説明

プリンター

【課題】プラテン支持機構で移動可能に支持されているプラテンを、プラテン支持機構のガタに拘わらず、所定の姿勢で印刷位置に位置決めできるプリンターを提案する。
【解決手段】プラテンを搭載するプラテンユニット30を移動可能に支持するプラテン支持機構は、閉じ位置30Aにおいて、プラテンユニット30を、プリンター前後方向の前側の両側から突出するボス26d、および、プリンター前後方向の後側の両側から突出する軸端部27aの4箇所で所定の姿勢に位置決めするプラテン位置決め機構を備える。従って、プラテンユニット30は、プラテン支持機構のガタに拘わらず、閉じ位置30Aにおいて所定に姿勢に位置決めされる。この結果、印刷位置において、プラテンは、印刷ヘッド17のノズル面17aに一定のギャップで対峙する所定の姿勢で印刷位置に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドによる記録媒体の印刷位置を規定しているプラテンを、当該印刷位置から離れた位置に移動させて当該印刷位置を経由する記録媒体の搬送路を開放状態に切り替えることができるプリンターに関する。より詳細には、プラテン支持機構により移動可能に支持されているプラテンを印刷位置で所定の姿勢に位置決めできるプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙プリンターでは、ロール紙の交換時にロール紙収納部の開閉蓋を開き、ロール紙を交換すると共にロール紙から引き出した長尺状の記録紙を印刷ヘッドによる印刷位置を経由する記録紙搬送経路にセットする必要がある。このような作業を簡単に行うことができるようにするために、特許文献1、2に記載のロール紙プリンターでは、印刷位置を規定するプラテンを開閉蓋と共に移動するように構成し、開閉蓋が開かれると、プラテンが印刷位置(プリンター本体側に搭載されている印刷ヘッド)から離れて、記録紙搬送経路が開放状態に切り替わるようになっている。
【0003】
特許文献1、2では、プラテンはプラテン支持機構によって開閉蓋と一緒に移動可能に支持されている。プラテン支持機構は、プラテンが搭載されたプラテンフレームをその両側に配置した4節の平行リンク機構によって支持するものであり、プラテンフレームを、プラテンが印刷位置に位置決めされた閉じ位置および当該閉じ位置から離れた開き位置の間で、プラテンフレームの姿勢(プラテンの姿勢)を水平状態に維持したままで、プリンター前後方向に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−95993号公報
【特許文献2】特開2007−175911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンク機構を用いたプラテン支持機構では、一般的に、リンクの連結部となっている節にガタが発生しやすい。このため、開閉蓋を閉じてプラテンを印刷位置に位置決めしたときに、プラテン支持機構のガタにより、プラテンやプラテンフレームが予め定めた所定の姿勢とならないことがある。プラテンが所定の姿勢にならずに印刷ヘッドに対して傾斜した姿勢となっていると、例えば、印刷ヘッドがインクジェットヘッドの場合には、プラテン表面を搬送される記録紙と印刷ヘッドのインクノズル面との間のギャップ長が一定にならないので、印刷品質が低下してしまうという問題がある。また、プラテンを印刷位置に位置決めしたときにプラテンフレームが所定の姿勢で支持されていなければ、プラテンフレームに搭載されている部品が印刷ヘッドなどと干渉して、不具合を発生させてしまうという問題がある。
【0006】
ここで、特許文献1では、プラテンフレームの前側部位のプリンター幅方向の両側に一対の突起を設け、開閉蓋と閉じる際にこれら一対の突起をそれぞれプリンター本体フレームに設けられた係合溝に係合させることにより、プラテンを印刷位置に位置決めしている。しかし、このような位置決めでは、位置決め時にプラテンフレームのプリンター前後方向の傾きを規定できないので、プラテン支持機構にガタが発生している場合には、プラテンフレームが所定の姿勢で支持されず、プラテンがプリンター前後方向で傾斜してしまう。また、特許文献2では、プラテンフレームの後端部分のプリンター幅方向の一方の側にガイドローラーを設け、開閉蓋を閉じる際にガイドローラーをプリンター本体フレームに形成された位置決め用の段部に乗り上げさせることにより、プラテンを印刷位置に位置決めしている。しかし、このような位置決めでも、位置決め時にプラテンフレームのプリンター前後方向の傾きを規定できないので、プラテン支持機構にガタが発生している場合には、プラテンフレームが所定の姿勢で支持されず、プラテンがプリンター前後方向で傾斜してしまう。
【0007】
本発明の課題は、この点に鑑みて、プラテン支持機構によって印刷位置から移動可能に支持されているプラテンを、プラテン支持機構のガタに拘わらず、予め定めた所定の姿勢で印刷位置に位置決めすることができるプリンターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のプリンターは、
印刷ヘッドによる印刷位置を規定するプラテンと、
前記プラテンが搭載されているプラテンフレームと、
前記プラテンフレームを、前記プラテンが前記印刷位置に位置決めされる閉じ位置および当該閉じ位置から離れた開き位置に移動可能に支持しているプラテン支持機構を有し、
前記プラテン支持機構は、前記プラテンフレームが前記閉じ位置において予め定めた姿勢となるように、その開き方向の前側における両側の第1前側部位および第2前側部位、並びに、その開き方向の後ろ側における両側の第1後側部位および第2後側部位の4箇所で、当該プラテンフレームを位置決めするプラテン位置決め機構を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、プラテン支持機構は、閉じ位置においてプラテンフレームをその開き方向の前側の両側およびその開き方向の後側の両側の4箇所で所定の姿勢に位置決めするプラテン位置決め機構を備えている。従って、プラテンフレームは、プラテン支持機構のガタに拘わらず、常に所定の姿勢で閉じ位置に位置決めされる。この結果、印刷位置におけるプラテンの姿勢も常に所定の姿勢に規定されるので、プラテン表面の各部位と印刷ヘッドとの間のギャップ長を一定にすることができる。よって、プラテン表面を搬送される記録紙と印刷ヘッドとの間のギャップ長が一定となり、印刷品質が維持される。また、閉じ位置においてプラテンフレームが所定の姿勢に規定されるので、プラテンフレームに搭載されている部品と印刷ヘッドなどとが干渉することもない。
【0010】
本発明において、プラテン支持機構によって閉じ位置と開き位置との間を移動するプラテンフレームの移動軌跡を制御するためには、前記プラテン位置決め機構は、前記プラテンフレームの一方の側の前記第1前側部位および前記第1後側部位に対峙しているプリンター本体フレームの第1側板部分に形成した第1ガイド溝と、前記プラテンフレームの他方の側の前記第2前側部位および前記第2後側部位に対峙している前記プリンター本体フレームの第2側板部分に形成した第2ガイド溝と、前記プラテンフレームの前記第1前側部位および前記第1後側部位にそれぞれ取り付けられた第1前側位置決めピンおよび第1後側位置決めピンと、前記第2前側部位および前記第2後側部位にそれぞれ取り付けられた第2前側位置決めピンおよび第2後側位置決めピンとを備えており、前記プラテンフレームが前記閉じ位置に向かう途中の位置から、前記第1前側位置決めピンおよび前記第1後側位置決めピンが前記第1ガイド溝によって案内され、前記第2前側位置決めピンおよび前記第2後側位置決めピンが前記第2ガイド溝によって案内され、前記プラテンフレームの前記閉じ位置における前記第1前側部位および第1後側部位並びに前記第2前側部位および前記第2後側部位の位置決めがそれぞれ行われようになっていることが望ましい。
【0011】
この場合において、プラテンフレームの閉じ位置における閉じ方向の位置決めを容易にするためには、前記第1後側位置決めピンが前記第1ガイド溝における前記プラテンフレームの閉じ方向の溝端に当接し、第2後側位置決めピンが前記第2ガイド溝における前記プラテンフレームの閉じ方向の溝端に当接することにより、前記プラテンフレームの前記閉じ位置における閉じ方向の位置決めが行われるようになっていることが望ましい。
【0012】
また、この場合において、第1、第2ガイド溝を形成することによるプリンター本体フレームの剛性の低下を抑制するためには、前記第1ガイド溝および前記第2ガイド溝における前記プラテンフレームの開き方向の溝端はそれぞれ溝開口端となっており、前記第1側板部分における前記溝開口端が形成されている部分は、前記第1前側位置決めピンおよび前記第1後側位置決めピンが干渉しない状態で、補強部材によって補強されており、前記第2側板部分における前記溝開口端が形成されている部分は、前記第2前側位置決めピンおよび前記第2後側位置決めピンに干渉しない状態で、補強部材によって補強されていることが望ましい。
【0013】
本発明において、前記プラテン支持機構は、前記プラテンフレームの開き方向における前後の部位において、前記第1前側部位および前記第1後側部位の側にそれぞれ取り付けた第1前側リンクおよび第1後側リンクと、前記第2前側部位および前記第2後側部位の側にそれぞれ取り付けた第2前側リンクおよび第2後側リンクとを有しており、前記第1前側リンクおよび前記第2前側リンクのそれぞれは、第1リンクおよび第2リンクが第1ピン節点を介して直列に連結された構成の複合リンクであり、前記第1後側リンクおよび前記第2後側リンクのそれぞれは、第3リンクおよび第4リンクが第2ピン節点を介して直列に連結された構成の複合リンクであり、前記第1ピン節点と前記第2ピン節点の間に第5リンクが架け渡されており、前記プラテンフレームの両側において、前記第1〜第5リンクによって、前記プラテンフレームを支持している6節の平行リンク機構とすることができる。プラテン支持機構が6節の平行リンク機構を備えていれば、プラテンフレームの移動軌跡を柔軟に設定できる。
【0014】
また、本発明において、前記プラテン支持機構は、前記プラテンフレームの開き方向における前後の部位において、前記第1前側部位および前記第1後側部位の側にそれぞれ取り付けた第1前側リンクおよび第1後側リンクと、前記第2前側部位および前記第2後側部位の側にそれぞれ取り付けた第2前側リンクおよび第2後側リンクとを有しており、これらのリンクによって、前記プラテンフレームの両側において、当該プラテンフレームを支持している4節の平行リンク機構が構成されているものとすることができる。プラテン支持機構が4節の平行リンク機構を備えていれば、プラテンフレームを、円弧状の移動軌跡に沿って移動させることができる。
【0015】
本発明において、ロール紙を収納するロール紙収納部を開閉するための開閉蓋を開いたときに、印刷位置を経由して記録紙を搬送するための記録紙搬送経路を開放状態とするためには、ロール紙を収納するロール紙収納部と、前記ロール紙収納部を開閉するための開閉蓋とを有し、前記開閉蓋の開閉に連動して前記プラテンフレームが開閉することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、プラテン支持機構は、閉じ位置においてプラテンフレームをその開き方向の前側の両側およびその開き方向の後側の両側の4箇所で所定の姿勢に位置決めするプラテン位置決め機構を備えている。従って、プラテンフレームは、プラテン支持機構のガタに拘わらず、常に所定の姿勢で閉じ位置に位置決めされる。この結果、印刷位置におけるプラテンの姿勢も常に所定の姿勢に規定されるので、プラテン表面の各部位と印刷ヘッドとの間のギャップ長を一定にすることができる。よって、プラテン表面を搬送される記録紙と印刷ヘッドとの間のギャップ長が一定となり、印刷品質が維持される。また、閉じ位置においてプラテンフレームが所定の姿勢に規定されるので、プラテンフレームに搭載されている部品と印刷ヘッドなどとが干渉することもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用したロール紙プリンターを示す外観斜視図である。
【図2】図1のロール紙プリンターの開閉蓋を開けた状態の外観斜視図である。
【図3】図1のロール紙プリンターの内部構造を示す概略縦断面図である。
【図4】図1のロール紙プリンターの開閉蓋を開けた状態の概略縦断面図である。
【図5】プラテンを搭載するプリンターフレームの斜視図である。
【図6】図1のロール紙プリンターの内部のプリンター機構部を示す斜視図である。
【図7】図1のロール紙プリンターのプリンター本体フレームを示す斜視図である。
【図8】図1のロール紙プリンターのプラテン支持機構を示す側面図である。
【図9】閉じ位置にあるプラテン支持機構を示す説明図である。
【図10】開き始めの状態のプラテン支持機構の説明図である。
【図11】途中まで開いた状態のプラテン支持機構の説明図である。
【図12】途中まで開いた状態のプラテン支持機構の説明図である。
【図13】開き位置手前まで開いた状態のプラテン支持機構の説明図である。
【図14】開き位置にあるプラテン支持機構の説明図である。
【図15】本発明の別の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したインクジェット式のロール紙プリンターを説明する。
【0019】
(ロール紙プリンターの全体構成)
図1は本発明を適用したロール紙プリンターを示す外観斜視図であり、図2は開閉蓋を開けた状態の外観斜視図である。図示のロール紙プリンター1は、複数種類のカラーインクを用いてロール紙から繰り出される長尺状の記録紙にカラー印刷を行うものであり、全体として直方体形状をしたプリンターケース2を備え、このプリンターケース2の前面中央部分にはロール紙装着用の開口部3が形成されている。開口部3には開閉蓋4が取り付けられており、開閉蓋4の上端には記録紙排出ガイド5が配置されている。記録紙排出ガイド5とプリンターケース2の開口部3の上縁部分との間に記録紙排出口6が形成されている。
【0020】
記録紙排出ガイド5の前端下側の部位には、プリンター幅方向の中央部に下方に突出した操作片5aが取り付けられている。この操作片5aに指を掛けてプリンター前方に引くと、当該操作片5aが前方に回動して不図示のロックが解除され、開閉蓋4をプリンター前方に開けることが可能になる。この状態で操作片5aを更に手前に引くと、開閉蓋4を図1に示す開閉蓋閉じ位置4Aから、下端を中心として前方に倒れた図2に示す開閉蓋開き位置4Bまで開けることができる。開閉蓋4が開くと、プリンター本体内部に形成されているロール紙収納部7が開口し、ロール紙の交換作業などを行うことができる。
【0021】
プリンターケース2の前面における開閉蓋4の右側部分には電源スイッチ8a、紙送りスイッチ8b、複数個の動作状態表示ランプ8cなどが配列されている。プリンターケース2の前面における開閉蓋4の左側部分には、プリンター前後方向に延びる縦長の長方形断面のインクカートリッジ装着部9の装着口9aが開口しており、このインクカートリッジ装着部9にインクカートリッジ10が装着されている。
【0022】
図3はロール紙プリンター1の内部構造を示す縦断面図であり、図4は開閉蓋4を開いた状態の縦断面図である。これらの図を参照して説明すると、ロール紙収納部7は上方に開口している湾曲状断面のロール紙受け皿11を備えており、ここに、ロール紙12が転動可能な状態で収納される。ロール紙12におけるプリンター後側の部位から巻き出される長尺状の記録紙13は、繰り出しローラー14および、これよりもプリンター後方および上方に位置しているテンションローラー15を介して、ロール紙収納部7の上方および後方側の部位からプリンター前方に向けて引き出される。テンションローラー15から前方に向けて引き出される記録紙13は、ロール紙収納部7の真上に位置するプラテン16の上面に沿って前方に引き出され、記録紙排出口6からプリンター前方に引き出される。
【0023】
プラテン16の真上には、印刷ヘッド17(インクジェットヘッド)が搭載されたヘッドキャリッジ18がガイド軸19に沿ってプリンター幅方向に往復移動可能な状態に配置されている。印刷ヘッド17のノズル面17aは一定のギャップでプラテン16の上面に対峙するようになっている。プラテン16の後側には、紙送り駆動ローラー20が配置されており、この紙送り駆動ローラー20には、紙送り従動ローラー21が下側から圧接されている。プラテン16の前側には、排紙駆動ローラー22が配置されており、この排紙駆動ローラー22には上側から排紙従動ローラー23が圧接されている。
【0024】
記録紙13は、紙送り駆動ローラー20および紙送り従動ローラー21の間を通ってプラテン16の上面によって規定される印刷位置を経由して搬送され、排紙駆動ローラー22および排紙従動ローラー23の間を通って記録紙排出口6に向けて送り出される。印刷位置を通る記録紙13の表面に、印刷ヘッド17によって印刷が施される。排紙駆動ローラー22、排紙従動ローラー23の間から送り出された記録紙13は、記録紙排出口6の近傍に配置されている記録紙切断機構25の固定刃25aおよび可動刃25bの間の位置において、その幅方向に切断される。切断により得られた一定長さの記録紙片(図示せず)がレシートなどとして発行される。
【0025】
(プラテンユニット)
図4を参照して説明すると、プラテン16、紙送り従動ローラー21、排紙駆動ローラー22、並びに、記録紙切断機構25の可動刃25bおよび駆動機構は、プラテンフレーム26に搭載されて、一体となって移動するプラテンユニット30を構成している。プラテンユニット30の後端にはテンションローラー15が搭載されており、その前端には記録紙排出ガイド5が取り付けられている。プラテンユニット30は、通常は、プラテン16が印刷ヘッド17による印刷位置を規定している状態の位置、すなわち、図3に示す閉じ位置30Aに位置している。
【0026】
図5はプラテンを搭載するプラテンフレームの斜視図である。プラテンフレーム26は、板金製の部材から形成されており、プリンター前後方向(プラテンフレーム26の移動方向)に平行に延びる一対の側板部分26a、26bと、一対の側板部分26a、26bの前側部分の下端縁に架け渡されている底板部分26cを備えている。一対の側板部分26a、26bの前側の部位には一対のボス(前側位置決めピン)26dが形成されており、これら一対のボス26dはプラテンユニット30の前側でプリンター幅方向に突出している。また、一対の側板部分26a、26bの後側の部位には、プリンター幅方向に支軸27が架け渡されている。支軸27は一対の側板部分26a、26bをプリンター幅方向に貫通しており、その軸端部(後側位置決めピン)27aは、プラテンユニット30の後側でプリンター幅方向に突出している。プラテン16は一対の側板部分26a、26bの上端部分に架け渡されており、プリンター前後方向において一対のボス26dと支軸27の間に位置している。
【0027】
不図示のロックを解除して記録紙排出ガイド5の操作片5aを手前に引くと、プラテンユニット30を図4に示す開き位置30Bまで引き出すことができる。本例では、後述のように、プラテンユニット30は閉じ位置30Aからプリンター前方に向けて直線状の第1移動軌跡S1に沿って引き出されて、しかる後に、円弧状の第2移動軌跡S2に沿って前方および下方に移動して開き位置30Bに至る。また、開閉蓋4はプラテンユニット30に連結されており、プラテンユニット30が手前に引き出されると、開閉蓋4はその下端の支軸4aを中心として手前に開くようになっている。さらに、本例では、ロール紙収納部7のロール紙受け皿11も図4に示すように、プリンター前方に所定の角度だけ前傾した姿勢の位置まで旋回するようになっている。
【0028】
(プリンター本体フレーム)
図6はプリンターケース2に覆われているプリンター機構部を示す斜視図である。ロール紙プリンター1のプリンター本体フレーム31は、板金製の部材から構成されており、底板32と左右の側板33、34とを備えている。また、左右の側板33、34の前側の上端縁部分の間には、前側連結板35がプリンター幅方向に架け渡されており、プラテン16の後側の位置においては、左右の側板33、34の間に後側連結板36がプリンター幅方向に架け渡されている。
【0029】
図7(a)は、プリンター本体フレーム31のみを取り出して示す斜視図であり、その左右の側板33、34を取り外した状態で示してある。図7(b)および図7(c)は、さらに、前側連結板35および後側連結板36を取り外した状態のプリンター本体フレーム31を示す左側斜視図および右側斜視図である。これらの図に示すように、プリンター本体フレーム31は、左右の側板33、34の内側に、左右の内側側板37、38を備えており、これらの内側側板37、38の間の部分にロール紙収納部7(図2参照)が形成されている。
【0030】
(プラテン支持機構)
次に、プラテンユニット30を開閉蓋4と共に閉じ位置30Aから開き位置30Bまでの間を移動可能な状態で支持しているプラテン支持機構を説明する。プラテン支持機構は6節のリンク機構を中心に構成されている。
【0031】
図8はプラテン支持機構を示す説明図であり、図8(a)はロール紙プリンター1におけるプリンター本体フレーム31の右側の内側側板38を外側から見た場合の右側面図であり、図8(b)は内側側板38を取り外した状態の右側面図である。図8(c)は左側の内側側板37を外側から見た場合の左側面図であり、図8(d)は内側側板37を取り外した状態の右側面図である。
【0032】
これらの図を参照して説明すると、本例のプラテン支持機構は、右側の内側側板38の側に配置された右側プラテン支持機構40Rと左側の内側側板37の側に配置された左側プラテン支持機構40Lとを備えている。右側プラテン支持機構40Rと左側プラテン支持機構40Lの基本構造は同一であり、左右対称の状態に構成されている。
【0033】
右側プラテン支持機構40Rは、プラテンユニット30を、閉じ位置30A(図3に示す位置)から第1移動軌跡S1に沿って開き位置30B(図4に示す位置)に至る途中の途中位置まで案内すると共に、閉じ位置30Aにおいてプラテンユニット30を予め定めた所定の姿勢に位置決めするプラテン位置決め機構41と、第1移動軌跡S1に沿って案内されるプラテンユニット30を所定の姿勢に維持すると共に、途中位置から開き位置30Bまでプラテンユニット30を所定の姿勢に維持した状態で円弧状の第2移動軌跡S2に沿って移動させる6節リンク機構42とを有している。
【0034】
(プラテン位置決め機構)
プラテン位置決め機構41は、図8(a)、図7に示すように、プラテンユニット30を閉じ位置30Aからプリンター前方に向けて直線状の第1移動軌跡S1に沿って案内するためのプラテンユニットガイド溝43を備えている。
【0035】
プラテンユニットガイド溝43は、左右の内側側板37、38において、それぞれの前端縁37a、38aからプリンター後方に延びている。各プラテンユニットガイド溝43は、その後端部分が一段高い後側位置決め用ガイド溝部分43aとなっており、この後側位置決め用ガイド溝部分43aからプリンター前方に向けて一定幅の直線状ガイド溝部分43bが形成されており、その前端部分には、その下側のガイド面に連続した下方に所定の角度で傾斜した傾斜ガイド面43cが連続している。直線状ガイド溝部分43bの前端部分は、前側位置決め用ガイド溝部分43dとなっている。
【0036】
また、プラテンユニット30の前側からプリンター幅方向の両側に突出しているボス26dと、プラテンユニット30の後側からプリンター幅方向の両側突出している支軸27の軸端部27aが、プラテンユニットガイド溝43と共にプラテン位置決め機構41を構成している。
【0037】
すなわち、プラテンユニット30が閉じ位置30Aに移動する際に、プラテンユニット30において、左側の内側側板(第1側板部分)37と対峙している前側の部位から突出するボス(第1前側位置決め用ピン)26dと後側の部位から突出する軸端部(第1後側位置決め用ピン)27aは、左側の内側側板37のプラテンユニットガイド溝(第1ガイド溝)43にスライド可能な状態で挿入され、プラテンユニット30において、右側の内側側板(第2側板部分)38と対峙している前側の部位から突出するボス(第2前側位置決め用ピン)26dと後側の部位から突出する軸端部(第2後側位置決めピン)27aは、左側の内側側板37のプラテンユニットガイド溝(第2ガイド溝)43にスライド可能な状態で挿入される。これにより、プラテンユニット30はプラテンユニットガイド溝43に沿って移動する。
【0038】
そして、プラテンユニット30が閉じ位置30Aまでプリンター後方(プラテンフレーム26の閉じ方向)に押し込まれると、プラテンユニット30の後側の軸端部27aは、プラテンユニットガイド溝43の後端部分の後側位置決め用ガイド溝部分43aに乗り上げて、プラテンユニットガイド溝43の溝端に当接した状態となる。同時に、プラテンユニット30の前側のボス26dが直線状ガイド溝部分43bの前端部分の前側位置決め用ガイド溝部分43dに乗り上げる。この結果、プラテンユニット30は閉じ位置30Aに予め定めた所定の姿勢で位置決めされ、プラテン16は、印刷ヘッド17のノズル面17aに一定のギャップで対峙する姿勢で印刷位置に位置決めされる。
【0039】
ここで、右側の内側側板38は、その前端縁38aから外側に折れ曲がっている折れ曲がり部38bを備えており、内側側板38のプラテンユニットガイド溝43は、折れ曲がり部38bの右側端縁38cと前端縁38aとの間から、前端縁38aを経由して、プリンター後方に延びるように形成されている。この結果、内側側板38の前端縁38aにはプラテンユニットガイド溝43の溝開口端が露出しており、ボス26dおよび軸端部27dがプラテンユニットガイド溝43へ挿入可能となっている。また、プラテンユニットガイド溝43は内側側板38内で閉じた形状となっており、折れ曲がり部38bは、プラテンユニットガイド溝43を形成することによる内側側板38の剛性の低下を抑えるための補強部材として機能している。一方、左側の内側側板37のプラテンユニットガイド溝43は、内側側板37の前端縁37aから所定の長さに渡って切り込むことにより形成されている。内側側板37において、プラテンユニットガイド溝43の溝開口端の近傍には、プラテンユニットガイド溝43を間に挟んで上下方向で向かい合う一方の内側側板部分37bから他方の内側側板部分37cに補強部材37dが架け渡されている。補強部材37dは、このプラテンユニットガイド溝43をスライドするボス26dおよび軸端部27dと干渉しないように外側に窪む凹部を備えている。補強部材37dが掛け渡されることにより、内側側板37の剛性の低下が抑えられている。
【0040】
なお、ガイド溝あるいはガイド用凹部をプラテンユニット30の側に設け、軸あるいは突起をプリンター本体フレーム31の側に形成した構成を採用することも可能である。
【0041】
(6節リンク機構)
次に、6節リンク機構42は、第1リンク51および第2リンク52が第1ピン節点61を介して直列に連結された構成の第1複合リンク71(前側リンク)と、第3リンク53および第4リンク54が第2ピン節点62を介して直列に連結された構成の第2複合リンク72(後側リンク)と、第1複合リンク71の第1ピン節点61および第2複合リンク72の第2ピン節点62の間に架け渡されている第5リンク55とを備えている。第2複合リンク72は第2複合リンク71に対してプリンター後方側に離れて位置している。
【0042】
すなわち、第1複合リンク71の下端および第2複合リンク72の下端は、それぞれ、プリンター前後方向(プラテンユニット30の開き方向)に沿って見た場合に、一定の距離だけ離れた前後の定まった位置にある第3ピン節点63および第4ピン節点64に連結されている。第3、第4ピン節点63、64は、内側側板38あるいは底板32にプリンター幅方向に延びる状態に取り付けた支軸ピンによって規定されている。
【0043】
同様に、第1複合リンク71の上端および第2複合リンク72の上端は、それぞれ、所定の距離だけプリンター前後方向に離れたプラテンユニット30の側面の部位に、第5ピン節点65および第6ピン節点66を介して連結されている。後側の第6ピン節点66は、プラテンユニットガイド溝43に沿ってスライド可能な支軸27の軸端部27aによってその回動中心が規定されている。このように、第1〜第5リンク51〜55と、プラテンユニット30とによって、6節リンク機構42が構成されている。
【0044】
本例では、前側の第1リンク51は反対側の左側の6節リンク機構における第1リンクに連結された構成の単一部品から形成されており、第2リンク52も同様に左側の第2リンクに連結された構成の単一部品から形成されている。
【0045】
ここで、6節リンク機構42においては、閉じ位置30Aに位置するプラテンユニット30を支持している前後の第1複合リンク71および第2複合リンク72が、前方に屈曲した状態となっている。すなわち、第1複合リンク71の第1リンク51と第2リンク52は、それらの連結点である第1ピン節点61がプリンター前方に突出した状態に折れ曲がっている。同様に、後側の第2複合リンク72の第3リンク53と第4リンク54は、それらの連結点である第2ピン節点62がプリンター前方に突出した状態に折れ曲がっている。
【0046】
折れ曲がった状態の前側の複合リンク71と後側の複合リンク72の間は第5リンク55によって連結されている。したがって、プラテンユニット30がプラテンユニットガイド溝43に案内されて前方にスライドする間、すなわち、6節リンク機構42に第6ピン節点66(軸端部27a)の高さ位置がプラテンユニットガイド溝43によって規定されている間は、プラテンユニット30はその姿勢が一定の状態に保持されたまま前方にスライドする。
【0047】
また、プラテンユニット30が前方にスライドするに連れて、前後の複合リンク71、72が徐々に伸びるように設定されている。さらに、前後の複合リンク71、72のリンク長、すなわち、折れ曲がり状態が解消されて伸び切った状態における長さが同一とされている。換言すると、伸び切った状態における複合リンク71の上下の第5ピン節点65と第3ピン節点63の最大間隔と、伸長状態における後側の複合リンク72の上下の第6ピン節点66と第4ピン節点64の最大間隔とが同一に設定されている。さらには、複合リンク72の上端の第6ピン節点66を規定している支軸27の軸端部27aがプラテンユニットガイド溝43の直線状ガイド溝部分43bの前端から傾斜ガイド面43cに移る時点(閉じ位置30Aから開き位置30Bの間の途中位置)において、前後の複合リンク71、72が伸びきった状態になるように設定されている。
【0048】
ここで、前側の複合リンク71において、その第1リンク51および第2リンク52は、それらが直線状に伸び切った後は相互に係合状態になり、反対側に屈曲しないように構成されている。したがって、複合リンク71、72が伸び切った後は、これらの複合リンク71、72と、プラテンユニット30とによって、4節の平行リンク機構が構成された状態になる。よって、この後は、プラテンユニット30は、前後の複合リンク71、72のリンク長によって規定される円弧状の第2移動軌跡S2に沿って開き位置30Bまで一定の姿勢を維持したまま倒れることになる。
【0049】
次に、図8(c)、(d)に示すように、反対側の左側のプラテン支持機構40Lも右側のプラテン支持機構40Rと左右対称な状態で同一構成となっている。したがって、左側のプラテン支持機構40Lの説明は省略し、図8(c)、(d)等においては、右側のプラテン支持機構40Lにおける対応する部位には同一の符号を付してある。
【0050】
また、プラテンユニット30の前端部の下面と、左右の内側側板37、38の下端部との間には、上下に伸縮可能な開閉蓋取り付け枠46が架け渡されている。図3、4に示すように、この開閉蓋取り付け枠46は、左右の内側側板37、38の側に取り付けられている下側枠46aと、プラテンユニット30の側に取り付けられている上側枠46bとを備えている。これらの下側枠46aおよび上側枠46bは相互にスライド可能な状態で連結されており、上側枠46bの前面に開閉蓋4が取り付けられている。
【0051】
(6節リンク機構の面外剛性の補強機構)
ここで、図8(a)、(b)から分かるように、右側の6節リンク機構42においては、内側側板38(板状フレーム)を挟み、その外側の板面(第1側面)に沿って第3リンク53および第5リンク55が配置されており、その内側の板面(第2側面)に沿って残りの第1、第2、第4リンク51、52、54が配置されている。外側の第3、第5リンク53、55と、内側の第4リンク54との間の第2ピン節点62は、プリンター幅方向に延びる支軸ピン62aによって規定されている。この支軸ピン62aの移動軌跡に沿った円弧溝39が内側側板38に形成されている。支軸ピン62aは当該円弧溝39にスライド可能な状態で通されている。また、内側の第1、第2リンク51、52と第5リンク55との間の第1ピン節点61は、内側側板38の前端側に配置されている支軸ピン61aによって規定されている。
【0052】
このように、6節リンク機構42を構成している第1〜第5リンク51〜55は、内側側板38を挟む状態に両側に配置されている。よって、内側側板38によって面外剛性が確保されており、側方からの力が作用した場合に、プリンター幅方向への倒れ、ガタツキが防止される。
【0053】
特に、本例では、プラテンユニット30を開き位置30Bに移動した状態において、第3リンク53はその全体が内側側板38の外側の板面に対峙しており、これに連結されている第2、第5リンク52、55も、それらのほぼ半分の部分が内側側板38の内側の板面に対峙している(後述の図14参照)。したがって、プラテンユニット30が開いた場合においても、内側側板38を両側からリンクによって挟む状態が維持されるので、プラテンユニット30の閉じ位置から開き位置までの全範囲において内側側板38によってリンク機構の面外剛性が確保される。
【0054】
なお、図8(c)、(d)から分かるように、反対側の左側の6節リンク機構42の各リンクも同様に配置されて面外剛性が確保されている。
【0055】
(プラテンユニットの開き動作)
図9から図14を参照してプラテンユニットの開き動作を纏めて説明する。まず、図9(a)はプラテンユニット30が閉じ位置30Aにある状態を示す説明図であり、図9(b)はそのプラテン支持機構を示す模式図である。この状態では、プラテンユニット30の後側の軸端部27aがプラテンユニットガイド溝43における後端部の後側位置決め用ガイド溝部分43aに乗り上げ、プラテンユニットガイド溝43の溝端に当接している。プラテンユニット30の前側のボス26dが直線状ガイド溝部分43bの前端部分の前側位置決め用ガイド溝部分43dに乗り上げている。プラテンユニット30は閉じ位置30Aに予め定めた所定の姿勢で位置決めされており、プラテン16は、印刷ヘッド17のノズル面17aに一定のギャップで対峙する姿勢で印刷位置に位置決めされている。また、プラテンユニット30に搭載されている紙送り従動ローラー21および排紙駆動ローラー22がそれぞれプリンター本体側の紙送り駆動ローラー20および排紙従動ローラー23に圧接された状態が形成されている。この状態では、6節リンク機構42の前後の複合リンク71、72が前側に折れ曲がってリンク長が縮んだ状態にある。
【0056】
プラテンユニット30の前端に取り付けられている記録紙排出ガイド5の操作片5aを手前に回動させてロックを解除した後に当該操作片5aを手前に引くと、プラテンユニット30がプラテンユニットガイド溝43に沿ってプリンター前方に引き出される。すると、プラテンユニット30の軸端部27aが後端の後側位置決め用ガイド溝部分43aから前側の一段低い直線状ガイド溝部分43bに移動し、同時に、プラテンユニット30のボス26dが前側位置決め用ガイド溝部分43dから傾斜ガイド面43cの側に移動して、僅かに下方に移動する。この結果、プラテンユニット30が全体として一段下がり、紙送り従動ローラー21、排紙駆動ローラー22がそれぞれプリンター本体側の紙送り駆動ローラー20、排紙従動ローラー23から下方に離れる。
【0057】
図10(a)はこの状態のプラテンユニット30を示す説明図であり、図10(b)はその模式図である。この後は、プラテンユニット30は、直線状ガイド溝部分43bに沿って前方に直線状に引き出される。プラテンユニット30は一段低い位置を6節リンク機構42によって姿勢が保持された状態で前方に移動するので、上側に配置されているプリンター本体側に配置されている各部品に干渉することなく前方に引き出される。また、下側に収納されているロール紙12にも干渉することなく前方に引き出される。
【0058】
このように、プラテンユニット30は、その前端の操作片5aに加わる操作力の作用方向に向けて直線状に引き出される。4節の平行リンク機構によって支持されているプラテンユニットの場合には円弧状の軌跡によって引き出されるので、操作力の方向とプラテンユニットの移動方向が一致せず、プラテンユニットをスムーズに引き出すことができない。本例では、リンク機構に拘束されることなく、直線状のガイド溝部分43bに沿ってプラテンユニット30をスムーズに小さな操作力で引き出すことができる。
【0059】
なお、本例では直線状の第1移動軌跡S1(例えば、後側の軸端部27a、第6ピン節点66の描く軌跡)に沿ってプラテンユニット30を引き出すようにしているが、第1移動軌跡S1は6節リンク機構42による制約がないので、操作性に問題が無い限り、直線状に限らず、円弧状の移動軌跡、段状の移動軌跡など、複合リンク71、72が伸長可能は高さの範囲内において任意の移動軌跡に沿ってプラテンユニット30を引き出すことができるという利点がある。
【0060】
図11は、このようにプラテンユニット30が直線状に前方に引き出されている状態を示す説明図である。この図に示すように、プラテンユニット30が前方に引き出されるのに伴って、折り曲げ状態の前後の複合リンク71、72が徐々に上下に引き伸ばされる。先に述べたように、プラテンユニット30の後側の軸端部27aがプラテンユニットガイド溝43の直線状ガイド溝部分43bの前端に至ると、前後の複合リンク71、72が伸び切った状態(最大のリンク長)になる。
【0061】
図12(a)はこの状態のプラテンユニット30を示す説明図であり、図12(b)はその模式図である。軸端部27aが直線状ガイド溝部分43bの前端から円弧状の傾斜ガイド面43cに移る時点までは直線状の第1移動軌跡S1に沿ってプラテンユニット30がプリンター前方に引き出される。この後は、伸び切った前後の複合リンク71、72と、プラテンユニット30とによって、4節の平行リンク機構が構成された状態になる。
【0062】
すなわち、前側の複合リンク71の第1リンク51の上端面が上側の第2リンク52の下端に形成した掛止片52aに当接し、第1複合リンク71は伸び切った直線状態に保持される。したがって、当該第1複合リンク71に第5リンク55によって連結されている後側の第2複合リンク72も伸び切った状態に保持され、これら2本の固定リンク長のリンクとプラテンユニット30とによって4節の平行リンク機構が構成される。この後は、前後の複合リンク71、72によって規定される円弧状の第2移動軌跡S2(例えば、後側の軸端部27a、第6ピン節点66の描く移動軌跡)に沿ってプラテンユニット30はその姿勢を維持した状態で前方の開き位置30Bまで引き出される。
【0063】
図13(a)は6節リンク機構42が4節の平行リンク機構の状態でプラテンユニット30を前方に移動させていく状態を示す説明図であり、図13(b)はその模式図である。前後の複合リンク71、72は伸び切った状態(最大のリンク長の状態)で前方に旋回するので、曲率半径の大きな円弧状の第2移動軌跡S2に沿ってプラテンユニット30が前方に移動する。したがって、その下側に位置するロール紙12などに干渉することなくプラテンユニット30を手前側の開き位置39Bまで引き出すことができる。図14には開き位置30Bまで引き出された状態のプラテンユニット30を示してある。
【0064】
次に、プラテンユニット30が閉じ位置30Aに閉じられる閉じ動作は、開き動作とは逆になる。閉じ動作では、プラテンユニット30は、開き位置30Bから、円弧状の第2移動軌跡S2に沿って移動する。しかる後に、プラテンユニット30の後側の軸端部27aがプラテンユニットガイド溝43に挿入されて直線状ガイド溝部分43bの前端に至ると、プラテンユニット30は直線状の第1移動軌跡S1に沿ってプリンター後方に押し込まれる。
【0065】
プラテンユニット30が閉じ位置30Aまで押し込まれると、プラテンユニット30はプラテン位置決め機構41により所定の姿勢で位置決めされる。すなわち、プラテンユニット30の後側の軸端部27aは、プラテンユニットガイド溝43の後端部分の後側位置決め用ガイド溝部分43aに乗り上げて、プラテンユニットガイド溝43の溝端に当接した状態となる。同時に、プラテンユニット30の前側のボス26dが直線状ガイド溝部分43bの前端部分の前側位置決め用ガイド溝部分43dに乗り上げる。この結果、プラテン16は、印刷ヘッド17のノズル面17aに一定のギャップで対峙する姿勢で印刷位置に位置決めされた図9に示す状態に戻る。
【0066】
ここで、プラテン16の位置決めに際して、プラテン16を搭載しているプラテンユニット30(プラテンフレーム26)は、当該プラテンユニット30の前側のプリンター幅方向の両側のボス26dと、当該プラテンユニット30の後側のプリンター幅方向の両側の軸端部27aによって位置決めされる。この結果、プリンター前後方向におけるプラテンユニット30の傾きが規定されるので、プラテン16のプリンター前後方向における傾きが規定される。また、プラテンユニット30はプリンター幅方向の両側から位置決めされるので、プリンター幅方向におけるプラテン16の傾きが規定される。従って、プラテン支持機構にガタが発生していても、プラテン16は常に所定の姿勢で印刷位置に位置決めされる。
【0067】
さらに、プラテン16の位置決めに際して、プラテンユニット30の後側の軸端部27aがプラテンユニットガイド溝43の溝端に当接する。この結果、プリンター前後方向におけるプラテン16の位置決めが正確に行われる。
【0068】
(その他の実施の形態)
図15はプラテンユニット30を4節の平行リンク機構によって支持した構成のプラテン支持機構を備えたロール紙プリンターの例を示し、(a)はその主要部を示す側面図であり、(b)はその斜視図である。図15(b)では、4節の平行リンク機構および左側の内側側板を省略してある。
【0069】
図示のロール紙プリンター1Aは、上記のロール紙プリンター1と基本的に同様な構成となっているので、対応する部位には同一の符号を付してある。本例では、プラテン支持機構40Aが4節の平行リンク機構から構成されており、前側リンク101と、後側リンク102とを備えている。これらの下端はプリンター本体フレーム31の側に連結されており、これらの上端はプラテンユニット30に連結されている。本例では、前側リンク101の上端はボス26dに連結され、後側リンク102の上端は支軸27に連結されている。プラテンユニット30は、内側側板37、38に沿って円弧状の移動軌跡(例えば、後側の軸端部27aの描く移動軌跡)に沿ってプリンター前後方向に旋回可能であり、プラテン16が印刷位置を規定している閉じ位置30Aと、プリンター本体フレーム31の前方に引き出された開き位置30Bとの間を、所定の姿勢に保持された状態のままで移動する。
【0070】
4節の平行リンク機構では、プラテンユニット30が移動する際に、プラテンユニット30の後側の軸端部27aと、プラテンユニット30の前側のボス26dとは、異なる円弧状の移動軌跡に沿って移動する。このため、プラテン位置決め機構41Aは、軸端部27aをガイドするための円弧状の後側プラテンユニットガイド溝143と、ボス26dをガイドするための円弧状の前側プラテンユニットガイド溝144を備える。後側プラテンユニットガイド溝143には軸端部27aがスライド可能に挿入され、前側プラテンユニットガイド溝144にはボス26dがスライド可能に挿入される。後側プラテンユニットガイド溝143の後端部は後側位置決め用ガイド溝部分143aとなっており、前側プラテンユニットガイド溝144の後端部は前側位置決め用ガイド溝部分144aとなっている。
【0071】
ここで、右側の内側側板38は、その前端縁38aから外側に折れ曲がっている折れ曲がり部38bを備えており、後側プラテンユニットガイド溝143および前側プラテンユニットガイド溝144は、いずれも、折れ曲がり部38bの右側端縁38cと前端縁38aとの間から、前端縁38aを経由して、プリンター後方へ延びるように形成されているなお、左側の内側側板37にも折れ曲がり部を設け、左側の内側側板37における後側プラテンユニットガイド溝143および前側プラテンユニットガイド溝144を、それぞれ折れ曲がり部から形成することができる。或いは、後側プラテンユニットガイド溝143および前側プラテンユニットガイド溝144を、内側側板37の前端縁37aから所定の長さに渡って切り込むように形成し、後側プラテンユニットガイド溝143および前側プラテンユニットガイド溝144のそれぞれの軸開口端の付近に補強部材を取り付けてもよい。
【0072】
プラテンユニット30が閉じ位置30Aに閉じられる閉じ動作では、プラテンユニット30は、その姿勢を維持した状態で、開き位置30Bから円弧状の移動軌跡に沿ってプリンター後方へ移動する。プラテンユニット30が閉じ位置30Aまで押し込まれると、当該プラテンユニット30はプラテン位置決め機構41により所定の姿勢で位置決めされる。すなわち、プラテンユニット30の後側の軸端部27aは、後側プラテンユニットガイド溝143の後端部の後側位置決め用ガイド溝部分143aに位置して、その溝端に当接した状態となる。同時に、プラテンユニット30の前側のボス26dは、前側プラテンユニットガイド溝144の後端部の前側位置決め用ガイド溝部分144aに位置して、その溝端に当接した状態となる。この結果、図15に示すように、プラテン16は所定の姿勢で印刷位置に位置決めされる。
【0073】
本例においても、プラテン16の位置決めに際して、プラテン16を搭載しているプラテンユニット30(プラテンフレーム26)は、当該プラテンユニット30の前側のプリンター幅方向の両側のボス26dと、当該プラテンユニット30の後側のプリンター幅方向の両側の軸端部27aによって位置決めされる。この結果、プリンター前後方向におけるプラテンユニット30の傾きが規定されるので、プラテン16のプリンター前後方向における傾きが規定される。また、プラテンユニット30はプリンター幅方向の両側から位置決めされるので、プリンター幅方向におけるプラテン16の傾きが規定される。従って、プラテン支持機構にガタが発生していても、プラテン16は所定の姿勢で印刷位置に位置決めされる。
【0074】
さらに、プラテン16の位置決めに際して、プラテンユニット30のボス26dが前側プラテンユニットガイド溝144の溝端に当接し、軸端部27aが後側プラテンユニットガイド溝143の溝端に当接する。この結果、プリンター前後方向におけるプラテン16の位置決めが正確に行われる。
【0075】
なお、上記の実施の形態は、本発明をロール紙収納部を備えたロール紙プリンターに適用した例である。本発明のプラテン支持機構は、ロール紙収納部が備わっていないロール紙プリンター、記録紙搬送路を開放状態に切り替えるためにプラテンユニットが開閉されるプリンターなどにも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,1A・ロール紙プリンター、2・プリンターケース、3・開口部、4・開閉蓋、4A・開閉蓋閉じ位置、4B・開閉蓋開き位置、5・記録紙排出ガイド、5a・操作片、6・記録紙排出口、7・ロール紙収納部、8a電源スイッチ、8b・紙送りスイッチ、8c・動作状態表示ランプ、9・インクカートリッジ装着部、9a・装着口、10・インクカートリッジ、11・ロール紙受け皿、12・ロール紙、13・記録紙、14・繰り出しローラー、15・テンションローラー、16・プラテン、17・印刷ヘッド、17a・ノズル面、18・ヘッドキャリッジ、19・ガイド軸、20・紙送り駆動ローラー、21・紙送り従動ローラー、22・排紙駆動ローラー、23・排紙従動ローラー、25・記録紙切断機構、25a・固定刃、25b・可動刃、26・プラテンフレーム、26a・26b・側板部分、26c・底板部分、26d・ボス(前側位置決めピン)、27・支軸、27a・軸端部(後側位置決めピン)、30・プラテンユニット、30A・閉じ位置、30B・開き位置、31・プリンター本体フレーム、32・底板、33,34・側板、35・前側連結板、36・後側連結板、37,38・内側側板、37a,38a・前端縁、37b,37c・内側側板部分、37d・補強部材、38b・折れ曲がり部、38c・右側端縁、39・円弧溝、40A・プラテン支持機構、40R・右側プラテン支持機構、40L・左側プラテン支持機構、41,41A・プラテン位置決め機構、42・6節リンク機構、43・プラテンユニットガイド溝、43a・後側位置決め用ガイド溝部分、43b・直線状ガイド溝部分、43c・傾斜ガイド面、43d・前側位置決め用ガイド溝部分、46・開閉蓋取り付け枠、46a・下側枠、46b・上側枠、51・第1リンク、52・第2リンク、53・第3リンク、54・第4リンク、55・第5リンク、61・第1ピン節点、61a・支軸ピン、62・第2ピン節点、62a・支軸ピン、63・第3ピン節点、64・第4ピン節点、65・第5ピン節点、66・第6ピン節点、71・第1複合リンク、72・第2複合リンク、101・前側リンク、102・後側リンク、143・後側プラテンユニットガイド溝、143a・後側位置決め用ガイド溝部分、144・前側プラテンユニットガイド溝、144a・前側位置決め用ガイド溝部分、S1・第1移動軌跡、S2・第2移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドによる印刷位置を規定するプラテンと、
前記プラテンが搭載されているプラテンフレームと、
前記プラテンフレームを、前記プラテンが前記印刷位置に位置決めされる閉じ位置および当該閉じ位置から離れた開き位置に移動可能に支持しているプラテン支持機構を有し、
前記プラテン支持機構は、前記プラテンフレームが前記閉じ位置において予め定めた姿勢となるように、その開き方向の前側における両側の第1前側部位および第2前側部位、並びに、その開き方向の後ろ側における両側の第1後側部位および第2後側部位の4箇所で、当該プラテンフレームを位置決めするプラテン位置決め機構を備えていることを特徴とするプリンター。
【請求項2】
請求項1において、
前記プラテン位置決め機構は、
前記プラテンフレームの一方の側の前記第1前側部位および前記第1後側部位に対峙しているプリンター本体フレームの第1側板部分に形成した第1ガイド溝と、
前記プラテンフレームの他方の側の前記第2前側部位および前記第2後側部位に対峙している前記プリンター本体フレームの第2側板部分に形成した第2ガイド溝と、
前記プラテンフレームの前記第1前側部位および前記第1後側部位にそれぞれ取り付けられた第1前側位置決めピンおよび第1後側位置決めピンと、
前記第2前側部位および前記第2後側部位にそれぞれ取り付けられた第2前側位置決めピンおよび第2後側位置決めピンとを備えており、
前記プラテンフレームが前記閉じ位置に向かう途中の位置から、前記第1前側位置決めピンおよび前記第1後側位置決めピンが前記第1ガイド溝によって案内され、前記第2前側位置決めピンおよび前記第2後側位置決めピンが前記第2ガイド溝によって案内され、前記プラテンフレームの前記閉じ位置における前記第1前側部位および第1後側部位並びに前記第2前側部位および前記第2後側部位の位置決めがそれぞれ行われようになっていることを特徴とするプリンター。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1後側位置決めピンが前記第1ガイド溝における前記プラテンフレームの閉じ方向の溝端に当接し、第2後側位置決めピンが前記第2ガイド溝における前記プラテンフレームの閉じ方向の溝端に当接することにより、前記プラテンフレームの前記閉じ位置における閉じ方向の位置決めが行われるようになっていることを特徴とするプリンター。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1ガイド溝および前記第2ガイド溝における前記プラテンフレームの開き方向の溝端はそれぞれ溝開口端となっており、
前記第1側板部分における前記溝開口端が形成されている部分は、前記第1前側位置決めピンおよび前記第1後側位置決めピンが干渉しない状態で、補強部材によって補強されており、
前記第2側板部分における前記溝開口端が形成されている部分は、前記第2前側位置決めピンおよび前記第2後側位置決めピンに干渉しない状態で、補強部材によって補強されていることを特徴とするプリンター。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記プラテン支持機構は、前記プラテンフレームの開き方向における前後の部位において、前記第1前側部位および前記第1後側部位の側にそれぞれ取り付けた第1前側リンクおよび第1後側リンクと、前記第2前側部位および前記第2後側部位の側にそれぞれ取り付けた第2前側リンクおよび第2後側リンクとを有しており、
前記第1前側リンクおよび前記第2前側リンクのそれぞれは、第1リンクおよび第2リンクが第1ピン節点を介して直列に連結された構成の複合リンクであり、
前記第1後側リンクおよび前記第2後側リンクのそれぞれは、第3リンクおよび第4リンクが第2ピン節点を介して直列に連結された構成の複合リンクであり、
前記第1ピン節点と前記第2ピン節点の間に第5リンクが架け渡されており、
前記プラテンフレームの両側において、前記第1〜第5リンクによって、前記プラテンフレームを支持している6節の平行リンク機構が構成されていることを特徴とするプリンターのプラテン支持機構。
【請求項6】
請求項1において、
前記プラテン支持機構は、前記プラテンフレームの開き方向における前後の部位において、前記第1前側部位および前記第1後側部位の側にそれぞれ取り付けた第1前側リンクおよび第1後側リンクと、前記第2前側部位および前記第2後側部位の側にそれぞれ取り付けた第2前側リンクおよび第2後側リンクとを有しており、
これらのリンクによって、前記プラテンフレームの両側において、当該プラテンフレームを支持している4節の平行リンク機構が構成されていることを特徴とするプリンター。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載のプラテン支持機構と、
ロール紙を収納するロール紙収納部と、
前記ロール紙収納部を開閉するための開閉蓋とを有し、
前記開閉蓋の開閉に連動して前記プラテンフレームが開閉することを特徴とするロール紙プリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−102016(P2011−102016A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258621(P2009−258621)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】