説明

プレスロール、二次電池の製造装置および製造方法、ならびに二次電池

【課題】 加圧される部材の厚みのバラツキを極力なくすことができ、より低い圧力で効果的な加圧ができると共に、コンパクトで、取扱いが容易なプレスロール、電極材原反の加圧処理に適用した場合に、電極活物質層の高密度化、均質化を図ることができる二次電池の製造装置および製造方法、ならびに電極材の幅方向における厚みのバラツキが抑制されて電池特性が向上した二次電池を提供する。
【解決手段】 ロールシャフト18と外筒19との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように流路が折り返されている構造を有するフレキシブルロール14を用いて電極材原反の加圧処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレスロール、二次電池の製造装置および製造方法、ならびに二次電池に関し、特に、電極材に対して加圧処理を行う機構および工程を改良し、電池特性を向上するプレスロール、二次電池の製造装置および製造方法、ならびに二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器の飛躍的進歩に伴って、電子機器の駆動電源として、繰返し充放電を行うことにより、長期に亘って使用可能な二次電池の研究が進められている。代表的な二次電池としては、鉛蓄電池やアルカリ蓄電池、リチウムイオン二次電池等が知られている。
【0003】
このような二次電池は、例えば支持部材であり電極集電体となる帯状のアルミニウム箔や銅箔等の金属箔の片面または両面に、電極活物質が形成された正極材および負極材を、セパレータを介して巻回、積層等をして、発電要素たる電池素子としている。二次電池は、このように帯状の正極材および負極材を巻回、積層等をすることにより、電池反応の生じる面積を大きく確保することができるため、大電流を得ることが可能である。
【0004】
上述したような二次電池においては、その単位面積あたりのエネルギー量を増やして電池特性を向上させるために、電極活物質の粒子を堅固に電極集電体に固定させることや、電極活物質層中における活物質の高密度化、均質化および正極材、負極材の表面の平滑化等が要求されている。このため、正極材および負極材は、その製造の際に、電極集電体に形成された電極活物質層に対して加圧処理が施されている。二次電池においては、この加圧処理を行うことにより、電極活物質の粒子が高密度に且つ、堅固に電極集電体に固定することができるとともに、正極材および負極材の表面を平滑にすることができる。
【0005】
このような加圧処理は、例えば、従来から図12Aおよび図12Bに示すような、一対の金属ロール51a、51bを備える二次電池製造装置50によって行われている。これら一対の金属ロール51a、51bは、例えば、ロール径が200mm〜500mmのスチールロールであり、図示を省略する加熱機構によって、その外周面が例えば80℃〜150℃に加熱されている。二次電池製造装置50においては、一方の金属ロール51aを固定し、他方の金属ロール51bに、図12B中に示す矢印方向の圧力P1を加えて、金属ロール51bを金属ロール51aに圧接し、これら金属ロール51a、51b間に電極活物質層が形成された電極材原反60を通過させることで加圧処理を行っている。
【0006】
しかしながら、これからの二次電池に対しては、さらなる高密度化が要求されている。このような要請に応えるために、二次電池の製造に際しては、上述した一対の金属ロール51a、51b間に電極材原反60を通過させて、さらに高圧で加圧処理をすると、図13に示すように、ロールの両端側に加えられる圧力P1によって金属ロール51bが押し曲げられて中央部が浮き上がる、いわゆるベンディング現象が生じる。
【0007】
二次電池製造装置50では、このようなベンディング現象が生じると、金属ロール51a、51bの両端部に圧力が集中するため、浮き上がった中央部に比較して、両端部での加圧が異常に高圧で行われる。このため、二次電池製造装置50は、ベンディング現象が生じたまま加圧処理を行うと、均質な加圧処理が行われず、中央部と両端部との幅方向の厚みのバラツキが、大きな山型の厚み分布とされた電極活物質層を有する電極材原反が作成される。
【0008】
このような幅方向の電極活物質の厚みのバラツキが大きな電極材原反では、電極活物質の均質化が損なわれて電池特性が低下すると共に、後工程で電池一個あたりの幅に裁断した場合に、各電池間での容量等、電池特性のバラツキが大きくなる等の問題が生じる。
【0009】
この問題を解決するために、従来の二次電池製造装置50においては、上述したベンディング現象の発生を防止するために、図14に示すように、圧力P1と逆方向の圧力P2を金属ロール51bにさらに加える逆ベンディング機構が設けられている。しかしながら、このような逆ベンディング機構を備える二次電池製造装置50にあっては、さらに高い圧力が金属ロール51a、51b等に加えられるため、二次電池製造装置50を構成する各部位の剛性をより強固にし、また装置自体の構成もより大きく且つ、より複雑にする必要がある。その結果、従来の二次電池の製造装置では、製造装置が全体として大掛かりなものとなってコスト高となると共に、装置自体の取扱いも複雑化するという問題があった。
【0010】
これら問題を解決するため、下記の特許文献1には、一例として、フレキシブルロールを用いて電極材原反を加圧する二次電池の製造装置および製造方法が記載されている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−59488号公報
【0012】
特許文献1に記載の二次電池の製造装置および製造方法によれば、電極活物質の高密度化、および均質化を飛躍的に改善することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、今後の電極活物質層の高密度化に伴い、さらに電極材原反の幅方向の均質化、厚みのバラツキを極力ゼロに近づける必要が生じてきている。例えば、上述した特許文献1に記載のフレキシブルロールを用いた加圧処理では、電極活物質層の幅方向における厚みのバラツキを2μm程度以下とするのが限界であり、よりフラットな状態に近づけることが困難であった。
【0014】
したがって、この発明の目的は、加圧される部材の厚みのバラツキを極力なくすことができ、より低い圧力で効果的な加圧ができると共に、コンパクトで、取扱いが容易なプレスロール、電極材原反の加圧処理に適用した場合に、電極活物質層の高密度化、均質化を図ることができる二次電池の製造装置および製造方法、ならびに電極材の幅方向における厚みのバラツキが抑制されて電池特性が向上した二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、第1の発明は、金属ロールと圧接されて、外周面部と金属ロールの外周面部との間に電極材原反を挟入して電極材原反を加圧するためのプレスロールであって、芯材とロールの外周面部との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように流路が折り返されていることを特徴とするプレスロールである。
【0016】
また、第2の発明は、電極材原反に対して加圧処理を行う二次電池の製造装置において、芯材とロールの外周面部との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように上記流路が折り返されているプレスロールと、プレスロールと隣接して配置された金属ロールと、プレスロールを金属ロールに対して圧接する圧接手段とを有し、プレスロールと金属ロールとの間に電極材原反を狭入して電極材原反を圧延することを特徴とする二次電池の製造装置である。
【0017】
また、第3の発明は、電極材原反に対して加圧処理を行う加圧工程を有する二次電池の製造方法において、芯材とロールの外周面部との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように流路が折り返されているプレスロールを、プレスロールと隣接して配置された金属ロールに圧接し、プレスロールと金属ロールとの間に電極材原反を狭入して電極材原反を圧延することを特徴とする二次電池の製造方法である。
【0018】
また、第4の発明は、芯材とロールの外周面部との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように流路が折り返されているプレスロールを、プレスロールと隣接して配置された金属ロールに圧接し、プレスロールと金属ロールとの間に狭入することで圧延された電極材原反から所定幅に裁断されて帯状の正極材および負極材が作製され、正極材および負極材に形成された活物質層の幅方向における厚みのバラツキが1μm以下であることを特徴とする二次電池である。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、プレスロールが芯材とロールの外周面部との間に、熱媒が循環される流路が形成されており、該流路が外周面部の温度が均一となるように折り返されている構成を有することにより、導入される熱媒と導出される熱媒とに温度差が生じる場合であっても、プレスロールの外周面全体の温度差を限りなく少なくすることができる。依って、温度差によって生じるサーマルクラウン現象によるロールの変形を防止できる。
【0020】
また、プレスロールが芯材とロールの外周面部との間に、外周面部を弾性変形可能とする中空構造を有することにより、加圧する際にロールに生じるベンディング現象による変形を吸収することができる。
【0021】
これらによって、圧延の際にロールの幅方向に加わる圧力を限りなく均等にすることができる。結果、加圧された部材の幅方向における厚みのバラツキを、ほとんどなくすことができる。依って、二次電池の電極材原反の加圧処理に適用することで、電極材の幅方向における厚みのバラツキを極力抑えることができ、電極材に形成された活物質層の高密度化、均質化および表面の平滑化を図ることができ、電池特性を向上することができる。
【0022】
また、圧延の際にロールの幅方向に加わる圧力を限りなく均等にすることができることや、プレスロールの中空構造を利用して熱媒の流路を形成していることから、低圧で十分な加圧が行える為、製造コストを低減できると共に、加圧処理時の作業性、例えば製造装置自体の操作性や加圧処理時の生産性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の一実施形態によるプレスロール、二次電池の製造装置および製造方法、ならびに二次電池について、図面を参照しながら詳細に説明する。先ず、この発明の一実施形態によるプレスロール、二次電池の製造装置および製造方法の説明に先立ち、これらを利用して作製される二次電池の一例について説明する。
【0024】
図1に示すように、二次電池1は、リチウムイオン二次電池であり、帯状の正極材2と負極材3とが、セパレータ4を介して積層され、且つ渦巻き状に複数回巻回されて発電要素たる電池素子とされ、非水電解液と共に有底円筒状を呈する電池缶5内に収納されている。二次電池1は、電池缶5の開放部位に蓋体6がかしめ付けられ、内部に収納された電池素子および非水電解液を密封している。
【0025】
正極材2には、アルミニウム箔等である正極集電体の両面または片面に、正極活物質を含む正極材塗料が塗布されて正極活物質層が形成されている。正極材2に使用する正極活物質には、リチウム含有化合物が用いられ、このリチウム含有化合物としては、例えばLixMO2(式中Mは1種類以上の遷移金属を表し、xは、0.05≦x≦1.10である。)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物があげられる。また、正極材2には、一端近傍に蓋体6を介して外部と導通される正極リード7が取り付けられている。
【0026】
正極材塗料は、上述した正極活物質と結合剤とを混合させて、この混合物を溶剤となる有機溶媒溶液中に分散させて作製される。正極活物質と混合される結合剤としては、この種のリチウムイオン二次電池において結合剤として通常用いられている公知の材料を用いることができる。また、正極材塗料には、導電剤として炭素粉末等の炭素材料を添加してもよい。
【0027】
負極材3には、ニッケル箔や銅箔等である負極集電体の両面または片面に、負極活物質を含有する負極材塗料が塗布されて、負極活物質層が形成されている。負極材3に使用する負極活物質には、炭素材料が用いられ、この炭素材料としてはリチウムをドープ且つ脱ドープすることが可能なものであればよく、例えば2000℃以下の比較的低い温度で焼成して得られる低結晶性炭素材料や、結晶化しやすい原料を3000℃近くの高温で処理した人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性炭素材料があげられる。また、炭素材料としては、上述したものの他に、例えば熱分解炭素類、コークス類、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等があげられる。また、負極材3には、一端近傍に電池缶5を介して外部と導通される負極リード8が取り付けられている。
【0028】
負極材塗料は、上述した負極活物質と結合剤とを混合させて、この混合物を溶剤となる有機溶媒溶液中に分散させて作製される。負極材塗料に含有される結合剤としては、この種のリチウムイオン二次電池において結合剤として通常用いられている公知の材料を用いることができる。
【0029】
二次電池1においては、正極材2および負極材3の裁断前の状態である電極材原反が、プレスロールと金属ロール(この金属ロールは、プレスロールを含む。)との間に狭入されることで圧延して作製される。プレスロールは、芯材とロールの外周面部との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように流路が折り返された構造を有したものである。二次電池1は、このように作製された電極材原反を使用して正極材2および負極材3とすることにより、上述した正極活物質層および負極活物質層の幅方向における厚みのバラツキ、具体的には各活物質層の中央部と両端部とにおける厚みのバラツキが1μm以下とされている。二次電池1においては、このように正極材2および負極材3に形成された活物質層の厚みのバラツキが1μm以下に抑えられることで、活物質層の均質化、高密度化および表面の平滑化が向上し、電池特性が向上する。
【0030】
セパレータ4は、正極材2の正極活物質層と、負極材3の負極活物質層とを離間させるものであり、この種のリチウムイオン二次電池のセパレータとして通常用いられている公知の材料を用いることができ、例えばポリプロピレンなどの高分子フィルムが用いられる。
【0031】
非水電解液としては、有機溶媒に電解質を溶解させた溶液が用いられる。有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等を使用することができる。このような有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、有機溶媒に溶解させる電解質としては、溶剤に溶解し、且つイオン伝導性を示すリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22等を使用することができる。これら電解質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
次に、上述した構成を有する二次電池1の製造方法の一例について説明する。二次電池1の電池素子を構成する正極材および負極材(以下、特に区別しない場合には電極材と総称する。)は、例えば、混合・分散工程、塗布工程、加圧処理工程および裁断工程の各工程を順次経て作製される。以下、これら各工程について説明する。
【0033】
混合・分散工程においては、後工程たる塗布工程にて金属箔原反に塗布するスラリー状の正極材塗料および負極材塗料(以下、特に区別しない場合には電極材塗料と総称する。)が調整される。正極材塗料の調整は、正極活物質および結合剤、その他必要に応じて導電剤等を混合し、この混合物を溶剤となる有機溶媒溶液内に均一に分散させて行う。また、負極材塗料の調整は、負極活物質および結合剤を混合し、この混合物を有機溶媒溶液内に均一に分散させて行う。なお、この混合・分散工程においては、例えばロールミル、ボールミル等、電極材塗料を調整するときに通常使用される種々の混合・分散機を使用することができる。
【0034】
塗布工程においては、幅広の金属箔原反の両面または片面に前行程たる混合・分散工程で調整された電極材塗料を塗布し、乾燥させて該金属箔原反の片面または両面に活物質層が形成され、幅広の電極材原反が作製される。この塗布工程において使用する金属箔原反には、正極材を作製する場合にはアルミニウム箔等を、負極材を作製する場合には銅箔等を使用する。なお、この塗布工程においては、例えばグラビアロール方式やダイヘッドを用いた塗布方式等、電極材を作製する際に通常採られる塗布方式を実施することができる。
【0035】
加圧処理工程においては、上述した塗布工程で活物質層が形成された幅広の電極材原反に対する加圧が行われる。この加圧処理工程では、芯材とロールの外周面部との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように流路が折り返されているプレスロールと、プレスロールと隣接して配置された金属ロール(この金属ロールは、プレスロールを含む。)とを圧接し、プレスロールと金属ロールとの間に電極材原反を狭入することで電極材原反に対する加圧を行っている。
【0036】
加圧処理工程で使用するプレスロールには、例えば、ロール径が180mm〜350mmの弾性作用を有するスチールロールが使用される。このプレスロールは、その外周面が加熱機構により温度調整されて、例えば80℃〜150℃までに加熱されている。
【0037】
また、金属ロールには、例えば、ロール径が180mm〜350mmのスチールロールが使用される。この金属ロールは、その外周面が加熱機構により温度調整されて、例えば80℃〜150℃までに加熱されている。
【0038】
加圧処理工程では、このようにプレスロールおよび金属ロールの外周面の温度を高くして加圧することで、加圧処理の効果および生産性を向上させつつ、活物質層の高密度化を図ることができる。
【0039】
加圧処理工程では、各ロール間にニップ圧力が線圧として、例えば400kg/cm〜600kg/cmとなるように加圧されている。このとき、隣接するロール間における圧力Pmaxが4kg/mm2以上となるように、好ましくは4kg/mm2〜15kg/mm2の範囲となるように加圧されている。ここで、圧力Pmaxとは、図2に示すように、ロール材Aとロール材A'とが接触している範囲B(同図中−b,+b間)において、最も高い圧力がかかっている部位における圧力を示す。
【0040】
上述した加圧処理工程では、プレスロールと金属ロール(この金属ロールは、プレスロールを含む。)を使用して加圧を行うので、プレスロールが弾性変形することによって、ベンディング現象等によるロールの変形をプレスロールが吸収して、電極活物質層を有する電極材原反の幅方向における厚みのバラツキを抑制することができる。さらに、プレスロールは、外周面の温度が均一とされるため、サーマルクラウン現象による変形が抑えられる。依って、加圧処理工程では、電極材原反に対する均質な加圧処理が行われるようになり、電極材に形成された活物質層の高密度化、均質化および表面の平滑化が図られ、二次電池の電池特性の向上に寄与し得る。
【0041】
また、加圧処理工程では、圧力分布のバラツキが抑制されることから、低い圧力で十分な加圧が行われる。このため、加圧処理工程では、使用する機械のコンパクト化等により加圧処理時の生産性を向上させることができる。
【0042】
上述した加圧処理工程を経て作製された電極材原反は、活物質層の幅方向の厚みのバラツキ、具体的には活物質層の中央部と両端部とにおける厚みのバラツキが1μm以下となっている。この結果、後述する裁断工程において、所定幅に裁断された後の電極材(正極材及び負極材)においても、その幅方向の厚みのバラツキが1μm以下とされる。
【0043】
裁断工程においては、加圧処理後の電極材原反が、電池一個あたりの所定幅に裁断され、多数条の電極材(正極材または負極材)とされる。なお、この裁断工程においては、例えばスリッターやダイスを備えるプレス機で剪断する方式等、電極材を作製する際に通常採られる裁断方式を実施することができる。
【0044】
上述した各工程を経て作製された正極材および負極材は、正極リード、負極リードが取り付けられた後に、セパレータを介して積層され、且つ渦巻き状に巻回されて電池素子とされる。二次電池は、この電池素子が非水電解液と共に電池缶内に収納され、正極リードを蓋体に、負極リードを電池缶にそれぞれ接続するとともに、蓋体をかしめ付けて密閉することにより作製される。
【0045】
次に、上述した二次電池の製造方法に適用可能な二次電池の製造装置の一例について説明する。この発明を適用した二次電池の製造装置は、図3に示すように、上述した加圧処理工程を行う際に使用されるホットプレス装置10を有している。ホットプレス装置10は、他のロールに挟まれたプレスロール(以下、適宜フレキシブルロールと称する。)14を用いて電極材原反11に対して加熱しながら加圧処理を行う。
【0046】
このホットプレス装置10は、第1の金属ロール12と、第1の金属ロール12と対向して配置された第2の金属ロール13と、第1の金属ロール12と第2の金属ロール13と隣接して配置されたフレキシブルロール14とを備えており、各ロール12,13,14の中心軸が同一平面上に並ぶように配置されている。すなわち、このホットプレス装置10の図示を省略するフレームには、第1の金属ロール12と、フレキシブルロール14と、第2の金属ロール13とが順に積み重ねられた状態で支持されている。
【0047】
そして、このホットプレス装置10は、電極材原反11を、第1の金属ロール12とフレキシブルロール14との間で挟み込み、その間を通過させることで、電極材原反11に対して加圧しながら加圧処理を行う。なお、各ロール12,13,14は、図示を省略する駆動機構により回転駆動される。また、このホットプレス装置10では、各ロール12,13,14の回転速度および回転方向を制御することによって、互いに隣接するロール12,13,14同士を互いに逆向きに回転駆動すると共に、第1の金属ロール12とフレキシブルロール14との間で挟み込まれた電極材原反11に弛み等が発生するのを防止している。
【0048】
第1の金属ロール12は、その両端部に設けられた一対の支軸がフレームに設けられた一対の軸受部に軸支されることによって、軸回りに回転可能に支持されている。第1の金属ロール12は、プレス時に他のロール13,14に対して基準となるロールであり、鉛直方向に移動することなく、一対の軸受部がフレームに固定支持されている。また、第1の金属ロール12の外周面部は、例えばSUJ(高炭素クロム軸受鋼鋼材)やSCM(クロムモリブデン鋼鋼材)等の特殊用途鋼や機械構造用炭素鋼・合金鋼からなっており、その硬度は、HRC50〜60程度である。また、第1の金属ロール12には、外周面部を加熱するヒータ機構が設けられている。なお、第1の金属ロール12の外周面部は、例えば80℃〜150℃の範囲で温度調節することが好ましい。
【0049】
第2の金属ロール13は、その両端部に設けられた一対の支軸がフレームに設けられた一対の軸受部に軸支されることによって、軸回りに回転可能に支持されている。この第2の金属ロール13は、電極材原反11に対する押圧を調節する加圧用ロールであり、一対の軸受部が鉛直方向に移動可能に支持されると共に、一対の軸受部には、電極材原反11に対する押圧を調節するための油圧等による調節機構(図示せず。)が設けられている。そして、第2の金属ロール13は、この調節機構が一対の軸受部を押圧することで、第1の金属ロール12に対して加圧する方向に変位駆動される。これにより、第2の金属ロール13は、電極材原反11に対する押圧を調節することが可能となっている。また、第2の金属ロール13の外周面部は、例えばSUJやSCM等の特殊用途鋼や機械構造用炭素鋼・合金鋼からなっており、その硬度は、HRC50〜60程度である。また、第2の金属ロール13には、外周面部を加熱するヒータ機構が設けられている。なお、第2の金属ロール13の外周面部は、例えば80℃〜150℃の範囲で温度調節することが好ましい。
【0050】
フレキシブルロール14は、その両端部に設けられた一対の支軸がフレームに設けられた一対の軸受部に軸支されることによって、軸回りに回転可能に支持されている。また、一対の軸受部は、鉛直方向に移動可能に支持されている。したがって、フレキシブルロール14は、第2の金属ロール13に押圧されることによって、第1の金属ロール12に対して加圧する方向に移動することになる。このフレキシブルロール14を第1の金属ロール12に圧接する機構は、第2の金属ロール13を使用することに限らず、例えば、第2の金属ロール13とフレキシブルロール14との間に弾性ロールを介在させてフレキシブルロール14を第1の金属ロール12に対して圧接する機構としてもよい。
【0051】
弾性ロールとしては、例えば図4に示すように、金属製の芯材16と、この芯材16の外周面を覆う厚みが例えば10mm〜20mmの弾性体の層、例えば樹脂層17とで構成し、該樹脂層17部分を含む全体のロール径が、例えば250mm〜350mmのものを使用する。弾性ロール15を使用する場合には、その両端部に設けられた一対の支軸がフレームに設けられた一対の軸受部に軸支されることによって、軸回りに回転可能に支持させる。また、一対の軸受部は、鉛直方向に移動可能に支持させる。そして、弾性ロール15が第2の金属ロール13に押圧されることによって、第1の金属ロール12に対してフレキシブルロール14を加圧する方向に移動する構成とする。
【0052】
フレキシブルロール14は、芯材とロールの外周面部との間に外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、外周面部の温度が均一となるように流路が折り返された構造を有している。
【0053】
具体的に、このフレキシブルロール14は、図5に示すように、略円柱状のロールシャフト18と、ロールシャフト18が挿通される略円筒状の外筒19と、ロールシャフト18の外周面と外筒19の内周面との間に介在される内周側スパイラルリング20および外周側スパイラルリング21とを有している。
【0054】
ロールシャフト18は、金属製の芯材であり、その両端部には、上述したフレームの一対の軸受部に軸支される一対の支軸18a,18bが設けられている。また、一対の支軸18a,18bの中心部には、後述する熱媒を導入または導出するための管路22a,22bが設けられている。これら管路22a,22bは、それぞれ一対の支軸18a,18bの両端部からロールシャフト18の中心軸を通り、軸方向の中途部にてロールシャフト18の外周面に臨むように形成されている。具体的には、管路22a,22bは、共にロールシャフト18の中心軸を通り、外筒19の開口の一端側でロールシャフト18の外周面に臨むように形成されている。
【0055】
外筒19は、フレキシブルロール14の外周面部を構成するものであり、例えばSUJやSCM等の特殊用途鋼や機械構造用炭素鋼・合金鋼からなっており、その硬度は、HRC50〜60程度である。内周側スパイラルリング20は、樹脂等の弾性体が略円筒状に形成されてなり、その外周面には、後述する熱媒が循環される螺旋状の溝部23が形成されている。外周側スパイラルリング21は、樹脂等の弾性体が略円筒状に形成されてなり、その外周面には、後述する熱媒が循環される螺旋状の溝部24が形成されている。
【0056】
ロールシャフト18と外筒19との間に内周側スパイラルシャフト20および外周側スパイラルリング21が位置するように、内周側スパイラルシャフト20がロールシャフト18に固定されており、さらにその外側に外周側スパイラルリング21が固定されている。なお、外周側スパイラルリング21は、円筒形状の両端がそれぞれ略円盤状の一対の側板25a,25bによって内周側スパイラルリング21に固定されている。
【0057】
このフレキシブルロール14は、内周側スパイラルリング20および外周側スパイラルリング21、ならびに一対の側板25a,25bを貫通するロールシャフト18が外筒19内に挿入された後に、外筒19の両端開口部が一対の側板26a,26bによってそれぞれ封止された構造を有している。一対の側板26a,26bは、全体略円盤状に形成されてなり、その中心部には、ロールシャフト18を貫通させる貫通孔27a,27bが形成されている。また、側板26a,26bの一端側は、外筒19の内周部に嵌合されるように縮径された段付き形状を有している。
【0058】
そして、これら一対の側板26a,26bは、外筒19の両端開口部を封止した後に、ロールシャフト18に固定されることによって、ロールシャフト18、内周側スパイラルリング20、外周側スパイラルリング21および外筒19を同軸上に位置させる。また、外筒19と一対の側板26a,26bとの間には、ロールシャフト18に対する外筒19のラジアル方向(軸と直交する方向)およびスラスト方向(軸と平行な方向)の位置を規制するためのOリング28a,28b,28cが設けられている。なお、ロールシャフト18と外筒19とは、リジットでなくフリー状態となっている。すなわち、ロールシャフト18は、外筒19をOリング28a,28b,28cで支えており、ロールシャフト18と外筒19は機械的に固定されていない。Oリング28a,28b,28cは、外筒19と一対の側板26a,26bとの間に形成される僅かな隙間から、後述する熱媒が漏れることを防止する機能も有している。
【0059】
一対の側板25a,25bと、一対の側板26a,25bとの間にはそれぞれ隙間が形成されている。ロールシャフト18の一端側、すなわち側板25aと側板26aとの間の隙間には、溝部24による流路の一端側と、側板25aに設けられた孔によって溝部23による流路の一端側とが通じている。ロールシャフト18の他端側、すなわち側板25bと側板26bとの間の隙間には、溝部24による流路の他端側と管路22bとが繋がっている。また、溝部23による流路の他端側は、内周側スパイラルリング20に設けられた孔によって管路22aと繋がっている。
【0060】
したがって、フレキシブルロール14の内部には、ロールシャフト18の一端側に設けられた管路22aから油等の熱媒を導入した後に、ロールシャフト18の他端側から一端側に向かって、内周側スパイラルリング20の溝部23と外周側スパイラルリング21との間を循環させ、さらにロールシャフト18の一端側で折り返し、ロールシャフト18の一端側から他端側に向かって、外周側スパイラルリング21の溝部24と外筒19との間を循環させて、ロールシャフト18の他端側に設けられた管路22bから導出させる流路が形成されている。フレキシブルロール14は、この流路を熱媒が循環することで、外筒19が加熱される構造を有する。
【0061】
また、内周側スパイラルリング20と外周側スパイラルリング21との間には、熱媒を溝部23に沿って効率よく循環させるために、柔らかいゴム状のシール29が設けられている。このシール29は、螺旋状の溝部23の間に形成される頂上部が外周側スパイラルリング21の内周面と接触する位置に設けられている。また、外周側スパイラルリング21と外筒19との間には、熱媒を溝部24に沿って効率よく循環させるために、柔らかいゴム状のシール30が設けられている。このシール30は、螺旋状の溝部24の間に形成される頂上部が外筒19の内周面と接触する位置に設けられている。
【0062】
以上のように、このフレキシブルロール14では、ロールシャフト18と外筒19とが直接接触することはなく、ロールシャフト18と外筒19との間に介在される内周側スパイラルリング20および外周側スパイラルリング21によって、ロールシャフト18と外筒19との間が弾性変形可能とされた中空構造となっている。また、フレキシブルロール14の内部には、熱媒を循環させる流路が形成されており、フレキシブルロール14の外周面部を加熱することが可能となっている。なお、フレキシブルロール14の外周面部は、例えば80℃〜150℃の範囲で温度調節することが好ましい。
【0063】
また、熱媒を循環させる流路は、ロールシャフト18の一端から導入された熱媒がロールシャフト18の他端側で溝部23による流路に導入されて折り返され、さらに、溝部23による流路から導出された熱媒がロールシャフト18の一端側で折り返されて、溝部24による流路に導入されて、ロールシャフト18の他端側でロールシャフト18に導出されて、ロールシャフト18の他端から導出されるため、熱媒の流れ方向が対称とされ、熱媒の温度が徐々に低くなっていくことを全体的に緩和し、さらに、熱媒がロール内に滞留している時間を長くすることができる。これにより、外筒19の温度が一定に保たれ、ロールの幅方向の温度差を抑えることができる。
【0064】
なお、熱媒を循環させる流路は、ロールの内部で折り返すことでフレキシブルロール14の外周面部の温度が均一となるように構成されたものであれば、特に、図5に示した形状に限ったものではなく、例えば、熱媒の導入、導出方向が逆向きであってもよいし、また、外周側スパイラルリング21の外側にさらにスパイラルリングを設けた構成であってもよいし、管路22a,22bによる熱媒の導入および導出位置が違っていてもよい。
【0065】
次に、以上のように構成されるホットプレス装置10を用いて、上述した加圧処理工程を行う動作について説明する。
【0066】
ホットプレス装置10では、図3に示すように、電極材原反11を、第1の金属ロール12とフレキシブルロール14との間で挟み込み、その間を通過させることで、電極材原反11に対して加熱しながら加圧処理を行う。また、このホットプレス装置10では、第2の金属ロール13が第1の金属ロール12に対して加圧する方向に移動することで、フレキシブルロール14が第1の金属ロール12との間で電極材原反11を加圧する。
【0067】
ところで、加圧用ロールである第2の金属ロール13には、その両端部に加えられる圧力によって撓みが生じ、その中央部分が浮き上がる、いわゆるベンディング現象が生じる場合がある。
【0068】
また、従来の加圧処理工程では、一対の金属ロールの間に電極材原反11を挟み込んで加圧処理を行った場合に、一対の金属ロール同士の接触幅が狭くなることに起因して、電極材原反11の幅方向における圧力分布が、上述した第2の金属ロール13に発生するベンディング現象等によって大きく変化してしまう虞があった。
【0069】
そこで、このホットプレス装置10では、ロールシャフト18と外筒19との間が弾性変形可能とされた中空構造を有するフレキシブルロール14が設けられており、このフレキシブルロール14と第1の金属ロール12との間で電極材原反11を挟み込み、電極材原反11に対して加圧処理を行っている。この場合、電極材原反11を加圧する際にフレキシブルロール14が弾性変形することによって、ベンディング現象による第2の金属ロール13の変形を吸収して、電極材原反11の幅方向の厚みのバラツキを抑えることができる。
【0070】
また、フレキシブルロール14内に設けられた熱媒の流路によって、フレキシブルロール14の外周面部の温度差がほとんどない状態とすることができる。これによって、加圧用のロールに発生するサーマルクラウン現象を抑制でき、幅方向における厚みのバラツキをさらに少なくすることができる。
【0071】
また、電極材原反11を圧延の際に、ロールの幅方向に加わる圧力を限りなく均等にすることができることや、フレキシブルロール14が中空構造を利用して熱媒の流路を形成していることから、低圧で十分な加圧が行える為、製造コストを低減できると共に、加圧処理時の作業性、例えば製造装置自体の操作性や加圧処理時の生産性を向上できる。
【0072】
なお、第2の金属ロール13とフレキシブルロール14との間に、上述した弾性ロール15を配置すれば、加圧処理時に弾性ロール15の外周面部が弾性変形することによって、ベンディング現象による第2の金属ロール13の変形を吸収し、より電極材原反11の幅方向における厚みのバラツキを抑えることができる。
【0073】
ところで、上述したフレキシブルロール14のバネ定数は、例えば50〜350kg/mmであることが好ましい。
【0074】
ここで、図6に示すように、長さBが単位長さ(1mm)である外筒19のリング状部分について考える。ここでは、外筒19の肉厚を2h(mm)とし、外筒19の外径と内径との相加平均をR(mm)とする。
【0075】
この外筒19のリング状部分は、図7に示すように、単位長さ当たりの荷重P(kg)を加えると、変位u(mm)だけ変位する。このとき、リング状部分のバネ定数をk(kg/mm)とすると、k=P/uとなる。
【0076】
一方、変位uは、弾性理論から、u=P・R(π/8−1/π(1+K))/A・E・Kと求められる。なお、Aは断面積(mm2)、Eは弾性係数(kg/mm2)、Kは形状係数を示し、A=2hBであり、K=R/2h・log((R+h)/(R−h))−1である。
【0077】
したがって、このリング状部分のバネ定数kは、k=A・E・K/R(π/8−1/π(1+K))として求めることができる。例えば、外筒19の外径が296mm、内径が244mmの場合、単位長さ当たりのバネ定数kは、計算により167kg/mmと求めることができる。
【0078】
以上のことから、外筒19の断面積Aを大きくする、即ち肉厚を厚くする、或いは外筒19の径、詳しくは外径と内径との相加平均Rを小さくした場合には、バネ定数kは大きくなることから、荷重による変形(撓み)は小さくなる。逆に、外筒19の肉厚を薄くする、或いは外筒19の径を大きくした場合には、バネ定数kは小さくなることから、荷重による変形(撓み)は大きくなる。したがって、外筒19の材質に応じて肉厚および径を選定すれば、フレキシブルロール14の所望のバネ定数を得ることが可能である。
【0079】
通常、リジットな金属ロール同士で加圧すると、その間の接触幅が狭くなって、幅方向の圧力分布が小さな要因に対しても大きく変化してしまう。故に、加圧方式によるベンディング作用でロール幅方向の圧力分布が大きく変動してしまう。フレキシブルロール14は、上述したような弾性作用を備えることで、これら幅方向の圧力分布の変動を抑制することができる。
【0080】
この発明では、上述した第1の金属ロール12との接触幅に起因する圧力分布のバラツキを抑制するため、フレキシブルロール14のバネ定数kを、50〜350kg/mmとしている。これにより、フレキシブルロール14の第1の金属ロール12に対する接触面積を均一に保つことが可能であり、電極材原反11の幅方向に対して均質な加圧処理を行うことが可能である。
【0081】
以上のように、このホットプレス装置10を用いた加圧処理工程では、第2の金属ロール13にベンディング現象が発生した場合でも、フレキシブルロール14の変形により第2の金属ロール13の撓みを吸収して均質な加圧処理を行うことが可能である。また、電極材原反11を加圧する際に、フレキシブルロール14が弾性変形することによって、このフレキシブルロール14と第1の金属ロール12との接触幅に起因する圧力分布のバラツキを抑制し、電極材原反11の幅方向に対して均質な加圧処理を行うことが可能である。
【0082】
したがって、この加圧処理工程では、電極材原反11に対する均質な加圧処理を行うことが可能なことから、加圧後の活物質層の厚みのバラツキを抑制し、活物質層の高密度化、均質化による二次電池の電池特性の向上を図ることが可能である。
【0083】
ホットプレス装置10の変形例としては、図8に示すように、第1の金属ロール12と、第1の金属ロール12と対向して配置された第2の金属ロール13と、第1の金属ロール12と第2の金属ロール13との間に、第2の金属ロール13と隣接して配置された第1のフレキシブルロール14aと、第1の金属ロール12および第1のフレキシブルロール14aと隣接して配置された第2のフレキシブルロール14bとを備え、各ロール12,13,14a,14bの中心軸が同一平面上に並ぶように配置された構成としてもよい。
【0084】
すなわち、このホットプレス装置10の変形例は、図示を省略するフレームに、第1の金属ロール12と、第2のフレキシブルロール14bと、第1のフレキシブルロール14aと、第2の金属ロール13とが順に積み重ねられた状態で支持された構造を有している。
【0085】
そして、このホットプレス装置10の変形例では、電極材原反11を第1のフレキシブルロール14aと第2のフレキシブルロール14bとの間で挟み込み、その間を通過させることで、電極材原反11に対して加熱しながら加圧処理を行う。
【0086】
なお、このホットプレス装置10の変形例では、第2のフレキシブルロール14bが追加された以外は、上述したプレス装置10と同じ構成を有していることから、以下、各部の構成説明を省略するものとする。
【0087】
以上のように、このホットプレス装置10の変形例を用いた加圧処理工程では、第2の金属ロール13にベンディング現象が発生した場合でも、第1のフレキシブルロール14aの弾性変形により第2の金属ロール13の撓みを吸収すると共に、第2のフレキシブルロール14bの弾性変形により第1の金属ロール12の撓みを吸収して均質な加圧処理を行うことが可能である。また、電極材原反11を加圧する際に、第1のフレキシブルロール14aおよび第2のフレキシブルロール14bが弾性変形することによって、これら第1のフレキシブルロール14aと第2のフレキシブルロール14bとの接触幅に起因する圧力分布のバラツキを抑制し、電極材原反11の幅方向に対して均質な加圧処理を行うことが可能である。
【0088】
したがって、この加圧処理工程では、電極材原反11に対する均質な加圧処理を行うことが可能なことから、加圧後の活物質層の厚みのバラツキを抑制し、活物質層の高密度化、均質化による二次電池の電池特性の向上を図ることが可能である。
【0089】
また、第1のフレキシブルロール14aおよび第2のフレキシブルロール14b内に設けられた熱媒の流路によって、第1のフレキシブルロール14aおよび第2のフレキシブルロール14bのそれぞれの外周面部の温度差がほとんどない状態とすることができる。これによって、加圧用のロールに発生するサーマルクラウン現象を抑制でき、加圧後の電極材原反11の幅方向における厚みのバラツキをさらに少なくすることができる。
【0090】
また、電極材原反11を圧延の際に、ロールの幅方向に加わる圧力を限りなく均等にすることができることや、第1のフレキシブルロール14aおよび第2のフレキシブルロール14aが中空構造を利用して熱媒の流路を形成していることから、低圧で十分な加圧が行える為、製造コストを低減できると共に、加圧処理時の作業性、例えば製造装置自体の操作性や加圧処理時の生産性を向上できる。
【0091】
なお、この変形例においても、第2の金属ロール13と第1のフレキシブルロール14aとの間および/または第1の金属ロール12と第2のフレキシブルロール14bとの間に、上述した弾性ロール15を配置すれば、加圧処理時に弾性ロール15の外周面部が弾性変形することによって、ベンディング現象による第2の金属ロール13および/または第1の金属ロール12の変形を吸収し、より電極材原反11の幅方向における厚みのバラツキを抑えることができる。
【0092】
また、上述したホットプレス装置10は、第1の金属ロール12、第2の金属ロール13およびフレキシブルロール14によって構成し、上述したホットプレス装置10の変形例は、第1の金属ロール12、第2の金属ロール13、第1のフレキシブルロール14aおよび第2のフレキシブルロール14bによって構成したが、必要に応じて電極材原反11をガイドするガイドロールや、加圧後の電極材原反11をバックアップするバックアップロールを設け、安定した加圧処理が行える構成としてもよい。
【0093】
ここで、上述したフレキシブルロール14を用いて加圧処理工程を行い、実際に二次電池を作製した実施例について説明する。また、実施例と比較するために作製した比較例について説明する。先ず、以下に示すような実施例1および比較例1の正極材を作製した。
【0094】
<実施例1>
幅広のアルミニウム箔原反にリチウムイオン二次電池用の正極材塗料を正極活物質層の塗布厚が230μmとなるように塗布した。その後、上述した図8に示すホットプレス装置10の変形例を用いて、その正極活物質層が形成されたアルミニウム箔原反に対して加圧処理を行い、所定幅に裁断して正極材を作製した。このとき、各ロール12,13,14a,14b間に加圧される圧力は、線圧として500kg/cmであり、第1のフレキシブルロール14aと第2のフレキシブルロール14bとの間に、電極材原反11として、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔原反を通過させて加圧を行った。
【0095】
<比較例1>
実施例1における第1のフレキシブルロール14aおよび第2のフレキシブルロール14bに換えて、図9に示すフレキシブルロール40を使用して加圧処理を行った以外は、正極材塗料の組成、活物質層の塗布厚、加圧時のニップ圧力等、実施例1と同一条件下で正極材を作製した。なお、図9に示すフレキシブルロール40は、上述した特許文献1で説明されている、熱媒がロール内で折り返されず一方向に向かって循環されるものであり、ここでは説明を省略する。
【0096】
これら実施例1および比較例1の正極材について、ロールの幅方向における表面温度の測定を行った。その結果を図10に示す。
【0097】
図10からも明らかなように、比較例1として使用したフレキシブルロール40は、幅方向における表面の温度変化のバラツキが大きくなっている。具体的には、最も温度が高い左端寄りの中央部が約110℃となり、最も温度が低い右端部が約105℃となり、幅方向において最大5℃程度の温度差が生じている。
【0098】
これに対し、実施例1として使用した、上述したホットプレス装置10の変形例における第1のフレキシブルロール14aおよび第2のフレキシブルロール14bは、幅方向における表面の温度変化のバラツキが小さくなっている。具体的には、最も温度が高い中央部が約110℃となり、最も温度が低い右端部が約109℃となり、幅方向において最大1℃程度の温度差に抑えられている。
【0099】
これら実施例1および比較例1の正極材について、幅方向における厚みのバラツキの評価を行った。その結果を図11に示す。
【0100】
図11からも明らかなように、フレキシブルロール40を使用して加圧処理を行った比較例1の正極材は、加圧側のフレキシブルロール40においてサーマルクラウン現象が生じたため、中央部と両端部との厚みのバラツキが大きくなっている。具体的には、最も厚い中央部が約167.5μmとなり、最も薄い右端部が約165μmとなり、最大2.5μm程度の厚みの差が中央部と端部とで生じている。
【0101】
これに対し、上述したホットプレス装置10の変形例を用いて加圧処理を行った実施例1の正極材は、サーマルクラウン現象が生じていないために、中央部と両端部との厚みのバラツキが小さくなっている。具体的には、実施例1においては、最も厚い中央部が約167μmとなり、最も薄い両端部が約166μmとなり、中央部と端部との厚みのバラツキが1μm以下に抑えられている。
【0102】
なお、図10および図11に示した結果は、正極材のものであるが、負極材においても同様の結果が得られた。
【0103】
以上のことから、フレキシブルロール14を用いて加圧処理を行うことによって、電極材の幅方向にける厚みのバラツキを抑制できることが明らかとなった。
【0104】
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述した一実施形態では、電解液を使用するリチウムイオン二次電池に電極材原反11を適用するとしたが、これに限らず、固形またはゲル状の電解質を使用するポリマー電池等、他の電極材原反を有する電池に適用することができる。
【0105】
さらに、二次電池の製造に限らず、弾性作用を有するプレスロールで、しかも加熱できる構造のものを使用する類似の産業分野にも活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】この発明の実施形態を適用可能な二次電池の構成の一例を示す図である。
【図2】ロール間の圧力を説明するための図である。
【図3】一実施形態によるホットプレス装置の構成の一例を示す概略図である。
【図4】弾性ロールの構成の一例を示す断面図である。
【図5】一実施形態によるフレキシブルロールの構成の一例を示す断面図である。
【図6】フレキシブルロールのバネ定数を説明するための図である。
【図7】フレキシブルロールの変形状態を説明するための図である。
【図8】一実施形態によるホットプレス装置の構成の他の例を示す概略図である。
【図9】熱媒の流路が一方向に向かって形成されているフレキシブルロールの構成の一例を示す断面図である。
【図10】フレキシブルロールの幅方向の表面温度を測定した結果を示す図である。
【図11】正極材の幅方向の厚みを測定した結果を示す図である。
【図12】従来の電極材原反の加圧処理を説明するための図である。
【図13】ベンディング現象を説明するための図である。
【図14】ベンディング現象への対処を説明するための図である。
【符号の説明】
【0107】
1・・・二次電池
2・・・正極材
3・・・負極材
10・・・ホットプレス装置
11・・・電極材原反
12・・・第1の金属ロール
13・・・第2の金属ロール
14・・・フレキシブルロール
14a・・・第1のフレキシブルロール
14b・・・第2のフレキシブルロール
15・・・弾性ロール
15a・・・第1の弾性ロール
15b・・・第2の弾性ロール
18・・・ロールシャフト
19・・・外筒
20・・・内周側スパイラルリング
21・・・外周側スパイラルリング
22a,22b・・・管路
23,24・・・溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ロールと圧接されて、外周面部と上記金属ロールの外周面部との間に電極材原反を挟入して上記電極材原反を加圧するためのプレスロールであって、
芯材とロールの外周面部との間に上記外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、上記外周面部の温度が均一となるように上記流路が折り返されていることを特徴とするプレスロール。
【請求項2】
請求項1において、
上記流路は、上記芯材の外周面に螺旋状に設けられていることを特徴とするプレスロール。
【請求項3】
請求項1において、
上記ロールは、バネ定数が50〜350kg/mmの金属からなることを特徴とするプレスロール。
【請求項4】
請求項1において、
上記芯材の一端および他端は、それぞれ上記流路と通じており、上記熱媒は、上記芯材の一端から導入され、上記流路を通って、上記芯材の他端から導出されることを特徴とするプレスロール。
【請求項5】
請求項4において、
上記芯材の一端から導入された熱媒は、上記芯材の他端側で上記流路に導入されて折り返され、さらに、上記芯材の一端側で折り返されて、上記芯材の他端側で上記芯材に導出されて上記芯材の他端から導出されることを特徴とするプレスロール。
【請求項6】
電極材原反に対して加圧処理を行う二次電池の製造装置において、
芯材とロールの外周面部との間に上記外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、上記外周面部の温度が均一となるように上記流路が折り返されているプレスロールと、
上記プレスロールと隣接して配置された金属ロールと、
上記プレスロールを上記金属ロールに対して圧接する圧接手段とを有し、
上記プレスロールと上記金属ロールとの間に電極材原反を狭入して上記電極材原反を圧延することを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項7】
請求項6において、
上記流路は、上記芯材の外周面に螺旋状に設けられていることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項8】
請求項6において、
上記プレスロールは、バネ定数が50〜350kg/mmの金属からなることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項9】
請求項6において、
上記芯材の一端および他端は、それぞれ上記流路と通じており、上記熱媒は、上記芯材の一端から導入され、上記流路を通って、上記芯材の他端から導出されることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項10】
請求項9において、
上記芯材の一端から導入された熱媒は、上記芯材の他端側で上記流路に導入されて折り返され、さらに、上記芯材の一端側で折り返されて、上記芯材の他端側で上記芯材に導出されて上記芯材の他端から導出されることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項11】
請求項6において、
さらに、上記金属ロールの外周面部を加熱する加熱機構を有することを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項12】
請求項6において、
上記金属ロールが上記プレスロールと同じ構造であることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項13】
電極材原反に対して加圧処理を行う加圧工程を有する二次電池の製造方法において、
芯材とロールの外周面部との間に上記外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、上記外周面部の温度が均一となるように上記流路が折り返されているプレスロールを、上記プレスロールと隣接して配置された金属ロールに圧接し、上記プレスロールと上記金属ロールとの間に電極材原反を狭入して上記電極材原反を圧延することを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項14】
芯材とロールの外周面部との間に上記外周面部を弾性変形可能とすると共に熱媒が循環される流路を形成する中空構造を有し、上記外周面部の温度が均一となるように上記流路が折り返されているプレスロールを、上記プレスロールと隣接して配置された金属ロールに圧接し、上記プレスロールと上記金属ロールとの間に狭入することで圧延された電極材原反から所定幅に裁断されて帯状の正極材および負極材が作製され、上記正極材および上記負極材に形成された活物質層の幅方向における厚みのバラツキが1μm以下であることを特徴とする二次電池。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−86057(P2006−86057A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270991(P2004−270991)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】