説明

プレス型の製造方法及びそれに用いる硬質粒子分散シート

【課題】プレス成形に必要な雌雄型間における隙間を正確に調整できるプレス型の製造方法およびシートを提供すること。
【解決手段】完成パネルを金属板からプレス成形するための雌雄型を製造する方法において、前記雌雄型のいずれか一方をなす第1の型21の表面に、完成パネル45の肉厚S1と略同じ粒子径を含有する硬質粒子分散シート10を積層し、さらに、その上に型枠23を設置し、この型枠内に型材料を注入して雌雄型の他方をなす第2の型24を製造するプレス型の製造方法であって、前記硬質粒子分散シートは、平面状に分散させた硬質粒子11の間に軟質材12を充填して該硬質粒子を結合させたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板をプレス成形する際に使用する雌雄型の製造方法及びそれに用いる硬質粒子分散シートに関し、特に完成パネルの精度を損なうことなく製造するための簡易なプレス型の製造方法及び硬質粒子分散シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、完成パネルを金属板からプレス成形するためのプレス型の製造方法において、大量生産用の量産型と異なる比較的小ロットの生産に適した簡易なプレス型の製造は、図4のようにして行っていた。
まず、雌雄型のいずれか一方をなす第1の型(下型)41を製作する。次に、第1の型41の表面にシートワックス42を完成パネル49の肉厚S1と同じ厚さに貼り付け、さらにその上に型枠43を置く。この型枠43内に金属粉入りの高強度樹脂等の適宜型材料を注入して、第2の型(上型)44を製造する。
このようにして得られた第1の型41、第2の型44を上下に向かい合わせ、機械加工によりそれぞれの合わせ部における隙間調節を行い、プレス型を完成させる。
このようなプレス型の製造方法として、特開昭63−268524号公報に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−268524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたようなプレス型製造においては、シートワックス42は上型となる第2の型44の重みで薄く変形した厚み(S2)となり、その肉厚にもバラツキが生じ、完成パネル45と同じ厚み(S1)の雌雄型間における隙間を正確に形成できない。
したがって、その後の隙間調整が必須となり、この隙間調整も手作業による加工のため、熟練と手間がかかり、かつプレス機械を使用するため、この分の費用もかさむことになる。
本発明は、従来のシートワックスを用いたプレス型の製造方法の問題点を解決した、プレス成形に必要な雌雄型間における隙間を正確に調整できるプレス型の製造方法を提供することを目的をする。
また、本発明の他の課題は、プレス成形に必要な雌雄型間における隙間を正確に調整できるシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明のプレス型の製造方法は、完成パネルを金属板からプレス成形するための雌雄型を製造する方法において、
前記雌雄型のいずれか一方をなす第1の型の表面に、完成パネルの肉厚と略同じ粒子径を含有する硬質粒子分散シートを積層し、さらに、その上に型枠を設置し、
この型枠内に型材料を注入して雌雄型の他方をなす第2の型を製造するプレス型の製造方法であって、前記硬質粒子分散シートは、平面状に分散させた硬質粒子の間に軟質材を充填して該硬質粒子を結合させたものであることを特徴とする。
(2)本発明のプレス型の製造方法は、前記(1)において、前記硬質粒子が、ガラス、セラミックス、金属、樹脂のいずれか、又はこれら混合したものであることを特徴とする。
(3)本発明のプレス型の製造方法は、前記(1)又は(2)において、前記軟質材が、ポリウレタン樹脂組成物であることを特徴とする。
(4)本発明の硬質粒子分散シートは、金属板から完成パネルをプレス成形するための雌雄型を製造するにあたり、前記雌雄型のいずれか一方をなす第1の型の表面に積層し、さらに、その上に型枠を設置し、この型枠内に型材料を注入して雌雄型の他方をなす第2の型を製造するプレス型の製造に用いるシートであって、前記シートは、平面状に分散させた硬質粒子の間に軟質材を充填して該硬質粒子を結合させたものであり、該硬質粒子は完成パネルの肉厚と略同じ粒子径のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上型となる第2の型の重みで薄く変形することはないので、従来のシートワックスでは得られなかった、プレス成形に必要な雌雄型間における隙間を正確に調整できる。
したがって、手間のかかるその後の隙間調整工程を省略もしくは軽減できるから、全体として型の製造工程を短縮し、高度な熟練を要さずに簡単かつ安価にプレス型を製造できる。
また、小ロット製造の簡易型としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のプレス型の製造方法を説明する模式的説明図である。
【図2】本発明のプレス型の製造方法において用いる硬質粒子分散シートの概略平面図である。
【図3】本発明のプレス型の製造方法において用いる硬質粒子分散シートの概略断面図である。
【図4】従来のプレス型の製造方法を説明する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のプレス型の製造方法を説明する模式的説明図であり、
図2は本発明のプレス型の製造方法において用いる硬質粒子分散シートの概略平面図であり、図3はその概略断面図である。
図1〜図3において、10は硬質粒子分散シート、11は硬質粒子分散シートを構成する硬質粒子、12は硬質粒子の隙間に充填された軟質材である。
硬質粒子分散シート10は、枠体13に囲われた内部に、硬質粒子11を平面方向に密に配列させ、その隙間に軟質材を充填して硬質粒子11と一体化させた後、枠体13を取り除いてシート状としたものである。
硬質粒子11は、互いに接触状態にあるか、隣接するものどうしが極めて近い距離にある。
このことにより、硬質粒子分散シート10の上下方向に荷重が作用しても、硬質粒子11が平面方向に分散することなく、上型製造時の上型の荷重を支えることができ、硬質粒子分散シート10の圧縮変形することなく、下型と上型の間隙は硬質粒子分散シート10の厚みのまま保たれる。
【0009】
軟質材12としては、型製造時に型の表面の凹凸に追従できるような軟質状態の素材であればよく、樹脂、ワックス、シリコン、ゴム、粘土、アスファルト等が挙げられる。中でも、硬質粒子との接着性を有するポリウレタン樹脂組成物を用いることが好ましい。
ポリウレタン樹脂組成物は、樹脂層形成原料として、ポリオールおよび有機ポリイソシアネートを、それぞれ常温、もしくは加温した状態で、これら2成分を混合したのち真空下で脱泡して、常温〜120℃で、2日〜2時間ウレタン化反応を起こさせて、軟質の樹脂組成物を得る。
この軟質のポリウレタン樹脂組成物をシート形成原料として用いる場合、共に液体であるポリオールと有機ポリイソシアネートを混合した液体を、枠で囲われて平面状一面(多段に積層されたものではなく一段のもの)に配列された硬質粒子配列枠内に注入して、平面方向に密に配列された硬質粒子の空隙を充填する(図2、図3参照)。なお、硬質粒子配列枠の下側に底がある場合はベースシート無しの状態でよいが、底が無い場合はベースシート有りの状態で、硬質粒子及び軟質材を充填する。その後、オーブン中で加熱して反応促進させて硬化させて硬質粒子分散シート10とする。
このとき、配列された硬質粒子11の上面以上に充填しないようにする。すなわち、硬質粒子分散シート10の厚みは、硬質粒子11の直径よりも厚くならないようにする。
このことにより、完成パネルの肉厚と略同じ粒子径を含有する硬質粒子分散シートとすることができるからである。
【0010】
硬質粒子11としては、軟質材12の硬さを下回らない限り如何なる材料も用いることが可能であるが、適度な硬さを有し、安価であり、また、粒子の形状や径を揃えて製造することが容易であるガラスビーズ等の球体を用いることが好ましい。
また、その他の硬質粒子としては、鋼球などの金属球、樹脂球、セラミックス球なども挙げられる。
硬質粒子の粒子径は、適用するシートの厚みにもよるが、0.3〜4.0mmのものが好ましく適用できる。より好ましくは1.0〜3.0mmである。
【0011】
次に、本発明のプレス型の製造方法を図1を用いてさらに詳細に説明する。
まず、雌雄型のいずれか一方をなす第1の型(下型)21を製作する。次に、図1(a)に示すように、第1の型21の表面に、完成パネル45の肉厚S1と同じ厚さの硬質粒子分散シート10をに貼り付け、その上に型枠23を置く(図1(b))。
この型枠23内の硬質粒子分散シート10上に、高強度硬質ウレタン樹脂などの高強度樹脂素材を注入して、第2の型(上型)24を製造する(図1(b))。なお、高強度硬質ウレタン樹脂などの高強度樹脂素材の代わりに、樹脂素材に金属粉を混ぜたものを使用することもできる。
このようにして得られた第1の型21、第2の型24を上下に向かい合わせ、プレス型を完成させる(図1(c))。
本発明のプレス型製造方法においては、硬質粒子分散シート10は硬質粒子を含有するので、上型となる第2の型24の重みで薄く変形することなく、完成パネル45と同じ厚み(S1)を保ったまま、その肉厚にもバラツキがなく、完成パネル45と同じ厚み(S1)の雌雄型間における隙間(S2)を正確に形成できる。
したがって、その後の隙間調整が不要となり、熟練と手間が不要でありこの分の費用も削減できる。
【0012】
以上、本発明に係る硬質粒子分散含有シートを用いたプレス型の製造方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、硬質粒子分散含有シートに含有させる硬質粒子の数や大きさは特に限定されるものではない。
さらに、本発明に係る硬質粒子分散含有シートを製造する方法も実施形態で説明した方法に限定されない。
なお、本発明に係る硬質粒子分散含有シートは、建物内部におかれるコンピュータ、精密測定機器、陶磁器などの美術品、家電機器、食器棚、家具、建屋外の墓石、石碑、灯籠などの敷き板として好適に用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上に説明したように、本発明の硬質粒子分散シートを用いたプレス型の製造方法は、プレス型製造における工程を削減して製造期間を短縮できるとともに、熟練を要さずにかつ手間をかけずに正確な型間隙を有する雄雌のプレス型を形成でき、その後の間隙調整を不要もしくは軽減できるので、型製造を容易かつ安価にすることができ、小ロット製造のプレス型の製造方法として、産業上の利用可能性は極めて高い。
【符号の説明】
【0014】
10:硬質粒子分散シート
11:硬質粒子
12:軟質材
13:枠体
21:第1の型(下型)
23:型枠
24:第2の型(上型)
45:完成パネル
S1:完成パネルの肉厚
S2:雌雄型間における隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完成パネルを金属板からプレス成形するための雌雄型を製造する方法において、
前記雌雄型のいずれか一方をなす第1の型の表面に、
完成パネルの肉厚と略同じ粒子径を含有する硬質粒子分散シートを積層し、
さらに、その上に型枠を設置し、
この型枠内に型材料を注入して雌雄型の他方をなす第2の型を製造するプレス型の製造方法であって、
前記硬質粒子分散シートは、平面状に分散させた硬質粒子の間に軟質材を充填して該硬質粒子を結合させたものであることを特徴とするプレス型の製造方法。
【請求項2】
前記硬質粒子が、ガラス、セラミックス、金属、樹脂のいずれか、又はこれら混合したものであることを特徴とする請求項1に記載のプレス型の製造方法。
【請求項3】
前記軟質材が、ポリウレタン樹脂組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス型の製造方法。
【請求項4】
金属板から完成パネルをプレス成形するための雌雄型を製造するにあたり、
前記雌雄型のいずれか一方をなす第1の型の表面に積層し、さらに、その上に型枠を設置し、
この型枠内に型材料を注入して雌雄型の他方をなす第2の型を製造するプレス型の製造に用いるシートであって、
前記シートは、平面状に分散させた硬質粒子の間に軟質材を充填して該硬質粒子を結合させたものであり、
該硬質粒子は完成パネルの肉厚と略同じ粒子径のものであることを特徴とする硬質粒子分散シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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