説明

プレス機

【課題】上型と下型との上下一対の金型を装着し、前記上型と前記下型とを型締めしてワークの加圧を行うプレス機であって、設備の小型化を実現しうる構造のものを提案する。
【解決手段】上型12を移動不能に支持する上ホルダ23と、前記下型13を昇降移動可能に支持する下ホルダ22と、前記上ホルダ23と前記下ホルダ22とを上下に配置して連結するガイドポスト24・24・・・とを具備するダイセット21と、前記下型13を昇降駆動して前記金型11を型締め又は型開きさせるための昇降駆動手段33とを、プレス機20に備えた。前記下型13を前記下ホルダ22に昇降移動可能に支持するために、前記下型13が固定され、前記昇降駆動手段33にて昇降駆動されるラム27と、前記ラム27が相対昇降移動可能に設けられ、前記下ホルダ22に固定されたダイプレート28とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形装置、打ち抜き加工装置、バリ取り装置等に具備されるプレス機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス成形装置、打ち抜き加工装置、バリ取り装置等の、プレス機を備えた機械加工装置が知られている。例えば、前記バリ取り装置は、下型と上型との一対の金型をプレス機に装着して構成される。
【0003】
特許文献1に記載のバリ取り装置では、上型と下型との上下一対の金型と、前記下型を位置固定するとともに前記上型を昇降移動し、前記上型と下型とを型締めして加圧するプレス機とが具備される。前記下型には、被加工物であるワークを載置するマンドレルと、マンドレルの外周側に間隔をおいて配置され、内周上端に略直角に形成される刃型部とが設けられる。また、前記上型には、ワークの上端面を押圧するパンチが設けられる。そして、前記バリ取り装置では、下型のマンドレルにワークを載置して、上型を降下させパンチでワークを下方へ移動させるとともに、刃型部でバリを分離させる。
【0004】
上述の通り、一般にプレス機を備える機械加工装置は、上型が下型に対して昇降運動してワークが加圧される。このために、プレス機には上型の昇降駆動手段を備えたクラウン構造が備えられる。一般に、クラウン構造を備えたプレス機には、上型の昇降駆動手段として油圧で動作するクランク機構が具備されるため、設備が大型化する傾向がある。また、クラウン構造を備えたプレス機では、下型を支持するフレームにプレスの荷重と設備の自重が掛かるため、前記フレームを頑丈なものとするために、設備が大型化する傾向がある。
【特許文献1】特開2000−271694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術に鑑み、本発明では、プレス成形装置、打ち抜き加工装置、バリ取り装置等の機械加工装置に備えられ、上型と下型との上下一対の金型を装着して前記上型と前記下型とを型締めしてワークの加圧を行うプレス機であって、設備の小型化を実現しうる構造のものを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、上型と下型との上下一対の金型を装着し、前記上型と前記下型とを型締めすることにより、該上型と前記下型との間にセットしたワークの加圧を行うプレス機であって、前記上型を移動不能に支持する上ホルダと、前記下型を昇降移動可能に支持する下ホルダと、上下に配置された前記上ホルダと前記下ホルダとを連結するガイドポストとを具備するダイセットと、前記下型を昇降駆動して前記金型を型締め又は型開きするための昇降駆動手段とを、備えるものである。
【0008】
請求項2においては、前記下型が固定され、前記昇降駆動手段にて昇降駆動されるラムと、前記ラムが相対昇降移動可能に設けられ、前記下ホルダに固定されるダイプレートとを、備えるものである。
【0009】
請求項3においては、前記上型より下方へ進退可能に設けられるワークの突き出し部材と、前記突き出し部材を前記上型より下方へ進出した状態に付勢する付勢手段とを、前記上ホルダに備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
本発明によれば、プレス機にクラウン構造を備えないので、設備の小型化を実現することができる。また、加工時にワークに付与する荷重は、ダイセットが受けこととなるので、前記ダイセットを支持する支持台を設ける場合に、前記支持台は前記ダイセットの自重を支持しうる構造とすれば足りるので、設備の小型化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るバリ取り装置の構成を示す図、図2はダイプレートのクランプ機構を示す図、図3はワークをセットしたバリ取り装置を示す図、図4はワークを加圧しているバリ取り装置を示す図、図5はワークを搬出したバリ取り装置を示す図である。
【0013】
本発明の実施例に係るプレス機20を備えたバリ取り装置10について説明する。
図1に示すように、前記バリ取り装置10は、プレス機20と、前記プレス機20に装着された上下一対の上型12と下型13とからなる金型11とを備え、前記上型12と前記下型13とを型締めして、前記上型12と前記下型13との間にセットしたワークWを上下一対の金型11で加圧することによりバリを打ち抜いて除去する装置である。前記バリ取り装置10には、被加工物であるワークWを搬入位置と加工位置とに移送する移送装置50が、さらに備えられる。
【0014】
前記金型11は、上型12と下型13とで構成される。
前記下型13には、ワークWを載置して位置固定するマンドレル17が設けられる。
前記上型12には、ワークWからバリを打ち抜くための切刃として機能する刃型部14が備えられる。
【0015】
前記プレス機20は、前記上型12を移動不能に支持する上ホルダ23と、前記下型13を昇降移動可能に支持する下ホルダ22と、前記上ホルダ23と前記下ホルダ22とを上下に配置して連結するガイドポスト24・24・・・とを具備するダイセット21と、前記下型13を昇降駆動して前記金型11を型締め又は型開きさせるための昇降駆動手段33とを、含んで構成される。
前記上ホルダ23は、支持台25に固定された下ホルダ22の上方に配設され、前記下ホルダ22と上ホルダ23とは、前記下ホルダ22に立設されて前記上ホルダ23に挿通されたガイドポスト24・24・・・で連結される。
【0016】
前記上ホルダ23には、ワークWからバリを打ち抜いたあとの金型11の型開き時に、ワークWを下方へ突き出すために、前記上型12より進退可能に設けた突き出し部材15と、前記突き出し部材15を前記上型12より下方へ進出した状態に付勢する付勢手段16とが、設けられる。
本実施例においては、前記突き出し部材15としてピストンロッドが、また、前記付勢手段16として、前記ピストンロッドを挿入したエアシリンダが採用され、上ホルダ23に油圧回路や制御回路等の複雑な構造を備えることが回避されている。
【0017】
前記下型13を昇降移動可能に支持するために、前記下型13が固定され前記昇降駆動手段33にて昇降駆動されるラム27と、前記ラム27が相対昇降移動可能に設けられ前記下ホルダ22に固定されるダイプレート28とが、前記プレス機20に備えられる。
【0018】
前記ダイプレート28は、下ホルダ22に対して着脱可能に固定される。
前記下ホルダ22の上部であって、該下ホルダ22に嵌設されたダイプレート28の周囲に該当する位置には、該ダイプレート28の上方への移動を規制する鉤形状部22aが形成される。また、前記下ホルダ22には、該下ホルダ22に嵌設されたダイプレート28を下方から上方へ押圧するクランプピン29・29・・・が備えられる。前記クランプピン29には伸縮駆動のための駆動手段30が備えられる。前記駆動手段30として、下ホルダ22に油圧シリンダが備えられる。
【0019】
本実施例においては、前記クランプピン29はダイプレート28の四隅の下方にそれぞれ設けられるとともに、前記ダイプレート28の下面にはこれらのクランプピン29の上端が挿入される位置決め穴28aがそれぞれ設けられる。このクランプピン29が位置決め穴28aに挿入されることで、下ホルダ22に対してダイプレート28が相対的に位置決めされる。但し、前記クランプピン29はダイプレート28の形状に応じて適宜位置に適宜数だけ設けることができる。
【0020】
前記下ホルダ22にダイプレート28を固定する手順は、まず、図2(a)に示すように、下ホルダ22の所定位置にダイプレート28が載置され、続いて、図2(b)に示すように、クランプピン29・29・・・が駆動手段30にて伸張駆動される。すると、クランプピン29の上端がダイプレート28の位置決め穴28aに挿入された状態で、ダイプレート28が鉤形状部22aに当接するまで上昇し、ダイプレート28は、下ホルダ22の鉤形状部22aとクランプピン29とに挟持されて、下ホルダ22に固定される。
【0021】
前記下ホルダ22の鉤形状部22aとクランプピン29とで構成されるクランプ機構は、構成がシンプルでありながらも、駆動手段30の加圧力で鉤形状部22aとクランプピン29にて挟持されたダイプレート28はプレス中であっても振れたりズレたりすることがない程度に強固に下ホルダ22に固定され、ダイプレート28の組み付けの位置精度を向上させることができる。
【0022】
前記ラム27は、昇降駆動手段33にて伸縮駆動されるプランジャ32の上端に接続される。この昇降駆動手段33によるプランジャ32の伸縮動作にて、下型13が取り付けられたラム27が上下昇降することとなる。つまり、バリ取り装置10のプレス機20では、下型13が上型12に対して昇降するプレス動作が行われるのである。
なお、本実施例においては、前記昇降駆動手段33として油圧シリンダが採用される。前記油圧シリンダの油圧回路は、前記クランプピン29の駆動手段30として備えられる油圧シリンダの油圧回路と連結され、一つの油圧回路でこれらの駆動が制御される。
【0023】
前記下型13には、移送装置50が備えられる。下型13が装着されるラム27には、前記ラム27の下型13の載置面と略同一平面を形成する搬入ステージ35がダイセット21の外側に設けられ、この搬入ステージ35上が搬入位置とされる。前記移送装置50は、この搬入位置から上型12と下型13との間の加工位置へ、又は、前記加工位置から搬入位置へ、ワークWを移送するために、ワークWを載置した下型13を搬入位置と加工位置との間で移動させるための装置である。このように、ワークWの移送に関していわゆる「シャトル構造」を採用することにより、ロボットハンド等のワークWの搬送手段の動作するスペースをダイセット21の内部に確保する必要がないので、バリ取り装置10のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
前記移送装置50は、下型13を加工位置と搬入位置とへ移送できるものであれば、その構成は限定されない。例えば、前記移送装置50は、下型13に一端が接続されたボールネジと、前記ボールネジの伸縮駆動手段としての電動モータとで構成することができる。また、例えば、移送装置50は、下型13に一端が接続されたピストンロッドと、前記ピストンロッドの伸縮駆動手段としてのエアシリンダとで構成することができる。
【0025】
続いて、上記構成のバリ取り装置10におけるバリ取り動作について説明する。
まず、移送装置50にて下型13が搬入位置に移送され、前記下型13のマンドレル17にワークWが載置固定されたのち、図3に示すように、移送装置50にて下型13が加工位置に移送されて、ワークWがバリ取り装置10に搬入される。
そして、図4に示すように、昇降駆動手段33にてプランジャ32が伸張駆動されてラム27が上昇し、下型13と上型12とでワークWが加圧されて、前記ワークWからバリが打ち抜かれる。
さらに、昇降駆動手段33にてプランジャ32が短縮駆動されてラム27が降下し、続いて、移送装置50にて下型13が搬入位置に移送されてワークWがバリ取り装置10から搬出される。このとき、図5に示すように、搬入ステージ35と下型13に内バリ落下用の孔を設けておくと、下型13が搬入位置に移動することにより、前記孔を通じて内バリを落下させて除去することができる。
【0026】
上述のように、バリ取り装置10では、位置固定された上型12に対して、下型13が上昇して、上型12と下型13との間のワークWが加圧される。この構造によれば、加工時にワークWに付与される荷重は、上ホルダ23と下ホルダ22とこれらを連結するガイドポスト24・24・・・で構成されるダイセット21にて受けるため、ダイセット21を支持する支持台25は前記ダイセット21の自重を支持しうる構造とすれば足り、上型を昇降させる従来のプレス機と比較して、支持台25で負担する荷重を低減させることができるので、設備の小型化を実現することができる。
また、クラウン構造を備えて上型を降下させる従来のプレス機と比較して、クラウン構造を備えないことと、支持台25の支持荷重が低減されることによって、バリ取り装置10の設備の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例に係るバリ取り装置の構成を示す図。
【図2】ダイプレートのクランプ機構を示す図。
【図3】ワークをセットしたバリ取り装置を示す図。
【図4】ワークを加圧しているバリ取り装置を示す図。
【図5】ワークを搬出したバリ取り装置を示す図。
【符号の説明】
【0028】
10 バリ取り装置
11 金型
12 上型
13 下型
15 突き出し部材
16 付勢手段
22 下ホルダ
23 上ホルダ
24 ガイドポスト
27 ラム
28 ダイプレート
29 クランプピン
32 プランジャ
33 昇降駆動手段
50 移送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型との上下一対の金型を装着し、前記上型と前記下型とを型締めすることにより、該上型と前記下型との間にセットしたワークの加圧を行うプレス機であって、
前記上型を移動不能に支持する上ホルダと、前記下型を昇降移動可能に支持する下ホルダと、上下に配置された前記上ホルダと前記下ホルダとを連結するガイドポストとを具備するダイセットと、
前記下型を昇降駆動して前記金型を型締め又は型開きするための昇降駆動手段とを、
備えることを特徴とするプレス機。
【請求項2】
前記下型が固定され、前記昇降駆動手段にて昇降駆動されるラムと、
前記ラムが相対昇降移動可能に設けられ、前記下ホルダに固定されるダイプレートとを、
備えることを特徴とする請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記上型より下方へ進退可能に設けられるワークの突き出し部材と、前記突き出し部材を前記上型より下方へ進出した状態に付勢する付勢手段とを、前記上ホルダに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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