プリンタ内移送向け外形を有する固体インクスティック
【課題】簡便に且つ大量に装填できジャミングも生じにくい固体インクスティックを提供する。
【解決手段】固体インクプリンタ202にて使用される固体インクスティック206の本体外面上に、その本体の長軸294に対してほぼ平行になるよう、溝250を形成する。その溝250の少なくとも一部分292は非直線状にする。インク送給系204のガイド内に装填されたスティック206を駆動手段であるドライブベルト216に当接させ、そのベルト216によってガイド内で摺動させることにより、所定経路に沿ってそのスティック206を案内し液化器に導く。強力なバネ等がなくなるため大量装填作業を簡便に実施でき、スティック206が長めでもジャミングしにくくなる。
【解決手段】固体インクプリンタ202にて使用される固体インクスティック206の本体外面上に、その本体の長軸294に対してほぼ平行になるよう、溝250を形成する。その溝250の少なくとも一部分292は非直線状にする。インク送給系204のガイド内に装填されたスティック206を駆動手段であるドライブベルト216に当接させ、そのベルト216によってガイド内で摺動させることにより、所定経路に沿ってそのスティック206を案内し液化器に導く。強力なバネ等がなくなるため大量装填作業を簡便に実施でき、スティック206が長めでもジャミングしにくくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体インクスティック乃至ペレットを加熱して得られる液化インクを1個又は複数個のプリントヘッドに供給する高速プリンタに関し、特にそのプリンタで使用する固体インクスティックの改良によるインク送給系の構成上及び機能上の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
固体インクプリンタとして知られるプリンタは、狭義のプリンタとしてだけでなく多機能機等としても実現することができ、しかもレーザ方式や液体インクジェット方式の高速乃至大出力文書複製装置に比べて数多くの利点がある画像形成装置である。そうした利点の中には、例えば、単位時間当たり文書複製枚数即ち文書作成スループットが高いこと、可視像転写プロセスの実行に必要な機械部品の点数が少ないこと、交換が必要な消耗品が少ないこと、シャープな像が得られること、包装ゴミが少なく環境に優しいこと等が含まれる。
【0003】
図1に、固体インクを使用する画像形成装置の一例として固体インクプリンタの一般的な構成100を模式的に示す。この図に示すプリンタ100には、室温下で固体状態を保つ固体インクスティックを受け入れそれを順繰りに先送りする固体インク送給系即ちインクローダ110が設けられているので、ユーザは、スティックを随時そのインクローダ110に入れるだけでインクを補充することができる。また、複数の色を使用する場合はインクローダ110も色別に設ける。即ち、白黒プリンタならブラックインクだけでよいが、カラープリンタなら例えばブラック、シアン、イエロー及びマゼンタ各色のインクが要るのが普通であるので、各色毎にインクローダ110を設け、各色用インクローダ110にその色のスティックを装填してその内部のスティック送給路沿いに送給するようにする。
【0004】
このプリンタ100には、固体インクスティックを液化させるインク液化器の一例として、スティックを加熱しその融点に比べて十分に高い温度まで昇温させるインクヒータ120が設けられている。このヒータ120内にはスティック先端と接触するよう設けられたメルトプレートがあるので、ヒータ稼働時には、そのメルトプレートの表面を昇温させることによって、スティックのうちメルトプレートとの接触部分を熔融、液化させることができる。液化させたインクはプリントヘッド130に供給する。供給先となるヘッド130の個数は1個でも複数個でもよく、また供給の手段としては重力を利用してもよいしポンピングを実施してもよいしその双方を併用してもよい。各ヘッド130は、供給される液化インクからインク滴を生成しそれを回転式プリントドラム140上に被着させることによって、個々の画素を現像する。この動作は、ドラム140上に所望画像が再現されるよう、プリンタコントローラ180が生成する制御信号190に応じて行う。そして、シートフィーダ160から供給される紙その他の媒体170を加圧ローラ150の働きでドラム140に押しつけることにより、ドラム140上のインク画像をその媒体170上に転写させる。なお、この画像転写プロセスを実行する際には、画像転写直後にインクが完全に固化するよう、インク温度を綿密に制御するのが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした固体インクプリンタによれば、他種画像複製装置を使用したのでは享受できない利点を享受することができる。しかしながら、従来の固体インク印刷技術には、高速大量印刷時に若干問題となりうる点が残されていた。それは、装填容量が大きなインクローダを設け、またその余地が発生したとき随時固体インクスティックを装填、補充できるようそのインクローダを構成しておかないと、大量印刷が行えないことである。
【0006】
そのため、従来における固体インクプリンタ用のインクローダは、通常、複数個の固体インクスティックを数珠繋ぎに装填できるように設けられたチャネル乃至シュートを備え、それらのスティックのうち先頭に位置するものから順にその液化器により液化させる構成を採っていた。この構成では、シュート内のスティックのうち末尾に位置するものの後端をバネ付のプッシュブロック等によって先頭方向に付勢し、先頭に位置するスティックの先端を液化器に当接させる。従って、シュート内にスティックを補充する際には、オペレータが自分の手でスティックとプッシュブロックの間に隙間を作り、十分な隙間ができたらその隙間に新たなスティックを装填する、という作業が必要になるが、これは若干面倒なことである。例えば、新たに導入した大容量高速プリンタを使用し始める際には、多数のスティックをそのプリンタに装填しなければならない。その際には、オペレータは、スティックを1個装填しては新たな隙間を作りそこに次のスティックを装填する、という具合に、装填個数分だけ装填作業を繰り返す必要がある。シュートが複数本ある場合はこれをシュートの本数分だけ繰り返す必要がある。
【0007】
従来技術には、更に、バネ付勢プッシュブロック機構を設けている分、各シュート内に装填できる固体インクスティックの個数が制約される、という問題もある。しかも、シュートを長くして多数のスティックを装填できるようにするには、その機構で使用するバネを長くて強力なバネにする必要があり、そうするとその機構はほとんど採用困難な程に肥大化及び高価格化してしまう。また、多数のスティックを装填できても、強力なバネに逆らってアクセスカバーを開閉するのは面倒なことであり、スティック装填作業を担うオペレータにとってはかなりの負担になる。
【0008】
そして、バネにより付勢されたプッシュブロックによって固体インクスティックを背後から押し出す仕組みでは、押すことによってそのスティックの向きが望ましくない向きに変わることがある。特に、その丈が長いスティック等、大きめのスティックをその背後から押すと、スティックの姿勢がねじれてジャミングが発生しやすい。送給路との摩擦が大きい場合にはとりわけジャミングが発生しやすいので、摩擦を少なくするために潤滑テープその他の低摩擦面体を使用することもあるが、そうしたものを使用するとその分は製品コストが高まってしまう。
【0009】
本発明は、従来技術又はそれに類する技術に係るインク及びインクローダにおける上述の問題点乃至制約点に鑑み、固体インクプリンタにてより好適に使用できるよう固体インクスティックを改良し、またそのスティック又はその断片を好適に駆動できる駆動手段を提供することを、目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに、本発明の一実施形態は、(1)固体インクプリンタにて使用される固体インクスティックであって、(2)その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており、(3)その溝の少なくとも一部分が湾曲している。
【0011】
また、本発明の他の実施形態は、(1)固体インクプリンタに実装される固体インク送給系であって、(2)その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、(3)ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、を備える。
【0012】
そして、本発明の更に他の実施形態は、(1)固体インク送給系を有する固体インクプリンタであって、その固体インク送給系が、(2)その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、(3)ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えばその溝に嵌るドライブベルト等の駆動手段によって装填部等から液化部等へと移送することができ、移送先で液化させてプリントヘッドへ送給することができるよう、固体インクスティックに溝を形成することとしたため、固体インクプリンタ用のインク送給系により適する固体インクスティックを得ることができる。また、本発明の固体インクスティック或いはその送給系にはこれ以外にも様々な特徴事項がある。それらはそれ単独で或いは様々に組み合わせて使用することができる。それによって、コスト低減、インク装填容量増大、送給系信頼度向上等を実現してより優れたプリンタを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態に関し別紙図面を参照して説明する。本件技術分野において熟練を積んだ方々(いわゆる当業者)であれば、以下の説明から、上述のものもそれ以外のものも含め、本発明に係る固体インクスティック或いはその送給系の特徴をより好適に理解することができよう。
【0015】
また、本願における「プリンタ」とは、複製装置一般のことである。従って、狭義のプリンタの他、ファクシミリ機、複写機、いわゆる多機能機等もこれに包含される。更に、「印刷ジョブ」とは、複製対象となる1個又は複数個の事物の電子的表現物を含む情報等のことである。そして、インクの「案内」「移送」「送給」「供給」とは、装填部から液化部まで或いは更にプリントヘッドまでインクを届けることを指している。インクの「案内」「移送」「送給」「供給」経路上には、本発明に係るプリンタの実施にとり肝要でないものも含め、種々の連結手段、管路、マニホルド、ヒータ等を付加することができる。
【0016】
更に、固体インクプリンタの全体構成は前述した通りである。以下の説明は、改良型の固体インクスティック、そのスティックを送給できる改良型のインク送給系、並びにその送給系が実装された新たな固体インクプリンタに関するものである。
【0017】
図2に本発明の一実施形態に係るインク送給系204を備えた固体インクプリンタ202を示す。本プリンタ202は固体インクスティック206をブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの四色使用する多色プリンタであり、各色に対応して設けられた合計4本のシュート208を有している。それらのシュート208にはそれぞれ湾曲区間207があり、その区間207は例えばある1本の軸を中心とする円弧に沿って延びる単純弧形状としてもよいし、別々の軸を中心とする複数本の円弧をつないだ線に沿って延びる複合弧形状としてもよいが、何れにせよスティック206を端から端まで滞りなく移送できる立体的形状にする必要がある。また、複合弧形状とするなら、区間207の全長に占める個々の円弧の割合を任意に定めることができ、従ってその全体形状を柔軟に設計できる。但し、これら単純弧や複合弧は区間207の湾曲形状の一例に過ぎず、これに類する他の非直線的形状を使用することもできるので、本願では使用できる種々の形状全てを「湾曲」という表現で代表させることとする。更に、シュートに湾曲区間がない形態でも本発明に係る固体インクプリンタをカラープリンタとして実施できることにご留意頂きたい。
【0018】
また、本プリンタ202では、図示の通りフレーム203により送給系204を支持する構成を採っており、その頂部近傍には装填部224が、また底部近傍には液化部230が、それぞれ配置されている。送給系204は装填部224から液化部230へと一群の固体インクスティック206を送るシステムであり、複数個(図示例では各色当たり1個ずつ合計4個)の副送給系から構成されている。各副送給系は少なくともスティック装填口、スティック送給用のシュート208、並びに液化器を有しているので、本プリンタ202には複数本(図示例では4本)のシュート208がある。それら複数本のシュート208は、互いに一体に形成してもよいし、別体に形成してもよい。各シュート208は、それぞれ対応する色、例えばブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのうち何れかの色のスティック206を入れることができ、そのスティック206を所定経路に沿ってその副送給系の液化器付近まで案内できるように構成されている。
【0019】
更に、各シュート208には図示の通り縦長開口209が形成されている。オペレータは、この開口209を介し、そのシュート208におけるスティック206の進み具合をチェックすることができる。また、この開口209を設けることで重量を減らし素材コストを抑えることができる。更に、各シュート208沿いには押圧部材228が配置されている。この部材208はスティック206を押さえつけドライブベルト216に好適に接触させる。
【0020】
図3に、本プリンタ202におけるインク送給系204の構成をより詳細に示す。送給系204は複数個の副送給系から構成されており、各副送給系はそれぞれスティック装填口、スティック送給用シュート及びスティック液化用液化器を備えている。
【0021】
具体的には、図示の通り、順にブラック、シアン、イエロー及びマゼンタの各色用に使用される4個の副送給系260、262、264及び266が、互いにほぼ平行に配置されている。なお、ここで述べた色の順序は一例であり、副送給系の順序は機種毎に或いはプリンタ毎に任意に設計乃至設定することができる。
【0022】
また、各副送給系は、そのスティック装填口の開口形状が、対応する色のスティック206しか装填できない鍵化開口形状(排他開口形状)になっているが、その点を除けばほぼ同様の構成であるので、以下の記載ではブラック用副送給系260のみ詳しく説明し他の副送給系については説明を省略する。
【0023】
ブラック用副送給系260には、ブラックインクのスティック206を案内するガイド部材としてシュート208が設けられている。そのシュート208は、複数個のスティック206を装填できるよう、またそれらを所定経路210に沿って装填部224から液化部230へと送ることができるよう、構成されている。更に、シュート208のスティック装填口の形状は、そのシュート208に対応するある一色のスティック206(ブラック用の副送給系260ならブラックインクのスティック206)しか通せないよう設計乃至設定されている。
【0024】
ブラック用副送給系260に設けられている部材のうち、ブラックインクのスティック206を液化部方向付勢するのに使用される駆動部材であるドライブベルト216は、副送給系260内に装填された複数個のスティック206それぞれに当接するよう、副送給系260内スティック送給経路210に沿って且つその経路210の大半乃至主要部分に亘って、引き回されている。即ち、図示の通り、シュート208内の各所でベルト216が別々のスティック206に同時当接し、それらのスティック206がベルト216によって同時に液化部方向付勢される。
【0025】
シュート208は様々な形状にすることができるが、図4に示す例ではシュート208のうち装填部224に連なる部分に第1直線区間268が設けられている。この区間268は図示の通りほぼ水平に延びており、またスティック装填口となるシュート端256が本プリンタ202の頂部に開口しているので、スティック206をシュート208内に入れる際には、そのシュート端256に横から差し入れるだけでよい。
【0026】
本プリンタ202の内部スペースを有効活用するには、直線状のシュートに入れられる個数よりも多くのスティック206が入るように、シュート208の形状を非直線状にした方がよい。そのため、図示例における各シュート208は、上述の第1直線区間268に加えて、当該直線区間268の先端から下方へと曲がっていく湾曲区間207や、当該湾曲区間207の下端からほぼ下向きに液化部230まで延びる第2直線区間270を有している。このように液化部230の上方にほぼまっすぐ上下に延びる区間270を設けるのは、そのシュート208を通って送られてくるスティック206を、区間270内では重力で移動させて液化部230に届けるためである。
【0027】
各シュートは例えば鉛直線272と平行な平面に沿って設けてもよいが、図示例におけるシュート208は鉛直線272に対して非平行な複数枚の平面を通って、即ち鉛直線272から見てねじれている面に沿って、設けられている。シュート208は、その下部に近づくにつれて図示の通り鉛直線272から徐々に逸れていく。従って、シュート208の長軸方向274即ち固体インクスティック206の進行方向は、鉛直線272に対してある角度φだけずれている。この偏角φは、シュート208内により多数の固体インクスティック206を装填できるように設定する。
【0028】
図5に、本プリンタ202のインク送給系204に設けられたドライブベルト216をより詳細に示す。このベルト216は、スティック送給経路210のうち少なくとも一部にてスティック206と接触するよう、またシュート208に沿って走行するよう、配備する必要がある。その際、シュート208の湾曲区間207だけでなく、第1直線区間268や第2直線区間270にも沿わせる方がよい。ベルト216を駆動する手段としては、図示例ではモータトランスミッションアセンブリ222が設けられている。このアセンブリ222が稼働するとドライブプーリ218が回転し、そのプーリ218に架かっているベルト216が走行する。
【0029】
ドライブベルト216としては例えば円形断面のシームレスベルトを用い、ドライブプーリ218の他に1個又は複数個のアイドラプーリ220に架けて、シュート208沿いに走行させるとよい。ベルト走行方向に沿ったプーリ218及び220の間隔や変位はシュート208の構成や機構の構成に応じて適宜定めればよい。また、押圧部材228は例えばピンチローラであり、スティック206をベルト216方向に押しつけるようバネ等によって付勢されている。これによって、ベルト216に対してスティック206を十分強く摩擦させることができ、ひいてはスティック206がベルト216から脱線して転落することを防止することができる。
【0030】
ドライブベルト216の直径は例えばその全長に亘り均一にし、その全長と併せ、スティック206を好適に先送りできるように定める。また、ベルト216を形成する素材としては十分に耐久性のある素材を使用する。使用できる素材は多々あるが、例えばプラスチックやエラストマを用いるのが望ましい。エラストマを使用するなら例えばポリウレタンにするとよい。
【0031】
プーリ218及び220は互いに同一サイズ、同一形状でよい。その周面にはベルト216が架かる溝を設ける。その溝の直径はベルト216の直径とほぼ同じ直径にすればよい。プーリ218及び220を形成する素材としてはやはり十分に耐久性のある素材を使用する。使用できる素材は多々あるが、例えばプラスチックを用いるのが望ましい。プラスチックを使用するなら例えばアセチル系の素材にするとよい。
【0032】
更に、シュート208の内面のうち固体インクスティック206と接触する可能性のある面は、スティック206の外面212との間の摩擦係数が十分に小さくなるよう形成する。これは、シュート208内におけるスティック206の摺動を円滑にするためである。具体的には、その面を形成する素材を適宜選択して摩擦係数を小さくし、シュート208内でスティック206が好適に流れるようにする。他方、シュート208の内面とドライブベルト216の間の摩擦係数も小さい方がよい。この部位の摩擦係数を十分小さくすることで、シュート208のベルトガイド部内におけるベルト216の走行を円滑にすることができる。逆に、ベルト216とスティック206の間の摩擦係数は十分に大きくしなければならない。これは、ベルト216をスティック206にしっかりと当接させるためである。しっかりと当接していれば、ベルト216を走行させることでスティック206をシュート208沿いに好適に前進させることができる。なお、摩擦係数値はそのシステムにおける種々の要因によって変動する性質のものであり、一定の数値をとるわけではない。例えばスティックサイズ、スティック間接触状態、重力作用方向に対するスティック送給方向の偏角等によって、摩擦係数値は異なる。
【0033】
更に、本プリンタ202のインク送給系204においては、様々なセンサやインジケータ、例えばスティック206の存否を検知するセンサが、シュート208内の随所に設けられている。そのうち装填口センサアセンブリ276は例えば装填部224の近傍に設けられており、その出力から、そのシュート208内にスティック206を追加できるか否かを知ることができる。また、インク不足センサアセンブリ278は例えば液化部230より若干手前に配置されており、その出力から、そのシュート208におけるスティック206の残数又は残寸がある下限値以下になったか否かを知ることができる。
【0034】
更に、インク切れセンサアセンブリ280は例えば液化部230のすぐそばに配置されており、その出力から、そのシュート208内にスティック206があるか否かを知ることができる。これらのセンサアセンブリ276、278及び280は様々な形態で実現することができるが、例えば図示の通りシュート208の壁材内にその枢軸をおくフラグを用いるとよい。このフラグは、面前にスティック206がないときには図中実線で示す第1のポジション282を採り、あるときには図中破線で示す第2のポジション284を採るので、フラグのポジション(姿勢)が282か284かを検知、判別するセンサ又はスイッチを併用することで、センサアセンブリ276、278及び280を実現することができる。なお、こうしたフラグ機構に付加又は代替して別種のセンシングデバイス、例えば接近検知スイッチや反射式乃至往復反射式光学センサを設けてもよい。
【0035】
図5Aに、インク不足センサアセンブリ278を例にこれらのセンサの他の実施形態を示す。図示されているセンサ278はシュート208の壁面に実装されており、一種のスイッチ、例えばマイクロスイッチ或いはフォトインタラプタとして構成されている。即ち、シュート208の壁面上又は壁心に配置された枢軸を中心に枢動する遮蔽板の動きをセンサ279により検知するスイッチとして構成されている。具体的には、スティック206が面前に到来すると遮蔽板のポジションが第1のポジション282(破線)から第2のポジション284(実線)へと変化するので、センサ279によって遮蔽板のポジションが282かそれとも284かを判別することで、スティック206の有無を判別できる。
【0036】
図6に、本プリンタ202のインク送給系204のうち液化部230近傍の部分を示す。図示の通り、液化部230はスティック206のうち先頭のものを受け止めるよう構成されており、ドライブプーリ218及びドライブベルト216はそのスティック206から若干離れた位置を占めるように配置されている。ベルト216との間に間隔があるので、液化部230内のスティック206を液化部230内の液化器に押しつける力はベルト停止中は重力だけとなるが、ベルト稼働中は後続のスティック206による後押しの力も加わる。即ち、ベルト216と接触する後続のスティック206がある状態でベルト216を稼働させるとそのスティック206が押し下げられ前方のスティック206を後押しする。
【0037】
或いは、ドライブプーリ218をより低い位置に設け、液化部230内のスティック206がそのプーリ218と接触するようにしてもよい。そうした構成では、ベルト216からスティック206に大きな力を加えることができるので、液化器に対するスティック206の接触圧も高くなる。
【0038】
図7に、図2〜図5に示したプリンタ202にて使用するスティック206を詳細に示す。この図に示すスティック206は、例えば想定外プリンタ機種への装填や他色スティックとの混同を防ぐことができるよう鍵化断面形状(排他断面形状)を有している。即ち、その装填口が相応する鍵化開口形状(排他開口形状)を有するインク送給系204乃至副送給系にはその装填口を介して装填できるがそれ以外の系には装填することができないよう、このスティック206の表面には1個又は複数個の特徴的な鍵化凹凸286が縦方向に設けられている。このスティック206の表面には、更に、横方向に延びる1個又は複数個の被案内用凹凸288も形成されている。この凹凸288は、そのシュート208内でそのスティック206を支持しつつ、シュート208内におけるスティック206の不要な動きを制限し所定経路210に沿って案内するのに、使用される。なお、これら誤装填防止用鍵化凹凸286や被案内用凹凸288は、装填方向に応じその目的機能を達成するよう設定、形成することができる。即ち、ここに示したのは装填方向が縦方向の場合の例であり、装填方向が横方向等の場合でもそれに応じて必要な凹凸を形成し利用することができる。
【0039】
シュート208の装填口は、例えば別部材をそのシュート208に取り付けて形成することができ、任意のサイズ及び形状にすることもでき、更にはそのシュート208に通したいスティック206の形状や通したくないスティック206の形状に応じて所要の鍵化開口形状にすることもできる。但し、説明の簡明化のため、以下の記述では、こうした装填機能及び鍵化機能をシュート208と一体の部材によるものとして説明することとする。
【0040】
図示の通り、スティック206の底面には二対の平坦部290、一対の湾曲部292及び溝250が形成されている。そのうち平坦部290はシュート208の直線区間268及び270にて、また湾曲部292は同じく湾曲区間207にて、それぞれ所定のスティック送給経路210沿いにスティック206を動かせるようにするために設けられた部分であり、平坦部290はスティック206の両端に一対ずつありまた湾曲部292は中央にある。対をなす平坦部290同士或いは湾曲部292同士の間には隙間があり、その隙間に形成されている一連の溝250も、同様に、直線的な部分と湾曲している部分とを有している。
【0041】
図8に、本プリンタ202のインク送給系204に装填されたスティック206のうち、直線区間268又は270沿いでドライブベルト216に載っているものを示す。図示の通り、スティック206は全体としてその頂面が凸、底面が凹というように長軸294に対し湾曲しているので、この直線部分では、スティック206の底面のうち平坦部290がベルト216に接触する。より具体的には、溝250のうち左右の平坦部290に挟まれている部分にベルト216が嵌り込んでいるので、ベルト216を駆動することでこのスティック206を先送りすることができる。
【0042】
図9に、本プリンタ202のインク送給系204に装填されたスティック206のうち、湾曲区間207沿いでドライブベルト216に載っているものを示す。図示の状態でベルト216に接触するのはスティック206の底面上の湾曲部292である。より厳密には、溝250のうち左右の湾曲部292に挟まれている部分にベルト216が嵌る。
【0043】
図10に、本発明の他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Aのインク送給系204Aを示す。この送給系204Aは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、送給する固体インクスティック206Aの溝250Aがシュート208Aの中心からずれた位置にある点(またそれに対応してシュート端256Aの鍵化突起258Aもずれた位置にある点)で相違している。このように中心以外に溝を配置してもよい。
【0044】
図11に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Bのインク送給系204Bを示す。この送給系204Bにて使用するドライブベルト216Bは方形断面のフラットベルトであり、その表面には歯291Bが形成されている。シュート208Bに装填された固体インクスティック206Bをこの歯291Bと接触させることができるので、ベルト216Bが平坦でもスティック206Bを好適に前進させることができる。
【0045】
図12に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Cのインク送給系204Cを示す。この送給系204Cは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Cの断面形状が略D字状乃至半円形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Cに装填できる略半円形のもの206Cを使用する。
【0046】
図13に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Dのインク送給系204Dを示す。この送給系204Dは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Dの断面形状が略三角形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Dに装填できる略三角形のもの206Dを使用する。
【0047】
図14に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Eのインク送給系204Eを示す。この送給系204Eは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Eの断面形状が略六角形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Eに装填できる略六角形のもの206Eを使用する。
【0048】
図15に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Fのインク送給系204Fを示す。この送給系204Fは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Fの断面形状が略五角形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Fに装填できる略五角形のもの206Fを使用する。
【0049】
以上述べた各実施形態においては、シュート壁が固体インクスティックの外面にぴったりと寄り添うようシュートが形成されているが、スティックの全周面がどこかのシュート断面でシュート壁によってぐるりと囲まれるようにする必要はなく、またシュートの全長に亘りシュート壁が続くようにする必要もない。例えば、シュート壁のうち一面又は数面を全面的に又は部分的に開放させてもよい。即ち、固体インクスティックをそのシュートで好適に支持、案内等することができ、また固体インクスティックの装填や送給を好適に補助できるような形状、構成であればよいので、シュートは様々な形状、構成にすることができる。
【0050】
図16に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ302のインク送給系304を示す。この送給系304は図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、インクの色毎に別々の鍵化開口378がシュート308に設けられている点で相違している。具体的には、このシュート308には、ブラック用、シアン用、マゼンタ用及びイエロー用に別々の鍵化開口380、382、384及び386が設けられている。各鍵化開口378の開口形状は互いに異なっており、その開口に通したい色の固体インクスティックだけを通すことができ他の色のスティックは通せないよう、スティック形状に合わせて設計されている。図示しないが、各色スティックの形状はその色にユニークなものにする。
【0051】
図17に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ402にて使用する固体インクスティック406を示す。このスティック406は図2〜図6に示したスティック206と同じくシュート内湾曲区間を移動できるように構成されているが、その形状がL字状である点で異なっている。このスティック406にも溝450が形成されているので、その溝450に嵌り込んだドライブベルトを走行させることで、このスティック406を所定経路沿いに液化器まで移動させることができる。
【0052】
図18及び図19に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ502にて使用する固体インクスティック506を示す。このは図2〜図6に示したスティック206と同じくシュート内湾曲区間を移動できるように構成されているが、その形状がC字状である点で異なっている。このスティック506にも溝550が形成されているので、その溝550に嵌り込んだドライブベルトを走行させることで、このスティック506を所定経路沿いに液化器まで移動させることができる。
【0053】
以上、本発明の各種実施形態について説明した。いわゆる当業者であれば当該説明に基づき種々の変形、改良を想到することができよう。本発明の技術的範囲には、そうした変形や改良のうち当業者が本願の記載に基づき容易に想到できるものも包含されるので、それらを包括する特許権の付与を求めたい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来における高速固体インクプリンタの概略を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る固体インクプリンタのインク送給系、特に固体インクスティックを液化器に送給することができるようにそのプリンタ内に配置された状態を示す一部切欠斜視図である。
【図3】図2に示した状態にあるインク送給系を詳示する一部切欠斜視図である。
【図4】図2に示した状態にあるインク送給系のうち固体インクスティック用のガイドを示す斜視図である。
【図5】図2に示した状態にあるインク送給系内の固体インクスティックを液化器に送る駆動部材を含めたガイドアセンブリを示す斜視図である。
【図5A】図5に示したガイドアセンブリのうちセンサ部分を示す平面図である。
【図6】図5に示したガイドアセンブリのうち液化器近傍部分を詳示する斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係り、図6に示したガイドアセンブリによってそのインク送給系の液化器に送られる固体インクスティックを示す斜視図である。
【図8】図6に示したガイドセンブリの駆動部材直線区間にて、図7に示した固体インクスティックが採る状態を示す側面図である。
【図9】図6に示したガイドセンブリの駆動部材湾曲区間にて、図7に示した固体インクスティックが採る状態を示す側面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系を構成する駆動部材がシュート及びスティックの中心からずれた位置にある実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系の駆動部材がフラットで歯が付いている実施形態を示す斜視図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートがD字状断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートが三角形断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートが六角形断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートが五角形断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用されるインク送給系、特にそのブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー固体インクスティック用装填口形状をそれぞれ鍵化開口形状即ち排他開口形状とした実施形態を示す平面図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタのインク送給系によりそのプリンタのプリントヘッドまで送給される固体インクスティック、特にその形状がL字状の実施形態を示す平面図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタのインク送給系によりそのプリンタのプリントヘッドまで送給される固体インクスティック、特にその形状がC字状の実施形態を示す平面図である。
【図19】図18に示した固体インクスティックの端面図である。
【符号の説明】
【0055】
202,202A〜202F,302,402,502 固体インクプリンタ、204,204A〜204F,304 インク送給系、206,206A〜206F,406,506 固体インクスティック、208,208A〜208F,308 シュート、210 スティック送給経路、212 スティック外面、216,216B ドライブベルト、218 ドライブプーリ、220 アイドラプーリ、222 モータトランスミッションアセンブリ、250,250A,450,550 スティック溝、292 湾曲部、294 スティック長軸(スティック中心線)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体インクスティック乃至ペレットを加熱して得られる液化インクを1個又は複数個のプリントヘッドに供給する高速プリンタに関し、特にそのプリンタで使用する固体インクスティックの改良によるインク送給系の構成上及び機能上の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
固体インクプリンタとして知られるプリンタは、狭義のプリンタとしてだけでなく多機能機等としても実現することができ、しかもレーザ方式や液体インクジェット方式の高速乃至大出力文書複製装置に比べて数多くの利点がある画像形成装置である。そうした利点の中には、例えば、単位時間当たり文書複製枚数即ち文書作成スループットが高いこと、可視像転写プロセスの実行に必要な機械部品の点数が少ないこと、交換が必要な消耗品が少ないこと、シャープな像が得られること、包装ゴミが少なく環境に優しいこと等が含まれる。
【0003】
図1に、固体インクを使用する画像形成装置の一例として固体インクプリンタの一般的な構成100を模式的に示す。この図に示すプリンタ100には、室温下で固体状態を保つ固体インクスティックを受け入れそれを順繰りに先送りする固体インク送給系即ちインクローダ110が設けられているので、ユーザは、スティックを随時そのインクローダ110に入れるだけでインクを補充することができる。また、複数の色を使用する場合はインクローダ110も色別に設ける。即ち、白黒プリンタならブラックインクだけでよいが、カラープリンタなら例えばブラック、シアン、イエロー及びマゼンタ各色のインクが要るのが普通であるので、各色毎にインクローダ110を設け、各色用インクローダ110にその色のスティックを装填してその内部のスティック送給路沿いに送給するようにする。
【0004】
このプリンタ100には、固体インクスティックを液化させるインク液化器の一例として、スティックを加熱しその融点に比べて十分に高い温度まで昇温させるインクヒータ120が設けられている。このヒータ120内にはスティック先端と接触するよう設けられたメルトプレートがあるので、ヒータ稼働時には、そのメルトプレートの表面を昇温させることによって、スティックのうちメルトプレートとの接触部分を熔融、液化させることができる。液化させたインクはプリントヘッド130に供給する。供給先となるヘッド130の個数は1個でも複数個でもよく、また供給の手段としては重力を利用してもよいしポンピングを実施してもよいしその双方を併用してもよい。各ヘッド130は、供給される液化インクからインク滴を生成しそれを回転式プリントドラム140上に被着させることによって、個々の画素を現像する。この動作は、ドラム140上に所望画像が再現されるよう、プリンタコントローラ180が生成する制御信号190に応じて行う。そして、シートフィーダ160から供給される紙その他の媒体170を加圧ローラ150の働きでドラム140に押しつけることにより、ドラム140上のインク画像をその媒体170上に転写させる。なお、この画像転写プロセスを実行する際には、画像転写直後にインクが完全に固化するよう、インク温度を綿密に制御するのが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした固体インクプリンタによれば、他種画像複製装置を使用したのでは享受できない利点を享受することができる。しかしながら、従来の固体インク印刷技術には、高速大量印刷時に若干問題となりうる点が残されていた。それは、装填容量が大きなインクローダを設け、またその余地が発生したとき随時固体インクスティックを装填、補充できるようそのインクローダを構成しておかないと、大量印刷が行えないことである。
【0006】
そのため、従来における固体インクプリンタ用のインクローダは、通常、複数個の固体インクスティックを数珠繋ぎに装填できるように設けられたチャネル乃至シュートを備え、それらのスティックのうち先頭に位置するものから順にその液化器により液化させる構成を採っていた。この構成では、シュート内のスティックのうち末尾に位置するものの後端をバネ付のプッシュブロック等によって先頭方向に付勢し、先頭に位置するスティックの先端を液化器に当接させる。従って、シュート内にスティックを補充する際には、オペレータが自分の手でスティックとプッシュブロックの間に隙間を作り、十分な隙間ができたらその隙間に新たなスティックを装填する、という作業が必要になるが、これは若干面倒なことである。例えば、新たに導入した大容量高速プリンタを使用し始める際には、多数のスティックをそのプリンタに装填しなければならない。その際には、オペレータは、スティックを1個装填しては新たな隙間を作りそこに次のスティックを装填する、という具合に、装填個数分だけ装填作業を繰り返す必要がある。シュートが複数本ある場合はこれをシュートの本数分だけ繰り返す必要がある。
【0007】
従来技術には、更に、バネ付勢プッシュブロック機構を設けている分、各シュート内に装填できる固体インクスティックの個数が制約される、という問題もある。しかも、シュートを長くして多数のスティックを装填できるようにするには、その機構で使用するバネを長くて強力なバネにする必要があり、そうするとその機構はほとんど採用困難な程に肥大化及び高価格化してしまう。また、多数のスティックを装填できても、強力なバネに逆らってアクセスカバーを開閉するのは面倒なことであり、スティック装填作業を担うオペレータにとってはかなりの負担になる。
【0008】
そして、バネにより付勢されたプッシュブロックによって固体インクスティックを背後から押し出す仕組みでは、押すことによってそのスティックの向きが望ましくない向きに変わることがある。特に、その丈が長いスティック等、大きめのスティックをその背後から押すと、スティックの姿勢がねじれてジャミングが発生しやすい。送給路との摩擦が大きい場合にはとりわけジャミングが発生しやすいので、摩擦を少なくするために潤滑テープその他の低摩擦面体を使用することもあるが、そうしたものを使用するとその分は製品コストが高まってしまう。
【0009】
本発明は、従来技術又はそれに類する技術に係るインク及びインクローダにおける上述の問題点乃至制約点に鑑み、固体インクプリンタにてより好適に使用できるよう固体インクスティックを改良し、またそのスティック又はその断片を好適に駆動できる駆動手段を提供することを、目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに、本発明の一実施形態は、(1)固体インクプリンタにて使用される固体インクスティックであって、(2)その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており、(3)その溝の少なくとも一部分が湾曲している。
【0011】
また、本発明の他の実施形態は、(1)固体インクプリンタに実装される固体インク送給系であって、(2)その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、(3)ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、を備える。
【0012】
そして、本発明の更に他の実施形態は、(1)固体インク送給系を有する固体インクプリンタであって、その固体インク送給系が、(2)その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、(3)ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えばその溝に嵌るドライブベルト等の駆動手段によって装填部等から液化部等へと移送することができ、移送先で液化させてプリントヘッドへ送給することができるよう、固体インクスティックに溝を形成することとしたため、固体インクプリンタ用のインク送給系により適する固体インクスティックを得ることができる。また、本発明の固体インクスティック或いはその送給系にはこれ以外にも様々な特徴事項がある。それらはそれ単独で或いは様々に組み合わせて使用することができる。それによって、コスト低減、インク装填容量増大、送給系信頼度向上等を実現してより優れたプリンタを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態に関し別紙図面を参照して説明する。本件技術分野において熟練を積んだ方々(いわゆる当業者)であれば、以下の説明から、上述のものもそれ以外のものも含め、本発明に係る固体インクスティック或いはその送給系の特徴をより好適に理解することができよう。
【0015】
また、本願における「プリンタ」とは、複製装置一般のことである。従って、狭義のプリンタの他、ファクシミリ機、複写機、いわゆる多機能機等もこれに包含される。更に、「印刷ジョブ」とは、複製対象となる1個又は複数個の事物の電子的表現物を含む情報等のことである。そして、インクの「案内」「移送」「送給」「供給」とは、装填部から液化部まで或いは更にプリントヘッドまでインクを届けることを指している。インクの「案内」「移送」「送給」「供給」経路上には、本発明に係るプリンタの実施にとり肝要でないものも含め、種々の連結手段、管路、マニホルド、ヒータ等を付加することができる。
【0016】
更に、固体インクプリンタの全体構成は前述した通りである。以下の説明は、改良型の固体インクスティック、そのスティックを送給できる改良型のインク送給系、並びにその送給系が実装された新たな固体インクプリンタに関するものである。
【0017】
図2に本発明の一実施形態に係るインク送給系204を備えた固体インクプリンタ202を示す。本プリンタ202は固体インクスティック206をブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの四色使用する多色プリンタであり、各色に対応して設けられた合計4本のシュート208を有している。それらのシュート208にはそれぞれ湾曲区間207があり、その区間207は例えばある1本の軸を中心とする円弧に沿って延びる単純弧形状としてもよいし、別々の軸を中心とする複数本の円弧をつないだ線に沿って延びる複合弧形状としてもよいが、何れにせよスティック206を端から端まで滞りなく移送できる立体的形状にする必要がある。また、複合弧形状とするなら、区間207の全長に占める個々の円弧の割合を任意に定めることができ、従ってその全体形状を柔軟に設計できる。但し、これら単純弧や複合弧は区間207の湾曲形状の一例に過ぎず、これに類する他の非直線的形状を使用することもできるので、本願では使用できる種々の形状全てを「湾曲」という表現で代表させることとする。更に、シュートに湾曲区間がない形態でも本発明に係る固体インクプリンタをカラープリンタとして実施できることにご留意頂きたい。
【0018】
また、本プリンタ202では、図示の通りフレーム203により送給系204を支持する構成を採っており、その頂部近傍には装填部224が、また底部近傍には液化部230が、それぞれ配置されている。送給系204は装填部224から液化部230へと一群の固体インクスティック206を送るシステムであり、複数個(図示例では各色当たり1個ずつ合計4個)の副送給系から構成されている。各副送給系は少なくともスティック装填口、スティック送給用のシュート208、並びに液化器を有しているので、本プリンタ202には複数本(図示例では4本)のシュート208がある。それら複数本のシュート208は、互いに一体に形成してもよいし、別体に形成してもよい。各シュート208は、それぞれ対応する色、例えばブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのうち何れかの色のスティック206を入れることができ、そのスティック206を所定経路に沿ってその副送給系の液化器付近まで案内できるように構成されている。
【0019】
更に、各シュート208には図示の通り縦長開口209が形成されている。オペレータは、この開口209を介し、そのシュート208におけるスティック206の進み具合をチェックすることができる。また、この開口209を設けることで重量を減らし素材コストを抑えることができる。更に、各シュート208沿いには押圧部材228が配置されている。この部材208はスティック206を押さえつけドライブベルト216に好適に接触させる。
【0020】
図3に、本プリンタ202におけるインク送給系204の構成をより詳細に示す。送給系204は複数個の副送給系から構成されており、各副送給系はそれぞれスティック装填口、スティック送給用シュート及びスティック液化用液化器を備えている。
【0021】
具体的には、図示の通り、順にブラック、シアン、イエロー及びマゼンタの各色用に使用される4個の副送給系260、262、264及び266が、互いにほぼ平行に配置されている。なお、ここで述べた色の順序は一例であり、副送給系の順序は機種毎に或いはプリンタ毎に任意に設計乃至設定することができる。
【0022】
また、各副送給系は、そのスティック装填口の開口形状が、対応する色のスティック206しか装填できない鍵化開口形状(排他開口形状)になっているが、その点を除けばほぼ同様の構成であるので、以下の記載ではブラック用副送給系260のみ詳しく説明し他の副送給系については説明を省略する。
【0023】
ブラック用副送給系260には、ブラックインクのスティック206を案内するガイド部材としてシュート208が設けられている。そのシュート208は、複数個のスティック206を装填できるよう、またそれらを所定経路210に沿って装填部224から液化部230へと送ることができるよう、構成されている。更に、シュート208のスティック装填口の形状は、そのシュート208に対応するある一色のスティック206(ブラック用の副送給系260ならブラックインクのスティック206)しか通せないよう設計乃至設定されている。
【0024】
ブラック用副送給系260に設けられている部材のうち、ブラックインクのスティック206を液化部方向付勢するのに使用される駆動部材であるドライブベルト216は、副送給系260内に装填された複数個のスティック206それぞれに当接するよう、副送給系260内スティック送給経路210に沿って且つその経路210の大半乃至主要部分に亘って、引き回されている。即ち、図示の通り、シュート208内の各所でベルト216が別々のスティック206に同時当接し、それらのスティック206がベルト216によって同時に液化部方向付勢される。
【0025】
シュート208は様々な形状にすることができるが、図4に示す例ではシュート208のうち装填部224に連なる部分に第1直線区間268が設けられている。この区間268は図示の通りほぼ水平に延びており、またスティック装填口となるシュート端256が本プリンタ202の頂部に開口しているので、スティック206をシュート208内に入れる際には、そのシュート端256に横から差し入れるだけでよい。
【0026】
本プリンタ202の内部スペースを有効活用するには、直線状のシュートに入れられる個数よりも多くのスティック206が入るように、シュート208の形状を非直線状にした方がよい。そのため、図示例における各シュート208は、上述の第1直線区間268に加えて、当該直線区間268の先端から下方へと曲がっていく湾曲区間207や、当該湾曲区間207の下端からほぼ下向きに液化部230まで延びる第2直線区間270を有している。このように液化部230の上方にほぼまっすぐ上下に延びる区間270を設けるのは、そのシュート208を通って送られてくるスティック206を、区間270内では重力で移動させて液化部230に届けるためである。
【0027】
各シュートは例えば鉛直線272と平行な平面に沿って設けてもよいが、図示例におけるシュート208は鉛直線272に対して非平行な複数枚の平面を通って、即ち鉛直線272から見てねじれている面に沿って、設けられている。シュート208は、その下部に近づくにつれて図示の通り鉛直線272から徐々に逸れていく。従って、シュート208の長軸方向274即ち固体インクスティック206の進行方向は、鉛直線272に対してある角度φだけずれている。この偏角φは、シュート208内により多数の固体インクスティック206を装填できるように設定する。
【0028】
図5に、本プリンタ202のインク送給系204に設けられたドライブベルト216をより詳細に示す。このベルト216は、スティック送給経路210のうち少なくとも一部にてスティック206と接触するよう、またシュート208に沿って走行するよう、配備する必要がある。その際、シュート208の湾曲区間207だけでなく、第1直線区間268や第2直線区間270にも沿わせる方がよい。ベルト216を駆動する手段としては、図示例ではモータトランスミッションアセンブリ222が設けられている。このアセンブリ222が稼働するとドライブプーリ218が回転し、そのプーリ218に架かっているベルト216が走行する。
【0029】
ドライブベルト216としては例えば円形断面のシームレスベルトを用い、ドライブプーリ218の他に1個又は複数個のアイドラプーリ220に架けて、シュート208沿いに走行させるとよい。ベルト走行方向に沿ったプーリ218及び220の間隔や変位はシュート208の構成や機構の構成に応じて適宜定めればよい。また、押圧部材228は例えばピンチローラであり、スティック206をベルト216方向に押しつけるようバネ等によって付勢されている。これによって、ベルト216に対してスティック206を十分強く摩擦させることができ、ひいてはスティック206がベルト216から脱線して転落することを防止することができる。
【0030】
ドライブベルト216の直径は例えばその全長に亘り均一にし、その全長と併せ、スティック206を好適に先送りできるように定める。また、ベルト216を形成する素材としては十分に耐久性のある素材を使用する。使用できる素材は多々あるが、例えばプラスチックやエラストマを用いるのが望ましい。エラストマを使用するなら例えばポリウレタンにするとよい。
【0031】
プーリ218及び220は互いに同一サイズ、同一形状でよい。その周面にはベルト216が架かる溝を設ける。その溝の直径はベルト216の直径とほぼ同じ直径にすればよい。プーリ218及び220を形成する素材としてはやはり十分に耐久性のある素材を使用する。使用できる素材は多々あるが、例えばプラスチックを用いるのが望ましい。プラスチックを使用するなら例えばアセチル系の素材にするとよい。
【0032】
更に、シュート208の内面のうち固体インクスティック206と接触する可能性のある面は、スティック206の外面212との間の摩擦係数が十分に小さくなるよう形成する。これは、シュート208内におけるスティック206の摺動を円滑にするためである。具体的には、その面を形成する素材を適宜選択して摩擦係数を小さくし、シュート208内でスティック206が好適に流れるようにする。他方、シュート208の内面とドライブベルト216の間の摩擦係数も小さい方がよい。この部位の摩擦係数を十分小さくすることで、シュート208のベルトガイド部内におけるベルト216の走行を円滑にすることができる。逆に、ベルト216とスティック206の間の摩擦係数は十分に大きくしなければならない。これは、ベルト216をスティック206にしっかりと当接させるためである。しっかりと当接していれば、ベルト216を走行させることでスティック206をシュート208沿いに好適に前進させることができる。なお、摩擦係数値はそのシステムにおける種々の要因によって変動する性質のものであり、一定の数値をとるわけではない。例えばスティックサイズ、スティック間接触状態、重力作用方向に対するスティック送給方向の偏角等によって、摩擦係数値は異なる。
【0033】
更に、本プリンタ202のインク送給系204においては、様々なセンサやインジケータ、例えばスティック206の存否を検知するセンサが、シュート208内の随所に設けられている。そのうち装填口センサアセンブリ276は例えば装填部224の近傍に設けられており、その出力から、そのシュート208内にスティック206を追加できるか否かを知ることができる。また、インク不足センサアセンブリ278は例えば液化部230より若干手前に配置されており、その出力から、そのシュート208におけるスティック206の残数又は残寸がある下限値以下になったか否かを知ることができる。
【0034】
更に、インク切れセンサアセンブリ280は例えば液化部230のすぐそばに配置されており、その出力から、そのシュート208内にスティック206があるか否かを知ることができる。これらのセンサアセンブリ276、278及び280は様々な形態で実現することができるが、例えば図示の通りシュート208の壁材内にその枢軸をおくフラグを用いるとよい。このフラグは、面前にスティック206がないときには図中実線で示す第1のポジション282を採り、あるときには図中破線で示す第2のポジション284を採るので、フラグのポジション(姿勢)が282か284かを検知、判別するセンサ又はスイッチを併用することで、センサアセンブリ276、278及び280を実現することができる。なお、こうしたフラグ機構に付加又は代替して別種のセンシングデバイス、例えば接近検知スイッチや反射式乃至往復反射式光学センサを設けてもよい。
【0035】
図5Aに、インク不足センサアセンブリ278を例にこれらのセンサの他の実施形態を示す。図示されているセンサ278はシュート208の壁面に実装されており、一種のスイッチ、例えばマイクロスイッチ或いはフォトインタラプタとして構成されている。即ち、シュート208の壁面上又は壁心に配置された枢軸を中心に枢動する遮蔽板の動きをセンサ279により検知するスイッチとして構成されている。具体的には、スティック206が面前に到来すると遮蔽板のポジションが第1のポジション282(破線)から第2のポジション284(実線)へと変化するので、センサ279によって遮蔽板のポジションが282かそれとも284かを判別することで、スティック206の有無を判別できる。
【0036】
図6に、本プリンタ202のインク送給系204のうち液化部230近傍の部分を示す。図示の通り、液化部230はスティック206のうち先頭のものを受け止めるよう構成されており、ドライブプーリ218及びドライブベルト216はそのスティック206から若干離れた位置を占めるように配置されている。ベルト216との間に間隔があるので、液化部230内のスティック206を液化部230内の液化器に押しつける力はベルト停止中は重力だけとなるが、ベルト稼働中は後続のスティック206による後押しの力も加わる。即ち、ベルト216と接触する後続のスティック206がある状態でベルト216を稼働させるとそのスティック206が押し下げられ前方のスティック206を後押しする。
【0037】
或いは、ドライブプーリ218をより低い位置に設け、液化部230内のスティック206がそのプーリ218と接触するようにしてもよい。そうした構成では、ベルト216からスティック206に大きな力を加えることができるので、液化器に対するスティック206の接触圧も高くなる。
【0038】
図7に、図2〜図5に示したプリンタ202にて使用するスティック206を詳細に示す。この図に示すスティック206は、例えば想定外プリンタ機種への装填や他色スティックとの混同を防ぐことができるよう鍵化断面形状(排他断面形状)を有している。即ち、その装填口が相応する鍵化開口形状(排他開口形状)を有するインク送給系204乃至副送給系にはその装填口を介して装填できるがそれ以外の系には装填することができないよう、このスティック206の表面には1個又は複数個の特徴的な鍵化凹凸286が縦方向に設けられている。このスティック206の表面には、更に、横方向に延びる1個又は複数個の被案内用凹凸288も形成されている。この凹凸288は、そのシュート208内でそのスティック206を支持しつつ、シュート208内におけるスティック206の不要な動きを制限し所定経路210に沿って案内するのに、使用される。なお、これら誤装填防止用鍵化凹凸286や被案内用凹凸288は、装填方向に応じその目的機能を達成するよう設定、形成することができる。即ち、ここに示したのは装填方向が縦方向の場合の例であり、装填方向が横方向等の場合でもそれに応じて必要な凹凸を形成し利用することができる。
【0039】
シュート208の装填口は、例えば別部材をそのシュート208に取り付けて形成することができ、任意のサイズ及び形状にすることもでき、更にはそのシュート208に通したいスティック206の形状や通したくないスティック206の形状に応じて所要の鍵化開口形状にすることもできる。但し、説明の簡明化のため、以下の記述では、こうした装填機能及び鍵化機能をシュート208と一体の部材によるものとして説明することとする。
【0040】
図示の通り、スティック206の底面には二対の平坦部290、一対の湾曲部292及び溝250が形成されている。そのうち平坦部290はシュート208の直線区間268及び270にて、また湾曲部292は同じく湾曲区間207にて、それぞれ所定のスティック送給経路210沿いにスティック206を動かせるようにするために設けられた部分であり、平坦部290はスティック206の両端に一対ずつありまた湾曲部292は中央にある。対をなす平坦部290同士或いは湾曲部292同士の間には隙間があり、その隙間に形成されている一連の溝250も、同様に、直線的な部分と湾曲している部分とを有している。
【0041】
図8に、本プリンタ202のインク送給系204に装填されたスティック206のうち、直線区間268又は270沿いでドライブベルト216に載っているものを示す。図示の通り、スティック206は全体としてその頂面が凸、底面が凹というように長軸294に対し湾曲しているので、この直線部分では、スティック206の底面のうち平坦部290がベルト216に接触する。より具体的には、溝250のうち左右の平坦部290に挟まれている部分にベルト216が嵌り込んでいるので、ベルト216を駆動することでこのスティック206を先送りすることができる。
【0042】
図9に、本プリンタ202のインク送給系204に装填されたスティック206のうち、湾曲区間207沿いでドライブベルト216に載っているものを示す。図示の状態でベルト216に接触するのはスティック206の底面上の湾曲部292である。より厳密には、溝250のうち左右の湾曲部292に挟まれている部分にベルト216が嵌る。
【0043】
図10に、本発明の他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Aのインク送給系204Aを示す。この送給系204Aは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、送給する固体インクスティック206Aの溝250Aがシュート208Aの中心からずれた位置にある点(またそれに対応してシュート端256Aの鍵化突起258Aもずれた位置にある点)で相違している。このように中心以外に溝を配置してもよい。
【0044】
図11に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Bのインク送給系204Bを示す。この送給系204Bにて使用するドライブベルト216Bは方形断面のフラットベルトであり、その表面には歯291Bが形成されている。シュート208Bに装填された固体インクスティック206Bをこの歯291Bと接触させることができるので、ベルト216Bが平坦でもスティック206Bを好適に前進させることができる。
【0045】
図12に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Cのインク送給系204Cを示す。この送給系204Cは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Cの断面形状が略D字状乃至半円形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Cに装填できる略半円形のもの206Cを使用する。
【0046】
図13に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Dのインク送給系204Dを示す。この送給系204Dは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Dの断面形状が略三角形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Dに装填できる略三角形のもの206Dを使用する。
【0047】
図14に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Eのインク送給系204Eを示す。この送給系204Eは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Eの断面形状が略六角形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Eに装填できる略六角形のもの206Eを使用する。
【0048】
図15に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ202Fのインク送給系204Fを示す。この送給系204Fは図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、そのシュート208Fの断面形状が略五角形である点で相違している。固体インクスティックとしてはこの形のシュート208Fに装填できる略五角形のもの206Fを使用する。
【0049】
以上述べた各実施形態においては、シュート壁が固体インクスティックの外面にぴったりと寄り添うようシュートが形成されているが、スティックの全周面がどこかのシュート断面でシュート壁によってぐるりと囲まれるようにする必要はなく、またシュートの全長に亘りシュート壁が続くようにする必要もない。例えば、シュート壁のうち一面又は数面を全面的に又は部分的に開放させてもよい。即ち、固体インクスティックをそのシュートで好適に支持、案内等することができ、また固体インクスティックの装填や送給を好適に補助できるような形状、構成であればよいので、シュートは様々な形状、構成にすることができる。
【0050】
図16に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ302のインク送給系304を示す。この送給系304は図2〜図6に示した送給系204と類似した構成であるが、インクの色毎に別々の鍵化開口378がシュート308に設けられている点で相違している。具体的には、このシュート308には、ブラック用、シアン用、マゼンタ用及びイエロー用に別々の鍵化開口380、382、384及び386が設けられている。各鍵化開口378の開口形状は互いに異なっており、その開口に通したい色の固体インクスティックだけを通すことができ他の色のスティックは通せないよう、スティック形状に合わせて設計されている。図示しないが、各色スティックの形状はその色にユニークなものにする。
【0051】
図17に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ402にて使用する固体インクスティック406を示す。このスティック406は図2〜図6に示したスティック206と同じくシュート内湾曲区間を移動できるように構成されているが、その形状がL字状である点で異なっている。このスティック406にも溝450が形成されているので、その溝450に嵌り込んだドライブベルトを走行させることで、このスティック406を所定経路沿いに液化器まで移動させることができる。
【0052】
図18及び図19に、本発明の更に他の実施形態に係る固体インクプリンタ502にて使用する固体インクスティック506を示す。このは図2〜図6に示したスティック206と同じくシュート内湾曲区間を移動できるように構成されているが、その形状がC字状である点で異なっている。このスティック506にも溝550が形成されているので、その溝550に嵌り込んだドライブベルトを走行させることで、このスティック506を所定経路沿いに液化器まで移動させることができる。
【0053】
以上、本発明の各種実施形態について説明した。いわゆる当業者であれば当該説明に基づき種々の変形、改良を想到することができよう。本発明の技術的範囲には、そうした変形や改良のうち当業者が本願の記載に基づき容易に想到できるものも包含されるので、それらを包括する特許権の付与を求めたい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来における高速固体インクプリンタの概略を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る固体インクプリンタのインク送給系、特に固体インクスティックを液化器に送給することができるようにそのプリンタ内に配置された状態を示す一部切欠斜視図である。
【図3】図2に示した状態にあるインク送給系を詳示する一部切欠斜視図である。
【図4】図2に示した状態にあるインク送給系のうち固体インクスティック用のガイドを示す斜視図である。
【図5】図2に示した状態にあるインク送給系内の固体インクスティックを液化器に送る駆動部材を含めたガイドアセンブリを示す斜視図である。
【図5A】図5に示したガイドアセンブリのうちセンサ部分を示す平面図である。
【図6】図5に示したガイドアセンブリのうち液化器近傍部分を詳示する斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係り、図6に示したガイドアセンブリによってそのインク送給系の液化器に送られる固体インクスティックを示す斜視図である。
【図8】図6に示したガイドセンブリの駆動部材直線区間にて、図7に示した固体インクスティックが採る状態を示す側面図である。
【図9】図6に示したガイドセンブリの駆動部材湾曲区間にて、図7に示した固体インクスティックが採る状態を示す側面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系を構成する駆動部材がシュート及びスティックの中心からずれた位置にある実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系の駆動部材がフラットで歯が付いている実施形態を示す斜視図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートがD字状断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートが三角形断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートが六角形断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用される固体インクスティック及びインク送給系、特にそのインク送給系のシュートが五角形断面を有する実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタにて使用されるインク送給系、特にそのブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー固体インクスティック用装填口形状をそれぞれ鍵化開口形状即ち排他開口形状とした実施形態を示す平面図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタのインク送給系によりそのプリンタのプリントヘッドまで送給される固体インクスティック、特にその形状がL字状の実施形態を示す平面図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係り固体インクプリンタのインク送給系によりそのプリンタのプリントヘッドまで送給される固体インクスティック、特にその形状がC字状の実施形態を示す平面図である。
【図19】図18に示した固体インクスティックの端面図である。
【符号の説明】
【0055】
202,202A〜202F,302,402,502 固体インクプリンタ、204,204A〜204F,304 インク送給系、206,206A〜206F,406,506 固体インクスティック、208,208A〜208F,308 シュート、210 スティック送給経路、212 スティック外面、216,216B ドライブベルト、218 ドライブプーリ、220 アイドラプーリ、222 モータトランスミッションアセンブリ、250,250A,450,550 スティック溝、292 湾曲部、294 スティック長軸(スティック中心線)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体インクプリンタにて使用される固体インクスティックであって、その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており、その溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティック。
【請求項2】
請求項1記載の固体インクスティックであって、上記溝の長軸直交方向断面がほぼ半円形である固体インクスティック。
【請求項3】
その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、
ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、
を備え、固体インクプリンタに実装される固体インク送給系。
【請求項4】
その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、
ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、
を備える固体インク送給系を有する固体インクプリンタ。
【請求項1】
固体インクプリンタにて使用される固体インクスティックであって、その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており、その溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティック。
【請求項2】
請求項1記載の固体インクスティックであって、上記溝の長軸直交方向断面がほぼ半円形である固体インクスティック。
【請求項3】
その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、
ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、
を備え、固体インクプリンタに実装される固体インク送給系。
【請求項4】
その本体の長軸に対してほぼ平行になるよう本体の外面上に溝が形成されており且つその溝の少なくとも一部分が湾曲している固体インクスティックを、所定経路に沿って案内するガイドと、
ガイド内に装填されている固体インクスティックと当接し、上記所定経路のうち主要部分に沿ってその固体インクスティックを摺動させる駆動手段と、
を備える固体インク送給系を有する固体インクプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−126658(P2008−126658A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296229(P2007−296229)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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