説明

プルアウトシェルフ

【課題】各種機器類を収容するために使用するラックでは、機器の取り付けや取り外しを容易にするためにプルアウトシェルフを利用するが、機器が押しボタン操作等により動いてしまったり、操作時や地震等の振動により、機器が落下したりするのを防ぐために、従来は、個々の足固定ブラケットにより機器の足を固定していた。このようなプルアウトシェルフでは、足固定ブラケット毎に、足位置に合うように左右方向と前後方向の位置決め調整をしなければならず位置決めに手間が掛かるという課題がある。
【解決手段】本発明では機器載置面5の前側と後側に機器足固定ブラケット位置決め部材6a、6bを前後方向に移動可能に配置すると共に位置決め固定機構7を設け、位置決め部材6の両端には、機器足固定ブラケット8を左右方向に移動可能に配置し、位置決め固定機構9を設けたプルアウトシェルフを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器や通信機器、電子機器等の重量機器を収容するためのラックにおいて使用するプルアウトシェルフ(機器載置用引出棚)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音響機器、通信機器、あるいは測定機器等の電子機器類を複数、集中的に収容するためには、例えば、図5に示すような、規格のある19インチラック101を使用する。このようなラック101の枠102に、機器103を直接ネジ留めして、機器103をラック101に収容すれば、低コストではあるが、機器103の取り付けや取り外しに手間がかかり、保守点検の作業性が極めて悪いという問題点がある。
【0003】
このような問題点を解決するものとして、プルアウトシェルフ104がある。このような棚はラック101の前方(矢印Fの方向)に引き出して、機器類(図示省略)をこの上に載置した後、元に戻して機器を収容することができる。
【0004】
また、このようにプルアウトシェルフ104に載置してラック101に収容した機器類は収容時と同様に、プルアウトシェルフ104をラック101の前方に引き出して取り外すことができ、また保守点検のさいにもプルアウトシェルフ104をラック101の前方に引き出した状態で作業ができるので、直接ネジ留めする方式にくらべ、作業性を飛躍的に改善することができる。
【0005】
従来のプルアウトシェルフ104としては、例えば特許文献1に示されるものがある。これは図6に示すように、プルアウトシェルフ104の機器載置面105の両側に、機器の足を載置するための凹部106(106a、106b)を設けるとともに、この凹部106において機器の足を固定するための足固定ブラケット107を調節可能に設けている。
【0006】
足固定ブラケット107は断面がZ形の形状をしており、重量機器類の足部を当接可能に円弧状に形成した当接部108と、凹部106に接する基底部109とを有し、この基底部109を、凹部106に形成した数本のスリット110上を移動させて取り付け位置を調節し、基底部109に設けた長穴111を、スリット110に合わせた状態で固定するようにしている。
【0007】
このような従来のプルアウトシェルフ104では、円弧状の当接部108が載置する機器の足位置に合うように、足固定ブラケット107の取り付け位置を調節することにより、機器の足をしっかりと固定できるので、例えば機器に対する押しボタン操作等をしても、機器が後ろの方へずれてしまうことも防げるし、またプルアウトシェルフ104の引き出し操作時や地震等の振動により、機器がプルアウトシェルフ104から落下したりするのも防ぐことができる。
【0008】
しかしながら、このような従来のプルアウトシェルフ104では、機器の固定時においては、4個の足固定ブラケット107のそれぞれについて、円弧状の当接部108が載置する機器の足位置に合うように、左右方向と前後方向の位置決め調整をしなければならず、位置決めに手間が掛かるという問題点がある。
【特許文献1】特許第3599220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来のプルアウトシェルフは、足固定ブラケットの取り付け位置を調節することにより、機器の足をしっかりと固定することができるが、4個の足固定ブラケットのそれぞれについて、左右方向と前後方向の位置決め調整をしなければならず、位置決めに手間が掛かるという問題点がある。
本発明はこのような課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために,本発明では、機器載置面の前側と後側のそれぞれに、機器足固定ブラケット位置決め部材を前後方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構を設け、さらにそれぞれの機器足固定ブラケット位置決め部材の両端には、機器足固定ブラケットを左右方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構を設けたプルアウトシェルフを提案する。
【0011】
そして、本発明は上記構成において、機器載置面の前側と後側のそれぞれに、一対の前後方向の案内溝を平行に形成するとともに、機器足固定ブラケット位置決め部材に雄ネジ部材の貫通孔を設け、雄ネジ部材を案内溝と貫通孔を貫通させて雌ねじ部材に螺合させて、適所で位置決めする固定機構を構成したプルアウトシェルフを提案する。
【0012】
また本発明は上記構成において、機器足固定ブラケット位置決め部材の両端のそれぞれに、一対の左右方向の案内溝を平行に形成するとともに、機器足固定ブラケットに雄ネジ部材の貫通孔を設け、雄ネジ部材を案内溝と貫通孔を貫通させて雌ねじ部材に螺合させて、適所で位置決めする固定機構を構成したプルアウトシェルフを提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプルアウトシェルフは機器載置面の前側と後側のそれぞれに、機器足固定ブラケット位置決め部材を前後方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構を設け、さらにそれぞれの機器足固定ブラケット位置決め部材の両端には、機器足固定ブラケットを左右方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構を設けているので、機器載置面の前側に配置した機器足固定ブラケット位置決め部材を前後方向に移動または固定することにより、この両端に配置した機器足固定ブラケットに対し、一括して前後方向の位置決め調整を行うことができる。
【0014】
同様に機器載置面の後側に配置した機器足固定ブラケット位置決め部材を前後方向に移動または固定することにより、この両端に配置した機器足固定ブラケットに対しても、一括した前後方向の位置決め調整が可能である。
【0015】
そして、それぞれの機器足固定ブラケットは左右方向に移動可能で、しかも適所で固定できるので、機器の足位置に合わせて位置決めして固定すれば、機器の足をしっかりと固定することができる。
【0016】
以上のように、本発明のプルアウトシェルフは載置機器の足を固定するための操作を、極めて簡素化しうるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
図1〜図4は本発明に係る実施例を示すもので、図1は本発明のプルアウトシェルフ1の使用状態の斜視図で、本発明のプルアウトシェルフ1は、ラック2に対し、スライドレール3を介して取り付ける機器載置用の棚である。音響機器、通信機器や電子機器等の機器4をラック2に収容する場合は、プルアウトシェルフ1をラック2の前方(矢印Fの方向)に引き出して、機器4をこの上に載置した後、元に戻して機器4をラック2の中に収容することができる。また、このようにプルアウトシェルフ1に載置してラック2に収容した機器4は収容時と同様に、プルアウトシェルフ1をラック2の前方に引き出して取り外すことができ、また保守点検のさいにもプルアウトシェルフ1をラック2の前方に引き出した状態で作業を行うことができる。
【0018】
本発明のプルアウトシェルフ1は、さらに図2に示すように、機器載置面5の前側と後側のそれぞれに、機器足固定ブラケット位置決め部材6(6a、6b)を前後方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構7を設け、さらにそれぞれの機器足固定ブラケット位置決め部材6の両端には、機器足固定ブラケット8を左右方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構9を設けている。
【0019】
なお、図2において、テープトレイ10は保守点検時等において、工具やビニルテープ等の小物を置くための部材で、使用時はプルアウトシェルフ1の前面パネル11に設けたスリット12を介して前面パネル11の前方に引き出して使用し、使用後は押し込んで収容する。停止用部材13はこのような押し込み時に、テープトレイ10を所定の位置で停止させるためのものである。
【0020】
本発明の実施例においては、図2、図3に示すように、プルアウトシェルフ1の機器載置面5の前側と後側のそれぞれに、一対の前後方向の案内溝14(14a1、14a2、14b1、14b2)を平行に形成するとともに、機器足固定ブラケット位置決め部材6に雄ネジ部材15を取り付け、さらにこの雄ネジ部材15は案内溝14を機器載置面5側から裏面5b側に貫通させて案内溝14に係合させて、機器足固定ブラケット位置決め部材6を前後方向に移動可能に配置し、そして雄ネジ部材15に対し、裏面5b側から嵌合させた雌ネジ部材16により、機器足固定ブラケット位置決め部材6を、適所で位置決めする固定機構を構成している。
【0021】
さらに、機器足固定ブラケット位置決め部材6の両端のそれぞれには、一対の左右方向の案内溝17(17a1、17a2、17b1、17b2)を平行に形成するとともに、図4に示すように、機器足固定ブラケット8に雄ネジ部材18を取り付け、さらにこの雄ネジ部材18は案内溝17を機器載置面5側から裏面5b側に貫通させて案内溝17に係合させて、機器足固定ブラケット8を左右方向に移動可能に配置し、そして雄ネジ部材18に対し、裏面5b側から嵌合させた雌ネジ部材19により、機器足固定ブラケット8を、適所で位置決めする固定機構を構成している。
【0022】
また、機器足固定ブラケット位置決め部材6の前後方向の移動の範囲と、機器足固定ブラケット8の左右方向の移動の範囲において、機器足固定ブラケット8に取り付けた雄ネジ部材18に対する、裏面5b側からの雌ネジ部材19の嵌合操作を可能にするために、機器載置面5の前側と後側のそれぞれに、一対の前後方向の嵌合操作孔20(20a1、20a2、20b1、20b2)を設けている。
【0023】
以上のような構成において、機器4をラック2に収容する場合は、図1に示すように、プルアウトシェルフ1をラック2の前方(矢印Fの方向)に引き出して、機器4をこの上に載置する。そして、機器足固定ブラケット位置決め部材6a、6bを前後方向に移動させて、機器足固定ブラケット8が機器4の足21に対応するように位置決めし、固定する。次に、機器足固定ブラケット8を左右方向に移動させて、その半円形に形成した機器足固定部22を、機器4の足21に合わせて固定すれば、この機器足固定部22が半円形の形状なので、機器足21に対する整合性がたいへん良く、したがって機器4をプルアウトシェルフ1にしっかりと固定することができる。
【0024】
このように、本発明のプルアウトシェルフ1においては、機器足固定ブラケット位置決め部材6を前後方向に移動させることにより、その両端に配置した機器足固定ブラケット8を一括して位置決めできるので、載置機器の足を固定するための操作が、極めて簡単である。
【0025】
引き出したプルアウトシェルフ1に固定した機器4は、プルアウトシェルフ1を元に戻すことにより、ラック2に収容することができる。また、機器4をラック2から取り外す場合は、プルアウトシェルフ1を引き出し、機器足固定ブラケット8の位置決め固定機構9を解除して、その機器足固定部22を、機器4の足21から離すだけでよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明のプルアウトシェルフは載置機器の足を固定するための作業を、極めて簡素化できるので、通信機器や電子機器等の各種機器類をラックに収容するための取付け工事を省力化し、スピードアップできるのはもちろん、すでにラックに収容されている機器類に対する保守点検作業も容易にしうるので、取付け工事や保守点検に要する費用の低減に大いに役立ち、その産業上の利用可能性はきわめて大である。とくに、作業対象とする機器の数が多いと、その費用削減効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のプルアウトシェルフ1の使用状態の斜視図的説明図。
【図2】本発明のプルアウトシェルフ1の斜視図的説明図。
【図3】本発明のプルアウトシェルフ1における要部の拡大図的説明図。
【図4】本発明のプルアウトシェルフ1における要部の拡大図的説明図。
【図5】従来例の説明図
【図6】従来例の説明図。
【符号の説明】
【0028】
1 本発明のプルアウトシェルフ
2 ラック
3 スライドレール
4 機器
5 機器載置面
6(6a、6b) 機器足固定ブラケット位置決め部材
7 固定機構
8 機器足固定ブラケット
9 固定機構
10 テープトレイ
11 前面パネル
12 スリット
13 停止用部材
14 案内溝
(14a1、14a2) 前側の案内溝
(14b1、14b2) 後側の案内溝
15 雄ネジ部材
16 雌ネジ部材
17 案内溝
(17a1、17a2) 右側の案内溝
(17b1、17b2) 左側の案内溝
18 雄ネジ部材
19 雌ネジ部材
20 嵌合操作孔
(20a1、20a2) 前側の嵌合操作孔
(20b1、20b2) 後側の嵌合操作孔
21 機器4の足
22 機器足固定部
F ラック2の前方
101 ラック
102 枠
103 機器
104 プルアウトシェルフ
F ラック101の前方
105 機器載置面
106(106a、106b) 凹部
107 足固定ブラケット
108 当接部
109 基底部
110 スリット
111 長穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器載置面の前側と後側のそれぞれに、機器足固定ブラケット位置決め部材を前後方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構を設け、さらにそれぞれの機器足固定ブラケット位置決め部材の両端には、機器足固定ブラケットを左右方向に移動可能に配置するとともに、適所での位置決め固定機構を設けたことを特徴とするプルアウトシェルフ。
【請求項2】
機器載置面の前側と後側のそれぞれに、一対の前後方向の案内溝を平行に形成するとともに、機器足固定ブラケット位置決め部材に雄ネジ部材の貫通孔を設け、雄ネジ部材を案内溝と貫通孔を貫通させて雌ねじ部材に螺合させて、適所で位置決めする固定機構を構成したことを特徴とする請求項1に記載のプルアウトシェルフ。
【請求項3】
機器足固定ブラケット位置決め部材の両端のそれぞれに、一対の左右方向の案内溝を平行に形成するとともに、機器足固定ブラケットに雄ネジ部材の貫通孔を設け、雄ネジ部材を案内溝と貫通孔を貫通させて雌ねじ部材に螺合させて、適所で位置決めする固定機構を構成したことを特徴とする請求項1に記載のプルアウトシェルフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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