説明

プリンタの制御方法

【目的】 工場出荷時におけるプリンタの調整確認作業の工数低減を図る。
【構成】 先ず、左右方向の印字位置ずれを調整するためのメカ調整用の印字処理を伴うメカ調整機能が起動されているか否かを判定し(S5)、起動されている場合は第1のメモリに格納された初期のコントロールメニュー設定内容を読み込む(S7)。次に、読み込んだ内容が第2のメモリに格納された規定のコンロールメニュー設定内容と同一であるか否かを判定し(S8)、その判定結果をメカ調整用の印字処理の際に印字出力する(S9〜S11)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、左右方向の印字位置ずれを調整するための印字を伴うメカ調整機能を有するプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のプリンタにおいては、機構部の組み立て誤差や部品製造上のバラツキに起因した左右方向の印字位置ずれを適正に調整する目的で、出荷時の調整作業を補助する機能を有するものがある。図4は左右の印字位置ずれの調整を補助する機能を使用したときの印字結果の一例である。作業者が予め定められた方法でこの機能を起動すると、プリンタの印字機構部は、まず第1行目を右向きの方向で印字し、次いで第2行目をそれと反対の左向きの方向で印字する。このとき使用される文字記号の種類に関しては、図例のごとく第1行と第2行の印字結果の印字位置ずれが容易に認められるような文字記号(例えば縦罫線等)が自動的に選択される。
【0003】作業者が印字結果を見て、もし第1行と第2行の印字結果において左右方向の印字位置ずれが調整仕様値(許容値)よりも大きいと認めた場合は、予め定められた方法によって、直前に印字した第2行の相対的な印字位置を左右方向に対して1単位(ピッチ)だけずらし、再度、印字方向を左右反転させて第3行と第4行の印字を行う。それでも、未だ作業者が調整仕様値よりも実際の印字位置ずれが大きいと認めた場合は、左右方向の印字位置ずれが調整仕様値よりも小さいと認められるようになるまで上記同様の作業を繰り返す。こうして左右方向の印字位置ずれが調整仕様値よりも小さくなった時点で、作業者は予め定められた方法により、その位置が適正である旨の調整値をプリンタのメモリに記憶させる。以降、プリンタはメモリに記憶された印字位置ずれの調整値を基に動作することになるため、実際の印字動作では左右方向の印字位置ずれの小さい、印字品位に優れた印字処理を行うことができる。
【0004】こうした左右方向の印字位置ずれは、先に述べた機構部の組み立て誤差や部品製造上のバラツキが原因となって起こるものであるため、それを補正にするための調整作業は個々のプリンタ毎に行う必要がある。以後、この種の調整(補正)については、説明の便宜上、「メカ調整」と呼ぶことにする。
【0005】また、従来のプリンタにおいては、コントロールメニュー設定内容として各メニュー項目とそれぞれの設定値を記憶するためのメモリ(一般的にはEEPROM)を内蔵したものがある。図5は、工場出荷時におけるコントロールメニュー設定表を示しており、これはプリンタが記憶しているメニュー設定内容を印字する機能を使用したときの印字結果の一例である。
【0006】作業者が予め定められた方法でこの機能を起動すると、プリンタは、第1行に「メニュープリント」と印字し、その後、メモリに記憶している各メニュー項目Mとそれぞれの設定値mを一行ずつ印字する。作業者はこの印字結果と工場出荷時のメニュー設定内容(メニュー項目Mおよび設定値m)が同一であるか否かを確認する。もし、何れかの項目Mに異なる設定値mが設定されている場合は、予め定められた方法によって、その異なる設定値mを工場出荷時の設定値mに変更し、その変更した内容を再びプリンタのメモリに記憶させる。以降、プリンタは電源投入時やリセット信号の入力によってデフォルトに戻る場合、このメモリに記憶されたコントロールメニュー設定内容を基にして自動的に各種のコントロールモードを設定する。
【0007】こうしたメニュー設定は先程のメカ調整と異なり、個々のプリンタに共通した同一の設定である。このため、予め定められた方法で全てのメニュー設定値mを工場出荷時の設定値mに変更する機能を備えることによって、各項目のメニュー設定値mを確認するための作業工数を削減できるものがある。さらに、LCD等の表示機能を備えたプリンタにおいては、メニュー設定項目Mおよび設定値mを印字させる代わりに、その内容をLCD等に表示させるようにしたものもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、印字位置ずれの調整時の印字結果は、品質管理上、プリンタを使用するユーザに対し、出荷後においても間違いなく印字位置ずれを調整仕様値内に調整した状態で出荷したことを開示(証明)できる控え資料として保管する必要がある。また、プリンタのメモリに格納されている初期のコントロールメニュー設定内容の印字結果についても、間違いなく工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容と同一に設定されていることを開示できる控え資料として保管する必要がある。しかしながら従来においては、工場出荷時のメニュー確認に際し、数十項目(図5の場合は31項目)にもおよぶメニュー項目Mと設定値mを印字させて、それぞれの内容が工場出荷時の規定のメニュー内容と相違ないかどうかを確認しなければならないため、その作業工数が膨大なものとなっていた。また、メニュー内容の印字結果と印字位置ずれの調整結果とをそれぞれ別々に控え資料として保管しなければならないため、控え資料の保管そのものが煩雑なものになっていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、左右方向の印字位置ずれを調整するためのメカ調整用の印字処理を伴うメカ調整機能を有するとともに、初期のコントロールメニュー設定内容を格納する第1のメモリと工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容を格納する第2のメモリとを備えたプリンタの制御方法において、メカ調整機能が起動した場合、第1のメモリに格納された初期のコントロールメニュー設定内容を読み込むとともに、その読み込んだ内容が第2のメモリに格納された規定のコントロールメニュー設定内容と同一であるか否かを判定し、その判定結果をメカ調整用の印字処理の際に印字出力するようにした。
【0010】
【作用】本発明のプリンタの制御方法においては、メカ調整機能を起動させると、まず第1のメモリに格納された初期のコントロールメニュー設定内容が読み込まれる。次に、読み込まれたコントロールメニュー設定内容が第2のメモリに格納された工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容と同一であるか否かの判定が行われ、その判定結果がメカ調整用の印字処理の際に印字出力される。これにより、第1のメモリに格納された初期のコントロールメニュー設定内容をいちいち印字させなくとも、上記印字出力結果を見れば双方のコントロールメニュー設定内容が同一であるか否かを容易に判断できるようになる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施例を説明するフローチャートであり、図2は実施例におけるプリンタの機能ブロック図である。まず、図2に示す機能ブロック図おいて、1はμCPU、2はROM、3はEEPROM、4は印字機構部である。ROM2には、プリンタ全体の動作を制御するためのマイクロプログラム5とともに、工場出荷時の規定のコントロールメニュー内容6が、先の図5に示したように各メニュー項目Mとそれぞれ設定値mとして格納されている。μCPU1は、ROM2から読み出されたマイクロプログラム5にしたがって各種の処理動作を行い、プリンタ全体の処理動作を制御する。EEPROM3には、左右方向の印字位置ずれの調整値7とともに、通常の印字動作に際して参照されるコントロールメニュー内容8が上記同様に各メニュー項目Mとそれぞれ設定値mとして格納されている。印字駆動部4は、印字すべきデータに基づいてμCPU1より出力される印字制御信号Cにしたがって印字を行う。
【0012】ここで本実施例のプリンタには、左右方向の印字位置ずれを調整するためのメカ調整用の印字処理を伴うメカ調整機能が備えられており、そのメカ調整機能を起動制御するためのメカ調整制御信号AがμCPU1に入力されている。さらにμCPU1には、EEPROM3に格納されているコントロールメニュー設定内容8の変更処理機能を起動制御するためのメニュー設定制御信号Bが入力されている。なお、メカ調整機能とコントロールメニュー設定内容の変更処理機能とはそれぞれ起動方法が異なるため、μCPU1に対してはメカ調整制御信号Aとメニュー設定制御信号Bとが同時に入力されないようになっている。
【0013】続いて、μCPU1によるプリンタの制御手順を図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップS1では、入力信号の一つであるメニュー設定制御信号Aを読み込み、続くステップS2では、先のステップS1で読み込んだメニュー設定制御信号Aに基づいてコントロールメニュー設定内容の変更処理機能が起動されているか否かを判定する。ここで、コントロールメニュー設定内容の変更処理機能が起動されていると判定した場合はステップS3に移行し、そこで予め定められた手順により、例えば図5に示すコントロールメニュー設定内容の中から所望のメニュー項目Mを選択し、その設定値mを変更する。
【0014】一方、上記ステップS2において、コントロールメニュー設定内容の変更処理機能が起動されていないと判定した場合はステップS4に進み、そこでもう一つの入力信号であるメカ調整制御信号Bを読み込む。続いて、ステップS5では、先のステップS4で読み込んだメカ調整制御信号Bに基づいてメカ調整機能が起動されているか否かを判定する。ここで、メカ調整機能が起動されていないと判定した場合はステップS6に移行し、そこで通常通りに印字データの受信を行うとともに、その受信したデータに基づく印字制御信号Cを印字機構部4に出力して印字処理を行う。ちなみに、通常の印字処理に際しては、EEPROM3に格納されているコントロールメニュー設定内容8とともに印字位置ずれの調整値7が参照されるため、メカ調整が済んでいれば印字ずれの小さい、高品位な印字が行われる。
【0015】一方、上記ステップS5において、メカ調整機能が起動されていると判定した場合はステップS7に進み、そこでEEPROM3に格納された初期のコントロールメニュー設定内容(各メニュー項目及びその設定値)8を読み込む。次いで、ステップS8では、先に読み込んだ初期のコントロールメニュー設定内容8が、ROM2に格納された工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容6と同一であるか否かを判定する。ここで、双方のコントロールメニュー設定内容6,8が同一であると判定した場合はステップS9に進み、これと反対に双方のコントロールメニュー設定内容6,8が同一でないと判定した場合はステップS10に移行する。
【0016】ステップS9では、例えば図5(a)に示すように、「メニュー設定はデェフォルトです」といった文字列を使用して、初期のコントロールメニュー設定内容8が工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容6と同一である旨をステップS8の判定結果として印字出力する。一方、ステップS10では、上記文字列に相対応する文言として、例えば図5(b)に示すように、「デェフォルトでないメニュー設定があります」といった文字列を使用し、初期のコントロールメニュー設定内容8が工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容6と異なっている旨をステップS8の判定結果として印字出力する。
【0017】さらに、ステップS11では、上記ステップS8での判定結果の印字出力に続いて、図5(a),(b)に示すように、左右方向の印字位置ずれを調整するためのメカ調整用の印字処理として、予め設定された文字記号(左右方向の印字位置ずれが容易に認められる文字機構)を選択し、これを印字機構部4に印字させる。これにより、印字機構部4は、μCPU1から出力された印字制御信号Cにしたがって、まず第1行目を右向きの方向で印字し、次いで第2行目をそれと反対の左向きの方向で印字する。この印字結果を見て作業者は印字位置ずれの良否を判定し、印字位置ずれが調整仕様値よりも大きいと認めた場合は従来同様に直前に印字した行における相対的な印字位置を左右方向に1単位(ピッチ)ずつずらし、印字位置ずれが調整仕様値よりも小さくなった時点で、その位置が適正である旨の調整値7をプリンタのメモリ(EEPROM3)に記憶させる。
【0018】このように本実施例においては、作業者が左右方向の印字位置ずれを調整するためのメカ調整機能を起動させたときに、EEPROM3に格納された初期のコントロールメニュー設定内容8がROM2に格納された工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容6と同一であるか否かを判定し、その判定結果をメカ調整用の印字処理の際に印字出力するようにしたので、従来のように初期のコントロールメニュー設定内容8を印字出力させる(プリンタによってはメニュー設定内容をLCD等に表示させる)必要がないうえ、作業者の目視によって双方のメニュー設定内容6,8が同一であるか否かを確認するなどの手間も省ける。
【0019】なお、ステップS8においては、初期のコントロールメニュー設定内容8と工場出荷時のコントロールメニュー設定内容6とを各メニュー項目毎に比較することになるが、その比較結果において異なるメニュー項目M、さらにはその設定値mを読み出して、これをステップS10で印字出力させることも可能である。このようにすれば、双方のコントロールメニュー設定内容6,8が異なっていると判定された場合に、その異なったメニュー項目Mの設定値mを変更するにあたって、作業者はどの項目Mの設定値mが異なっているのかを検索する必要がなくなるため、工場出荷時におけるメニュー変更処理を迅速かつ正確に行うことができる。
【0020】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、左右方向の印字位置ずれを調整するためのメカ調整機能を起動させたときに、初期のコントロールメニュー設定内容を読み込んで、その読み込んだ内容が工場出荷時の規定のコンロールメニュー設定内容と同一であるか否かを判定し、その判定結果をメカ調整用の印字処理の際に印字出力するようにしたので、従来のように初期のコントロールメニュー設定内容を印字させなくても、印字出力結果を基に双方のメニュー設定内容が同一であるか否かを容易に判断できる。その結果、初期のコントロールメニュー設定内容を印字させるための作業工数を削減できるとともに、印字位置ずれが調整仕様値内に調整されている旨を示す控えと初期のコントロールメニュー設定内容が工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容と同一に設定されている旨を示す控えを一枚の資料にまとめることができるため、従来はプリンタ一台あたり2枚必要であった保管資料が1枚で済むようになり、控え資料の保管の簡素化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を説明するフローチャートである。
【図2】実施例におけるプリンタの機能ブロック図である。
【図3】実施例における印字結果の一例を示す図である。
【図4】従来例における印字結果の一例を示す図である。
【図5】コントロールメニュー設定内容の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 μCPU
2 ROM
3 EEPROM
4 印字機構部
6 初期のコントロールメニュー設定内容
8 規定のコントロールメニュー設定内容

【特許請求の範囲】
【請求項1】 左右方向の印字位置ずれを調整するためのメカ調整用の印字処理を伴うメカ調整機能を有するとともに、初期のコントロールメニュー設定内容を格納する第1のメモリと工場出荷時の規定のコントロールメニュー設定内容を格納する第2のメモリとを備えたプリンタの制御方法において、前記メカ調整機能が起動した場合、前記第1のメモリに格納された初期のコントロールメニュー設定内容を読み込むとともに、その読み込んだ内容が前記第2のメモリに格納された規定のコントロールメニュー設定内容と同一であるか否かを判定し、その判定結果を前記メカ調整用の印字処理の際に印字出力することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項2】 前記初期のコントロールメニュー設定内容と前記規定のコントロールメニュー設定内容との異なる内容部分を前記判定結果として印字出力させるようにしたこと特徴とする請求項1記載のプリンタの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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