説明

プリンタ

【課題】 排紙開口部を有し、開閉可能なカバーを有するプリンタでは、装置内部の駆動音が排紙時に排紙開口部を通して外部に漏れてしまうという問題があった。また、カバーの開閉を制御できるプリンタにおいて、排紙のときのみ開口部を作る場合では排紙時・印刷時の駆動音は外部に漏れる課題があり、回転可能なフラップが常に開口部を塞ぐ構成では印刷直後の印字面とフラップが擦れることによってインクやトナー等の印字物質の転写・擦れが発生し、画像品質の低下が懸念される。本発明では、開口部を無くすことで、画像品質を保ちながら開口部から外部に漏れる全ての内部駆動音を抑制する開閉可能なカバーを有するプリンタを提供する。
【解決手段】 上記問題を解決するため、前面カバーの開動作によってできる開口部を新たなカバーで覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を有するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタは、記録用紙を装置内に吸入する給紙機構、装置内部で記録用紙を運ぶ搬送機構、記録用紙を外部に排出する排紙機構を有している。給紙機構によって吸入された記録用紙は搬送機構によって搬送装置内部を通過し、排紙機構によって、プリンタ外部に排出される。また、プリンタは内部に記録用紙に印刷を施す印刷機構を備えており、記録用紙を搬送しながら印刷を行っている。
【0003】
プリンタにおける印刷時には、搬送機構で用紙を搬送しながら、印刷機構が記録紙に印刷を施すことで、記録紙全域の印刷を行っている。また、プリンタは印刷機構の特性上メンテナンスが不可欠であり、そのための回復機構を有している。
【0004】
したがって、プリンタには給紙機構、搬送機構、印刷機構、排紙機構、回復機構といった機構ユニットが存在し、これらの機構駆動時、各機構で発生する振動により騒音が発生する。
【0005】
ここで、プリンタ内部で発生した騒音は、前記排紙機構開口部を通して外部に漏れてしまう課題がある。
【0006】
特許文献1では、画像形成装置開口部から外に漏れる騒音エネルギーを遮音するために、開口部分を開閉するカバー部材を設けている。
【0007】
また、特許文献2では、用紙の出入口開口部の大きさを調整するフラップを設け、用紙が出入口を通過する際に通過を妨げない程度に隙間を狭くすることで、装置内部の騒音が外部に漏れる量を極力減少させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−104902号公報
【特許文献2】特開平9−52400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のプリンタは記録用紙が装置に出入りするという特性上、出入口である給紙部・排紙部には開口部が存在する。近年の記録用紙搬送装置で本体に内蔵されたカセットに記録用紙を積載することが可能となっている機種が多く、給紙部に関しては必ずしも開口部が存在するわけではないが、排紙部に関しては従来と変わらず、開口部が存在する。
【0010】
従来のプリンタ開口部には異物の侵入を防止するために、カバーが取り付けられている。ここで、排出された記録用紙全てを覆う程の大きさのカバーを排紙開口部に設けると、装置サイズが大型化してしまう。そこで、装置サイズの小型化を図るためにこれらカバーは開閉可能な機構を有していることが多い。
【0011】
開閉可能な排紙開口部カバーの役割は、排紙動作を行わないときには閉状態となることで異物の侵入を防止し、排紙動作を行う際はカバーが開状態となることで開口部を作り、排紙を可能とすることである。また、排紙開口部カバーは印刷前に自動で、もしくはユーザが手動で開動作を行うことができる。同様に排紙動作を行わないときは、自動で、もしくはユーザが手動で閉動作を行うことができる。
【0012】
しかし、排紙時は排紙開口部を開状態としなければならないため、装置内部の駆動音が開口部を通して、外部に漏れてしまうという問題がある。
【0013】
ここで、内部装置音が外部に漏れる問題に対する従来対策案を下記に2つ取り上げる。
【0014】
まず、特許文献1における従来の遮音装置では、待機状態では開口部がカバーで覆われているため、装置内部の騒音を遮音することはできるが、記録用紙が排紙される際、記録用紙と開閉カバーの干渉を避けるため、カバーを開けている。そのため、印字・排紙動作時の騒音抑制に関しては改善の余地があると考えられる。
【0015】
次に、特許文献2における従来の遮音装置では、記録用紙が排紙される際でもフラップが開口部を塞いでいるため、印字・排紙動作時の騒音抑制は可能となっている。しかしながら、プリンタにおいては、印刷直後の印字面とフラップが擦れることによってインクやトナー等の印字物質の転写・擦れが発生し、画像品質の低下が懸念される。
【0016】
本発明は上記に挙げられた技術課題を鑑みてなされたものである。本発明の目的は、画像品質を保ちながら、開口部から外部に漏れる全ての内部駆動音を抑制する開閉可能なカバーを有するプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前面開口部を覆う第1のカバーを有するプリンタにおいて、第1のカバー開動作に伴って生じる開口部を覆うための第1のカバー以外のカバーと、前記第1のカバー以外のカバーが前記第1のカバー開動作と同期して前記第1のカバー開動作に伴って生じる開口部を覆う機構を有することを特徴としたプリンタ。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果は、装置サイズ小型化のために排紙開口部に開閉可能なカバーを有するプリンタであっても、開口部を無くすことができる構造を採用することによって、画像品質を保ちながら開口部から外部に漏れる全ての内部駆動音を抑制することができる点である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1による記録装置の横断面図(閉状態)
【図2】本発明の実施例1による記録装置の横断面図(閉状態→開状態)
【図3】本発明の実施例1による記録装置の横断面図(開状態)
【図4】本発明の実施例2による記録装置の断面詳細図
【図5】本発明の実施例2による記録装置の断面詳細図
【図6】本発明の実施例3による記録装置の断面詳細図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施例1]
本発明を実施するのに好適なプリンタの実施例を説明する。
【0021】
最初にプリンタの動作について説明する。
【0022】
印刷時、給紙ユニットによって搬送された記録用紙11は、搬送駆動ローラ7と搬送従動ローラ8に挟み込まれ搬送される。搬送された記録用紙11は記録装置9によって印刷される。印刷後は排紙駆動ローラ5と排紙従動ローラ6に挟み込まれ排紙される。
【0023】
また、印刷後は記録装置9のメンテナンスのため、記録装置は図示していない回復ユニットによる回復動作が行われる。
【0024】
上記の各動作においては、プリンタ各部の機構が動くため、振動による騒音が発生する。
【0025】
次に、前面カバーユニット1について説明する。
【0026】
前面カバーユニット1は前面カバー1a、上面カバー1b、2枚の側面カバー1c、で構成されている。
【0027】
排紙動作を行わないときは、図1の閉状態をとることが可能であり、このときは、プリンタのフレーム10と上面カバー1bが接しているため、プリンタに開口部は存在しないため、装置音の漏れは発生しない。
【0028】
一方、排紙動作時は排紙される記録用紙とカバーが干渉しないように、図2に示す通り、前面カバーユニット1を閉状態から開状態にする必要がある。
【0029】
まず、カバーユニット1の開閉タイミング、駆動源、駆動列について説明する。
【0030】
カバーユニット1を閉状態から開状態にするタイミングは、排紙される記録用紙が前面カバー1aに接触する前、かつ、開動作による振動が印刷品質に影響を与える可能性を考慮すると、印刷が開始する前に開動作を終えていることが望ましい。
【0031】
カバーユニット1を回転移動させる駆動源に関しては、カバーユニット1に位置が近い排紙ローラ5の回転駆動力を利用することで、製品の小型化が可能となり、総アクチュエータ数も減らすことができる。
【0032】
ここで、カバーユニット1の回転駆動源に排紙ローラを用いた場合、一旦カバーユニットが開状態となったら、それ以上排紙ローラから回転駆動力を伝達する必要が無いので、カバーユニットが開状態となったら駆動力が伝達されない駆動列が必要となる。
【0033】
上記を満たす駆動列を図2、図3を用いて説明する。
【0034】
ギア14は排紙ローラ5の逆転時のみ駆動を伝達するワンウェイ機構、また排紙ローラ5が正転から逆転に切り換えた際、排紙ローラ5が所定角度逆回転するまではギア14と駆動が繋がらないメカニカルタイマー機構を有している。排紙ローラが所定角度以上に逆転すると、排紙ローラ5と同期してギア14が回転し、ギア15、16を介してギア17に接続されたカバーユニット1が開く。ここで、ギア17は図3に示す通り、欠歯歯車となっているため、カバーユニット1が開状態となると、ギア16とギア17間の駆動が切れる。そのため、印刷時の排紙ローラ正転・逆転でカバーユニットが開閉動作することはない。また、ユーザによってフロントカバーが閉状態とされるときは、ギア14が有しているメカニカルタイマー機構によって排紙ローラ5へ駆動が伝わることは無い。
【0035】
その他、カバーユニット1を回転移動させる駆動源として、回転軸3周りに独立アクチュエータを取り付けてもよい。独立アクチュエータを採用することで、カバーユニット1を開状態から閉状態へすることも可能となる。
【0036】
次に、前面カバー1aが開状態となることでできる開口部を覆う上面カバー1bと、側面カバー1cについて説明する。
【0037】
上面カバー1bは前面カバー1aに接続されており、前面カバーが開いた分、プリンタ本体から引き出される。ここで、上面カバー1bは柔軟な材料でできているため、図3で示されるように円弧上の側面カバー1cのリブ13をガイドとして、前面カバー1aが回転移動したことによってできた開口部上部を覆う構成となる。なお、上面カバー1bに関しては、柔軟部材ではなく、蛇腹機構でも代替え可能である。
【0038】
前面カバー1aと上面カバー1bは、ユーザが簡単に接続を解除することができる構成で接続されている。例えば、前面カバー1aに穴が設けられており、上面カバー1bに設けられた爪形状を前記穴に嵌め込む構成が挙げられる。この構成によって、ユーザは前面カバー1aと上面カバー1bの接続を解除して、上面カバー1bを開けることで、容易に印刷された記録用紙を取り出すことができる。
【0039】
側面カバー1cも前面カバー1aに接続されている。前面カバー1aが回転軸3周りに回転移動することによって、側面カバー1cは前面カバー1aが開いた分だけプリンタ本体から引き出される。よって、前面カバー1aが開状態となることで前面カバー1aの開動作に伴って発生した開口部の側面部分を覆うことができる。
【0040】
以上のように、前面カバーの開閉の状態に関わらず、プリンタに開口部ができないため、プリンタ内部で発生した騒音の外部への漏れを低減することができる。この構成により、紙の搬送精度や印刷品質に影響を与えることなく、プリンタ動作音の外部への音漏れを防ぎ、結果として静音化が可能となる。この構成により、紙の搬送精度や印刷品質に影響を与えることなく、プリンタ動作音の外部への音漏れを防ぎ、結果として静音化が可能となった。
【0041】
[実施例2]
本発明を実施するプリンタの実施例1と異なる構成を説明する。
【0042】
図4は、前面カバー閉状態、図5は前面カバー開状態である。プリンタの動作、前面カバーユニット1の開動作タイミング、駆動源、駆動機構については、実施例1と同様である。
【0043】
前面カバー1aが開状態となることでできる開口部を覆う前面カバーユニット1について説明する。前面カバーユニット1は2枚の前面カバー1a・1b、2枚の側面カバー1d、上面カバー1cで構成されており図4における下部のみを、開口部とした箱型形状となっている。図4の閉状態では、プリンタのフレーム10と前面カバー1bが接しているため、プリンタに開口部はできない。また、開状態でも、前面カバー1bがフレーム10と接しているため、閉状態と同様に、プリンタに開口部はできない構成となっている。
【0044】
なお、前面カバーユニットが回転する際は、ユニットと本体フレームが干渉しない形状となっている。
【0045】
排紙された記録紙に関しては、前面カバー1a上に積載される。ユーザが前面カバー1bを前面カバー回転軸14周りに回転させて前面カバーユニット1を開けることで、印刷された記録用紙を取り出すことができる。
【0046】
以上のように、前面カバーの開閉の状態に関わらず、プリンタに開口部ができないため、プリンタ内部で発生した騒音の外部への漏れを低減することができる。
【0047】
この構成により、紙の搬送精度や印刷品質に影響を与えることなく、プリンタ動作音の外部への音漏れを防ぎ、結果として静音化が可能となった。
【0048】
[実施例3]
図6に実施例1、2で示した前面カバー1aに紙検知センサを搭載した実施例3を説明する。
【0049】
図6は械式スイッチ15のレバーが記録用紙によって押されることでレバーが倒れ、紙を検知することができる様子を表している。機械式センサに限らず電気式センサ等によって紙を検知してもよい。
【0050】
紙検知センサを搭載することで、プリンタが印刷された記録用紙が前面カバーユニット内の紙有無情報をユーザに発信することができる。これによって、ユーザは前面カバーユニット1内に紙があるかどうかを知ることができ、操作性が向上する。
【符号の説明】
【0051】
1a,1b,1c,1d カバー
2 サイドフレーム
3 前面カバー回転軸
4 ボトムフレーム
5 排紙駆動ローラ
6 排紙従動ローラ
7 搬送駆動ローラ
8 搬送従動ローラ
9 記録部
10 フレーム
11 記録用紙
12 リブ
13 リブ
14 ギア
15 ギア
16 ギア
17 ギア
18 前面カバー回転軸
19a,19b 紙検知センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口部を覆う第1のカバーを有するプリンタにおいて、第1のカバー開動作に伴って生じる開口部を覆うための第1のカバー以外のカバーと、前記第1のカバー以外のカバーが前記第1のカバー開動作と同期して前記第1のカバー開動作に伴って生じる開口部を覆う機構を有することを特徴としたプリンタ。
【請求項2】
前記第1のカバー以外のカバーで覆った開口部を開放することが可能な機構を有することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1のカバー以外のカバーに柔軟な材料を用いたことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第1のカバーと前記第1のカバー以外のカバーが対面し、同軸周りに回転移動することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第1のカバー、もしくは前記第1のカバー以外に、記録用紙を検知するためのセンサを備えたことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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