説明

プログラムおよび演算装置

【課題】コンピュータ・シミュレーションによる熱解析等の保存量およびスカラー量の解析において、解析精度を損なわずに、コンピュータの負荷を低減させる。
【解決手段】ロール部材とこのロール部材に接触するベルト部材のように、第1の部材の動作および/または第2の部材の動作において第1の部材の特定部分と第2の部材の特定部分とが一時的に接触する構造体を対象として、熱解析等の演算処理を行う。第1の演算処理では、第1の部材および第2の部材の部材内部の温度分布を演算する。第2の演算処理では、構造体を構成する第1の部材の特定部分および第2の部材の特定部分の接触前の温度差に基づき、第1の部材の特定部分および第2の部材の特定部分の接触により部材間を移動する熱量Qを演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラムおよび演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置等の対象物を構成する部材間の熱移動等を解析する際に、コンピュータ(演算装置)を用いたシミュレーションが行われる(例えば、非特許文献1を参照)。熱解析等の保存量およびスカラー量の解析においては、例えば、対象物を小部分(セル)に分割し、この小部分ごとに保存量およびスカラー量を計算することによって、対象物全体の保存量およびスカラー量の変化を解析する手法が用いられる。
【0003】
また、対象物を構成する各部材を、各部位の温度が等しい部材、すなわち、熱的に1点とみなせる部材であると仮定して解析を行う従来技術がある(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された技術は、画像が形成された被記録媒体を、加熱手段と該加熱手段に圧接される圧接手段とで挟みながら搬送することにより、前記画像を前記被記録媒体に定着する定着器に対し、各部材間の熱移動をシミュレーションする定着器のシミュレーション方法において、少なくとも前記加熱手段及び前記圧接手段を、それぞれ各部位の温度が一様な部材であると仮定して、各部材間を移動する熱量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】秋山修「MFPにおける熱解析の現状」、日本画像学会誌、第43巻、第3号、2004年
【特許文献1】特開2006−185174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンピュータ・シミュレーションによる熱解析等の保存量およびスカラー量の解析において、解析精度を損なわずに、コンピュータの負荷を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
コンピュータに、
第1の部材の動作および/または当該第1の部材に対峙する第2の部材の動作において当該第1の部材の特定部分と当該第2の部材の特定部分とが一時的に接触する構造体を対象とし、当該第1の部材および当該第2の部材の当該部材内部の温度分布を演算する第1の演算処理と、
前記構造体を構成する前記第1の部材の前記特定部分および前記第2の部材の前記特定部分の接触前の温度差に基づき、当該第1の部材の当該特定部分および当該第2の部材の当該特定部分の接触により部材間を移動する熱量を演算する第2の演算処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラムである。
請求項2に記載の発明は、
前記第2の演算処理では、前記第1の部材の前記特定部分と前記第2の部材の前記特定部分との接触による、当該第1の部材の当該特定部分の温度分布の変化または当該第2の部材の当該特定部分の温度分布の変化に基づいて予め求めた比例定数を、前記接触前の温度差に乗ずることにより、前記接触により部材間を移動する熱量を演算することを特徴とする、請求項1に記載のプログラムである。
請求項3に記載の発明は、
前記構造体を構成する前記部材の一つは他の部材側の面の一部を当該他の部材に一時的に接触する帯状の部材であり、
前記第1の演算処理では、前記帯状の部材に関して、少なくとも厚さ方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のプログラムである。
請求項4に記載の発明は、
前記構造体を構成する前記部材の一つは外周面の一部を他の部材と一時的に接触する円柱形の部材であり、
前記第1の演算処理では、前記円柱形の部材に関して、少なくとも円周方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプログラムである。
請求項5に記載の発明は、
コンピュータに、
回転する円柱部材と当該円柱の回転方向に沿って進行しながら当該円柱部材の外周面に接触する帯状部材とを備えた構造体を対象とし、当該円柱部材および当該帯状部材の当該部材内部の温度分布を演算する第1の演算処理と、
前記円柱部材および前記帯状部材の接触箇所における接触前の温度差に基づき、当該接触箇所を介して部材間を移動する熱量を演算する第2の演算処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラムである。
請求項6に記載の発明は、
前記第2の演算処理では、前記円柱部材と前記帯状部材との接触による、当該円柱部材における当該帯状部材との接触箇所の温度分布の変化または当該帯状部材における当該円柱部材との接触箇所の温度分布の変化に基づいて予め求めた比例定数を、前記接触前の温度差に乗ずることにより、前記接触により部材間を移動する熱量を演算することを特徴とする、請求項5に記載のプログラムである。
請求項7に記載の発明は、
前記第1の演算処理では、前記帯状部材に関して、少なくとも厚さ方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のプログラムである。
請求項8に記載の発明は、
前記第1の演算処理では、前記円柱部材に関して、少なくとも円周方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のプログラムである。
請求項9に記載の発明は、
コンピュータに、
第1の部材の動作および/または当該第1の部材に対峙する第2の部材の動作において当該第1の部材の特定部分と当該第2の部材の特定部分とが一時的に接触する構造体を対象とし、当該部材内部における保存量の拡散に基づくスカラー量の分布を演算する第1の演算処理と、
前記構造体を構成する前記第1の部材の前記特定部分および前記第2の部材の前記特定部分の接触前の前記スカラー量の差分に基づき、当該第1の部材の当該特定部分および当該第2の部材の当該特定部分の接触により部材間を移動する前記保存量を演算する第2の演算処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラムである。
請求項10に記載の発明は、
前記第2の演算処理では、前記第1の部材の前記特定部分と前記第2の部材の前記特定部分との接触による、当該第1の部材の当該特定部分における前記スカラー量の分布の変化または当該第2の部材の当該特定部分における前記スカラー量の分布の変化に基づいて予め求めた比例定数を、前記スカラー量の差分に乗ずることにより、前記接触により部材間を移動する前記保存量を演算することを特徴とする、請求項9に記載のプログラムである。
請求項11に記載の発明は、
前記保存量は熱量であり、前記スカラー量は温度であることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載のプログラムである。
請求項12に記載の発明は、
第1の部材の動作および/または当該第1の部材に対峙する第2の部材の動作において当該第1の部材の特定部分と当該第2の部材の特定部分とが一時的に接触する構造体を対象とし、当該第1の部材および当該第2の部材の当該部材内部の温度分布を演算する第1の演算手段と、
前記構造体を構成する前記第1の部材の前記特定部分および前記第2の部材の前記特定部分の接触前の温度差に基づき、当該第1の部材の当該特定部分および当該第2の部材の当該特定部分の接触により部材間を移動する熱量を演算する第2の演算手段と、
を備えることを特徴とする、演算装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、コンピュータ・シミュレーションによる熱解析において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項2の発明によれば、部材間を移動する熱量の計算において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項3の発明によれば、帯状の部材に対する温度分布の計算において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項4の発明によれば、円柱形状の部材に対する温度分布の計算において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項5の発明によれば、回転する円柱部材と当該円柱の回転方向に沿って進行しながら当該円柱部材の外周面に接触する帯状部材とを備えた構造体に関する、コンピュータ・シミュレーションによる熱解析において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項6の発明によれば、部材間を移動する熱量の計算において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項7の発明によれば、帯状部材に対する温度分布の計算において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項8の発明によれば、円柱部材に対する温度分布の計算において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項9の発明によれば、コンピュータ・シミュレーションによる保存量およびスカラー量の解析において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項10の発明によれば、部材間を移動する保存量の計算において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項11の発明によれば、解析対象の保存量を熱とし、解析対象のスカラー量を温度とする解析において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
請求項12の発明によれば、演算装置による熱解析において、精度を低下させることなく、計算処理に要する負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のシミュレーションが適用される画像形成装置の構成例を示した図である。
【図2】画像形成装置に設けられた定着装置の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態における定着ロールと定着ベルトとの間の熱移動モデルを示す図である。
【図4】図3に示した熱移動モデルにおける定着ロールおよび定着ベルトの内部の温度分布を示す図である。
【図5】接触前の部材間の温度差と接触により移動した熱量との関係の一例を示す図である。
【図6】3体の部材間の熱移動モデルを示す図である。
【図7】図6に示した熱移動モデルにおけるロール部材およびベルト部材の内部の温度分布を示す図である。
【図8】接触前の部材間の温度差と接触により移動した熱量との関係の一例を示す図である。
【図9】本実施形態によるシミュレーションを実行するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【図10】本実施形態によるシミュレーション・システムの機能構成の一例を示す図である。
【図11】本実施形態を適用可能な濃度拡散が行われるシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態は、コンピュータ(演算装置)を用いたシミュレーションにおける対象物の保存量およびスカラー量の解析に適用される。具体的な適用例としては、画像形成装置においてトナー等の画像形成材を用いて用紙等の媒体上に形成された画像を媒体に定着させる定着装置(定着ユニット)を対象物とする。そして、この定着装置における各部の熱量を解析対象の保存量、温度を解析対象のスカラー量とする。
【0010】
<画像形成装置の構成例>
まず、本実施形態による解析方法(演算方法)の適用対象物である定着装置およびこの定着装置を搭載する画像形成装置の構成例を説明する。
図1は、画像形成装置の構成例を示した図である。
図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置である。この画像形成装置には、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10が設けられている。また、本画像形成装置には、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60が設けられている。さらに、本画像形成装置には、各装置(各部)の動作を制御する制御部40と、表示パネルにより構成されユーザからの情報を受け付けるとともにユーザに対して情報を表示するUI(User Interface)70が設けられている。ここで、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1K、中間転写ベルト15、および二次転写部20は、用紙Pに画像を形成する画像形成部として捉えることができる。
【0011】
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kには、次のような電子写真用デバイスが順次配設されている。まず、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11を帯電する帯電器12が設けられている。また、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。さらに、各色成分トナーが収容され、感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられている。また、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。また、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17が設けられている。
【0012】
中間転写ベルト15は、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動される駆動ロール31などのロール状部材によって、図1に示す矢印B方向に予め定められた速度で循環駆動する。一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向配置される一次転写ロール16を含んで構成されている。そして、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上に重畳されたトナー像が形成される。二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とを含んで構成される。二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置されている。そして本実施形態では、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像が二次転写される。
【0013】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
画像形成装置にて用紙Pにトナー像が形成されるにあたっては、まず制御部40が、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ(PC)から出力された画像データを取得する。そして、取得した画像データに対して予め定められた画像処理を施す。この画像処理によって画像データはY、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0014】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各々の感光体ドラム11に照射する。各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。そして現像器14により感光体ドラム11上にトナー像が形成された後、このトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。
【0015】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15の移動によりトナー像が二次転写部20に搬送される。二次転写部20では、二次転写ロール22が中間転写ベルト15を介してバックアップロール25に押圧される。このとき、第1用紙収容部53や第2用紙収容部54から搬送ロール52等により搬送された用紙Pが、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。そして中間転写ベルト15上に保持された未定着のトナー像は、二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト15から剥離された後、二次転写ロール22よりも用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。そして搬送ベルト55は、予め定められた速度で用紙Pを定着装置60まで搬送する。
【0016】
<定着装置の構成例>
図2は、定着装置60の構成例を示す図である。
図2に示すように、定着装置60は、用紙Pを加熱する定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61に設けられた定着ベルト610を外側から張架しながら定着ベルト610を加熱する外部加熱ロール613と、定着ベルトモジュール61に対して接離自在に構成された加圧ロール62とで主要部が構成されている。
【0017】
定着ベルトモジュール61は、循環移動するベルト部材である定着ベルト610と、定着ベルト610を張架しながら回転動作し、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接(互いに押圧されながら接触)する領域であるニップ部Nにて定着ベルト610を内側から加熱する定着ロール611と、定着ベルト610を内側から張架しながら定着ベルト610を加熱する内部加熱ロール612と、を備えている。また、定着ベルトモジュール61は、定着ロール611と内部加熱ロール612との間(ニップ部Nの上流側)で定着ベルト610を張架する張架ロール614と、ニップ部N内の下流側領域であって定着ロール611の近傍位置に配置された剥離部材の一例としての剥離パッド64と、ニップ部Nと外部加熱ロール613との間(ニップ部Nの下流側)において定着ベルト610を張架する張架ロール615と、外部加熱ロール613からの押圧力を受けながら定着ベルト610を支持する支持部材の一例としての支持ロール616と、を備えている。
【0018】
定着ベルト610は、例えば、ポリイミド樹脂で形成されたベース層と、ベース層の表面側(外周面側)に積層されたシリコーンゴムからなる弾性体層と、さらに弾性体層上に被覆されたPFA(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)からなる離型層とで構成されている。
【0019】
定着ロール611は、例えば、アルミニウムやSUSで形成された円筒状ロールであり、図示しない駆動モータからの回転駆動力を受けて、図中に示す矢印方向に回転する。そして、定着ロール611の内部に配置された発熱体(例えば、ハロゲンヒータ)71により、定着ロール611は予め定められた温度(例えば、150℃)に加熱される。
【0020】
内部加熱ロール612は、例えば、アルミニウムやSUSで形成された円筒状ロールである。そして、内部に配置された発熱体(例えば、ハロゲンヒータ)72により、内部加熱ロール612は予め定められた温度(例えば、190℃)に加熱される。
また、内部加熱ロール612は、その両端部に定着ベルト610を内側から外側に向けて押圧するバネ部材(不図示)が配置され、定着ベルト610全体の張力を例えば15kgfに設定している。
【0021】
剥離パッド64は、例えば、SUS等の金属や樹脂等の剛体で構成された、断面が略円弧形状のブロック部材である。そして、加圧ロール62が定着ベルト610を介して定着ロール611に圧接される領域(以下、「ロールニップ部N1」)の下流側近傍位置に配置され、ロールニップ部N1に連なる「剥離パッドニップ部N2」を形成している。
【0022】
外部加熱ロール613は、例えば、アルミニウムやSUSを基体とする表面が例えば窒化処理されて構成された円筒状ロールである。そして、内部に配置された発熱体(例えば、ハロゲンヒータ)73により、外部加熱ロール613は予め定められた温度(例えば、190℃)に加熱される。このように、本実施の形態の定着装置60は、定着ロール611と内部加熱ロール612と外部加熱ロール613とによって、定着ベルト610を加熱すれる構成を採用している。
【0023】
加圧ロール62は、例えば、アルミニウムやSUSからなる円柱状ロールを基体として、基体側から順に、シリコーンゴムからなる弾性層と、PFAチューブからなる離型層とが積層されて構成されている。そして、加圧ロール62は、定着ベルトモジュール61に接離するように配置され、定着ベルトモジュール61を押圧しながら接触(圧接)するように設定された場合には、定着ベルトモジュール61の定着ロール611が矢印方向へ回転するのに伴い、定着ロール611に従動して矢印方向に回転する。
【0024】
次に、本実施形態の定着装置60による定着動作について説明する。
画像形成装置の二次転写部20(図1参照)において合成トナー像(未定着トナー像)が静電転写された用紙Pは、搬送路に沿って定着装置60のニップ部N(図2参照)に向けて搬送される。そして、ニップ部Nを通過する用紙P表面の未定着トナー像は、主としてロールニップ部N1に作用する圧力と熱とにより用紙Pに定着される。
【0025】
本実施形態の定着装置60では、ロールニップ部N1に作用する熱は主に定着ベルト610によって供給される。定着ベルト610は、定着ロール611の内部に配置された発熱体71から定着ロール611を介して供給される熱と、内部加熱ロール612の内部に配置された発熱体72から内部加熱ロール612を介して供給される熱と、外部加熱ロール613の内部に配置された発熱体73から外部加熱ロール613を介して供給される熱とによって加熱される。
【0026】
用紙Pは、ロールニップ部N1を通過した後、剥離パッドニップ部N2に搬送される。そして、剥離パッドニップ部N2の出口において、用紙Pは、定着ベルト610から分離する。
【0027】
<定着装置のシミュレーション>
画像形成装置に搭載される定着装置60では、例えば上記の構成におけるニップ部Nの温度制御が、定着性能に大きく影響する。そこで、効果的な温度制御を実現するため、定着装置60の設計段階等において、コンピュータ・シミュレーションにより、定着装置60の各部材における温度分布の時間変化を計算することが行われる。この種のコンピュータ・シミュレーションでは、例えば、定着装置60の各構成部材にメッシュを設定することにより、各構成部材を小部分(セル)に分割し、この小部分ごとに熱量の移動や温度変化を計算する。
【0028】
ここで、各部材の温度変化に寄与する熱量の移動は、部材内部の熱伝導による移動と、部材どうしが接触する箇所での部材間の熱移動とに分けて考えることができる。本実施形態では、各々の熱移動の計算に関して、各部材の構成が一定の条件を満たす場合に適用可能な、精度を低下させることなく計算負荷を軽減する手法を提案する。具体的には、部材内部の熱移動に関して、上記のように計算を行うために部材を小部分に分割する際に、3次元のメッシュを設定するのではなく、特定の面における2次元のメッシュを設定し、メッシュが設定された面内方向の温度分布を計算する。また、部材間の接触部分における熱移動に関して、この部材どうしが接触する前の時点における部材間の温度差に基づいて移動熱量を計算する。以下、熱移動の例として、図2に示した定着装置60の構成における、部材内部および部材間の熱移動について考える。
【0029】
<部材内部の熱移動の計算>
ここでは、定着装置60の構成部材として、定着ベルト610と、定着ロール611に関して、部材内部の熱移動を考える。
定着ベルト610は、図2に示したように、定着ロール611、内部加熱ロール612、外部加熱ロール613、張架ロール614、615、支持ロール616により張架されて循環移動する。そして、定着ベルト610は、その周回方向において、発熱体71、72、73を有する定着ロール611、内部加熱ロール612、外部加熱ロール613に接触した箇所で熱量を供給される。一方、発熱体を有しない張架ロール614、615、支持ロール616および剥離パッド64に接触した箇所で熱量を奪われる。言い換えれば、定着ベルト610は、上記各ロール等と接触していない部分では、熱量の流入出が無い。なお、実際には、定着ベルト610から周囲の空気へ移動する熱量があるが、各ロール等との間で移動する熱量に比べて微少であるので、ここでは考慮しない。
【0030】
ここで、定着ベルト610は、媒体に画像を定着させるための定着面を形成する周回方向の長さや幅方向の長さと比べて、厚さ方向の長さが非常に短い。そのため、定着ベルト610に対する継続的な熱量の流入出がなければ、定着ベルト610の厚さ方向における温度分布は短時間で均一となる。また、上記のように、定着ベルト610に対する熱量の流入出は、定着ベルト610が循環移動する過程の一部(各ロール等との接触箇所)においてのみ発生する。したがって、定着ベルト610の全体において、その厚さ方向の温度分布は、均一と擬制して良い。そこで、本実施形態では、定着ベルト610に関しては、周回方向および幅方向の(すなわち、定着面の)面内温度分布を計算し、厚さ方向の温度分布は均一として扱う。
【0031】
次に、定着ロール611について考える。定着ロール611は、図2に示したように、発熱体71により内部から加熱される。発熱体71から供給された熱は、定着ロール611の内部を伝導し、外周へ向けて移動する。また、定着ロール611は、図2に示したように、外周の一部において定着ベルト610と接触しており、この接触箇所で定着ベルト610に熱量を奪われる。言い換えれば、定着ロール611は、定着ベルト610と接触していない部分では熱量の流出が無い。なお、実際には、定着ロール611から周囲の空気へ移動する熱量があるが、定着ベルト610との間で移動する熱量に比べて微少であるので、ここでは考慮しない。
【0032】
ここで、定着ロール611の材質は、通常、円周方向において単一であるので、定着ベルト610との接触がなければ、定着ロール611の円周方向の温度分布は短時間で均一となる。また、上記のように、定着ロール611からの熱量の流出は、定着ロール611の外周面が回転動作する過程の一部(定着ベルト610との接触箇所)においてのみ発生する。したがって、定着ロール611の全体において、その円周方向の温度分布は、均一と擬制して良い。そこで、本実施形態では、定着ロール611に関しては、回転軸方向および半径方向の面内温度分布を計算し、円周方向の温度分布は均一として扱う。
【0033】
ここでは、定着ロール611を例として説明したが、内部加熱ロール612、外部加熱ロール613についても同様に考えて良い。さらに、発熱体を有しない張架ロール614、615、支持ロール616も同様に、円周方向の温度分布を均一として良い。また、上記において定着ベルト610や定着ロール611について説明したように、種々の部材に関して、その形状や熱量の流入出の態様に応じて、特定の方向に対する温度分布を均一と考えて良い場合がある。例えば、定着装置60のような構造体を構成する複数の部材において、特定の部材どうしが一次的に接触して熱量の流入出を発生させ、その後に離れるような動作をする場合等である。そのような場合に、この特定の方向以外の面内方向について面内温度分布を計算し、この特定の方向については温度分布を均一として扱うことができる。
【0034】
また、上記の例では、特定の方向について温度分布を均一とし、この特定の方向以外の面内方向について面内温度分布を計算したが、さらに、この面内方向のうちの1方向についても温度分布を均一として扱うことができる場合もある。例えば、上記の定着ロール611において、発熱体71の形状や配置によっては、定着ロール611の回転軸方向に対してほぼ一様に加熱し得る。この場合、定着ロール611については、半径方向の温度分布のみを計算し、円周方向および回転軸方向の面内温度分布は均一として良い。
【0035】
また、定着ベルト610は、図2に示したように、定着ロール611以外にも複数のロールと接触しており、各接触箇所において熱量の流入出が発生するため、周回方向および幅方向の面内温度分布を計算することとした。これに対し、定着ベルト610が定着ロール611のみから熱量を供給される場合や、定着ベルト610と他のロールとの間の距離が十分に離れている場合は、熱量の流入出が頻繁には行われないため、周回方向の温度分布を均一として扱って良い場合があり得る。
【0036】
以上のように、本実施形態は、定着装置60の各種の構成部材において、1方向あるいは2方向の温度分布を均一として扱い、計算を省略することとした。温度分布を均一として扱わない部分(例えば、上記定着ベルト610の周回方向および幅方向を含む面の面内温度分布や、上記定着ロール611の回転軸方向および半径方向を含む面の面内温度分布)については、差分法等の既存の手法を用いて計算する。具体的には、例えば定着ロール611の回転軸方向および半径方向を含む面の面内温度分布を計算する場合、対象となる面を2次元の小領域(セル)に分割し、各小領域に対して周囲の小領域との間で流入出する熱量に基づき、各小領域の温度を計算する。
【0037】
すなわち、物体内部の熱伝導による単位面積当たりの移動熱量qは、Fourierの法則に基づき、次式で表される。
【数1】

ここで、λは熱伝導率、∇Tは温度勾配である。そして、この数1式を分割した小領域について離散化すると、一次元の場合、次式となる。
【数2】

ここで、Qは小領域に流入出する熱量であり、tは時間、Tiは分割された小領域ごとの温度であり、i−1、i+1は、iに隣接する小領域を表す。また、Aは小領域の断面積である。したがって、数2式にて算出した小領域毎に流入出する熱量に基づき、小領域毎の温度を計算する。
【0038】
本実施形態は、上記のように、2次元の面内温度分布または1次元の温度分布のみを計算し、他の方向については温度が均一として温度分布の計算を省略する。このため、定着装置60を構成する各部材について3次元の温度分布を計算する場合と比較して、計算量を大幅に低減することができる。その一方で、温度が均一とみなすことができない方向については、温度分布を計算するため、個々の部材を各部位の温度が等しいものとみなして部材間の熱移動のみを計算する場合と比較して、精度の高いシミュレーションを行うことができる。
【0039】
<部材間の熱移動の計算>
次に、定着ロール611から定着ベルト610への熱移動を例として、本実施形態による部材間の熱移動と温度変化の計算について説明する。
図3は、本実施形態における定着ロール611と定着ベルト610との間の微小面積間の熱移動モデルを示す図である。
図3に示すように、定着ロール611と定着ベルト610とが接触している部分x0−x1において、熱量Qが移動する。上記において図2を参照して説明したように、定着装置60においては、発熱体71が定着ロール611を加熱し、加熱された定着ロール611が定着ベルト610との接触部分x0−x1において定着ベルト610を加熱する。定着ベルト610は、定着ベルトモジュール61において循環移動しながら、定着ロール611との接触部分x0−x1を通過する際に熱量Qを受け取って加熱される。なお、図2に示した構成において、実際には、定着ベルト610は、内部加熱ロール612および外部加熱ロール613によっても加熱されるが、ここでは定着ロール611による加熱のみに着目して説明する。
【0040】
図3に示すモデルにおいて、定着ロール611と定着ベルト610との間の熱量Qの移動は、接触部分x0−x1で接触しているときにのみ発生する。すなわち、定着ロール611の表面上の特定部位を想定すると、この特定部位は、定着ロール611の回転(図3の矢印S1参照)による移動過程のうち、一部(接触部分x0−x1にあるとき)において熱量を奪われて温度が下がる。そして、この特定部位は、接触部分x1を過ぎた直後から、発熱体71により定着ロール611の内部から加熱されて温度が上がり、再び接触部分x0に到達するまで一定の温度(例えば、100℃)を保つ。
【0041】
一方、定着ベルト610の定着ロール611と接触する側の表面における特定部位を想定すると、この特定部位は、定着ベルト610の循環移動による移動過程(図3の矢印S2参照)のうち、一部(接触部分x0−x1にあるとき)において熱量を受け取り温度が上がる。また、受け取った熱は、定着ベルト610の厚さ方向へ伝導するが、定着ベルト610の厚さは比較的薄い(数百μm程度)ので、特定部位が接触部分x1を過ぎた後、比較的早く、定着ベルト610の厚さ方向の温度分布が均一となる。なお、上記のように、実際には、定着ロール611、定着ベルト610のいずれからも周囲の空気へ移動する熱量があり、空気へ移動する熱量Qは熱伝達係数αを用いて以下の式で解析する。
【数3】

ここで、Aは定着ロール611および定着ベルト610が空気に接触する部分の表面積であり、Taは外気温度、Tbは定着ロール611または定着ベルト610の各位置の温度である。なお、定着ロール611および定着ベルト610から周囲の空気へ移動する熱量は、定着ロール611と定着ベルト610との間で移動する熱量に比べて微量であるので、考慮しなくても良い。
【0042】
図4は、図3に示した熱移動モデルにおける定着ロール611および定着ベルト610の内部の温度分布を示す図である。具体的には、定着ロール611の半径方向および定着ベルト610の厚さ方向の温度分布を示す。これらの温度分布は、差分法等の既存の手法を用いて、定着ロール611の半径方向および定着ベルト610の厚さ方向における1次元の熱伝導を解析することにより求まる。図4(A)は時間t=t0の時の温度分布、図4(B)は時間t=t1の時の温度分布、図4(C)は時間t=t2の時の温度分布を、それぞれ示す。また、各図は、図3に示したモデルにおける定着ロール611の半径方向および定着ベルト610の厚さ方向の断面(すなわち、図3に示すt=t0、t=t1、t=t2の各線で切った面)の温度分布を示している。
【0043】
ここで、定着ロール611および定着ベルト610の特定部位が接触部分x0に位置する時点を時間t=t0とする。また、これらの特定部位が接触部分x1に位置する時点を時間t=t1とする。また、これらの特定部位が接触部分x1を過ぎて一定時間経過した時点を時間t=t2とする。すなわち、これら定着ロール611および定着ベルト610の特定部位は、時間t=t0から時間t=t1までのあいだ接触し、それ以外の時間(例えば、時間t=t2のとき)は非接触となる。
【0044】
図4(A)を参照すると、時間t=t0において、定着ロール611の温度はTr0℃であり、半径方向の断面(図3で定着ロール611をt=t0の線で切った断面)の温度分布は均一である。また、定着ベルト610の温度はTb0℃であり、厚さ方向の断面(図3で定着ベルト610をt=t0の線で切った断面)の温度分布は均一である。なお、上記のように時間t=t0は、定着ロール611および定着ベルト610の特定部位が接触部分x0に位置する時点であり、言い換えると、これら特定部位が接触した瞬間である。したがって、温度Tr0℃および温度Tb0℃は、これら特定部位の接触により熱量の移動が開始する前の温度である。
【0045】
図4(B)を参照すると、時間t=t1において、定着ロール611および定着ベルト610の温度がそれぞれ変化している。図3を参照して説明したように、時間t0−t1の間に定着ロール611から定着ベルト610へ熱量Qが移動する。そのため、定着ロール611では温度が下がり、定着ベルト610では温度が上がる。ここで、熱量の移動は定着ロール611と定着ベルト610とが接触している特定部位を介して行われる。したがって、図示のように、定着ロール611の温度Tr1は、定着ベルト610と接触する表面付近で温度が低下している。また、定着ベルト610の温度Tb1は、定着ロール611と接触する表面に向かって次第に温度が上昇している。ここで、定着ロール611は定着ベルト610に比べて熱容量が大きいため、定着ロール611では、表面付近でのみ温度が低下しており、内部の大部分は温度が低下していない。一方、定着ベルト610では、特定部位で受け取った熱量Qが伝導し、定着ベルト610の内部でも温度が上昇している。
【0046】
図4(C)を参照すると、時間t=t2において、定着ロール611および定着ベルト610の温度はさらに変化している。定着ロール611および定着ベルト610の各特定部位は、図4(B)に示した時間t=t1を経過すると非接触となる。そのため、時間t=t1以降、定着ロール611から定着ベルト610への熱量の移動はない。また、時間t1からt2の間に定着ベルト610および定着ロール611から周囲の空気へ移動する熱量があるが、いずれも微量であるため考慮しない。したがって、定着ロール611は、内部の熱伝導により、半径方向の断面(図3で定着ロール611をt=t2の線で切った断面)の温度分布は温度Tr2でほぼ均一となる。また、定着ベルト610は、内部の熱伝導により、厚さ方向の断面(図3で定着ベルト610をt=t2の線で切った断面)の温度分布は温度Tb2でほぼ均一となる。
【0047】
ここで、定着ベルト610の温度変化に着目して図4(A)と図4(C)を比較すると、特定部位を含む厚さ方向断面の定着ベルト610の温度は、Tb0からTb2に変化している。したがって、定着ベルト610における熱量Qの移動前後の温度差から、接触中(x0−x1)に定着ロール611から定着ベルト610が受け取った熱量Qが、次式により算出される。
【数4】

上式において、Cbは定着ベルト610の微小面積における熱容量である。なお、上式では定着ベルト610の温度変化を用いて移動熱量Qを計算したが、その代わりに、定着ロール611の特定部位を含む半径方向断面の温度分布の変化と定着ロール611の熱容量Crとを用いて移動熱量Qを計算しても良い。
【0048】
さて、本実施形態における定着ロール611と定着ベルト610のように、特定の部材間において動作の一部分でのみ熱量の移動がある構成では、接触前(すなわち熱量の移動が行われる前)の部材間の温度差と移動する熱量とが比例関係をなす場合がある。具体的にどのような関係になるかは、接触前の部材間の温度差を様々に設定して実測することで知ることができる。
【0049】
図5は、接触前の部材間の温度差と接触により移動した熱量との関係の一例を示す図である。
図5に示す例では、時間t=t0における(すなわち、特定部位の接触前の)定着ロール611の温度Tr0と定着ベルト610の温度Tb0との温度差であるΔTと、接触部分x0−x1において移動した熱量Qとの間に比例関係がある。この関係は、比例定数をαとして、次式で表される。
【数5】

【0050】
上式により、接触前の特定部位における定着ロール611の温度Tr0および定着ベルト610の温度Tb0に基づいて、定着ロール611から定着ベルト610へ移動する熱量Qを算出することができる。そして、この移動熱量Qに基づいて、特定部位が非接触となった後の(すなわち、熱量Qが移動した後の)定着ロール611の温度Tr2および定着ベルト610の温度Tb2を算出することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、定着ベルト610および定着ロール611における各特定部位の接触前の温度差に基づき、定数を乗算するだけで、定着ベルト610および定着ロール611の間の移動熱量Qを算出することができる。そしてさらに、得られた移動熱量Qを用いて、一次式(数3式)を計算することにより、定着ベルト610および定着ロール611の温度変化を算出することができる。したがって、定着ベルト610と定着ロール611との接触箇所に対して、差分法等の既存の手法を適用して温度分布の時間変化を計算する場合と比較して、演算精度を低下させることなく、計算量を大幅に低減し、演算処理に要する負荷を削減することができる。
【0052】
上記のような本実施形態による演算手法を適用し得るのは、解析対象の構造体において、複数の部材のうち一つの部材の動作と他の一つの部材の動作、またはそのいずれか一方の動作により、これらの部材が部分的かつ一時的に接触する場合である。上記の例においては、解析対象の構造体である定着装置60において、一つの部材である定着ロール611が回転動作し、他の一つの部材である定着ベルト610が定着ロール611の回転方向に沿って進行する。この動作により、定着ロール611の外周面の一部が定着ベルト610の定着ロール611側の面の一部と一時的に接触する。なお、定着装置60において、定着ロール611と定着ベルト610とは常時接触しているが、これらの部材において接触している箇所は、定着ロール611の回転動作(図3の矢印S1参照)および定着ベルト610の循環移動による進行動作(図3の矢印S2参照)により随時変化している。したがって、各部材の特定部位に着目すれば、一時的な接触であり、この時に接触箇所から熱量Qが移動する。
【0053】
<3体以上の部材間での熱移動の計算>
上記の例では、2体の部材間で熱移動が発生する場合について説明した。次に、3体以上の部材間で熱移動が発生する場合について説明する。基本的には、この場合の熱移動の計算も、2体の部材間での熱移動と同様に考える。
【0054】
図6は、3体の部材間の熱移動モデルを示す図である。
図6に示す例では、2つのロール部材621、622の間に挟まれてベルト部材623が通過している。この構成は、例えば、図2に示した定着装置60において、定着ロール611、加圧ロール62、定着ベルト610の間における熱移動の計算に適用される。図6において、ロール部材621は矢印S3方向に回転し、ロール部材622は矢印S4方向に回転し、ベルト部材623は矢印S5方向に進行する。ここでは、ロール部材621の内部に、定着ロール611のように発熱体が配置されているものとして説明する。すなわち、接触部分x0−x1において、ロール部材621からベルト部材623へ熱量Q1が供給され、さらにベルト部材623からロール部材622へ熱量Q2が供給されるものとする。
【0055】
図7は、図6に示した熱移動モデルにおけるロール部材621、622およびベルト部材623の内部の温度分布を示す図である。具体的には、ロール部材621、622の半径方向およびベルト部材623の厚さ方向の温度分布を示す。図7(A)は時間t=t0の時の温度分布、図7(B)は時間t=t1の時の温度分布、図7(C)は時間t=t2の時の温度分布を、それぞれ示す。また、各図は、図6に示したモデルにおけるロール部材621の半径方向、定着ベルト610の厚さ方向およびロール部材622の断面(すなわち、図3に示すt=t0、t=t1、t=t2の各線で切った面)の温度分布を示している。
【0056】
図3および図4に示したモデルと同様に、ロール部材621、622およびベルト部材623の特定部位が接触部分x0に位置する時点を時間t=t0とする。また、これらの特定部位が接触部分x1に位置する時点を時間t=t1とする。また、これらの特定部位が接触部分x1を過ぎて一定時間経過した時点を時間t=t2とする。すなわち、これらロール部材621、622およびベルト部材623の特定部位は、時間t=t0から時間t=t1までのあいだ接触し、それ以外の時間(例えば、時間t=t2のとき)は非接触となる。
【0057】
図7(A)を参照すると、時間t=t0において、ロール部材621の温度はTra0℃であり、半径方向の断面(図6でロール部材621をt=t0の線で切った断面)の温度分布は均一である。また、ベルト部材623の温度はTb0℃であり、厚さ方向の断面(図6でベルト部材623をt=t0の線で切った断面)の温度分布は均一である。また、ロール部材622の温度はTrb0℃であり、半径方向の断面(図6でロール部材622をt=t0の線で切った断面)の温度分布は均一である。なお、上記のように時間t=t0は、ロール部材621、622およびベルト部材623の特定部位が接触部分x0に位置する時点であり、言い換えると、これら特定部位が接触した瞬間である。したがって、温度Tra0℃、温度Tb0℃および温度Trb0℃は、これら特定部位の接触により熱量の移動が開始する前の温度である。
【0058】
図7(B)を参照すると、時間t=t1において、ロール部材621、622およびベルト部材623の温度がそれぞれ変化している。図6を参照して説明したように、時間t0−t1の間にロール部材621からベルト部材623へ熱量Q1が移動する。また、ベルト部材623からロール部材622へ熱量Q2が移動する。そのため、ロール部材621では温度が下がり、ロール部材622では温度が上がる。そして、ベルト部材623では、移動する熱量Q1、Q2の大きさに応じて変動する。ここで、熱量の移動はロール部材621、622とベルト部材623とが接触している特定部位を介して行われる。したがって、図示のように、ロール部材621の温度Tra1およびロール部材622の温度Trb1は、ベルト部材623と接触する表面付近で温度が変化している。また、ベルト部材623の温度Tb1は、ロール部材621と接触する表面に向かって次第に温度が上昇し、ロール部材622と接触する表面に向かって次第に下降している。ここで、ロール部材621、622はベルト部材623に比べて熱容量が大きいため、ロール部材621、622では、表面付近でのみ温度が変化しており、内部の大部分は温度が変化していない。一方、ベルト部材623では、特定部位で流入出した熱量Q1、Q2により、ベルト部材623の内部でも温度が変化している。
【0059】
図7(C)を参照すると、時間t=t2において、ロール部材621、622およびベルト部材623の温度はさらに変化している。ロール部材621、622およびベルト部材623の各特定部位は、図7(B)に示した時間t=t1を経過すると非接触となる。そのため、時間t=t1以降、ロール部材621、622からベルト部材623への熱量の移動はない。したがって、ロール部材621は、内部の熱伝導により、半径方向の断面(図6でロール部材621をt=t2の線で切った断面)の温度分布は温度Tra2でほぼ均一となる。また、ベルト部材623は、内部の熱伝導により、厚さ方向の断面(図6でベルト部材623をt=t2の線で切った断面)の温度分布は温度Tb2でほぼ均一となる。さらに、ロール部材622は、内部の熱伝導により、半径方向の断面(図6でロール部材622をt=t2の線で切った断面)の温度分布は温度Trb2でほぼ均一となる。
【0060】
ここで、ロール部材621とベルト部材623との間で移動した熱量Q1、ロール部材622とベルト部材623との間で移動した熱量Q2は、ロール部材621およびロール部材622の各々におけるベルト部材623との接触前後の温度差から、次式により算出される。
【数6】

上式において、Craはロール部材621の熱容量、Crbはロール部材622の熱容量である。
【0061】
さて、図3乃至図5を参照して説明したように、特定の部材間において動作の一部分でのみ熱量の移動がある構成では、接触前(すなわち熱量の移動が行われる前)の部材間の温度差と移動する熱量とが比例関係をなす場合がある。具体的にどのような関係になるかは、接触前の部材間の温度差を様々に設定して実測することで知ることができる。
【0062】
図8は、接触前の部材間の温度差と接触により移動した熱量との関係の一例を示す図である。
図8に示す例では、時間t=t0における(すなわち、特定部位の接触前の)ロール部材621の温度Tra0とベルト部材623の温度Tb0との温度差であるΔT1と、接触部分x0−x1において移動した熱量Q1との間に比例関係がある。この関係は、比例定数をα1として、次式で表される。
【数7】

【0063】
同様に、図8に示す例では、時間t=t0における(すなわち、特定部位の接触前の)ロール部材622の温度Trb0とベルト部材623の温度Tb0との温度差であるΔT2と、接触部分x0−x1において移動した熱量Q2との間に比例関係がある。この関係は、比例定数をα2として、次式で表される。
【数8】

【0064】
上記の数6式および数7式に基づき、ベルト部材623がロール部材621、622から受け取る熱量の総和Q1+Q2は、次式で表される。
【数9】

以上の数6式乃至数7式により、接触前の各部材の温度に基づいて、各部材間を移動する熱量Q1、Q2を算出することができる。そして、この移動熱量Q1、Q2に基づいて、特定部位が非接触となった後の(すなわち、熱量Q1、Q2が移動した後の)ロール部材621の温度Tra2、ベルト部材623の温度Tb2、ロール部材622の温度Trb2を算出することができる。特定部位の接触中にベルト部材623を貫通する熱量の影響などを加味して、式または値を補正することで、より正確に温度と熱移動を見積もることができる。
【0065】
<ハードウェア構成例>
図9は、上述した本実施形態によるシミュレーションを実行するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図9に示すコンピュータは、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)100aと、主記憶手段であるメモリ100cを備える。また、外部デバイスとして、磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)100g、ネットワーク・インターフェイス100f、表示機構100d、音声機構100h、キーボードやマウス等の入力デバイス100i等を備える。
【0066】
図9に示す構成例では、メモリ100cおよび表示機構100dは、システム・コントローラ100bを介してCPU100aに接続されている。また、ネットワーク・インターフェイス100f、磁気ディスク装置100g、音声機構100hおよび入力デバイス100iは、I/Oコントローラ100eを介してシステム・コントローラ100bと接続されている。各構成要素は、システム・バスや入出力バス等の各種のバスによって接続される。
【0067】
なお、図9は、本実施形態が適用されるのに好適なコンピュータのハードウェア構成を例示するに過ぎない。本実施形態は、演算を行ってシミュレーションを実行する情報処理システムに広く適用できるものであり、図示の構成においてのみ本実施形態が実現されるのではない。
【0068】
<機能構成例>
図10は、本実施形態によるシミュレーション・システムの機能構成の一例を示す図である。
図10を参照すると、本実施形態のシステムは、データ受け付け部110と、データ処理部120と、演算結果出力部130とを備える。データ受け付け部110およびデータ処理部120は、例えば、図9に示したコンピュータのCPU100aにより実現される。具体的には、メモリ100cにロードされたプログラムをCPU100aが実行することにより、これらの各機能が実現される。このプログラムは、ネットワーク・インターフェイス100fを介して外部から受信したり、光ディスク等の記憶媒体から読み出したりして取得され、磁気ディスク装置100gに格納される。処理対象となるデータは、ネットワーク・インターフェイス100fを介して受信したり、入力デバイス100iにより入力されたりする。演算結果出力部130は、例えば、表示機構100dにより実現され、演算結果をディスプレイ装置に表示出力する。
【0069】
ここで、本実施形態のデータ処理部120は、上述したシミュレーションにおける各種の演算処理を実行する。そして、具体的な処理手段として、部材内部の熱移動の演算処理(第1の演算処理)を行う第1の演算手段121と、部材間の熱移動の演算処理(第2の演算処理)を行う第2の演算手段122とを備える。そして、第1の演算手段121は、上記のように、解析対象である構造体(上記の例では定着装置60)の構成部材に関して、部材の形状や熱伝導の態様に応じて特定方向の温度分布を均一として温度分布の計算を省略する。また、第2の演算手段122は、部材どうしが部分的かつ一次的に接触して部材間での熱量の移動が発生する場合、上記のように、接触前の各部材の温度差に基づいて移動熱量を計算する。
【0070】
第1の演算手段121、第2の演算手段122の各機能は、上記のように、プログラムをCPU100aが実行することにより実現される。ここで、第1の演算手段121および第2の演算手段122は、上述した演算処理の手法の違いに基づいて別個の手段として記載したに過ぎず、必ずしも個別のプログラムモジュール等として構成されることを意味しない。
【0071】
<本実施形態の他の適用例>
以上説明したように、本実施形態では、プログラム制御されたコンピュータにより実現されるシミュレーション・システムにより、複数の部材により構成された構造体の熱移動やこれに基づく温度分布の時間変化等をシミュレーションする手法について説明した。しかし、本実施形態で提示した演算手法の適用対象は、熱解析のみに限定されるものではない。本実施形態の演算手法は、一般に、媒体中で何らかの保存量が拡散し、この保存量から特定のスカラー量を求めることができるシステムに対して、これらの保存量とスカラー量の面内分布の時間変化を演算する場合に適用して良い。
【0072】
例えば、保存量を質量とし、スカラー量を濃度とし、保存量の移動として濃度拡散が起こるシステムのシミュレーションにおいても、本実施形態の演算手法を適用することができる。
図11は、このような濃度拡散が行われるシステムの構成例を示す図である。
図11に示す構成では、ロール部材630とベルト部材640とにより構造体が構成されている。
【0073】
ロール部材630は、円筒状の軸心631と、軸心631の周りに設けられた浸透層632とを備えて構成される。そして、ロール部材630は、軸心631の周りに回転運動する(図11の矢印S6参照)。軸心631には、高濃度混合物(例えば染料等)の液体が充填されている。この液体は、浸透層632へ常時供給されており、浸透層632を外周へ向けて浸透しながら拡散する。
【0074】
ベルト部材640は、ロール部材630の回転方向に沿って進行し(図11の矢印S7参照)、その進行過程の一部において、ロール部材630の外周面に接触する。また、ベルト部材640は、ロール部材630の外周面から染み出した液体が浸透し得る材質にて構成される。したがって、ロール部材630とベルト部材640との接触箇所において、ロール部材630の外周面からベルト部材640へ、液体が浸透する。なお、このベルト部材640は、液体が浸透する材質であれば良く、紙や布のような固体には限らない。一定の断面形状を有する水路を流れる液体(水等)をベルト部材640と見立てても良い。
【0075】
このような構造体では、上記のように、ロール部材630とベルト部材640の接触箇所においてロール部材630の外周面から染み出した液体がベルト部材640へ浸透する。この場合において、ベルト部材640に浸透した液体の濃度は、Fickの法則に基づき、次式で表される。
【数10】

上式において、vは質量流束、Kは拡散係数、Dは液体濃度である。
【0076】
ここで、ロール部材630の浸透層632における液体濃度は、液体が軸心631から外周面へ拡散しながら浸透することから、円周方向には均一であると考えられる。また、ベルト部材640の厚さが十分に薄ければ、液体がベルト部材640に浸透した後、短時間で厚さ方向の液体濃度が均一になると考えられる。したがって、ロール部材630の外周面上の特定部位とベルト部材640のロール部材630側の面上の特定部位とが接触する場合において、これら特定部位の接触前の濃度(質量)の差分と特定部位どうしが接触する時間とに基づき、液体の濃度(質量)の変化量を見積もることができる。そして、これにより、ロール部材630の特定部位とベルト部材640の特定部位とが接触したことによる、この特定部位の濃度変化を予測することができる。
【符号の説明】
【0077】
60…定着装置、100a…CPU、120…データ処理部、121…第1の演算手段、122…第2の演算手段、610…定着ベルト、611…定着ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
第1の部材の動作および/または当該第1の部材に対峙する第2の部材の動作において当該第1の部材の特定部分と当該第2の部材の特定部分とが一時的に接触する構造体を対象とし、当該第1の部材および当該第2の部材の当該部材内部の温度分布を演算する第1の演算処理と、
前記構造体を構成する前記第1の部材の前記特定部分および前記第2の部材の前記特定部分の接触前の温度差に基づき、当該第1の部材の当該特定部分および当該第2の部材の当該特定部分の接触により部材間を移動する熱量を演算する第2の演算処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラム。
【請求項2】
前記第2の演算処理では、前記第1の部材の前記特定部分と前記第2の部材の前記特定部分との接触による、当該第1の部材の当該特定部分の温度分布の変化または当該第2の部材の当該特定部分の温度分布の変化に基づいて予め求めた比例定数を、前記接触前の温度差に乗ずることにより、前記接触により部材間を移動する熱量を演算することを特徴とする、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記構造体を構成する前記部材の一つは他の部材側の面の一部を当該他の部材に一時的に接触する帯状の部材であり、
前記第1の演算処理では、前記帯状の部材に関して、少なくとも厚さ方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記構造体を構成する前記部材の一つは外周面の一部を他の部材と一時的に接触する円柱形の部材であり、
前記第1の演算処理では、前記円柱形の部材に関して、少なくとも円周方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプログラム。
【請求項5】
コンピュータに、
回転する円柱部材と当該円柱の回転方向に沿って進行しながら当該円柱部材の外周面に接触する帯状部材とを備えた構造体を対象とし、当該円柱部材および当該帯状部材の当該部材内部の温度分布を演算する第1の演算処理と、
前記円柱部材および前記帯状部材の接触箇所における接触前の温度差に基づき、当該接触箇所を介して部材間を移動する熱量を演算する第2の演算処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラム。
【請求項6】
前記第2の演算処理では、前記円柱部材と前記帯状部材との接触による、当該円柱部材における当該帯状部材との接触箇所の温度分布の変化または当該帯状部材における当該円柱部材との接触箇所の温度分布の変化に基づいて予め求めた比例定数を、前記接触前の温度差に乗ずることにより、前記接触により部材間を移動する熱量を演算することを特徴とする、請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記第1の演算処理では、前記帯状部材に関して、少なくとも厚さ方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記第1の演算処理では、前記円柱部材に関して、少なくとも円周方向の温度分布を均一として、温度分布を計算することを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のプログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
第1の部材の動作および/または当該第1の部材に対峙する第2の部材の動作において当該第1の部材の特定部分と当該第2の部材の特定部分とが一時的に接触する構造体を対象とし、当該部材内部における保存量の拡散に基づくスカラー量の分布を演算する第1の演算処理と、
前記構造体を構成する前記第1の部材の前記特定部分および前記第2の部材の前記特定部分の接触前の前記スカラー量の差分に基づき、当該第1の部材の当該特定部分および当該第2の部材の当該特定部分の接触により部材間を移動する前記保存量を演算する第2の演算処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラム。
【請求項10】
前記第2の演算処理では、前記第1の部材の前記特定部分と前記第2の部材の前記特定部分との接触による、当該第1の部材の当該特定部分における前記スカラー量の分布の変化または当該第2の部材の当該特定部分における前記スカラー量の分布の変化に基づいて予め求めた比例定数を、前記スカラー量の差分に乗ずることにより、前記接触により部材間を移動する前記保存量を演算することを特徴とする、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記保存量は熱量であり、前記スカラー量は温度であることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
第1の部材の動作および/または当該第1の部材に対峙する第2の部材の動作において当該第1の部材の特定部分と当該第2の部材の特定部分とが一時的に接触する構造体を対象とし、当該第1の部材および当該第2の部材の当該部材内部の温度分布を演算する第1の演算手段と、
前記構造体を構成する前記第1の部材の前記特定部分および前記第2の部材の前記特定部分の接触前の温度差に基づき、当該第1の部材の当該特定部分および当該第2の部材の当該特定部分の接触により部材間を移動する熱量を演算する第2の演算手段と、
を備えることを特徴とする、演算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−221381(P2012−221381A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88652(P2011−88652)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】