説明

プレス装置

【課題】 水平面内におけるプレスの加工位置のずれを防止し、高精度にプレス加工可能なプレス装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、ダイD1上のワークWに対して、パンチP1を下降させてプレス加工するプレス機構122と、中心部にプレス機構122を支持する門形支持フレーム121と、ダイおよび門形支持フレーム121を支持する支持台3と、を備え、支持台3および門形支持フレーム121は、プレス時に生じる上下方向の撓みが、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、同心円上で略同一となるようにそれぞれ構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチを下降させ、ダイ上にセットしたワークをプレス加工するプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スライドに(昇降自在に)保持されたパンチを、プレス機構を駆動して上下方向に直線運動させ、支持台に設置されたダイと協働させることにより、ダイ上にセットしたワークをプレス加工するプレス機械が知られている。このようなプレス機械では、フレームの変形を抑えて加工精度を向上させるためのフレーム構造として、スライドを鉛直方向に移動自在に支持する一対のコラム(支持フレーム)の前後に、一対のステー(補強部)を固定したものが提案されており、一対のコラムおよび一対のステーは、(略)対称に配置されている。
【特許文献1】特開2002−59298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、プレス時において、プレス装置の各部に生じる変形のそれぞれがプレスの加工精度に悪影響を及ぼすのであり、フレームの変形のみが加工精度に悪影響を与えているのではない。例えば、支持台は、プレス時の押圧力を受けると同時に、プレス反力を受けるフレームから引張り力を受けており、これらの力により生じた変形に起因して、支持台上のダイが傾いたり、パンチを精度良く(上下方向に)直線運動させることができなかったりする。すなわち、プレス装置各部に生じた変形により、水平面内における加工位置のずれが生じ、プレスの加工精度が低下する。このような加工精度の低下は、プレス加工により、微細加工(例えば、μm単位)を行う場合、特に問題となる。
もっとも、プレス装置各部の変形を抑制すべく、これらを高剛性に構成すると、重量増や大型化といった問題が生じる。
【0004】
そこで、本発明は、ダイの傾きや、パンチの位置ずれを防止することにより、水平面内におけるプレスの加工位置のずれを防止し、高精度にプレス加工可能なプレス装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ダイ上のワークに対して、パンチを下降させてプレス加工するプレス機構と、中心部に前記プレス機構を支持する門形支持フレームと、ダイおよび前記門形支持フレームを支持する支持台と、を備え、支持台および門形支持フレームは、プレス時に生じる上下方向の撓みが、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、同心円上で略同一となるようにそれぞれ構成されていることを特徴とする。
【0006】
この構成により、支持台は、プレス時において、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、同心円上で略同一に上下に撓む。すなわち、支持台が撓んでも、ダイやワークに傾きが生じることがなく、その水平面内の位置にずれが生じることがない。門形支持フレームも同様、プレス時において、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、同心円上で略同一に上下に撓むため、パンチに精度良く下降させることができる。したがって、本発明のプレス装置では、プレス時におけるダイ、ワーク、およびパンチの水平面内の位置関係を高精度に維持することができ、支持台および門形支持フレームの撓みに起因するプレス加工の位置ずれを防止して、高精度なプレス加工を実現できるようになっている。
【0007】
この場合、支持台および門形支持フレームはそれぞれ、中心軸を通り、かつワークの搬入出経路の中心線に対して線対称に形成されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、ワークの搬入出経路の中心線に対して線対称に支持台および門形支持フレームを撓ませることができ、上下方向において、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、これらを同心円上で略同一に撓ませることができる。
【0009】
この場合、門形支持フレームは、相互に平行に配置されたリブ状の複数の耐荷重フレームと、複数の耐荷重フレームを連結する連結フレームと、で構成されていることが好ましい。
【0010】
このように、門形支持フレームを、相互に平行に配置されたリブ状の複数の耐荷重フレームと、複数の耐荷重フレームを連結する連結フレームと、で構成することにより、門形支持フレームの強度を維持したまま、その軽量化を図ることができる。
【0011】
この場合、門形支持フレームは、一対の補強部を有し、一対の補強部は、中心線に対して線対称となるように配置されていることが好ましい。
【0012】
この構成のように、一対の補強部を中心線に対して線対称となるように配置することにより、門形支持フレームに対してかかるプレス時の荷重を均等に分散させることができる。この結果、上下方向において、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、門形支持フレームを同心円上で略同一に撓ませることができる。
【0013】
この場合、支持台は、複数の隔壁により区画された複数の中空部を有する鋳物で構成されており、複数の隔壁間隔は、中心軸に近い部分では密に配設され、遠い部分では疎に配設されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、複数の隔壁の配置間隔を、中心軸に近い部分では密に、遠い部分では疎に配設することで、上下方向において、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、支持台を同心円上で略同一に撓ませることができる。
【0015】
この場合、複数の中空部には、鋳込みの際に用いた中子が残されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、支持台に残された中子により、装置内外でプレス装置に生じる振動を吸収することができる。したがって、振動の影響を極力排除して、高精度なプレス加工を行うことが可能となる。
【0017】
この場合、複数の中空部は、中心軸に対して略対称に配置されていることが好ましい。
【0018】
このように、複数の中空部(すなわち複数の隔壁)を中心軸に対して略対称に配置することにより、プレス時の荷重を複数の中空部に均等に分散させることができ、上下方向において、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、支持台を同心円上で略同一に撓ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明を適用したプレス装置について説明する。図1に示すように、このプレス装置1は、床上に設置した架台2と、架台2に支持された支持ベース3(定盤)と、支持ベース3上に載置され、搬入されたワークWにプレス加工を行うプレス装置本体4と、を備えている。
【0020】
架台2は、アングル材7を方形に組んで構成されている。架台2の底部には、アジャスター付きの支持脚8が固定されており、プレス装置1の平行度を調整できるようになっている。支持ベース3は、複数の中空部233(後述する)を有する鋳物で構成されており、その上面は、プレス装置本体4の設置精度を高めるべく、高い平面度(鏡面加工)を有している。なお、請求項にいう支持台は、架台2および支持ベース3により構成されている。
【0021】
プレス装置本体4は、プレス加工のために、ワークWをY軸方向およびこれに直交するX軸方向に移動させるワーク移動ステージ11と、パンチP1(上型)およびダイD1(下型)から成る一対の金型が装着され、パンチP1およびダイD1を協働させてワークWにプレス加工を行うプレス機構12と、を備えている。
【0022】
図1ないし図4に示すように、ワーク移動ステージ11は、ワークWをセットするワークテーブル31を有し、ワークテーブル31を介してワークWをX軸方向にスライド自在に支持するX軸移動ステージ22と、X軸移動ステージ22を介し、ワークWをY軸方向にスライド自在に支持するY軸移動ステージ23と、で構成されている。
【0023】
図3および図4に示すように、X軸移動ステージ22は、ワークWをセットするワークテーブル31と、X軸方向に延在し、ワークテーブル31を介してワークWをX軸方向に移動させる一対のX軸リニアモータ32と、ワークテーブル31を支持する一対(2組4個)のX軸スライダ33と、一対のX軸リニアモータ32に並設され、一対のX軸スライダ33をX軸方向にスライド自在に支持すると共に、一対のX軸スライダ33の移動をガイドする一対(2本)のX軸ガイドレール34と、これらを支持するX軸ベースプレート35と、を備えている。
【0024】
図3および図4に示すように、ワークテーブル31は、ワークWをセットするセットテーブル41と、セットテーブル41を吊り下げるように支持する吊設部材42と、吊設部材42を介して、一対のX軸スライダ33に支持され、セットテーブル41を支持するX軸テーブル43と、で構成されている。
【0025】
セットテーブル41は、平面視略方形の厚板で構成されており、その中心部には、方形のセット開口51が形成されている。ワークWは、セット開口51に臨むようにセットテーブル41に位置決めされ、セット開口51を介して、パンチP1およびダイD1に臨むようになっている。また、セットテーブル41には、セット開口51の(X軸方向に延在する)一対の縁端に沿って、位置決めしたワークWをセット(固定)する2組4個のセット部材52(クランパ)が配設されている。セット部材52は、エアーシリンダを用いて構成されており、位置決めされたワークW(縁部)を上側から押えるようにして、これをセットテーブル41に固定する。
【0026】
なお、図3および図4に示すように、本実施形態において、ワークWは、ワークセット治具61を介して、セットテーブル41に位置決め・セットされるようになっている。ワークセット治具61は、方形の開口を有する枠状に形成されており、下枠62および上枠63から成る一対のもので構成されている。下枠62は、平面視方形の厚板で構成されている。そして、下枠62のY軸方向に延びる両端部は厚肉に形成され、下枠62には、ワークWがセットされるセット凹部64が形成されている。セット凹部64には、開口65aが形成されており、(方形の)ワークWの4辺の縁部がセット凹部64に載置される。また、セット凹部64には、載置したワークWの端(側端面)を突き当てることにより、下枠62に対してワークWを位置決めするための6個の位置決めピン66が突設されている。この場合、下枠62は、セットテーブル41に対して予め精度良く位置決め固定されており、下枠62に対してワークWを位置決めすることにより、セットテーブル41に対しても、ワークWを精度良く位置決めできるようになっている。
【0027】
上枠63も、平面視方形の厚板で構成されており、その中央部分には開口65bが形成されている。上枠63には、下枠62に形成された6個の位置決めピン66に嵌合する6個の嵌合孔67が形成されている。
【0028】
ワークセット治具61では、ワークWを下枠62に位置決めした後、ワークWを介して上枠63を下枠62に重ね合わせ、位置決めした状態のワークWを上枠63と下枠とで挟みこむようになっている。そして、ワークWを上枠63と下枠とで挟みこんだ後、上述の2組4個のセット部材52で、これら(縁部)をセットテーブル41に対して押圧することにより、ワークWを位置決めした状態でセットテーブル41に固定できるようになっている。
【0029】
吊設部材42は、X軸テーブル43に支持された吊設支持部材71と、吊設支持部材71にセットテーブル41を支持させる4本の柱状部材72と、を有している。X軸テーブル43には、平面視方形の挿通開口(図示省略:後述する)が形成されており、吊設支持部材71は、挿通開口の開口形状に倣った平面視方形の筒状に形成され、挿通開口に挿通される挿通部81と、挿通部81の上側に連なり、X軸テーブル43に固定される鍔状の枠状部82と、を有している。そして、挿通部81および枠状部82により形成されたパンチ開口83を介して、セットテーブル41にセットしたワークWに、パンチP1を臨ませることができるようになっている。
【0030】
4本の柱状部材72は、それぞれセットテーブル41の四隅に対応して配設されており、その下端部はそれぞれ、セットテーブル41を上下方向にスライド自在に支持している。また、4本の柱状部材72の上端部は、Y軸方向に平行なパンチ開口の一対の辺に沿って、2本ずつ枠状部82に固定されている。
【0031】
X軸テーブル43は、平面視方形の厚板で構成されており、その中央部には、セットテーブル41を下方に突出させるように、吊設部材42を挿通させるための挿通開口(図示省略)が形成されている。そして、挿通開口に吊設部材42を挿通させ、X軸テーブル43の上面に吊設部材42(枠状部82)を固定すると、ワークWにプレス加工を行う高さ位置が、X軸テーブル43の上面よりも低い、所定の高さ位置となるように、セットテーブル41が支持されるようになっている。
【0032】
一対のX軸リニアモータ32は、X軸ベースプレート35上に直接設置されている。X軸ベースプレート35には、方形のX軸ベース開口91が形成されており、一対のX軸リニアモータ32は、X軸ベース開口91を挟むように、Y軸方向に離間して配設されている。各X軸リニアモータ32の可動子32aは、X軸テーブル43に固定されており、一対のX軸リニアモータ32は、X軸テーブル43を介して、セットテーブル41(ワークW)をX軸方向に移動させるようになっている。
【0033】
なお、図3および図4に示すように、ワークテーブル31(より具体的には、X軸方向に平行な挿通部81の一対の辺部のうちの一方)には、X軸リニアスケール101が垂設されている。一方、X軸ベースプレート35には、X軸リニアスケール101に係合し、X軸リニアスケール101の検出線(図示省略)をカウントアップするX軸リニアセンサ102(フォトセンサ)が設けられており、X軸リニアスケール101およびX軸リニアセンサ102の協働により、ワークテーブル31(ワークW)のX軸方向の位置を把握できるようになっている。
【0034】
一対(2組4個)のX軸スライダ33は、X軸テーブル43のX軸方向と平行な両端部を支持している。すなわち、X軸方向と平行なX軸テーブル43の各端部はそれぞれ、離間させて配置した2個のX軸スライダ33により支持されている。各X軸スライダ33は、X軸ガイドレール34に係合する凹状部(図示省略)を有しており、X軸ガイドレール34をガイドにしながら、X軸テーブル43のX軸方向への移動をガイドする。このように、一対のX軸スライダ33により、X軸テーブル43のX軸方向と平行な両端部の移動をガイドすることで、X軸テーブル43を安定してX軸方向に移動させることができるようになっている。
【0035】
図1、図3および図4に示すように、X軸ベースプレート35は、X軸方向に平行な一対の端部が厚肉に形成されており、この厚肉部92に、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール34が設置されている。各X軸ガイドレール34は、X軸スライダ33の凹状部33aに係合する凸条部34aを有しており、この凸条部34aで各X軸スライダ33の移動をガイドするようになっている。そして、各X軸ガイドレール34はそれぞれ、X軸スライダ33を2個ずつスライド自在に支持しており、これらX軸スライダ33を介して、ワークテーブル31(X軸テーブル43)の移動をガイドするようになっている。なお、本実施形態では、ワークWにプレス加工を行う高さ位置が、凸条部34aの上面と略同じ高さになるように、セットテーブル41の高さ位置が設定されている。
【0036】
図1ないし図3に示すように、Y軸移動ステージ23は、X軸移動ステージ22と略同様に構成されており、X軸移動ステージ22が載置された枠状のY軸テーブル111と、Y軸方向に延在し、Y軸テーブル111を介してX軸移動ステージ22(ワークW)をY軸方向に移動させる一対(2つ)のY軸リニアモータ112と、Y軸テーブル111を支持する一対(2組4個)のY軸スライダ113と、一対のY軸リニアモータ112に並設され、一対のY軸スライダ113をY軸方向にスライド自在に支持すると共に、一対のY軸スライダ113の移動をガイドする一対(2本)のY軸ガイドレール114と、これらを支持すると共に、上述の支持ベース3上に直接設置された枠状のY軸ベースプレート115と、を備えている。
【0037】
そして、一対のY軸リニアモータ112を同期して駆動すると、Y軸テーブル111がY軸方向に移動すると共に、一対のY軸スライダ113および一対のY軸ガイドレール114が協働し、Y軸テーブル111のY軸方向への移動をガイドするようになっている。なお、図示省略したが、Y軸テーブル111には、Y軸リニアスケールが設けられていると共に、Y軸ベースプレート115には、Y軸リニアセンサが設けられており、Y軸テーブル111を介して、ワークWのY軸方向の位置も把握できるようになっている。
【0038】
次に、プレス機構12について説明する。図1および図2に示すように、プレス機構12は、ワーク移動ステージ11(Y軸移動ステージ23)をX軸方向に跨ぐように、支持ベース3の図示後方側(Y軸方向後端側)に配設された門形支持フレーム121と、パンチP1を保持し、門形支持フレーム121の中心部に支持されたパンチユニット122と、ダイD1を保持し、ダイD1がパンチP1と対向するように、支持ベース3上に設置されたダイユニット123と、を備えている。
【0039】
門形支持フレーム121は、ワーク移動ステージ11を挟むように、X軸方向に離間して、支持ベース3上に立設された一対の脚部材131と、一対の脚部材131上を架け渡されたユニット支持部材132と、で構成されている。一対の脚部材131は、相互に対称に構成されている。ユニット支持部材132は、その中心部にパンチユニット122を支持しており、枠状のY軸ベースプレート115に囲まれたY軸ベース開口116にパンチP1が臨むように、パンチユニット122を支持している。
【0040】
図2に示すように、パンチユニット122は、パンチP1を支持するスライド141と、門形支持フレーム121に支持され、スライド141を介してパンチP1を昇降自在に支持するモータ駆動のスライド移動機構142と、を備えている。
【0041】
スライド141は、パンチホルダP2を介してパンチP1を着脱自在に支持している。スライド移動機構142は、パンチP1が(ダイD1と協働して)ワークWにプレス加工を行うパンチプレス位置と、パンチP1がワークWから離間するパンチ待機位置と、の間で、パンチP1を垂直に昇降させると共に、プレス加工のための動力を供給するものである。すなわち、スライド移動機構142は、パンチ待機位置からパンチプレス位置にパンチP1を下降させるときに、ワークWに所定の荷重が作用するよう、パンチP1を介してこれを押圧すると共に、パンチP1とダイD1とを協働させて、プレス加工を行わせるようになっている。
【0042】
ダイユニット123は、ダイD1を支持するボルスタ151と、ボルスタ151を昇降自在に支持するモータ駆動のボルスタ昇降機構152と、を備えている。
【0043】
ボルスタ151は、ダイホルダD2を介してダイD1を着脱自在に支持している。ボルスタ昇降機構152は、ダイD1がパンチP1と対向するよう、支持ベース3上であって、Y軸ベース開口116内に位置決めした状態で設置されている。ボルスタ昇降機構152は、Y軸移動ステージ23の駆動時において、ダイD1およびボルスタ151がY軸テーブル111に干渉しないように、これらを昇降させるものであり、ダイD1が(パンチP1と協働して)プレス加工を行うダイプレス位置と、ダイD1の上面がY軸テーブル111の下面よりも低くなるダイ待機位置との間でボルスタ151を昇降移動させるようになっている(図4参照)。この場合、ボルスタ昇降機構152は、4本のガイドポスト(図示省略)を有していると共に、上述した4本の柱状部材72は、各ガイドポストに係合するガイドブシュで構成されており、ボルスタ昇降機構152は、4本の柱状部材72をガイドにしながら、安定してボルスタ151を昇降移動させることができるようになっている。
【0044】
ここで、ワークWにプレス加工を行う場合に行われる、プレス装置1の一連の動作について説明する。本実施形態では、図1における図示手前側(Y軸方向前端側)の位置で、ワークWの搬出入が行われるようになっており、プレス加工を行う場合、先ず、ワークWの搬入のために、ワーク移動ステージ11(Y軸移動ステージ23)が駆動して、ワークテーブル31(セットテーブル41)を図示手前側の所定位置(ワーク搬出入位置)まで移動させる。セットテーブル41にワークWがセットされると、再度、ワーク移動ステージ11(Y軸移動ステージ23)が駆動して、ワークテーブル31(セットテーブル41)を図示後方側の所定位置(プレス開始位置)まで移動させ、ワークWの所定領域(第1領域)をパンチP1およびダイD1が臨むプレス加工領域に臨ませる。
【0045】
この後、ボルスタ昇降機構152が駆動して、ダイD1をダイプレス位置に移動させた後、続けて、スライド移動機構142が駆動して、パンチP1をパンチプレス位置まで下降させる(プレス動作)。これにより、パンチP1がワークWを押圧すると共に、ダイD1およびパンチP1が協働し、ワークWの第1領域にプレス加工が行われる。この場合、上述のパンチホルダP2には、4本のガイドロッドP3が下方に向かって突設されていると共に、上述のダイホルダD2には、各ガイドロッドP3に対応する4個のガイド穴D3が形成されており、プレス加工時には、各ガイドロッドP3が対応する各ガイド穴D3に係合して、精度良くプレス加工を行えるようになっている。
【0046】
第1加工領域に対するプレス加工が終了すると、スライド移動機構142が駆動して、パンチP1をパンチ待機位置まで上昇させる。次に、ワーク移動ステージ11(X軸移動ステージ22)が駆動して、プレス加工済み部分である第1加工領域をX軸方向に送ると共に、ワークWの未加工部分(次の加工領域である第2加工領域)をプレス加工領域に臨ませる。そして、スライド移動機構142が駆動して、パンチP1をパンチプレス位置まで下降させ、第2加工領域に対するプレス加工を行う。このように、本実施形態では、スライド移動機構142によるプレス動作と、X軸移動ステージ22によるワークWのX軸方向への送りと、を相互に繰り返しながら、ワークWに所定のプレス加工を行うようになっている。
【0047】
そして、ワークWに対する全プレス加工が終了すると、スライド移動機構142およびボルスタ昇降機構152が駆動して、パンチP1をパンチ待機位置まで上昇させると共に、ダイD1をダイ待機位置まで移動させる。この後、ワークWの搬出のために、ワーク移動ステージ11(Y軸移動ステージ23)が駆動して、ワークテーブル31(セットテーブル41)をワーク搬出入位置まで移動させる。これにより、加工済みのワークWと未加工のワークWとの載せ換えを行えるようになっている。
【0048】
このように、プレス装置1では、パンチP1およびダイD1を協働させることによりプレス加工を行っており、精度良くプレス加工を行えるよう、これらは相互に精度よく位置決めされている。しかしながら、パンチP1およびダイD1を予め精度良く位置決めしておいても、プレス(加工)時には、プレス装置1の各部にプレス荷重に起因した変形(撓み)が生じ、水平面内におけるパンチP1およびダイD1の位置関係に狂いが生じてしまう。例えば、パンチユニット122は、ダイD1に向かって、パンチP1を上下方向に直線運動させるものであるが、これを支持する門形支持フレーム121がプレス時に変形してしまうと、ダイD1に対してパンチP1を精度良く移動させることができず、プレスの加工精度に悪影響を及ぼしてしまう。同様に、ダイD1を支持する支持ベース3や架台2がプレス時に変形してしまうと、ダイD1に傾きが生じ、結果としてプレスの加工精度を低下させてしまう。
【0049】
そこで、本実施形態のプレス装置は、プレス加工時に、門形支持フレーム121、支持ベース3、および架台2のそれぞれが、プレスの荷重中心を中心とした同心円上において上下方向に略同一に撓むように構成されており、水平面内におけるパンチP1およびダイD1の位置関係を精度良く維持できるようになっている。
【0050】
より具体的には、図2、図6、および図7に示すように、門形支持フレーム121、支持ベース3、および架台2は、Y軸方向から見て(すなわち、プレス装置1を正面視したとき)、プレスの荷重中心を通り、鉛直方向に延在するプレスの中心軸161に対して線対称(左右対称)となるように、構成・配置されていると共に、平面視したときに、プレスの荷重中心を通るワーク搬出入の中心線162に対して、線対称となるように、構成・配置されている。これにより、プレス時における上下方向(高さ方向)の撓みを、中心軸161に対して略対称とすることができ、結果として、同心円上において上下方向に略同一に撓ませることができるようになっている。
【0051】
次に、門形支持フレーム121、支持ベース3、および架台2の具体的な構成について、順次説明していく。図6に示すように、門形支持フレーム121は、さらに、X軸方向から見て(すなわち、プレス装置1を側面視したとき)、プレスの中心軸161に対して線対称(左右対称)となるように構成されている。
【0052】
上述したように、門形支持フレーム121は、相互に対称に構成された一対の脚部材131と、ユニット支持部材132と、を備えており、これらは分割可能に構成されている。
【0053】
各脚部材131は、支持ベース3に固定される固定部171と、固定部171のX軸方向ワーク移動ステージ11側(内側)の端から上方に向かって鉛直に延びる鉛直支持部172と、鉛直支持部172の上端からX軸方向の内外に張り出すように設けられ、ユニット支持部材132の一端を支持する水平支持部173と、X軸方向と平行に配置された脚側補強リブ174と、を有しており、これらは一体に形成されている。
【0054】
図1および図2に示すように、脚側補強リブ174は、固定部171と水平支持部173の外側(X軸方向反ワーク移動ステージ11側)に張り出した部分とを連結し、かつY軸方向に離間して設けられた一対(2個)の脚側第1リブ181と、水平支持部173の内側に張り出した部分と鉛直支持部172との角部に位置して三角形状に形成され、かつY軸方向に離間して設けられた一対(2個)の脚側第2リブ182と、で構成されている。脚側第1リブ181および脚側第2リブ182は、相互に対応して配置されており、対応する脚側第1リブ181および脚側第2リブ182が同一平面上に位置するようになっている。
【0055】
図1、図6および図7に示すように、ユニット支持部材132は、水平支持部173に固定される平面視方形のベース部191と、ベース部191から上方に向かって鉛直に延びる支持側補強リブ192と、を有しており、これらも一体に形成されている。また、ユニット支持部材132の中心部には、パンチユニット122(スライド移動機構142)のパンチ支持部193が形成されており、ユニット支持部材132の中心とプレスの荷重中心とが一致するようになっている。
【0056】
図1および図7に示すように、支持側補強リブ192は、X軸方向と平行かつパンチ支持部193に連なる第1中心リブ201と、Y軸方向と平行かつパンチ支持部193に連なる第2中心リブ202と、正面視二等辺台形に形成されると共にX軸方向と平行な4個の支持側第1リブ203と、支持側第1リブ203に格子状に交差するY軸方向と平行な2個の支持側第2リブ204と、で構成されている。
【0057】
一対の脚部材131にユニット支持部材132を載置して固定すると、4個の支持側第1リブ203のうち、内側2個の支持側第1リブ203が、脚側第1リブ181および脚側第2リブ182に対応するようになっている。すなわち、支持側第1リブ203も、対応する脚側第1リブ181および脚側第2リブ182と同一平面上に配置される(図1等参照)。このように、門形支持フレームでは、脚側第1リブ181、脚側第2リブ182、および支持側第1リブ203を同一平面上に配置させることにより、プレス時の荷重により生じうるねじれ変形を極力防止できるようになっている。
【0058】
また、同一平面上に位置する、一対の脚側第1リブ181、一対の脚側第2リブ182、および支持側第1リブ203を1つの耐荷重フレームと見做し、鉛直支持部172、水平支持部173、ベース部191、および支持側第2リブ204を連結フレームと見做すと、本実施形態の門形支持フレーム121は、平行に配設した2個(複数)の耐荷重フレームを、連結フレームで連結させたものとして考えることができる。このような構成を採用することにより、門形支持フレーム121は、その強度を維持した状態で、その重量を削減することできるようになっている。なお、この場合、耐荷重フレームは、正面視左右対称の略アーチ形状となっており、プレス時の荷重を適切に逃がしつつ、プレスの荷重中心を中心とした同心円上において、耐荷重フレーム(門形支持フレーム121)を上下方向に略均一に撓ませることができるようになっている。
【0059】
図8に示すように、支持ベース3は、中空の直方体形状に形成され、支持ベース3の外面を構成する方形フレーム211と、方形フレーム211の内部に配した補強フレーム212(隔壁)と、を備えている。方形フレーム211は、架台2に対する設置面となる下面部221と、下面部221に対向し、プレス装置本体4が設置される上面部222と、上面部222および下面部221に連なる側面部223と、で構成されている。補強フレーム212は、方形フレーム211の上面部222および下面部221に連結して、その剛性維持を図るためのものであり、X軸方向に延在する3個のX軸補強フレーム212と、Y軸方向に延在する4個のY軸補強フレーム212と、で格子状に構成されている。
【0060】
図8に示すように、X軸補強フレーム212は、支持ベース3のY軸方向後端側に多く配置されており、支持ベース3のY軸方向前端側に比べ、後端側の剛性が高められている。これは、門形支持フレーム121が、支持ベース3のY軸方向後端側に配設されているためであり、X軸補強フレーム212を、中心軸161に近い部分では密に、遠い部分では疎に配設する(中心軸161に対して、X軸補強フレーム212を疎密に配置する)ことにより、プレス時の支持ベース3は、プレスの荷重中心を中心とした同心円上において、上下方向に略同一に撓むようになっている。
【0061】
同様に、架台2は、複数のアングル材7を組んで方形に構成されているが、プレス時にプレスの荷重中心を中心とした同心円上において、架台2が上下方向に略同一に撓むよう、アングル材7が疎密に配置されており、中心軸161から遠いY軸方向前端側に比べ、中心軸161に近い後端側に多くのアングル材が用いられるようになっている(図1参照)。
【0062】
なお、方形フレーム211と補強フレーム212とは、鋳物により一体に構成されている。この場合、補強フレーム212によって複数に仕切られた方形フレーム211の中空部233には、鋳込みの際に用いられた中子(図示省略)が残されており、(中子で振動を吸収させることで)支持ベース3の減振性(減衰性)を向上させるようになっている。
【0063】
また、図8に示すように、補強フレーム212は、プレス装置1を正面視したときのプレスの中心軸161、およびプレス装置1を正面視したときのワーク搬出入の中心線162に対して線対称に配置されており、中空部233(中子)もこれらに対して対称配置となっている。このような中空部233(中子)の対象配置も、プレスの荷重中心を中心とした同心円上において、支持ベース3を上下方向に略同一に撓ませるための構成として寄与している。
【0064】
以上のように、本実施形態のプレス装置1は、プレス時における上下方向の撓みが、プレスの荷重中心を中心とした同心円上において略同一となるように構成されており、プレス時にダイD1およびパンチP1を傾かせることがない。したがって、水平面内においてダイD1およびパンチP1に位置ずれが生じず、精度良くこれらを係合させることができるため、本実施形態のプレス装置1では、極めて精度良くプレス加工を行うことができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態にかかるプレス装置の外観斜視図である。
【図2】本実施形態にかかるプレス装置の正面図である。
【図3】ワーク移動ステージの外観斜視図である。
【図4】X軸移動ステージ廻りの説明図であり、側面断面図である。
【図5】ワークセット治具の説明図である。
【図6】本実施形態にかかるプレス装置の側面図である。
【図7】本実施形態にかかるプレス装置の平面図である。
【図8】支持ベースの説明図であり、支持ベースの(a)平面断面図、(b)正面断面図、および(c)側面断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1:プレス装置 2:架台 3:支持ベース 121:門形支持フレーム 122:パンチユニット 123:ダイユニット 161:中心軸 162:中心線 174:脚側補強リブ 192:支持側補強リブ 212:補強フレーム 233:中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイ上のワークに対して、パンチを下降させてプレス加工するプレス機構と、
中心部に前記プレス機構を支持する門形支持フレームと、
前記ダイおよび前記門形支持フレームを支持する支持台と、を備え、
前記支持台および前記門形支持フレームは、前記プレス時に生じる上下方向の撓みが、プレスの荷重中心となる中心軸に対し、同心円上で略同一となるようにそれぞれ構成されていることを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記支持台および前記門形支持フレームはそれぞれ、前記中心軸を通り、かつ前記ワークの搬入出経路の中心線に対して線対称に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記門形支持フレームは、相互に平行に配置されたリブ状の複数の耐荷重フレームと、
前記複数の耐荷重フレームを連結する連結フレームと、で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記門形支持フレームは、一対の補強部を有し、
前記一対の補強部は、前記中心線に対して線対称となるように配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプレス装置。
【請求項5】
前記支持台は、複数の隔壁により区画された複数の中空部を有する鋳物で構成されており、
前記複数の隔壁間隔は、前記中心軸に近い部分では密に配設され、遠い部分では疎に配設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のプレス装置。
【請求項6】
前記複数の中空部には、鋳込みの際に用いた中子が残されていることを特徴とする請求項5に記載のプレス装置。
【請求項7】
前記複数の中空部は、前記中心軸に対して略対称に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載のプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−38277(P2007−38277A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227102(P2005−227102)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】