説明

プリンタ及びプリンタのクリーニング方法

【課題】印刷用紙の印刷面上に付着した塵埃を、再付着してしまうおそれが無く効果的に除去することが可能なプリンタ及びプリンタのクリーニング方法を提供する。
【解決手段】プリンタ1は、印刷用紙Pを搬送する用紙搬送手段3と、インクリボンRを供給部40から供給し用紙搬送経路Xの一部で印刷面P1に対向して搬送し回収部41に回収するリボン給排手段4と、インクリボンRと印刷用紙Pとを挟み込んで加熱することで、インクリボンRのインクを印刷面P1上に熱転写する印刷手段5と、用紙搬送手段3によって搬送される印刷用紙Pの印刷面P1に接触して塵埃を集積することが可能な集塵部6と、集塵部6を印刷面P1に接触させた状態で印刷用紙Pを搬送させ、印刷面P1上の塵埃集積範囲に塵埃を集積させる塵埃集積手段7aと、塵埃集積範囲でインクリボンRを加熱させることで集積した塵埃をインクリボンに付着させ回収する塵埃回収手段7bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンを熱転写することで印刷用紙に印刷を行うプリンタ及びプリンタのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクリボンを熱転写することで印刷用紙に印刷を行う熱転写型のプリンタが利用されている。具体的には、このような熱転写型のプリンタは、給紙部から印刷用紙を搬送するフィードローラと、フィードローラの回転によって搬送される印刷用紙とともに該用紙搬送経路に沿って重なるようにインクリボンを搬送させ巻き取る巻取りローラと、互い重なったインクリボンと印刷用紙とを挟み込んで加熱するサーマルヘッドとを備えている。サーマルヘッドにおいて、インクリボンと当接する部分には、印刷のドット単位で配設する複数の熱抵抗体が設けられていて、印刷用紙を搬送しながら選択的に熱抵抗体を発熱させることで、インクリボンのインクを転写し、印刷用紙に所望の画像を印刷することが可能である。
【0003】
ここで、印刷用紙には、製造時などに印刷用紙自身から発生する紙粉や、外部からプリンタの内部に侵入した埃などの様々な塵埃が、付着している。そして、印刷用紙において、印刷面に付着した塵埃は、サーマルヘッドによってインクリボンのインクを熱転写する時の転写不良の原因となってしまう。特に、プリンタによって印刷を繰り返していく内に、印刷用紙に付着した塵埃は、フィードローラ等にも一時的に付着し集合してしまう場合があり、集合した塵埃が一度に印刷面に再付着した場合には、塵埃が付着した部分にインクリボンのインクが転写されず、かすれなどの印刷不良が発生してしまう。このため、サーマルヘッドによって熱転写する前に印刷面上の塵埃を除去するためのクリーニングローラを備えるプリンタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−119186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のプリンタでは、クリーニングローラによって塵埃が除去できるものの、クリーニングローラに多量の塵埃が付着してしまった場合には、効果的に塵埃を除去することができなくなってしまう。また、このような状態で継続して使用すると、クリーニングローラに付着した塵埃がクリーニングローラから印刷面上に再付着してしまい、結果印刷面上の塵埃を除去するどころかクリーニングローラ自体が印刷不良の原因となってしまう問題があった。
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、印刷用紙の印刷面上に付着した塵埃を、再付着してしまうおそれ無く効果的に除去することが可能なプリンタ及びプリンタのクリーニング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のプリンタは、印刷用紙を所定の用紙搬送経路に沿って搬送することが可能な用紙搬送手段と、インクリボンを供給部から供給し、前記用紙搬送経路の少なくとも一部で前記用紙搬送手段によって搬送される前記印刷用紙の印刷面に対向して搬送し、回収部に回収するリボン給排手段と、互いに対向する前記インクリボンと前記印刷用紙とを挟み込んで加熱することで、前記インクリボンのインクを前記印刷面上に熱転写する印刷手段と、前記用紙搬送手段によって搬送される前記印刷用紙の前記印刷面に接触して該印刷面上で塵埃を集積することが可能な集塵部と、該集塵部を前記印刷面に接触させた状態で前記用紙搬送手段によって前記印刷用紙を搬送させ、前記印刷面上の所定の塵埃集積範囲に塵埃を集積させる塵埃集積手段と、前記塵埃集積範囲で前記印刷手段によって前記インクリボンを加熱させることで集積した前記塵埃を前記インクリボンに付着させ回収する塵埃回収手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
この構成によれば、塵埃集積手段が、クリーニング動作として、まず、集塵部を印刷用紙の印刷面に接触させ、この状態で用紙搬送手段によって印刷用紙を搬送させることで、印刷面上の塵埃は、集塵部が接触した位置で集積されることとなる。次に、塵埃回収手段が、印刷面上において塵埃が集積された塵埃集積範囲で、印刷手段によってインクリボンを加熱させる。これにより、通常はインクリボンが付着した印刷用紙の印刷面にはインクリボンのインクが熱転写されることとなる。一方、インクリボンと印刷面との間に塵埃が介在している場合には、塵埃とインクとが付着しようとすることとなり、印刷用紙と塵埃との間の付着力と、塵埃とインクリボンのインクとの間の付着力との関係により、印刷面上の塵埃がインクリボン側に付着することとなる。以上のように、上記クリーニング動作を塵埃集積手段及び塵埃回収手段によって行わせることで、印刷面上の塵埃を集積し、インクリボンによって効果的に除去させることができる。そして、インクリボンにおいて一度印刷手段によって加熱された範囲は、再度利用されること無く、リボン給排手段の回収部によって回収されるため、塵埃が印刷面に再付着するおそれも無い。
【0008】
また、前記集塵部は、前記リボン給排手段によって配設されて前記用紙搬送経路に沿う少なくとも一部で前記印刷用紙の前記印刷面に接触した前記インクリボンであることがより好ましい。
【0009】
この構成によれば、インクリボンが集塵部として印刷面に接触していることで、塵埃集積手段が用紙搬送手段によって印刷用紙を搬送させると、印刷面上の塵埃はインクリボンの印刷面と接触した部分によって集積されることとなり、上記のとおりインクリボンに塵埃を付着させることができる。ここで、インクリボンを集塵部としていることで、印刷面上の塵埃を集積するための他の部材を必要とせず、印刷用紙にインクリボンを熱転写することで印刷を行うのに必要な最小限の構成とし、部品コストの低減、省スペース化を図ることができる。
【0010】
前記塵埃回収手段は、前記印刷用紙に対する一回の印刷で使用する前記インクリボンの一回当りの使用範囲内で前記リボン給排手段によって搬送させて、前記印刷手段による前記インクリボンの加熱する範囲をずらしながら前記クリーニング動作を複数回連続して実施することがより好ましい。
【0011】
この構成によれば、塵埃回収手段は、上記クリーニング動作を、インクリボンの印刷一回当りの使用範囲内で加熱する範囲をずらしながら複数回実施することで、インクリボンとして塵埃が付着して印刷に使用できなくなる範囲を実質的に増大させることなく、より効果的に印刷面上の塵埃を除去することができる。
【0012】
また、本発明は、所定の用紙搬送経路に搬送された印刷用紙の印刷面上にインクリボンを熱転写することで印刷を行うプリンタのクリーニング方法であって、前記印刷面に塵埃を集積させるための集塵部を接触させながら、前記印刷用紙を前記用紙搬送経路に沿って搬送して、前記印刷面上の所定の塵埃集積範囲に塵埃を集積させる塵埃集積工程と、前記印刷面上の前記塵埃集積範囲で前記インクリボンを加熱させることで集積した前記塵埃を前記インクリボンに付着させ回収する塵埃回収工程とを備えることを特徴としている。
【0013】
また、前記塵埃集積工程は、前記集塵部として前記インクリボンの前記用紙搬送経路に沿う少なくとも一部を前記印刷面に接触させることで塵埃の集積を行うことがより好ましい。
【0014】
また、前記印刷用紙に対する一回の印刷で使用する前記インクリボンの一回当りの使用範囲内で、該インクリボンの加熱する範囲をずらしながら前記塵埃集積工程と前記塵埃回収工程とを複数回連続して実施することがより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプリンタによれば、集塵部、塵埃集積手段及び塵埃回収手段を備えることで、印刷用紙の印刷面上に付着した塵埃を集積し、インクリボンに付着させ回収することができるので、印刷面に再付着してしまうおそれが無く効果的に除去することできる。
また、本発明のプリンタのクリーニング方法によれば、塵埃集積工程と塵埃回収工程とを備えることで、印刷用紙の印刷面上に付着した塵埃を集積し、インクリボンに付着させ回収することができるので、印刷面に再付着してしまうおそれが無く効果的に除去することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図2は、この発明に係る実施形態を示している。図1及び図2に示すように、この実施形態のプリンタ1は、熱転写式のプリンタであって、印刷用紙Pを供給する給紙部2と、印刷用紙Pを搬送する用紙搬送手段3と、インクリボンRを供給し回収するリボン給排手段4と、リボン給排手段4によって供給されるインクリボンRを印刷用紙Pに熱転写する印刷手段5と、印刷用紙Pの印刷面P1上の塵埃を集積するための集塵部6と、各構成を制御する制御部7と、制御部7に各種指令を行うための操作部8とを備える。以下に、各構成の詳細を説明する。
【0017】
給紙部2は、印刷用紙Pがロール状に形成されたロール体P2を回転軸21を中心として回転可能に収容している。また、用紙搬送手段3は、印刷用紙Pを挟み込み給紙部2のロール体P2から印刷用紙Pを引き出す一対の給紙ローラ31、32と、給紙ローラ31、32によって引き出された印刷用紙Pを挟み込み用紙搬送経路Xに進退させることが可能なフィードローラ33及びピンチローラ34と、フィードローラ33及びピンチローラ34よりも用紙搬送経路Xの用紙排出側X1に設けられて印刷用紙Pを案内する複数の用紙案内ローラ35、36とを備える。
【0018】
また、用紙搬送手段3は、一方の給紙ローラ31を回転させる給紙ローラ駆動部37と、フィードローラ33を回転させるフィードローラ駆動部38とを備え、給紙ローラ駆動部37及びフィードローラ駆動部38は、それぞれ制御部7と接続されている。このため、制御部7による制御のもと、給紙ローラ駆動部37を駆動させて一対の給紙ローラ31、32によって印刷用紙Pを給紙部2から引き出して用紙搬送経路X用紙排出側X1に位置するフィードローラ33とピンチローラ34との間に送り出すことが可能である。また、制御部7による制御のもと、フィードローラ駆動部38を駆動させることで、フィードローラ33とピンチローラ34との間に送り出された印刷用紙Pを用紙搬送経路X用紙排出側X1に位置する印刷手段5に対して用紙搬送経路Xに進退させることが可能である。また、用紙搬送手段3は、給紙部2と印刷手段5との間において、また、印刷手段5よりも用紙排出側X1において、それぞれ搬送される印刷用紙Pの印刷面P1に当接するクリーニングローラ39を備えている。クリーニングローラ39は、印刷用紙Pが搬送されるのに伴って回転して印刷用紙Pを案内するととに、印刷面P1において接触した部分の塵埃を除去するためのものである。
【0019】
また、印刷手段5は、フィードローラ33の用紙搬送経路X用紙排出側X1において、印刷用紙Pの印刷面P1側に対向配置されたサーマルヘッド50と、サーマルヘッド50と印刷用紙Pを挟んで反対側に設けられたプラテンローラ51とを有する。プラテンローラ51は、印刷用紙Pの印刷面P1と反対側に当接し、フィードローラ33によって進退する印刷用紙Pを案内する。また、サーマルヘッド50には、発熱抵抗体501が印刷面P1と隙間を有して対向するように設けられていて、制御部7による制御のもと印刷用紙Pに向かって進退し、リボン給排手段4によって配設されるインクリボンRと印刷用紙Pとを発熱抵抗体501とプラテンローラ51とで挟み込むことが可能である。発熱抵抗体501は、用紙搬送経路Xと直交する印刷用紙Pの幅方向に印刷のドット単位で複数設けられており、制御部7による制御のもと選択的に発熱することが可能である。また、サーマルヘッド50において、用紙搬送経路X用紙供給側X2には、剥離プレート52が設けられている。剥離プレート52は、ステンレスの薄板などを湾曲することで曲面状の接触端52aを形成しており、該接触端52aがインクリボンRに接触することで、印刷用紙Pに対してインクリボンRを剥離させている。
【0020】
また、リボン給排手段4は、搬送される印刷用紙Pの印刷面P1に対向してインクリボンRを供給し、用紙搬送経路Xに沿って搬送し、回収するものである。リボン給排手段4は、用紙搬送経路X用紙排出側X1に設けられインクリボンRを供給するリボン供給部40と、用紙搬送経路X用紙供給側X2に設けられリボン供給部40から供給されたインクリボンRを回収するリボン回収部41と、リボン供給部40とリボン回収部41との間でインクリボンRを案内する複数のリボン案内ローラ42とを有する。リボン供給部40には回転軸401が設けられており、未使用のインクリボンRのロール体R1が回転可能に収容されている。リボン供給部40に収容されたロール体R1から用紙搬送経路X用紙供給側X2に引き出されたインクリボンRは、サーマルヘッド50の両側に設けられたリボン案内ローラ42によってサーマルヘッド50よりも用紙搬送経路X用紙排出側X1で接触部R2として印刷面P1と接触した後にサーマルヘッド50とプラテンローラ51との間を通ってリボン回収部41まで配設されている。そして、インクリボンRの接触部R2によって後述するように、印刷用紙Pの印刷面P1上の塵埃を集積するための集塵部6を構成している。また、リボン回収部41は、回収されたインクリボンRをロール状に巻き取る回転軸411と、回転軸411を回転させるリボン巻取り駆動部412とを有する。リボン巻取り駆動部412は制御部7に接続されている。このため、制御部7による制御のもと、リボン巻取り駆動部412を駆動させて回転軸411を回転させることで、リボン供給部40から未使用のインクリボンRを引き出し、また、サーマルヘッド50の直下の位置から使用後のインクリボンRをリボン回収部41に回収することが可能である。
【0021】
ここで、本実施形態のプリンタ1では、印刷面P1の所定の印刷範囲に、インクリボンRによりフルカラーで、かつ、オーバーコート層を付与して出力可能である。そして、これと対応するために図3に示すように、インクリボンRには、フルカラーを表現するための、イエローインクが塗布された第一の領域Y、マゼンタインクが塗布された第二の領域M、及び、シアンインクが塗布された第三の領域C、並びに、オーバーコート層を形成するためのラミネート材が形成された第四の領域OPが順に配列されており、一組の第一の領域Y、第二の領域M、第三の領域C及び第四の領域OPによって一回の印刷用紙Pに対する印刷で使用する一回当りの使用範囲Qを構成している。より具体的には、インクリボンRの幅Brは、ロール体P2から連続して出力される印刷用紙Pの幅と対応している。また、インクリボンRの印刷一回当りの使用範囲Qにおいて、第一の領域Y、第二の領域M、第三の領域C及び第四の領域OPの各長さLrは、一回の印刷で出力される印刷用紙Pの印刷範囲の長さと対応しており、様々な長さで出力する場合には、最大の長さと対応するように設定されている。
【0022】
また、図1及び図2に示すように、サーマルヘッド50よりも用紙搬送経路X用紙排出側X1には、印刷用紙Pの端部P3を検出する用紙検出センサ11が設けられているとともに、印刷後の印刷用紙Pを切断する用紙切断手段12とが設けられている。より詳しくは、用紙検出センサ11は、例えば、検出光の反射あるいは透過の有無を検出する光センサなどであり、サーマルヘッド50の位置よりも一回の印刷で出力される印刷用紙Pの長さ分だけ用紙搬送経路X用紙排出側X1に位置していて、検出光の検出の有無により印刷用紙Pの端部P3が用紙検出センサ11と対応する位置を通過した否かを検出し、検出結果を制御部7に出力している。また、用紙切断手段12は、印刷用紙Pの両側に設けられた一対のカッター121、122であり、一方のカッター121を制御部7による制御のもとカッター駆動部123によって進退させることで、他方のカッター121、122との間で印刷用紙Pを切断することが可能である。
【0023】
ここで、制御部7は、印刷面P1上の所定の塵埃集積範囲に、印刷面P1上の塵埃を集積させる動作を行わせる動作を各構成に行わせる塵埃集積手段7aと、塵埃集積手段7aによって塵埃集積範囲に集積された塵埃を回収する動作を各構成に行わせる塵埃回収手段7bとを有する。また、操作部8には、図示を省略するが、手動により排紙や印刷を行わせる入力部が設けられているとともに、クリーニングボタン81が設けられている。クリーニングボタン81による入力が行われていない状態では、制御部7は、プリントモードとして、入力される印刷データに応じて印刷用紙Pに印刷を行う一方、クリーニングボタン81の入力が行われるとプリントモードからクリーニングモードに切り替えられ、塵埃集積手段7a及び塵埃回収手段7bによって印刷用紙Pの塵埃の除去を行う。以下に、制御部7によるプリントモード及びクリーニングモードの各制御の詳細を説明する。
【0024】
まず、プリントモードについて説明する。制御部7に外部入力等により印刷データが入力されると、制御部7による制御のもと一対の給紙ローラ31、32によって給紙部2から印刷用紙Pを引き出して、フィードローラ33及びピンチローラ34によって端部P3が用紙検出センサ11で検出されるまで用紙排出側X1へ搬送する。この際、サーマルヘッド50は、インクリボンRから離間した状態とさせておく。次に、制御部7は、用紙搬送手段3、リボン給排手段4及び印刷手段5を協働させて印刷用紙Pの印刷面P1上の所定の印刷範囲に印刷データと対応する画像を印刷する。
【0025】
すなわち、フィードローラ33の回転を反転させて、印刷用紙Pを用紙供給側X2に搬送するとともに、リボン給排手段4を駆動させてインクリボンRをリボン供給部40からリボン回収部41へ搬送させる。ここで、印刷用紙Pの印刷開始位置と、インクリボンRの第一の領域Yの転写開始位置Y1(図3参照)とを同期させておく。そして、サーマルヘッド50の発熱抵抗体501をインクリボンRに当接させてプラテンローラ51との間でインクリボンR及び印刷用紙Pを挟みこんで、印刷データに対してドット単位で発熱させてインクリボンRを加熱することで、第一の領域Yのイエローインクが印刷用紙Pの印刷面P1に熱転写されることとなる。
【0026】
そして、印刷用紙Pの端部P3がサーマルヘッド50近傍まで搬送されて所定の印刷範囲全体にイエローインクの印刷が完了したら、制御部7は、リボン給排手段4によるインクリボンRの搬送を停止させ、サーマルヘッド50の発熱抵抗体501をインクリボンRから離間させた後に、再び用紙搬送手段3により印刷用紙Pを用紙排出側X1へ、用紙検出センサ11で端部P3が検出されるまで搬送させる。そして、用紙検出センサ11によって端部P3が検出されたら、再び、フィードローラ33の回転を反転させて、印刷用紙Pを用紙供給側X2に搬送するとともに、リボン給排手段4を駆動させてインクリボンRをリボン供給部40からリボン回収部41へ搬送させる。そして、サーマルヘッド50を駆動して再度インクリボンRを加熱することで、第二の領域Mのマゼンタインクを同様に熱転写する。これを繰り返すことで、印刷面P1上の所定の印刷範囲に、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクを転写して印刷データと対応するフルカラーの画像を印刷するとともに、その印刷範囲上でオーバーコート層を形成することができる。そして、オーバーコート層の形成が完了したら、制御部7は、再びフィードローラ33を駆動して、印刷用紙Pを用紙排出側X1へ搬送する。そして、印刷用紙Pの端部P3が用紙検出センサ11で検出された後に、所定量さらに搬送し、カッター駆動部123を駆動させて、印刷用紙Pを切断する。これにより印刷用紙Pにおいて、印刷された範囲のみを切断、排出することができる。
【0027】
次に、クリーニングモードについて、図4のフロー図に基づいて説明する。図4に示すように、プリントモードにおいて、操作部8のクリーニングボタン81の入力が行われると(ステップS1)、制御部7は、プリントモードを切り替えてクリーニングモードを実施する。すなわち、制御部7の塵埃集積手段7aは、まず塵埃集積工程S2として、用紙搬送手段3のフィードローラ33を駆動させて、印刷用紙Pを用紙排出側X1へ予め設定されている移動量だけ搬送する(ステップS2a)。ここで、サーマルヘッド50よりも用紙排出側X1では接触部R2において、集塵部6としてインクリボンRが印刷用紙Pの印刷面P1に接触している。このため、図5に示すように、印刷用紙Pの印刷面P1上に付着し、印刷用紙Pとともに用紙搬送経路X用紙排出側X1に搬送される塵埃Dは、接触部R2でインクリボンRによって掻き集められ集積される。そして、印刷用紙Pが所定移動量だけ搬送されたら(ステップS2b)、塵埃回収工程S3に移行する。この状態で、塵埃Dは、印刷用紙Pの印刷面P1上において、ステップS2bが完了した直後における接触部R2から用紙供給側X2の範囲に集積されている。集積されている用紙搬送経路Xに沿う範囲は、集積された塵埃Dの量によっても異なるが、本実施形態では、集積される塵埃Dの変動に対して余裕をもたせるために、接触部R2からサーマルヘッド50の発熱抵抗体501に対向する位置までの長さLDで規定される範囲に集積されているものと設定し、これを塵埃集積範囲P4と称する。
【0028】
そして、図4に示すように、塵埃回収工程S3として、制御部7の塵埃回収手段7bは、次にこの塵埃集積範囲P4においてサーマルヘッド50を駆動させてインクリボンRを加熱する。すなわち、図6に示すように、第一の領域Yの転写開始位置Y1にサーマルヘッド50の発熱抵抗体501を当接させて、発熱抵抗体501を発熱させる。ここで、発熱抵抗体501は幅方向に全て発熱させる。そして、用紙搬送手段3による印刷用紙Pの搬送と、リボン給排手段4によるインクリボンRの搬送とを同期して行い、塵埃集積範囲P4全体でインクリボンRの加熱を行う。これによりインクリボンRのインクは通常印刷面P1に転写されることとなるが、塵埃集積範囲P4において塵埃Dが実際に印刷面P1に集積されている部分では、インクリボンRと印刷面P1との間に塵埃Dが介在することで塵埃Dとインクとが付着しようとする。そして、印刷用紙Pと塵埃Dとの間の付着力と、塵埃DとインクリボンRのインクとの間の付着力との関係により、塵埃DがインクリボンRに付着することとなり、印刷面P1上から塵埃Dが除去されることとなる。
【0029】
ここで、塵埃回収工程S3において印刷用紙Pの搬送とインクリボンRの搬送は同期して搬送されていることから、図7に示すように、塵埃Dは、一回の印刷で使用されるインクリボンRの印刷一回当りの使用範囲Qの内、第一の領域Yの転写開始位置Y1から塵埃集積範囲P4と対応した長さLDの範囲Y2のみに付着されることとなる。ここでは、本実施形態の場合、塵埃集積範囲P4の長さLDは、一回の印刷範囲の用紙搬送経路Xの長さ、すなわちインクリボンRの各領域の長さLrに対して1/5であるとする。この場合、インクリボンRの印刷一回当りの使用範囲Qでは、インクリボンRのインクがオーバーコート層を含めて4種類であることから、結局20回同様の工程を繰り返し行うことが可能である。
【0030】
そして、制御部7において塵埃回収手段7bには予め塵埃集積範囲P4の長さLD及び一回の印刷範囲の用紙搬送経路Xの長さLrと対応させて目標回数Nend=20(回)が設定されている。そして、制御部7は塵埃回収工程S3が完了後、前回のクリーニング動作回数N(初期値N=0)に<1>を加算し(ステップS4)、現在のクリーニング動作回数Nが目標回数Nendに達しているか確認する(ステップS5)。現在のクリーニング動作回数Nが目標回数Nendに達していない場合には、塵埃集積工程S2及び塵埃回収工程S3を繰り返し連続して行う。また、現在のクリーニング動作回数Nが目標回数Nendに達した場合には、図8に示すようにインクリボンRの印刷一回当りの使用範囲Q全体で塵埃Dを回収し、クリーニングモードが完了したとして、再びプリントモードに復帰する。
【0031】
以上のように、本実施形態のプリンタ1では、クリーニングボタン81の入力によりクリーニングモードとすることで、集塵部6となるインクリボンRの接触部R2によって印刷用紙Pの印刷面P1上の塵埃Dを集積し、当該塵埃集積範囲P4でサーマルヘッド50によってインクリボンRを加熱することで、インクリボンRによって効果的に塵埃を除去することができる。そして、インクリボンRにおいて一度サーマルヘッド50によって加熱された範囲は、再度利用されること無く、リボン給排手段4のリボン回収部41によって回収されるため、塵埃Dが印刷面P1に再付着するおそれも無い。
【0032】
また、本実施形態では、上記のとおり印刷用紙Pの印刷面P1上で塵埃Dを集積するための集塵部6としてインクリボンRを利用しているので、印刷面P1上の塵埃Dを集積するための他の部材を必要とせず、印刷用紙PにインクリボンRを熱転写することで印刷を行うのに必要な最小限の構成とし、部品コストの低減、省スペース化を図ることができる。なお、塵埃Dを集積するための他の部材を設けることを制限するものではない。また、本実施形態では、制御部7は、塵埃集積工程S2及び塵埃回収工程S3からなるクリーニング動作を、インクリボンRの印刷一回当りの使用範囲Q内で加熱する範囲をずらしながら複数回実施することで、インクリボンRとして塵埃Dが付着して印刷に使用できなくなる範囲を実質的に増大させることなく、より効果的に印刷面P1上の塵埃Dを除去することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、プリンタ1は、クリーニングボタン81を備え、制御部7は、クリーニングボタン81の入力に基づいてクリーニングモードに移行し、クリーニング動作を実施させるものとしたが、これに限るものではない。例えば、制御部7が、カウンタを備え、所定回数印刷を行ったら、定期的かつ自動的にクリーニングモードに移行してクリーニング動作を実施させるものとしても良い。
【0034】
また、印刷用紙Pへの印刷は、一度用紙搬送手段3によって印刷手段5よりも用紙搬送経路X用紙排出側X1に搬送した後に、用紙供給側X2に戻しながら印刷するものとし、集塵部6となる接触部R2の位置は印刷手段5よりも用紙排出側X1に配置されるものとしたが、これに限るものではない。用紙搬送経路X用紙排出側X1に向かって搬送しながら印刷手段5によって印刷を行うものとし、集塵部6を印刷手段5よりも用紙供給側X2に配置するものとしても良い。あるいは、集塵部6を印刷用紙Pに対して接触、非接触切替可能とすれば、印刷手段5による印刷する方向と、集塵部6の位置の組み合わせが異なるものとしても良い。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施形態のプリンタの概要を示す全体図である。
【図2】この発明の実施形態のプリンタの概要を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施形態のプリンタで使用されるインクリボンの一例を示す詳細図である。
【図4】この発明の実施形態のプリンタのクリーニング手順を説明するフロー図である。
【図5】この発明の実施形態のプリンタのクリーニング方法における集塵工程を説明する説明図である。
【図6】この発明の実施形態のプリンタのクリーニング方法における塵埃回収工程を説明する説明図である。
【図7】この発明の実施形態のプリンタのクリーニング方法において、クリーニング動作を1回実施した後のインクリボンの状態を説明する説明図である。
【図8】この発明の実施形態のプリンタのクリーニング方法において、所定回数クリーニング動作を実施した後のインクリボンの状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プリンタ
3 用紙搬送手段
4 リボン給排手段
40 リボン供給部
41 リボン回収部
5 印刷手段
6 集塵部
7a 塵埃集積手段
7b 塵埃回収手段
D 塵埃
P 印刷用紙
P1 印刷面
P4 塵埃集積範囲
R インクリボン
Q 一回当りの使用範囲
X 用紙搬送経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を所定の用紙搬送経路に沿って搬送することが可能な用紙搬送手段と、
インクリボンを供給部から供給し、前記用紙搬送経路の少なくとも一部で前記用紙搬送手段によって搬送される前記印刷用紙の印刷面に対向して搬送し、回収部に回収するリボン給排手段と、
互いに対向する前記インクリボンと前記印刷用紙とを挟み込んで加熱することで、前記インクリボンのインクを前記印刷面上に熱転写する印刷手段と、
前記用紙搬送手段によって搬送される前記印刷用紙の前記印刷面に接触して該印刷面上で塵埃を集積することが可能な集塵部と、
該集塵部を前記印刷面に接触させた状態で前記用紙搬送手段によって前記印刷用紙を搬送させ、前記印刷面上の所定の塵埃集積範囲に塵埃を集積させる塵埃集積手段と、
前記塵埃集積範囲で前記印刷手段によって前記インクリボンを加熱させることで集積した前記塵埃を前記インクリボンに付着させ回収する塵埃回収手段とを備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタにおいて、
前記集塵部は、前記リボン給排手段によって配設されて前記用紙搬送経路に沿う少なくとも一部で前記印刷用紙の前記印刷面に接触した前記インクリボンであることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプリンタにおいて、
前記塵埃回収手段は、前記印刷用紙に対する一回の印刷で使用する前記インクリボンの一回当りの使用範囲内で前記リボン給排手段によって搬送させて、前記印刷手段による前記インクリボンの加熱する範囲をずらしながら前記クリーニング動作を複数回連続して実施することを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
所定の用紙搬送経路に搬送された印刷用紙の印刷面上にインクリボンを熱転写することで印刷を行うプリンタのクリーニング方法であって、
前記印刷面に塵埃を集積させるための集塵部を接触させながら、前記印刷用紙を前記用紙搬送経路に沿って搬送して、前記印刷面上の所定の塵埃集積範囲に塵埃を集積させる塵埃集積工程と、
前記印刷面上の前記塵埃集積範囲で前記インクリボンを加熱させることで集積した前記塵埃を前記インクリボンに付着させ回収する塵埃回収工程とを備えることを特徴とするプリンタのクリーニング方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプリンタのクリーニング方法において、
前記塵埃集積工程は、前記集塵部として前記インクリボンの前記用紙搬送経路に沿う少なくとも一部を前記印刷面に接触させることで塵埃の集積を行うことを特徴とするプリンタのクリーニング方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプリンタのクリーニング方法において、
前記印刷用紙に対する一回の印刷で使用する前記インクリボンの一回当りの使用範囲内で、該インクリボンの加熱する範囲をずらしながら前記塵埃集積工程と前記塵埃回収工程とを複数回連続して実施することを特徴とするプリンタのクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−23313(P2010−23313A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186031(P2008−186031)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】