説明

プレコート用樹脂組成物およびこれを塗布した塗装金属板

【課題】プレコート用樹脂組成物および塗装金属板の提供。
【解決手段】アルミニウム化合物を重合触媒とし、共重合ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分がテレフタル酸10〜70モル%、およびその他の芳香族ジカルボン酸との合計が80モル%以上であり、グリコール成分が2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオール(g1)25モル%以上、炭素数5〜10のアルキレングリコールおよび/または脂環族グリコール(g2)75モル%以下で、(g1)と(g2)の合計50がモル%以上であり、かつ、そのガラス転移点温度が10〜80℃、還元粘度が0.2dl/g以上、比重が1.21〜1.30である共重合ポリエステル樹脂(A)と、該共重合ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)とを(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)の割合で配合してなるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレコート用樹脂組成物およびこれを塗布した塗装金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装用樹脂としては、アルキッド樹脂、ビニル樹脂、シリコン樹脂など数多くあり、溶剤系、水分散系または粉体系の塗料として使用されていた。しかしながら、プレコート用樹脂組成物に用いる樹脂の場合、第一に要求される、塗装金属板としたときのプレス加工などの加工性に重点を置くといずれの樹脂も他の特性に欠点が生ずることが避けられず、使用上の制限を受け問題となっていた。塗装金属板としたときに高度の加工性と硬度が必要な上に、耐アルカリ性、耐ガスケット性、耐汚染性などが要求される冷蔵庫側天板塗装などには、従来技術である溶剤系のプレコート用樹脂では性能が不十分であるため、粉体塗料が使用されていた。しかし、これは耐汚染性は優れるものの加工性が不十分である上、溶剤系の塗料に比べラインスピードが遅くコスト高であり、外観上も柚肌となるなど問題点も多い。さらに、一般に加工性の優れた樹脂は耐候性も不十分であり、このため、屋外家電塗装などではほとんどポストコート法による塗装が使用されている。
【0003】
一方、プレコート用樹脂組成物に用いる共重合ポリエステル樹脂の製造に用いる重合触媒としては、チタン系重合触媒(特許文献1)、スズ系重合触媒(特許文献2)あるいはアンチモン系重合触媒(特許文献3)などの提案がなされている。
【特許文献1】特開平7−113057号公報
【特許文献2】特開2004−43722号公報
【特許文献3】特開平7−26200号公報
【0004】
しかしながら、このような金属板のプレコート用樹脂組成物に用いる共重合ポリエステル樹脂の製造に関しては、重合触媒種によって、次のような問題点が残されている。
(1)スズ化合物やアンチモン化合物などの重合触媒は重金属を含み、これらを含まない
共重合ポリエステル樹脂が望まれていること。
(2)アンチモン化合物は、得られた共重合ポリエステル樹脂を溶剤に溶かしワニスにするとき、還元アンチモンやアンチモンを含有する凝集物が沈降し、塗料として不具合があること。
(3)チタン化合物を重合触媒として使用した場合、共重合ポリエステル樹脂の着色があり、アジピン酸あるいはセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合成分に用いた場合は、耐熱性が劣るため樹脂の着色が著しく、白色塗料では、本来の白色が得られないこと。
(4)ゲルマニウム化合物は上記の問題点を解消する重合触媒として有効に使用可能であるが、価格が著しく高いこと。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、重合活性に優れ、樹脂の着色が抑制され、また、アルミニウム由来の異物が低減されたプレコート用樹脂組成物およびこれを塗布した、加工性、硬度、耐衝撃性、耐ブロッキング性を有する塗装金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のプレコート用樹脂組成物は、アルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下に製造され、カルボン酸成分(a)がテレフタル酸(a1)10〜70モル%、該テレフタル酸(a1)とその他の芳香族ジカルボン酸(a2)との合計80%以上であり、グリコール成分(g)が2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオール(g1)25モル%以上、炭素数5〜10のアルキレングリコールおよび/または脂環族グリコール(g2)75モル%以下で、グリコール成分(g)のうち前記(g1)グリコールと(g2)グリコールとの合計50モル%以上であり、かつ、そのガラス転移点温度が10〜80℃、還元粘度が0.2dl/g以上、比重が1.21〜1.30である共重合ポリエステル樹脂(A)と、該共重合ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)とを(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)の割合で配合してなるものであることを特徴とする。
【0007】
この場合において、アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、リン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
【0008】
また、アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種とからなることが好ましい。
【0009】
また、アルミニウム化合物が、カルボン酸含有アルミニウム化合物であることが好ましい。
【0010】
また、リン化合物が、芳香族ホスホン酸またはその誘導体であることが好ましい。
【0011】
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が、Li,NaまたはMgないしその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
また、共重合ポリエステル樹脂(A)の、共重合ポリエステル樹脂に不溶なアルミニウム系異物ろ過時間が5時間以下であることが好ましい。
【0013】
ここで、共重合ポリエステル樹脂に不溶なアルミニウム系異物ろ過時間とは、混合溶液に溶解した共重合ポリエステル樹脂を、後記の方法で、孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用い、0.15MPaの加圧下ろ別したときの、ろ過が終了するまでのろ過時間である。
【0014】
さらにまた、上記プレコート用樹脂組成物を金属板に塗布して塗装金属板とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプレコート用樹脂組成物によれば、重合活性に優れ、樹脂の着色が抑制され、また、アルミニウム由来の異物が低減されたプレコート用樹脂組成物およびこれを塗布した加工性と硬度、耐衝撃性、耐ブロッキング性に優れた塗装金属板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のプレコート用塗料組成物およびこれを塗布した塗装金属板の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
本発明のプレコート用塗料組成物は、アルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下に製造され、カルボン酸成分(a)がテレフタル酸(a1)10〜70モル%、該テレフタル酸(a1)とその他の芳香族ジカルボン酸(a2)との合計80モル%以上であり、グリコール成分(g)が2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオール(g1)25モル%以上、炭素数5〜10のアルキレングリコールおよび/または脂環族グリコール(g2)75モル%以下で、グリコール成分(g)のうち前記(g1)グリコールと(g2)グリコールとの合計50モル%以上であり、かつ、ガラス転移点温度が10〜80℃、還元粘度が0.2dl/g以上、比重が1.21〜1.30である共重合ポリエステル樹脂(A)と、該共重合ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)とを(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)の割合で配合してなるものである。
【0018】
本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂の重合触媒として用いるアルミニウム化合物としては、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物を広く使用できる。
【0019】
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0020】
本発明におけるアルミニウム化合物の使用量としては、得られる共重合ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜1.0モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.5モル%である。このようにアルミニウム成分の添加量は、使用する多価カルボン酸およびグリコールの種類やその組合せ、さらには重合方法によって大きく触媒活性が変動するため広い範囲が求められる。このことは他の重合触媒でも同様の傾向を示す。特に減圧下で重合を実施しない場合は重合触媒量を大幅に増加する必要がある。本発明で用いる重合触媒は十分な触媒活性を示すため、その結果、得られるポリエステルの熱安定性や熱酸化安定性、耐加水分解性が優れ、アルミニウムに起因する異物の発生や着色が抑制される。
【0021】
以下に、アルミニウム化合物のとして、塩基性酢酸アルミニウムを用いた同溶液の調製方法の具体例を示す。
【0022】
塩基性酢酸アルミニウムの水溶液の調製例としては、下記の通りである。すなわち、塩基性酢酸アルミニウムに水を加え室温で十分拡散させた後、室温〜100℃で溶解させることで水溶液を得る。この場合の温度は低い方が好ましく、加熱時間は短い方が好ましい。水溶液の濃度は、10〜30g/lが好ましく、特に15〜20g/lが好ましい。
【0023】
さらに、触媒添加時のヒートショックを抑制するために、塩基性酢酸アルミニウム水溶液を塩基性酢酸アルミニウムエチレングリコール溶液にすることが好ましい態様である。この場合、上記の水溶液に対してエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で0.5〜5.0倍量が好ましい。より好ましくは0.8〜2.0倍量である。該溶液を数時間常温で攪拌することで均一な水/エチレングリコール混合溶液を得る。その後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は70℃以上が好ましく、130℃以下が好ましい。より好ましくは80〜120℃で加熱攪拌、さらに好ましくは、減圧下および/または窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で加熱し、水を留去し触媒溶液を調製することである。
上記エチレングリコールは一例であって、他のアルキレングリコールも同様にして使用できる。
【0024】
上記の塩基性酢酸アルミニウムは水やグリコールなどの溶媒に可溶化したもの、特に水および/またはエチレングリコールに可溶化したものを用いることが触媒活性や得られる共重合ポリエステルの異物低減の観点からも好ましい。
【0025】
本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)の重合触媒として用いるアルミニウム化合物と併せて用いるのが好ましいリン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸並びにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸並びにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
本発明で用いるのにより好ましいリン化合物としては、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン化合物である。これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果が見られると共に、ポリエステルの熱安定性等の物性が改善する効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0027】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(化1)〜(化6)で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
本発明で用いるホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。本発明のホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。本発明のホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0035】
本発明で用いるホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、本発明で用いるリン化合物としては、下記式(化7)〜(化12)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0043】
また、本発明で用いるリン化合物としては、下記一般式(化13)〜(化15)で表される化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
(式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0048】
本発明で用いるリン化合物としては、上記式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6が芳香環構造を有する基である化合物がとくに好ましい。
【0049】
本発明で用いるリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルが特に好ましい。
【0050】
上記したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物がとくに好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると本発明の課題であるポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0051】
また、上記したリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
【0052】
本発明のリンの金属塩化合物としては、下記一般式(化16)で表される化合物から選択される少なくとも1種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0053】
【化16】

【0054】
(式(化16)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0055】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0056】
上記一般式(化16)で表される化合物の中でも、下記一般式(化17)で表される化合物から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0057】
【化17】

【0058】
(式(化17)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0059】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0060】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0061】
上記式(化17)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
【0062】
本発明のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]が特に好ましい。
【0063】
上記したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物がとくに好ましい。これらのリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果が特に高まることに加えて、ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を本発明のアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が大きく見られる。
【0064】
P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いるとアルミニウム化合物との錯体形成が容易になり、ポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0065】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0066】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、下記一般式(化18)で表される化合物から選択される少なくとも1種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0067】
【化18】

【0068】
(式(化18)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0069】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0070】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0071】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルが特に好ましい。
【0072】
本発明の好ましいリン化合物としては、化学式(化19)であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0073】
【化19】

【0074】
(式(化19)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0075】
また、さらに好ましくは、化学式(化19)中のR1,R2,R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0076】
これらのリン化合物の具体例を以下に示す。
【0077】
【化20】

【0078】
【化21】

【0079】
【化22】

【0080】
【化23】

【0081】
【化24】

【0082】
【化25】

【0083】
また、本発明で用いるリン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
【0084】
本発明で用いるリン化合物は、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物であることが好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果が高まることに加えて、ポリエステルの重合時にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることで触媒活性を高める効果がより大きく、従ってポリエステルの生産性に優れる。
【0085】
フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、1種または2種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0086】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(化26)〜(化28)で表される化合物が好ましい。
【0087】
【化26】

【0088】
【化27】

【0089】
【化28】

【0090】
(式(化26)〜(化28)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0091】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(化29)〜(化32)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(化31)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルが特に好ましい。
【0092】
【化29】

【0093】
【化30】

【0094】
【化31】

【0095】
【化32】

【0096】
上記の式(化31)にて示される化合物としては、SANKO-220(三光株式会社製)があり、使用可能である。
【0097】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化33)で表される特定のリンの金属塩化合物から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0098】
【化33】

【0099】
((式(化33)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0100】
これらの中でも、下記一般式(化34)で表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0101】
【化34】

【0102】
(式(化34)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4を表す。)
【0103】
上記式(化33)または(化34)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
【0104】
本発明の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]が特に好ましい。
【0105】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化35)で表されるP-OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0106】
【化35】

【0107】
((式(化35)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0108】
これらの中でも、下記一般式(化36)で表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0109】
【化36】

【0110】
(式(化36)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0111】
上記のR3としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0112】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルが特に好ましい。
【0113】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化37)で表される特定のリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン化合物が好ましい。
【0114】
【化37】

【0115】
(上記式(化37)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0116】
上記一般式(化37)の中でも、下記一般式(化38)で表される化合物から選択される少なくとも1種を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0117】
【化38】

【0118】
(上記式(化38)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0119】
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0120】
本発明の特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルが特に好ましい。
【0121】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、本発明で特に望ましい化合物は、化学式(化39)、(化40)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン化合物である。
【0122】
【化39】

【0123】
【化40】

【0124】
上記の化学式(化39)にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が市販されており、また化学式(化40)にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が市販されており、使用可能である。
【0125】
本発明で使用することが好ましいその他のリン化合物としては、下記する(化41)、(化42)で表される連結基(X)を有するホスホン酸系化合物あるいは(化43)で表される連結基(X)を有さないホスホン酸系化合物などが挙げられる。
【0126】
1−X−(P=O)(OR2)(OR3) ・・・・・(化41)
【0127】
[式(化41)中、R1は炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。Xは連結基であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、あるいは置換基を含有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、−O−、−OCH2−、−SO2−、−CO−、−COCH2−、−CH2OCO−、−NHCO−、−NH−、−NHCONH−、−NHSO2−、−NHC36OCH2CH2O−からからなる群から選ばれる。また、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。]
【0128】
式(化41)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基が、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよく、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)または水酸基またはハロゲン基または炭素数1〜10のアルコキシル基またはアミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)あるいはニトロ基あるいはカルボキシル基あるいは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基あるいはホルミル基あるいはアシル基あるいはスルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基、からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上である。
【0129】
式(化41)で表されるリン化合物には次のようなものが挙げられる。具体的には、ベンジルホスホン酸、ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、1−ナフチルメチルホスホン酸、1−ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−ナフチルメチルホスホン酸、2−ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、4−フェニル,ベンジルホスホン酸、4−フェニル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−フェニル,ベンジルホスホン酸、2−フェニル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4-クロル,ベンジルホスホン酸、4-クロル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4-クロル,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスホン酸、4−メチル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−ニトロ−ベンジルホスホン酸、4−ニトロ−ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−ニトロ−ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスホン酸、4−アミノ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスホン酸、2−メチル, ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスホン酸、10−アンスラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸モノメチルエステル、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸ジメチルエステル、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸モノエチルエステル、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸ジエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸モノメチルエステル、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸ジメチルエステル、その他、複素環を含有するリン化合物としては、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸などが挙げられる。上記の連結基を有するリン化合物は、重合活性の点で好ましい態様である。
【0130】
本発明で使用することが好ましい連結基(X)を有するその他の化合物としては式(化42)で表されるリン化合物が挙げられる。
(R0m−R1−(CH2)n−(P=O)(OR2)(OR3) ・・・・・(化42)
[式(化42)中、R0は、水酸基、C1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR4(R4は、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基を表す(モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す)。R1はベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を表す。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C4の炭化水素基、水酸基またはアルコシキル基を有するC1〜C4の炭化水素基を表す。mは1〜5の整数を表し、R0が複数個の場合、同一置換基あるいは異なる置換基の組合せであってもかまわない。nは0あるいは1〜5の整数を表す。]
【0131】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がベンゼンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸などのベンゼン環に水酸基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0132】
また、2−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−n-ブチルベンジルホスホン酸モノメチルエステル、2−n-ブチルベンジルホスホン酸、3−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−n-ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−n-ブチルベンジルホスホン酸、4−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−n-ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−n-ブチルベンジルホスホン酸、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸などのベンゼン環にアルキルを導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0133】
さらに、2−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスホン酸、3−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスホン酸、4−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスホン酸、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸などのベンゼン環にカルボキル基あるいはカルボン酸エステル基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0134】
さらに、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノメチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸などのベンゼン環にアルキレングリコール基あるいはモノアルコキシ化アルキレングリコール基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられる。
【0135】
(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がベンゼンであるリン化合物としては、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0136】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がナフタレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルモノエチルホスホン酸、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸などのナフタレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノアルコキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0137】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がナフタレンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0138】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がビフェニルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸、
4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸などのビフェニル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0139】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がビフェニルであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0140】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルエーテルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸などのジフェニルエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0141】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルエーテルであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0142】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニチオエーテルであるリン化合物としてはには次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸などのジフェニルチオエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0143】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルチオエーテルであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0144】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルスルホンであるリン化合物としてはには次のようなものが挙げられる。4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルスルホン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0145】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルスルホンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0146】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルメタンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0147】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルメタンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0148】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルジメチルメタンであるリン化合物としてはには次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0149】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルジメチルメタンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0150】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルケトンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルケトン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0151】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルケトンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0152】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がアンスラセンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルイルメチルホスホン酸、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(10−カルボキシ)9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸などのアンスラセン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0153】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がアンスラセンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0154】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がフェナントレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸などのフェナントレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0155】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がフェナントレンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0156】
本発明で用いる式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がピレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−n-ブチル)ピレニリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−n-ブチル)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−n-ブチル)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスホン酸などのピレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0157】
式(化42)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がピレンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0158】
上記一連の芳香環に導入されるヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基などの置換基は、ポリエステルの重合時のアルミニウム原子との錯体形成に深く関わるものと推定される。また、ポリエステル形成時の官能基であるカルボキシル基あるいは水酸基と類似のものも含まれており、ポリエステルマトリックス中に溶解または取り込まれやすいため、重合活性、異物低減などに特に有効であると考えられる。
【0159】
芳香環構造(R1)に結合したR0が水素原子である未置換基に比べ、本発明のC1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR4(R4は、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基(モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す)で置換されたリン化合物は、触媒活性を改善するだけでなく、異物低減効果の点で好ましい。
【0160】
芳香環構造に結合した置換基は、C1〜C10のアルキル基、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールなどが挙げられる。異物低減効果の点でより好ましくは、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールである。その理由は不明であるが、ポリエステルおよび触媒の媒体であるアルキレングリコールとの相溶性が改善されることによると推測している。
【0161】
本発明で使用することが好ましい連結基(X)を持たないリン化合物(化43)は次のようなものである。
【0162】
1−(P=O)(OR2)(OR3) ・・・・・(化43)
【0163】
(R1は炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。)
【0164】
式(化43)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基が、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよく、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)または水酸基またはハロゲン基または炭素数1〜10のアルコキシル基またはアミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)あるいはニトロ基あるいはカルボキシル基あるいは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基あるいはホルミル基あるいはアシル基あるいはスルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上である。また、前記(化43)の芳香環構造がベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンからなる群から選ばれる。および前記複素環構造がフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、ナフタランおよびフタリドからなる群から選ばれる。また、上記式(化43)中のR2およびR3の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
【0165】
本発明で用いる式(化43)で表されるリン化合物としては、下記のリン化合物などが挙げられる。すなわち、(3−ニトロ−5−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ−5−メチル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ−5−メチル)-フェニルホスホン酸、(3−ニトロ−5−メトキシ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ−5−メトキシ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ−5−メトキシ)-フェニルホスホン酸、(4−クロル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロル,)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−クロル)- フェニルホスホン酸、(5−クロル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(5−クロル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(5−クロル)-フェニルホスホン酸、(3−ニトロ−5−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ−5−メチル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ−5−メチル)-フェニルホスホン酸、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(5−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(5−ニトロ)- フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(5−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(4−ニトロ−6−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ−6−メチル)- フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ−6−メチル)-フェニルホスホン酸、その他、式(化42)で表されるリン化合物において、上記のベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を有するそれぞれの構造式から連結基であるメチレン鎖すなわち、−CH2−を取り除いたリン化合物群、さらに複素環含有リン化合物として、5−ベンゾフラニルホスホン酸ジエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスホン酸モノエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスホン酸、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸ジエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸モノエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸などが挙げられる。上記の連結基を有しないリン化合物は、前述の連結基を有するリン化合物に比べ重合活性は若干劣る場合もあるが、本発明の触媒調製法を使用した場合、共重合ポリエステル重合触媒として使用することは可能である。
【0166】
リン化合物は、ポリエステルの熱安定剤としては知られていたが、これらの化合物を従来の金属含有ポリエステル重合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合を大きく促進することはこれまで知られていなかった。実際に、ポリエステル重合の代表的な触媒であるアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物あるいはゲルマニウム化合物を重合触媒としてポリエステルを溶融重合する際に、本発明で用いるリン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重合が促進されることは認められない。
【0167】
本発明で用いるリン化合物の使用量としては、得られる共重合ポリエステルのポリカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜2.0モル%が好ましく、0.005〜1.0モル%であることがさらに好ましい。リン化合物の添加量が0.001モル%未満の場合には添加効果が発揮されない場合があり、2.0モル%を超えて添加すると逆に共重合ポリエステル重合触媒としての触媒活性が低下する場合があり、その低下の傾向は、アルミニウムの使用量等により変化する。
【0168】
また一方で、本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることが好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、ジエチレングリコールの生成を抑制する効果に加えて触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
【0169】
アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物を添加する場合、その使用量M(モル%)は、ポリエステルを構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10-6以上1.0モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10-6〜0.5モル%であり、さらに好ましくは1×10-5〜0.3モル%であり、特に好ましくは、1×10-5〜0.1モル%である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物の使用量Mが1.0モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、並びに耐加水分解性の低下が製品加工上問題となる場合が発生する。Mが1×10-6未満では、添加してもその効果が明確ではない。
【0170】
本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、このうちLi,Na,Mgないしその化合物から選択される少なくとも1種の使用がより好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0171】
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等グリコールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合がある。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなると共に、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明のアルカリ金属またはそれらの化合物あるいはアルカリ土類金属またはそれらの化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸からなる群から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
【0172】
本発明で用いる重合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物などの他の重合触媒を、これらの成分の添加が前述のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効であり、好ましい。
【0173】
本発明で用いるリン化合物を併用することにより、ポリエステル重合触媒中のアルミニウムとしての添加量が少量でも十分な触媒効果を発揮する触媒が得られる。
【0174】
以下に、アルミニウム化合物のとして、塩基性酢酸アルミニウムを用いた場合の、同溶液の調製方法の具体例を示す。
【0175】
(1)アルミニウム化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液の調製例
塩基性酢酸アルミ二ウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート;アルドリッチ社製)を20g/lの濃度で蒸留水に分散させ、攪拌下95℃で2時間加熱処理をして溶解させた。
該水溶液に対して等量(容量比)の2−メチル−1,3−プロパンジオールを共にフラスコへ仕込み、減圧(133Pa)下、70〜90℃で攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液を調製した。
【0176】
(2)リン化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液の調製例
リン化合物としてIrganox1222(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を2−メチル−1,3−プロパンジオールと共にフラスコへ仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で12時間加熱し、30g/lのリン化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液を調製した。
【0177】
(3)アルミニウム化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液/リン化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液の混合物の調製例
上記アルミニウム化合物の調製例1および上記リン化合物の調製例1で得られたそれぞれの2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるように室温で混合し、5時間攪拌して触媒溶液を調製した。
【0178】
(4)アルカリ金属化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液の調製例
アルカリ金属化合物として酢酸リチウム(ナカライ社製、試薬特級)を2−メチル−1,3−プロパンジオールと共にフラスコへ仕込み、窒素置換下攪拌しながら室温で30g/lのアルカリ金属化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液を調製した。
【0179】
本発明で用いる重合触媒の別の態様として、上記アルミニウム化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液/リン化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液にアルカリ金属化合物の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液を併用することも可能であることはいうまでもない。また、2−メチル−1,3−プロパンジオールの代わりに1,3−プロパンジオールを用いてもよい。
【0180】
本発明で用いるアルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下に製造され、共重合ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分(a)がテレフタル酸(a1)10〜70モル%、該テレフタル酸(a1)とその他の芳香族ジカルボン酸(a2)との合計80モル%以上であり、グリコール成分(g)が2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオール(g1)25モル%以上、炭素数5〜10のアルキレングリコールおよび/または脂環族グリコール(g2)75モル%以下で、グリコール成分(g)のうち前記(g1)グリコールと(g2)グリコールとの合計50モル%以上であり、かつ、ガラス転移点温度が10〜80℃、還元粘度が0.2dl/g以上、比重が1.21〜1.30である共重合ポリエステル樹脂(A)と、該共重合ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)とを(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)の割合で配合してなるものであることを特徴とするプレコート用樹脂組成物である。
【0181】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するカルボン酸成分はテレフタル酸10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%で、かつテレフタル酸とその他の芳香族ジカルボン酸の合計が80〜100モル%、好ましくは90〜100モル%であり、その他のジカルボン酸が0〜20モル%である。カルボン酸成分中テレフタル酸が70モル%を越えると良好な溶剤溶解性が得られず、10モル%未満では良好な加工性と硬度のバランスが得られない。また、芳香族ジカルボン酸の合計が80モル%未満では良好な硬度、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐プレッシャーマーク性、耐アルカリ性、耐候性が得られないのである。
【0182】
本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)中に共重合するテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸としてはイソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。このうち、テレフタル酸とイソフタル酸を併用して使用することが絞り加工性、加工性、耐衝撃性と硬度のバランス上特に好ましい。
【0183】
本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)のカルボン酸成分(a)はテレフタル酸(a1)10〜70モル%、該テレフタル酸(a1)とその他の芳香族ジカルボン酸(a2)との合計80モル%以上であって、上記以外のその他のジカルボン酸が0〜20モル%共重合することができる。上記以外の、その他のカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられるが、脂環族ジカルボン酸が好ましい。また、発明の内容を損なわない範囲で、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価のカルボン酸を併用しても良い。
【0184】
本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)に共重合するグリコ−ル成分(g)は2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオール(g1)が25〜100モル%、好ましくは30〜90モル%、さらに好ましくは50〜90モル%、炭素数5〜10のアルキレングリコールおよび/または脂環族グリコール(g2)が0〜75モル%、好ましくは10〜50モル%であり、前記グリコールの合計が50モル%以上である。2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオールが25モル%を未満では良好な絞り加工性が得られず、また、クリヤーまたは濃色時において硬度、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐プレッシャーマーク性などが不充分となる。また、主鎖の炭素数3以下のハード成分として2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール以外のグリコールを使用すると良好な結果が得られない。例えば、エチレングリコールを用いると良好な耐アルカリ性、耐候性が得られず、ワニス安定性が不良であり、また、加工性の経時劣化が発生する。ネオペンチルグリコールを用いると絞り加工性、加工性、硬度、耐汚染性共に不充分となる。また、1,3−プロパンジオールを使用する場合は炭素数5〜10のアルキレングリコールとして、例えば3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどの主鎖の炭素数が5以上で側鎖にアルキル基を有するものを併用することがワニス安定性、加工性の経時劣化の面から特に好ましい。 本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)においては炭素数5〜10のアルキレングリコールおよび/または脂環族グリコールを共重合することが好ましい。これらを共重合することにより可撓性を付与し、加工性、耐衝撃性を改善できる。特に、ガラス転移点温度が高いポリエステルが必要な場合は脂環族グリコールを使用することが加工性、耐衝撃性の面から好ましい。
【0185】
本発明で用いる炭素数5〜10のアルキレングリコールは、具体的には、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。塗膜の物性面から特に好ましいのは1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオ−ルである。
【0186】
本発明で用いる脂環族グリコールは、具体的には1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。塗膜の物性面から特に好ましいのは1,4−シクロヘキサンジメタノールである。また、発明の内容を損なわない範囲で、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価ポリオールを併用しても良い。また、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸などの金属塩または2−スルホ−1,4−ブタンジオ−ル、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオ−ル等の金属塩などのスルホン酸金属塩基を含有するジカルボン酸またはグリコ−ルを全酸または全グリコ−ル成分の5モル%以下の範囲で使用してもよい。
【0187】
本発明に使用する共重合ポリエステル樹脂(A)は硬化性、塗膜物性面から好ましくは酸価が20〜350当量/106g、さらに好ましくは50〜250当量/106gであることが望ましい。酸価を付与することにより硬化性が向上し、硬度、耐擦り傷性、汚染性などがさらに向上する。酸価が350当量/106gを超えると加工性が低下するので好ましくない。ポリエステル樹脂に酸価を付与する方法はポリエステル樹脂を重合した後に常圧下がで無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などを後付加して酸価を付与することが好ましい。本発明に使用する共重合ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移点温度が10〜80℃、好ましくは15〜60℃である。ガラス転移点温度が10℃未満では良好な硬度、耐擦り傷性、耐汚染性、絞り加工性が得られず、80℃を超えると加工性、耐衝撃性が低下する。
【0188】
本発明に使用する共重合ポリエステル樹脂(A)は、還元粘度が0.2dl/g以上、好ましくは0.3dl/g、さらに好ましくは0.4dl/g以上である。還元粘度が0.2dl/g未満では良好な加工性、絞り加工性、硬度、耐衝撃性が得られない。本発明に使用するポリエステル樹脂(A)は、その比重は1.21〜1.30、好ましくは1.22〜1.28である。比重が1.21未満では良好な硬度と絞り加工性、加工性のバランスが得られず、また、耐汚染性も不良となる。比重が1.30を越えると良好な溶剤溶解性が得られない。本発明に使用する共重合ポリエステル樹脂(A)の好ましい数平均分子量は3000以上、さらに好ましくは8000以上である。3000未満では加工性、硬度、耐衝撃性が低下する。また、好ましい水酸基価は30〜500当量/106g、さらに好ましくは30〜250当量/106gである。水酸基価が500当量/106gより高くなる程、加工性、耐衝撃性が低下する。水酸基が30当量/106g未満では硬化剤との反応性が不良となり、硬度、耐汚染性が低下する。
【0189】
本発明のプレコート用樹脂組成物は共重合ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)を配合して使用する。その場合、共重合ポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)との割合が(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)である。好ましくは(A)/(B)=90/10〜70/30である。(A)が95/5を超えると、塗膜硬度、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐プレッシャーマーク性が低下する。また、(A)が60/40未満であると加工性、耐衝撃性が低下し好ましくない。
【0190】
本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)としては、アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物などが挙げられる。アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂とは、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどの炭素原子数1〜4のアルコールによってアルキルエーテル化されたホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドなどと尿素、N,N−エチレン尿素、ジシアンジアミド、アミノトリアジン等との縮合生成物であり、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが、加工性と耐汚染性から、メトキシ化メチロールメラミンまたはメトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミンとブトキシ化メチロールメラミンを併用して使用することが特に好ましい。
【0191】
エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0192】
さらにイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0193】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0194】
これらの架橋剤には、その種類に応じて選択された公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0195】
なお、本発明の塗料組成物はそれ自体を金属板に塗布、焼付けしただけでも充分な性能を示すが、さらに耐蝕性などを向上させることが要求される場合には、プライマーコート剤としてエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等を使用してもよい。
【0196】
本発明の塗料組成物の焼付け温度は鋼板の大きさ、厚さ、また焼き付け炉の能力、塗料の硬化性などにより任意に選択される。塗料組成物の製造にはロール練り機、ボールミル、ブレンダーなどの混合機が用いられる。塗装に当たってはローラー塗り、ロールコーター、スプレー塗装、静電塗装などが適時選択される。
【0197】
本発明の塗料組成物は目的、用途に応じて酸化チタン、カーボンブラック、有機系着色顔料、無機系着色顔料などの顔料、染料、アルミフレーク、シリカ、タルク、硫酸バリウムなどの体質顔料、ガラスファイバー、コロイダルシリカ、ワックスなどの添加剤を添加することができる。
【実施例】
【0198】
以下本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。また、本明細書中の各測定項目は以下の方法に従った。
【0199】
1.還元粘度(dl/g)
共重合ポリエステル樹脂0.10gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比=6/4)の混合溶媒25ccに溶かし、ウベローデ型粘度計を用いて30℃で測定した。
【0200】
2.ガラス転移点温度
示差走査熱量計(DSC)(DSC220型、セイコー電子工業社製)を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した。サンプルは、試料5mgをアルミニウム製押さえ蓋型容器に入れ、クリンプして用いた。
【0201】
3.比重
約20%塩化カルシウム水溶液を入れた500mlメスシリンダーを30±0.05℃に調製し、この中に油気および気泡のない試料(共重合ポリエステル樹脂)を入れ、試料がメスシリンダーの中間に留まるように塩化カルシウム水溶液の比重を調節する。この時の塩化カルシウム水溶液の比重を比重計(基準比重浮ひょう、山田特殊計器製作所社製)により測定し、これを試料の比重とした。なお、比重計は計量研究所により鑑定を受けたものを使用した。
【0202】
4.酸価
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。次いで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレインを用いた。
【0203】
5.共重合ポリエステル樹脂の(1)透明性、(2)着色の程度
上記(1)および(2)は共重合ポリエステル樹脂をほぼ同一厚みの板状のまま目視判定した。
(1)樹脂の透明性
○:ほとんど透明
△:やや濁りあり
×:著しく濁りあり
(2)樹脂の着色の程度
○:ほとんど着色なし
△:やや着色あり
×:著しく着色あり
【0204】
6.共重合ポリエステル樹脂に不溶なアルミニウム系異物ろ過時間の評価法
溶融重合上がりの共重合ポリエステル樹脂30gおよびパラクロロフェノール/テトラクロロエタン(3/1:重量比)混合溶液300mlを攪拌機付き丸底フラスコに投入し、該樹脂を混合溶液中100〜105℃、2時間で攪拌・溶解した。得られた溶液を室温になるまで放冷し、直径47mm/孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルター(Advantec社製PTFEメンブレンフィルター、品名:T100A047A)を用い、全量を0.15MPaの加圧下、有効ろ過直径37.5mmで異物をろ別した。
異物評価は、以下のようにろ過時間で行った。
〇:ろ過時間5時間以下
△:ろ過時間5時間超〜1日
×:ろ過時間1日超
上記ろ過時間が5時間を超えると、ポリエステルに不溶性の微細な異物含有量が多くなりはじめ、1日を超えると、重合工程や成型工程でのポリエステルのろ過時のフィルター詰まりが多くなり好ましくない。
【0205】
7.光沢
鋼板の塗面の60度反射率を測定した。
【0206】
8.加工性
塗装鋼板を180度折り曲げ、屈曲部に発生する割れを10倍のルーペで観察し判定した。3Tとは折り曲げ部に同じ板厚のものを3枚挟んだ場合を示し、0Tは板を挟まなくて180度折り曲げた場合を示す。
【0207】
9.硬度
鋼板の塗面をJIS S−6006に規定された高級鉛筆を用い、JISK−5400に従って測定し、キズの有無で判断した。
【0208】
10.絞り加工性
塗装鋼板表面にワックスを塗布し、プレス機を用いて一辺が60mmで深さが45mmの角缶をプレス成型した。成型した缶の側面の光沢を底面の光沢と目視で比較判定した。
(5:ほとんど光沢変化なし、4:わずかに艶ひけあり、3:艶ひけあり、1:著しい艶ひけあり、一部剥離発生あり)
【0209】
11.耐汚染性
(1)耐ガスケット性
鋼板の塗面に冷蔵庫ドアパッキンを磁石によって接着して、70℃で96時間放置後パッキンをはがし、塗面をウエスで拭き取り、塗面上のパッキンの痕跡を5段階評価した。
(5:痕跡なし、4:わずかに痕跡が残る、3:やや痕跡が残る、2:相当痕跡が残る、1:完全に痕跡が残る)
(2)マジック耐汚染性
鋼板の塗面に赤マジックで線を書き2時間放置後、エタノ−ルにより拭き取った後のマジックの痕跡を5段階評価した。(5:痕跡なし、4:わずかに痕跡が残る、3:やや痕跡が残る、2:相当痕跡が残る、1:完全に痕跡が残る)
【0210】
12.耐擦り傷性
鋼板の塗面をつめで強くこすり、傷の発生を目視で評価した。(5:傷なし、4:わずかに傷あり、3:やや傷あり、2:相当傷あり、1:著しい傷あり)
【0211】
13.耐衝撃性
塗装鋼板をデュポン式耐衝撃試験機を用いて、高さ40cm、荷重500gの条件で評価した。(5:クラックなし、4:わずかにクラックによる白化発生あり、3:クラック発生あり、1:著しくクラック発生あり)
【0212】
14.耐ブロッキング性
2枚の塗装鋼板を塗布面と裏面を重ねてヒートプレスで60℃、5kg/cm2で1時間熱処理した。次いで、常温にもどしてからゆるやかに剥離し、評価した。
(5:痕跡なし、4:わずか痕跡が残る、3:痕跡が残る、2:著しく痕跡が残る、1:剥離できない)
【0213】
本発明樹脂(A)の合成例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸332部、イソフタル酸332部、2−メチル−1,3−プロパンジオール714部、1,6−ヘキサンジオール104部、及びアルミニウム系重合触媒(ただし、アルミニウム系重合触媒は、アルミニウム化合物(塩基性酢酸アルミニウム)の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液およびリン化合物(Irganox1222)の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液の混合物の調製物)を、重合後のポリマー中の濃度が全酸成分に対しアルミニウム化合物が0.02モル%、リン化合物が0.04モル%になるように仕込み、160℃から230℃まで昇温しながら、4時間かけてエステル化反応を行った。次いで、系内を徐々に減圧にし、40分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の1H−NMRによる分析結果および各特性を表1に示す。
【0214】
本発明樹脂(B,C)および比較樹脂(D,E,F)の合成例
触媒種をアルミニウム/リン系(本発明樹脂A)からアルミニウム/リチウム系(本発明樹脂B)、アルミニウム単独系(本発明樹脂C)、アンチモン系(比較樹脂D)、チタン系(比較樹脂E)およびスズ系(比較樹脂F)にそれぞれ変更する以外は実施例1と同様にして実施した。得られた共重合ポリエステル樹脂の分析結果および各特性を表1に示す。チタン系触媒の樹脂の着色は著しく、一方、アルミニウム/リン系、アルミニウム/アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属などの複合触媒系のそれは、チタン系触媒に比べると透明であり着色も抑制されたものであった。アルミニウム単独系触媒の場合、複合系のそれに比べて重合活性がやや低い以外は同様の外観を示した。また、アンチモン系重合触媒は着色に加えて濁っていた。スズ系重合触媒は比較的透明で着色も少ないものであったがアンチモン系触媒同様にこれらを含まないポリエステルが市場で望まれている。
【0215】
本発明樹脂(G)の合成例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸452部、無水トリメリット酸7.7部、2−メチル−1,3−プロパンジオール714部、1,6−ヘキサンジオール104部、アルミニウム系重合触媒(ただし、アルミニウム系重合触媒は、アルミニウム化合物(塩基性酢酸アルミニウム)の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液およびリン化合物(Irganox1222)の2−メチル−1,3−プロパンジオール溶液の混合物の調製物)を、重合後のポリマー中の濃度が全酸成分に対しアルミニウム化合物が0.02モル%、リン化合物が0.04モル%になるように仕込み、160℃から230℃まで昇温しながら、4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧にし、40分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重合反応を行った。次いで、常圧にもどし、窒素気流中で230℃まで冷却し、無水トリメリット酸7.7部を添加し、攪拌しながら30分間ポリエステル末端の水酸基と反応させ、後付加した。得られた共重合ポリエステル樹脂(G)の1H−NMRによる分析結果および各特性を表2に示す。
【0216】
本発明樹脂(H〜K)の合成例
本発明樹脂(G)と同様に合成した。得られた共重合ポリエステル樹脂の分析結果および各特性を表2に示す。
【0217】
比較樹脂(L〜T)の合成
表3の酸成分およびグリコール成分を用いる以外は、本発明樹脂(A)または(G)と同様にして比較樹脂(L〜S)を合成した。比較樹脂(T)は、窒素気流下、常圧により脱水縮合して合成した。得られた比較共重合ポリエステル樹脂の分析結果および各特性を表3および4に示す。
【0218】
(実施例1) ホワイト配合による評価
ポリエステル樹脂(A)100固形部の溶液に酸化チタン125部、メチル化メラミン(商品名:スミマールM40S、住友化学工業社製)12.5固形部、ブチル化メラミン(商品名:スーパーベッカミンJ−820、大日本インキ化学工業社製)12.5固形部、p−トルエンスルホン酸の10%ベンジルアルコール溶液2.5部、およびポリフローS(共栄社化学社製)0.5部を加え、ガラスビーズ型高速振とう機で5時間分散し塗料組成物とした。この塗料組成物をポリエステル系のプライマー塗料を塗布した厚さ0.5mmの亜鉛鉄板に膜厚18μmとなるように塗布したのち、230℃で1分間焼付けを行った。得られた塗膜は、優れた加工性と硬度を有し、さらに卓越した絞り加工性、耐汚染性を有した。試験結果を表5に示す。また、塗膜の白さは樹脂の着色が少ないため黄変せず本来の白さを示すものであった。
【0219】
(実施例7) 濃色配合による評価
共重合ポリエステル樹脂(A)100固形部の溶液にカーボンブラック10部、M40S(前述)20固形部、J−820(前述)15固形部、p−トルエンスルホン酸の10%ベンジルアルコール溶液10部、およびポリフローS(前述)0.5部、分散剤0.5部を加え、ガラスビーズ型高速振とう機で5時間分散し塗料組成物とした。この塗料組成物をポリエステル系のプライマー塗料を塗布した厚さ0.5mmの亜鉛鉄板に膜厚18μmとなるように塗布したのち、230℃で1分間焼付けを行った。得られた塗膜は光沢に優れ、良好な加工性と硬度、耐擦り傷性を有した。また、極めて良好な耐ブロッキング性、耐衝撃性を有した。また、屋外暴露1年後においても90%以上の光沢保持率を維持していた。試験結果を表6に示す。
【0220】
以下、表5〜表8に示す組成により同様にして、実施例2〜12、比較例1〜6および8〜18の塗料組成物を作成し、塗布、焼付けを行った。得られた塗装鋼板の試験結果を表5〜表8に示す。ただし、塗料の配合比は固形分換算で表示した。塗膜物性は、いずれの場合も本発明樹脂を用いた系が、比較樹脂を用いたそれらに比べ優れていた。
【0221】
【表1】

【0222】
【表2】

【0223】
【表3】

【0224】
【表4】

【0225】
【表5】

【0226】
【表6】

【0227】
【表7】

【0228】
【表8】

【0229】
以上、本発明のプレコート用塗料組成物およびこれを塗布した塗装金属板について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本発明のプレコート用塗料組成物は、重合活性に優れ、樹脂の着色が抑制され、また、アルミニウム由来の異物が低減されたという特性を有することから、色相に優れ触媒として重金属化合物を含まない環境にやしいポリエステル樹脂組成物であり、これを塗布した塗装金属板は、加工性、硬度、耐衝撃性、耐ブロッキング性という特性を有することから、家電商品、自動車用品、事務機器などの用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下に製造され、カルボン酸成分(a)がテレフタル酸(a1)10〜70モル%、該テレフタル酸(a1)とその他の芳香族ジカルボン酸(a2)との合計80モル%以上であり、グリコール成分(g)が2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオール(g1)25モル%以上、炭素数5〜10のアルキレングリコールおよび/または脂環族グリコール(g2)75モル%以下で、グリコール成分(g)のうち前記(g1)グリコールと(g2)グリコールとの合計50モル%以上であり、かつ、ガラス転移点温度が10〜80℃、還元粘度が0.2dl/g以上、比重が1.21〜1.30である共重合ポリエステル樹脂(A)と、該共重合ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)とを(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)の割合で配合してなるものであることを特徴とするプレコート用樹脂組成物。
【請求項2】
アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、リン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とからなることを特徴とする請求項1に記載のプレコート用樹脂組成物。
【請求項3】
アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種とからなることを特徴とする請求項1に記載のプレコート用樹脂組成物。
【請求項4】
アルミニウム化合物が、カルボン酸含有アルミニウム化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレコート用樹脂組成物。
【請求項5】
リン化合物が、芳香族ホスホン酸またはその誘導体であることを特徴とする請求項1、2および4のいずれかに記載のプレコート用樹脂組成物。
【請求項6】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属が、Li,NaまたはMgないしその化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、3および4のいずれかに記載のプレコート用樹脂組成物。
【請求項7】
共重合ポリエステル樹脂(A)の、共重合ポリエステル樹脂に不溶なアルミニウム系異物ろ過時間が5時間以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプレコート用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のプレコート用樹脂組成物を塗布してなることを特徴とする塗装金属板。

【公開番号】特開2006−348182(P2006−348182A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176530(P2005−176530)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】