説明

プリプレグテープの切断方法及びスリッタ装置

【課題】所望の規格幅を有するプリプレグテープを得る上で、プリプレグテープの無駄な消費を可及的に低減する。
【解決手段】切断手段3は、第1規格幅を有するプリプレグテープTの一端を基準端として、その基準端から幅方向の他端側に向かって、所望の第2規格幅に相当する位置毎に、プリプレグテープTをその長尺方向に切断することによって、プリプレグテープTをその幅方向の前記基準端側から他端側に向かって順に、第2規格幅を有する2個のプリプレグテープT1と、端材T2とに切り分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば繊維強化複合材料の製造に用いるプリプレグテープの切断方法及びその切断方法によってプリプレグテープを切断するためのスリッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ樹脂等の合成樹脂(以下、マトリックスともいう)を炭素繊維等の高強度繊維(以下、強化繊維ともいう)によって強化した繊維強化複合材料は、種々の用途に用いられており、一例として航空機の機体を挙げることができる。
【0003】
こうした繊維強化複合材料を製造する方法の1つとして、その繊維方向を同一方向にそろえた強化繊維にマトリックスを予め含浸した長尺シート状のプリプレグテープを用いる方法がある。
【0004】
具体的に、プリプレグテープを用いて、平板状の繊維強化複合材料を製造する方法は、例えば特許文献1に開示されているようなテープ積層装置(ヘッド)を用いて、プリプレグテープをその幅方向に並べて配置して層を構成すると共に、その繊維方向が異なるように(例えば縦方向(0°方向)、縦方向に直交する横方向(90°方向)、縦方向と横方向との間の斜め方向(±45°方向)の4方向になるように)積層した後に、マトリックスを硬化させることにより、平板状の繊維強化複合材料を製造することができる。
【0005】
ところで、前述したテープ積層装置を用いてプリプレグテープを積層する際には、当該テープ積層装置は予め設定されたプログラムに従って、前記複数層のうちの同一層においてテープの幅方向に移動をしながらプリプレグテープを並べて配置することになるが、このときに隣り合うプリプレグテープが重ならないように且つ、プリプレグテープの間隔が予め規定された間隔になるように配置する必要がある。そのため、こうしたテープ積層装置用に提供されるプリプレグテープの幅は、規格幅として予め設定されており、この規格幅は、設定されている所定の基準幅に対し、予め規定されている寸法公差を含んだ幅に設定される。具体的には、規格幅を有するプリプレグテープの幅は、例えば基準幅を2.97インチ(7.5438cm)、寸法公差を±0.02インチ(0.0508cm)、とした2.97±0.02インチ(公称値3インチ)や、基準幅を5.97インチ(15.1638cm)、寸法公差を±0.02インチ、とした5.97インチ±0.02インチ(公称値6インチ)に設定される。こうしてプリプレグテープの幅が所定の寸法公差を含む規格幅に設定されているため、その規格幅に基づいてテープ積層装置はテープ幅方向の移動量を設定することが可能になる。
【0006】
この所定の規格幅を有するプリプレグテープは、その規格幅よりも幅広のプリプレグテープを用意し、その幅広のプリプレグテープを、例えば特許文献2に開示されたスリッタ装置を用いて、所定幅に切り出すことによって得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−232375号公報
【特許文献2】特開2006−218561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したようなスリッタ装置は、十分に幅広のプリプレグテープの幅方向の中央部分から所定の規格幅を有するプリプレグテープを切り出し、その切り出し後に残る両端部は比較的幅が広くても端材として棄ててしまうため、プリプレグテープを無駄に消費することになる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所望の規格幅を有するプリプレグテープを得る上で、プリプレグテープの無駄な消費を可及的に低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、前述した規格幅が、公称値3インチ、6インチ、12インチというように整数倍に設定されていることから、所定の規格幅を有するプリプレグテープを、2等分や3等分といったように、均等分割となるように切断することによって、所望の規格幅を有する複数のプリプレグテープを取得することを検討した。
例えば、公称値3インチ幅のプリプレグテープが必要であるときには、公称値6インチ幅のプリプレグテープを、その幅方向の中央位置で長尺方向に切断することになる。こうすることで、公称値6インチ幅のプリプレグテープから、公称値3インチ幅のプリプレグテープが2個切り出されることが見込まれる。
【0011】
しかしながらこうした均等分割は、次のような問題を含んでいることが判明した。すなわち、公称値6インチ幅のプリプレグテープの幅が、仮に5.98インチのときには、その公称値6インチ幅のプリプレグテープを、その幅方向の中央位置で長尺方向に切断すると、2.99インチの幅を有する公称値3インチ幅のプリプレグテープが2個切り出される。これは、公称値3インチ幅のプリプレグテープにおいて許容される寸法公差に含まれる。しかしながら、公称値6インチ幅のプリプレグテープの幅が、仮に5.99インチのときには、公称値3インチ幅のプリプレグテープの幅(2.95インチ〜2.99インチ)よりも幅が広い2.995インチ幅を有する2個のプリプレグテープが切り出されることになる。従って、規格幅を有するプリプレグテープを均等分割するように切断するだけでは、所望の規格幅を有するプリプレグテープを取得することはできない。
【0012】
そこで、本発明は、所定の規格幅を有するプリプレグテープを、その幅方向の一端を基準端として、その基準端から幅方向の他端側に向かって、所望の規格幅に相当する位置毎に長尺方向に切断することによって、所望の規格幅を有する複数のプリプレグテープを切り出すようにした。
【0013】
具体的には、第1の発明では、第1規格幅(公称値L1)を有する長尺のプリプレグテープにおける幅方向の複数箇所を長尺方向に切断することにより、第2規格幅(公称値L2、但しL1はL2のN倍(Nは2以上の自然数)を有するN個のプリプレグテープとなるように分割するプリプレグテープの切断方法を対象とする。そして、前記第1規格幅のプリプレグテープは、当該第1規格幅として設定されている第1基準幅に対し、予め規定されている寸法公差を含んだ幅を有しており、前記第1規格幅のプリプレグテープにおける幅方向の一端を基準端として、その基準端から幅方向の他端側に向かって、前記第2規格幅に相当する位置毎に、前記第1規格幅のプリプレグテープを前記長尺方向に切断することによって、前記第2規格幅のN個のプリプレグテープを切り出す工程と、前記N個のプリプレグテープを切り出すことによって前記第1規格幅のプリプレグテープにおける前記幅方向の他端側に残る端材を除去する工程と、を備え、前記切り出し工程は、前記切断位置を、前記第2規格幅として設定されている第2基準幅に対し、前記規定されている寸法公差を含んだ実際幅に相当する位置に設定している。
【0014】
このプリプレグテープの切断方法によると、第1基準幅に対し寸法公差を含んだ、第1規格幅(公称値L1)を有するプリプレグテープは、第2基準幅に対し寸法公差を含んだ、第2規格幅(公称値L2)のN倍の幅を有しているため、このプリプレグテープから、第2規格幅を有するN個のプリプレグテープを切り出すことが可能である。その切り出しに際し、この切断方法では、第1規格幅のプリプレグテープの幅方向の一端を基準端に設定し、その基準端から他端側に向かって順に、第2基準幅に対し寸法公差を含んだ、第2規格幅を有するN個のプリプレグテープと、1個の端材とに切り分ける。このように、第1規格幅のプリプレグテープを均等分割するのではなく、その基準端から順に、第2規格幅(第2基準幅に対し寸法公差を含んだ幅)のプリプレグテープを切り出すため、第1規格幅のプリプレグテープを均等分割した場合には寸法公差が許容範囲を超えることが生じ得るのに対し、そうしたことは起こり得ず、第2規格幅のプリプレグテープが確実に得られる。
【0015】
また、第1規格幅(公称値L1)は第2規格幅(公称値L2)のN倍であり、第1規格幅のプリプレグテープをN個に分割することと実質的に同じであることから、第1規格幅を有するプリプレグテープから第2規格幅を有するN個のプリプレグテープを切り出した残りの端材の幅は、比較的狭くなる。そのため、従来の、十分に幅広のプリプレグテープの幅方向中央部から所望の規格幅を有するプリプレグテープを切り出す場合に比して、端材の量が少なくなる。従って、プリプレグテープの無駄な消費を可及的に低減することができる。
【0016】
また、従来の幅広のプリプレグテープを切断する方法とは異なり、プリプレグテープの両端部から端材が除去される訳ではなく、プリプレグテープの一方の端部のみに端材が生じるので、端材の数が半分になる。これにより、端材の管理設備を小さくすることができると共に、端材の検査手間を低減することができる。
【0017】
第2の発明では、第1規格幅(公称値L1)を有する長尺のプリプレグテープにおける幅方向の複数箇所を長尺方向に切断することにより、第2規格幅(公称値L2、但しL1はL2のN倍(Nは2以上の自然数))を有するN個のプリプレグテープとなるように分割するプリプレグテープのスリッタ装置を対象とする。そして、ロール状に巻かれたテープロールから前記第1規格幅のプリプレグテープを巻き出す巻き出し手段と、前記巻き出し手段から巻き出されたプリプレグテープにおける幅方向の一端が所定の基準位置となるように、前記プリプレグテープを、その幅方向に位置調整しながら搬送する位置決め手段と、前記プリプレグテープの搬送経路上に配設されたN個のカッターを有し且つ、各カッターにより前記位置決め手段によって位置調整されたプリプレグテープにおける幅方向の所定位置をそれぞれ長尺方向に切断する切断手段と、前記切断手段によって切断されることにより、それぞれ前記第2規格幅となったN個のプリプレグテープを、個別にロール状に巻き取ってテープロールにする巻き取り手段と、を備え、前記第1規格幅のプリプレグテープは、当該第1規格幅として設定されている第1基準幅に対し、予め規定されている寸法公差を含んだ幅を有しており、前記切断手段のN個のカッターの内、前記プリプレグテープの一端に最も近い位置に配置されたカッターは、前記基準位置に対して前記幅方向の他端側に、前記第2規格幅として設定されている第2基準幅に対し、前記規定されている寸法公差を含んだ実際幅だけ離れた位置に配置されていると共に、前記N個のカッターは互いに、前記実際幅に対応する間隔を空けて配置されており、前記切断手段は、前記第1規格幅のプリプレグテープを、その幅方向の一端側から他端側に向かって順に、前記第2規格幅のN個のプリプレグテープと、端材とに切り分ける。
【0018】
このスリッタ装置によると、巻き出し手段によって巻き出されたプリプレグテープ(第1規格幅のプリプレグテープ)は、その搬送経路上のN個のカッターそれぞれによって、幅方向の所定位置が長手方向に切断される。このことにより、第1規格幅のプリプレグテープは、N個のプリプレグテープと、端材とに分割される。ここで、前記巻き出し手段によって巻き出された第1規格幅のプリプレグテープは、カッターによって切断される前に、位置決め手段によって、幅方向の一端が所定の基準位置となるように位置調整される一方で、N個のカッターのうち、第1規格幅のプリプレグテープの一端に最も近い位置に配置されたカッターは、前記基準位置に対して前記幅方向の他端側に、前記第2規格幅として設定されている第2基準幅に対し、規定されている寸法公差を含んだ実際幅だけ離れた位置に配置されている。従って、当該カッターによって切断されることにより、第1規格幅のプリプレグテープの一端側から、第2規格幅のプリプレグテープが切り出されることになる。また、N個のカッターは互いに、前記実際幅に対応する間隔を空けて配置されていることから、隣り合う一対のカッターそれぞれによって、前記第2規格幅のプリプレグテープが切り出されるようになる。そうして、前記第1の発明と同様に、第1基準幅に対し寸法公差を含んだ第1規格幅(公称値L1)を有するプリプレグテープが、その幅方向の一端から他端側に向かって順に、第2基準幅に対し寸法公差を含んだ第2規格幅(公称値L2)を有するN個のプリプレグテープと、1個の端材とに切り分けられるため、前記第1の発明と同様に、プリプレグテープの無駄な消費を可及的に低減することができると共に、端材の管理設備を小さくすることができ且つ、端材の検査手間を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のプリプレグテープの切断方法及びスリット装置では、所定の規格幅を有するプリプレグテープを、その幅方向の一端を基準端として、その基準端から幅方向の他端側に向かって、所望の規格幅に相当する位置毎に長尺方向に切断することにより、所望の規格幅を有する複数個のプリプレグテープと、比較的幅の狭い1個の端材とに切り分けることで、プリプレグテープの無駄な消費を可及的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るスリッタ装置の概略構成図である。
【図2】プリプレグテープとカッターとの位置関係を説明する図である。
【図3】プリプレグテープの切断態様を説明する図である。
【図4】相対的に幅の広いプリプレグテープを用いた場合と相対的に幅の狭いプリプレグテープを用いた場合とにおける、除去部分の大きさの違いを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0022】
本発明の実施形態に係るスリッタ装置1は、第1規格幅(公称値L1)を有する長尺のプリプレグテープTにおける幅方向の複数箇所を長尺方向に切断することにより、第2規格幅(公称値L2、但しL1はL2のN倍(Nは2以上の自然数))を有するN個のプリプレグテープT1と、不要な端材T2とに切り分けるものである。
【0023】
本実施形態では、一例として、第1規格幅のプリプレグテープとして市販されている、第1基準幅を5.97インチ(15.1638cm)、寸法公差を±0.02インチ(0.0508cm)とした5.97±0.02インチ(公称値6インチ)の第1規格幅を有するプリプレグテープTから、第2規格幅のプリプレグテープとして市販されているプリプレグテープと同様の、第2基準幅を2.97インチ(7.5438cm)、寸法公差を±0.02インチとした2.97±0.02インチ(公称値3インチ)の第2規格幅を有する2個のプリプレグテープT1と、端材T2とに切り分けるように構成されている。
【0024】
プリプレグテープTは、強化繊維にマトリックスを含浸すると共に、繊維方向を同一方向にそろえた長尺シート状のテープ材であり、本実施形態では、強化繊維として炭素繊維を、マトリックスとしてエポキシ樹脂をそれぞれ採用している。このようなプリプレグテープT,T1は、図示は省略するが、ロール状に巻かれたテープロールの状態で、テープ積層装置にセットされ、そのテープ積層装置によって幅方向に並んで配置されて層を構成すると共に、繊維方向が異なるように積層されることによって、例えば平板状の繊維強化複合材料を製造することに用いられる。
【0025】
スリッタ装置1は、図1に示すように、ロール状に巻かれたテープロールから第1規格幅のプリプレグテープTを巻き出す、巻き出し手段としての巻き出しロール2と、該巻き出しロール2から巻き出された第1規格幅のプリプレグテープTにおける幅方向の所定位置をそれぞれ長尺方向に切断する切断手段3と、該切断手段3によってプリプレグテープTが切断されることにより、所望の第2規格幅となった2個のプリプレグテープT1を、個別にロール状に巻き取ってテープロールにする、巻き取り手段としての2個の巻き取りロール4と、を備えている。
【0026】
そうして、スリッタ装置1には、相対的に上側に切断手段3が配設されている一方、相対的に下側に巻き出しロール2及び2個の巻き取りロール4が、各ロールの軸心が同じ高さ位置になるように並んで配設されている。
【0027】
巻き出しロール2は、水平方向に延びる軸回りに回転可能に構成されていて、前述したように、ロール状に巻かれたプリプレグテープTがセットされている。そうして、後述する切断手段3の駆動ローラ31の回転駆動によって巻き出しロール2が従動回転することによって、プリプレグテープTが切断手段3に向かって巻き出される。
【0028】
巻き出しロール2と切断手段3との間のプリプレグテープTの搬送経路上には、搬送経路の上流側から下流側に向かって順に、位置決め手段としてのガイドローラ5と、平坦面を有する概略平板状のスライド6と、が配設されている。
【0029】
ガイドローラ5は、水平方向に延びる軸回りに回転可能に設けられたローラ部と、該ローラ部の両端部に対して接合されたフランジ部と、を有している。
【0030】
またガイドローラ5は、巻き出しロール2から巻き出されたプリプレグテープTを、そのフランジ部によって、幅方向に所定の位置となるように位置調整しながら搬送するローラであり、これによって、第1規格幅のプリプレグテープTは、図2に示すように、切断手段3の搬送方向上流側において、その幅方向の一端が所定の基準位置となるように位置決めされることになる。
【0031】
スライド6は、プリプレグテープTの裏面に当接することによって、スライド6と切断手段3との間でプリプレグテープTが波打ったり、振動したりして、撓むことを防止する部材である。尚、プリプレグテープTが撓まないのであれば、このスライド6は配設しなくともよい。
【0032】
切断手段3は、駆動ローラ31と、押さえローラ32と、カッター33と、を有しており、プリプレグテープTを挟んで、相対的に下側に駆動ローラ31が、相対的に上側に押さえローラ32及びカッター33が、それぞれ配設されている。そうして、プリプレグテープTの搬送経路の上流側から下流側に向かって順に、押さえローラ32とカッター33とが配設されている。
【0033】
駆動ローラ31は、水平方向に延びる軸回りに回転可能に構成されたローラであり、図示省略のモータによって、所定の方向(図1における時計回り方向)に回転駆動される。
【0034】
押さえローラ32は、駆動ローラ31に対して押し付けられることによって、この駆動ローラ31との間でプリプレグテープTを挟持するローラである。
【0035】
駆動ローラ31及び押さえローラ32からなるローラ対は、駆動ローラ31が回転駆動することによって、前述したように、巻き出しロール2からプリプレグテープTを巻き出すと共に、そのプリプレグテープTをカッター33の位置まで搬送する。
【0036】
カッター33は、図2に示すように、ガイドローラ5によって前記基準位置になるように幅方向の位置が調整されたプリプレグテープTの一端(図2においては、左側の端)を基準端として、その基準端から幅方向の他端側(つまり、図2の右側)に第2規格幅に相当する実際幅(つまり、2.97±0.02インチ)だけ離れた位置に1個、その位置からさらに前記第2規格幅に相当する実際幅だけ離れた位置に1個、の合計2個、配設されている。
【0037】
各カッター33は、円盤状で回転可能な丸刃と、当該丸刃を支持する支持部とを有している。支持部は、図示は省略するが、エア供給源から供給されたエアにより、各カッター33の丸刃をプリプレグテープTに押しつけるように構成されている。切断手段3は、各カッター33によって、第1規格幅のプリプレグテープTを、その前記基準端から幅方向の他端側に向かって、第2規格幅毎に長尺方向に切断することになり、その結果、第1規格幅のプリプレグテープTは、図3に示すように、幅方向の前記基準端側から他端側に向かって順に、第2規格幅を有する2個のプリプレグテープT1と、1個の端材T2とに切り分けられる。このように、このスリッタ装置1では、第1規格幅を有するプリプレグテープTを2つに分割するのではなく、第1規格幅を有するプリプレグテープTの幅方向の一端を基準端として、その基準端から幅方向の他端側に向かって、第2規格幅(つまり、第2基準幅に寸法公差を含んだ実際幅)に相当する位置毎に、第1規格幅のプリプレグテープTを長尺方向に切断することによって、第2規格幅の2個のプリプレグテープを切り出している。このため、切り出したプリプレグテープT1の寸法公差が許容範囲を超えることは生じ得ない。
【0038】
ここで、プリプレグテープTの公称値L1(6インチ)は、プリプレグテープT1の公称値L2(3インチ)の2倍であるので、プリプレグテープTの幅と2個のプリプレグテープT1の合計幅とは略等しい。従って、プリプレグテープTから2個のプリプレグテープT1を切り出した残りの端材T2の幅は、比較的狭くなる。より詳しくは、第1規格幅に相当する実際幅を公称値L1−α、第2規格幅に相当する実際幅を公称値L2−α、第2規格幅を有するプリプレグテープT1の切り出し個数をN個、端材T2の幅をWとすると、下記(1)式が成立する。
【0039】
(L1−α)=N(L2−α)+W ・・・(1)
ここで、L1=N×L2であるから、(1)式は下記(2)式に変形することができる。
【0040】
(L1−α)=L1−Nα+W ・・・(2)
従って、端材T2の幅Wは、下記(3)式で表すことができる。
【0041】
W=(N−1)α ・・・(3)
つまり、端材T2の幅は、プリプレグテープTの公称値L1と第1規格幅に相当する実際幅との差(又は、プリプレグテープT1の公称値L2と第2規格幅に相当する実際幅との差)αに対して、プリプレグテープT1の切り出し個数Nから1を引いた数を掛け合わした値に相当する幅を有することになる。例えば、第1規格幅を有するプリプレグテープTの幅を5.97インチ、第2規格幅を有するプリプレグテープT1の幅を2.97インチとすると、αが0.03、Nが2であるので、端材T2の幅Wは、0.03インチ(0.0762cm)となる。
【0042】
また、プリプレグテープTの公称値L1と第1規格幅に相当する実際幅との差と、プリプレグテープT2の公称値L2と第2規格幅に相当する実際幅との差と、が異なるときであっても、各公称値と各プリプレグテープの実際幅との差は一般的に大きく設定されていないので、端材T2の幅は、概ね、公称値L1と第1規格幅に相当する実際幅との差(又は公称値L2と第2規格幅に相当する実際幅との差)に対して、プリプレグテープT1の切り出し個数Nから1を引いた数を掛け合わした値となる。従って、端材T2の幅は、比較的狭くなる。
【0043】
カッター33によってプリプレグテープTが切断されることにより切り出された2個のプリプレグテープT1は、駆動ローラ31によって、各プリプレグテープT1に対応する巻き取りロール4に向かって搬送される。この各プリプレグテープT1の搬送経路上には、それぞれ前記ガイドローラ5が配設されている。各プリプレグテープT1は、前記と同様に、各ガイドローラ5によって、その幅方向の位置が調整されながら、各巻き取りロール4に向かって搬送される。
【0044】
一方、端材T2は、図示省略のホースによって、吸引除去される。
【0045】
各巻き取りロール4は、水平方向に延びる軸回りに回転可能に構成されたローラであり、図示省略のモータによって、所定の方向(図1における時計回り方向)に回転駆動される。それによって、各巻き取りロール4は、対応するプリプレグテープT1をロール状に巻き取ってテープロールにする。
【0046】
尚、巻き出しロール2及び各巻き取りロール4の径は、プリプレグテープTの巻き出し又は各プリプレグテープT1の巻き取りに伴って変化する。これにより、プリプレグテープTや各プリプレグテープT1の張力が変化して、スリッタ装置1の安定した動作が妨げられる虞がある。そこで、スリッタ装置1の底部に、各ロールの外径を測定するための超音波センサ7を各ロールに対して1個ずつ設置し、その超音波センサ7による測定値に基づいて各ローラのトルクを調整して、プリプレグテープTやプリプレグテープT1の張力が一定になるようにしている。こうすることによって、第1規格幅のプリプレグテープTの切断を精度良く行い得ると共に、第2規格幅のプリプレグテープT1を、所定の巻き取り張力で安定してロール状に巻き取ることが可能になる。このことは特に、切断後の第2規格幅のプリプレグテープT1を、テープ積層装置によって積層する際に、プリプレグテープT1を安定して巻き出して、積層することが可能になる点で、有効である。
【0047】
このようにして、スリッタ装置1によって得られる相対的に幅の狭い第2規格幅を有するプリプレグテープT1は、相対的に幅の広い第1規格幅を有するプリプレグテープTよりも繊維強化複合材料を製造するときに有利になる場合がある。例えば、図4に示すように、テーパ状の繊維強化複合材料を製造する場合には、その斜めの縁に対して角度を有するようにテープを貼り付けるときに、相対的に幅の狭い第2規格幅を有するプリプレグテープT1を貼り付けたときの不要な部分(図4におけるプリプレグテープT1の斜線部分)が、相対的に幅の広い第1規格幅を有するプリプレグテープTを貼り付けたときの不要な部分(図4におけるプリプレグテープTの斜線部分)よりも少なくなるので、プリプレグテープの無駄な消費を低減することができる。
【0048】
また、従来の、幅広のプリプレグテープの幅方向の中央部分を切り出して所望の規格幅を有するプリプレグテープを得るスリッタ装置であれば、プリプレグテープに比較的幅の広い端材が残るところ、本実施形態のスリッタ装置1を用いると、プリプレグテープに比較的幅の狭い端材が残るだけであるので、プリプレグテープの無駄な消費を低減することができる。
【0049】
さらに、本実施形態のスリッタ装置1は、従来のスリッタ装置とは異なり、プリプレグテープの両端部から端材が除去される訳ではなく、プリプレグテープの一方の端部からのみ端材が除去されるので、除去される端材の数が半分になる。これにより、端材の管理設備を小さくすることができると共に、端材の検査手間を低減することができる。
【0050】
尚、第1規格幅を有するプリプレグテープTから第2規格幅を有するプリプレグテープT1を切り出す個数Nは、適宜変更してもよく、その場合には、切断手段3のカッタ33の個数や設置位置、及び巻き取りロール4の個数等を適宜変更すればよい。
【0051】
また、本実施形態では、位置決め手段として、ガイドローラ5を採用したが、センサによってプリプレグテープT又はプリプレグテープT1の幅方向の位置、例えばプリプレグテープTの基準端となる端縁を検知し、その端縁が所定の幅方向の位置となるように、巻き出しロール2又は巻き取りロール4の回転軸を傾けることによって、各プリプレグテープの幅方向の位置を調整してもよい。こうすることで、各プリプレグテープがガイドローラ5のフランジ部に接触することによって、その端部が損傷してしまうことを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば航空機、船舶、車両をはじめとする各種輸送機器の構造体や風力発電翼等の低慣性構造体に用いられる複合材料を製造するためのプリプレグテープを所望の規格幅に切り出すときに、プリプレグテープの無駄な消費を可及的に低減することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 スリッタ装置
2 巻き出しロール(巻き出し手段)
3 切断手段
31 駆動ローラ
32 押さえローラ
33 カッター
4 巻き取りロール(巻き取り手段)
5 ガイドローラ(位置決め手段)
L1 第1規格幅の公称値
L2 第2規格幅の公称値
N 第2規格幅を有するプリプレグテープの切り出し個数
T (第1規格幅を有する)プリプレグテープ
T1 (第2規格幅を有する)プリプレグテープ
T2 端材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1規格幅(公称値L1)を有する長尺のプリプレグテープにおける幅方向の複数箇所を長尺方向に切断することにより、第2規格幅(公称値L2、但しL1はL2のN倍(Nは2以上の自然数)を有するN個のプリプレグテープとなるように分割するプリプレグテープの切断方法であって、
前記第1規格幅のプリプレグテープは、当該第1規格幅として設定されている第1基準幅に対し、予め規定されている寸法公差を含んだ幅を有しており、
前記第1規格幅のプリプレグテープにおける幅方向の一端を基準端として、その基準端から幅方向の他端側に向かって、前記第2規格幅に相当する位置毎に、前記第1規格幅のプリプレグテープを前記長尺方向に切断することによって、前記第2規格幅のN個のプリプレグテープを切り出す工程と、
前記N個のプリプレグテープを切り出すことによって前記第1規格幅のプリプレグテープにおける前記幅方向の他端側に残る端材を除去する工程と、を備え、
前記切り出し工程は、前記切断位置を、前記第2規格幅として設定されている第2基準幅に対し、前記規定されている寸法公差を含んだ実際幅に相当する位置に設定しているプリプレグテープの切断方法。
【請求項2】
第1規格幅(公称値L1)を有する長尺のプリプレグテープにおける幅方向の複数箇所を長尺方向に切断することにより、第2規格幅(公称値L2、但しL1はL2のN倍(Nは2以上の自然数))を有するN個のプリプレグテープとなるように分割するプリプレグテープのスリッタ装置であって、
ロール状に巻かれたテープロールから前記第1規格幅のプリプレグテープを巻き出す巻き出し手段と、
前記巻き出し手段から巻き出されたプリプレグテープにおける幅方向の一端が所定の基準位置となるように、前記プリプレグテープを、その幅方向に位置調整しながら搬送する位置決め手段と、
前記プリプレグテープの搬送経路上に配設されたN個のカッターを有し且つ、各カッターにより前記位置決め手段によって位置調整されたプリプレグテープにおける幅方向の所定位置をそれぞれ長尺方向に切断する切断手段と、
前記切断手段によって切断されることにより、それぞれ前記第2規格幅となったN個のプリプレグテープを、個別にロール状に巻き取ってテープロールにする巻き取り手段と、を備え、
前記第1規格幅のプリプレグテープは、当該第1規格幅として設定されている第1基準幅に対し、予め規定されている寸法公差を含んだ幅を有しており、
前記切断手段のN個のカッターの内、前記プリプレグテープの一端に最も近い位置に配置されたカッターは、前記基準位置に対して前記幅方向の他端側に、前記第2規格幅として設定されている第2基準幅に対し、前記規定されている寸法公差を含んだ実際幅だけ離れた位置に配置されていると共に、前記N個のカッターは互いに、前記実際幅に対応する間隔を空けて配置されており、
前記切断手段は、前記第1規格幅のプリプレグテープを、その幅方向の一端側から他端側に向かって順に、前記第2規格幅のN個のプリプレグテープと、端材とに切り分けることを特徴とするスリッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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