説明

プレクリーナの取付部構造

【課題】プレクリーナ10に対する雨水の導入と,塵芥の再吸引を防止でき,且つ,取付高を低く抑えることのできるプレクリーナの取付部構造を提供する。
【解決手段】上端を塞いだ略円筒状のボディ11と,該ボディ内の空間に上端開口部を挿入した内筒12を備え,ボディ下端縁11aと内筒11の外壁間に吸気導入口14が形成されたプレクリーナ10を取付部対象とし,作業機1のボンネット20上面に,プレクリーナ10のボディ下端縁11aに対応する形状のプレクリーナ取付口21を形成してこの中にプレクリーナ10のボディ11下端縁11aを挿入して固定すると共に,取付口20とボディ11間の隙間をシール22で封止し,更に,ボンネット20内で,前記内筒12の下端開口部12bを,前記吸気機器の吸気口(図示せず)に設けたエアフィルタ(図示せず)に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,エンジンや圧縮機の本体等の,作動に際して吸気を行う機器(本願において「吸気機器」という。)の吸気口に設けられるエアフィルタの一次側に設けてエアフィルタに導入される空気中の塵芥等を除去する装置であるプレクリーナの取付部構造に関し,前述した吸気機器を備えた車両,圧縮機,発電機等の作業機に対し,前記プレクリーナを取り付けた取付部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機の本体やエンジン等,その作動に際して吸気を伴う前述の吸気機器を備えた作業機では,吸気機器の圧縮室や燃焼室等に塵芥が入り込まないようにするために,前記吸気機器の吸気口にエアフィルタを設けている。
【0003】
しかし,前述した作業機の使用環境が,工事現場,鉱山等の採掘現場,その他,粉塵等の塵芥の多い環境である場合,前述したエアフィルタのみで空気中の塵芥を除去し吸気を浄化しようとすると,エアフィルタがすぐに詰まってしまい,頻繁にフィルタエレメントの交換が必要となるためメンテナンスが煩雑であると共にコストがかかる。
【0004】
そのため,このような塵芥の多い環境で使用した場合においてもフィルタエレメントの交換回数が少なくなるように,エアフィルタの一次側に,更にプレクリーナを設け,このプレクリーナによって塵芥を除去した後の空気をエアフィルタに送るようにすることが行われている。
【0005】
このようなプレクリーナ10としては,一例として図1,2に示すように,下端を開放すると共に上端が塞がれた略円筒状のボディ11と,このボディ11内の空間に上端開口部12aが挿入されて同心状に配置された内筒12と,前記ボディ11の内壁と内筒12の外壁間に円周方向に所定間隔で配置され,内筒12の軸線方向に対して同一方向の傾きを持ち,ボディ11と内筒12とを連結する羽根13を備えた構造のものが知られている。
【0006】
このようなプレクリーナ10にあっては,内筒12の下端開口部12bを,エアフィルタを介して吸気機器の吸気口に連通し,吸気機器の作動によって内筒12の上端開口部12aからボディ11内の空気が吸い出されると,ボディ11の下端縁11aと内筒12の外壁間に形成された吸気導入口14より空気の吸気が行われ,この空気がボディ11内に流入する際,図2(B)に示す傾斜させた羽根13に沿って空気の流れが偏向され,ボディ11内に旋回流が発生する。空気と共にボディ11内へ流入した塵芥は,空気に対して重いことから,この旋回流によって塵芥に遠心力が働いてボディ11の内壁側へ押し出され,所謂遠心分離によって塵芥を除去できるようになっている。
【0007】
図1,2に示す例では,ボディ11の側壁に高さ方向(軸方向)を長さ方向とするスリット15を形成したことにより,旋回流によりボディ11内の内壁側へ押し出された塵芥は,ボディ11の内壁に衝突した後,このスリット15を介してボディ11外に排出される。そして,塵芥の除去された空気は,内筒12の上端開口部12aより吸い出され,エアフィルタを介して吸気機器に吸気される。
【0008】
図1,2に示す例では更にボディ11内で生じた旋回流によって旋回するベーン17を設け,このベーン17によってボディ11の内壁面に付着した塵芥を掻き取らせ,スリット15より押し出している(非特許文献1)。
【0009】
なお,図1,図2を参照して説明したプレクリーナ10では,ボディ11に設けたスリット15より,遠心分離した塵芥をボディ11外に排出できるようにしているが,この構成に代え,例えば,ボディ11内に遠心分離された塵芥を捕集するポケット状の室を設け,この室内に塵芥を捕集できるようにして,捕集した塵芥を排出することなくボディ11内に留め込めるように構成したプレクリーナもある(特許文献1参照)。
【0010】
以上のように構成されたボディ11と内筒12を備えたプレクリーナ10にあっては,ボディ11の下端縁11aと内筒12の外壁間の間隔が吸気導入口14となり,この吸気導入口14を介して空気の吸引を行うことから,この吸気導入口14が作業機1の構成機器を収容するボンネット20の上面に近い位置で開口していると,作業機1のボンネット20上に堆積した塵芥を吸い込んでしまう。
【0011】
そのため,このようなプレクリーナ10の取付に際しては,図5(A)に示すようにプレクリーナ10とエアフィルタ(図示せず)間を連通する導管30’をボンネット20の上面を貫通させて機外に突出させ,この導管30’の上端にプレクリーナ10を取り付けることで,ボンネット20の上面からプレクリーナ10の吸気導入口14を離間して配置することが一般に行われている。
【0012】
なお,このようにボンネット20の上面とプレクリーナ10を離間して配置した構成を採用した場合であっても,作業機1を雨天の屋外で使用する場合には,プレクリーナ10のボディ11外壁を伝って流れ落ちてボディ11下端縁11aから滴下した水滴が吸気導入口14から空気と共に吸い込まれてしまうことがある。
【0013】
このようにして雨水がプレクリーナ10内に導入され,ボディ11の内壁が濡れると,ボディ11内壁に塵芥が付着して塵芥がスリットから排出され難くなり,また,短時間に多量の塵芥がボディ11内壁に付着すれば,ベーン17による掻き出しも困難となり,ベーン17の旋回を止めてしまう等の作動不良が起こり得る。
【0014】
また,図1,2を参照して説明したように,ボディ11にスリット15を設けて塵芥をボディ11外に排出可能な構成とした場合には,スリット15を介してボディ11外に排出した塵芥が,ボンネット20の上面に落下する間に空気と共にボディ11内に再度吸い込まれてしまい,空気中の塵芥量を増加させる結果,除去しきれずにエアフィルタに導入される塵芥量も増加する。
【0015】
なお,前掲の特許文献1には,プレクリーナ10が雨水を吸引しないようにするため,プレクリーナ10の内筒12と前述のエアフィルタに対応するエアクリーナとを連通する吸気通路〔図5(A)における導管30’に対応〕に,ボンネット20内の空間と連通するバイパス孔を設けると共に,このバイパス孔を開閉する開閉機構を設け,雨天時には前記バイパス孔を開いた状態で作業機の運転を行うことで,エンジンの吸気口に,プレクリーナ10を通過させていない空気を一部導入することで,プレクリーナ10の吸気導入口14を介して吸引される空気の流速を低下させて雨水がプレクリーナ10内に入り込み難くすることも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】米ドナルドソン社のプレクリーナ「トップスピン」のパンフレット(http://www.donaldson.com/en/engine/support/datalibrary/000207.pdf#search='precleaner topspin')
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実願昭63−92118号(実開平2−14456号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以上で説明した従来のプレクリーナ10の取付構造において,図5(A)に示したようにプレクリーナ10のボディ11下端縁11aがボンネット20の上面に対して離間するよう,ボンネット20を貫通して突出する導管30’の上端にプレクリーナ10を取り付ける構造では,ボンネット20上に堆積した塵芥の吸入を防止する点では効果があるが,前述したように,ボディ11を伝って流れ落ち滴下した雨水や,スリット15を介して落下した塵芥の吸い込みを防止できない。
【0019】
しかも,図5(A)の取付部構造では,プレクリーナ10を高所に配置するために導管30’を突出させた構成であるため,プレクリーナ10の取り付けによって作業機1の全高が大幅に増し,作業機1を運搬,設置する際に邪魔になると共に,プレクリーナ10の荷重が全て導管30’にかかるため,導管30’が揺れて振動が発生すると,導管30’やこの導管に接続するエアフィルタ等が破損し,更に,このような振動の発生に伴い,プレクリーナ10を固定する固定具(例えばボルト)等が緩み,プレクリーナ10が脱落する等といったトラブルの原因となる。
【0020】
これに対し,前掲の特許文献1として紹介した構成では,バイパス孔を開いた状態で作業機1の運転を行うことで,吸気導入口14を介してプレクリーナ10内に導入される空気の流速を低下させることができることから,流速が低下した分,雨水の吸引やスリット15を介して排出された塵芥の再吸引が生じ難くなる。
【0021】
しかし,特許文献1に記載の構成において,雨水やスリット15から排出された塵芥が存在する空間に吸気導入口14を開口して吸気を行っている以上,雨水の吸入や排出された塵芥の再吸引を完全に防止することはできない。
【0022】
しかも,特許文献1に記載の構成では,吸入空気の流速を低下させているために,ボディ11内で生じる旋回流の流速も低下させることとなり,旋回流中の塵芥や雨滴に働く遠心力も減少するため,プレクリーナ10の除塵性能自体が低下する。その結果,吸入した塵芥や雨滴を十分に除去できないから,エアクリーナ側に導入される塵芥や雨滴の量が増える。
【0023】
更に,特許文献1に記載の構成において,バイパス孔はボンネット20内で開口するものの,プレクリーナ10を通過しない空気を直接吸引して吸気機器に導入する構成を採用するため,これを塵芥の多い環境で使用すれば,多量の塵芥を吸気機器のエアクリーナに送るおそれがある。
【0024】
しかも,上記特許文献1に記載の構成を採用しても,プレクリーナ10をボンネット20より突出させた導管30’の上端に取り付けるという構造は踏襲しなければならず,依然として作業機1の全高が高くなるという問題も解消しない。
【0025】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,プレクリーナ10に対する雨水の吸い込みを確実に防止でき,且つ,ボンネット20上に堆積した塵芥や,プレクリーナ10がボディ11に前述したスリット15を備える構成である場合には,前記スリット15を介して排出された塵芥を再度吸い込むことを確実に防止でき,しかも,プレクリーナ10を取り付けた場合であっても作業機1の全高を可及的に低く抑えることのできるプレクリーナの取付部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0027】
上記目的を達成するために,本発明のプレクリーナの取付部構造は,下端を開放すると共に上端が塞がれた略円筒状のボディ11と,前記ボディ11内の空間に上端開口部12aを挿入した内筒12を備え,前記ボディ11の下端縁11aと前記内筒11の外壁間に吸気導入口14が形成されたプレクリーナ10の取付部構造において,
吸気機器(図示せず)を収容した作業機1のボンネット20上面に,前記プレクリーナ10の前記ボディ下端縁11aの外形形状に対応する形状のプレクリーナ取付口21を形成し,
前記プレクリーナ取付口21内に,前記プレクリーナ10の前記ボディ11下端縁11a及び挿入部11dを,機外側から機内側に向けて挿入して固定すると共に,前記プレクリーナ取付口21と前記ボディ11の挿入部11d間の隙間を封止するシール22を設け,
更に,前記ボンネット20内で,前記内筒12の下端開口部12bを,前記吸気機器の吸気口(図示せず)に設けたエアフィルタ(図示せず)に連通したことを特徴とする(請求項1)。
【0028】
上記構成のプレクリーナの取付部構造において,更に,前記プレクリーナ取付口21の形成位置において,前記ボンネット20内の空間を仕切り,前記プレクリーナの吸気導入口14に対向する壁面23aを有し,ボンネット20内の空気を導入するダクト23を設けることもできる(請求項2)。
【0029】
更に,前述したダクト23を設ける場合,このダクト23を防音構造とするものとしても良い(請求項3)。
【0030】
加えて,取付対象とするプレクリーナ10が,前記ボディ11の側壁のいずれかの位置に,高さ方向を長さ方向とし,ボディ11の内外を連通する塵芥排出用のスリット15を備えるものである場合には,下端を開放すると共に上端が塞がれた略円筒状のカバー18で,前記ボンネット20の外側に露出する前記ボディ11を覆うものとしても良く(請求項4),この場合,前記カバー18を透明とすることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0031】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のプレクリーナの取付部構造によれば,プレクリーナ10内へ雨水の吸い込みを確実に防止することができると共に,ボンネット20上に堆積した塵芥の吸引や,プレクリーナ10がボディ11に塵芥排出用のスリット15を備える場合には,該スリット15を介して排出された塵芥の再吸引についても確実に防止しながら,プレクリーナ10の取付に伴う作業機1の高さの増加を最小限に抑えることができた。
【0032】
また,プレクリーナ10の下端縁11a及び挿入部11dをボンネット20に形成したプレクリーナ取付口21内に挿入して固定する構造としたことにより,プレクリーナ10の重量がボンネット20によって支えられるために,導管30やエアフィルタ等に対してプレクリーナ10の荷重がかかることを防止でき,導管30やエアフィルタの破損,プレクリーナ10の脱落等のトラブル発生を防止できた。
【0033】
更に,プレクリーナ10の吸気導入口14をボンネット20内で開口したことから,プレクリーナ10の吸気音が機外に洩れ難く,プレクリーナ10の取付に伴う騒音の発生も減少させることができた。
【0034】
プレクリーナ取付口21の形成位置に対応するボンネット20内の空間を仕切り,プレクリーナ10の吸気導入口14に対向する壁面23aを有し,ボンネット20内にボンネット20外の空気を導入するダクト23を設けた構成では,吸気導入口14に対向したダクト23の壁面23aによって,ボンネット20内の騒音が直接吸気導入口14に至ることがなく,これにより騒音がプレクリーナ10から機外に漏出することを防止できた。
【0035】
また,このダクト23を構成する仕切板に吸音材を貼着する等してダクト23を防音構造とした場合には,ダクト23内に侵入した騒音が減衰され,ボンネット20内の騒音をプレクリーナ10からより一層機外に漏出させ難くすることができ,作動音の静かな作業機1とすることができた。
【0036】
更に,前記プレクリーナ10が,前記ボディ11の外周に,高さ方向を長さ方向とする塵芥排出用のスリット15を備えている場合,ボンネット20外に露出するボディ11を覆うカバー18を設けることで,このスリット15を介して機外に漏出する騒音や,プレクリーナ10が前述のベーン17を備える場合には,ベーン17の作動音等の漏出を防止できると共に,排出された塵芥を回収することで塵芥の再飛散を防止することができた。
【0037】
特に,前述したカバー18を透明とした場合,カバー18内に溜まった塵芥の量を目視によって確認することができ,回収した塵芥の廃棄時期等を好適に把握することができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】プレクリーナの要部断面斜視図。
【図2】プレクリーナの(A)は断面正面図,(B)は(A)のB−B線断面拡大図。
【図3】プレクリーナの取付部構造の説明図であり,(A)は取付前,(B)は取付後の状態。
【図4】プレクリーナの取付部構造の変形例を示す説明図。
【図5】プレクリーナを取り付けた作業機の正面外観図であり,(A)は従来の取付部構造,(B)は本発明の取付部構造による取付例。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下,添付図面を参照しながら本発明のプレクリーナの取付部構造を説明する。
【0040】
本発明で取付対象とするプレクリーナ10は,前述したように,下端を開放すると共に上端が塞がれた略円筒状のボディ11と,前記ボディ11内の空間に上端開口部12aを該ボディ11の内壁面に対して同心状に挿入した内筒12を備え,前記ボディ11の下端縁11aの内壁と前記内筒12の外壁との間に吸気導入口14を形成し,前記内筒12の下端開口部12bを吸気機器であるエアフィルタ(図示せず)に連結して内筒12の上端開口部12aよりボディ11内の空気を吸引することで,吸気導入口14から前記ボディ11内に空気の導入が行われるものであれば,各種のものを使用することができる。
【0041】
一例として,以下の説明では,図1,2を参照して説明したように,ボディ11の内外を連通しボディ11の高さ方向を長さ方向とする細長いスリット15をボディ11の側壁に設け,このスリット15を介して塵芥をボディ11外に排出できるように構成したプレクリーナ10を例に挙げて取付部の構造を説明するが,本発明の適用対象となるプレクリーナ10は,前述した構造のボディ11と内筒12を備え,ボディ11の下端縁11aの内壁と内筒12の外壁との間に吸気導入口14が形成されるものであれば,特許文献1に記載されているように,ボディ11内に遠心分離された塵芥を捕集できるようにしたものであっても対象とすることができ,また,上記以外の構造により塵芥をボディ11外へ排出し,又は,ボディ11内に捕集する構造を備えた既知のプレクリーナについても対象とすることができる。
【0042】
好ましくは,このプレクリーナ10のボディ11には,その下端縁11aに対し若干上方位置に,外周全周に亘り図1,2に示すようにフランジ11bを設け,又は,図2(A)中に変形例として示すようにボディ11の下端縁11a及び挿入部11dをボディ11の他の部分に対し一回り小径に形成することで段部11cを形成し,ボディ11のうち,フランジ11b,又は段部11cよりも下側の位置を,後述するボンネット20に形成したプレクリーナ取付口21内に挿入する挿入部11dとすることができる。
【0043】
このように構成することで,この挿入部11dをプレクリーナ取付口21にボンネット20外より挿入すると,フランジ11bないしは段部11cを,ボンネット20に形成したプレクリーナ取付口21の開口縁に載置することができる。
【0044】
なお,図示は省略するが,ボディ11は,一例として前述したフランジ11bや段部11cの上方位置でこれを上下に2分割できるようにしても良く,このように構成することで,作業機1のエアフィルタとプレクリーナ10の内筒12の下端開口部12bとを連結した状態であってもボディ11の上半分部分を取り外すことで,ボディ11内部のメンテナンス等を容易に行うことができるようになる。
【0045】
以上のように構成されたプレクリーナの挿入部11dは,図3(A),(B)に示すように,作業機1のボンネット20上面に設けたプレクリーナ取付口21内に挿入される。
【0046】
このプレクリーナ取付口21は,前述した挿入部11dの外形と略同一形状に形成されており,プレクリーナ10の挿入部11dを挿入した際に,プレクリーナ10のフランジ11b又は段部11cが,プレクリーナ取付口21の開口縁に載置できるようにしている。
【0047】
プレクリーナ10の挿入部11dの挿入に先立ち,プレクリーナ取付口21には,プレクリーナ取付口21と挿入部11dとの間に生じる隙間を封止するためのシール22を取り付けておくことが好ましい。
【0048】
本実施形態にあっては,一例として,このシール22として図3(B)中に拡大図として示すように,外向きに開口するU字溝状の断面形状を成すOリングを使用し,このOリングのU字溝内にプレクリーナ取付口21の開口縁が挿入されるように前記Oリングを取り付け,この状態でプレクリーナ10の挿入部11dをOリング内に挿入することで,プレクリーナ取付口21の開口縁とプレクリーナ10の挿入部11dとの間の隙間をシールすることができるようにしているが,プレクリーナ取付口21とプレクリーナ10の挿入部11d間の隙間のシールは,この方法に限定されず,如何なる方法でシールをするものとしても良い。
【0049】
以上のようにして作業機1のボンネット20上面に取り付けられるプレクリーナ10は,ボンネット20内でプレクリーナ10の内筒12の下端開口部12bとエアフィルタとを導管30を介して接続し,図示せざるエンジンや圧縮機等の吸気機器の吸気口に連通されている。
【0050】
プレクリーナ10は,図示の例ではフランジ11bないしは段部11cによってボンネット20に形成したプレクリーナ取付口21の開口縁に載置されており,その重量は,ボンネット20側で支えられていることから,図5(A)を参照して説明したように,ボンネット20を貫通する導管30’によってプレクリーナ10の重量を支える場合に比較して,導管30’等の破損,プレクリーナの脱落等のトラブルが生じ難い。
【0051】
なお,このようにしてプレクリーナ10の取付を行ったボンネット20内の空間を,一例として図4に示すように仕切ることで,ボンネット20内にダクト23を形成することができ,好ましくは,このダクト23を画成する仕切壁に防音材を貼設する等して,防音効果を持たせる。
【0052】
また,ボンネット20外に露出するプレクリーナ10のボディ11部分は,図4に示すようなキャップ状のカバー18で覆うことにより,ボディ11に設けたスリット15を介して騒音が機外に漏れ出ること,及び,回収した塵芥が再飛散することを防止できるようにしても良い。
【0053】
このカバー18は,好ましくは透明な材質によって形成し,目視によって内部を確認できるようにすることで,カバー18内に溜まった塵芥の回収量を確認できるようにしても良い。
【0054】
以上のようにして,プレクリーナ10を作業機1のボンネット20に取り付けた状態で,作業機1に設けたエンジンや圧縮機等の吸気機器を始動すると,吸気機器は吸気口を介して圧縮室や燃焼室に対する空気の吸い込みを開始し,その結果,この吸気口に連通したプレクリーナ10の内筒12上端開口部12aより,ボディ11内の空気が吸引される。
【0055】
これにより,プレクリーナ10のボディ11内には,吸気導入口14を介して外気の導入が行われるが,この吸気導入口14は,ボンネット20内の空間で開口していると共に,プレクリーナ取付口21と挿入部11d間の隙間はシール22されていることから,ボンネット20内の空気が吸入される。
【0056】
作業機1のボンネット20には,外気を導入するための図示しない外気吸入口が設けられていて,ボンネット20内に吸入された外気は吸気機器や冷却機器等を冷却すると共に,その一部がプレクリーナの吸気導入口からプレクリーナのボディ内に吸い込まれる。ボンネット20は塵芥や雨水が侵入し難いことから,吸気導入口14を介してボディ11内に雨水が導入されることは無く,また,ボンネット20上に堆積した塵芥や,ボディ11のスリット15を介して排出された塵芥が,吸気導入口14を介してボディ11内に導入されることも確実に防止することができると共に,プレクリーナ10から漏出する吸気音も低減させることができる。
【0057】
しかも,このようなプレクリーナ10の取付部構造を採用したことにより,プレクリーナ10の設置高さを低くすることができ〔図5(B)参照〕,一例として,図5(A)のようにボンネット20の上面より突出させた導管30’を介してプレクリーナ10を取り付けた例では,高さ1635mmのボンネットにプレクリーナ10を取り付けると,導管30’とプレクリーナ10の高さ435mmが加わり,作業機1の全高は,2070mとなった。
【0058】
しかし,本発明の取付部構造を採用することで,図5(B)に示すように同サイズのボンネット10に同サイズのプレクリーナ10を取り付けた場合であっても,取付後の全高を1910mmに抑えることができ,160mm低くすることができた。
【0059】
なお,図4に示したように,プレクリーナ10の取付位置に対応するボンネット20内の空間を仕切り,プレクリーナ10の吸気導入口14に対向する壁面23aを有し,吸気導入口に連通するダクト23を形成して,このダクト23を介してボンネット20内の空気を導入する構成とした場合には,吸気導入口14を介した吸引がダクト23内で行われるため,ボンネット20内の騒音がダクト23内で減衰されてプレクリーナ10から機外に漏出する騒音を低減することができた。
【0060】
特に,このダクト23の内側に吸音材を貼り付けて防音構造とすることで,ボンネット20内の騒音が機外に漏れることを更に確実に防止できた。
【0061】
また,前述したカバー18を設けた構成では,プレクリーナ10に対する吸気音やベーン17の作動音,ボンネット20内の騒音がスリット15を介して漏れることを防止できる。
【0062】
このように本発明のプレクリーナの取付部構造では,比較的簡単な構成でありながら,雨水の吸入防止やボンネット上に堆積した塵芥の吸入,スリット15を介して排出された塵芥の再吸入を防止しつつ,プレクリーナ10を取り付けた作業機1の全高を低く抑えるという要求を全て満足させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明した本発明のプレクリーナの取付部構造は,吸気機器を備えた作業機に全般対して広く適用可能であり,特に,塵芥の多い環境で使用される作業機,例えば工事現場や鉱山施設で使用される作業機,未舗装道路等を走行する機会の多い作業用車両等の作業機に対して適用するに好適である。
【0064】
一例として自動車,トラクタ,その他の車両,エンジン駆動型の発電機や圧縮機等,作業機に設けられた吸気機器がエンジンである場合には,このエンジンの吸気口に対する空気取り入れ部に本発明の取付部構造を採用してプレクリーナを取り付けることができる。
【0065】
また,圧縮機等のように吸気機器が圧縮機本体である場合には,圧縮機本体の吸気口に対する空気取り入れ部に採用することができ,更に,エンジン駆動型の圧縮機のように,一台の作業機に,吸気機器としてエンジンと圧縮機本体という複数の吸気機器が搭載されている場合には,エンジンの吸気口に対する空気取り入れ部と,圧縮機本体の吸気口に対する空気取り入れ部のそれぞれに本発明のプレクリーナの取付部構造を採用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 作業機
10 プレクリーナ
11 ボディ
11a 下端縁
11b フランジ
11c 段部
11d 挿入部
12 内筒
12a 上端開口部
12b 下端開口部
13 羽根
14 吸気導入口
15 スリット
17 ベーン
18 カバー
18a 塵芥捕集部
20 ボンネット
21 プレクリーナ取付口
22 シール(Oリング)
23 ダクト
23a 壁面
30,30’ 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端を開放すると共に上端が塞がれた略円筒状のボディと,前記ボディ内の空間に上端開口部を挿入した内筒を備え,前記ボディの下端縁と前記内筒の外壁間に吸気導入口が形成されたプレクリーナの取付部構造において,
吸気機器を収容した作業機のボンネット上面に,前記プレクリーナの前記ボディ下端縁の外形形状に対応する形状のプレクリーナ取付口を形成し,
前記プレクリーナ取付口内に,前記プレクリーナの前記ボディ下端縁及び挿入部を,機外側から機内側に向けて挿入して固定すると共に,前記プレクリーナ取付口と前記ボディの挿入部間の隙間を封止するシールを設け,
更に,前記ボンネット内で,前記内筒の下端開口部を,前記吸気機器の吸気口に設けたエアフィルタに連通したことを特徴とするプレクリーナの取付部構造。
【請求項2】
前記プレクリーナ取付口の形成位置において,前記ボンネット内の空間を仕切り,前記プレクリーナの吸気導入口に対向する壁面を有し,ボンネット内の空気を導入するダクトを設けたことを特徴とする請求項1記載のプレクリーナの取付部構造。
【請求項3】
前記ダクトを防音構造としたことを特徴とする請求項2記載のプレクリーナの取付部構造。
【請求項4】
前記プレクリーナの前記ボディの側壁のいずれかの位置に,高さ方向を長さ方向とし,ボディの内外を連通する塵芥排出用のスリットを設け,
下端を開放すると共に上端が塞がれた略円筒状のカバーで,前記ボンネットの外側に露出する前記ボディを覆ったことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のプレクリーナの取付部構造。
【請求項5】
前記カバーを透明としたことを特徴とする請求項4記載のプレクリーナの取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−72397(P2013−72397A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213198(P2011−213198)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000241795)北越工業株式会社 (86)