プレス成形のための加熱装置および方法
【課題】 プレス成形前の被加工材の全体領域を、その平面形状にかかわらず、短時間に均一温度に加熱する。
【解決手段】 直方体の2枚の加熱プレート10、12が、互いに近づいたり遠ざかったりできるようにして、対向して配置される。被加工材14のプレス成形直前に、電極20A、20B、22A、22Bを通じて加熱プレート10、12のそれぞれに大電流が流され、加熱プレート10、12が、被加工材14の加熱予定温度より50℃から100℃程度高い温度まで均一に加熱される。続いて、加熱プレート10、12の間に被加工材14が置かれ、加熱プレート10、12が近づいて被加工材14の全領域の両面に密着してこれをサンドイッチし、被加工材14が変形しない程度の小さいか圧力をかけて、被加工材14を一定時間加熱する。誘導加熱または電熱線ヒータ加熱などで加熱プレート10、12を加熱してもよい。
【解決手段】 直方体の2枚の加熱プレート10、12が、互いに近づいたり遠ざかったりできるようにして、対向して配置される。被加工材14のプレス成形直前に、電極20A、20B、22A、22Bを通じて加熱プレート10、12のそれぞれに大電流が流され、加熱プレート10、12が、被加工材14の加熱予定温度より50℃から100℃程度高い温度まで均一に加熱される。続いて、加熱プレート10、12の間に被加工材14が置かれ、加熱プレート10、12が近づいて被加工材14の全領域の両面に密着してこれをサンドイッチし、被加工材14が変形しない程度の小さいか圧力をかけて、被加工材14を一定時間加熱する。誘導加熱または電熱線ヒータ加熱などで加熱プレート10、12を加熱してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形前に被加工材を加熱するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電製品および電子部品などに多用される高抗張力鋼、マグネシウム合金、チタン合金またはアルミニウムなどの材質の被加工材のプレス成形では、温間プレス成形または熱間プレス成形(以下、「温/熱間プレス成形」という)法が採用されることが多い。すなわち、被加工材の全体が成形に適した高温まで加熱され、その高温の被加工材に対しプレス加工が行なわれる。従来、温/熱間プレス成形のための被加工材の加熱方法としては、電気炉またはガス炉などの炉内で複数の被加工材を加熱するバッチ炉加熱法が、広く採用されている。しかし、炉中での被加工材の酸化を防止するために、不活性ガス炉または真空炉を用いる必要があり、設備コストが高い。また、バッチ炉加熱は、量産ラインでのインライン処理が不可能である。また、加熱時間として数分から数十分がかかる場合が多く、秒オーダなどの短時間に被加工材を所望温度まで加熱することは難しい。
【0003】
そこで、インラインで用いることができ、かつ、秒オーダの短時間に被加工材を所望温度まで加熱できる加熱方法として、被加工材に電流を流す通電加熱法が特許文献1に開示されている。この方法は、被加工材の複数箇所に電極を接触させ、それらの電極から直接被加工材に大電流を流すことで、被加工材を加熱するものである。
【特許文献1】特開2005−1316565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の通電加熱の方法は、インラインで使用できる利点があるものの、被加工材の平面形状に関わらず被加工材の所望領域を加熱することが難しいという問題がある。この問題は、次の2つの側面に分けられる。
【0005】
第1の側面は、被加工材の平面形状に関わらず、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱することが難しいという問題である。一般に温/熱間プレス成形では、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱することが要求される。被加工材が長方形の平面形状をもつ板である場合には、上述した従来の通電加熱の方法で、被加工材の全体領域を均一な温度に加熱することができる。しかし、被加工材が、長方形以外の平面形状をもつとか、内側に穴が開いているというような異形形状または複雑形状の板である場合、従来の通電加熱の方法では、被加工材の電流密度が不均一となり、被加工材の全体領域を均一な温度に加熱することが困難であり、また、通電中にスパークが発生したりもする。
【0006】
第2の側面は、従来の通電加熱の方法では、被加工材の特定の部分領域だけを選択的に加熱するということができないことである。しかし、もし、被加工材の所望部分領域だけを選択的に加熱することが可能であれば、例えば以下のような新たな加工方法の可能性が開けてくる。すなわち、高抗張力鋼のように冷間プレス成形が困難な材料は、一般に温/熱間プレス法で成形される。しかし、冷間プレス成形において、被加工材の特定部分領域だけを選択的に加熱してその特定部分領域だけを選択的に塑性変形させることができるならば、高抗張力鋼のような冷間成形が困難な材料に対しても、順送加工法による冷間プレス成形が採用できるようになる。あるいは、温/熱間プレス成形においても、局部的なエンボス加工、局部抜き打ち、あるいは局部絞り加工などが一層容易に行なえるようになる。
【0007】
さらに、従来の通電加熱の問題点として、電気抵抗の低い材質の被加工材には適用が困難であるという点もある。
【0008】
従って、本発明の目的は、プレス成形のための被加工材の加熱装置および方法において、インラインで使用でき、かつ、被加工材の所望領域を加熱できるようにすることにある。
【0009】
本発明の別の目的は、被加工材の平面形状に関わらず、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱できるようにすることにある。
【0010】
本発明のまた別の目的は、被加工材の特定の部分領域を選択的に加熱できるようにすることにある。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、電気抵抗の低い材質の被加工材も加熱できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面に従う、プレス成形のための被加工材の加熱装置は、プレス成形前の被加工材を相互間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、少なくとも2枚の加熱プレートと、それらの加熱プレートの各々を、少なくとも被加工材に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱手段と、上記加熱手段を制御する制御手段とを備える。そして、加熱プレートが加熱され且つ被加工材が加熱プレート間に挿入された場合、加熱プレートの一方が他方に近づいて、被加工材の所定領域の両面に密着するように被加工材をサンドイッチする。そして、加熱プレートが被加工材をサンドイッチした状態が、所定時間維持される。
【0013】
この加熱装置によると、少なくとも2枚の加熱プレートが、それぞれ、その少なくとも被加工材に作用する領域にわたり(例えば全体領域にわたり)、ほぼ均一の温度に加熱され、そして、プレス成形前の被加工材を両側からサンドイッチする。被加工材をサンドイッチしたとき、加熱プレートは、被加工材の所定領域の両面に密着し、そして、このサンドイッチ状態が所定時間維持される。結果として、被加工材の平面形状にかかわらず、被加工材の所定領域を加熱することができる。また、被加工材が電気抵抗率の低い材質であっても、被加工材を良好に加熱することができる。また、この加熱装置は、生産ラインに(典型的にはプレス成形機械の直前に)組み込まれてインラインで使用することができる。被加工材をサンドイッチしているときには、被加工材を変形させない程度の加圧力を被加工材に加えて、密着状態を保つことが好ましい。それにより、被加工材の表面の酸化も抑制される。
【0014】
一つの実施形態では、加熱プレートは、被加工材をサンドイッチしたときに、その被加工材の全体領域の両面に密着する。その結果、被加工材の平面形状にかかわらず、被加工材の全体領域をほぼ均一の温度に加熱することができる。
【0015】
別の実施形態では、加熱プレートは、被加工材をサンドイッチしたときに、その被加工材の特定の部分領域の両面に密着する。その結果、被加工材の特定部分領域を選択的に加熱することができる。
【0016】
加熱プレートの加熱方法には、加熱プレート自体に電流を流す通電加熱、加熱プレート自体に誘導電界を加える誘導加熱、或は、加熱プレートに埋め込まれた電熱線ヒータにより加熱する方法などが採用できる。
【0017】
一つの実施形態では、加熱プレートの各々は直方体の形状であり、そして、通電加熱または誘導加熱の方法により加熱されるようになっている。加熱プレートが直方体であるために、通電加熱または誘導加熱の方法で、加熱プレートの少なくとも被加工材に作用する領域(例えば全体領域)を均一温度に加熱することができる。加えて、通電加熱または誘導加熱の方法ならば、加熱プレートの上記領域に大パワーを入力できるので、加熱プレートを高速に加熱することができる。その結果、被加工材の所望領域を短時間に加熱することができる。
【0018】
本発明の別の側面に従う、プレス成形のための被加工材の加熱方法は、少なくとも2枚の加熱プレートの各々を、少なくとも被加工材に作用する領域にわたり(例えば全体領域にわたり)、ほぼ均一温度に加熱する加熱ステップと、それらの加熱プレートの間に、プレス成形前の被加工材を挿入する挿入ステップと、この挿入ステップ後に加熱プレートの一方を他方に近づけて、それらの加熱プレートが被加工材の所望領域の両面に密着するようにして被加工材をサンドイッチするサンドイッチステップと、加熱プレートが被加工材をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップとを有する。被加工材をサンドイッチしているときには、被加工材を変形させない程度の加圧力を被加工材に加えて、密着状態を保つことが好ましい。
【0019】
この方法によると、被加工材の平面形状にかかわらず、被加工材の所定領域を加熱することができる。また、被加工材が電気抵抗率の低い材質であっても、被加工材を良好に加熱することができる。また、この加熱方法は、生産ラインにおいてインラインで(典型的にはプレス成形工程の直前で)使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一つの側面に従えば、プレス成形前の被加工材の所望領域を加熱することができ、しかも、インラインで使用することができる。特に、加熱プレートが被加工材の全体領域の両面に密着するようにした場合には、被加工材の平面形状に関わらず、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱することができる。他方、加熱プレートが被加工材の特定の部分領域の両面に密着するようにした場合には、被加工材の特定の部分領域を選択的に加熱することができる。
【0021】
また、本発明によれば、電気抵抗の低い材質の被加工材も加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるプレス成形用の被加工材の加熱装置の要部の構成を示す。図2は、この加熱装置の全体の構成を示す。
【0023】
図1に示すように、それぞれ直方体である(平面形状が長方形である)2枚の加熱プレート10、12(上加熱プレート10と下加熱プレート12)が、それぞれの主面(最も広い面であり、具体的には、上加熱プレート10の下面と下加熱プレート12の上面)が平行に向かい合うようにして、上下に配置される。図2に示すように、2枚の加熱プレート10、12は、この加熱装置用のプレス機械(被加工材14のプレス成形用のプレス機械とは別のもの)40に組み込まれる。2枚の加熱プレート10、12は、プレス機械40により動かされて、一方が他方に近づいたり遠ざかったりする(つまり、加熱プレート10、12間の空間が狭くなったり広くなったりする)ようになっている。
【0024】
この加熱装置での加熱対象となる被加工材14は、典型的には、広い母板材から予め切り出された個別の板片であり、その平面形状は多種多様である。このような被加工材14が、プレス成形前の平板状であるときに、被加工材搬送装置(図示せず)のフィンガー16A、16Bによって把持されて、下加熱プレート12の上に置かれるようになっている。また、加熱プレート10、12による被加工材14の加熱が終わると、下加熱プレート12上の被加工材14が、フィンガー16A、16Bによって再び把持されて、外へ取り出されたりするようになっている。被加工材14に比べて、加熱プレート10、12は、平面サイズにおいて明らかに大きく、よって、後述するように加熱プレート10、12が被加工材14をサンドイッチしたときには、加熱プレート10、12が被加工材14の実質的に全周囲を包囲することになる。
【0025】
加熱プレート10、12の加熱方法には、通電加熱、誘導加熱あるいは電熱線ヒータによる加熱などの方法を採用することができるが、この実施形態では、一例として通電加熱法を採用する。
【0026】
上加熱プレート10の向かい合う両側面(4つの側面のうち、例えば面積の小さい方の2つの側面)に、それぞれ、通電加熱用の大電流を外部から上加熱プレート10に流すための電極20A、20Bが接合されている。同様に、下加熱プレート12の向かい合う両側面の全域にも、それぞれ、電極22A、22Bが接合されている。これらの電極20A、20B、22A、22Bの各々は、それが設けられた加熱プレート10、12の各側面の全域をカバーしている。これらの電極20A、20B、22A、22Bの頭部24A、24B、26A、26Bには、図2に示すように、電源回路60からの加熱用電流を流す電流線62、64が接続される。
【0027】
いずれの加熱プレート10、12においても、加熱用電流は一方の側の電極20A、22Aから加熱プレート10、12内に入り、加熱プレート10、12内をその断面全域にわたり均等な電流密度で流れ、そして、反対側の電極20B、22Bへ流れ出ることになる。よって、いずれの加熱プレート10、12も、その全体領域がほぼ均等な温度に加熱されることになる。
【0028】
加熱プレート10、12の材質は、通電によりジュール熱を発生し易い、或る程度に電気抵抗率の高い金属である。一方、電極20A、20B、22A、22Bは、加熱プレート10、12よりも電気抵抗率が低く、大電流が流れてもあまり加熱されない金属である。加熱プレート10、12と電極20A、20B、22A、22Bとの接合には、接合面での電気抵抗を無視できる程度に小さく出来る方法、例えば、ボルトで強固に締結して押し付ける圧着法や、溶接のような冶金接合法などを採用することができる。
【0029】
電極20A、20B、22A、22Bには、また、図2に示す支柱46A、46Bを通すための貫通穴28A、28B、30A、30Bがそれぞれ穿たれている。加熱プレート10、12が熱膨張しても加熱プレート10、12が変形しないように、貫通穴28A、28B、30A、30Bの内径は支柱46A、46Bの外径よりも或る程度大きくて、貫通穴28A、28B、30A、30Bと支柱46A、46B間には、加熱プレート10、12の熱膨張を吸収するのに十分な大きさの隙間ができるようになっている。
【0030】
図2に示すように、加熱装置用のプレス機械40のベース42の上面に、断熱/絶縁板52が敷かれる。また、ベース42の上面には、加熱プレート10、12の位置を制御するためのガイド部材、例えば、絶縁材料製の2本の支柱46A、46Bが鉛直方向に立設される。下加熱プレート12が断熱/絶縁板52上に置かれ、下加熱プレート12の両端の電極22A、22Bの貫通穴30A、39Bに、支柱46A、46Bがそれぞれ通される。断熱/絶縁板52は、下加熱プレート12とベース42との間を断熱し、また、電気的に絶縁する。
【0031】
下加熱プレート12の上方に、上加熱プレート10が配置され、上加熱プレート10の両端の電極20A、20Bの貫通穴28A、28Bに、支柱46A、46Bがそれぞれ通される。上加熱プレート10は、支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できる。下加熱プレート12と上加熱プレート10との間に、上加熱プレート10を上方に押し上げるためお押し上げ部材、例えば、コイル状のバネ48A、48Bが配置される。これらのバネ48A、48Bは、支柱46A、46Bに嵌装される。支柱46A、46Bの上端には、ストッパ50A、50Bが取り付けられる。ストッパ50A、50Bは上加熱プレート10のこれ以上の上昇を止めて、上加熱プレート10が支柱46A、46Bから抜け落ちるのを防止する。
【0032】
図2に示すように、プレス機械40のスライド44は、上加熱プレート10の真上に位置する。スライド44の下面に断熱/絶縁板54が取り付けられる。図示のように、スライド44が上死点に位置するときには、スライド44は上加熱プレート10から離れ、上加熱プレート10はバネ48A、48Bの作用で図示の最高点に位置し、上加熱プレート10と下加熱プレート12の間には、そこに被加工材14を出し入れするための空間が大きく開いている。スライド44が下降していくと、まず、スライド44の下面の断熱/絶縁板54が上加熱プレート10の上面に接触し、そして、上加熱プレート10を押し下げていく。上加熱プレート10は、下加熱プレート12が平行な姿勢で下降していく。上加熱プレート10が一番低い位置まで来ると、上加熱プレート10と下加熱プレート12とが被加工材14の全体領域の両面に密着する。その後、スライド44が上昇すると、バネ48A、48Bの作用で、上加熱プレート10も上昇して、図示の最高点で止まる。断熱/絶縁板54は、上加熱プレート10とスライド44との間を断熱し、また、電気的に絶縁する。
【0033】
この加熱装置には、さらに、プレス機械40、電源回路60および被加工材搬送装置を制御するための制御装置66が設けられる。その制御装置66の制御により、以下に説明するような手順で、この加熱装置の動作が実行されるようになっている。
【0034】
図3は、この加熱装置によって行われる、被加工材14の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示す。
【0035】
図3に示すように、ステップS1で、上加熱プレート10が最高点に位置している。ステップS2で、上加熱プレート10と下加熱プレート12のそれぞれに大電流が供給されて、これらの加熱プレート10、12が所定の加熱温度にまで加熱される。ここで、加熱プレート10、12の加熱温度は、被加工材14の加熱予定温度(プレス成形に適した温度)よりも幾分高い、例えば50℃から100℃程度高い、温度である。被加工材14の加熱予定温度は生産ラインによって違うので、それに応じて加熱プレート10、12の加熱温度も違ってくる。例えば、900℃程度の温度で自動車用高抗張力鋼板を温間プレス成形するラインでは、加熱プレート10、12の加熱温度は、被加工材14の加熱予定温度900℃より幾分高い、例えば950℃程度に設定される。この他にも、本発明が適用できるラインには、例えば、650℃以上のマルテンサイト変態点以上の温度にて高抗張力鋼板をプレス成形するダイクエッチング方法を行なうライン、300℃程度の温度にてマグネシウム板材をプレス成形するライン、400℃以上の温度でアルミニウム板材をプレス成形するラインなど、様々な種類がある。いずれにしても、被加工材14の加熱予定温度に応じて加熱プレート10、12の加熱温度が定められる。ステップS2では、秒オーダ程度の非常に短時間で、加熱プレート10、12を上記加熱温度まで昇温させることができる。前述したように、各加熱プレート10、12は直方体であるため、全体的にほぼ均一に上記加熱温度まで加熱される。
【0036】
加熱プレート10、12が上記加熱温度まで昇温すると、直ちに、ステップS3で、プレ成形前の平板状の被加工材14が、フィンガー16A、16Bに把持されて下加熱プレート12上に置かれる。フィンガー16A、16Bは、被加工材14を下加熱プレート12上に置くと、直ちに加熱プレート10、12間から退避する。
【0037】
続いて直ちに、ステップS4で、スライド44が下降して上加熱プレート10を押し下げ、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチする。続いて、ステップS5で、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチした状態を、所定の加熱時間だけ維持する。その間、被加工材14が変形しない程度の微力な加圧力を上加熱プレート10に加える。この加圧により、両加熱プレート10、12の主面が被加工材14の全体領域の両面に密着して、両加熱プレート10、12からの熱が被加工材14に伝わって被加工材14を全体的に加熱するとともに、被加工材14の両面を空気から遮断して、被加工材14の両面の酸化を防止する。被加工材14は均一温度に加熱された加熱プレート10、12にサンドイッチされているため、被加工材14もその全体領域が均一な温度に加熱されることになる。
【0038】
上記サイドイッチ状態での加圧力の大きさは、被加工材14が変形しない程度であること、被加工材14の両面の酸化を防止できること、および、所望の短時間で被加工材14を所定の加熱温度まで加熱できること、などの観点から選ばれる。例えば、被加工材14が高抗張力鋼板であって、その加熱温度が900℃程度である場合、被加工材14は600kg/cm2以上の圧力を加えると変形してしまうため、サイドイッチ状態での加圧力は400〜500kg/cm2程度以下、例えば300kg/cm2程度が良いかも知れないし、あるいは、50kg/cm2程度でもよいかもしれない。実際、発明者らが実験してみたところ、100kg/cm2程度の微弱な加圧力であっても、950℃程度に予め加熱した両加熱プレート10、12でサンドイッチして、10秒以下の短い時間で、被加工材14である高抗張力鋼板を所定の加熱温度900℃程度にまで加熱することができた。
【0039】
サンドイッチ状態を所定時間維持した後、ステップS6で、スライド44が上昇して上加熱プレート10が上昇する。続いて直ちに、ステップS7で、被加工材搬送装置(図示せず)が、そのフィンガー16A、16Bで、加熱された被加工材14を把持して、下加熱プレート10上から取り出し、そして直ちに、その被加工材14をプレス成形用のプレス機械(図示せず)にセットする。その後、プレス成形用のプレス機械では、加熱温度になっている被加工材14のプレス成形が行なわれる。
【0040】
以上のような1サイクルの加熱動作が、一つ一つの被加工材14毎に繰り返される。
【0041】
上述した第1実施形態にかかる加工装置および方法によれば、インラインで被加工材14を加熱することができ、従来のバッチ炉加熱よりも短時間で加熱することができ、さらに、被加工材14の温度を均一な温度に加熱することができる。また、被加工材14が、電気抵抗の低い材質であっても、これを加熱することができる。さらに、特許文献1に開示されたような被加工材14に直接電流を流す通電加熱方法では、通電加熱中に被加工材14の熱膨張に合わせて被加工材14の両端を外側に引かないと、被加工材14が熱膨張で変形するおそれがある。これに対し、第1実施形態にかかる加工装置および方法によれば、被加工材14は両加熱プレート10、12の間で熱膨張できるので、被加工材14が加熱中に変形するおそれがない。
【0042】
なお、変形例として、前述したように、誘導加熱あるいは電熱線ヒータによる加熱などの方法を加熱プレート10、12の加熱するようにしてもよい。例えば、加熱プレート10、12の近傍に、加熱プレート10、12に誘導電界を印加する高周波コイルを設けることで、加熱プレート10、12を誘導加熱の方法で加熱することができる。あるいは、加熱プレート10、12の内部に電熱線ヒータを埋め込むことで、その電熱線ヒータにより加熱プレート10、12を加熱することができる。
【0043】
図4は、本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置に用いられる2枚の加熱プレートの構造を示し、特に、図4(A)は2枚の加熱プレートの配置関係を示す断面図、図4Bは各加熱プレートの平面構造例を示す平面図である。図5は、この第2の実施形態にかかる加熱装置で加熱被加工材のプレス成形結果の例を示す断面図である。図6は、この第2の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す正面図である。なお、図6においては、図2に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図2と同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0044】
上述した第1の実施形態にかかる加熱装置は、被加工材を全体的に均一の温度に加熱するものであるが、これに対し、図4から図6に示す第2の実施形態にかかる加熱装置は、被加工材の特定の部分領域を選択的に加熱するものである。
【0045】
図4に示すように、2枚の加熱プレート70、72(上加熱プレート70と、下加熱プレート72)が平行に向かい合って配置される。この2枚の加熱プレート70、72は、図6に示すように、この加熱装置用のプレス機械40に組み込まれて一方が他方に近づいたり離れたりする動きをするようになっている。そして、2枚の加熱プレート70、72間に被加工材74が挿入されるようになっている。被加工材74は、この加熱装置で加熱された後に、図5に示すように、その中の特定の部分領域80A、80Bだけが選択的にプレス成形される予定になっている。
【0046】
図4に示すように、2枚の加熱プレート70、72の主面上に、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bにだけ接触するような凸部76A、76B、76Cが形成されている。これらの凸部76A、76B、76C、78A、78Bは、それぞれの加熱プレート70、72の本体部分と一体に形成されている。図4(A)に示すように、いずれの凸部76A、76B、76C、78A、78Bも、メサ形(台形状)の形状を有し、その表面は被加工材74の両面に密着することができるように平らである。また、図4Bに示すように、凸部76A、76B、76C、78A、78Bの平面形状は、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bの平面形状にそれぞれ対応する。
【0047】
図4(B)に示すように、加熱プレート70、72それ自体の平面形状は、凸部76A、76B、76C、78A、78Bの平面配置(つまり、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bの平面配置)に応じた任意の形状であってよい。図4(B)に示した例では、上加熱プレート70は、3つの凸部76A、76B、76Cの配置に対応した三角形の平面形状を有する(図4(B)では、代表的に上加熱プレート70だけを示すが、下加熱プレート70も同様である)。
【0048】
加熱プレート70、72の加熱方法には、通電加熱、誘導加熱あるいは電熱線ヒータによるヒータ加熱などの方法を採用することができる。しかし、加熱プレート70、72は、凸部76A、76B、76C、78A、78Bを有しており、さらには、その平面形状が長方形でなく、要するに単純な直方体の形状を有していない。そのため、加熱プレート70、72を全体的に均一温度に加熱すること、或は、少なくとも被加工材74に接触することになる凸部76A、76B、76C、78A、78Bを均一温度に加熱することは、通電加熱または誘導加熱では難しい。そこで、この実施形態では電熱線ヒータによる加熱を採用する。加熱プレート70、72を全体的に均一温度に加熱できるようにするために、或は、少なくとも凸部76A、76B、76C、78A、78Bを均一温度に加熱できるようにするために、図4(B)に示すように、加熱プレート70、72の各々には、その全体領域にわたってほぼ均一な密度で電熱線ヒータ82、83が張り巡らされる。電熱線ヒータによる加熱法を採用する場合、加熱プレート70、72の材料は、金属でも絶縁体でもよい。
【0049】
図6に示すように、加熱装置用のプレス機械40のベース72上に、断熱/絶縁板52を介して、下加熱プレート72が固定される。下加熱プレート72の側面にも、断熱/絶縁板73A、73Bが設けられる。また、上加熱プレート70が、支柱46A、46Bに沿って移動可能なスライドホルダ90A、90B上に、断熱/絶縁板91A、91Bを介して、支持される。既に説明した第1の実施形態の場合と同様、スライド44の下降と上昇により、上加熱プレート70が下降したり上昇したりするようになっている。なお、加熱プレート70、72自体が電気絶縁性を有していたり、或は、加熱プレート70、72とその内部の電熱ヒータ82、83との間が絶縁されている場合には、断熱/絶縁板52、54、73A、73B、91A、91Bには、電気絶縁性がなくてもよい。被加工材搬送装置、例えば、2本の搬送バー92A、92Bは、2つのフィンガー94A、94Bを有し、そのフィンガー94A、94Bで被加工材74を把持して、加熱プレート70、72の間に挿入して、下加熱プレート72上に置くようになっている。尚、図6では、加熱プレート70、72に加熱用電流を流すための電源装置や配線は図示省略してある。
【0050】
この加熱装置による被加工材74の加熱工程の1サイクルの動作は、図3を参照して既に説明した動作と基本的に同じである。すなわち、まず、加熱プレート70、72が所定の加熱温度まで加熱される(図3、S1−S2)。続いて直ちに、プレス加工前の平板状の被加工材74が下加熱プレート72上に置かれる(S3)。続いて直ちに、加熱プレート70、72が被加工材74をサンドイッチして(S4)、被加工材74を加熱する(S5)。
【0051】
加熱プレート70、72が被加工材74をサンドイッチすると、加熱プレート70、72の凸部76A、76B、76C、78A、78Bだけが、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bの上下両面に密着することになる。その結果、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bだけが選択的に加熱される。その後、直ちに、そのプレス加工予定部分領域80A、80Bにだけプレス加工を施すことにより、図5に示すように、そのプレス加工予定部分領域80A、80Bにだけを選択的にプレス成形することができる。
【0052】
ところで、加熱プレート70、72の構造の変形例として、加熱プレート70、72を金属製にするとともに、その凸部76A、76B、76C、78A、78Bにだけ不純物をドープするなどの方法により、電気抵抗率において、凸部76A、76B、76C、78A、78Bだけを加熱プレート70、72の本体部分より十分高くするようにしてもよい。それに加え、加熱プレート70、72の平面形状を長方形(加熱プレート70、72の、本体部分を直方体)に形成してもよい。そのような構造を採用すると、加熱プレート70、72中電流が流れ得る部分は、実質的に直方体の本体部分に限定されるので、通電加熱または誘導加熱の方法で加熱プレート70、72を加熱した場合にも、加熱プレート70、72の全体領域を均一温度で加熱することが容易になる。
【0053】
上述した第2の実施形態にかかる加熱装置においては、被加工材74は、図1に示した被加工材14のような、大きい母板材から切り出された小さい個別板片であってもよいし、或は、母板材それ自体のような広い板材(例えば、順送加工の被加工材である長大な帯状の母板材)であってもよい。被加工材74の所望部分領域だけを選択的に加熱することが可能であるために、この加熱装置を用いると、例えば以下のような新たな加工方法の可能性が開けてくる。すなわち、高抗張力鋼のように冷間プレス成形が困難な材料は、一般に温/熱間プレス法で成形される。しかし、順送加工法による冷間プレス成形ラインにおいて、成形用プレス機械の直前にこの加熱装置を組み込むと、被加工材である長大な帯状の母板材の特定部分領域だけを選択的に加熱して、その特定部分領域だけを成形用プレス機械で選択的に加工できるようになる。その結果、高抗張力鋼のような冷間成形が困難な材料に対しても、温/熱間プレス成形に代えて、冷間順送加工を適用することができる。また、温/熱間プレス成形のラインにおいても、この加熱装置を組み込むことで、局部的なエンボス加工、局部抜き打ち、あるいは局部絞り加工などが一層容易に行なえるようになる。
【0054】
図7は、本発明の第3の実施形態にかかる加熱装置で用いられる加熱プレートの構造を示す(代表的に一方の加熱プレートだけを示すが、他方の加熱プレートも同様である)。このうち、図7(A)は、加熱プレートの断面図であり、図7(B)は、加熱プレートの平面図である。
【0055】
この第3の実施形態にかかる加熱装置も、上述した第2の実施形態と同様に、被加工材の特定部分領域だけを選択的に加熱するためのものであり、その全体的な構成は、図6に示した第2の実施形態のそれと同様である。
【0056】
図7に示すように、加熱プレート100の主面に、被加工材の加熱したい特定部分領域にだけ接触する凸部102A、120Bが取り付けられる。これらの凸部102A、120Bは、加熱プレート100からは分離された個別の部品として予め用意され、そして、加熱プレート100の主面に取り付けられたものである。生産ラインや被加工材が異なれば、被加工材の加熱したい特定部分領域の位置、形状、サイズが異なるが、それぞれの要求に応じて凸部102A、120Bを用意することで、同じ加熱プレート100を、異なる生産ラインや被加工材の加熱に利用することができる。
【0057】
図7の例では、加熱プレート100の方法として、加熱プレート100の全体領域を均一温度で加熱するために、電熱線ヒータ104による加熱方法が採用される。しかし、加熱プレート100の材料を金属とし、その形状を直方体とし、さらに、凸部102A、120Bを加熱プレート100より電気抵抗率が十分に高い金属、半導体または絶縁体製とすれば、通電加熱または誘導加熱の方法で加熱プレート70、72を加熱した場合にも、加熱プレート100の全体領域を均一温度で加熱することが容易になる。
【0058】
図8は、本発明の第4の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す。なお、図8においては、図2、6に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図2、6と同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0059】
図8に示す加熱装置も、上述した第2の実施形態と同様に、被加工材74の特定の部分領域を選択的に加熱するためのものであるが、加熱プレート10,12は、図1および図2に示した第1の実施形態のそれと同様の直方体の金属プレートである。加熱プレート10,12の加熱方法には、既に説明したいくつかの方法が採用できるが、この実施形態では、第1の実施形態と同様に通電加熱を採用する。加熱プレート10,12のそれぞれの両側面には、図1および図2に示した第1の実施形態の場合と同様、電源回路60から供給される加熱用電流を加熱プレート10,12に流すための電極20A、20B、22A、22Bが接合されている(図8に示す電極20A、20B、22A、22Bの具体的形状は図1および図2に示したものとは若干異なるが実質機能は同様である。)。
【0060】
また、上加熱プレート10の主面の正面に、被加工材74のプレス加工予定部分領域の上面に接触するため上接触板片110A、110Bが配置される。上接触板片110A、110Bは、支柱46A、46Bに沿って上下に移動可能なスライドホルダ111A、111Bにより支持される。伸縮自在のスペーサ114A、114Bが、スライドホルダ111A、111Bと上加熱プレート10の電極20A、20Bとの間に設けられる。スペーサ114A、114Bは、例えば、支柱に46A、46Bに嵌装されたコイル状のバネである。スペーサ114A、114Bは、外力がかからない限り、上加熱プレート10と上接触板片110A、110Bとを若干距離だけ離して配置する。
【0061】
同様に、下加熱プレート12の主面の正面に、被加工材74のプレス加工予定部分領域の下面に接触するための下接触板片112A、112Bが配置される。下接触板片112A、112Bは、支柱46A、46Bに沿って上下に移動可能なスライドホルダ116A、116Bにより支持される。伸縮自在のスペーサ118A、118Bが、スライドホルダ118A、118Bと下加熱プレート12の電極22A、22Bとの間に設けられる。スペーサ118A、118Bは、例えば、支柱に46A、46Bに嵌装されたコイル状のバネである。スペーサ118A、118Bは、外力がかからない限り、下加熱プレート12と下接触板片112A、112Bとを若干距離だけ離して配置する。
【0062】
被加工材74は、搬送バー92A、92Bのフィンガー94A、94Bにより把持されて、上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bとの間に挿入されて、下接触板片112A、112B上に降ろされるようになっている。
【0063】
この加熱装置による加熱工程の1サイクルの動作は、図3を参照して既に説明した動作と基本的に同じである。すなわち、まず、加熱プレート10、12が所定の加熱温度まで加熱される(図3、S1−S2)。加熱プレート10、12は直方体であるから、通電加熱または誘導加熱の方法でも、加熱プレート10、12は全体的にほぼ均一温度に加熱される。続いて直ちに、被加工材74が上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bとの間に挿入されて、下接触板片112A、112B上に降ろされる(S3)。被加工材74が降ろされると、下接触板片112A、112Bが押し下げられて下加熱プレート12に密着するとともに、被加工材74の加工予定部分領域にも密着する。その後直ちに、スライド44が下降して、上加熱プレート10を下降させる(S4)。上加熱プレート10が下降すると、上接触板片110A、110Bも押し下げられて、ついには、上接触板片110A、110Bが、被加工材74の加工予定部分領域に密着するとともに、上加熱プレート10にも密着する。これで、両加熱プレート10、12が被加工材74をサンドイッチした状態になる。
【0064】
加熱プレート10、12が被加工材74をサンドイッチすると、加熱プレート10、12の主面上の接触板片110A、110B、112A、112Bだけが、被加工材74のプレス加工予定部分領域に密着することになる。その結果、加熱プレート10、12の熱が接触板片110A、110B、112A、112Bを通じて被加工材74のプレス加工予定部分領域に供給されて、プレス加工予定部分領域だけが選択的に加熱される。
【0065】
この加熱装置においては、加熱プレート10、12の通電中、加熱プレート10、12から接触板片110A、110B、112A、112Bが離れているので、接触板片110A、110B、112A、112Bとして熱伝導率の高い金属を用いることができる。
【0066】
図9は、図2に示した第1の実施形態にかかる加熱装置の変形例の全体の構成を示す。図9において、図2に示した要素とほぼ同様の機能をもつ要素には同一の参照番号を付してある。以下、図9の加熱装置について、図2の加熱装置と異なる点を中心に説明する。
【0067】
図9に示すように、下加熱プレート12が、ベース42に固定された支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できるようになっている。下加熱プレート12と断熱/絶縁板52との間に、下加熱プレート12を上方へ押し上げて断熱/絶縁板52から離間させる部材、例えばコイル状のバネ48A、48Bが配置される。これらのバネ48A、48Bは、支柱46A、46Bに嵌装される。支柱46A、46Bの上端には、ストッパ50A、50Bが取り付けられる。これらストッパ50A、50Bは、下加熱プレート12のそれ以上の上昇を止めて、下加熱プレート12の支柱46A、46Bからの脱落を防止する。
【0068】
スライド44の下面に、断熱/絶縁板54が取り付けられる。スライド44の下面には、また、上加熱プレート10の位置を制御するためのガイド部材、例えば、絶縁材料製の2本の支柱53A、53Bが、鉛直下方向に立設される。上加熱プレート10は支柱53A、53Bに沿って上下方向に移動できる。上加熱プレート10と断熱/絶縁板54との間に、上加熱プレート10を下方へ押し下げて断熱/絶縁板54から離間させる部材、例えばコイル状のバネ52A、52Bが配置される。これらのバネ52A、52Bは、支柱53A、53Bに嵌装される。支柱53A、53Bの上端には、ストッパ51A、51Bが取り付けられる。これらストッパ51A、51Bは、上加熱プレート10のそれ以上の加工を止めて、上加熱プレート10の支柱53A、53Bからの脱落を防止する。
【0069】
図9に示すように、スライド44が上死点に位置するときには、上加熱プレート10は、バネ52A、52Bの作用で、スライド44に取り付けられた断熱/絶縁板54から離れ、また、下加熱プレート12は、バネ48A、48Bの作用で、ベース42に取り付けられた断熱/絶縁板52から離れた状態にある。この離間状態により、上下加熱プレート10、12の断熱効果が良い。上加熱プレート10と下加熱プレート12との間には、そこに被加工材14を出し入れするための空間が十分大きく開いている。
【0070】
スライド44が下降していくと、上加熱プレート10と下加熱プレート12とが、被加工材14の全体領域の両面に接触する。さらにスライド44が下降していくと、上加熱プレート10は断熱/絶縁板54に密着し、下加熱プレート12は断熱/絶縁板52に密着する。そして、上下加熱プレート10、12は、プレス機械40によって、被加工材14の全体領域の両面に、所定の圧力で押し付けられる。その後、スライド44が上昇すると、バネ52A、52Bの作用で、上加熱プレート10は断熱/絶縁板54から離れ、同時に、バネ48A、48Bの作用で、下加熱プレート12は断熱/絶縁板52から離れる。
【0071】
図10は、この加熱装置によって行われる、被加工材14の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示す。
【0072】
図10に示すように、ステップS11で、スライド44が上死点で待機している。ステップS12で、上加熱プレート10と下加熱プレート12のそれぞれに大電流が供給されて、これらの加熱プレート10、12が所定の加熱温度にまで加熱される。加熱プレート10、12の加熱温度は、被加工材14の加熱予定温度に応じて予め定められている。加熱プレート10、12は、秒オーダ程度の非常に短時間で、全体的にほぼ均一に上記加熱温度まで加熱される。
【0073】
加熱プレート10、12が上記加熱温度まで昇温すると、直ちに、ステップS13で、プレ成形前の平板状の被加工材14が下加熱プレート12上に置かれる。続いて直ちに、ステップS14で、スライド44が下降して上加熱プレート10を押し下げ、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチする。続いて、ステップS15で、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチした状態を、所定の加熱時間だけ維持する。その間、被加工材14が変形しない程度の微力な加圧力を上加熱プレート10に加えて、両加熱プレート10、12の主面を被加工材14の全体領域の両面に密着させる。被加工材14は全体的に加熱されるとともに、被加工材14の両面の酸化も防止される。
【0074】
サンドイッチ状態を所定時間維持した後、ステップS16で、スライド44が上昇する。続いて直ちに、ステップS17で、加熱された被加工材14が下加熱プレート10上から取り出され、そして直ちに、その被加工材14がプレス成形用のプレス機械(図示せず)にセットされる。その後、プレス成形用のプレス機械では、加熱温度になっている被加工材14のプレス成形が行なわれる。
【0075】
図11は、図6に示した本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置の変形例の全体構成を示す正面図である。なお、図11において、図6に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図6と同じ参照番号が付されている。図11では、加熱プレート70、72に加熱用電流を流すための電源装置や配線は図示省略してある。以下、図11の加熱装置について、図6の加熱装置と異なる点を中心に説明する。
【0076】
図11に示すように、ベース42の上面に、断熱/絶縁板52が敷かれる。また、ベース42の上面に、支柱46A、46Bが鉛直上方に立設される。下加熱プレート72が、支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できる。下加熱プレート12の両側の側面にも、断熱/絶縁板73A、73Bが設けられる。下加熱プレート72を押し上げてベース42上の断熱/絶縁板52から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ48A、48Bが、支柱46A、46Bに嵌装される。ストッパ50A、50Bが、下加熱プレート72の支柱46A、46Bからの脱落を防止する。
【0077】
また、スライド44の下面に、断熱/絶縁板54が取り付けられる。スライド44の下面には、また、支柱53A、53Bが鉛直下方に立設される。上加熱プレート70が、支柱53A、53Bに沿って上下方向に移動できる。上加熱プレート70の両側の側面にも、断熱/絶縁板91A、91Bが設けられる。上加熱プレート70を押し下げてスライド44上の断熱/絶縁板54から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ52A、52Bが、支柱53A、53Bに嵌装される。ストッパ51A、51Bが、上加熱プレート70の支柱53A、53Bからの脱落を防止する。
【0078】
この変形例にかかる加熱装置でも、図9に示した変形例にかる加熱装置と同様に、スライド44が高い位置にあるときには、上加熱プレート70がスライド44上の断熱/絶縁板54から離れ、下加熱プレート72がベース42上の断熱/絶縁板52から離れているので、上下加熱プレート70、72の断熱効果が良い。スライド44が下降すれば、上下加熱プレート70、72は被加工材74に押し付けられる。
【0079】
図12は、図8に示した本発明の第3の実施形態にかかる加熱装置の変形例の全体構成を示す正面図である。なお、図12において、図8に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図8と同じ参照番号を付してある。以下、図12の加熱装置について、図8の加熱装置と異なる点を中心に説明する。
【0080】
図12に示すように、ベース42の上面に、断熱/絶縁板52が敷かれる。また、ベース42の上面に、支柱46A、46Bが鉛直上方に立設される。下加熱プレート12が、支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できる。下加熱プレート72を押し上げてベース42上の断熱/絶縁板52から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ48A、48Bが、支柱46A、46Bに嵌装される。さらに、下接触板片112A、112Bが、支柱46A、46Bに沿って上下に移動できる。下接触板片112A、112Bを押し上げて下加熱プレート12から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ118A、118Bが、支柱46A、46Bに嵌装される。ストッパ50A、50Bが、下加熱プレート12と下接触板片112A、112Bの支柱46A、46Bからの脱落を防止する。
【0081】
また、スライド44の下面に、断熱/絶縁板54が取り付けられる。スライド44の下面には、また、支柱53A、53Bが鉛直下方に立設される。上加熱プレート10が、支柱53A、53Bに沿って上下方向に移動できる。上加熱プレート10を押し下げてスライド44上の断熱/絶縁板54から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ52A、52Bが、支柱53A、53Bに嵌装される。さらに、上接触板片110A、110Bが、支柱53A、53Bに沿って上下に移動できる。上接触板片110A、110Bを押し下げて上加熱プレート10から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ114A、114Bが、支柱53A、53Bに嵌装される。ストッパ51A、51Bが、上加熱プレート70と上接触板片110A、110Bの支柱53A、53Bからの脱落を防止する。
【0082】
この変形例にかかる加熱装置でも、図9及び図11にそれぞれ示した変形例にかる加熱装置と同様に、スライド44が高い位置にあるときには、上加熱プレート10がスライド44上の断熱/絶縁板54から離れ、下加熱プレート12がベース42上の断熱/絶縁板52から離れているので、上下加熱プレート10、12の断熱効果が良い。スライド44が下降すれば、上下加熱プレート10、12が上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bにそれぞれ押し付けられると共に、上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bが被加工材74に押し付けられる。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【0084】
例えば、被加工材の搬送の邪魔になる支柱を無くすために、上加熱プレート10の保持方法として、吊り下げなどの方法を採用することもできる。また、加熱プレートのほぼ均等温度に加熱される領域は、必ずしも加熱プレートの全体領域でなければならないわけではなく、少なくとも被加工材に作用する領域がカバーされていれば、部分的な領域であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるプレス成形用の被加工材の加熱装置の要部の構成を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【図3】第1の実施形態にかかる加熱装置よって行われる、被加工材の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示すフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置に用いられる2枚の加熱プレートの構造を示し、特に、図4(A)は2枚の加熱プレートの配置関係を示す断面図、図4Bは各加熱プレートの平面図。
【図5】第2の実施形態にかかる加熱装置で加熱された後の被加工材のプレス成形結果例を示す断面図。
【図6】第2の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す正面図。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかる加熱装置で用いられる加熱プレートの構造を示し、特に、図7(A)は加熱プレートの断面図、図7(B)は加熱プレートの平面図。
【図8】本発明の第4の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す正面図。
【図9】第1の実施形態の変形例にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【図10】第1の実施形態の変形例にかかる加熱装置よって行われる、被加工材の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示すフローチャート。
【図11】第2の実施形態の変形例にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【図12】第4の実施形態の変形例にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0086】
10、70、100 上加熱プレート
12、72、100 下加熱プレート
14、74 被加工材
20A、20B、22A、22B 電極
40 加熱装置用のプレス機械
42 ベース
44 スライド
52、54 断熱/絶縁板
60 電源回路
76A、76B、76C、78A、78B、102A、102B、 加熱プレートの凸部
80A、80B 被加工材の加工予定部分領域
84、104 電熱線ヒータ
110A、110B 上接触板片
112A、112B 下接触板片
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形前に被加工材を加熱するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電製品および電子部品などに多用される高抗張力鋼、マグネシウム合金、チタン合金またはアルミニウムなどの材質の被加工材のプレス成形では、温間プレス成形または熱間プレス成形(以下、「温/熱間プレス成形」という)法が採用されることが多い。すなわち、被加工材の全体が成形に適した高温まで加熱され、その高温の被加工材に対しプレス加工が行なわれる。従来、温/熱間プレス成形のための被加工材の加熱方法としては、電気炉またはガス炉などの炉内で複数の被加工材を加熱するバッチ炉加熱法が、広く採用されている。しかし、炉中での被加工材の酸化を防止するために、不活性ガス炉または真空炉を用いる必要があり、設備コストが高い。また、バッチ炉加熱は、量産ラインでのインライン処理が不可能である。また、加熱時間として数分から数十分がかかる場合が多く、秒オーダなどの短時間に被加工材を所望温度まで加熱することは難しい。
【0003】
そこで、インラインで用いることができ、かつ、秒オーダの短時間に被加工材を所望温度まで加熱できる加熱方法として、被加工材に電流を流す通電加熱法が特許文献1に開示されている。この方法は、被加工材の複数箇所に電極を接触させ、それらの電極から直接被加工材に大電流を流すことで、被加工材を加熱するものである。
【特許文献1】特開2005−1316565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の通電加熱の方法は、インラインで使用できる利点があるものの、被加工材の平面形状に関わらず被加工材の所望領域を加熱することが難しいという問題がある。この問題は、次の2つの側面に分けられる。
【0005】
第1の側面は、被加工材の平面形状に関わらず、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱することが難しいという問題である。一般に温/熱間プレス成形では、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱することが要求される。被加工材が長方形の平面形状をもつ板である場合には、上述した従来の通電加熱の方法で、被加工材の全体領域を均一な温度に加熱することができる。しかし、被加工材が、長方形以外の平面形状をもつとか、内側に穴が開いているというような異形形状または複雑形状の板である場合、従来の通電加熱の方法では、被加工材の電流密度が不均一となり、被加工材の全体領域を均一な温度に加熱することが困難であり、また、通電中にスパークが発生したりもする。
【0006】
第2の側面は、従来の通電加熱の方法では、被加工材の特定の部分領域だけを選択的に加熱するということができないことである。しかし、もし、被加工材の所望部分領域だけを選択的に加熱することが可能であれば、例えば以下のような新たな加工方法の可能性が開けてくる。すなわち、高抗張力鋼のように冷間プレス成形が困難な材料は、一般に温/熱間プレス法で成形される。しかし、冷間プレス成形において、被加工材の特定部分領域だけを選択的に加熱してその特定部分領域だけを選択的に塑性変形させることができるならば、高抗張力鋼のような冷間成形が困難な材料に対しても、順送加工法による冷間プレス成形が採用できるようになる。あるいは、温/熱間プレス成形においても、局部的なエンボス加工、局部抜き打ち、あるいは局部絞り加工などが一層容易に行なえるようになる。
【0007】
さらに、従来の通電加熱の問題点として、電気抵抗の低い材質の被加工材には適用が困難であるという点もある。
【0008】
従って、本発明の目的は、プレス成形のための被加工材の加熱装置および方法において、インラインで使用でき、かつ、被加工材の所望領域を加熱できるようにすることにある。
【0009】
本発明の別の目的は、被加工材の平面形状に関わらず、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱できるようにすることにある。
【0010】
本発明のまた別の目的は、被加工材の特定の部分領域を選択的に加熱できるようにすることにある。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、電気抵抗の低い材質の被加工材も加熱できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面に従う、プレス成形のための被加工材の加熱装置は、プレス成形前の被加工材を相互間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、少なくとも2枚の加熱プレートと、それらの加熱プレートの各々を、少なくとも被加工材に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱手段と、上記加熱手段を制御する制御手段とを備える。そして、加熱プレートが加熱され且つ被加工材が加熱プレート間に挿入された場合、加熱プレートの一方が他方に近づいて、被加工材の所定領域の両面に密着するように被加工材をサンドイッチする。そして、加熱プレートが被加工材をサンドイッチした状態が、所定時間維持される。
【0013】
この加熱装置によると、少なくとも2枚の加熱プレートが、それぞれ、その少なくとも被加工材に作用する領域にわたり(例えば全体領域にわたり)、ほぼ均一の温度に加熱され、そして、プレス成形前の被加工材を両側からサンドイッチする。被加工材をサンドイッチしたとき、加熱プレートは、被加工材の所定領域の両面に密着し、そして、このサンドイッチ状態が所定時間維持される。結果として、被加工材の平面形状にかかわらず、被加工材の所定領域を加熱することができる。また、被加工材が電気抵抗率の低い材質であっても、被加工材を良好に加熱することができる。また、この加熱装置は、生産ラインに(典型的にはプレス成形機械の直前に)組み込まれてインラインで使用することができる。被加工材をサンドイッチしているときには、被加工材を変形させない程度の加圧力を被加工材に加えて、密着状態を保つことが好ましい。それにより、被加工材の表面の酸化も抑制される。
【0014】
一つの実施形態では、加熱プレートは、被加工材をサンドイッチしたときに、その被加工材の全体領域の両面に密着する。その結果、被加工材の平面形状にかかわらず、被加工材の全体領域をほぼ均一の温度に加熱することができる。
【0015】
別の実施形態では、加熱プレートは、被加工材をサンドイッチしたときに、その被加工材の特定の部分領域の両面に密着する。その結果、被加工材の特定部分領域を選択的に加熱することができる。
【0016】
加熱プレートの加熱方法には、加熱プレート自体に電流を流す通電加熱、加熱プレート自体に誘導電界を加える誘導加熱、或は、加熱プレートに埋め込まれた電熱線ヒータにより加熱する方法などが採用できる。
【0017】
一つの実施形態では、加熱プレートの各々は直方体の形状であり、そして、通電加熱または誘導加熱の方法により加熱されるようになっている。加熱プレートが直方体であるために、通電加熱または誘導加熱の方法で、加熱プレートの少なくとも被加工材に作用する領域(例えば全体領域)を均一温度に加熱することができる。加えて、通電加熱または誘導加熱の方法ならば、加熱プレートの上記領域に大パワーを入力できるので、加熱プレートを高速に加熱することができる。その結果、被加工材の所望領域を短時間に加熱することができる。
【0018】
本発明の別の側面に従う、プレス成形のための被加工材の加熱方法は、少なくとも2枚の加熱プレートの各々を、少なくとも被加工材に作用する領域にわたり(例えば全体領域にわたり)、ほぼ均一温度に加熱する加熱ステップと、それらの加熱プレートの間に、プレス成形前の被加工材を挿入する挿入ステップと、この挿入ステップ後に加熱プレートの一方を他方に近づけて、それらの加熱プレートが被加工材の所望領域の両面に密着するようにして被加工材をサンドイッチするサンドイッチステップと、加熱プレートが被加工材をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップとを有する。被加工材をサンドイッチしているときには、被加工材を変形させない程度の加圧力を被加工材に加えて、密着状態を保つことが好ましい。
【0019】
この方法によると、被加工材の平面形状にかかわらず、被加工材の所定領域を加熱することができる。また、被加工材が電気抵抗率の低い材質であっても、被加工材を良好に加熱することができる。また、この加熱方法は、生産ラインにおいてインラインで(典型的にはプレス成形工程の直前で)使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一つの側面に従えば、プレス成形前の被加工材の所望領域を加熱することができ、しかも、インラインで使用することができる。特に、加熱プレートが被加工材の全体領域の両面に密着するようにした場合には、被加工材の平面形状に関わらず、被加工材の全体領域を均一の温度に加熱することができる。他方、加熱プレートが被加工材の特定の部分領域の両面に密着するようにした場合には、被加工材の特定の部分領域を選択的に加熱することができる。
【0021】
また、本発明によれば、電気抵抗の低い材質の被加工材も加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるプレス成形用の被加工材の加熱装置の要部の構成を示す。図2は、この加熱装置の全体の構成を示す。
【0023】
図1に示すように、それぞれ直方体である(平面形状が長方形である)2枚の加熱プレート10、12(上加熱プレート10と下加熱プレート12)が、それぞれの主面(最も広い面であり、具体的には、上加熱プレート10の下面と下加熱プレート12の上面)が平行に向かい合うようにして、上下に配置される。図2に示すように、2枚の加熱プレート10、12は、この加熱装置用のプレス機械(被加工材14のプレス成形用のプレス機械とは別のもの)40に組み込まれる。2枚の加熱プレート10、12は、プレス機械40により動かされて、一方が他方に近づいたり遠ざかったりする(つまり、加熱プレート10、12間の空間が狭くなったり広くなったりする)ようになっている。
【0024】
この加熱装置での加熱対象となる被加工材14は、典型的には、広い母板材から予め切り出された個別の板片であり、その平面形状は多種多様である。このような被加工材14が、プレス成形前の平板状であるときに、被加工材搬送装置(図示せず)のフィンガー16A、16Bによって把持されて、下加熱プレート12の上に置かれるようになっている。また、加熱プレート10、12による被加工材14の加熱が終わると、下加熱プレート12上の被加工材14が、フィンガー16A、16Bによって再び把持されて、外へ取り出されたりするようになっている。被加工材14に比べて、加熱プレート10、12は、平面サイズにおいて明らかに大きく、よって、後述するように加熱プレート10、12が被加工材14をサンドイッチしたときには、加熱プレート10、12が被加工材14の実質的に全周囲を包囲することになる。
【0025】
加熱プレート10、12の加熱方法には、通電加熱、誘導加熱あるいは電熱線ヒータによる加熱などの方法を採用することができるが、この実施形態では、一例として通電加熱法を採用する。
【0026】
上加熱プレート10の向かい合う両側面(4つの側面のうち、例えば面積の小さい方の2つの側面)に、それぞれ、通電加熱用の大電流を外部から上加熱プレート10に流すための電極20A、20Bが接合されている。同様に、下加熱プレート12の向かい合う両側面の全域にも、それぞれ、電極22A、22Bが接合されている。これらの電極20A、20B、22A、22Bの各々は、それが設けられた加熱プレート10、12の各側面の全域をカバーしている。これらの電極20A、20B、22A、22Bの頭部24A、24B、26A、26Bには、図2に示すように、電源回路60からの加熱用電流を流す電流線62、64が接続される。
【0027】
いずれの加熱プレート10、12においても、加熱用電流は一方の側の電極20A、22Aから加熱プレート10、12内に入り、加熱プレート10、12内をその断面全域にわたり均等な電流密度で流れ、そして、反対側の電極20B、22Bへ流れ出ることになる。よって、いずれの加熱プレート10、12も、その全体領域がほぼ均等な温度に加熱されることになる。
【0028】
加熱プレート10、12の材質は、通電によりジュール熱を発生し易い、或る程度に電気抵抗率の高い金属である。一方、電極20A、20B、22A、22Bは、加熱プレート10、12よりも電気抵抗率が低く、大電流が流れてもあまり加熱されない金属である。加熱プレート10、12と電極20A、20B、22A、22Bとの接合には、接合面での電気抵抗を無視できる程度に小さく出来る方法、例えば、ボルトで強固に締結して押し付ける圧着法や、溶接のような冶金接合法などを採用することができる。
【0029】
電極20A、20B、22A、22Bには、また、図2に示す支柱46A、46Bを通すための貫通穴28A、28B、30A、30Bがそれぞれ穿たれている。加熱プレート10、12が熱膨張しても加熱プレート10、12が変形しないように、貫通穴28A、28B、30A、30Bの内径は支柱46A、46Bの外径よりも或る程度大きくて、貫通穴28A、28B、30A、30Bと支柱46A、46B間には、加熱プレート10、12の熱膨張を吸収するのに十分な大きさの隙間ができるようになっている。
【0030】
図2に示すように、加熱装置用のプレス機械40のベース42の上面に、断熱/絶縁板52が敷かれる。また、ベース42の上面には、加熱プレート10、12の位置を制御するためのガイド部材、例えば、絶縁材料製の2本の支柱46A、46Bが鉛直方向に立設される。下加熱プレート12が断熱/絶縁板52上に置かれ、下加熱プレート12の両端の電極22A、22Bの貫通穴30A、39Bに、支柱46A、46Bがそれぞれ通される。断熱/絶縁板52は、下加熱プレート12とベース42との間を断熱し、また、電気的に絶縁する。
【0031】
下加熱プレート12の上方に、上加熱プレート10が配置され、上加熱プレート10の両端の電極20A、20Bの貫通穴28A、28Bに、支柱46A、46Bがそれぞれ通される。上加熱プレート10は、支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できる。下加熱プレート12と上加熱プレート10との間に、上加熱プレート10を上方に押し上げるためお押し上げ部材、例えば、コイル状のバネ48A、48Bが配置される。これらのバネ48A、48Bは、支柱46A、46Bに嵌装される。支柱46A、46Bの上端には、ストッパ50A、50Bが取り付けられる。ストッパ50A、50Bは上加熱プレート10のこれ以上の上昇を止めて、上加熱プレート10が支柱46A、46Bから抜け落ちるのを防止する。
【0032】
図2に示すように、プレス機械40のスライド44は、上加熱プレート10の真上に位置する。スライド44の下面に断熱/絶縁板54が取り付けられる。図示のように、スライド44が上死点に位置するときには、スライド44は上加熱プレート10から離れ、上加熱プレート10はバネ48A、48Bの作用で図示の最高点に位置し、上加熱プレート10と下加熱プレート12の間には、そこに被加工材14を出し入れするための空間が大きく開いている。スライド44が下降していくと、まず、スライド44の下面の断熱/絶縁板54が上加熱プレート10の上面に接触し、そして、上加熱プレート10を押し下げていく。上加熱プレート10は、下加熱プレート12が平行な姿勢で下降していく。上加熱プレート10が一番低い位置まで来ると、上加熱プレート10と下加熱プレート12とが被加工材14の全体領域の両面に密着する。その後、スライド44が上昇すると、バネ48A、48Bの作用で、上加熱プレート10も上昇して、図示の最高点で止まる。断熱/絶縁板54は、上加熱プレート10とスライド44との間を断熱し、また、電気的に絶縁する。
【0033】
この加熱装置には、さらに、プレス機械40、電源回路60および被加工材搬送装置を制御するための制御装置66が設けられる。その制御装置66の制御により、以下に説明するような手順で、この加熱装置の動作が実行されるようになっている。
【0034】
図3は、この加熱装置によって行われる、被加工材14の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示す。
【0035】
図3に示すように、ステップS1で、上加熱プレート10が最高点に位置している。ステップS2で、上加熱プレート10と下加熱プレート12のそれぞれに大電流が供給されて、これらの加熱プレート10、12が所定の加熱温度にまで加熱される。ここで、加熱プレート10、12の加熱温度は、被加工材14の加熱予定温度(プレス成形に適した温度)よりも幾分高い、例えば50℃から100℃程度高い、温度である。被加工材14の加熱予定温度は生産ラインによって違うので、それに応じて加熱プレート10、12の加熱温度も違ってくる。例えば、900℃程度の温度で自動車用高抗張力鋼板を温間プレス成形するラインでは、加熱プレート10、12の加熱温度は、被加工材14の加熱予定温度900℃より幾分高い、例えば950℃程度に設定される。この他にも、本発明が適用できるラインには、例えば、650℃以上のマルテンサイト変態点以上の温度にて高抗張力鋼板をプレス成形するダイクエッチング方法を行なうライン、300℃程度の温度にてマグネシウム板材をプレス成形するライン、400℃以上の温度でアルミニウム板材をプレス成形するラインなど、様々な種類がある。いずれにしても、被加工材14の加熱予定温度に応じて加熱プレート10、12の加熱温度が定められる。ステップS2では、秒オーダ程度の非常に短時間で、加熱プレート10、12を上記加熱温度まで昇温させることができる。前述したように、各加熱プレート10、12は直方体であるため、全体的にほぼ均一に上記加熱温度まで加熱される。
【0036】
加熱プレート10、12が上記加熱温度まで昇温すると、直ちに、ステップS3で、プレ成形前の平板状の被加工材14が、フィンガー16A、16Bに把持されて下加熱プレート12上に置かれる。フィンガー16A、16Bは、被加工材14を下加熱プレート12上に置くと、直ちに加熱プレート10、12間から退避する。
【0037】
続いて直ちに、ステップS4で、スライド44が下降して上加熱プレート10を押し下げ、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチする。続いて、ステップS5で、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチした状態を、所定の加熱時間だけ維持する。その間、被加工材14が変形しない程度の微力な加圧力を上加熱プレート10に加える。この加圧により、両加熱プレート10、12の主面が被加工材14の全体領域の両面に密着して、両加熱プレート10、12からの熱が被加工材14に伝わって被加工材14を全体的に加熱するとともに、被加工材14の両面を空気から遮断して、被加工材14の両面の酸化を防止する。被加工材14は均一温度に加熱された加熱プレート10、12にサンドイッチされているため、被加工材14もその全体領域が均一な温度に加熱されることになる。
【0038】
上記サイドイッチ状態での加圧力の大きさは、被加工材14が変形しない程度であること、被加工材14の両面の酸化を防止できること、および、所望の短時間で被加工材14を所定の加熱温度まで加熱できること、などの観点から選ばれる。例えば、被加工材14が高抗張力鋼板であって、その加熱温度が900℃程度である場合、被加工材14は600kg/cm2以上の圧力を加えると変形してしまうため、サイドイッチ状態での加圧力は400〜500kg/cm2程度以下、例えば300kg/cm2程度が良いかも知れないし、あるいは、50kg/cm2程度でもよいかもしれない。実際、発明者らが実験してみたところ、100kg/cm2程度の微弱な加圧力であっても、950℃程度に予め加熱した両加熱プレート10、12でサンドイッチして、10秒以下の短い時間で、被加工材14である高抗張力鋼板を所定の加熱温度900℃程度にまで加熱することができた。
【0039】
サンドイッチ状態を所定時間維持した後、ステップS6で、スライド44が上昇して上加熱プレート10が上昇する。続いて直ちに、ステップS7で、被加工材搬送装置(図示せず)が、そのフィンガー16A、16Bで、加熱された被加工材14を把持して、下加熱プレート10上から取り出し、そして直ちに、その被加工材14をプレス成形用のプレス機械(図示せず)にセットする。その後、プレス成形用のプレス機械では、加熱温度になっている被加工材14のプレス成形が行なわれる。
【0040】
以上のような1サイクルの加熱動作が、一つ一つの被加工材14毎に繰り返される。
【0041】
上述した第1実施形態にかかる加工装置および方法によれば、インラインで被加工材14を加熱することができ、従来のバッチ炉加熱よりも短時間で加熱することができ、さらに、被加工材14の温度を均一な温度に加熱することができる。また、被加工材14が、電気抵抗の低い材質であっても、これを加熱することができる。さらに、特許文献1に開示されたような被加工材14に直接電流を流す通電加熱方法では、通電加熱中に被加工材14の熱膨張に合わせて被加工材14の両端を外側に引かないと、被加工材14が熱膨張で変形するおそれがある。これに対し、第1実施形態にかかる加工装置および方法によれば、被加工材14は両加熱プレート10、12の間で熱膨張できるので、被加工材14が加熱中に変形するおそれがない。
【0042】
なお、変形例として、前述したように、誘導加熱あるいは電熱線ヒータによる加熱などの方法を加熱プレート10、12の加熱するようにしてもよい。例えば、加熱プレート10、12の近傍に、加熱プレート10、12に誘導電界を印加する高周波コイルを設けることで、加熱プレート10、12を誘導加熱の方法で加熱することができる。あるいは、加熱プレート10、12の内部に電熱線ヒータを埋め込むことで、その電熱線ヒータにより加熱プレート10、12を加熱することができる。
【0043】
図4は、本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置に用いられる2枚の加熱プレートの構造を示し、特に、図4(A)は2枚の加熱プレートの配置関係を示す断面図、図4Bは各加熱プレートの平面構造例を示す平面図である。図5は、この第2の実施形態にかかる加熱装置で加熱被加工材のプレス成形結果の例を示す断面図である。図6は、この第2の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す正面図である。なお、図6においては、図2に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図2と同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0044】
上述した第1の実施形態にかかる加熱装置は、被加工材を全体的に均一の温度に加熱するものであるが、これに対し、図4から図6に示す第2の実施形態にかかる加熱装置は、被加工材の特定の部分領域を選択的に加熱するものである。
【0045】
図4に示すように、2枚の加熱プレート70、72(上加熱プレート70と、下加熱プレート72)が平行に向かい合って配置される。この2枚の加熱プレート70、72は、図6に示すように、この加熱装置用のプレス機械40に組み込まれて一方が他方に近づいたり離れたりする動きをするようになっている。そして、2枚の加熱プレート70、72間に被加工材74が挿入されるようになっている。被加工材74は、この加熱装置で加熱された後に、図5に示すように、その中の特定の部分領域80A、80Bだけが選択的にプレス成形される予定になっている。
【0046】
図4に示すように、2枚の加熱プレート70、72の主面上に、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bにだけ接触するような凸部76A、76B、76Cが形成されている。これらの凸部76A、76B、76C、78A、78Bは、それぞれの加熱プレート70、72の本体部分と一体に形成されている。図4(A)に示すように、いずれの凸部76A、76B、76C、78A、78Bも、メサ形(台形状)の形状を有し、その表面は被加工材74の両面に密着することができるように平らである。また、図4Bに示すように、凸部76A、76B、76C、78A、78Bの平面形状は、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bの平面形状にそれぞれ対応する。
【0047】
図4(B)に示すように、加熱プレート70、72それ自体の平面形状は、凸部76A、76B、76C、78A、78Bの平面配置(つまり、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bの平面配置)に応じた任意の形状であってよい。図4(B)に示した例では、上加熱プレート70は、3つの凸部76A、76B、76Cの配置に対応した三角形の平面形状を有する(図4(B)では、代表的に上加熱プレート70だけを示すが、下加熱プレート70も同様である)。
【0048】
加熱プレート70、72の加熱方法には、通電加熱、誘導加熱あるいは電熱線ヒータによるヒータ加熱などの方法を採用することができる。しかし、加熱プレート70、72は、凸部76A、76B、76C、78A、78Bを有しており、さらには、その平面形状が長方形でなく、要するに単純な直方体の形状を有していない。そのため、加熱プレート70、72を全体的に均一温度に加熱すること、或は、少なくとも被加工材74に接触することになる凸部76A、76B、76C、78A、78Bを均一温度に加熱することは、通電加熱または誘導加熱では難しい。そこで、この実施形態では電熱線ヒータによる加熱を採用する。加熱プレート70、72を全体的に均一温度に加熱できるようにするために、或は、少なくとも凸部76A、76B、76C、78A、78Bを均一温度に加熱できるようにするために、図4(B)に示すように、加熱プレート70、72の各々には、その全体領域にわたってほぼ均一な密度で電熱線ヒータ82、83が張り巡らされる。電熱線ヒータによる加熱法を採用する場合、加熱プレート70、72の材料は、金属でも絶縁体でもよい。
【0049】
図6に示すように、加熱装置用のプレス機械40のベース72上に、断熱/絶縁板52を介して、下加熱プレート72が固定される。下加熱プレート72の側面にも、断熱/絶縁板73A、73Bが設けられる。また、上加熱プレート70が、支柱46A、46Bに沿って移動可能なスライドホルダ90A、90B上に、断熱/絶縁板91A、91Bを介して、支持される。既に説明した第1の実施形態の場合と同様、スライド44の下降と上昇により、上加熱プレート70が下降したり上昇したりするようになっている。なお、加熱プレート70、72自体が電気絶縁性を有していたり、或は、加熱プレート70、72とその内部の電熱ヒータ82、83との間が絶縁されている場合には、断熱/絶縁板52、54、73A、73B、91A、91Bには、電気絶縁性がなくてもよい。被加工材搬送装置、例えば、2本の搬送バー92A、92Bは、2つのフィンガー94A、94Bを有し、そのフィンガー94A、94Bで被加工材74を把持して、加熱プレート70、72の間に挿入して、下加熱プレート72上に置くようになっている。尚、図6では、加熱プレート70、72に加熱用電流を流すための電源装置や配線は図示省略してある。
【0050】
この加熱装置による被加工材74の加熱工程の1サイクルの動作は、図3を参照して既に説明した動作と基本的に同じである。すなわち、まず、加熱プレート70、72が所定の加熱温度まで加熱される(図3、S1−S2)。続いて直ちに、プレス加工前の平板状の被加工材74が下加熱プレート72上に置かれる(S3)。続いて直ちに、加熱プレート70、72が被加工材74をサンドイッチして(S4)、被加工材74を加熱する(S5)。
【0051】
加熱プレート70、72が被加工材74をサンドイッチすると、加熱プレート70、72の凸部76A、76B、76C、78A、78Bだけが、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bの上下両面に密着することになる。その結果、被加工材74のプレス加工予定部分領域80A、80Bだけが選択的に加熱される。その後、直ちに、そのプレス加工予定部分領域80A、80Bにだけプレス加工を施すことにより、図5に示すように、そのプレス加工予定部分領域80A、80Bにだけを選択的にプレス成形することができる。
【0052】
ところで、加熱プレート70、72の構造の変形例として、加熱プレート70、72を金属製にするとともに、その凸部76A、76B、76C、78A、78Bにだけ不純物をドープするなどの方法により、電気抵抗率において、凸部76A、76B、76C、78A、78Bだけを加熱プレート70、72の本体部分より十分高くするようにしてもよい。それに加え、加熱プレート70、72の平面形状を長方形(加熱プレート70、72の、本体部分を直方体)に形成してもよい。そのような構造を採用すると、加熱プレート70、72中電流が流れ得る部分は、実質的に直方体の本体部分に限定されるので、通電加熱または誘導加熱の方法で加熱プレート70、72を加熱した場合にも、加熱プレート70、72の全体領域を均一温度で加熱することが容易になる。
【0053】
上述した第2の実施形態にかかる加熱装置においては、被加工材74は、図1に示した被加工材14のような、大きい母板材から切り出された小さい個別板片であってもよいし、或は、母板材それ自体のような広い板材(例えば、順送加工の被加工材である長大な帯状の母板材)であってもよい。被加工材74の所望部分領域だけを選択的に加熱することが可能であるために、この加熱装置を用いると、例えば以下のような新たな加工方法の可能性が開けてくる。すなわち、高抗張力鋼のように冷間プレス成形が困難な材料は、一般に温/熱間プレス法で成形される。しかし、順送加工法による冷間プレス成形ラインにおいて、成形用プレス機械の直前にこの加熱装置を組み込むと、被加工材である長大な帯状の母板材の特定部分領域だけを選択的に加熱して、その特定部分領域だけを成形用プレス機械で選択的に加工できるようになる。その結果、高抗張力鋼のような冷間成形が困難な材料に対しても、温/熱間プレス成形に代えて、冷間順送加工を適用することができる。また、温/熱間プレス成形のラインにおいても、この加熱装置を組み込むことで、局部的なエンボス加工、局部抜き打ち、あるいは局部絞り加工などが一層容易に行なえるようになる。
【0054】
図7は、本発明の第3の実施形態にかかる加熱装置で用いられる加熱プレートの構造を示す(代表的に一方の加熱プレートだけを示すが、他方の加熱プレートも同様である)。このうち、図7(A)は、加熱プレートの断面図であり、図7(B)は、加熱プレートの平面図である。
【0055】
この第3の実施形態にかかる加熱装置も、上述した第2の実施形態と同様に、被加工材の特定部分領域だけを選択的に加熱するためのものであり、その全体的な構成は、図6に示した第2の実施形態のそれと同様である。
【0056】
図7に示すように、加熱プレート100の主面に、被加工材の加熱したい特定部分領域にだけ接触する凸部102A、120Bが取り付けられる。これらの凸部102A、120Bは、加熱プレート100からは分離された個別の部品として予め用意され、そして、加熱プレート100の主面に取り付けられたものである。生産ラインや被加工材が異なれば、被加工材の加熱したい特定部分領域の位置、形状、サイズが異なるが、それぞれの要求に応じて凸部102A、120Bを用意することで、同じ加熱プレート100を、異なる生産ラインや被加工材の加熱に利用することができる。
【0057】
図7の例では、加熱プレート100の方法として、加熱プレート100の全体領域を均一温度で加熱するために、電熱線ヒータ104による加熱方法が採用される。しかし、加熱プレート100の材料を金属とし、その形状を直方体とし、さらに、凸部102A、120Bを加熱プレート100より電気抵抗率が十分に高い金属、半導体または絶縁体製とすれば、通電加熱または誘導加熱の方法で加熱プレート70、72を加熱した場合にも、加熱プレート100の全体領域を均一温度で加熱することが容易になる。
【0058】
図8は、本発明の第4の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す。なお、図8においては、図2、6に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図2、6と同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。
【0059】
図8に示す加熱装置も、上述した第2の実施形態と同様に、被加工材74の特定の部分領域を選択的に加熱するためのものであるが、加熱プレート10,12は、図1および図2に示した第1の実施形態のそれと同様の直方体の金属プレートである。加熱プレート10,12の加熱方法には、既に説明したいくつかの方法が採用できるが、この実施形態では、第1の実施形態と同様に通電加熱を採用する。加熱プレート10,12のそれぞれの両側面には、図1および図2に示した第1の実施形態の場合と同様、電源回路60から供給される加熱用電流を加熱プレート10,12に流すための電極20A、20B、22A、22Bが接合されている(図8に示す電極20A、20B、22A、22Bの具体的形状は図1および図2に示したものとは若干異なるが実質機能は同様である。)。
【0060】
また、上加熱プレート10の主面の正面に、被加工材74のプレス加工予定部分領域の上面に接触するため上接触板片110A、110Bが配置される。上接触板片110A、110Bは、支柱46A、46Bに沿って上下に移動可能なスライドホルダ111A、111Bにより支持される。伸縮自在のスペーサ114A、114Bが、スライドホルダ111A、111Bと上加熱プレート10の電極20A、20Bとの間に設けられる。スペーサ114A、114Bは、例えば、支柱に46A、46Bに嵌装されたコイル状のバネである。スペーサ114A、114Bは、外力がかからない限り、上加熱プレート10と上接触板片110A、110Bとを若干距離だけ離して配置する。
【0061】
同様に、下加熱プレート12の主面の正面に、被加工材74のプレス加工予定部分領域の下面に接触するための下接触板片112A、112Bが配置される。下接触板片112A、112Bは、支柱46A、46Bに沿って上下に移動可能なスライドホルダ116A、116Bにより支持される。伸縮自在のスペーサ118A、118Bが、スライドホルダ118A、118Bと下加熱プレート12の電極22A、22Bとの間に設けられる。スペーサ118A、118Bは、例えば、支柱に46A、46Bに嵌装されたコイル状のバネである。スペーサ118A、118Bは、外力がかからない限り、下加熱プレート12と下接触板片112A、112Bとを若干距離だけ離して配置する。
【0062】
被加工材74は、搬送バー92A、92Bのフィンガー94A、94Bにより把持されて、上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bとの間に挿入されて、下接触板片112A、112B上に降ろされるようになっている。
【0063】
この加熱装置による加熱工程の1サイクルの動作は、図3を参照して既に説明した動作と基本的に同じである。すなわち、まず、加熱プレート10、12が所定の加熱温度まで加熱される(図3、S1−S2)。加熱プレート10、12は直方体であるから、通電加熱または誘導加熱の方法でも、加熱プレート10、12は全体的にほぼ均一温度に加熱される。続いて直ちに、被加工材74が上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bとの間に挿入されて、下接触板片112A、112B上に降ろされる(S3)。被加工材74が降ろされると、下接触板片112A、112Bが押し下げられて下加熱プレート12に密着するとともに、被加工材74の加工予定部分領域にも密着する。その後直ちに、スライド44が下降して、上加熱プレート10を下降させる(S4)。上加熱プレート10が下降すると、上接触板片110A、110Bも押し下げられて、ついには、上接触板片110A、110Bが、被加工材74の加工予定部分領域に密着するとともに、上加熱プレート10にも密着する。これで、両加熱プレート10、12が被加工材74をサンドイッチした状態になる。
【0064】
加熱プレート10、12が被加工材74をサンドイッチすると、加熱プレート10、12の主面上の接触板片110A、110B、112A、112Bだけが、被加工材74のプレス加工予定部分領域に密着することになる。その結果、加熱プレート10、12の熱が接触板片110A、110B、112A、112Bを通じて被加工材74のプレス加工予定部分領域に供給されて、プレス加工予定部分領域だけが選択的に加熱される。
【0065】
この加熱装置においては、加熱プレート10、12の通電中、加熱プレート10、12から接触板片110A、110B、112A、112Bが離れているので、接触板片110A、110B、112A、112Bとして熱伝導率の高い金属を用いることができる。
【0066】
図9は、図2に示した第1の実施形態にかかる加熱装置の変形例の全体の構成を示す。図9において、図2に示した要素とほぼ同様の機能をもつ要素には同一の参照番号を付してある。以下、図9の加熱装置について、図2の加熱装置と異なる点を中心に説明する。
【0067】
図9に示すように、下加熱プレート12が、ベース42に固定された支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できるようになっている。下加熱プレート12と断熱/絶縁板52との間に、下加熱プレート12を上方へ押し上げて断熱/絶縁板52から離間させる部材、例えばコイル状のバネ48A、48Bが配置される。これらのバネ48A、48Bは、支柱46A、46Bに嵌装される。支柱46A、46Bの上端には、ストッパ50A、50Bが取り付けられる。これらストッパ50A、50Bは、下加熱プレート12のそれ以上の上昇を止めて、下加熱プレート12の支柱46A、46Bからの脱落を防止する。
【0068】
スライド44の下面に、断熱/絶縁板54が取り付けられる。スライド44の下面には、また、上加熱プレート10の位置を制御するためのガイド部材、例えば、絶縁材料製の2本の支柱53A、53Bが、鉛直下方向に立設される。上加熱プレート10は支柱53A、53Bに沿って上下方向に移動できる。上加熱プレート10と断熱/絶縁板54との間に、上加熱プレート10を下方へ押し下げて断熱/絶縁板54から離間させる部材、例えばコイル状のバネ52A、52Bが配置される。これらのバネ52A、52Bは、支柱53A、53Bに嵌装される。支柱53A、53Bの上端には、ストッパ51A、51Bが取り付けられる。これらストッパ51A、51Bは、上加熱プレート10のそれ以上の加工を止めて、上加熱プレート10の支柱53A、53Bからの脱落を防止する。
【0069】
図9に示すように、スライド44が上死点に位置するときには、上加熱プレート10は、バネ52A、52Bの作用で、スライド44に取り付けられた断熱/絶縁板54から離れ、また、下加熱プレート12は、バネ48A、48Bの作用で、ベース42に取り付けられた断熱/絶縁板52から離れた状態にある。この離間状態により、上下加熱プレート10、12の断熱効果が良い。上加熱プレート10と下加熱プレート12との間には、そこに被加工材14を出し入れするための空間が十分大きく開いている。
【0070】
スライド44が下降していくと、上加熱プレート10と下加熱プレート12とが、被加工材14の全体領域の両面に接触する。さらにスライド44が下降していくと、上加熱プレート10は断熱/絶縁板54に密着し、下加熱プレート12は断熱/絶縁板52に密着する。そして、上下加熱プレート10、12は、プレス機械40によって、被加工材14の全体領域の両面に、所定の圧力で押し付けられる。その後、スライド44が上昇すると、バネ52A、52Bの作用で、上加熱プレート10は断熱/絶縁板54から離れ、同時に、バネ48A、48Bの作用で、下加熱プレート12は断熱/絶縁板52から離れる。
【0071】
図10は、この加熱装置によって行われる、被加工材14の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示す。
【0072】
図10に示すように、ステップS11で、スライド44が上死点で待機している。ステップS12で、上加熱プレート10と下加熱プレート12のそれぞれに大電流が供給されて、これらの加熱プレート10、12が所定の加熱温度にまで加熱される。加熱プレート10、12の加熱温度は、被加工材14の加熱予定温度に応じて予め定められている。加熱プレート10、12は、秒オーダ程度の非常に短時間で、全体的にほぼ均一に上記加熱温度まで加熱される。
【0073】
加熱プレート10、12が上記加熱温度まで昇温すると、直ちに、ステップS13で、プレ成形前の平板状の被加工材14が下加熱プレート12上に置かれる。続いて直ちに、ステップS14で、スライド44が下降して上加熱プレート10を押し下げ、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチする。続いて、ステップS15で、被加工材14を両加熱プレート10、12でサンドイッチした状態を、所定の加熱時間だけ維持する。その間、被加工材14が変形しない程度の微力な加圧力を上加熱プレート10に加えて、両加熱プレート10、12の主面を被加工材14の全体領域の両面に密着させる。被加工材14は全体的に加熱されるとともに、被加工材14の両面の酸化も防止される。
【0074】
サンドイッチ状態を所定時間維持した後、ステップS16で、スライド44が上昇する。続いて直ちに、ステップS17で、加熱された被加工材14が下加熱プレート10上から取り出され、そして直ちに、その被加工材14がプレス成形用のプレス機械(図示せず)にセットされる。その後、プレス成形用のプレス機械では、加熱温度になっている被加工材14のプレス成形が行なわれる。
【0075】
図11は、図6に示した本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置の変形例の全体構成を示す正面図である。なお、図11において、図6に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図6と同じ参照番号が付されている。図11では、加熱プレート70、72に加熱用電流を流すための電源装置や配線は図示省略してある。以下、図11の加熱装置について、図6の加熱装置と異なる点を中心に説明する。
【0076】
図11に示すように、ベース42の上面に、断熱/絶縁板52が敷かれる。また、ベース42の上面に、支柱46A、46Bが鉛直上方に立設される。下加熱プレート72が、支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できる。下加熱プレート12の両側の側面にも、断熱/絶縁板73A、73Bが設けられる。下加熱プレート72を押し上げてベース42上の断熱/絶縁板52から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ48A、48Bが、支柱46A、46Bに嵌装される。ストッパ50A、50Bが、下加熱プレート72の支柱46A、46Bからの脱落を防止する。
【0077】
また、スライド44の下面に、断熱/絶縁板54が取り付けられる。スライド44の下面には、また、支柱53A、53Bが鉛直下方に立設される。上加熱プレート70が、支柱53A、53Bに沿って上下方向に移動できる。上加熱プレート70の両側の側面にも、断熱/絶縁板91A、91Bが設けられる。上加熱プレート70を押し下げてスライド44上の断熱/絶縁板54から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ52A、52Bが、支柱53A、53Bに嵌装される。ストッパ51A、51Bが、上加熱プレート70の支柱53A、53Bからの脱落を防止する。
【0078】
この変形例にかかる加熱装置でも、図9に示した変形例にかる加熱装置と同様に、スライド44が高い位置にあるときには、上加熱プレート70がスライド44上の断熱/絶縁板54から離れ、下加熱プレート72がベース42上の断熱/絶縁板52から離れているので、上下加熱プレート70、72の断熱効果が良い。スライド44が下降すれば、上下加熱プレート70、72は被加工材74に押し付けられる。
【0079】
図12は、図8に示した本発明の第3の実施形態にかかる加熱装置の変形例の全体構成を示す正面図である。なお、図12において、図8に示された要素と機能的にほぼ同様の要素には、図8と同じ参照番号を付してある。以下、図12の加熱装置について、図8の加熱装置と異なる点を中心に説明する。
【0080】
図12に示すように、ベース42の上面に、断熱/絶縁板52が敷かれる。また、ベース42の上面に、支柱46A、46Bが鉛直上方に立設される。下加熱プレート12が、支柱46A、46Bに沿って上下方向に移動できる。下加熱プレート72を押し上げてベース42上の断熱/絶縁板52から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ48A、48Bが、支柱46A、46Bに嵌装される。さらに、下接触板片112A、112Bが、支柱46A、46Bに沿って上下に移動できる。下接触板片112A、112Bを押し上げて下加熱プレート12から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ118A、118Bが、支柱46A、46Bに嵌装される。ストッパ50A、50Bが、下加熱プレート12と下接触板片112A、112Bの支柱46A、46Bからの脱落を防止する。
【0081】
また、スライド44の下面に、断熱/絶縁板54が取り付けられる。スライド44の下面には、また、支柱53A、53Bが鉛直下方に立設される。上加熱プレート10が、支柱53A、53Bに沿って上下方向に移動できる。上加熱プレート10を押し下げてスライド44上の断熱/絶縁板54から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ52A、52Bが、支柱53A、53Bに嵌装される。さらに、上接触板片110A、110Bが、支柱53A、53Bに沿って上下に移動できる。上接触板片110A、110Bを押し下げて上加熱プレート10から離間させるための部材、例えばコイル状のバネ114A、114Bが、支柱53A、53Bに嵌装される。ストッパ51A、51Bが、上加熱プレート70と上接触板片110A、110Bの支柱53A、53Bからの脱落を防止する。
【0082】
この変形例にかかる加熱装置でも、図9及び図11にそれぞれ示した変形例にかる加熱装置と同様に、スライド44が高い位置にあるときには、上加熱プレート10がスライド44上の断熱/絶縁板54から離れ、下加熱プレート12がベース42上の断熱/絶縁板52から離れているので、上下加熱プレート10、12の断熱効果が良い。スライド44が下降すれば、上下加熱プレート10、12が上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bにそれぞれ押し付けられると共に、上接触板片110A、110Bと下接触板片112A、112Bが被加工材74に押し付けられる。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【0084】
例えば、被加工材の搬送の邪魔になる支柱を無くすために、上加熱プレート10の保持方法として、吊り下げなどの方法を採用することもできる。また、加熱プレートのほぼ均等温度に加熱される領域は、必ずしも加熱プレートの全体領域でなければならないわけではなく、少なくとも被加工材に作用する領域がカバーされていれば、部分的な領域であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるプレス成形用の被加工材の加熱装置の要部の構成を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【図3】第1の実施形態にかかる加熱装置よって行われる、被加工材の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示すフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置に用いられる2枚の加熱プレートの構造を示し、特に、図4(A)は2枚の加熱プレートの配置関係を示す断面図、図4Bは各加熱プレートの平面図。
【図5】第2の実施形態にかかる加熱装置で加熱された後の被加工材のプレス成形結果例を示す断面図。
【図6】第2の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す正面図。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかる加熱装置で用いられる加熱プレートの構造を示し、特に、図7(A)は加熱プレートの断面図、図7(B)は加熱プレートの平面図。
【図8】本発明の第4の実施形態にかかる加熱装置の全体構成を示す正面図。
【図9】第1の実施形態の変形例にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【図10】第1の実施形態の変形例にかかる加熱装置よって行われる、被加工材の加熱工程の1サイクルの動作の流れを示すフローチャート。
【図11】第2の実施形態の変形例にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【図12】第4の実施形態の変形例にかかる加熱装置の全体の構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0086】
10、70、100 上加熱プレート
12、72、100 下加熱プレート
14、74 被加工材
20A、20B、22A、22B 電極
40 加熱装置用のプレス機械
42 ベース
44 スライド
52、54 断熱/絶縁板
60 電源回路
76A、76B、76C、78A、78B、102A、102B、 加熱プレートの凸部
80A、80B 被加工材の加工予定部分領域
84、104 電熱線ヒータ
110A、110B 上接触板片
112A、112B 下接触板片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形のための被加工材の加熱装置において、
プレス成形前の被加工材を間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、少なくとも2枚の加熱プレートと、
前記加熱プレートの各々を、少なくとも前記被加工材に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御する制御手段(66)と
を備え、
前記加熱プレートが加熱され且つ前記被加工材が前記加熱プレート間に挿入された場合、前記加熱プレートの一方が他方に近づいて前記被加工材の所定領域の両面に密着するように前記被加工材をサンドイッチし、そして、前記被加工材を変形させない程度の加圧力で前記加熱プレートが前記被加工材をサンドイッチした状態を所定時間維持する加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱装置において、
前記被加工材(14)の所定領域が、前記被加工材(14)の全体領域である加熱装置。
【請求項3】
請求項1記載の加熱装置において、
前記被加工材(74)の所定領域が、前記被加工材(74)の部分領域である加熱装置。
【請求項4】
請求項1記載の加熱装置において、
前記加熱プレート(10、12)がそれぞれ直方体であり、
前記加熱手段は、前記加熱プレート(10、12)に埋め込まれたヒータで加熱するヒータ加熱、前記加熱プレート(10、12)自体に電流を流す通電加熱、または前記加熱プレート(10、12)自体に誘導電界を加える誘導加熱の方法により、前記加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱装置。
【請求項5】
プレス成形のための被加工材の加熱方法において、
少なくとも2枚の加熱プレートの各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱ステップと、
前記加熱プレートの間に、プレス成形前の被加工材を挿入する挿入ステップと、
前記挿入ステップ後に前記加熱プレートの一方を他方に近づけて、前記加熱プレートが前記被加工材の所望領域の両面に密着するようにして前記被加工材をサンドイッチするサンドイッチステップと、
前記被加工材を変形させない程度の加圧力で前記加熱プレートが前記被加工材をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップと
を有する加熱方法。
【請求項6】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱装置において、
プレス成形前の被加工材(14)を間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)と、
前記加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱手段と、
前記加熱手段と前記運動手段(40)を制御する制御手段(66)と
を備え、
前記加熱プレート(10、12)が加熱され且つ前記被加工材(14)が前記加熱プレート(10、12)間に挿入された場合、前記加熱プレート(10、12)の一方が他方に近づいて前記被加工材(14)の全体領域の両面に密着するように前記被加工材(14)をサンドイッチし、そして、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する加熱装置。
【請求項7】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱方法において、
少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱ステップと、
前記加熱プレート(10、12)の間に、プレス成形前の被加工材(14)を挿入する挿入ステップと、
前記挿入ステップ後に前記加熱プレート(10、12)の一方を他方に近づけて、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)の全体領域の両面に密着するようにして前記被加工材(14)をサンドイッチするサンドイッチステップと、
前記加熱プレートが前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップと
を有する加熱方法。
【請求項8】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱装置において、
プレス成形前の被加工材(14)を間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、それぞれ直方体の少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)と、
前記加熱プレート(10、12)に埋め込まれたヒータで加熱するヒータ加熱、前記加熱プレート自体に電流を流す通電加熱、または前記加熱プレート(10、12)自体に誘導電界を加える誘導加熱の方法により、前記加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御する制御手段(66)と
を備え、
前記加熱プレート(10、12)が加熱され且つ前記被加工材(14)が前記加熱プレート(10、12)間に挿入された場合、前記加熱プレート(10、12)の一方が他方に近づいて前記被加工材(14)の全体領域の両面に密着するように前記被加工材(10、12)をサンドイッチし、そして、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する加熱装置。
【請求項9】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱方法において、
それぞれ直方体の少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)を、前記加熱プレート(10、12)に埋め込まれたヒータで加熱するヒータ加熱、前記加熱プレート自体に電流を流す通電加熱、または前記加熱プレート(10、12)自体に誘導電界を加える誘導加熱の方法により加熱する加熱ステップと、
前記加熱プレート(10、12)の間に、プレス成形前の被加工材(14)を挿入する挿入ステップと、
前記挿入ステップ後に前記加熱プレート(10、12)の一方を他方に近づけて、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)の所望領域の両面に密着するようにして前記被加工材(14)をサンドイッチするサンドイッチステップと、
前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップと
を有する加熱方法。
【請求項1】
プレス成形のための被加工材の加熱装置において、
プレス成形前の被加工材を間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、少なくとも2枚の加熱プレートと、
前記加熱プレートの各々を、少なくとも前記被加工材に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御する制御手段(66)と
を備え、
前記加熱プレートが加熱され且つ前記被加工材が前記加熱プレート間に挿入された場合、前記加熱プレートの一方が他方に近づいて前記被加工材の所定領域の両面に密着するように前記被加工材をサンドイッチし、そして、前記被加工材を変形させない程度の加圧力で前記加熱プレートが前記被加工材をサンドイッチした状態を所定時間維持する加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱装置において、
前記被加工材(14)の所定領域が、前記被加工材(14)の全体領域である加熱装置。
【請求項3】
請求項1記載の加熱装置において、
前記被加工材(74)の所定領域が、前記被加工材(74)の部分領域である加熱装置。
【請求項4】
請求項1記載の加熱装置において、
前記加熱プレート(10、12)がそれぞれ直方体であり、
前記加熱手段は、前記加熱プレート(10、12)に埋め込まれたヒータで加熱するヒータ加熱、前記加熱プレート(10、12)自体に電流を流す通電加熱、または前記加熱プレート(10、12)自体に誘導電界を加える誘導加熱の方法により、前記加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱装置。
【請求項5】
プレス成形のための被加工材の加熱方法において、
少なくとも2枚の加熱プレートの各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱ステップと、
前記加熱プレートの間に、プレス成形前の被加工材を挿入する挿入ステップと、
前記挿入ステップ後に前記加熱プレートの一方を他方に近づけて、前記加熱プレートが前記被加工材の所望領域の両面に密着するようにして前記被加工材をサンドイッチするサンドイッチステップと、
前記被加工材を変形させない程度の加圧力で前記加熱プレートが前記被加工材をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップと
を有する加熱方法。
【請求項6】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱装置において、
プレス成形前の被加工材(14)を間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)と、
前記加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱手段と、
前記加熱手段と前記運動手段(40)を制御する制御手段(66)と
を備え、
前記加熱プレート(10、12)が加熱され且つ前記被加工材(14)が前記加熱プレート(10、12)間に挿入された場合、前記加熱プレート(10、12)の一方が他方に近づいて前記被加工材(14)の全体領域の両面に密着するように前記被加工材(14)をサンドイッチし、そして、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する加熱装置。
【請求項7】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱方法において、
少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、ほぼ均一温度に加熱する加熱ステップと、
前記加熱プレート(10、12)の間に、プレス成形前の被加工材(14)を挿入する挿入ステップと、
前記挿入ステップ後に前記加熱プレート(10、12)の一方を他方に近づけて、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)の全体領域の両面に密着するようにして前記被加工材(14)をサンドイッチするサンドイッチステップと、
前記加熱プレートが前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップと
を有する加熱方法。
【請求項8】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱装置において、
プレス成形前の被加工材(14)を間に挿入することが可能であり、且つ一方が他方に近づいたり離れたりするように動かし得る、それぞれ直方体の少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)と、
前記加熱プレート(10、12)に埋め込まれたヒータで加熱するヒータ加熱、前記加熱プレート自体に電流を流す通電加熱、または前記加熱プレート(10、12)自体に誘導電界を加える誘導加熱の方法により、前記加熱プレート(10、12)の各々を、少なくとも前記被加工材(14)に作用する領域にわたり、加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御する制御手段(66)と
を備え、
前記加熱プレート(10、12)が加熱され且つ前記被加工材(14)が前記加熱プレート(10、12)間に挿入された場合、前記加熱プレート(10、12)の一方が他方に近づいて前記被加工材(14)の全体領域の両面に密着するように前記被加工材(10、12)をサンドイッチし、そして、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する加熱装置。
【請求項9】
プレス成形のための被加工材(14)の加熱方法において、
それぞれ直方体の少なくとも2枚の加熱プレート(10、12)を、前記加熱プレート(10、12)に埋め込まれたヒータで加熱するヒータ加熱、前記加熱プレート自体に電流を流す通電加熱、または前記加熱プレート(10、12)自体に誘導電界を加える誘導加熱の方法により加熱する加熱ステップと、
前記加熱プレート(10、12)の間に、プレス成形前の被加工材(14)を挿入する挿入ステップと、
前記挿入ステップ後に前記加熱プレート(10、12)の一方を他方に近づけて、前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)の所望領域の両面に密着するようにして前記被加工材(14)をサンドイッチするサンドイッチステップと、
前記加熱プレート(10、12)が前記被加工材(14)をサンドイッチした状態を所定時間維持する維持ステップと
を有する加熱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−245196(P2007−245196A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72493(P2006−72493)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(394019082)コマツ産機株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(394019082)コマツ産機株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]