説明

プルダウン検出装置

【課題】検出精度の高いプルダウン検出装置を提供する。
【解決手段】プルダウン検出装置1に、インターレース映像信号が入力されると、フィールド遅延部2によって一定のフィールド期間遅延され、フィールド遅延部2によって遅延されたフィールドと現在のフィールドとの差分量を差分算出部3で算出し、算出結果を差分判定部4に出力する。差分判定部4では、所定の閾値と差分量の比較を行い、重複フィールドであるか異なるフィールドであるかの判定を行ない、判定結果をプルダウン判定部5に出力し、プルダウン方式の決定がなされる。また、重複フィールドもしくは異なるフィールドが所定回数連続している場合には、閾値調整部6に判定結果の出力を行い、適切に閾値の調整を行なうように制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映画フィルムから2−3プルダウン方式や2−2プルダウン方式などにより生成された映像信号がプルダウン信号であるか否かを検出するプルダウン検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像信号の中には、映画フィルムに基づいて生成された映像信号が含まれていることが
ある。映画フィルムは毎秒24コマであるのに対して、標準テレビジョン方式の映像信号
は毎秒30フレーム(毎秒60フィールド)の飛越し走査方式の映像信号である。
【0003】
そのため、映画フィルムに基づいて生成された映像信号は、2−3プルダウン方式や2−2プルダウン方式などによって、標準テレビジョン方式の映像信号に変換されている。図6では、2−3プルダウン方式によって、7コマの映画フィルムから17フィールドのインターレース映像信号が生成される例を示す。奇数番目のコマからは2フィールド、偶数番目のコマからは3フィールドのインターレース映像信号が生成されており、7コマ目以降は図示しないが、24コマの映画フィルムから60フィールドのインターレース映像信号が生成される。偶数番目のコマから生成される3フィールドの内、2フィールドは、同じインターレース映像信号からなる重複フィールドである。このようにして映画フィルムから、2−3プルダウン方式あるいは2−2プルダウン方式によって標準のテレビジョン映像信号、いわゆるプルダウン信号が作成されている。
【0004】
そして、プルダウン方式で作成された映像信号を受像する受信機では、映像を高画質で表示するため、プルダウン信号が上記した2−2あるいは2−3プルダウン方式等で生成されたかを検出する必要がある。即ち、フィールド間の差分を複数回算出し、これらの差分量と所定の閾値とから構成される一定のパターンを分析し、いずれのプルダウン方式かを決定するプルダウン検出を行なう必要がある。
【0005】
ここで、プルダウン検出での一般的なプルダウン方式の決定方法について図6を用いて説明する。図6において、a乃至oは、フィールド間の差分量(絶対値)を算出するためのペアをそれぞれ示している。例えば、aは1コマ目の1フィールドから2コマ目の1フィールドの差をとって差分量を算出する。このようにして算出された差分量は、図6の下段に示すような一定のパターンを形成する。A乃至Oは、それぞれ差分量を示し、Aは、aによって算出された差分量で、Bはbによって算出された差分量であり、それぞれ異なるフィールド間の差分量である。また、Cは、cによって算出された差分量であり、重複フィールドの差分量であるため、差分量はほぼゼロである。
【0006】
つまり、2−3プルダウン方式で生成されたプルダウン信号には、5フィールドに1回の割合で重複フィールドが存在するため、差分量が定期的にゼロとなる。プルダウン検出では、図6の破線部で示すような一定のパターンを検出することで、例えば、入力映像信号が2−3プルダウン方式で生成された信号であるという検出を行なう。
【0007】
特許文献1では、入力映像信号に対してフレーム間差分積算値を算出し、現フィールドのフレーム間差分積算値が静止フィールド判定用第1閾値以下であり、現フィールドに先行する4つのフィールドのフレーム間差分積算値各々が静止フィールド判定用第1閾値よりも大きい動きフィールド判定用第1閾値以上であり、かつ現フィールドのフレーム間差分積算値が先行する4つのフィールドのフレーム間差分積算値各々に第1所定の係数を乗算して得た補正フレーム間差分積算値各々よりも小さいことを検出したとき入力映像信号が、プルダウン方式で生成された信号であると判定する手段が開示されている。
【0008】
即ち、特許文献1記載の技術は、静止フィールド判定用閾値と動きフィールド判定用閾値の2種類の閾値(閾値はそれぞれ固定値)を用い、フィールド間の差分積算値を算出して、それぞれの閾値と算出した差分積算値との大小関係に基づいて形成される一定のパターンからプルダウン方式の検出を行なっている。上記技術は、図7に示すように、差分量がそれぞれの閾値に基づいて確実に区別できるのであれば検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−78926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、あらかじめ定めた固定の閾値に基づいてプルダウン検出を行なっており、例えばあまり動きのない映像であると、差分量を算出しても、動きフィールド判定用閾値を下回り、図8に示すように誤判定を含む可能性がある。
【0011】
また、図9に示すように、重複フィールドであってもノイズ等の影響により差分量がゼロとならない場合にも、静止フィールド判定用閾値を上回るために誤判定を含むこととなり、いずれもプルダウン信号であると判定できない。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なるフィールドであるか重複フィールドであるかの判定を行なうための閾値を可変にすることにより、あまり動きのない映像やノイズが入っている映像のような場合であっても、正確にプルダウン検出を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るプルダウン検出装置は、入力映像信号を所定のフレーム又はフィールド期間だけ遅延させる遅延手段と、前記遅延手段により遅延させたフレーム又はフィールドと現在のフレーム又はフィールドとの差分量を算出する差分算出手段と、前記差分算出手段により算出した差分量の大きさと特定の閾値とを比較し、前記現在のフレーム又はフィールドと所定の期間だけ前のフレーム又はフィールドが重複フレーム又は重複フィールドであるか否かを判定する差分判定手段と、前記差分判定手段による所定期間の判定結果により、前記入力映像信号がプルダウン信号であるか否かを判定するプルダウン判定手段と、
前記差分判定手段による判定結果により前記閾値を調整する閾値調整手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るプルダウン検出装置では、差分量に応じて閾値を動的に調整することにより、検出精度の高いプルダウン検出装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例に関するブロック構成図。
【図2】本発明の第1の実施例に関する説明図。
【図3】本発明の第1の実施例に関する説明図。
【図4】本発明の第2の実施例に関するブロック構成図。
【図5】本発明の第1の実施例に関する説明図。
【図6】プルダウン信号の生成及び検出に関する説明図。
【図7】従来技術に関する説明図。
【図8】従来技術に関する説明図。
【図9】従来技術に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例について以下に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例について、以下で図1、図2、図3及び図6を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施例におけるプルダウン検出装置1の基本構成を示すブロック構成図である。プルダウン検出装置1は、フィールド遅延部2と差分算出部3と差分判定部4とプルダウン判定部5と閾値調整部6で構成される。
【0018】
フィールド遅延部2は、インターレース入力映像信号を2フィールド期間だけ遅延させ、差分算出部3に入力する。差分算出部3は、上述したように、インターレース入力映像信号の現在のフィールドと、フィールド遅延部2より出力された現在より2フィールド前のフィールドとの差分量を算出する。差分量の算出方法に関しては、これに限られるものではないが、フィールド間の差分絶対値を画素単位あるいは一定領域単位で算出し、1フィールド期間分積算するなどして算出する。
【0019】
差分判定部4は、差分算出部3で算出した差分量の大きさと閾値とを比較することにより、現在のフィールドと2フィールド前のフィールドが重複フィールドであるか異なるフィールドであるかの判定を行い、例えば、図6の破線部分で示すような所定期間の一連の判定結果をプルダウン判定部5に出力する。
【0020】
プルダウン判定部5は、入力される一連の判定結果と、図示しないメモリにあらかじめ内蔵しておいた所定のパターンとを比較することにより、入力されたインターレース映像信号が、所定の方式で生成されたプルダウン信号であるか否かの判定を行なう。例えば、2−3プルダウン方式によって生成されたプルダウン信号を検出する場合、プルダウン判定部5において、入力される一連の判定結果と「異なるフィールド」→「異なるフィールド」→「重複フィールド」→「異なるフィールド」→「異なるフィールド」という所定の差分量のパターンとを比較することにより行なう。また、2−3プルダウン方式で生成されたプルダウン信号を1フィールド前との差異により検出する場合、プルダウン判定部5において比較すべきパターンは、「重複フィールド」→「異なるフィールド」→「重複フィールド」→「重複フィールド」→「異なるフィールド」である。
【0021】
閾値調整部6は、差分判定部4から入力される一連の判定結果から、重複フィールドが続いた回数、あるいは異なるフィールドが続いた回数のカウントを行い、所定の回数に達した場合に、差分判定部4に閾値を調整するための信号を出力する。
【0022】
例えば、プルダウン判定部5に出力される一連の判定結果が、図2(a)に示すように、ノイズの影響で誤判定を含み、5回以上連続して異なるフィールドであると判定された場合、あるいは図3(a)に示すように、映像にあまり動きがないため(以下、静的シーンと呼ぶ)あらかじめ定めた閾値を下回るような誤判定を含むこととなり、2回以上連続して重複フィールドであると判定された場合には、いずれの場合もプルダウン信号であると判定されない。差分量を示す表現として、図中では黒丸を異なるフィールド間の差分量、白丸を重複フィールド間の差分量、斜線丸を誤判定としている。
【0023】
そこで、閾値調整部6は、差分判定部4において、異なるフィールドあるいは重複フィールドであるという判定結果が、一定回数連続した場合には、より確からしい前記判定結果を得るために、差分量の大きさを区別しやすいように閾値を変更する。図5は、差分量の大きさが、異なるフィールドと重複フィールドとで区別出来ているプルダウン検出を行なうのに理想的な状態を示している。図2(b)は、図2(a)に示した状態から、閾値調整部6が閾値を大きくなるように調整を行なった調整後の様子を示している。また、図3(b)は、図3(a)に示した状態から、閾値調整部6が閾値を小さくするように調整を行なった調整後の様子を示している。前記調整を行なうことにより、差分の大きさと閾値との関係がプルダウン検出を行うのに理想的な状態である図5に示す関係に近付き、プルダウン検出可能な状態とすることができる。
【0024】
また、重複フィールドあるいは異なるフィールドであるという判定結果が何回連続したら閾値を調整するかに関しては、検出するプルダウン方式において、重複フィールドが発生する確率や、異なるフィールドが発生する確率に基づいて決定する。
【0025】
例えば、2−3プルダウンを2フィールド前との差分により検出する場合であり、重複フィールドが3回連続したときに閾値の調整を行なうとした場合に、重複フィールドが3回連続して現れる確率は、(1/5)≒0.008=0.8%である。故に、異なるフィールドが現れる確率に関しては、0.008=0.8%≒(4/5)22なので、22回異なるフィールドが連続して現れたら、閾値の調整を行なう。こういった確率に基づいて閾値の調整を行なうか否かの判断を行なう。尚、本実施例では確率にもとづいて閾値の調整を行なうとしているが、重複フィールドあるいは異なるフィールドが出現する頻度であってもよいものとする。閾値の調整量に関しては、前記同一な判定結果の連続回数が増えるにしたがって大きくすることにより、変化に対する追従性を高めることができる。例えば、重複フィールドが3回連続したら1段階、6回連続したら2段階、9回連続したら4段階、12回連続したら8段階といった具合に閾値を段階的に小さくするように制御を行う。これにより、例えば、静的シーンから動きのある映像(動的シーン)に移行し、再度静的シーンに戻るような場合であっても、前記のように段階的に変化させることで、必要最小限の調整量で閾値の調整を行なうため、効果的にプルダウン検出を行なうことが出来る。尚、前記調整方法に限られず、例えば、差分量がゼロに近い重複フィールドの差分量と異なるフィールドの複数の差分量のそれぞれを平均して2種類の平均差分量とし、それらを割り算して中点位置を算出して、適切な閾値の位置を調整するような構成であってもよいものとする。
【0026】
また、動きの激しい映像シーンでは、重複フィールドの場合の差分量と異なるフィールドの場合の差分量の差異が大きくなるため、プルダウン検出は行ないやすい。逆に、静的シーンでは、重複フィールドの場合の差分量と異なるフィールドの場合の差分量とがほとんど同じとなるため、プルダウン検出を行うのは困難となる。
【0027】
従って、静的シーンでは、ある程度まで閾値を小さくすると、それ以上小さくしても検出精度は上がらないため、閾値の調整範囲を検出精度の改善が十分見込める範囲内に限定し、動きのある映像シーンに変化した場合に行なう閾値の調整量を少なくすることで、効果的にプルダウン検出を行なうことができる。
【0028】
また、上述のように静止シーンではプルダウン検出を行うのが困難であることから、動的シーンから静止シーンに一時的に変化したような場合には、閾値の調整量を変化させないように制御を行うことで、シーンの変わり目などの静止シーンにおいて閾値が一時的に小さくなるのを防ぐことができる。
【0029】
上記構成により、差分量に応じて閾値を動的に調整することにより、検出精度の高いプルダウン検出装置を提供することが出来る。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の実施例2について図4のブロック構成図を用いて説明する。基本的には実施例1と同様の構成及び動作からなり、特に、実施例1と異なる点は、図1でのフィールド遅延部2が、図4ではフレーム遅延部8により構成されている点である。これにより映像信号がプログレッシブ入力であっても、プルダウン検出を行なうことが出来る。
【0031】
プルダウン検出装置7は、フレーム遅延部8と差分算出部9と差分判定部10とプルダウン判定部11と閾値調整部12で構成される。フレーム単位で動作を行なうこと以外は、実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0032】
上記構成により、差分量に応じて閾値を動的に調整することにより、検出精度の高いプルダウン検出装置を提供することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、プルダウン検出を精度よく行うことが出来るため、テレビジョン受像機に有用である。
【符号の説明】
【0034】
1、7 プルダウン検出装置
2 フィールド遅延部
3、9 差分算出部
4、10 差分判定部
5、11 プルダウン判定部
6、12 閾値調整部
8 フレーム遅延部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号を所定のフレーム又はフィールド期間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段により遅延させたフレーム又はフィールドと現在のフレーム又はフィールドとの差分量を算出する差分算出手段と、
前記差分算出手段により算出した差分量の大きさと特定の閾値とを比較し、前記現在のフレーム又はフィールドと所定の期間だけ前のフレーム又はフィールドが重複フレーム又は重複フィールドであるか否かを判定する差分判定手段と、
前記差分判定手段による所定期間の判定結果により、前記入力映像信号がプルダウン信号であるか否かを判定するプルダウン判定手段と、
前記差分判定手段による判定結果により前記閾値を調整する閾値調整手段とを備えることを特徴とするプルダウン検出装置。
【請求項2】
前記閾値調整手段は、前記差分判定手段において重複フレーム又は重複フィールドあるいは異なるフレーム又は異なるフィールドであるという判定結果が所定の回数連続した場合に、前記閾値を調整することを特徴とする請求項1に記載のプルダウン検出装置。
【請求項3】
前記閾値調整手段は、重複フレーム又は重複フィールドが出現する確率あるいは異なるフレーム又は異なるフィールドが出現する確率に基づいて前記閾値の調整を行なうことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載のプルダウン検出装置。
【請求項4】
前記閾値調整手段は、重複フレーム又は重複フィールドが出現する頻度あるいは異なるフレーム又は異なるフィールドが出現する頻度に基づいて前記閾値の調整を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のプルダウン検出装置。
【請求項5】
前記閾値調整手段は、前記閾値の調整範囲があらかじめ定められており、前記閾値を前記調整範囲内で調整することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載のプルダウン検出装置。
【請求項6】
前記閾値調整手段は、前記プルダウン判定手段においてプルダウン信号であると判定されている間は閾値を調整しないことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のプルダウン検出装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−176664(P2011−176664A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39767(P2010−39767)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】