説明

プレフィルドシリンジ

【課題】収納されている薬液のうちの一部を他の空間に回収することができるプレフィルドシリンジを提供すること。
【解決手段】プレフィルドシリンジ1は、シリンジ本体2と、シリンジ本体2の先端部に設置された中栓7と、中栓7に設置された注射針21と、注射針21に着脱自在に装着されたキャップ24とを備えている。シリンジ本体2は、外筒3と、開閉手段を有する内筒4と、内筒4の先端部に固定され、外筒3内で摺動し得る第1のガスケット12と、内筒4内で摺動し得る第2のガスケット13と、第2のガスケット13を内筒4の軸方向に沿って移動操作する押し子11とを備えている。そして、第2の空間16内の液体L2を開閉手段を介して第1の空間15内に移送し、第1の空間15内の薬剤L1と液体L2とを混合して得られた薬液の一部を開閉手段を介して第2の空間16内に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
予め薬液を収納したプレフィルドシリンジ(例えば、特許文献1参照)を用いて、患者の体重や体表面積等で投与量を調整する医薬品を投与する場合、薬液の内容液量が、投与量以上で、かつ最も投与量に近い品種を選択し、そして、シリンジに付されている目盛りを見ながら、投与量の薬液がシリンジ内に残るように、投与に不要な分の薬液を別の容器内に排出して回収する。また、前記容器内に薬液を排出した後、シリンジの目盛りのみに頼らず、容器内に回収された薬液の量を容器に付されている目盛りから読み取り、その容器内に回収された薬液の量と、投与量との合計値が、そのプレフィルドシリンジの内容液量と一致することを確認することで、シリンジ内に残った薬液の量が投与量であることを確認する作業も行われている。
【0003】
しかしながら、プレフィルドシリンジでは、前述した通り、収納されている薬液のうち、投与に不要な分を排出する必要があり、かつ前記薬液の不要分を回収する目盛り付きの容器を用意する必要があり、手間がかかるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−35913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、収納されている薬液のうちの一部を他の空間に回収することができるプレフィルドシリンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) 先端部に口部が形成された外筒と、
少なくとも先端側が前記外筒内に挿入され、前記外筒に対してその軸方向に移動可能に設置された内筒と、
前記外筒と前記内筒とで囲まれた第1の空間と、前記内筒内に形成された第2の空間とのいずれか一方に収納された薬剤と、他方に収納された液体とを有するプレフィルドシリンジであって、
前記第1の空間と前記第2の空間とを液密に隔てる閉状態と前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる開状態とに切り替え可能な開閉手段を有し、
前記第2の空間内の前記薬剤または前記液体を前記開閉手段を介して前記第1の空間内に移送し、前記薬剤と前記液体とを混合して得られた薬液の一部を前記開閉手段を介して前記第2の空間内に回収するよう構成されていることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【0007】
(2) 前記内筒は、先端側に第1の底板を有する第1の筒体と、
前記第1の筒体内に、前記第1の筒体の軸回りに該第1の筒体に対して相対的に回動自在に設置され、先端側に第2の底板を有する第2の筒体とを備え、
前記開閉手段は、前記第1の底板および前記第2の底板を有し、
前記第1の底板には、その中心からずれた位置に第1の開口が形成され、
前記第2の底板には、その中心からずれた位置に第2の開口が形成され、
前記第1の筒体と前記第2の筒体とが相対的に回動し、その回動角度に応じて、前記第1の開口と前記第2の開口とが重ならない前記閉状態と、前記第1の開口と前記第2の開口とが重なる前記開状態とを採り得るよう構成されている上記(1)に記載のプレフィルドシリンジ。
【0008】
(3) 前記内筒の先端部に設けられ、前記外筒内で摺動し得る第1のガスケットを有する上記(1)または(2)に記載のプレフィルドシリンジ。
【0009】
(4) 前記内筒内で摺動し得る第2のガスケットと、
前記第2のガスケットを移動操作する押し子とを有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【0010】
(5) 前記外筒には、前記第1の空間内に収納された前記薬液の液量を示す目盛りが付され、
前記内筒には、前記第2の空間内に回収された前記薬液の液量を示す目盛りが付されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【0011】
(6) 前記口部内の流路を開閉する開閉機構を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【0012】
(7) 前記開閉手段により前記開状態とし、前記第2の空間内の前記薬剤または前記液体を前記開閉手段を介して前記第1の空間内に移送し、前記薬剤と前記液体とを混合して前記薬液を得、該薬液のうちの必要分を前記第1の空間内に残し、不要分を前記開閉手段を介して前記第2の空間内に回収し、前記開閉手段により前記閉状態として使用されるよう構成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【0013】
本発明のプレフィルドシリンジでは、前記内筒は、前記閉状態のときの前記第1の筒体と前記第2の筒体との位置関係を規制する第1の位置決め手段を有することが好ましい。
【0014】
本発明のプレフィルドシリンジでは、前記第1の位置決め手段は、前記第1の筒体に設けられた第1の当接部と、前記第2の筒体に設けられ、前記閉状態のとき、前記第1の当接部に当接する第2の当接部とを有することが好ましい。
【0015】
本発明のプレフィルドシリンジでは、前記内筒は、前記開状態のときの前記第1の筒体と前記第2の筒体との位置関係を規制する第2の位置決め手段を有することが好ましい。
【0016】
本発明のプレフィルドシリンジでは、前記第2の位置決め手段は、前記第1の筒体に設けられた第3の当接部と、前記第2の筒体に設けられ、前記開状態のとき、前記第3の当接部に当接する第4の当接部とを有することが好ましい。
【0017】
本発明のプレフィルドシリンジでは、前記内筒は、前記開閉手段を操作する操作手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリンジ内の第1の空間に収納されている薬液のうちの投与に不要な分を、別途、容器を用意することなく、シリンジ内の第2の空間内に、排出し、回収することができる。また、不要な薬液とともに、第2の空間内に、シリンジ内の空気を排出し、回収することができる。すなわち、前記投与量の調整操作をシリンジ内の液密性を保持した状態で、容易かつ迅速に行うことができる。
【0019】
また、第2の空間を薬液の一部を回収する回収用空間として兼用するので、別途、専用の回収用空間を設ける場合に比べ、プレフィルドシリンジの小型化を図ることができる。
【0020】
また、第2の空間内に回収された薬液の液量を示す目盛りを設けた場合には、第2の空間内に回収された薬液の量をその目盛りから読み取り、その第2の空間内に回収された薬液の量と、目的とする投与量との合計値が、そのプレフィルドシリンジの内容液量と一致することを確認することで、シリンジ内に残った薬液の量が投与量であることを確認する作業を行うことができる。すなわち、前記確認作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のプレフィルドシリンジの実施形態を示す部分断面図である。
【図2】図1に示すプレフィルドシリンジの内筒を示す平面図である。
【図3】図1に示すプレフィルドシリンジの内筒の底板を示す平面図である。
【図4】図1に示すプレフィルドシリンジの操作手順を説明するための部分断面図である。
【図5】図1に示すプレフィルドシリンジの操作手順を説明するための部分断面図である。
【図6】図1に示すプレフィルドシリンジの操作手順を説明するための部分断面図である。
【図7】図1に示すプレフィルドシリンジの先端部の構成であり、中栓が流路遮断位置にある状態を示す断面図である。
【図8】図7中のA−A線断面図である。
【図9】図7中のB−B線断面図である。
【図10】図1に示すプレフィルドシリンジの先端部の構成であり、中栓が流路連通位置にある状態を示す断面図である。
【図11】図10中のC−C線断面図である。
【図12】図10中のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のプレフィルドシリンジを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明のプレフィルドシリンジの実施形態を示す部分断面図、図2は、図1に示すプレフィルドシリンジの内筒を示す平面図、図3は、図1に示すプレフィルドシリンジの内筒の底板を示す平面図、図4〜図6は、図1に示すプレフィルドシリンジの操作手順を説明するための部分断面図、図7は、図1に示すプレフィルドシリンジの先端部の構成であり、中栓が流路遮断位置にある状態を示す断面図、図8は、図7中のA−A線断面図、図9は、図7中のB−B線断面図、図10は、図1に示すプレフィルドシリンジの先端部の構成であり、中栓が流路連通位置にある状態を示す断面図、図11は、図10中のC−C線断面図、図12は、図10中のD−D線断面図である。
【0024】
なお、以下では、図1、図4〜図7、図10中の上側を「基端」または「後端」、下側を「先端」として説明を行う。また、図7および図10には、キャップを取り外した状態が示されている。また、図7および図10には、薬液L3が収納された状態が示されている。
【0025】
各図に示すプレフィルドシリンジ1は、シリンジ内に予め薬剤および液体が2室に分離して収納され、そのシリンジ内で薬剤および液体を混合して薬液を得る2室型プレフィルドシリンジである。
【0026】
前記薬剤の形態としては、特に限定されず、液体であってもよく、また、粉末状等の固体であってもよい。具体的には、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤等が挙げられる。
【0027】
また、前記液体としては、血管、皮内、皮下に注射できる液体であれば、特に限定されるものではなく、例えば、整理食塩水、ブドウ糖液、各種リンゲル液、注射用水、電解質溶液等が挙げられる。
【0028】
また、2室に収納されるものの組み合わせとしては、一方が液体で他方が固体の場合、一方が固体で他方が液体の場合と、両方とも液体の場合とが挙げられる。
【0029】
なお、本実施形態では、代表的に、粉末状の薬剤、すなわち散剤と、その薬剤を溶解する液体、すなわち溶解液とが2室に分離して収納されている場合について説明する。
【0030】
図1および図2に示すように、プレフィルドシリンジ1は、シリンジ本体2と、このシリンジ本体2の先端部に設置された中栓7と、この中栓7に設置、すなわち中栓7を介してシリンジ本体2に装着された注射針21と、注射針21に着脱自在に装着されたキャップ24とを備えている。
【0031】
シリンジ本体2は、外筒3と、少なくとも先端側が外筒3内に挿入され、外筒3に対してその軸方向に移動可能に設置され、開閉手段を有する内筒4と、内筒4の先端部に固定され、外筒3内で摺動し得る第1のガスケット12と、内筒4内で摺動し得る第2のガスケット13と、第2のガスケット13を内筒4の軸方向に沿って移動操作する押し子11とを備えている。
【0032】
外筒3は、有底筒状の部材で構成され、その先端部、すなわち先端側の底部31の中央部には、外筒3の胴部に対し縮径した口部(導液部)34が一体的に突出形成されている。
【0033】
口部34は、ほぼ筒状をなし、その内部には、後述する第1の空間15と連通する流路341が形成されている。この流路341の第1の空間15と反対側の端部は、口部34の側面に開放する1対の側孔342を形成している。この1対の側孔342は、口部34の軸を介して対向するように配置されている。
【0034】
また、口部34の先端部外周には、内方に向かって凹没したリング状の凹部343が形成されている。この凹部343には、後述する中栓7の係合部72が係合する。
なお、口部34の外周部には、後述する中栓7が設置されている。
【0035】
外筒3の基端外周には、フランジ32が一体的に形成されている。
また、外筒3の外周面には、液量、すなわち後述する第1の空間15に収納された薬液の量を示す目盛り33が付されている。
【0036】
外筒3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂や、各種ガラスが挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂が好ましい。なお、外筒3の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であることが好ましい。
【0037】
このような外筒3内には、内筒4の先端側が挿入されている。この内筒4は、先端側に底板(第1の底板)51を有する第1の筒体5と、第1の筒体5内に、第1の筒体5の軸回りに第1の筒体5に対して相対的に回動自在に設置され、先端側に底板(第2の底板)61を有する第2の筒体6とを備えている。
【0038】
内筒4の構成材料、すなわち第1の筒体5および第2の筒体6の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、前記外筒3の構成材料として挙げたものを用いることができる。なお、第1の筒体5および第2の筒体6の構成材料は、それぞれ、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であることが好ましい。なお、内筒4については後で詳述する。
【0039】
内筒4の先端部の外周面、すなわち第1の筒体5の先端部の外周面には、例えば、イソプレンゴム等の弾性材料で構成された第1のガスケット12が固定されている。本実施形態では、この第1のガスケット12は、第1の筒体5の全周にわたって設けられた2つのリング状の突部で構成されており、これらの突部が外筒3の内周面に密着しつつ摺動することで、液密性をより確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。
【0040】
第1のガスケット12の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0041】
外筒3と内筒4の第1の筒体5と第1のガスケット12とで囲まれる第1の空間15内には、本実施形態では、粉末状の薬剤L1が気密的に収納されている。
【0042】
また、内筒4内、すなわち第2の筒体6内には、例えば、イソプレンゴム等の弾性材料で構成された第2のガスケット13が挿入されている。第2のガスケット13の外周部には、複数、本実施形態では2つのリング状の突部が全周にわたって形成されており、これらの突部が第2の筒体6の内周面に密着しつつ摺動することで、液密性をより確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。
【0043】
内筒4の第2の筒体6と第2のガスケット13とで囲まれる第2の空間16内には、本実施形態では、薬剤L1を溶解する液体L2が液密的に収納されている。この第2の空間16は、薬剤L1と液体L2とを混合して得られた薬液L3(図6(e1)参照)の一部、すなわち、薬剤L1を液体L2に溶解して得られた薬液L3のうちの不要分を回収する回収用空間を兼ねるものである。
【0044】
また、第2のガスケット13には、その基端面に開放する中空部が形成されている。この中空部は、後述する押し子11のヘッド部が螺入される。中空部内面には、雌ネジが形成されている。
【0045】
押し子11は、横断面が十文字状をなす棒状の本体部111を有している。
本体部111の先端側には、第2のガスケット13の中空部内に挿入され、第2のガスケット13と連結されるヘッド部が形成されている。ヘッド部の外周には、第2のガスケット13の中空部の内面の雌ネジと螺合し得る雄ネジが形成されている。この雄ネジを雌ネジと螺合することにより、第2のガスケット13と押し子11とが連結される。なお、第2のガスケットの中空部に押し子11のヘッド部が嵌入されるように構成してもよい。
また、本体部111の基端側には、円盤状のフランジ112が形成されている。
【0046】
第2のガスケット13の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前記第1のガスケット12の構成材料として挙げたものを用いることができる。
【0047】
また、押し子11の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前記外筒3の構成材料として挙げたものを用いることができる。
【0048】
次に、内筒4について説明する。
図1および図2に示すように、内筒4は、先端側に底板51を有する第1の筒体5と、第1の筒体5内に、第1の筒体5の軸回りに第1の筒体5に対して相対的に回動自在に設置され、先端側に底板61を有する第2の筒体6とを備えている。
【0049】
この場合、第2の筒体6は、第1の筒体5内に、その第1の筒体5と同心的に設置されている。また、第1の筒体5は、第2の筒体6に対し、第2の筒体6の軸方向には移動不能で、その軸を中心に回動自在に設置されている。すなわち、第1の筒体5と第2の筒体6との軸方向の位置関係は、固定されている。
【0050】
なお、第1の筒体5と第2の筒体6とは、いずれか一方が回動するように構成されていてもよく、また、両方が回動するように構成されていてもよいが、本実施形態では、第1の筒体5が回動するように構成されている。
【0051】
また、図3に示すように、第1の筒体5の底板51には、その中心からずれた位置に開口(第1の開口)52が形成されている。同様に、図1および図3に示すように、第2の筒体6の底板61には、その中心からずれた位置に開口(第2の開口)62が形成されている。そして、第1の筒体5と第2の筒体6とを相対的に回動させたとき、本実施形態では、第1の筒体5を回動させたとき、その回動角度に応じて、開口52と開口62とが重ならない状態と、開口52開口62とが重なる状態とを採り得るよう構成されている。すなわち、開口52と開口62とが重ならず、第1の空間15と第2の空間16とが液密に隔てられた閉状態と、開口52と開口62とが重なり、第1の空間15と第2の空間16とが連通した開状態とに切り替え可能なように構成されている。前記閉状態のときの第1の筒体5の位置を「閉位置」、前記開状態のときの第1の筒体5の位置を「開位置」とする。なお、底板51および52により、開閉手段の主要部が構成される。
【0052】
また、図1に示すように、底板51と底板61との間には、シール部材14が設置されている。このシール部材14の開口52、62に対応する位置には、開口が形成されている。そして、シール部材14は、底板51と底板61とのいずれか一方のみに固定されている。これにより、閉状態のとき、より確実に、第1の空間15と第2の空間16とを液密に隔てることができる。
【0053】
シール部材14の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前記第1のガスケット12の構成材料として挙げたものを用いることができる。
【0054】
また、図1および図2に示すように、第2の筒体6の基端外周には、2つの突出部(第2の当接部)63と突出部(第4の当接部)64とが一体的に形成されている。突出部63と突出部64とは、第2の筒体6の中心軸を介して対向するように配置されている。
【0055】
一方、第1の筒体5の基端外周には、開閉手段を操作する操作手段として、2つのレバー(第1の当接部)53とレバー(第2の当接部)54とが一体的に形成されている。レバー53とレバー54とは、第1の筒体5の中心軸を中心とする中心角で、所定角度離間するように配置されている。
【0056】
また、レバー53、54は、第2の筒体6の突出部63、64と、軸方向の同じ位置に配置されている。これにより、第1の筒体5を第2の筒体6に対して所定方向に回動させると、第1の筒体5のレバー53、54の一方が第2の筒体6の突出部63、64の一方に当接し、また、第1の筒体5を第2の筒体6に対して前記と逆方向に回動させると、第1の筒体5のレバー53、54の他方が第2の筒体6の突出部63、64の他方に当接する。本実施形態では、第1の筒体5のレバー53が第2の筒体6の突出部63に当接しているときは、第1の筒体5の開口52と第2の筒体6の開口62とが重なり、開状態となり、また、第1の筒体5のレバー54が第2の筒体6の突出部64に当接しているときは、第1の筒体5の開口52と第2の筒体6の開口62とが重ならず、閉状態となるように構成されている。
【0057】
なお、レバー53および突出部63により、閉状態のときの第1の筒体5と第2の筒体6との位置関係を規制する第1の位置決め手段が構成される。また、レバー54および突出部64により、開状態のときの第1の筒体5と第2の筒体6との位置関係を規制する第2の位置決め手段が構成される。
【0058】
また、内筒4には、液量、すなわち第2の空間16に回収された薬液の量を示す図示しない目盛り41が付されている。この目盛り41は、第1の筒体5と第2の筒体6のいずれかの箇所に付されていればよいが、第1の筒体5の内周面または第2の筒体6の外周面に付されていることが好ましい。
【0059】
また、図1および図7に示すように、外筒3の口部34の外周部には、ほぼ筒状をなす中栓7が口部34の軸を中心として、口部34に対して相対的に回動自在に設置されている。この中栓7は、口部34内の流路341を開閉する開閉機構を構成する。
【0060】
中栓7内には、口部34の流路341と連通して、この流路341を開放する導液路71が形成されている。この導液路71は、中栓7の側部途中から形成され、軸方向に沿って中栓7の先端まで延びている。
【0061】
中栓7は、流路341と導液路71とが遮断される第1の位置、すなわち、図1および図7〜図9に示す位置(以下、この中栓7の位置を、「流路遮断位置」という。)では、各側孔342を気密に封止する。これにより、第1の空間15内に収納されている薬剤L1は、その第1の空間15内に保持され、流路341に詰まることを防止することができる。また、薬剤L1を液体L2に溶解して得られた薬液L3が第1の空間15内から外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0062】
一方、中栓7は、流路341と導液路71とが連通する第2の位置、すなわち、図10〜図12に示す位置(以下、この中栓7の位置を、「流路連通位置」という。)では、導液路71が流路341を介して第1の空間15と連通し、第1の空間15に収納されている薬液L3を外部に排出することが可能となる。
【0063】
中栓7の先端部内周には、内方に向かって突出したリング状の係合部72が形成されている。この係合部72が口部34の凹部343に係合することにより、中栓7は、口部34から離脱することがより確実に防止される。
【0064】
また、中栓7の先端部外周には、外方に向かって突出したリング状の突部73が形成されている。この突部73は、後述するハブ22の凹部222に係合する。
【0065】
このような中栓7の構成材料としては、中栓7の内周面が口部34の外周面に密着して、中栓7が流路遮断位置にあるとき、各側孔342を気密に封止できればいかなるものでもよいが、例えば、前記第1のガスケット12構成材料として挙げたものを用いることができる。
【0066】
この中栓7の外周部には、後述する注射針21が備えるハブ22が装着される。すなわち、中栓7は、口部34とハブ22との間に設置されている。
【0067】
注射針21は、ハブ22と、このハブ22の先端部に固着された針管23とを有している。
【0068】
ハブ22は、ほぼ円筒状の部材で構成され、その内腔221に中栓7が挿入され、ハブ22の内周面と中栓7の外周面とが密着して、ハブ22と中栓7とが液密に嵌合している。
【0069】
このため、例えば、シリンジ本体2を一方の手指で把持して固定した状態で、他方の手指でハブ22を把持して、ハブ22を口部34の軸を中心として所定方向に回転させると、中栓7は、ハブ22の回転に伴って口部34の軸を中心として同方向に回転する。これにより、中栓7は、流路遮断位置と流路連通位置とに変位する。
【0070】
すなわち、ハブ22は、中栓7を口部34の軸を中心とした回転により作動させる操作部材としても機能するものである。
【0071】
また、ハブ22には、中栓7の突部73に係合する凹部222がハブ22の先端部内周に、外方に向かってリング状に凹没して形成されている。この凹部222と突部73とが係合することにより、ハブ22は、中栓7により確実に、液密に装着される。よって、ハブ22が中栓7から離脱することがより確実に防止される。
【0072】
なお、ハブ22は、中栓7に対して嵌合力のみで保持されていてもよいが、例えば、熱融着、高周波融着、超音波融着等の融着、接着剤による接着等の方法により固着されていてもよい。
【0073】
このハブ22は、好ましくは無色透明、着色透明または半透明の樹脂で構成され、内部の視認性が確保されていることが好ましい。これにより、中栓7の導液路71を外部から視認することができる。
【0074】
このようなハブ22の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前記外筒3の構成材料として挙げたものを用いることができる。
【0075】
このハブ22の先端部には、中空の針管23が固着され、針管23の内腔231は、ハブ22の内腔221と連通している。
【0076】
針管23は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料で構成されている。針管23の先端部には、鋭利な針先232が形成されている。この針先232の形状は、特に限定されないが、図示するように、針管23の軸線に対し所定角度傾斜した刃面を有する形状をなしていることが好ましい。
【0077】
針管23のハブに対する固定方法としては、例えば、嵌合、カシメ、融着、接着剤による接着等の方法、あるいはこれらを併用した方法が挙げられる。
【0078】
また、未使用時のプレフィルドシリンジ1では、ハブ22の先端側に、針先232を被包するキャップ24が着脱自在に装着されている。このキャップ24は、危険防止および針管23の汚染防止の機能を有する。
【0079】
キャップ24の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前記外筒3の構成材料として挙げたものを用いることができる。
【0080】
このようなプレフィルドシリンジ1では、ハブ22の口部34に対する回転位置を規制するロック手段8が設けられていることが好ましい。
【0081】
本実施形態では、ハブ22を口部34の軸を中心として回転操作するのに伴って一体的にまたは連動して、中栓7が口部34の軸を中心として回転するよう構成されている。したがって、中栓7の口部34に対する回転位置を規制すれば、ハブ22の口部34に対する回転位置も規制される。よって、本実施形態におけるロック手段8は、中栓7の口部34に対する回転位置を規制するよう構成されている。
【0082】
以下に、ロック手段8について、図9および図12に基づいて説明する。
中栓7は、その基端部内周に内方に向かって突出して形成された山状凸部81を有している。この山状凸部81は、その横断面形状において頂部811が180°未満の角度、本実施形態では、ほぼ直角をなしている。
【0083】
一方、口部34の基端部外周には、一対の谷状凹部82とこれらの間に設けられた谷状凹部83との合計3つの谷状凹部が、山状凸部81の形状に対応して形成されている。一対の谷状凹部82は、それぞれ側孔342に対応して口部34の軸を介してほぼ反対側に設置され、谷状凹部83は、一対の谷状凹部82のほぼ中間、すなわち、各谷状凹部82とほぼ90°をなす位置に設置されている。
【0084】
これらの山状凸部81および谷状凹部82、83でロック手段8が構成されている。
また、口部34の基端部には、谷状凹部83と隣接する谷状凹部82との間の部分に、それぞれ外径が所定の長さだけ小径に設定された小径部84が形成されている。これにより、小径部84の外面841と中栓7の基端部内周面との間には、間隙が形成されている。この間隙の幅、すなわち、図9および図12中径方向の長さは、山状凸部81の高さより短く設定されている。
【0085】
中栓7は、流路遮断位置にあるとき(図9参照)、山状凸部81が谷状凹部83に係合し、その位置が規制されている。この状態から、シリンジ本体2を手で把持して、例えばハブ22を口部34の軸を中心として図9中反時計周りにほぼ90°回転させると、これに伴って中栓7が口部34の軸を中心として同方向にほぼ90°回転し、流路連通位置(図12参照)に至り、山状凸部81が谷状凹部82に係合する。このように中栓7が流路連通位置となると、山状凸部81の側面812が、谷状凹部82の上側面821に当接するため、中栓7は、口部34の軸を中心としてそれ以上同方向に回転するのが防止される。すなわち、中栓7は、流路連通位置に位置決めされる。
【0086】
なお、中栓7が流路遮断位置にある状態から、シリンジ本体2を手指で把持して、ハブ22を口部34の軸を中心として図9中時計周りにほぼ90°回転させることによっても、中栓7を流路連通位置とすることができる。
【0087】
また、このようなプレフィルドシリンジ1では、中栓7の導液路71および口部34の各側孔342の位置を示すマーカー9を有していていることが好ましい。
【0088】
図10に示すように、マーカー9は、中栓7の基端部外周に導液路71と対応した位置に形成された溝91と、外筒3の先端部外周に各側孔342に対応した位置に形成された一対の溝92とで構成されている。
【0089】
これにより、例えばプレフィルドシリンジ1の内部を視認することが困難な場合であっても、溝91が各溝92のいずれか一方で一致しているとき(図10参照)には、中栓7が流路連通位置にあることが判り、また、溝91が各溝92のいずれとも一致せず、各溝92からそれぞれほぼ90°離間しているとき(図7参照)には、中栓7が流路遮断位置にあることが判る。このため、プレフィルドシリンジ1の操作に際して便利である。
【0090】
また、溝91は、針管23の針先232に形成された刃面の位置とほぼ一致して設けられているのが好ましい。この場合、溝91は、刃面の位置も示すことができる。したがって、針管23を例えば患者の血管内に穿刺する操作の際には、溝91を上方に位置させ、針管23の刃面を上方に向けて、プレフィルドシリンジ1を使用することにより、この操作をより確実に行うことができる。
【0091】
次に、プレフィルドシリンジ1の使用方法の一例、すなわち操作手順について説明する。なお、以下の説明では、患者の血管内に薬液L3を注入する場合について説明する。
【0092】
[1] まず、包材(図示せず)に収納されている図1に示すプレフィルドシリンジ1を、包材を開封して取り出す。この状態では、中栓7は、流路341と導液路71とが遮断された流路遮断位置に位置している。これにより、中栓7は、各側孔342を気密に封止し、第1の空間15内の薬剤L1がその第1の空間15内に保持されている。
【0093】
なお、このとき、溝91と各溝92とが一致していないので、中栓7が流路遮断位置にあることを容易に認識することができる。
【0094】
また、第1の筒体5は、閉位置に位置し、第1の筒体5の開口52と第2の筒体6開口62とは重なっていない。すなわち、第1の空間15と第2の空間16とが液密に隔てられた閉状態となっている。これにより、第2の空間16内の液体L2がその第2の空間16内に保持されている。
【0095】
[2] 次に、図4(a1)、(a2)に示すように、プレフィルドシリンジ1の外筒3を一方の手指で把持して固定し、他方の手指で第1の筒体5のレバー54を所定方向に押し、第1の筒体5を図4(a2)中の時計回りに所定角度、すなわちレバー54が突出部64に当接するまで回動させ、その第1の筒体5を開位置に移動させる。これにより、第1の筒体5の開口52と第2の筒体6開口62とが重なり、第1の空間15と第2の空間16とが連通した開状態となる。
【0096】
なお、内筒4の第2の筒体6と、第2のガスケット13との間でブロッキングが生じていることがあるので、第1の空間15と第2の空間16とが連通した開状態とする前に、押し子11を先端方向に軽く押し、そのブロッキングを解除する。この際、内筒4も先端方向に移動しても、中栓7により各側孔342が気密に封止されているので、第1の空間15内の薬剤L1が口部34の流路341に移送されてしまうことを阻止でき、薬剤L1がその流路341に詰まることを防止することができる。
【0097】
[3] 次に、図4(b1)、(b2)に示すように、押し子11を先端方向に押し、第2のガスケット13を先端方向に移動させる。これにより、第2の空間16内の液体L2は、底板61の開口62、シール部材14の開口および底板51の開口52を介して第1の空間15内に移送される。
【0098】
[4] 次に、図5(c1)、(c2)に示すように、プレフィルドシリンジ1を所定回数振り、第1の空間15において、薬剤L1と液体L2とを混合、すなわち薬剤L1を液体L2に溶解し、薬液L3を得る。
【0099】
[5] 次に、薬液L3の投与量の調整を行う。すなわち、図5(d1)、(d2)に示すように、外筒3を一方の手指で把持し、他方の手指で押し子11を基端方向に引っ張り、第2のガスケット13を基端方向に移動させ、第1の空間15内の薬液L3のうちの不要分を、底板51の開口52、シール部材14の開口および底板61の開口62を介して第2の空間16内に回収し、第1の空間15内に、必要分、すなわち目的とする投与量の薬液L3を残す。
【0100】
この投与量の調整の際は、外筒3に付されている目盛り33を見ながら、目的とする投与量の薬液L3が第1の空間15内に残るように、押し子11を移動操作する。そして、第1の空間15内の薬液L3の計量に確実を期すため、さらに、第2の空間16内に回収された薬液L3の量を内筒4に付されている目盛り41から読み取り、その第2の空間16内に回収された薬液L3の量と、投与量との合計値が、プレフィルドシリンジ1の内容液量と一致することを確認することで、第1の空間15内の薬液L3の量が投与量であることを確認する。これにより、投与量の調整ミスを防止することができる。
【0101】
なお、前記の操作により、第1の空間15内の空気も底板51の開口52、シール部材14の開口および底板61の開口62を介して第2の空間16内に移送され、回収される。
【0102】
[6] 次に、図6(e1)、(e2)に示すように、外筒3を一方の手指で把持して固定し、他方の手指で第1の筒体5のレバー53を前記と逆方向に押し、第1の筒体5を図6(e2)中の反時計回りに所定角度、すなわちレバー53が突出部63に当接するまで回動させ、その第1の筒体5を閉位置に移動させる。これにより、第1の筒体5の開口52と第2の筒体6開口62とが重ならなくなり、閉状態となる。
【0103】
[7] 次に、外筒3を一方の手指で把持して固定し、他方の手指で注射針21のハブ22を把持し、ハブ22を口部34の軸を中心として図8および図9中反時計回りに徐々に回転させると、中栓7は、ハブ22の回転に伴って、口部34の軸を中心としてハブ22と同方向に回転する。このとき、山状凸部81の頂部811は、小径部84の肩部842を乗り越える(図8および図9参照)。これにより、山状凸部81が谷状凹部83から離脱し、山状凸部81と谷状凹部83との係合が解除される。
【0104】
さらに、ハブ22を口部34の軸を中心として図8および図9中反時計回りに回転させると、これに伴って中栓7も口部34の軸を中心として同方向に回転する。このとき、山状凸部81の頂部811は、小径部84の外面841と摺接しつつ、外面841に沿って同方向に移動する。このため、ハブ22を回転させている操作者の手指には、回転負荷が作用する。
【0105】
次いで、頂部811が小径部84の肩部843を通過すると、山状凸部81は、谷状凹部82内に侵入して、谷状凹部82に係合する。これにより、中栓7は、流路連通位置となり、流路341と導液路71とが連通する。
【0106】
このとき、前記の回転負荷が一挙に減少して、ハブ22を回転操作させている操作者の手指には、負荷変化が伝わり、いわゆるクリック感が得られ、中栓7が流路連通位置となったことを容易に確認することができる。
【0107】
さらに、このとき、中栓7の溝91と外筒3の溝92とが一致するので、これによっても、中栓7が流路連通位置に至ったことを認識することができる。
【0108】
なお、この状態から、ハブ22を口部34の軸を中心として図12中反時計回りに回転させようとしても、山状凸部81の側面812と谷状凹部82の上側面821とが当接するため、中栓7が口部34の軸を中心として図12中反時計周りに回転するのが防止される。よって、ハブ22が口部34の軸を中心として図12中反時計回りに回転するのが防止される。すなわち、ハブ22は、流路遮断位置にロックされる。
【0109】
なお、この工程[7]では、ハブ22を口部34の軸を中心として図8および図9中時計回りに回転させても、前記と同様の作用を生じる。
【0110】
[8] 次に、キャップ24を取り外す。これにより、薬液L3を患者に投与する準備が完了する。
【0111】
[9] 薬液L3を患者に投与する際は、プレフィルドシリンジ1の針管23を患者の血管内に穿刺する。これにより、患者の血管内と第1の空間15内とが、流路341、導液路71および針管23の内腔231等を介して連通する。
【0112】
[10] 前記工程[9]の状態から、押し子11のフランジ112または内筒4の所定部位を手指で先端方向に向かって押圧すると、内筒4および第1のガスケット12が外筒3に対して先端方向に移動し、第1の空間15の容積が減少する。これにより、薬液L3は、流路341、導液路71、ハブ22の内腔221の先端部の空間、針管23の内腔231を順次通過し、患者の血管内に注入される。
【0113】
以上説明したように、このプレフィルドシリンジ1によれば、第1の空間15内に収納されている薬液L3のうちの投与に不要な分を、別途、目盛り付きの容器を用意することなく、第2の空間内に、排出し、回収することができる。また、薬液L3の不要分とともに、第2の空間内に、第1の空間15等のシリンジ内の空気を排出し、回収することができる。すなわち、前記投与量の調整操作をシリンジ内の液密性を保持した状態で、容易かつ迅速に行うことができる。
【0114】
また、第2の空間16を薬液L3の不要分を回収する回収用空間として兼用するので、別途、専用の回収用空間を設ける場合に比べ、プレフィルドシリンジ1の小型化を図ることができる。
【0115】
また、第2の空間16内に回収された薬液の量を目盛り41から読み取り、その第2の空間16内に回収された薬液L3の量と、目的とする投与量との合計値が、そのプレフィルドシリンジ1の内容液量と一致することを確認することで、第1の空間15内に残った薬液の量が投与量であることを確認する作業を行うことができる。すなわち、前記確認作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0116】
以上、本発明のプレフィルドシリンジを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0117】
なお、本発明では、外筒の口部内の流路を開閉する開閉機構を省略してもよい。すなわち、外筒の口部を筒状とし、中栓を省略してもよい。
【0118】
この場合は、キャップは、外筒の口部に着脱自在に装着される。そして、キャップの先端側の内部に、その装着時に、針管の内腔を気密的に封止する封止部材を設けることが好ましい。封止部材の構成材料としては、例えば、第1のガスケットの構成材料として挙げたものを用いることができる。これにより、キャップを口部に装着すると、針管が封止部材をその途中まで穿刺し、その封止部材により、針管の針先が覆われ、針管の内腔が気密的に封止される。
【符号の説明】
【0119】
1 プレフィルドシリンジ
2 シリンジ本体
3 外筒
31 底部
32 フランジ
33 目盛り
34 口部
341 流路
342 側孔
343 凹部
4 内筒
41 目盛り
5 第1の筒体
51 底板
52 開口
53、54 レバー
6 第2の筒体
61 底板
62 開口
63、64 突出部
7 中栓
71 導液路
72 係合部
73 突部
8 ロック手段
81 山状凸部
811 頂部
812 側面
82、83 谷状凹部
821 上側面
84 小径部
841 外面
842、843 肩部
9 マーカー
91、92 溝
11 押し子
111 本体部
112 フランジ
12 第1のガスケット
13 第2のガスケット
14 シール部材
15 第1の空間
16 第2の空間
21 注射針
22 ハブ
221 内腔
222 凹部
23 針管
231 内腔
232 針先
24 キャップ
L1 薬剤
L2 液体
L3 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に口部が形成された外筒と、
少なくとも先端側が前記外筒内に挿入され、前記外筒に対してその軸方向に移動可能に設置された内筒と、
前記外筒と前記内筒とで囲まれた第1の空間と、前記内筒内に形成された第2の空間とのいずれか一方に収納された薬剤と、他方に収納された液体とを有するプレフィルドシリンジであって、
前記第1の空間と前記第2の空間とを液密に隔てる閉状態と前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる開状態とに切り替え可能な開閉手段を有し、
前記第2の空間内の前記薬剤または前記液体を前記開閉手段を介して前記第1の空間内に移送し、前記薬剤と前記液体とを混合して得られた薬液の一部を前記開閉手段を介して前記第2の空間内に回収するよう構成されていることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記内筒は、先端側に第1の底板を有する第1の筒体と、
前記第1の筒体内に、前記第1の筒体の軸回りに該第1の筒体に対して相対的に回動自在に設置され、先端側に第2の底板を有する第2の筒体とを備え、
前記開閉手段は、前記第1の底板および前記第2の底板を有し、
前記第1の底板には、その中心からずれた位置に第1の開口が形成され、
前記第2の底板には、その中心からずれた位置に第2の開口が形成され、
前記第1の筒体と前記第2の筒体とが相対的に回動し、その回動角度に応じて、前記第1の開口と前記第2の開口とが重ならない前記閉状態と、前記第1の開口と前記第2の開口とが重なる前記開状態とを採り得るよう構成されている請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記内筒の先端部に設けられ、前記外筒内で摺動し得る第1のガスケットを有する請求項1または2に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
前記内筒内で摺動し得る第2のガスケットと、
前記第2のガスケットを移動操作する押し子とを有する請求項1ないし3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
前記外筒には、前記第1の空間内に収納された前記薬液の液量を示す目盛りが付され、
前記内筒には、前記第2の空間内に回収された前記薬液の液量を示す目盛りが付されている請求項1ないし4のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
前記口部内の流路を開閉する開閉機構を有する請求項1ないし5のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
前記開閉手段により前記開状態とし、前記第2の空間内の前記薬剤または前記液体を前記開閉手段を介して前記第1の空間内に移送し、前記薬剤と前記液体とを混合して前記薬液を得、該薬液のうちの必要分を前記第1の空間内に残し、不要分を前記開閉手段を介して前記第2の空間内に回収し、前記開閉手段により前記閉状態として使用されるよう構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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