プレフィルドシリンジ
【課題】本発明の目的は、ガスケットへのプランジャ装着作業時における液漏れの発生を確実に防止できるプレフィルドシリンジを提供する。
【解決手段】プレフィルドシリンジ1は、内部にガスケット3を有するプレフィルドシリンジ本体10と、プランジャ4とからなる。プランジャ4は、先端部41とその外面に設けられたプランジャ側螺合部42、押圧用突出部43を備える。ガスケット3は、プランジャ側螺合部と螺合する螺旋状螺合部66と、押圧用突出部43を収容する環状凹部64と、押圧用突出部43により押圧される被押圧用突出部65を備える。ガスケット3とプランジャ4の螺合進行時に、押圧用突出部43が被押圧用突出部65を先端方向に押圧し、プランジャ側螺合部42が螺旋状螺合部66と圧接し後端方向に押圧し、ガスケットの移動を防止する。
【解決手段】プレフィルドシリンジ1は、内部にガスケット3を有するプレフィルドシリンジ本体10と、プランジャ4とからなる。プランジャ4は、先端部41とその外面に設けられたプランジャ側螺合部42、押圧用突出部43を備える。ガスケット3は、プランジャ側螺合部と螺合する螺旋状螺合部66と、押圧用突出部43を収容する環状凹部64と、押圧用突出部43により押圧される被押圧用突出部65を備える。ガスケット3とプランジャ4の螺合進行時に、押圧用突出部43が被押圧用突出部65を先端方向に押圧し、プランジャ側螺合部42が螺旋状螺合部66と圧接し後端方向に押圧し、ガスケットの移動を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジが多く利用されている。プレフィルドシリンジにおけるガスケット挿入は、先端開口がシールされた外筒内に薬剤を充填した状態とし、減圧下雰囲気(真空下雰囲気)にて、ガスケットを外筒の開口部に配置し、その後、常圧状態とすることにより、ガスケットを外筒内に挿入させるといういわゆる真空打栓といわれる方法を用いるのが一般的である。プランジャが装着済みでは、外筒の開口部へのガスケットの配置が困難であるため、ガスケット単体にて上記の打栓作業が行われる。このため、プレフィルドシリンジとしては、その後のプランジャ装着作業を必要とするのが一般的である。そして、ガスケットへのプランジャ装着作業を容易なものとし、かつ、装着作業時における液漏れ発生防止、内部圧の上昇抑制を少ないものとするために、プランジャに雄ねじ部、ガスケットに雌ねじ部を設け、両者の螺合による装着機構を有するものが一般的となっている。
【0003】
本件出願人は、以下の特許文献1および2を提案している。
特許文献1(特開2009−142508号公報)の注射器10は、ガスケット3と外筒2とプランジャ4とを備える。そして、プランジャ4は、ヘッド部42の外面に設けられた螺旋状リブ44を備え、ガスケットは、螺旋状リブと螺合するための螺旋状螺合部33と、螺旋状螺合部33の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブ34と、プランジャのヘッド部の螺旋状リブ形成部位収納部32を備える。環状リブ34は、プランジャの螺旋状リブとガスケットの螺旋状螺合部との螺合の進行により、環状リブに到達した螺旋状リブを収納部に誘導するためのリブ欠損部35を備えている。
このシリンジでは、プランジャの抜け防止としては有効である。しかし、プランジャの装着作業の仕方によっては、装着不良となることがまれに生じる。
【0004】
特許文献2(国際公開WO01−97885号)のシリンジでは、プランジャ4の先端部には、ガスケット3の中空部33内に挿入され、ガスケット3と連結されるヘッド部(連結部)43が形成されている。ヘッド部43の外周面には、雄ネジ51が形成されている。一方、ガスケット3の中空部33の内周面には、雄ネジ51と螺合し得る雌ネジ52が形成されている。ヘッド部43は、雄ネジ51より先端側に配置された弾性片61と、各弾性片61の端部付近に、外周方向に向かって突出形成された突部62とを有している。ガスケット3の中空部33の雌ネジ52により先端側の内周面には、リング状の係合突部63が突出形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142508号公報
【特許文献2】国際公開WO01−97885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2のようなプランジャに雄ねじ部、ガスケットに雌ねじ部を設け、両者の螺合による装着機構を有するものでは、装着作業時に、ガスケットを先端方向に押圧する力が付与されることを避けにくく、このため、液漏れが生じる可能性がある。
そこで、本発明の目的は、ガスケットへのプランジャ装着作業時における液漏れの発生を確実に防止でき、かつ、プランジャがガスケットに装着されたことの確認も容易であり、さらに、装着後のプランジャからのガスケットの離脱を確実に抑制することができるプレフィルドシリンジを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 外筒と、該外筒内に摺動可能に収納され、内部に内腔部を有するガスケットと、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ本体と、前記プレフィルドシリンジ本体の前記ガスケットに装着可能もしくは装着されたプランジャとからなるプレフィルドシリンジであって、
前記プランジャは、フランジ部を先端側に有する本体部と、前記本体部より、前方に突出し、前記ガスケットの前記内腔部に収納可能な先端部と、該先端部の外面に設けられたプランジャ側螺合部と、前記プランジャ側螺合部と前記フランジ部間の前記先端部の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、前記内腔部の内面に設けられ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部と螺合するための螺旋状螺合部と、前記螺旋状螺合部より後端側に設けられ、前記プランジャの前記押圧用突出部を収容するための環状凹部と、前記環状凹部の基端側に形成され、前記押圧用突出部により押圧される被押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットへの前記プランジャの装着時において、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と前記プランジャの前記プランジャ側螺合部との螺合進行時に、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記被押圧用突出部に当接し、前記被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部が、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と圧接し前記螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、前記螺合の進行により、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記ガスケットの前記被押圧用突出部を乗り越え、前記ガスケットの前記環状凹部に収容されることにより、前記ガスケットに前記プランジャが装着されるものであるプレフィルドシリンジ。
【0008】
(2) 前記プランジャは、前記プランジャの前記押圧用突出部が前記ガスケットの前記環状凹部に収容された装着状態において、前記ガスケットに対して空転可能である上記(1)に記載のプレフィルドシリンジ。
(3) 前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記ガスケットの前記環状凹部は、前記環状凹部に前記プランジャの前記押圧用突出部の収容時において、前記プランジャの回転を許容するものである上記(1)または(2)に記載のプレフィルドシリンジ。
(4) 前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の後端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の先端部と前記環状凹部間の距離とほぼ同じもしくはこれより若干長いものとなっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(5) 前記ガスケットの前記被押圧用突出部の後端面は、前記ガスケットの後端方向かつ周縁方向に傾斜する傾斜面となっている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(6) 前記プランジャの前記押圧用突出部の前記ガスケットの前記被押圧用突出部と当接する部分は、先端方向かつ中心側に向かって傾斜する傾斜面となっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(7) 前記被押圧用突出部は、環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(8) 前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の先端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の後端部と前記環状凹部間の距離より長いものとなっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(9) 前記プランジャ側螺合部は、螺旋状リブである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジは、プレフィルドシリンジ本体と、プレフィルドシリンジ本体のガスケットに装着可能もしくは装着されたプランジャとからなる。プランジャは、フランジ部を先端側に有する本体部と、本体部より、前方に突出し、ガスケットの内腔部に収納可能な先端部と、先端部の外面に設けられたプランジャ側螺合部と、プランジャ側螺合部とフランジ部間の先端部の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部とを備える。ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、内腔部の内面に設けられ、プランジャのプランジャ側螺合部と螺合するための螺旋状螺合部と、螺旋状螺合部より後端側に設けられ、プランジャの押圧用突出部を収容するための環状凹部と、環状凹部の基端側に形成された押圧用突出部により押圧される被押圧用突出部とを備える。
そして、本発明のプレフィルドシリンジでは、ガスケットへのプランジャの装着時において、ガスケットの螺旋状螺合部とプランジャのプランジャ側螺合部との螺合進行時に、プランジャの押圧用突出部が、被押圧用突出部に当接し、被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、プランジャのプランジャ側螺合部が、ガスケットの螺旋状螺合部と圧接し螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、螺合の進行により、プランジャの押圧用突出部が、ガスケットの被押圧用突出部を乗り越え、ガスケットの環状凹部に収容されることにより、ガスケットにプランジャが装着されるものとなっている。
このため、ガスケットへのプランジャ装着作業時において、プランジャの押圧用突出部が、被押圧用突出部に当接し、被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力と、プランジャのプランジャ側螺合部が、ガスケットの螺旋状螺合部と圧接し螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力とが拮抗し、ガスケットの移動が防止される。これにより、ガスケットへのプランジャ装着作業時における液漏れの発生を確実に防止できる。さらに、プランジャの押圧用突出部のガスケットの環状凹部への収容により、プランジャのガスケットへの装着作業の終了を容易に確認できる。また、プランジャの押圧用突出部とガスケットの環状凹部との係合により、装着後のガスケットからのプランジャの離脱も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例のプレフィルドシリンジの正面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例のプレフィルドシリンジの正面図である。
【図3】図3は、図1および図2に示したプレフィルドシリンジのプレフィルドシリンジ本体の縦断面図である。
【図4】図4は、本発明のプレフィルドシリンジに使用されるガスケットの拡大正面図である。
【図5】図5は、図4のA−A線断面図である。
【図6】図6は、図4に示したガスケットの後端側からみた斜視図である。
【図7】図7は、図1および図2に示したプレフィルドシリンジのプランジャの正面図である。
【図8】図8は、図7に示したプランジャの斜視図である。
【図9】図9は、本発明のプレフィルドシリンジに使用される外筒の正面図である。
【図10】図10は、本発明のプレフィルドシリンジに使用される封止部材(シールキャップ)の断面図である。
【図11】図11は、本発明のプレフィルドシリンジにおけるプレフィルドシリンジ本体とプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
【図12】図12は、本発明のプレフィルドシリンジにおけるプレフィルドシリンジ本体とプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
【図13】図13は、本発明のプレフィルドシリンジにおけるプレフィルドシリンジ本体とプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施例のプレフィルドシリンジに使用されるガスケットの縦断面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例のプレフィルドシリンジに使用されるプランジャの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のプレフィルドシリンジについて説明する。
図1に示す本発明のプレフィルドシリンジ1は、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット3と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、外筒2内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤8とからなるプレフィルドシリンジ本体10と、ガスケット3に装着可能かつ非装着状態となっているプランジャ4とからなる。
図2に示す本発明のプレフィルドシリンジ1aは、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット3と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、外筒2内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤8とからなるプレフィルドシリンジ本体10と、ガスケット3に装着されたプランジャ4とからなる。
【0012】
プランジャ4は、フランジ部48を先端側に有する本体部40と、本体部40より、前方に突出し、ガスケット3の内腔部に収納可能な先端部41と、先端部41の外面に設けられたプランジャ側螺合部(具体的には、螺旋状リブ)42と、プランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42とフランジ部48間の先端部41の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部43とを備える。 ガスケット3は、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、内腔部の内面に設けられ、プランジャ4のプランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42と螺合するための螺旋状螺合部66と、螺旋状螺合部66より後端側に設けられ、プランジャ4の押圧用突出部43を収容するための環状凹部64と、環状凹部64の基端側に形成された押圧用突出部43により押圧される被押圧用突出部65とを備える。
【0013】
そして、ガスケット3へのプランジャ4の装着時において、ガスケット3の螺旋状螺合部66とプランジャ4のプランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42との螺合進行時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65に当接し、被押圧用突出部65を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、プランジャ4のプランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42が、ガスケット3の螺旋状螺合部66と圧接し螺旋状螺合部66を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、螺合の進行により、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65を乗り越え、ガスケット3の環状凹部64に収容されることにより、ガスケット3にプランジャ4が装着されるものとなっている。
【0014】
本発明のプレフィルドシリンジ1は、プレフィルドシリンジ本体10と、プレフィルドシリンジ本体10のガスケット3に装着可能もしくは装着されたプランジャ4とからなる。この実施例のプレフィルドシリンジ1では、プランジャ4のプランジャ側螺合部は、螺旋状リブ42により構成されている。プランジャ側螺合部は、螺旋状リブであることが好ましいが、後述するガスケットの螺旋状螺合部と螺合可能なものであればよく、例えば、ラグ(複数の突出部により構成される)であってもよい。ラグとしては、プランジャの後述する先端部41の外面の同一円周部に部分的な突出部を形成したものが例示される。例えば、プランジャの先端部41の先端部外周に、複数、例えば、向かい合うように2個設けたものが考えられる。
プレフィルドシリンジ本体10は、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット3と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、外筒2内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤8とからなる。
ガスケット3は、図4ないし図6に示すように、閉塞した先端と、後端開口を有する筒状体である。ガスケット3は、本体部60と、本体部60の先端側に設けられ先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部61を有する。また、ガスケット3は、先端側部に設けられ、外筒内面と摺接する先端側摺接部68と後端側部分に設けられた後端側摺接部69を備えている。また、先端側摺接部68は、軸方向の中央付近の径が大きくなっていることが好ましい。具体的に、先端側摺接部68は若干太鼓胴部状に形成されていることが好ましい。このような構成により、プランジャー押圧時に先端側摺接部68が外筒の内面から離間しにくくなるので薬液が漏れにくくなる。また、先端側摺接部68は、図3ないし図6に示すように、軸方向に幅広に形成されていることが好ましい。
【0015】
そして、ガスケット3は、内腔部を有し、内腔部の内面には、プランジャ4の螺旋状リブ42と螺合するための螺旋状螺合部66と、螺旋状螺合部66より後端側に設けられ、プランジャ4の押圧用突出部43を収容するための環状凹部64と、環状凹部64の基端側に形成された押圧用突出部43により押圧される被押圧用突出部65とを備える。さらに、この実施例のガスケット3では、内腔部は、螺旋状螺合部66より先端側にプランジャ4の先端部41の螺旋状リブ42を収納するための螺旋状リブ収納部62を備えている。
具体的には、ガスケット3の内腔部には、先端側より、螺旋状リブ収納部62、螺旋状螺合部66、環状凹部64、被押圧用突出部65の順にてそれらを備えている。
螺旋状螺合部66は、一本もしくは複数本のねじ山により形成されており、ねじ山間により形成される螺旋状空間63をプランジャ4の螺旋状リブ42が進行する。螺旋状螺合部66は、螺旋状リブ収納部62の後端部に先端が位置し、環状凹部64付近に後端が位置する短い螺旋状のものとなっている。この実施例では、螺旋状螺合部66は、後述するするプランジャ4の螺旋状リブ42に対応するように、二条(二本)の螺旋状螺合部66となっている。なお、上記のような複数(具体的には、二条)の螺旋状螺合部を備えることが好ましいが、螺旋状螺合部(螺旋状突起)は、一条(一本)のみであってもよい。
【0016】
環状凹部64は、螺旋状螺合部66が形成されている部分の内径(螺旋状空間63部分での内径)より、大きい内径を有する環状凹部であり、プランジャ4の押圧用突出部43をプランジャ4の回転を許容可能に収納するものとなっている。このため、環状凹部の内径は、プランジャ4の押圧用突出部43部分の外径より、大きいものとなっている。また、環状凹部64と螺旋状螺合部の形成部間には、段差部が形成されており、プランジャ4の押圧用突出部43の先端方向への移動(言い換えれば、プランジャの先端方向への移動)を規制している。
そして、環状凹部64の後端部により、被押圧用突出部65が形成されている。この実施例では、被押圧用突出部65は、内腔部の後端部に形成されている。被押圧用突出部65の内径は、プランジャ4の押圧用突出部43部分の外径より、小さいものとなっている。そして、ガスケット3の被押圧用突出部65の後端面65aは、ガスケット3の後端方向かつ周縁方向に傾斜する傾斜面となっている。このため、被押圧用突出部65は、その頂点に向かって肉薄となっている。これにより、プランジャ4の押圧用突出部43が、被押圧用突出部65を乗り越えることを容易なものとしている。また、このプランジャ4の押圧用突出部43が、プランジャ抜け止め部を構成している。この実施例のガスケットでは、被押圧用突出部65の先端面(環状凹部64の後端面)は、起立面となっており、同様に起立面となっているプランジャ4の押圧用突出部43の後端面と当接する。
【0017】
この実施例では、被押圧用突出部65は、環状リブにより形成されている。このような環状リブにより、被押圧用突出部65を形成することが好ましいが、図14に示すガスケット3aのように、被押圧用突出部は、環状に配置された複数の突出部により形成してもよい。この実施例のガスケット3aでは、被押圧用突出部は、複数の突出部85により、形成されており、突出部85間には、空隙86が形成されている。突出部85は、内腔部の基端部内周に、ほぼ等間隔にて複数設けられている。また、この突出部85の後端面85aは、上述した環状リブと同様に、傾斜面となっている。
また、この実施例のガスケット3では、ガスケット3の内腔部(螺旋状リブ収納部62)の先端部内面は、ガスケット3の先端に向かって縮径している。そして、先端内面の中央部には、突起部67が設けられている。
【0018】
ガスケット3は、本体部60の直径が5〜30mm、全長が5〜30mm、テーパー部61の傾きについては、テーパー角が1〜5°であることが好ましい。
ガスケット3の構成材料としては、従来からシリンジ用ガスケットに使用されている公知のものが使用できる。例えば、ゴム、エラストマー、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムが好ましく、特に、加硫処理したものが好ましい。エラストマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びこれらの混合物が好ましい。上記ゴム、エラストマーの中でも、特に、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン系エラストマーが、好適な硬度、弾性特性を有し、γ線滅菌、電子線滅菌、高圧蒸気滅菌などの各種滅菌方法が採用可能であることから好ましい。
また、シリンジ用ガスケットの先端側部分に低薬剤吸着性物質等を被覆したものであってもよい。
【0019】
低薬物吸着層の材質としては、従来からシリンジ用ガスケットに使用されている公知のものが使用できる。低薬物吸着層の材質としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン等が好ましく、フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
また、ガスケット3の先端側摺接部68、後端側摺接部69の両者もしくは少なくとも一方の表面に潤滑剤等を被覆してもよい。潤滑剤としては、シリコーンオイルが好適である。
【0020】
図7および図8に示すように、プランジャ4は、ガスケット3の基端面を押圧可能なフランジ部48を先端側に有する本体部40と、本体部40より、前方に突出し、ガスケット3の内腔部に収納可能な先端部41とを有する。
本体部40は、断面十字状に形成されたシャフト部47を備え、その先端にフランジ部48が設けられている。フランジ部48は、プランジャ3の基端面を押圧可能に円盤状に形成されている。また、シャフト部47の基端には、プランジャ押圧部49が設けられている。
先端部41は、フランジ部48より先端方向に突出する小径筒状部であり、ガスケット3の螺旋状螺合部66と螺合可能な螺旋状リブ42と、螺旋状リブ42とフランジ部48間に設けられた押圧用突出部43を備えている。
【0021】
螺旋状リブ42は、装着用先端部41を形成する筒状部の先端部の外面に形成されている。また、このプランジャ4では、上述したガスケット3の螺旋状螺合部66に対応するように、二条(二本)の螺旋状リブを備えている。螺旋状リブは、短い螺旋状となっている。このような複数(具体的には、二条)の螺旋状リブを備えることが好ましいが、螺旋状リブは、一条(一本)のみであってもよい。
押圧用突出部43は、螺旋状リブ42とフランジ部48間であり、螺旋状リブ42より所定長離間し、押圧用突出部43に近接する位置に設けられている。この実施例では、押圧用突出部43は、先端部41の外面に設けられた外方に突出する環状リブにより形成されている。この実施例のように、押圧用突出部は、環状リブであることが好ましいが、図15に示すガスケット4aのように、押圧用突出部45は、先端部41の外面に環状に配置された複数の突出部により構成してもよい。
【0022】
押圧用突出部43は、ガスケット3の被押圧用突出部65の内径より大きい外径を有し、ガスケット3の被押圧用突出部65を押圧可能なものとなっている。また、プランジャ4の押圧用突出部43のガスケット4の被押圧用突出部65と当接する部分は、先端方向かつ中心側に向かって傾斜する傾斜面となっていてもよい。この場合、押圧用突出部43は、先端方向に向かって肉薄となる。このようにすることにより、押圧用突出部43のガスケット3の被押圧用突出部65の乗り越えが容易なものとなる。また、押圧用突出部43の外径は、ガスケット3の環状凹部64の内径より小さいものとなっており、押圧用突出部43は、ガスケット3の環状凹部64内に収容可能となっている。ガスケット3の環状凹部64内に収納された押圧用突出部43が、プランジャ抜け止め部を構成する。
プランジャ4の構成材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
そして、本発明のプレフィルドシリンジでは、ガスケット3へのプランジャ4の装着時において、ガスケット3の螺旋状螺合部66とプランジャ4の螺旋状リブ42との螺合進行時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65に当接し、被押圧用突出部65を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、プランジャ4の螺旋状リブ42が、ガスケット3の螺旋状螺合部66と圧接し螺旋状螺合部66を後端側に押圧する押圧力を付与する。このため、螺合進行抵抗は、高くなるが、両者の押圧力が拮抗するため、ガスケット3へのプランジャ4の装着時における、ガスケットの移動、すなわち液漏れが防止される。
そして、プランジャ4の螺旋状リブ42の先端部と押圧用突出部43間の距離は、ガスケット3の螺旋状螺合部66の後端部と環状凹部64間の距離より長いものとなっている。このため、ガスケット3の螺旋状螺合部66とプランジャ4の螺旋状リブ42との螺合進行時に、確実に、プランジャ4の押圧用突出部43によるガスケット3の被押圧用突出部65の押圧と、プランジャ4の螺旋状リブ42と、ガスケット3の螺旋状螺合部66との圧接が生じ、押圧力の拮抗状態が発現する。
そして、螺合の進行により、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65を乗り越え、ガスケット3の環状凹部64に収容されることにより、ガスケット3にプランジャ4が装着される。
【0024】
そして、本発明のプレフィルドシリンジでは、ガスケット3およびプランジャ4は、プランジャ4の押圧用突出部43がガスケット3の環状凹部64に収容された装着状態において、空転可能であることが好ましい。このようにすることにより、プランジャのガスケットへの装着後、プランジャを回転させても、プランジャのガスケットからの離脱は不能となる。
この実施例では、ガスケット3は、上述したように、内腔部の先端部に、螺旋状螺合部66を通過したプランジャ4の螺旋状リブ42を収納し、かつ螺旋状リブ42の空転を許容する螺旋状リブ収納部62を有している。具体的には、螺旋状リブ42は、プランジャ4の螺旋状リブ42が形成された部分の外径より広い内径を有している。また、ガスケット3の環状凹部64は、環状凹部64にプランジャ4の押圧用突出部43の収容時において、プランジャ4の回転を許容するものとなっている。具体的には、ガスケット3の環状凹部64の内径は、プランジャ4の押圧用突出部43の外径より、大きいものとなっている。さらに、この実施例のものは、プランジャ4の螺旋状リブ42の後端部と押圧用突出部43間の距離Hは、ガスケット3の螺旋状螺合部66の先端部と環状凹部64間の距離Lとほぼ同じもしくは若干長いものとなっている。このため、プランジャ4の螺旋状リブ42のガスケットの螺旋状螺合部66の通過(言い換えれば、螺合関係の離脱、螺旋状リブ42の螺旋状リブ収納部62への収容の完了)とほぼ同時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の環状凹部64内に、収容されるものとなる。このため、プランジャ4の押圧用突出部43をガスケット3の環状凹部64内に収容させるためだけの押圧操作が不要となる。
【0025】
外筒2は、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。
外筒2は、図1、図2および図9に示すように、ノズル部22と、カラー23とを備える。
ノズル部22は、外筒2の先端に設けられており、外筒内の薬液等を排出するための先端開口部を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。カラー23は、ノズル部22を取り囲むようにノズル部22と同心的に円筒状に形成されている。また、カラー23は、先端が開口しており、カラー23の内径および外径は基端から先端までほぼ同一径となっている。また、カラー23の先端開口からはノズル部22の先端部が突出しており、ノズル部22およびカラー23の先端部は、ノズル部22およびカラー23を封止部材(シールキャップ)5内に収納しやすくするため面取り加工されている。
カラー内周面には、後述する封止部材(シールキャップ)5のノズル収納部53に形成されたネジ山(キャップ側螺合部)54と螺合するためのネジ溝(外筒側螺合部)25が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5はカラー内周面とノズル収納部外周面との間で螺合する。また、ネジ溝(外筒側螺合部)25は、シールキャップ5を外筒から取り外した後注射針(注射針のハブ)を取り付ける部分となる。
【0026】
外筒は、図1、図2および図9に示すように、フランジ24を有する。フランジ24は、外筒2の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ24は、図1、図2、図9に示すように向かい合う幅広となった2つの把持部を備え、さらに、把持部の先端面側には、複数のリブが形成されている。
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0027】
封止部材であるシールキャップ5は、図1、図2、図10に示すように、閉塞端51と、ノズル収納部53とカラー収納部52を備えている。
ノズル収納部53は、シールキャップ5の中央部に設けられ、先端が閉塞し円筒状である。ノズル収納部53の内径は、ノズル部22より若干大きく作製され、先端から基端まで基端に向かって若干テーパー状に拡径しており、基端開口からノズル部全体を収納するものとなっている。
ノズル収納部53の内側閉塞面(閉塞端51の内面)には、外筒2の先端開口部を液密に密封するためのシール部材55が収納されている。シール部材55としては、外筒2の先端開口部を液密に密封可能なように弾性部材であることが好ましい。シール部材の形成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましい。
また、ノズル収納部53の外面には、外筒2のカラー23の内面に形成されたネジ溝(外筒側螺合部)25と螺合するためのネジ山(キャップ側螺合部)54が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5は、ノズル収納部の外面とカラーの内面との間で螺合する。
【0028】
カラー収納部52は、ノズル収納部53を取り囲むように形成され先端が閉塞した円筒状体であり、カラー収納部の内面とノズル収納部の外面との間にカラー23を収納する。また、円筒状に形成されたカラー収納部52は、ノズル収納部53と同心状となっており、カラー収納部52の内径は、先端から基端までほぼ同一径となっている。
また、図1に示すようにシールキャップ5の外側面(カラー収納部52の外周面)には、シールキャップを回転させる時指等が滑らないようにするために縦方向に刻み加工が施されている。
シールキャップの形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0029】
そして、本発明のプレフィルドシリンジ1では、図3に示すように、プレフィルドシリンジ本体10の外筒2内に形成された薬剤収納部に薬剤8が充填されている。
薬剤8としては、どのような薬剤でもよいが、例えば、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、塩化ナトリウム注射液、ビタミン剤、ミネラル類などの薬液、さらには、抗生物質、タンパク製剤等の粉末状もしくは凍結乾燥薬剤あるいは液剤が使用される。本発明のプレフィルドシリンジは、特にシリンジポンプを用いて投与するタイプのプレフィルドシリンジに適しているので、充填される薬剤としてはそのような投与手段を用いることに適した薬剤であることが好ましく、ニトログリセリン注射液、硝酸イソソルビド注射液、ドパミン塩酸塩(塩酸ドパミン)注射液、ドブタミン塩酸塩注射液、塩酸モルヒネ注射液、などが挙げられる。
【0030】
次に、本発明のプレフィルドシリンジ1の作用を図11ないし図13を用いて説明する。
プレフィルドシリンジ本体10は、外筒2の基端部内にガスケット3を収納した状態となっている。図11に示すように、プランジャ4を先端部41からプランジャ3内に回転させながら進入させる。これにより、ガスケット3の螺旋状螺合部66と、プランジャ4の装着用先端部41の螺旋状リブ42が螺合する。螺合が進行すると、図12に示すように、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65の傾斜面65aに当接し、図12に示すガスケットの先端方向への押圧力が付与され、プランジャ4の螺旋状リブ42とガスケット3の螺旋状螺合部66との圧接が生じ、図12に示すガスケットの後端方向への押圧力が付与され、押圧力の拮抗状態が発現し、ガスケットの移動が規制された状態での螺合の進行が可能となる。さらに、螺合を進行させると、 図13に示すように、プランジャ4の螺旋状リブ42のガスケットの螺旋状螺合部66の通過(螺合関係の離脱)とほぼ同時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の環状凹部64内に収容され、プランジャ4のガスケット3への装着操作が完了する。
そして、ガスケット3に装着されたプランジャ4は、ガスケットに対して、空転するものとなっているため、プランジャ4の回転がガスケット3に伝達されない。
【符号の説明】
【0031】
1 プレフィルドシリンジ
2 外筒
3 ガスケット
4 プランジャ
5 封止部材
6 ガスケット本体
7 プランジャ装着用部材
10 プレフィルドシリンジ本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジが多く利用されている。プレフィルドシリンジにおけるガスケット挿入は、先端開口がシールされた外筒内に薬剤を充填した状態とし、減圧下雰囲気(真空下雰囲気)にて、ガスケットを外筒の開口部に配置し、その後、常圧状態とすることにより、ガスケットを外筒内に挿入させるといういわゆる真空打栓といわれる方法を用いるのが一般的である。プランジャが装着済みでは、外筒の開口部へのガスケットの配置が困難であるため、ガスケット単体にて上記の打栓作業が行われる。このため、プレフィルドシリンジとしては、その後のプランジャ装着作業を必要とするのが一般的である。そして、ガスケットへのプランジャ装着作業を容易なものとし、かつ、装着作業時における液漏れ発生防止、内部圧の上昇抑制を少ないものとするために、プランジャに雄ねじ部、ガスケットに雌ねじ部を設け、両者の螺合による装着機構を有するものが一般的となっている。
【0003】
本件出願人は、以下の特許文献1および2を提案している。
特許文献1(特開2009−142508号公報)の注射器10は、ガスケット3と外筒2とプランジャ4とを備える。そして、プランジャ4は、ヘッド部42の外面に設けられた螺旋状リブ44を備え、ガスケットは、螺旋状リブと螺合するための螺旋状螺合部33と、螺旋状螺合部33の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブ34と、プランジャのヘッド部の螺旋状リブ形成部位収納部32を備える。環状リブ34は、プランジャの螺旋状リブとガスケットの螺旋状螺合部との螺合の進行により、環状リブに到達した螺旋状リブを収納部に誘導するためのリブ欠損部35を備えている。
このシリンジでは、プランジャの抜け防止としては有効である。しかし、プランジャの装着作業の仕方によっては、装着不良となることがまれに生じる。
【0004】
特許文献2(国際公開WO01−97885号)のシリンジでは、プランジャ4の先端部には、ガスケット3の中空部33内に挿入され、ガスケット3と連結されるヘッド部(連結部)43が形成されている。ヘッド部43の外周面には、雄ネジ51が形成されている。一方、ガスケット3の中空部33の内周面には、雄ネジ51と螺合し得る雌ネジ52が形成されている。ヘッド部43は、雄ネジ51より先端側に配置された弾性片61と、各弾性片61の端部付近に、外周方向に向かって突出形成された突部62とを有している。ガスケット3の中空部33の雌ネジ52により先端側の内周面には、リング状の係合突部63が突出形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142508号公報
【特許文献2】国際公開WO01−97885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2のようなプランジャに雄ねじ部、ガスケットに雌ねじ部を設け、両者の螺合による装着機構を有するものでは、装着作業時に、ガスケットを先端方向に押圧する力が付与されることを避けにくく、このため、液漏れが生じる可能性がある。
そこで、本発明の目的は、ガスケットへのプランジャ装着作業時における液漏れの発生を確実に防止でき、かつ、プランジャがガスケットに装着されたことの確認も容易であり、さらに、装着後のプランジャからのガスケットの離脱を確実に抑制することができるプレフィルドシリンジを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 外筒と、該外筒内に摺動可能に収納され、内部に内腔部を有するガスケットと、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ本体と、前記プレフィルドシリンジ本体の前記ガスケットに装着可能もしくは装着されたプランジャとからなるプレフィルドシリンジであって、
前記プランジャは、フランジ部を先端側に有する本体部と、前記本体部より、前方に突出し、前記ガスケットの前記内腔部に収納可能な先端部と、該先端部の外面に設けられたプランジャ側螺合部と、前記プランジャ側螺合部と前記フランジ部間の前記先端部の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、前記内腔部の内面に設けられ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部と螺合するための螺旋状螺合部と、前記螺旋状螺合部より後端側に設けられ、前記プランジャの前記押圧用突出部を収容するための環状凹部と、前記環状凹部の基端側に形成され、前記押圧用突出部により押圧される被押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットへの前記プランジャの装着時において、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と前記プランジャの前記プランジャ側螺合部との螺合進行時に、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記被押圧用突出部に当接し、前記被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部が、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と圧接し前記螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、前記螺合の進行により、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記ガスケットの前記被押圧用突出部を乗り越え、前記ガスケットの前記環状凹部に収容されることにより、前記ガスケットに前記プランジャが装着されるものであるプレフィルドシリンジ。
【0008】
(2) 前記プランジャは、前記プランジャの前記押圧用突出部が前記ガスケットの前記環状凹部に収容された装着状態において、前記ガスケットに対して空転可能である上記(1)に記載のプレフィルドシリンジ。
(3) 前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記ガスケットの前記環状凹部は、前記環状凹部に前記プランジャの前記押圧用突出部の収容時において、前記プランジャの回転を許容するものである上記(1)または(2)に記載のプレフィルドシリンジ。
(4) 前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の後端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の先端部と前記環状凹部間の距離とほぼ同じもしくはこれより若干長いものとなっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(5) 前記ガスケットの前記被押圧用突出部の後端面は、前記ガスケットの後端方向かつ周縁方向に傾斜する傾斜面となっている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(6) 前記プランジャの前記押圧用突出部の前記ガスケットの前記被押圧用突出部と当接する部分は、先端方向かつ中心側に向かって傾斜する傾斜面となっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(7) 前記被押圧用突出部は、環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(8) 前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の先端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の後端部と前記環状凹部間の距離より長いものとなっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
(9) 前記プランジャ側螺合部は、螺旋状リブである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジは、プレフィルドシリンジ本体と、プレフィルドシリンジ本体のガスケットに装着可能もしくは装着されたプランジャとからなる。プランジャは、フランジ部を先端側に有する本体部と、本体部より、前方に突出し、ガスケットの内腔部に収納可能な先端部と、先端部の外面に設けられたプランジャ側螺合部と、プランジャ側螺合部とフランジ部間の先端部の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部とを備える。ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、内腔部の内面に設けられ、プランジャのプランジャ側螺合部と螺合するための螺旋状螺合部と、螺旋状螺合部より後端側に設けられ、プランジャの押圧用突出部を収容するための環状凹部と、環状凹部の基端側に形成された押圧用突出部により押圧される被押圧用突出部とを備える。
そして、本発明のプレフィルドシリンジでは、ガスケットへのプランジャの装着時において、ガスケットの螺旋状螺合部とプランジャのプランジャ側螺合部との螺合進行時に、プランジャの押圧用突出部が、被押圧用突出部に当接し、被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、プランジャのプランジャ側螺合部が、ガスケットの螺旋状螺合部と圧接し螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、螺合の進行により、プランジャの押圧用突出部が、ガスケットの被押圧用突出部を乗り越え、ガスケットの環状凹部に収容されることにより、ガスケットにプランジャが装着されるものとなっている。
このため、ガスケットへのプランジャ装着作業時において、プランジャの押圧用突出部が、被押圧用突出部に当接し、被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力と、プランジャのプランジャ側螺合部が、ガスケットの螺旋状螺合部と圧接し螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力とが拮抗し、ガスケットの移動が防止される。これにより、ガスケットへのプランジャ装着作業時における液漏れの発生を確実に防止できる。さらに、プランジャの押圧用突出部のガスケットの環状凹部への収容により、プランジャのガスケットへの装着作業の終了を容易に確認できる。また、プランジャの押圧用突出部とガスケットの環状凹部との係合により、装着後のガスケットからのプランジャの離脱も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例のプレフィルドシリンジの正面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例のプレフィルドシリンジの正面図である。
【図3】図3は、図1および図2に示したプレフィルドシリンジのプレフィルドシリンジ本体の縦断面図である。
【図4】図4は、本発明のプレフィルドシリンジに使用されるガスケットの拡大正面図である。
【図5】図5は、図4のA−A線断面図である。
【図6】図6は、図4に示したガスケットの後端側からみた斜視図である。
【図7】図7は、図1および図2に示したプレフィルドシリンジのプランジャの正面図である。
【図8】図8は、図7に示したプランジャの斜視図である。
【図9】図9は、本発明のプレフィルドシリンジに使用される外筒の正面図である。
【図10】図10は、本発明のプレフィルドシリンジに使用される封止部材(シールキャップ)の断面図である。
【図11】図11は、本発明のプレフィルドシリンジにおけるプレフィルドシリンジ本体とプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
【図12】図12は、本発明のプレフィルドシリンジにおけるプレフィルドシリンジ本体とプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
【図13】図13は、本発明のプレフィルドシリンジにおけるプレフィルドシリンジ本体とプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施例のプレフィルドシリンジに使用されるガスケットの縦断面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例のプレフィルドシリンジに使用されるプランジャの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のプレフィルドシリンジについて説明する。
図1に示す本発明のプレフィルドシリンジ1は、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット3と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、外筒2内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤8とからなるプレフィルドシリンジ本体10と、ガスケット3に装着可能かつ非装着状態となっているプランジャ4とからなる。
図2に示す本発明のプレフィルドシリンジ1aは、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット3と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、外筒2内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤8とからなるプレフィルドシリンジ本体10と、ガスケット3に装着されたプランジャ4とからなる。
【0012】
プランジャ4は、フランジ部48を先端側に有する本体部40と、本体部40より、前方に突出し、ガスケット3の内腔部に収納可能な先端部41と、先端部41の外面に設けられたプランジャ側螺合部(具体的には、螺旋状リブ)42と、プランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42とフランジ部48間の先端部41の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部43とを備える。 ガスケット3は、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、内腔部の内面に設けられ、プランジャ4のプランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42と螺合するための螺旋状螺合部66と、螺旋状螺合部66より後端側に設けられ、プランジャ4の押圧用突出部43を収容するための環状凹部64と、環状凹部64の基端側に形成された押圧用突出部43により押圧される被押圧用突出部65とを備える。
【0013】
そして、ガスケット3へのプランジャ4の装着時において、ガスケット3の螺旋状螺合部66とプランジャ4のプランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42との螺合進行時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65に当接し、被押圧用突出部65を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、プランジャ4のプランジャ側螺合部(螺旋状リブ)42が、ガスケット3の螺旋状螺合部66と圧接し螺旋状螺合部66を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、螺合の進行により、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65を乗り越え、ガスケット3の環状凹部64に収容されることにより、ガスケット3にプランジャ4が装着されるものとなっている。
【0014】
本発明のプレフィルドシリンジ1は、プレフィルドシリンジ本体10と、プレフィルドシリンジ本体10のガスケット3に装着可能もしくは装着されたプランジャ4とからなる。この実施例のプレフィルドシリンジ1では、プランジャ4のプランジャ側螺合部は、螺旋状リブ42により構成されている。プランジャ側螺合部は、螺旋状リブであることが好ましいが、後述するガスケットの螺旋状螺合部と螺合可能なものであればよく、例えば、ラグ(複数の突出部により構成される)であってもよい。ラグとしては、プランジャの後述する先端部41の外面の同一円周部に部分的な突出部を形成したものが例示される。例えば、プランジャの先端部41の先端部外周に、複数、例えば、向かい合うように2個設けたものが考えられる。
プレフィルドシリンジ本体10は、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット3と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、外筒2内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤8とからなる。
ガスケット3は、図4ないし図6に示すように、閉塞した先端と、後端開口を有する筒状体である。ガスケット3は、本体部60と、本体部60の先端側に設けられ先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部61を有する。また、ガスケット3は、先端側部に設けられ、外筒内面と摺接する先端側摺接部68と後端側部分に設けられた後端側摺接部69を備えている。また、先端側摺接部68は、軸方向の中央付近の径が大きくなっていることが好ましい。具体的に、先端側摺接部68は若干太鼓胴部状に形成されていることが好ましい。このような構成により、プランジャー押圧時に先端側摺接部68が外筒の内面から離間しにくくなるので薬液が漏れにくくなる。また、先端側摺接部68は、図3ないし図6に示すように、軸方向に幅広に形成されていることが好ましい。
【0015】
そして、ガスケット3は、内腔部を有し、内腔部の内面には、プランジャ4の螺旋状リブ42と螺合するための螺旋状螺合部66と、螺旋状螺合部66より後端側に設けられ、プランジャ4の押圧用突出部43を収容するための環状凹部64と、環状凹部64の基端側に形成された押圧用突出部43により押圧される被押圧用突出部65とを備える。さらに、この実施例のガスケット3では、内腔部は、螺旋状螺合部66より先端側にプランジャ4の先端部41の螺旋状リブ42を収納するための螺旋状リブ収納部62を備えている。
具体的には、ガスケット3の内腔部には、先端側より、螺旋状リブ収納部62、螺旋状螺合部66、環状凹部64、被押圧用突出部65の順にてそれらを備えている。
螺旋状螺合部66は、一本もしくは複数本のねじ山により形成されており、ねじ山間により形成される螺旋状空間63をプランジャ4の螺旋状リブ42が進行する。螺旋状螺合部66は、螺旋状リブ収納部62の後端部に先端が位置し、環状凹部64付近に後端が位置する短い螺旋状のものとなっている。この実施例では、螺旋状螺合部66は、後述するするプランジャ4の螺旋状リブ42に対応するように、二条(二本)の螺旋状螺合部66となっている。なお、上記のような複数(具体的には、二条)の螺旋状螺合部を備えることが好ましいが、螺旋状螺合部(螺旋状突起)は、一条(一本)のみであってもよい。
【0016】
環状凹部64は、螺旋状螺合部66が形成されている部分の内径(螺旋状空間63部分での内径)より、大きい内径を有する環状凹部であり、プランジャ4の押圧用突出部43をプランジャ4の回転を許容可能に収納するものとなっている。このため、環状凹部の内径は、プランジャ4の押圧用突出部43部分の外径より、大きいものとなっている。また、環状凹部64と螺旋状螺合部の形成部間には、段差部が形成されており、プランジャ4の押圧用突出部43の先端方向への移動(言い換えれば、プランジャの先端方向への移動)を規制している。
そして、環状凹部64の後端部により、被押圧用突出部65が形成されている。この実施例では、被押圧用突出部65は、内腔部の後端部に形成されている。被押圧用突出部65の内径は、プランジャ4の押圧用突出部43部分の外径より、小さいものとなっている。そして、ガスケット3の被押圧用突出部65の後端面65aは、ガスケット3の後端方向かつ周縁方向に傾斜する傾斜面となっている。このため、被押圧用突出部65は、その頂点に向かって肉薄となっている。これにより、プランジャ4の押圧用突出部43が、被押圧用突出部65を乗り越えることを容易なものとしている。また、このプランジャ4の押圧用突出部43が、プランジャ抜け止め部を構成している。この実施例のガスケットでは、被押圧用突出部65の先端面(環状凹部64の後端面)は、起立面となっており、同様に起立面となっているプランジャ4の押圧用突出部43の後端面と当接する。
【0017】
この実施例では、被押圧用突出部65は、環状リブにより形成されている。このような環状リブにより、被押圧用突出部65を形成することが好ましいが、図14に示すガスケット3aのように、被押圧用突出部は、環状に配置された複数の突出部により形成してもよい。この実施例のガスケット3aでは、被押圧用突出部は、複数の突出部85により、形成されており、突出部85間には、空隙86が形成されている。突出部85は、内腔部の基端部内周に、ほぼ等間隔にて複数設けられている。また、この突出部85の後端面85aは、上述した環状リブと同様に、傾斜面となっている。
また、この実施例のガスケット3では、ガスケット3の内腔部(螺旋状リブ収納部62)の先端部内面は、ガスケット3の先端に向かって縮径している。そして、先端内面の中央部には、突起部67が設けられている。
【0018】
ガスケット3は、本体部60の直径が5〜30mm、全長が5〜30mm、テーパー部61の傾きについては、テーパー角が1〜5°であることが好ましい。
ガスケット3の構成材料としては、従来からシリンジ用ガスケットに使用されている公知のものが使用できる。例えば、ゴム、エラストマー、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムが好ましく、特に、加硫処理したものが好ましい。エラストマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びこれらの混合物が好ましい。上記ゴム、エラストマーの中でも、特に、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン系エラストマーが、好適な硬度、弾性特性を有し、γ線滅菌、電子線滅菌、高圧蒸気滅菌などの各種滅菌方法が採用可能であることから好ましい。
また、シリンジ用ガスケットの先端側部分に低薬剤吸着性物質等を被覆したものであってもよい。
【0019】
低薬物吸着層の材質としては、従来からシリンジ用ガスケットに使用されている公知のものが使用できる。低薬物吸着層の材質としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン等が好ましく、フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
また、ガスケット3の先端側摺接部68、後端側摺接部69の両者もしくは少なくとも一方の表面に潤滑剤等を被覆してもよい。潤滑剤としては、シリコーンオイルが好適である。
【0020】
図7および図8に示すように、プランジャ4は、ガスケット3の基端面を押圧可能なフランジ部48を先端側に有する本体部40と、本体部40より、前方に突出し、ガスケット3の内腔部に収納可能な先端部41とを有する。
本体部40は、断面十字状に形成されたシャフト部47を備え、その先端にフランジ部48が設けられている。フランジ部48は、プランジャ3の基端面を押圧可能に円盤状に形成されている。また、シャフト部47の基端には、プランジャ押圧部49が設けられている。
先端部41は、フランジ部48より先端方向に突出する小径筒状部であり、ガスケット3の螺旋状螺合部66と螺合可能な螺旋状リブ42と、螺旋状リブ42とフランジ部48間に設けられた押圧用突出部43を備えている。
【0021】
螺旋状リブ42は、装着用先端部41を形成する筒状部の先端部の外面に形成されている。また、このプランジャ4では、上述したガスケット3の螺旋状螺合部66に対応するように、二条(二本)の螺旋状リブを備えている。螺旋状リブは、短い螺旋状となっている。このような複数(具体的には、二条)の螺旋状リブを備えることが好ましいが、螺旋状リブは、一条(一本)のみであってもよい。
押圧用突出部43は、螺旋状リブ42とフランジ部48間であり、螺旋状リブ42より所定長離間し、押圧用突出部43に近接する位置に設けられている。この実施例では、押圧用突出部43は、先端部41の外面に設けられた外方に突出する環状リブにより形成されている。この実施例のように、押圧用突出部は、環状リブであることが好ましいが、図15に示すガスケット4aのように、押圧用突出部45は、先端部41の外面に環状に配置された複数の突出部により構成してもよい。
【0022】
押圧用突出部43は、ガスケット3の被押圧用突出部65の内径より大きい外径を有し、ガスケット3の被押圧用突出部65を押圧可能なものとなっている。また、プランジャ4の押圧用突出部43のガスケット4の被押圧用突出部65と当接する部分は、先端方向かつ中心側に向かって傾斜する傾斜面となっていてもよい。この場合、押圧用突出部43は、先端方向に向かって肉薄となる。このようにすることにより、押圧用突出部43のガスケット3の被押圧用突出部65の乗り越えが容易なものとなる。また、押圧用突出部43の外径は、ガスケット3の環状凹部64の内径より小さいものとなっており、押圧用突出部43は、ガスケット3の環状凹部64内に収容可能となっている。ガスケット3の環状凹部64内に収納された押圧用突出部43が、プランジャ抜け止め部を構成する。
プランジャ4の構成材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
そして、本発明のプレフィルドシリンジでは、ガスケット3へのプランジャ4の装着時において、ガスケット3の螺旋状螺合部66とプランジャ4の螺旋状リブ42との螺合進行時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65に当接し、被押圧用突出部65を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、プランジャ4の螺旋状リブ42が、ガスケット3の螺旋状螺合部66と圧接し螺旋状螺合部66を後端側に押圧する押圧力を付与する。このため、螺合進行抵抗は、高くなるが、両者の押圧力が拮抗するため、ガスケット3へのプランジャ4の装着時における、ガスケットの移動、すなわち液漏れが防止される。
そして、プランジャ4の螺旋状リブ42の先端部と押圧用突出部43間の距離は、ガスケット3の螺旋状螺合部66の後端部と環状凹部64間の距離より長いものとなっている。このため、ガスケット3の螺旋状螺合部66とプランジャ4の螺旋状リブ42との螺合進行時に、確実に、プランジャ4の押圧用突出部43によるガスケット3の被押圧用突出部65の押圧と、プランジャ4の螺旋状リブ42と、ガスケット3の螺旋状螺合部66との圧接が生じ、押圧力の拮抗状態が発現する。
そして、螺合の進行により、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65を乗り越え、ガスケット3の環状凹部64に収容されることにより、ガスケット3にプランジャ4が装着される。
【0024】
そして、本発明のプレフィルドシリンジでは、ガスケット3およびプランジャ4は、プランジャ4の押圧用突出部43がガスケット3の環状凹部64に収容された装着状態において、空転可能であることが好ましい。このようにすることにより、プランジャのガスケットへの装着後、プランジャを回転させても、プランジャのガスケットからの離脱は不能となる。
この実施例では、ガスケット3は、上述したように、内腔部の先端部に、螺旋状螺合部66を通過したプランジャ4の螺旋状リブ42を収納し、かつ螺旋状リブ42の空転を許容する螺旋状リブ収納部62を有している。具体的には、螺旋状リブ42は、プランジャ4の螺旋状リブ42が形成された部分の外径より広い内径を有している。また、ガスケット3の環状凹部64は、環状凹部64にプランジャ4の押圧用突出部43の収容時において、プランジャ4の回転を許容するものとなっている。具体的には、ガスケット3の環状凹部64の内径は、プランジャ4の押圧用突出部43の外径より、大きいものとなっている。さらに、この実施例のものは、プランジャ4の螺旋状リブ42の後端部と押圧用突出部43間の距離Hは、ガスケット3の螺旋状螺合部66の先端部と環状凹部64間の距離Lとほぼ同じもしくは若干長いものとなっている。このため、プランジャ4の螺旋状リブ42のガスケットの螺旋状螺合部66の通過(言い換えれば、螺合関係の離脱、螺旋状リブ42の螺旋状リブ収納部62への収容の完了)とほぼ同時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の環状凹部64内に、収容されるものとなる。このため、プランジャ4の押圧用突出部43をガスケット3の環状凹部64内に収容させるためだけの押圧操作が不要となる。
【0025】
外筒2は、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。
外筒2は、図1、図2および図9に示すように、ノズル部22と、カラー23とを備える。
ノズル部22は、外筒2の先端に設けられており、外筒内の薬液等を排出するための先端開口部を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。カラー23は、ノズル部22を取り囲むようにノズル部22と同心的に円筒状に形成されている。また、カラー23は、先端が開口しており、カラー23の内径および外径は基端から先端までほぼ同一径となっている。また、カラー23の先端開口からはノズル部22の先端部が突出しており、ノズル部22およびカラー23の先端部は、ノズル部22およびカラー23を封止部材(シールキャップ)5内に収納しやすくするため面取り加工されている。
カラー内周面には、後述する封止部材(シールキャップ)5のノズル収納部53に形成されたネジ山(キャップ側螺合部)54と螺合するためのネジ溝(外筒側螺合部)25が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5はカラー内周面とノズル収納部外周面との間で螺合する。また、ネジ溝(外筒側螺合部)25は、シールキャップ5を外筒から取り外した後注射針(注射針のハブ)を取り付ける部分となる。
【0026】
外筒は、図1、図2および図9に示すように、フランジ24を有する。フランジ24は、外筒2の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ24は、図1、図2、図9に示すように向かい合う幅広となった2つの把持部を備え、さらに、把持部の先端面側には、複数のリブが形成されている。
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0027】
封止部材であるシールキャップ5は、図1、図2、図10に示すように、閉塞端51と、ノズル収納部53とカラー収納部52を備えている。
ノズル収納部53は、シールキャップ5の中央部に設けられ、先端が閉塞し円筒状である。ノズル収納部53の内径は、ノズル部22より若干大きく作製され、先端から基端まで基端に向かって若干テーパー状に拡径しており、基端開口からノズル部全体を収納するものとなっている。
ノズル収納部53の内側閉塞面(閉塞端51の内面)には、外筒2の先端開口部を液密に密封するためのシール部材55が収納されている。シール部材55としては、外筒2の先端開口部を液密に密封可能なように弾性部材であることが好ましい。シール部材の形成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましい。
また、ノズル収納部53の外面には、外筒2のカラー23の内面に形成されたネジ溝(外筒側螺合部)25と螺合するためのネジ山(キャップ側螺合部)54が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5は、ノズル収納部の外面とカラーの内面との間で螺合する。
【0028】
カラー収納部52は、ノズル収納部53を取り囲むように形成され先端が閉塞した円筒状体であり、カラー収納部の内面とノズル収納部の外面との間にカラー23を収納する。また、円筒状に形成されたカラー収納部52は、ノズル収納部53と同心状となっており、カラー収納部52の内径は、先端から基端までほぼ同一径となっている。
また、図1に示すようにシールキャップ5の外側面(カラー収納部52の外周面)には、シールキャップを回転させる時指等が滑らないようにするために縦方向に刻み加工が施されている。
シールキャップの形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0029】
そして、本発明のプレフィルドシリンジ1では、図3に示すように、プレフィルドシリンジ本体10の外筒2内に形成された薬剤収納部に薬剤8が充填されている。
薬剤8としては、どのような薬剤でもよいが、例えば、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、塩化ナトリウム注射液、ビタミン剤、ミネラル類などの薬液、さらには、抗生物質、タンパク製剤等の粉末状もしくは凍結乾燥薬剤あるいは液剤が使用される。本発明のプレフィルドシリンジは、特にシリンジポンプを用いて投与するタイプのプレフィルドシリンジに適しているので、充填される薬剤としてはそのような投与手段を用いることに適した薬剤であることが好ましく、ニトログリセリン注射液、硝酸イソソルビド注射液、ドパミン塩酸塩(塩酸ドパミン)注射液、ドブタミン塩酸塩注射液、塩酸モルヒネ注射液、などが挙げられる。
【0030】
次に、本発明のプレフィルドシリンジ1の作用を図11ないし図13を用いて説明する。
プレフィルドシリンジ本体10は、外筒2の基端部内にガスケット3を収納した状態となっている。図11に示すように、プランジャ4を先端部41からプランジャ3内に回転させながら進入させる。これにより、ガスケット3の螺旋状螺合部66と、プランジャ4の装着用先端部41の螺旋状リブ42が螺合する。螺合が進行すると、図12に示すように、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の被押圧用突出部65の傾斜面65aに当接し、図12に示すガスケットの先端方向への押圧力が付与され、プランジャ4の螺旋状リブ42とガスケット3の螺旋状螺合部66との圧接が生じ、図12に示すガスケットの後端方向への押圧力が付与され、押圧力の拮抗状態が発現し、ガスケットの移動が規制された状態での螺合の進行が可能となる。さらに、螺合を進行させると、 図13に示すように、プランジャ4の螺旋状リブ42のガスケットの螺旋状螺合部66の通過(螺合関係の離脱)とほぼ同時に、プランジャ4の押圧用突出部43が、ガスケット3の環状凹部64内に収容され、プランジャ4のガスケット3への装着操作が完了する。
そして、ガスケット3に装着されたプランジャ4は、ガスケットに対して、空転するものとなっているため、プランジャ4の回転がガスケット3に伝達されない。
【符号の説明】
【0031】
1 プレフィルドシリンジ
2 外筒
3 ガスケット
4 プランジャ
5 封止部材
6 ガスケット本体
7 プランジャ装着用部材
10 プレフィルドシリンジ本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、該外筒内に摺動可能に収納され、内部に内腔部を有するガスケットと、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ本体と、前記プレフィルドシリンジ本体の前記ガスケットに装着可能もしくは装着されたプランジャとからなるプレフィルドシリンジであって、
前記プランジャは、フランジ部を先端側に有する本体部と、前記本体部より、前方に突出し、前記ガスケットの前記内腔部に収納可能な先端部と、該先端部の外面に設けられたプランジャ側螺合部と、前記プランジャ側螺合部と前記フランジ部間の前記先端部の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、前記内腔部の内面に設けられ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部と螺合するための螺旋状螺合部と、前記螺旋状螺合部より後端側に設けられ、前記プランジャの前記押圧用突出部を収容するための環状凹部と、前記環状凹部の基端側に形成され、前記押圧用突出部により押圧される被押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットへの前記プランジャの装着時において、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と前記プランジャの前記プランジャ側螺合部との螺合進行時に、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記被押圧用突出部に当接し、前記被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部が、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と圧接し前記螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、前記螺合の進行により、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記ガスケットの前記被押圧用突出部を乗り越え、前記ガスケットの前記環状凹部に収容されることにより、前記ガスケットに前記プランジャが装着されるものであることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記プランジャは、前記プランジャの前記押圧用突出部が前記ガスケットの前記環状凹部に収容された装着状態において、前記ガスケットに対して空転可能である請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記ガスケットの前記環状凹部は、前記環状凹部に前記プランジャの前記押圧用突出部の収容時において、前記プランジャの回転を許容するものである請求項1または2に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の後端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の先端部と前記環状凹部間の距離とほぼ同じもしくはこれより若干長いものとなっている請求項1ないし3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
前記ガスケットの前記被押圧用突出部の後端面は、前記ガスケットの後端方向かつ周縁方向に傾斜する傾斜面となっている請求項1ないし4のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
前記プランジャの前記押圧用突出部の前記ガスケットの前記被押圧用突出部と当接する部分は、先端方向かつ中心側に向かって傾斜する傾斜面となっている請求項1ないし5のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
前記被押圧用突出部は、環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部である請求項1ないし6のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項8】
前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の先端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の後端部と前記環状凹部間の距離より長いものとなっている請求項1ないし7のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項9】
前記プランジャ側螺合部は、螺旋状リブである請求項1ないし8のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項1】
外筒と、該外筒内に摺動可能に収納され、内部に内腔部を有するガスケットと、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ本体と、前記プレフィルドシリンジ本体の前記ガスケットに装着可能もしくは装着されたプランジャとからなるプレフィルドシリンジであって、
前記プランジャは、フランジ部を先端側に有する本体部と、前記本体部より、前方に突出し、前記ガスケットの前記内腔部に収納可能な先端部と、該先端部の外面に設けられたプランジャ側螺合部と、前記プランジャ側螺合部と前記フランジ部間の前記先端部の外面に設けられた外方に突出する環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部からなる押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、前記内腔部の内面に設けられ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部と螺合するための螺旋状螺合部と、前記螺旋状螺合部より後端側に設けられ、前記プランジャの前記押圧用突出部を収容するための環状凹部と、前記環状凹部の基端側に形成され、前記押圧用突出部により押圧される被押圧用突出部とを備え、
前記ガスケットへの前記プランジャの装着時において、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と前記プランジャの前記プランジャ側螺合部との螺合進行時に、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記被押圧用突出部に当接し、前記被押圧用突出部を先端側に押圧する押圧力を付与し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部が、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部と圧接し前記螺旋状螺合部を後端側に押圧する押圧力を付与するとともに、前記螺合の進行により、前記プランジャの前記押圧用突出部が、前記ガスケットの前記被押圧用突出部を乗り越え、前記ガスケットの前記環状凹部に収容されることにより、前記ガスケットに前記プランジャが装着されるものであることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記プランジャは、前記プランジャの前記押圧用突出部が前記ガスケットの前記環状凹部に収容された装着状態において、前記ガスケットに対して空転可能である請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記ガスケットの前記環状凹部は、前記環状凹部に前記プランジャの前記押圧用突出部の収容時において、前記プランジャの回転を許容するものである請求項1または2に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
前記ガスケットは、前記内腔部の先端部に、前記螺旋状螺合部を通過した前記プランジャの前記プランジャ側螺合部を収納し、かつ前記プランジャ側螺合部の空転を許容するプランジャ側螺合部収納部を有し、かつ、前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の後端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の先端部と前記環状凹部間の距離とほぼ同じもしくはこれより若干長いものとなっている請求項1ないし3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
前記ガスケットの前記被押圧用突出部の後端面は、前記ガスケットの後端方向かつ周縁方向に傾斜する傾斜面となっている請求項1ないし4のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
前記プランジャの前記押圧用突出部の前記ガスケットの前記被押圧用突出部と当接する部分は、先端方向かつ中心側に向かって傾斜する傾斜面となっている請求項1ないし5のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
前記被押圧用突出部は、環状リブもしくは環状に配置された複数の突出部である請求項1ないし6のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項8】
前記プランジャの前記プランジャ側螺合部の先端部と前記押圧用突出部間の距離は、前記ガスケットの前記螺旋状螺合部の後端部と前記環状凹部間の距離より長いものとなっている請求項1ないし7のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項9】
前記プランジャ側螺合部は、螺旋状リブである請求項1ないし8のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−70788(P2013−70788A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211202(P2011−211202)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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