説明

プリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置

【課題】押さえローラー18のローラー軸22の保持ブラケット17における磨耗を防止し、保持ブラケット17からの脱落を防止しつつ、押さえローラー18の脱着を容易としたプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置を提供すること。
【解決手段】保持ブラケット17の保持孔21をバーリング形状(いわゆるバリ形状)にして、その支持面積を増加すること、および、バーリング形状にともなうアール部をローラー軸22のガイド面として利用可能であることに着目したもので、検出部において印字用紙Lを適正な姿勢で移送路5方向に押さえ付け可能な押さえローラー18を回転可能に保持する保持ブラケット17の保持側枠部20に、押さえローラー18のローラー軸22を回転可能に保持する保持孔21を形成するとともに、保持孔21は、保持側枠部20の内方から外方に向かってバーリング形状にこれを形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置にかかるもので、とくに移送路上を移送されてゆく印字用紙を適正に押さえ付けるためのプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンターに装填されて移送し印字される印字用紙をその移送路に押さえて、移送およびその位置検出動作を安定化させるために押さえローラーが用いられているものがある。
たとえば特許文献1に開示されたプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置について、図5ないし図7にもとづき概説する。
図5は、プリンター(たとえばサーマルプリンター1)の概略断面図であって、サーマルプリンター1は、プリンターハウジング2と、カバー3と、印字用紙Lの用紙供給部4と、印字用紙Lの移送路5と、検出部6と、用紙押さえ部7(押さえローラー装置)と、印字部8と、を有する。
【0003】
プリンターハウジング2には、その開閉軸9にカバー3を開閉可能に取り付け、プリンターハウジング2内部への印字用紙Lの装填を可能としている。なお、図5ではカバー3の開放状態を実線で示し、閉鎖状態を仮想線で示している。
【0004】
カバー3には、ディスプレイ10と、キー操作盤11と、を設けて必要なデータないしコマンドを入力可能としてある。
【0005】
用紙供給部4は、ラベルあるいはタグなどの印字用紙Lをロール状に保持するとともに、移送路5に向かって印字用紙Lを帯状に繰り出し可能とする。
【0006】
移送路5は、帯状の印字用紙Lを移送するためのもので、基板12や案内傾斜板13などにより、印字用紙Lを用紙供給部4から検出部6および用紙押さえ部7を経て印字部8に向けてこの上を移送可能とする。
【0007】
検出部6は、この移送路5における印字用紙Lの位置を検出するもので、たとえば光反射型の位置検出センサー14を印字用紙Lの裏面側に設けている。
位置検出センサー14は、移送路5(基板12)に形成するとともに透明な樹脂板などを嵌め込んだ検出用貫通窓15に臨んでおり、印字用紙Lの裏面側に検出用の光を出射し、印字用紙Lの裏面にあらかじめ印刷した位置検出用マーク(図示せず)からの反射光の光量により、印字用紙Lの位置を検出可能とする。
【0008】
用紙押さえ部7は、カバー3上で印字用紙Lがその移送にともない上下方向にばたついて位置検出センサー14の読取り精度が低下することを防止するために、検出部6において印字用紙Lを適正な姿勢で、すなわち、位置検出センサー14との間の間隔を一定範囲内とするように、移送路3方向に押さえ付け可能とするもので、金属製であって所定の弾性付勢力を有する板バネ材16と、保持ブラケット17と、合成樹脂製であって印字用紙Lの表面に接触回転する一対の押さえローラー18と、を有する。
【0009】
板バネ材16は、その一方の端部をカバー3の裏側に固定するとともに、その他方の端部を自由端として保持ブラケット17を一体形成してある。
【0010】
図6は、印字用紙Lの移送方向下流側から上流側を見た保持ブラケット17および押さえローラー18部分の拡大側面図で、保持ブラケット17は、押さえローラー18を回転可能に保持するものであって、板バネ材16に一体形成した連結中央部19と、連結中央部19の左右に一体形成した一対の保持側枠部20と、を有する。
保持側枠部20には、移送方向に沿って左右二対の保持孔21を形成し、この保持孔21内に押さえローラー18のローラー軸22を回転可能に保持する。
【0011】
印字部8は、カバー3側に固定したサーマルヘッド23と、プリンターハウジング2側に固定したプラテンローラー24と、を有する。
カバー3の開放により、サーマルヘッド23およびプラテンローラー24の間を開放して印字用紙Lのサーマルプリンター1内への装填を可能とし、カバー3のプリンターハウジング2への閉鎖により、サーマルヘッド23とプラテンローラー24とが所定圧力で接触し、プラテンローラー24の駆動回転により印字用紙Lを移送路5上に移送するとともに、サーマルヘッド23により印字用紙Lに所定情報を印字する。
【0012】
こうした構成のサーマルプリンター1および用紙押さえ部7(押さえローラー装置)において、押さえローラー18のローラー軸22が保持孔21内で磨耗して押さえローラー18が保持ブラケット17から脱落しやすいという問題がある。
【0013】
図7は、保持孔21およびローラー軸22部分をさらに拡大した断面図であって、合成樹脂製のローラー軸22は、金属製の保持ブラケット17の保持孔21内で自由回転可能であるが、用紙押さえ部7全体として板バネ材16のバネ力により移送路5方向に所定押圧力で押し付けられるため、しかも保持孔21における保持側枠部20の板厚部分のみで支持されているため、ローラー軸22が保持孔21の上方内壁面に接触し続けて磨耗する結果、保持ブラケット17から脱落しやすいという問題がある。
【0014】
さらに、保持ブラケット17が所定の剛性を有する金属部品であるため、磨耗した押さえローラー18を保持ブラケット17(保持側枠部20)から取り外し、あるいは取り付けるために保持側枠部20を左右に開放する操作が困難であるという問題がある。
【0015】
また、位置検出センサー14から印字用紙Lに照射された出射光あるいは反射光が近傍に位置する保持ブラケット17において乱反射して位置検出センサー14の読取り精度が低下するという問題がある。
【0016】
【特許文献1】特開平11−42828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、押さえローラーのローラー軸の保持ブラケットにおける磨耗を防止し、押さえローラーが保持ブラケットから脱落しにくくすることができるプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置を提供することを課題とする。
【0018】
また本発明は、保持ブラケットへの押さえローラーの脱着を容易としたプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置を提供することを課題とする。
【0019】
また本発明は、位置検出センサーの読取り精度を向上可能なプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち本発明は、用紙押さえ部における保持ブラケットの保持孔をバーリング形状(いわゆるバリ形状)にして、その支持面積を増加すること、および、バーリング形状にともなうアール部をローラー軸のガイド面として利用可能であることに着目したもので、帯状の印字用紙を移送するための移送路と、この移送路におけるこの印字用紙の位置を検出する検出部と、この印字用紙に所定情報を印字する印字部と、上記検出部において上記印字用紙を適正な姿勢で上記移送路方向に押さえ付け可能な押さえローラーと、この押さえローラーを回転可能に保持する一対の保持側枠部を有する保持ブラケットと、を有するプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置であって、上記保持ブラケットの上記保持側枠部には、上記押さえローラーのローラー軸を回転可能に保持する保持孔を形成するとともに、この保持孔は、上記保持側枠部の内方から外方に向かってバーリング形状にこれを形成したことを特徴とするプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置である。
【0021】
上記一対の保持側枠部を外方に開放操作するためのつまみを上記保持側枠部の先端部側に形成することができる。
【0022】
上記保持ブラケットの上記一対の保持側枠部を連結する連結中央部と上記保持側枠部との間に肉抜き部を形成することができる。
【0023】
上記保持ブラケットの上記一対の保持側枠部を連結する連結中央部が上記検出部の位置検出センサーに対向するその内壁面を黒色とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置においては、保持ブラケット(保持側枠部)の保持孔を内方から外方に向かうバーリング形状としたので、保持孔に押さえローラーのローラー軸を差し込んだ際に、バーリングの内側の面全体でローラー軸を支持することができ、保持ブラケットおよび押さえローラーの移送路(位置検出センサー)方向への押さえ付け作用によっても、ローラー軸が磨耗しにくく、その脱落を防止可能である。
しかも、保持側枠部の内壁面側には、このバーリング形状にともなうアール部分があるので、押さえローラーの一方のローラー軸を一方の保持孔に差し込んだ上で他方の保持孔に他方のローラー軸を傾斜状態で差し込む際の余裕空間を確保するとともに、このアール部分がガイド面ともなり、保持孔へのローラー軸の脱着操作が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、保持ブラケットにおける保持孔のバーリング形状により、押さえローラーの磨耗防止および脱着操作の容易化を可能としたプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置を実現した。
【実施例】
【0026】
つぎに本発明の実施例によるプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置30を図1ないし図4にもとづき説明する。ただし、図5ないし図7と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、プリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置30の印字用紙Lの移送方向下流側から上流側を見た側面図、図2は、印字用紙Lの移送方向に直交する方向から見た側面図であって、押さえローラー装置30は、既述の用紙押さえ部7(押さえローラー装置、図1参照)と同様に、前記板バネ材16、保持ブラケット17および一対の押さえローラー18を有する。
【0027】
図3は、保持ブラケット17部分の斜視図であって、保持ブラケット17において、左右一対の保持側枠部20の先端部側につまみ31を突出形成し、保持ブラケット17の一対の保持側枠部20を外方に開放可能としている。
ただし、このつまみ31は、これを指で引っ掛けることができる程度に、かつおさえローラー18の両側において、押さえローラー18よりわずかに移送路5側に突出しているもので、押さえローラー18による印字用紙Lの押さえ付け作用に影響を及ぼすものではない。
【0028】
さらに、保持ブラケット17の一対の保持側枠部20を連結する連結中央部19と保持側枠部20との間にかけて左右一対の肉抜き部32を形成することにより、この保持側枠部20の剛性を低下させてある。
【0029】
また、連結中央部19が検出部6の位置検出センサー14に対向するその内壁面33に光反射率の低い黒色の合成樹脂板34を取り付けている。もちろん、内壁面33を直接黒色に着色することもできるし、位置検出センサー14において使用する光の波長に応じて反射率の低い色に着色することができる。
【0030】
図4は、保持孔21およびローラー軸22部分をさらに拡大した断面図であって、保持孔21を内方から外方に向かってバーリング形状に形成している。
したがって、保持孔21自体は、保持側枠部20の外壁面から外方にわずかに突出したバーリング部35と、バーリング部35につながる均一径の孔本体部36と、孔本体部36から保持側枠部20の内壁面に至るアール部37と、によって形成されることになる。
【0031】
なお、図1に示すように、保持ブラケット17の連結中央部19から押さえローラー18の前方に向かって、印字用紙Lの幅方向に所定長さの刷毛部38を突出させ、移送路5における前記案内傾斜面13(図5)上を移送される印字用紙Lを上方から案内するとともに、その表面のチリなどを排除し、印字部8における印字動作に支障がないようにしている。
【0032】
こうした構成のプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置30において、とくに図4に示すように、ローラー軸22は、保持孔21において、バーリング部35および孔本体部36、さらに押さえローラー18の姿勢によってはアール部37に回転可能に支持されることになり、従来の前記用紙押さえ部7(押さえローラー装置、図7参照)のように、保持側枠部20板厚のみの場合に比較して、より広い面積で支持されるため、その磨耗の程度は大幅に減少される。
【0033】
さらに、押さえローラー18を保持ブラケット17において交換する際にも、左右一対のつまみ31の部分に指を引っ掛けてその開放方向に押し広げることができるとともに、連結中央部19および保持側枠部20にかけて肉抜き部32を形成してあって保持側枠部20全体のバネ力を低下させてあり、かつ、アール部がガイド面となって、押さえローラー18の交換操作も容易である。
【0034】
また、連結中央部19の内壁面33に黒色の合成樹脂板34を設けてあるので、内壁面33における反射率が低下し、位置検出センサー14からの出射光が乱反射しにくく、位置検出センサー14の読取り精度を向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例によるプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置30の印字用紙Lの移送方向下流側から上流側を見た側面図である。
【図2】同、印字用紙Lの移送方向に直交する方向から見た側面図である。
【図3】同、保持ブラケット17部分の斜視図である。
【図4】同、保持孔21およびローラー軸22部分をさらに拡大した断面図である。
【図5】従来のサーマルプリンター1の概略断面図である。
【図6】同、印字用紙Lの移送方向下流側から上流側を見た保持ブラケット17および押さえローラー18部分の拡大側面図である。
【図7】同、保持孔21およびローラー軸22部分をさらに拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 サーマルプリンター(従来、図5)
2 プリンターハウジング
3 カバー
4 用紙供給部
5 移送路
6 検出部
7 用紙押さえ部(従来の押さえローラー装置、図6、図7)
8 印字部
9 開閉軸
10 ディスプレイ
11 キー操作盤
12 基板
13 案内傾斜板
14 位置検出センサー(光反射型)
15 検出用貫通窓
16 板バネ材
17 保持ブラケット
18 押さえローラー
19 連結中央部
20 保持側枠部
21 保持孔
22 ローラー軸
23 サーマルヘッド
24 プラテンローラー
30 プリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置(実施例、図1〜図4)
31 保持側枠部20の先端部側に形成したつまみ
32 連結中央部19と保持側枠部20との間にかけて形成した肉抜き部
33 連結中央部19の内壁面
34 黒色の合成樹脂板
35 保持孔21のバーリング部
36 保持孔21の孔本体部
37 保持孔21のアール部
38 刷毛部
L 印字用紙(ラベルやタグなど)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の印字用紙を移送するための移送路と、
この移送路におけるこの印字用紙の位置を検出する検出部と、
この印字用紙に所定情報を印字する印字部と、
前記検出部において前記印字用紙を適正な姿勢で前記移送路方向に押さえ付け可能な押さえローラーと、
この押さえローラーを回転可能に保持する一対の保持側枠部を有する保持ブラケットと、を有するプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置であって、
前記保持ブラケットの前記保持側枠部には、前記押さえローラーのローラー軸を回転可能に保持する保持孔を形成するとともに、
この保持孔は、前記保持側枠部の内方から外方に向かってバーリング形状にこれを形成したことを特徴とするプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置。
【請求項2】
前記一対の保持側枠部を外方に開放操作するためのつまみを前記保持側枠部の先端部側に形成したことを特徴とする請求項1記載のプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置。
【請求項3】
前記保持ブラケットの前記一対の保持側枠部を連結する連結中央部と前記保持側枠部との間に肉抜き部を形成したことを特徴とする請求項1記載のプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置。
【請求項4】
前記保持ブラケットの前記一対の保持側枠部を連結する連結中央部が前記検出部の位置検出センサーに対向するその内壁面を黒色としたことを特徴とする請求項1記載のプリンターにおける印字用紙の押さえローラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−149476(P2008−149476A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337051(P2006−337051)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】