説明

プレス機械のワーク搬送装置及びクロスバーユニット

【課題】 簡単かつ安価で軽量コンパクトな構成により、段取り作業を容易かつ迅速で正確なものとしつつ、駆動機構への給脂を不要にでき、ワークの搬送速度の向上の要請延いては生産効率の向上等にも応えることができるプレス機械のワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、ワーク搬送方向に略直交して延在するクロスバー4に支持されワークを保持・解放可能なワーク保持手段5を備えたプレス機械のワーク搬送装置1であって、ワーク保持手段5をクロスバー4の長手方向に対して摺動自在に支持案内するガイド手段8と、ガイド手段8により支持案内されるワーク保持手段5をクロスバー4の長手方向に沿って移動させるように駆動する駆動手段11と、駆動手段11とは別経路で作用してワーク保持手段5をクロスバー4の長手方向に対して位置固定・解放可能なブレーキ手段15と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械(マシン)のワーク搬送装置及びクロスバーユニットに関する。例えばプレスマシン間におけるワークの搬送装置及びクロスバーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレスマシン間などにおけるワークの搬送装置として、種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、従来のワーク搬送方向に略直交する方向に延在されるクロスバーユニットを備えたワーク搬送装置として、ワーク搬送方向に往復移動されるクロスバーと、クロスバーに備えられてワークを保持・開放するワーク保持手段と、クロスバーの長手方向に沿って回動自在に設けられワーク保持手段と羅合するねじ軸と、このねじ軸を回転駆動する回転駆動手段と、前記ねじ軸の回転駆動によってワーク保持手段をクロスバーの長手方向に沿って移動可能に支持及びガイドするガイド手段と、を備えて構成されたものが知られている。
【0004】
特許文献1には、特許文献1に添付の図面に記載されているように、クロスバー(7)の少なくとも一つに該クロスバー(7)の長手方向に沿って回動自在に設けられ外周部の複数箇所にそれぞれ雄ねじを有する一本のねじ軸(20)と、前記ねじ軸(20)を回動させる回動駆動手段(25)と、が備えられ、複数のワーク保持手段(9)の少なくとも一つずつを前記ねじ軸(2)の複数箇所の雄ねじにそれぞれ螺合させ、かつ前記クロスバー(7)の長手方向に沿って移動自在に設けて、ワーク保持手段(9)でのワーク保持とクロスバー(7)の上下動及びワーク搬送方向への往復動とによりワーク(11)を次工程に搬送するようにしたものが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献2に添付の図面に記載されているように、ワーク搬送方向と略直交する方向に設けられ、かつワーク保持可能なワーク保持手段(9)が設けられたクロスバー(7)を備えたプレス機械のワーク搬送装置において、少なくとも一本のクロスバー(7)に設けたワーク保持手段(9)を、クロスバー(7)の長手方向に沿って移動自在とし、該ワーク保持手段(9)の移動を駆動するリニアモータ(17)と、前記リニアモータ(17)をプレス機械の運転と同期及び/又は単独で制御するコントローラ(14)と、を備えるようにしたものが記載されている。
【0006】
特許文献3には、特許文献3に添付の図面に記載されているように、プレスハウジング(4)内のプレスライン(L)を挟んで対向する左右両側位置に、ワーク送りピッチ単位でモジュール化したガイドビーム体(19)を長手方向に着脱可能に連結してなるガイドビーム(20)が平行に固定されると共に、ガイドビーム(20)の各ガイドビーム体(19)の一端面に長手方向に沿うガイドレール(21)が設けられており、このガイドレール(21)に移動自在に係合支持されるクロスバーキャリア(22)にクロスバー(13)に昇降動作を与えるリフト用サーボモータ(24)が組み付けられると共に、クロスバーキャリア(22)を介してクロスバー(13)に、ラック&ピニオン機構によって、送り動作を与えるフィード用サーボモータ(27)が装備されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−290850号公報
【特許文献2】特開2003−290851号公報
【特許文献3】特開平11−57899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1〜3に記載されるような、ワーク搬送方向に略直交する方向に延在されるクロスバーユニットを備えたワーク搬送装置は、加工するワークのサイズや形状などに応じて、ワークを真空吸着や磁気吸着などにより保持するワーク保持手段の配置を自動的に変更可能であるから、段取り作業を容易かつ迅速で正確なものとすることができ有益である。
【0009】
しかし、一方で、ワークの搬送速度の高速化延いてはプレス加工の高速化(生産効率の向上)の要請があり、従来のように、クロスバーに沿って延在される「ねじ軸」や「ラック」は比較的重量が嵩むため、ワークの搬送速度(クロスバーの往復移動速度)を上げようとすると、慣性力が大きいため振動等が大きくなるなど、所定レベル以上にワーク搬送速度を上げることができないといった実情がある。
【0010】
例えば、軽量化のために、前記「ねじ軸」や「ラック」の長さを短縮化するといった対策も考えられるが、かかる対策では、ワーク保持手段の可動範囲が狭く制限されてしまうといった実情がある。
【0011】
また、従来の「ねじ軸」や「ラック」を用いる構成では、羅合或いは噛合する部材間にグリース等の給脂を行うなどの必要があり、給脂したグリースがワーク等に付着して後工程や製品の品質に悪影響を与えてしまうといったおそれもある。
【0012】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価で、軽量コンパクトな構成により、クロスバーの長手方向に対するワーク保持手段の相対位置を自動的に変更可能な機構を実現することで、段取り作業を容易かつ迅速で正確なものとしつつ、駆動機構への給脂を不要にでき、ワークの搬送速度の向上の要請延いては生産効率の向上等にも応えることができるプレス機械のワーク搬送装置及びクロスバーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため、本発明に係るプレス機械のワーク搬送装置は、
ワーク搬送方向に略直交して延在するクロスバーに支持されワークを保持・解放可能なワーク保持手段を備えたプレス機械のワーク搬送装置であって、
ワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内するガイド手段と、
ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に沿って移動させるように駆動する駆動手段と、
前記駆動手段とは別経路で作用して、ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して位置固定・解放可能なブレーキ手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記駆動手段は、ワーク保持手段側に略一体的に取り付けられる電動モータと、電動モータの出力回転軸に取り付けられたピニオンギヤと、当該ピニオンギヤに噛合すると共にクロスバーの長手方向に沿ってクロスバー側に略一体的に取り付けられるラックギヤと、を含んで構成されることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、前記ブレーキ手段は、ワーク保持手段側に略一体的に取り付けられ、クロスバーに対して摩擦要素を作用させることによりワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して位置固定・解放可能に構成されたことを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、前記摩擦要素は、クロスバーの長手方向に沿ってクロスバーと略一体的に延在されるガイド手段のガイドレールに対して作用することを特徴とすることができる。
【0017】
また、本発明に係るクロスバーユニットは、
ワークを保持・解放可能なワーク保持手段を支持しワーク搬送方向に略直交して延在するクロスバーを有するプレス機械のワーク搬送装置のクロスバーユニットであって、
ワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内するガイド手段と、
ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に沿って移動させるように駆動する駆動手段と、
前記駆動手段とは別経路で作用して、ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して位置固定・解放可能なブレーキ手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単かつ安価で、軽量コンパクトな構成により、クロスバーの長手方向に対するワーク保持手段の相対位置を自動的に変更可能な機構を実現することで、段取り作業を容易かつ迅速で正確なものとしつつ、駆動機構への給脂を不要にでき、ワークの搬送速度の向上の要請延いては生産効率の向上等にも応えることができるプレス機械のワーク搬送装置及びクロスバーユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】同上実施の形態のプレス機械のワーク搬送装置を構成するクロスバーユニットの側面図(ワーク搬送方向と直交する方向から見た図)である。
【図3】図2のプレス機械のワーク搬送装置を構成するクロスバーユニットを下側(ワークW側)から見た下面図である。
【図4】(A)は、本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置を構成するクロスバーユニット(他の構成例)の側面図(ワーク搬送方向と直交する方向から見た図)であり、(B)はクロスバー4及びレール9を省略して示した(A)の斜視図である。
【図5】同上実施の形態のプレス機械のワーク搬送装置を構成するブレーキ装置の一例を説明するための一部を透かして示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るプレス機械のワーク搬送装置の一例を示す実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置1は、クロスバー4に支持されているワーク保持装置5(本発明に係るワーク保持手段に相当する)によってワークWを真空吸着等によって保持すると、その保持状態を維持して、ワーク搬送用駆動装置2の揺動アーム2Aを回動支点2a廻りの搬送方向下流側へ揺動(回動)させることで、揺動アーム2Aに連結されたリンクアーム2Bを、案内溝2Cに沿って上下動する回動支点2cを揺動中心として揺動させることで、リンクアーム2Bの先端に連結されたクロスバー4、ワーク保持装置5延いてはワークWを搬送方向下流側へ搬送することができるように構成されている。
【0022】
このような揺動アーム2A、リンクアーム2Bの揺動により、ワークWを搬送方向下流側の所定位置まで搬送すると、ワーク保持装置5による真空吸着等を解放してワークWを解放する。その後、次のワークWの保持のために、ワーク搬送用駆動装置2は、揺動アーム2Aを逆方向(搬送方向上流側)に揺動させることで、リンクアーム2Bを回動支点2cを中心として搬送方向上流側に揺動させて、リンクアーム2Bの先端に連結されたクロスバー4、ワーク保持装置5を原位置(次のワークWの保持を開始する位置)へ復帰させるようになっている。
【0023】
このようにして、本実施の形態に係るワーク搬送装置1はワークWを搬送するが、ワークWの形状やサイズなどに応じて、ワーク保持装置5のクロスバー4の長手方向における設置位置を自動で変更できることが、段取り作業を容易かつ迅速で正確なものとするなどの観点から求められる。
【0024】
しかし、従来においては、このような要請に応えるための自動駆動機構をクロスバー上に備えるようにした場合には、クロスバーユニット3(特に、クロスバー4の長手方向に沿ってワーク保持装置5を移動させる駆動機構)の重量が嵩み、ワーク搬送速度の上昇に伴い振動等が大きくなって所定レベル以上にはワーク搬送速度を上げることが難しかった。このため、本発明者は種々の検討、研究、実験を行い、その結果、以下のようなワーク搬送装置を得た。
【0025】
本実施の形態に係るワーク搬送装置1は、図1に示したように、ワーク搬送用駆動装置2が搬送方向の両サイドに配設され、これらワーク搬送用駆動装置2の間にクロスバーユニット3が架設されている。
【0026】
クロスバーユニット3は、図1〜図4に示すように、両サイドのワーク搬送用駆動装置2の間に架け渡されて延在されるクロスバー4と、クロスバー4に支持されワークWを例えば真空吸着等により保持・解放することができるワーク保持装置5と、ワーク保持装置5のクロスバー4の長手方向に沿った移動をガイドするガイド装置8(本発明に係るガイド手段に相当する)と、ワーク保持装置5のクロスバー4の長手方向(ガイド装置8)に沿った移動を駆動する駆動装置11(本発明に係る駆動手段に相当する)と、クロスバー4(ガイド装置8)の長手方向におけるワーク保持装置5の位置を固定・解放するブレーキ装置15(本発明に係るブレーキ手段に相当する)と、を備えて構成されている。
【0027】
ワーク保持装置5は、例えば真空吸着や磁気吸着等によってワークWを保持・解放可能な構成とすることができるが、ここでは、一例として、図2〜図4に示したように、ワークWを真空吸着・解放可能なバキュームカップ6と、バキュームカップ6を支持すると共にワークWの搬送方向に沿って延在されるブラケット7と、を含んで構成されている。
【0028】
ガイド装置8は、クロスバー4の長手方向に沿って延在されるレール9と、クロスバー4(レール9)の長手方向に摺動自在にレール9と係合すると共にワーク保持装置5のブラケット7を支持するブロック10と、を備えて構成されている。
【0029】
本実施の形態においては、図1に示したように、複数のワーク保持装置5(ブラケット7)がワーク搬送方向に並列的に備えられているが、各ブラケット7の一端はそれぞれ対応するガイド装置8のブロック10に支持されている。
従って、各ブラケット7は、対応するガイド装置8のクロスバー4(レール9)の長手方向に沿った移動に伴ってそれぞれが移動可能な構成となっている。
【0030】
駆動装置11は、対応するブロック10毎に略一体的に取り付けられており、クロスバー4の長手方向に沿ってクロスバー4に略一体的に配設されるラックギヤ12と、当該ラックギヤ12と噛合するピニオンギヤ13を出力回転軸に備えた電動モータ14と、を備えて構成されている。なお、電動モータ14は例えば軽量なサーボモータなどを採用することができる。
【0031】
ここで、本実施の形態に係るラックギヤ12及びピニオンギヤ13は、ナイロン製(登録商標)のものが採用されている。
例えば、モノキャストナイロン、MCナイロン(登録商標:日本ポリペンコ株式会社)は所望の強度を有すると共に自己潤滑性が高く、グリース等の給脂を不要とすることができる点で有利である。モノキャストナイロンは、主原料ナイロンモノマーを大気圧下で重合・成型したものである。
【0032】
ブレーキ装置15は、図2〜図4に示すように、対応するブロック10毎に略一体的に取り付けられる共に、ガイド装置8のレール9を保持・解放することで、対応するブロック10延いてはワーク保持装置5をレール9の長手方向に対して所定位置に固定・解放可能に構成されている。
【0033】
このブレーキ装置15は、例えば、NBK(鍋屋バイテック会社)製のリニアクランプ(製品名「リニアクランパ・ズィー(Linear Clamper−Zee)」(登録商標))を利用することができる。
このリニアクランプ15は、リニアガイドレール(レール9)を直接クランプすることで、リニアガイドレール(レール9)に対してリニアクランプボディ延いてはブロック10を保持・位置決めをすることができるように構成されている。
【0034】
例えば、図5に示すように、リニアクランプ(ブレーキ装置の一例)15は、レール9の長手方向に摺動自在に係合しているリニアクランプボディの内部に、スプリング15Bにより図5中下方に弾性付勢されるピストン15Aが備えられ、このピストン15Aの裏面(図5中下側)には、図5中下側が細まったクサビ要素15Cが取り付けられている。
【0035】
クサビ要素15Cの図5中左側には摩擦要素15Dがレール9に面して設けられており、クサビ要素15Cの上下動に応じて摩擦要素15Dがレール9に対して接離するようになっている。
【0036】
すなわち、エア圧等をピストン15Aの裏面に作用させない状態では、ピストン15Aはスプリング15Bにより押圧されて図5中下方に弾性付勢された状態となる。このとき、ピストン15Aの下のクサビ要素15Cも連動して図5中下側に移動されるため、クサビ要素15Cの基端側(図5中上側)の太い部分によって、摩擦要素15Dがレール9側に押されて当接するため、摩擦要素15Dとレール9との間に摩擦力が生じて、リニアクランプボディ(ブレーキ装置15)延いてはブロック10は、レール9に固定保持されることになる。
なお、図5では省略しているが、図5に示した切断面を挟んで反対側にも、同様の機構が面対称で配設されることができ、これによりブレーキ装置15のブレーキ力アップなどを期待できる。
【0037】
一方で、エア圧等をピストン15Aの裏面に作用させると、ピストン15Aはスプリング15Bの弾性付勢力に抗して図5中上方に移動される。このとき、ピストン15Aの下のクサビ要素15Cも連動して図5中上側に移動されるため、クサビ要素15Cの先端側(図5中下側)の細い部分が摩擦要素15Dと係り合うようになるため、摩擦要素15Dのレール9に対する押圧力が消失するため、摩擦要素15Dとレール9との間の摩擦力が消失し、リニアクランプボディ(ブレーキ装置15)延いてはブロック10は、レール9に対して摺動自在な状態となる。
【0038】
このような構成を備えた本実施の形態に係るワーク搬送装置1は、段取り作業などにおいて、ワークWのサイズや形状に対応するように、各ワーク保持装置5のブラケット7をクロスバー4の長手方向に沿って自動的に移動させることができるが、その際には、
まず、ステップ1で、ブレーキ装置15によるレール9の保持を解放する。具体的には、例えば、エア圧を与えて、摩擦要素15Dとレール9との係合を解き、ブロック10がレール9に対して摺動自在な状態とする。
【0039】
ステップ2では、駆動装置11の電動モータ14を所望の方向に回転駆動して、ラックギヤ12とピニオンギヤ13の機構により、電動モータ14と略一体のブロック10(ブラケット7)を、レール9延いてはクロスバー4の長手方向に沿った所望の位置まで、予め定められたプログラムに従って或いはマニュアル操作などによって移動させる。
【0040】
ステップ3では、ブロック10(ブラケット7)が所望の位置まで移動されたら、電動モータ14の駆動を停止すると共に、ブレーキ装置15によってブロック10をレール9に対して保持固定する。詳細には、エア圧を解放して、スプリング15Bの弾性付勢力を介して摩擦要素15Dをレール9に当接させ、摩擦力によりブロック10をレール9に対して保持固定した状態とする。
【0041】
このように、ブレーキ装置15によって、ワーク保持装置5(ブラケット7、ブロック10など)を、レール9延いてはクロスバー4に対して保持固定する構成とすると、ワーク保持装置5をレール9延いてはクロスバー4に対して保持するための保持力を、ラックギヤ12及びピニオンギヤ13に作用させないようにすることができる。
【0042】
すなわち、ワーク搬送中における慣性力や振動等に伴う揺さぶりのような比較的大きな加振力が作用するような状況であってもブレーキ装置15によってブロック10をレール9に確実に保持固定することができるため、ラックギヤ12及びピニオンギヤ13には、このような比較的大きな力を作用させないようにすることができる。
【0043】
従って、ラックギヤ12及びピニオンギヤ13には、段取り(例えば上記ステップ2)の際に、ブレーキ装置15を解放してワーク保持装置5(ブラケット7、ブロック10など)をクロスバー4の長手方向に電動モータ4により移動させる際の比較的小さなトルクしか作用することがないため、ラックギヤ12及びピニオンギヤ13の材質として、強度が比較的小さく比重の小さな材料、例えばナイロン等の樹脂などを採用することができることになる。
【0044】
また、本実施の形態では、駆動装置11を、ラックギヤ12とピニオンギヤ13とを用いて構成したため、各ワーク保持装置5を他のワーク保持装置5から独立して移動させることができるので各ワーク保持装置5を任意の位置に配設することができると共に、移動範囲も大きく取ることができ、以ってワークWのサイズや形状変更への適応度合いを大きなものとすることができる。
【0045】
このように、本実施の形態に係るワーク搬送装置1によれば、クロスバー4の長手方向に沿って配設されるラックギヤ12と、これと噛合し電動モータ4により駆動されるピニオンギヤ13と、を利用した駆動装置11を採用すると共に、クロスバー4に対するワーク保持装置5(ブラケット7、ブロック10など)の保持・解放を駆動装置11から独立したブレーキ装置15によって行うようにしたので、ワーク搬送時の慣性力や振動等に伴う揺さぶりのような比較的大きな加振力が作用するような状況下でも駆動装置11側へ負担が掛からないようにすることができる。
【0046】
従って、従来のように駆動装置が前記加振力を直接受けるような構成においては、当該加振力を受けてもワーク保持装置5(ブラケット7、ブロック10など)が遊動してしまわないように駆動装置を大型化して各部の容量アップや強度アップを図る必要があったが、本実施の形態によれば、このような必要がなく、駆動装置を小型軽量化することができると共に、前記加振力によって駆動装置のギア機構等が偏摩耗したりするようなおそれを抑制することができるため、潤滑剤なども省略することができる。
【0047】
このため、小容量で小型軽量な電動モータ14を採用することができると共に、クロスバー4の長手方向に沿って配設される比較的長尺なラックギヤ12を比重の小さな材料(モノキャストナイロン等の樹脂や軽金属など)とすることができるため、クロスバーユニット3の重量を大幅に軽減することができる。
【0048】
よって、本実施の形態に係るワーク搬送装置1によれば、ワーク搬送の際の可動部分であるクロスバーユニット3(クロスバー4、駆動装置11、ワーク保持装置5など)の重量延いては慣性力を小さくすることができるため、従来に対してワーク搬送速度を上昇させることができ延いては生産効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施の形態に係るワーク搬送装置1によれば、ワークWの形状やサイズなどに応じて、ワーク保持装置5のクロスバー4の長手方向における設置位置を自動的に変更することができるため、段取り作業を容易かつ迅速で正確なものとすることができる。
【0050】
なお、本実施の形態に係るラックギヤ12及びピニオンギヤ13の材質としては、ナイロンに限らず、エンジニアリングプラスチックなどの他の比重の小さな樹脂材料を採用することができる。また、種々の特性(搬送速度高速化の要求度合い、信頼性の要求度合い、騒音振動等の要求度合い、グリース等による汚損の問題など)に応じて、他の材料、例えば、アルミ、チタンなどの比重の小さな金属材料を採用することもできる。
【0051】
また、ラックギヤ12とピニオンギヤ13を同一の材質とせず、相互に異なる材質を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
なお、本実施の形態では、ブレーキ装置15を、リニアクランプを代表例として説明したが、これに限定されるものではなく、駆動装置11とは別経路で、ワーク保持装置5(ブラケット7、ブロック10など)をクロスバー4に対して固定及び解放可能な構成のブレーキ装置であれば、本発明において適用可能である。
【0053】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 ワーク搬送装置
2 ワーク搬送用駆動装置
3 クロスバーユニット
4 クロスバー
5 ワーク保持装置
6 バキュームカップ
7 ブラケット
8 ガイド装置
9 レール
10 ブロック
11 駆動装置
12 ラックギヤ
13 ピニオンギヤ
14 電動モータ(サーボモータ等)
15 ブレーキ装置(リニアクランプ等)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搬送方向に略直交して延在するクロスバーに支持されワークを保持・解放可能なワーク保持手段を備えたプレス機械のワーク搬送装置であって、
ワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内するガイド手段と、
ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に沿って移動させるように駆動する駆動手段と、
前記駆動手段とは別経路で作用して、ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して位置固定・解放可能なブレーキ手段と、
を備えたことを特徴とするプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、ワーク保持手段側に略一体的に取り付けられる電動モータと、電動モータの出力回転軸に取り付けられたピニオンギヤと、当該ピニオンギヤに噛合すると共にクロスバーの長手方向に沿ってクロスバー側に略一体的に取り付けられるラックギヤと、を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記ブレーキ手段は、ワーク保持手段側に略一体的に取り付けられ、クロスバーに対して摩擦要素を作用させることによりワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して位置固定・解放可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記摩擦要素は、クロスバーの長手方向に沿ってクロスバーと略一体的に延在されるガイド手段のガイドレールに対して作用することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項5】
ワークを保持・解放可能なワーク保持手段を支持しワーク搬送方向に略直交して延在するクロスバーを有するプレス機械のワーク搬送装置のクロスバーユニットであって、
ワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内するガイド手段と、
ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に沿って移動させるように駆動する駆動手段と、
前記駆動手段とは別経路で作用して、ガイド手段によりクロスバーの長手方向に対して摺動自在に支持案内されるワーク保持手段をクロスバーの長手方向に対して位置固定・解放可能なブレーキ手段と、
を備えたことを特徴とするクロスバーユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224590(P2011−224590A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95003(P2010−95003)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)