶する。
【0048】
訓練シナリオ実行部406Bは、初めに第1実施形態の訓練シナリオ実行部406と同様の基本処理を実行する。つまり、訓練シナリオ実行部406Bは、シミュレーションデータ格納部302に格納されているプラント状態のシミュレーション結果を逐次読み込み、プラント状態の進展に基づいて、シミュレーション実行部301に訓練シナリオの次の事象ステップを与えるタイミングを判断する。
【0049】
また、訓練シナリオ実行部406Bは、基本処理のほか、システムデータ分類部413Bに記憶されているシステムデータのインデックスの中から、訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられているシステムデータのインデックスを特定する。訓練シナリオ実行部406Bにおける現在の事象ステップの判断は、訓練シナリオ記憶部401に記憶されている訓練シナリオとシミュレーションデータ格納部302のシミュレーション結果(プラント状態)とのマッチングを行うことにより、シミュレーションによるプラント状態が訓練シナリオの何れの事象ステップに相当するかを特定することにより行われる。
【0050】
システム画像提示部414Bは、訓練シナリオ実行部406Bから訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられているシステムデータのインデックスを受け取る。次いで、システム画像提示部414Bは、受け取ったモデル対話のインデックスと同一のインデックスが付加されているシステムデータをシステムデータ記憶部412Bから抽出し、指導員が駐在するインストラクタ・コンソール2のモニタ画面にシステムデータに基づくシステム画像を表示する。システム画像は、訓練シナリオの事象ステップごとに且つ訓練員が選択した連絡先の情報とともに提示される。連絡先の情報は、通信データ取得部405や訓練シナリオ実行部406Bなどから取得する。
【0051】
次に、効果を説明する。
【0052】
プラント運用訓練システム1Bにあっては、第1実施形態の(1)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(3)指導員にモデル対話が提示されるとともに(第1実施形態参照)、このモデル対話の内容と密接に関連するシステム画像が提示される。そして、このシステム画像は、訓練シナリオの事象ステップに応じて常に更新されていく。よって、指導員は、訓練中にモデル対話を参照しながら且つその対話と密接に関連するプラントのシステム構成を参照しながら、訓練員と対話を行える。従って、プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、訓練を円滑化させるとともに訓練員に対する指導を充実化させることで、訓練の質的向上を図りつつ指導員の負担を軽減できる。
【0053】
(第4実施形態)
図4は本発明に係るプラント運用訓練システムの第4実施形態を示す図である。
【0054】
本実施形態は、第3実施形態のプラント運用訓練システム1Bにおける訓練支援部4Bの構成を変更した例である。なお、第3実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第3実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「C」を付して説明する。
【0055】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Cの訓練支援部4Cは、図4に示すように、プラント状態記憶部409C、訓練履歴記憶部410C、及び、システムデータ作成支援部415Cを備えている。
【0056】
プラント状態記憶部409Cは、シミュレーションデータ格納部302からシミュレーション結果たるプラント状態を継続的に取得する。なお、プラント状態は、選択された訓練シナリオに基づくシミュレーションの進行のほか、訓練の内容変更(指導員による訓練シナリオの変更)があった場合などに変化するものである。
【0057】
訓練履歴記憶部410Cは、システム画像提示部414Bから、抽出されたシステムデータを受け取り記憶する。また、訓練履歴記憶部410Cは、プラント状態記憶部409Cから刻々変化するプラント状態を受け取り、訓練シナリオ実行部406Bから実行された訓練シナリオ及びその事象ステップの情報を受け取る。そして、訓練履歴記憶部410Cは、訓練中に指導員に提示されたシステム画像に関わるシステムデータをそのシステム画像が提示されたときのプラント状態や訓練シナリオの事象ステップと対応付けて記憶する。更に、訓練履歴記憶部410Cは、通信データ取得部405から訓練員が選択した連絡先を特定するための情報を記録する。
【0058】
システムデータ作成支援部415Cは訓練シナリオの事象ステップやこれに基づくシミュレーションによるプラント状態を検索条件として受け付け、ユーザから検索条件を受け取ったとき、検索条件に合致するシステムデータを訓練履歴記憶部410Cから抽出してそのシステムデータに基づくシステム画面を随所のモニタ画面に表示する。即ち、システムデータ作成支援部415Cは、過去の訓練で表示されたシステム画面のうち、ユーザ所望の条件(プラント状態や訓練シナリオなど)と合致するシステム画面を抽出し、そのユーザに提示する。
【0059】
次に、効果を説明する。
【0060】
プラント運用訓練システム1Cにあっては、第3実施形態の(3)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(4)訓練中に指導員に提示されたシステム画像と、そのシステム画像が提示された訓練場面との関係をユーザに提供できる。従って、プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、指導員の対話補助となるシステム画像の新規追加やその修正等の要否判断を容易にすることで訓練の質的向上を図りつつ、指導員の負担を軽減できる。
【0061】
(第5実施形態)
図5は本発明に係るプラント運用訓練システムの第5実施形態を示す図である。
【0062】
本実施形態は、第1実施形態のプラント運用訓練システム1における訓練支援部4の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「D」を付して説明する。
【0063】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Dの訓練支援部4Dは、図5に示すように、通信データ取得部405D、環境音記憶部416D、及び、環境音再生部417Dを備えている。
【0064】
通信データ取得部405Dは、訓練中の通信を記録する。また、この通信データ取得部405Dは、各々の連絡先を特定するためのインデックス情報を保有し、訓練員が選択した連絡先を識別してその連絡先にインデックスを付加する。
【0065】
環境音記憶部416Dは、プラント状態に応じて定められた連絡先のうち、例えば、トラブル検証先となるプラント機器の設置随所の「環境音」を記憶する。環境音は、ポンプやタービンなどの騒音など任意に且つ事前に収集される。また、1つ1つの環境音には、環境音を特定するためのインデックスが付加される。
【0066】
環境音再生部417Dは、通信データ取得部405Dから連絡先のインデックスを検索指標として受け取り、そのインデックスと同一のインデックスが付加されている環境音を環境音記憶部416Dから抽出し、抽出した環境音を制御室5の放送機器501から出力する。
【0067】
次に、効果を説明する。
【0068】
プラント運用訓練システム1Dあっては、第1実施形態の(1)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(5)プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、訓練員に連絡先の環境音を聞かせて臨場感を与えることで訓練の質的向上を図りつつ、指導員の負担を軽減できる。
【0069】
(第6実施形態)
図6は本発明に係るプラント運用訓練システムの第6実施形態を示す図である。
【0070】
本実施形態は、第2実施形態のプラント運用訓練システム1Aにおける訓練支援部4Aの構成を変更した例である。なお、第2実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「E」を付して説明する。
【0071】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Eは、図6に示すように、模範訓練記憶部418E、訓練評価部419E、訓練評価結果記憶部420E、及び、訓練評価結果提示部421Eを備えている。
【0072】
模範訓練記憶部418Eは、訓練履歴記憶部に記憶されている対話の文字データの中からユーザにより指定された「模範訓練」における対話の文字データを選択的に取り出し、この対話の文字データをその対話が行われたときの訓練シナリオの事象ステップと関連付けて記憶する。
【0073】
ここに、模範訓練は、その時々の訓練シナリオの事象ステップに応じて交わされた指導員と訓練員の対話の内容及び対話のタイミングが良好であるとしてユーザにより事前に選択されるものである。なお、この模範訓練の選択は、訓練履歴記憶部410Aとモデル対話作成支援部411Aの協働による訓練シナリオと対話文字データとの関連付け機能及び提示機能(第2実施形態参照)を用いて行うことができる。
【0074】
訓練評価部419Eは、模範訓練記憶部418Eに記憶されている模範訓練としての対話の文字データと訓練履歴記憶部410Aに記憶されている対話の文字データとの一致の程度、両対話のタイミング(対話が交わされたときの訓練シナリオや事象ステップなど)、及び、連絡先の総合的な一致度を特定する。そして、訓練評価部419Eは、対話の文字データ、対話のタイミング及び連絡先の一致の程度に基づいて、訓練履歴記憶部410Aに記憶されている対話に良否の判断指標(例えば、良いものにつき「○」又は「A」、悪いものにつき「×」又は「B」)を付加し、この良否の判断指標を付加した対話を「評価済み対話」として訓練評価結果記憶部420Eに送る。
【0075】
訓練評価結果記憶部420Eは、訓練評価部419Eからユーザ指定の「評価済み対話」を受け取り、受け取った評価済み対話にその評価済み対話を特定するためのインデックスを付加して記憶する。インデックスは、訓練員の個人名、訓練員の所属グループ名、訓練シナリオやその事象ステップなど、対話が交わされた時点の訓練の内容に応じて用意される。訓練評価結果記憶部420Eは、評価済み対話に含まれる訓練員の個人名、訓練員の所属グループ名、訓練シナリオやその事象ステップなどのインデックス対応付け情報を参照して、評価済み対話にインデックスを付加する。なお、インデックス対応付け情報は、模範訓練記憶部418Eなどによって評価済み対話に関連付けられる。
【0076】
訓練評価結果提示部421Eは、インデックスを検索指標として受け付け、受け取ったインデックスと同一のインデックスが付加されている評価済み対話を訓練評価結果記憶部420から抽出する。そして、訓練評価結果提示部421Eは、抽出した評価済み対話及びその評価済み対話の良否を判断可能な情報をインストラクタ・コンソール2のモニタ画面などに出力する。
【0077】
次に、効果を説明する。
【0078】
プラント運用訓練システム1Eあっては、第2実施形態の(2)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(6)プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、過去に実施された訓練の良否評価が自動的に行われ且つその評価結果を適時参照できるようにして訓練の質的向上を図りつつ、指導員の負担を軽減できる。
【0079】
(第7実施形態)
図7は本発明に係るプラント運用訓練システムの第7実施形態を示す図である。
【0080】
本実施形態は、第1実施形態のプラント運用訓練システム1における訓練支援部4の構成を変更した例である。なお、第2実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第2実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「F」を付して説明する。
【0081】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Fは、図7に示すように、対話音声記憶部422F、対話音声分類部423F、訓練シナリオ実行部406F、対話音声再生部424F、プラント状態記憶部409F、訓練履歴記憶部410F、及び、対話音声作成支援部425Fを備える。
【0082】
対話音声記憶部422Fは、インストラクタ・コンソール2に駐在する指導員とプラントの制御室5に配備される訓練員との間で交わされるべき正しいモデル対話の音声、即ち、本来は指導員が自ら訓練員と話すべき対話内容を自動再生するための「対話音声(対話音声を再生するデータ)」として記録する。1つ1つの対話音声には、対話音声を特定するためのインデックスが付加される
対話音声分類部423Fは、訓練シナリオ記憶部401に記憶されている訓練シナリオ、連絡先記憶部402に記憶されている連絡先、及び、対話音声記憶部422Fに記憶されている対話音声を読み込み、訓練シナリオごとに、その事象ステップごとに、更に連絡先の別ごとに、訓練員に聞かせる適切な対話音声を対応付ける。即ち、対話音声分類部423Fは、訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに、対話音声のインデックスを関連付けて記憶する。
【0083】
訓練シナリオ実行部406Fは、初めに第1実施形態と同様に基本処理を実行する。つまり、訓練シナリオ実行部406Fは、シミュレーションデータ格納部302に格納されているプラント状態のシミュレーション結果を逐次読み込み、プラント状態の進展に基づいて、シミュレーション実行部301に訓練シナリオの次の事象ステップを与えるタイミングを判断する。
【0084】
また、訓練シナリオ実行部406Fは、基本処理のほか、対話音声分類部423Fに記憶されている対話音声のインデックスの中から、訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられている対話音声のインデックスを特定する。訓練シナリオ実行部406Fにおける現在の事象ステップの判断は、訓練シナリオ記憶部401に記憶されている訓練シナリオとシミュレーションデータ格納部302のシミュレーション結果(プラント状態)とのマッチングを行うことにより、シミュレーションによるプラント状態が訓練シナリオの何れの事象ステップに相当するかを特定することにより行われる。
【0085】
対話音声再生部424Fは、訓練シナリオ実行部406Fから訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられている対話音声のインデックスを受け取る。そして、対話音声再生部424Fは、受け取った対話音声のインデックスと同一のインデックスが付加されている対話音声を対話音声記憶部422Fから抽出し、訓練員が配備される制御室5などに設けられる放送機器501や通信機器502を介して対話音声を放送する。対話音声は、訓練シナリオの事象ステップごとに且つ訓練員が選択した連絡先ごとに放送される。なお、連絡先の情報は、通信データ取得部405や訓練シナリオ実行部406Fが取得する。
【0086】
プラント状態記憶部409Fは、シミュレーションデータ格納部302からシミュレーション結果たるプラント状態を継続的に取得する。なお、プラント状態は、選択された訓練シナリオに基づくシミュレーションの進行のほか、訓練の内容変更(指導員による訓練シナリオの変更)があった場合などに変化するものである。
【0087】
訓練履歴記憶部410Fは、対話音声再生部424Fで抽出された対話音声を受け取る。また、プラント状態記憶部409Fから刻々変化するプラント状態を受け取り、訓練シナリオ実行部406Fから実行後の訓練シナリオ及びその事象ステップの情報を取得する。そして、訓練履歴記憶部410Fは、取得した対話音声と、その対話音声が放送されたときのプラント状態や訓練シナリオの事象ステップとを対応付けて記憶する。更に、訓練履歴記憶部410Fは、通信データ取得部405から訓練員が選択した連絡先を特定するための情報を取得し記憶する。
【0088】
対話音声作成支援部425Fは、訓練シナリオの事象ステップやこれに基づくシミュレーションによるプラント状態を検索条件として受け付け、ユーザから検索条件を受け取ったとき、検索条件に合致する対話音声を訓練履歴記憶部410Fから抽出して随所の音声再生機器から出力する。即ち、対話作成支援部425Fは、過去の訓練にて放送された対話音声の中から、ユーザ所望の条件(プラント状態や訓練シナリオなど)に合致する対話音声抽出して、そのユーザに聞かせる。
【0089】
次に、効果を説明する。
【0090】
プラント運用訓練システム1Fあっては、第1実施形態の(1)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(7)プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、本来は指導員が自ら訓練員と交わすべき対話を訓練場面ごとに適切に自動放送させることで、訓練の質的向上を図りつつ指導員の負担を軽減できる。
【0091】
(8)また、訓練時に用いられた対話音声を訓練後に確認可能とすることで対話音声の新規記憶や既記憶の対話音声の修正の要否判断を容易なものとし、訓練の質的向上を図ることができる。
【0092】
(第8実施形態)
図8は本発明に係るプラント運用訓練システムの第8実施形態を示す図である。
【0093】
本実施形態は、第1実施形態のプラント運用訓練システム1における訓練支援部4の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「G」を付して説明する。
【0094】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Gは、図8に示すように、データ管理部426Gを備える。
【0095】
データ管理部426Gは、次の第一処理〜第四処理に基づいて、モデル対話の分類表示処理を実行する。
【0096】
(第一処理)
データ管理部426Gは、モデル対話記憶部403から記憶されているモデル対話を取得して記憶する。
【0097】
(第二処理)
データ管理部426Gは、モデル対話分類部404Gで訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに関連付けられたインデックスを援用し、このインデックスを第一処理で記憶したモデル対話に付加して記憶する。
【0098】
(第三処理)
データ管理部426Gは、訓練シナリオ実行部406からシミュレータ3へと送られた訓練シナリオの事象ステップに関連付けられたモデル対話のインデックスを受け取るとともに、そのインデックスを受け取った頻度を「モデル対話使用頻度」として算出する。モデル対話使用頻度の算出は、訓練シナリオ実行部406から受け取ったインデックス(インストラクタ・コンソール2のモニタに表示されることとなるモデル対話のインデックス)を収集して累計することにより行われる。
【0099】
(第四処理)
データ管理部426Gは、第三処理で算出したモデル対話使用頻度が高いものから優先して、第一処理で記憶されたモデル対話を並び替える。また、ユーザの要求を受けて、並び替えたモデル対話をモニタ画面に表示するなどしてユーザに提示する。
【0100】
次に、効果を説明する。
【0101】
プラント運用訓練システム1Gにあっては、第1実施形態の(1)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(9)プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、過去の訓練で使用されたモデル対話の中から使用頻度が高いものだけを選択して使用することを容易にすることで、訓練の質的低下を伴うことなく指導員の負担を軽減できる。
【0102】
(第9実施形態)
図9は本発明に係るプラント運用訓練システムの第9実施形態を示す図である。
【0103】
本実施形態は、第3実施形態のプラント運用訓練システム1Bにおける訓練支援部4Bの構成を変更した例である。なお、第3実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第3実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「H」を付して説明する。
【0104】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Hは、図9に示すように、データ管理部426Hを備える。
【0105】
データ管理部426Hは、次の第一処理〜第四処理に基づくシステムデータの分類表示処理を実行する。
【0106】
(第一処理)
データ管理部426Hは、システムデータ記憶部412Bから記憶済みのシステムデータを取得する。
【0107】
(第二処理)
データ管理部426Hは、システムデータ分類部413Hで訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに関連付けられたインデックスを援用し、このインデックスを第一処理で記憶したシステムデータに付加して記憶する。
【0108】
(第三処理)
データ管理部426Hは、訓練シナリオ実行部406Bからシミュレータ3へと送られた訓練シナリオの事象ステップに関連付けられたシステムデータのインデックスを受け取るとともに、そのインデックスを受け取った頻度を「システムデータ使用頻度」として算出する。システムデータ使用頻度の算出は、訓練シナリオ実行部406Bから受け取ったインデックス(インストラクタ・コンソール2のモニタに表示されることとなるシステムデータのインデックス)を収集して累計することにより行われる。
【0109】
(第四処理)
データ管理部426Hは、第三処理で算出したシステムデータ使用頻度が高いものから優先して、第一処理で記憶されたシステムデータを並び替える。また、ユーザの要求を受けて、並び替えたシステムデータをモニタ画面に表示するなどしてユーザに提示する。
【0110】
次に、効果を説明する。
【0111】
プラント運用訓練システム1Hあっては、第3実施形態の(3)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(10)プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、過去の訓練で使用されたシステム画面の中から使用頻度が高いものだけを選択して使用することを容易にすることで、訓練の質的低下を伴うことなく指導員の負担を軽減できる。
【0112】
(第10実施形態)
図10は本発明に係るプラント運用訓練システムの第10実施形態を示す図である。
【0113】
本実施形態は、第7実施形態のプラント運用訓練システム1Fにおける訓練支援部4Fの構成を変更した例である。なお、第7実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第7実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「I」を付して説明する。
【0114】
本実施形態のプラント運用訓練システム1Iは、図10に示すように、データ管理部426Iを備える。
【0115】
データ管理部426Iは、次の第一処理〜第四処理に基づく対話音声の分類表示処理を実行する。
【0116】
(第一処理)
データ管理部426Iは、対話音声記憶部422Fから記憶されている対話音声を取得する。
【0117】
(第二処理)
データ管理部426Iは、対話音声分類部423Iで訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに関連付けられたインデックスを援用し、このインデックスを第一処理で記憶した対話音声に付加して記憶する。
【0118】
(第三処理)
データ管理部426Iは、訓練シナリオ実行部406Fからシミュレータ3へと送られた訓練シナリオの事象ステップに関連付けられた対話音声のインデックスを受け取るとともに、そのインデックスを受け取った頻度を「対話音声使用頻度」として算出する。対話音声使用頻度の算出は、訓練シナリオ実行部406Fから訓練シナリオの事象ステップごとに対応付けられた対話のインデックス(インストラクタ・コンソール2のモニタに表示されることとなる対話音声のインデックス)を収集して累計することにより行われる。
【0119】
(第四処理)
データ管理部426Iは、第三処理で算出した対話音声使用頻度が高いものから優先して、第一処理で記憶された対話音声を並び替える。また、ユーザの要求を受けて、並び替えた対話音声をモニタ画面に文章化表示するなどしてユーザに提示する。
【0120】
次に、効果を説明する。
【0121】
プラント運用訓練システム1Iあっては、第7実施形態の(7)及び(8)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(11)プラント運用訓練の一環となるコミュニケーション訓練の実施に際し、過去の訓練で使用された対話音声の中から使用頻度が高いものだけを選択して使用することを容易にすることで、訓練の質的低下を伴うことなく、指導員の負担を軽減できる。
【0122】
以上、本発明に係るプラント運用訓練システムを第1実施形態〜第10実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
【0123】
例えば、プラント運用訓練システムの各実施形態は、原子力発電プラントに適用される例を示したが、火力発電プラントや化学プラントその他の通信設備を備えたプラントであれば如何なるプラントであっても適用でき、各実施形態の効果を得ることができる。
【0124】
また、第2実施形態では、モデル対話作成支援部411Aによって過去に使用されたモデル対話を画面表示させることでモデル作成を支援する例を示したが、このモデル作成の支援を自動化させてもよい。例えば、訓練履歴記憶部410Aに記憶されている対話の文字データを読み込み、事前に策定されたキーワード(プラント状態に関連するキーワード、プラント制御に関連するキーワードなど)が含まれているか否かによって有用な対話を選択する。そして、選択した対話がモデル対話記憶部403にモデル対話として記憶されているか否かを判断し、記憶されていないものであれば選択した対話を一応のモデル対話としてモデル対話記憶部403に新規に記憶し或いは修正する。
【0125】
また、第3実施形態では、モデル対話とともにシステム画面を表示する例を示したが、モデル対話は表示させずシステム画面のみを表示させるものでもよいし、モデル対話やシステム画面等とともに指導員を補助する他の様々な付帯情報を表示させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1(1A〜1I)……プラント運用訓練システム, 2……インストラクタ・コンソール, 3……シミュレータ, 301……シミュレーション実行部, 302……シミュレーションデータ格納部, 4(4A〜4I)……訓練支援部, 401……訓練シナリオ記憶部, 402……連絡先記憶部, 403……モデル対話記憶部, 404……モデル対話分類部, 405(405D)……通信データ取得部, 406(406B、406F)……訓練シナリオ実行部, 407……モデル対話提示部, 408A……音声−文字変換部, 409A(409C、409F)……プラント状態記憶部, 410A(410C、410F)……訓練履歴記憶部, 411A……モデル対話作成支援部, 412B……システムデータ記憶部, 413B……システムデータ分類部, 414B……システム画像提示部, 415C……システムデータ作成支援部, 416D……環境音記憶部, 417D……環境音再生部, 418E……模範訓練記憶部, 419E……訓練評価部, 420E……訓練評価結果記憶部, 421E……訓練評価結果提示部, 422F……対話音声記憶部, 423F……対話音声分類部, 424F……対話音声再生部, 425F……対話音声作成支援部, 426G(426H、426I)……データ管理部, 5……制御室, 501……放送機器, 502……通信機器, 503……制御盤, 504……計装盤.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント状態を仮想的に作り出すシミュレーションを実行して、プラント状態に応じて定められた連絡先を選択するとともにその連絡先と的確な対話を行うコミュニケーション訓練を可能とするプラント運用訓練システムにおいて、
前記連絡先を代役する指導員が連絡元の訓練員と交わす各種の対話をモデル対話として記憶しておき、コミュニケーション訓練の実施中に、シミュレーションによるプラント状態に応じて適切なモデル対話を特定して指導員に提示する訓練支援部を備えることを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、プラント機器に関わるトラブルの発生と連鎖を事象ステップとして定め、この事象ステップに従うプラント状態のシミュレーションを可能とする訓練シナリオを記憶する訓練シナリオ記憶部と、
前記訓練シナリオの事象ステップごとに定められた連絡先を記憶する連絡先記憶部と、
前記モデル対話をそのインデックスとともに記憶するモデル対話記憶部と、
前記訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに、モデル対話のインデックスを関連付けて記憶するモデル対話分類部と、
前記シミュレーションによるプラント状態の進展に基づいて、シミュレータに訓練シナリオの次の事象ステップを与えるタイミングを判断するとともに、モデル対話分類部に記憶されているモデル対話のインデックスの中から、訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられたモデル対話のインデックスを特定する訓練シナリオ実行部と、
前記訓練シナリオ実行部で特定されたモデル対話のインデックスを受け取り、受け取ったインデックスと同一のインデックスが付加されているモデル対話をモデル対話記憶部から抽出して指導員に提示するモデル対話提示部と、
を有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項3】
請求項2に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、訓練中に指導員と訓練員の間で交わされた対話の音声データを収集して文字データに変換する音声−文字変換部と、
前記シミュレーションによるプラント状態を継続的に取得して記憶するプラント状態記憶部と、
前記対話の文字データをその対話が行われたときのプラント状態や訓練シナリオの事象ステップと関連付けて記憶する訓練履歴記憶部と、
前記シミュレーションによるプラント状態や訓練シナリオの事象ステップを検索条件として受け取り、受け取った検索条件と合致する対話の文字データを訓練履歴記憶部から抽出し、抽出した文字データに基づく対話をユーザに提示するモデル対話作成支援部とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項4】
請求項2に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、プラントのシステムデータをそのインデックスとともに記憶するシステムデータ記憶部と、
前記訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに、システムデータのインデックスを関連付けて記憶するシステムデータ分類部と、
前記シミュレーションによるプラント状態の進展に基づいて、シミュレータに訓練シナリオの次の事象ステップを与えるタイミングを判断するとともに、システムデータ分類部に記憶されているモデル対話のインデックスの中から、訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられたシステムデータのインデックスを特定する訓練シナリオ実行部と、
前記訓練シナリオ実行部で特定されたシステムデータのインデックスを受け取り、受け取ったインデックスと同一のインデックスが付加されているシステムデータをシステムデータ記憶部から抽出して指導員に提示するシステム画像提示部とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項5】
請求項4に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、シミュレーションによるプラント状態を継続的に取得して記憶するプラント状態記憶部と、
前記指導員に提示されたシステムデータをその提示が行われたときのプラント状態や訓練シナリオの事象ステップと関連付けて記憶する訓練履歴記憶部と、
前記シミュレーションによるプラント状態や訓練シナリオの事象ステップを検索条件として受け取り、受け取った検索条件と合致するシステムデータを訓練履歴記憶部から取り出してユーザに提示するシステムデータ作成支援部とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項6】
請求項2に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、プラント状態に応じて定められた連絡先の環境音をそのインデックスとともに記憶する環境音記憶部と、
前記訓練員が選択した連絡先を識別してインデックスを付加する通信データ取得部と、
前記通信データ取得部から連絡先のインデックスを受け取り、受け取ったインデックスと同一のインデックスが付加されている環境音を環境音記憶部から抽出して訓練員に聞かせる環境音再生部とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項7】
請求項3に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練履歴記憶部に記憶されている対話の文字データの中から、ユーザが指定した対話の文字データを選択的に取り出して記憶する模範訓練記憶部と、
前記模範訓練記憶部に記憶されている対話の文字データと訓練履歴記憶部に記憶されている対話の文字データとの一致の程度を特定し、その一致の程度に基づいて訓練履歴記憶部に記憶されている対話に良否の判断指標を付加し、この良否の判断指標を付加した対話を評価済み対話とする訓練評価部と、
前記訓練評価部により生成された評価済み対話を記憶する訓練評価結果記憶部と、
前記訓練評価結果記憶部に記憶されている評価済み対話の中からユーザが指定した評価済み対話を抽出してユーザに提示する訓練評価結果提示部とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項8】
請求項7に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練評価部は、対話の文字データに加えて、対話のタイミングとその対話につき訓練員が選択した連絡先を用い、対話の文字データ、タイミング及び連絡先の一致の程度に基づいて訓練履歴記憶部に記憶されている対話に良否の判断指標を付加することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項9】
請求項2に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記モデル対話の対話音声をそのインデックスとともに記憶する対話音声記憶部と、
前記訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに、対話音声のインデックスを関連付けて記憶する対話音声分類部と、
前記シミュレーションによるプラント状態の進展に基づいて、シミュレータに訓練シナリオの次の事象ステップを与えるタイミングを判断するとともに、対話音声分類部に記憶されている対話音声のインデックスの中から、訓練シナリオの現在の事象ステップに関連付けられた対話音声のインデックスを特定する訓練シナリオ実行部と、
前記訓練シナリオ実行部で特定された対話音声のインデックスを受け取り、受け取ったインデックスと同一のインデックスが付加されている対話音声を対話音声記憶部から抽出し、訓練員が連絡先を選択して連絡を行ったことを条件に、抽出した対話音声を連絡元の訓練員に聞かせる対話音声再生部とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項10】
請求項9に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、シミュレーションによるプラント状態を継続的に取得して記憶するプラント状態記憶部と、
前記訓練員に聞かせた対話音声をその対話音声を聞かせたときのプラント状態と関連付けて記憶する訓練履歴記憶部と、
前記シミュレーションによるプラント状態や訓練シナリオの事象ステップを検索条件として受け取り、受け取った検索条件と合致する対話音声を訓練履歴記憶部から取り出して再生する対話音声作成支援部とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項11】
請求項2に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、使用の頻度、又は、訓練用シナリオの事象ステップに基づいて、モデル対話記憶部に記憶されているモデル対話の分類表示処理を実行するデータ管理部を有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項12】
請求項11に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記データ管理部にて実行されるモデル対話の分類表示処理は、
前記モデル対話記憶部に記憶されているモデル対話を取得して記憶する第一処理と、
前記第一処理で記憶されたモデル対話に対し、モデル対話分類部で訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに関連付けられたインデックスを付加する第二処理と、
前記訓練シナリオ実行部からシミュレータへと送られた訓練シナリオの事象ステップに関連付けられたモデル対話のインデックスを受け取るとともに、そのインデックスを受け取った頻度をモデル対話使用頻度として算出する第三処理と、
前記第三処理で算出されたモデル対話使用頻度が高いものから優先して、第一処理で記憶されたモデル対話を並び替えてユーザに提示する第四処理とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項13】
請求項4に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、使用の頻度、又は、訓練用シナリオの事象ステップに基づいて、システムデータ記憶部に記憶されているシステムデータの分類表示処理を実行するデータ管理部を有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項14】
請求項13に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記データ管理部にて実行されるシステムデータの分類表示処理は、
前記システムデータ記憶部に記憶されているシステムデータを取得して記憶する第一処理と、
前記第一処理で記憶されたシステムデータに対し、システムデータ分類部で訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに関連付けられたインデックスを付加する第二処理と、
前記訓練シナリオ実行部からシミュレータへと送られた訓練シナリオの事象ステップに関連付けられたシステムデータのインデックスを受け取るとともに、そのインデックスを受け取った頻度をシステムデータ使用頻度として算出する第三処理と、
前記第三処理で算出されたシステムデータ使用頻度が高いものから優先して、第一処理で記憶されたシステムデータを並び替えて提示する第四処理とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項15】
請求項9に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記訓練支援部は、使用の頻度、又は、訓練用シナリオの事象ステップに基づいて、対話音声記憶部に記憶されている対話音声の分類表示処理を実行するデータ管理部を有することを特徴とするプラント運用訓練システム。
【請求項16】
請求項15に記載のプラント運用訓練システムにおいて、
前記データ管理部にて実行される対話音声の分類表示処理は、
前記対話音声記憶部に記憶されている対話音声を取得して記憶する第一処理と、
前記第一処理で記憶された対話音声に対し、対話音声分類部で訓練シナリオの事象ステップと連絡先の組み合わせごとに関連付けられたインデックスを付加する第二処理と、
前記訓練シナリオ実行部からシミュレータへと送られた訓練シナリオの事象ステップに関連付けられた対話音声のインデックスを受け取るとともに、そのインデックスを受け取った頻度を対話音声使用頻度として算出する第三処理と、
前記第三処理で算出された対話音声使用頻度が高いものから優先して、第一処理で記憶された対話音声を並び替えて提示する第四処理とを有することを特徴とするプラント運用訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−81108(P2011−81108A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232206(P2009−232206)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】