説明

プログラムバージョン管理方法、サーバ、および自動分析装置

【課題】自動分析装置の動作制御を行うプログラムのバージョンを変更する際のオペレータやサービスマンの負担を軽減することができるプログラムバージョン管理方法、サーバ、および自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバが、自動分析装置から受信したプログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべきプログラムを抽出し、この抽出したプログラムを自動分析装置へ送信した後、バージョン変更後のプログラムにしたがう自動分析装置の動作の正当性を検証する際に用いる検証用情報を自動分析装置へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバが前記自動分析装置の動作を制御するプログラムのバージョンを管理するプログラムバージョン管理方法、当該プログラムバージョン管理方法を行うサーバ、および当該サーバがバージョンを管理するプログラムがインストールされた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって検体の成分を分析する自動分析装置においては、各種動作を制御するプログラムのバージョン情報を管理する場合、製品出荷時の記録に基づいて管理するのが一般的である。このため、出荷後にプログラムがバージョンアップされた場合には、自動分析装置を操作しなければ最新のバージョン情報を確認することができず、管理者側が正確なバージョン情報を把握する上での障害となっていた。
【0003】
この問題を解決するために、管理者側のサーバで自動分析装置にインストールされているプログラムのバージョン情報を管理する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この従来技術では、プログラムのバージョンアップが必要な自動分析装置に対して、該当するプログラムをサーバから自動分析装置へダウンロードしてインストールすることができる。
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/67113号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、バージョンアップしたプログラムを自動分析装置に対してインストールするだけであるため、そのプログラムにしたがって自動分析装置が正当な動作を行っているか否かは不明であった。このため、自動分析装置のオペレータや自動分析装置の保守点検等を行うサービスマンは、バージョンアップしたプログラムにしたがう自動分析装置の動作の正当性をその都度忘れずに検証しなければならず、大きな負担となっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、自動分析装置の動作制御を行うプログラムのバージョンを変更する際のオペレータやサービスマンの負担を軽減することができるプログラムバージョン管理方法、サーバおよび自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るプログラムバージョン管理方法は、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバが、前記自動分析装置の動作を制御するプログラムのバージョンを管理するプログラムバージョン管理方法であって、前記自動分析装置が送信する前記プログラムのバージョン情報を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信した前記プログラムのバージョン情報を記憶手段に記憶する記憶ステップと、前記記憶手段が記憶する前記プログラムのバージョン情報を読み出し、この読み出した前記プログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべきプログラムを抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで抽出した前記プログラムを前記自動分析装置へ送信するプログラム送信ステップと、前記プログラム送信ステップで送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する際に用いる検証用情報を前記自動分析装置へ送信する検証用情報送信ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るプログラムバージョン管理方法は、上記発明において、前記検証用情報は、前記プログラム送信ステップで送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理を実行させる検証用プログラムであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るプログラムバージョン管理方法は、上記発明において、前記検証用情報は、前記プログラム送信ステップで送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理の実行を前記自動分析装置の利用者に促す情報を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るサーバは、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバであって、前記自動分析装置によって送信される前記自動分析装置の動作を制御するプログラムのバージョン情報を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記プログラムのバージョン情報を少なくとも記憶する記憶手段と、前記記憶手段が記憶する前記プログラムのバージョン情報を読み出し、この読み出した前記プログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべき前記プログラムを抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した前記プログラムを前記自動分析装置へ送信するとともに、前記自動分析装置へ送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する際に用いる検証用情報を前記自動分析装置へ送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るサーバは、上記発明において、前記検証用情報は、前記送信手段が送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理を実行させる検証用プログラムであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るサーバは、上記発明において、前記検証用情報は、前記送信手段が送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理の実行を前記自動分析装置の利用者に促す情報を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るサーバは、上記発明において、前記記憶手段は、前記プログラムの複数のバージョンおよび前記検証用情報を記憶することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るサーバは、上記発明において、前記通信ネットワークを介して利用者端末と通信可能に接続され、前記受信手段は、前記利用者端末が送信する前記プログラムのバージョン情報の閲覧要求を受信し、前記送信手段は、前記閲覧要求に応じた前記プログラムのバージョン情報を前記利用者端末へ送信することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る自動分析装置は、通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続されており、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、当該自動分析装置の動作を制御するプログラムを記憶する記憶手段と、所定のタイミングで前記記憶手段が記憶する前記プログラムのバージョン情報を前記サーバへ送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバが、自動分析装置から受信したプログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべきプログラムを抽出し、この抽出したプログラムを自動分析装置へ送信した後、バージョン変更後のプログラムにしたがう自動分析装置の動作の正当性を検証する際に用いる検証用情報を自動分析装置へ送信するため、オペレータやサービスマンは、変更後のプログラムにしたがう自動分析装置の動作の検証処理をサーバからのサポートを受けながら適切なタイミングで行うことができるようになる。したがって、自動分析装置の動作制御を行うプログラムのバージョンを変更する際のオペレータやサービスマンの負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動分析装置および当該自動分析装置の管理用のサーバを含むシステムの全体構成を示す図である。同図に示す自動分析装置1およびサーバ3は、通信ネットワークNを介して通信可能に接続されている。また、自動分析装置1およびサーバ3は、通信ネットワークNを介して利用者端末5にも通信可能に接続されている。
【0019】
自動分析装置1は、検体(試料)および試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定ユニット101と、測定ユニット101を含む自動分析装置1の制御を行うとともに測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット201とを有し、これら二つのユニットが連携することによって複数の検体の成分の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。
【0020】
測定ユニット101は、検体を収容する検体容器71が搭載された複数のラック81を収納する検体容器保持部11と、試薬容器72を保持する試薬容器保持部12と、検体と試薬とを反応させる反応容器73を保持する反応容器保持部13と、検体容器保持部11が保持する検体容器71が収容する検体を反応容器73に分注する検体分注部14と、試薬容器保持部12が保持する試薬容器72が収容する試薬を反応容器73に分注する試薬分注部15と、反応容器73内部の液体を攪拌する攪拌部16と、光源から照射されて反応容器73を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部17と、反応容器73の洗浄を行う反応容器洗浄部18と、を備える。
【0021】
データ処理ユニット201は、キーボードやマウスなどを有し、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の操作情報が入力される入力部21と、液晶等のディスプレイ装置やプリンタを有し、検体の分析に関する情報等を出力する出力部22と、通信ネットワークNを経由して情報を送信する送信部23と、通信ネットワークNを介して送信されてくる情報を受信する受信部24と、自動分析装置1の制御を行う制御部25と、検体の分析に関する情報を含む各種情報を記憶する記憶部26と、を備える。
【0022】
制御部25は、測定ユニット101における測定結果に基づいて所定の演算を行うことにより、検体の成分の分析データを生成するデータ生成部251を有する。データ生成部251は、測光部17から送られてくる測定結果に基づいて反応容器73内部の液体の吸光度を算出したり、吸光度の算出結果と検量線や分析パラメータ等の各種情報とを用いて反応容器73内部の液体の成分を算出したりする。
【0023】
記憶部26は、データ生成部251が生成した分析データのほか、分析項目、検体情報、試薬の種類、検体や試薬の分注量、検体や試薬の有効期限、分析に使用する検量線に関する情報、分析に必要なパラメータなどを記憶する。また、記憶部26は、自動分析装置1における各種動作制御を行うプログラムを格納するプログラム格納領域261を有する。
【0024】
以上の構成を有するデータ処理ユニットは201は、CPU,ROM,RAM等を具備したコンピュータによって実現される。
【0025】
サーバ3は、各種情報が入力される入力部31と、サーバ3の処理内容に応じた情報を出力する出力部32と、通信ネットワークNを介して送信されてくる情報を受信する受信部33と、通信ネットワークNを介して情報を送信する送信部34と、サーバ3の制御を行う制御部35と、自動分析装置1から送信されてくるプログラムのバージョン情報を含む各種情報を記憶する記憶部36と、を備え、CPU,ROM,RAM等を具備した一または複数のコンピュータによって実現される。
【0026】
制御部35は、記憶部36が記憶するプログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべきプログラムを抽出する抽出部351と、利用者端末5が送信するバージョン情報閲覧要求で要求されたバージョン情報を記憶部36から検索して取得する検索部352と、を有する。
【0027】
記憶部36は、プログラムのバージョン情報を記憶するバージョン情報データベース(DB)361と、自動分析装置1を動作させる各種プログラムを記憶するプログラムデータベース362と、バージョン変更後のプログラムにしたがう自動分析装置1の動作の正当性を検証する処理を実行させる検証プログラムを記憶する検証用プログラムデータベース363とを有する。
【0028】
利用者端末5は、コンピュータ、携帯電話、PDAなどの電子機器によって実現され、各種情報を表示する表示部51を有する。
【0029】
通信ネットワークNは、インターネット、電話網、パケット網、WAN、有線LAN、無線LAN、専用回線網、イントラネット等、所定の形式にしたがって電気的な信号の送受信を行うことができれば如何なるものであっても構わない。また、通信ネットワークNは、前述した各種ネットワークを適当に組み合わせたものであってもよい。
【0030】
図2は、自動分析装置1とサーバ3との通信の概要を示す処理フロー図である。自動分析装置1が起動する(ステップS1)と、制御部25は記憶部26のプログラム格納領域261で記憶している各種プログラムのバージョンを読み出し、この読み出したバージョンを自動分析装置1の識別情報(装置ID等)とともに、バージョン情報として送信部23からサーバ3へ送信する(ステップS2)。なお、自動分析装置1がプログラム格納領域261で記憶しているプログラムのバージョンを読み出すタイミングは起動時でなくてもかまわない。
【0031】
その後、サーバ3は、自動分析装置1から通信ネットワークNを介して送られてくるバージョン情報を受信し(ステップS3)、この受信したバージョン情報を記憶部36に書き込んで記憶する(ステップS4)。
【0032】
図3は、記憶部36が記憶するバージョン情報の構成例を示す図である。同図に示すテーブル91には、自動分析装置1の装置IDごとに各種プログラムのバージョン情報(リビジョン情報を含む)を記録している。このテーブル91で記録しているバージョン情報には、自動分析装置1から受信した最新のバージョン情報に含まれるバージョンの現在値、自動分析装置1の出荷時におけるバージョンの値、およびその時点でのバージョンの推奨値が記載されている。バージョンの現在値は、自動分析装置1からバージョン情報を受信するたびに更新される。バージョンの推奨値は、サーバ3のプログラムデータベース362にプログラムの新しいバージョンが格納されたときや、サーバ3が外部から推奨値の変更情報を受信したときなどに更新される。なお、出荷時のバージョンの値は不変である。
【0033】
次に、制御部35の抽出部351が、受信したバージョン情報を参照してバージョンアップが必要なプログラムを抽出する(ステップS5)。例えば、図3に示すテーブル91においては、装置ID「123456」を有する自動分析装置1にインストールされた2つのプログラム「Reagent Parameter」および「Sampler Control」の各バージョンの現在値と推奨値が異なっている。そこで、抽出部351は、これら2つのプログラムをバージョンアップが必要なプログラムとしてプログラムデータベース362から抽出する。さらに、抽出部351は、抽出したプログラムに対応する検証用プログラムを検証用プログラムデータベース363から読み出す。
【0034】
その後、サーバ3は、ステップS5で読み出したプログラムおよび検証用プログラムを、送信部34を介して自動分析装置1へ送信する(ステップS6)。
【0035】
自動分析装置1が、サーバ3からバージョンアップするプログラムと検証用プログラムとを受信する(ステップS7)と、最初にプログラムのバージョンアップを行う(ステップS8)。
【0036】
自動分析装置1は、プログラムのバージョンアップに成功した場合(ステップS9,Yes)、バージョンアップしたプログラムによる動作の正当性を検証するため、検証用プログラムを実行し、検証用プログラムに基づいた動作を行う(ステップS10)。このステップS10で検証用プログラムの実行に成功した場合(ステップS11,Yes)、自動分析装置1は、送信部23を介してバージョンアップ結果(この場合には「成功」)をサーバ3へ送信する(ステップS13)。
【0037】
これに対して、自動分析装置1は、プログラムのバージョンアップに失敗した場合(ステップS9,No)、または検証用プログラムの実行に失敗した場合(ステップS11,No)、プログラムをバージョンアップする前の状態に戻す(ステップS12)。この際、自動分析装置1は、プログラムに関連するパラメータなどもバージョンアップ前の状態に戻す。なお、ステップS12の処理を実行するためのアンインストール用プログラムを、バージョンアップするプログラムが含むようにしてもよい。
【0038】
その後、自動分析装置1は、送信部23を介してバージョンアップ結果(この場合には「失敗」)をサーバ3へ送信する(ステップS13)。この際、自動分析装置1は、失敗の具体的な内容に関する情報をあわせて送信してもよい。
【0039】
サーバ3は、自動分析装置1から通信ネットワークNを介して送られてくるバージョンアップ結果を受信し(ステップS14)、この受信したバージョンアップ結果を記憶部36に書き込んで記憶する(ステップS15)。この後、サーバ3は、受信したバージョンアップ結果をEメールなどによって利用者端末5へ送信してもよい。
【0040】
なお、図2では、ステップS4で抽出部351がバージョンアップが必要なプログラムを抽出した場合を図示しているが、ステップS4でバージョンアップが必要なプログラムを抽出できない場合もありうる。この場合、サーバ3は、ステップS5以降の処理を行わずにプログラムバージョン管理処理を終了してもよいし、自動分析装置1の出力部22で「バージョンアップの必要なし」という情報を出力させるための情報を自動分析装置1へ送信してもよい。
【0041】
また、サーバ3が、自動分析装置1に対してバージョンアップを推奨する情報を送信するためのプログラムを記憶している場合、サーバ3は、バージョンアップするプログラムを送信する前に、バージョンアップが必要なプログラムの存在を推奨情報として自動分析装置1へ送信するようにしてもよい。この場合、サーバ3から推奨情報を受信した自動分析装置1は、出力部22においてバージョンアップをするかしないかの選択を利用者に促す表示を行う。その後、自動分析装置1は、利用者によって入力部21を介して入力された選択内容に応じた処理を行う。例えば、利用者がプログラムのバージョンアップを選択した場合、自動分析装置1はその選択情報をサーバ3へ送信する。以降の処理は、上述したステップS6以降の処理と同様である。なお、自動分析装置1の出力部22が利用者に選択を促す表示を行う際、「常に自動更新する」という選択肢を加えて表示してもよい。
【0042】
また、サーバ3は、バージョンアップするプログラムを送信した後、時間差をおいて検証用プログラムを送信するようにしてもよい。
【0043】
また、サーバ3が自動分析装置1へ送信するバージョン情報の中に、バージョンアップするプログラムの旧バージョンからの変更点に関する情報(例えば、旧バージョンにおける障害の内容やバージョンアップの緊急性など)を含めるようにしてもよい。
【0044】
以上説明したプログラムバージョン管理処理によれば、サーバ3側で自動分析装置1のプログラムのバージョン情報を記憶することができる。また、サーバ3は、バージョンアップするプログラムを送信するとともに、このプログラムの正当性を検証するための検証用プログラムも送信するため、自動分析装置1側では、バージョンアップ後のプログラムにしたがう自動分析装置1の動作の検証処理を、サーバ3からのサポートを受けながら適切なタイミングで行うことができるようになる。
【0045】
次に、図4を参照して、サーバ3と利用者端末5との通信の概要を説明する。図4において、まず利用者端末5が、利用者によって入力されるバージョン情報閲覧要求をサーバ3へ送信する(ステップS21)。このバージョン情報閲覧要求には、要求対象の自動分析装置1の装置IDの情報も含まれる。
【0046】
サーバ3の受信部33が、通信ネットワークNを介して利用者端末5から送信されてくるバージョン情報閲覧要求を受信する(ステップS22)と、制御部35の検索部352は、受信したバージョン情報閲覧要求で要求されるバージョン情報を記憶部36のバージョン情報データベース361から検索して取得する(ステップS23)。
【0047】
その後、サーバ3の送信部34は、検索部352が取得したバージョン情報を利用者端末5へ送信する(ステップS24)。
【0048】
利用者端末5は、サーバ3によって送信されたバージョン情報を受信し(ステップS25)、この受信したバージョン情報を表示部51で表示出力する(ステップS26)。この際の表示部51における表示態様は、図3に示すテーブル91と同様である。この場合に表示部51が表示するバージョン情報は、例えばHTML形式を用いて記述されており、通常のブラウザ機能を有するディスプレイを具備した装置であれば表示可能なものである。
【0049】
このように、本実施の形態では、利用者端末5を用いて自動分析装置1にインストールされた制御用のプログラムのバージョン情報を閲覧することができるため、サービスマンは、自動分析装置1の近くに居合わせなくても、自動分析装置1にインストールされたプログラムのバージョン情報を把握することができる。したがって、例えば出荷時のプログラムにバージョン固有の問題が発覚した場合、サービスマンは、バージョンアップが必要な自動分析装置1を即座に把握することができる。
【0050】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバが、自動分析装置から受信したプログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべきプログラムを抽出し、この抽出したプログラムを自動分析装置へ送信した後、バージョン変更後のプログラムにしたがう自動分析装置の動作の正当性を検証する際に用いる検証用情報を自動分析装置へ送信するため、オペレータやサービスマンは、変更後のプログラムにしたがう自動分析装置の動作の検証処理をサーバからのサポートを受けながら適切なタイミングで行うことができるようになる。したがって、自動分析装置の動作制御を行うプログラムのバージョンを変更する際のオペレータやサービスマンの負担を軽減することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、サーバが検証用情報として検証用プログラムを送信することにより、自動分析装置でバージョンアップを行うオペレータが検証動作に関して労力を費やすことなくプログラムのバージョンアップを行うことができるので、一段とオペレータやサービスマンの負担を軽減することができる。
【0052】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を説明してきたが、本発明は、上述した一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、本発明では、検証用情報として、自動分析装置の検証動作を自動的に開始する検証用プログラムを送信する代わりに、検証動作の操作手順を自動分析装置側で表示し、自動分析装置1のオペレータやサービスマンが自動分析装置の出力部を見ながら検証処理を実行することができるような情報を送信してもよい。この場合には、検証用プログラムをCD−ROM、DVD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶しておき、オペレータやサービスマンがサーバから送信される検証用情報を参照しながら検証用プログラムのインストールを行うことができる。
【0053】
また、以上の説明では、プログラムのバージョンアップを行う場合を取り上げたが、本発明においては、自動分析装置にインストールされたプログラムのバージョンを以前のバージョンに戻すことも可能である。この場合にも、図2を参照して説明したのと同様の処理を行えばよい。
【0054】
さらに、本発明においては、通信ネットワークを介して、複数の自動分析装置および複数の利用者端末を、サーバと通信可能に接続することができる。この場合、サーバの記憶部が有するバージョン情報データベースは、複数の自動分析装置のバージョン情報を記憶する。
【0055】
なお、本発明は、利用者端末が自動分析装置の現状を把握することができる構成を有していた。この点に鑑みると、上述したバージョン情報と同様に、自動分析装置のメインテナンス情報を自動分析装置からサーバへ定期的に送信し、サーバ側で自動分析装置ごとに受信したメインテナンス情報を記憶しておくことも可能である。これにより、サービスマンは、自動分析装置の現場に出向かないでもメインテナンス実施状況を把握することができ、次回のメインテナンス実施時期を予測することなどによって一段ときめの細かいサービスを提供することができる。
【0056】
本発明は、検体の生化学的な分析を行う自動分析装置のみならず、検体の免疫学的な分析や検体の遺伝学的な分析を行う自動分析装置に対しても適用することができる。
【0057】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置およびサーバを含むシステムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置とサーバとの通信の概要を示す処理フロー図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るサーバの記憶部が記憶するバージョン情報の構成例を示す図である。
【図4】利用者端末とサーバとの通信の概要を示す処理フロー図である。
【符号の説明】
【0059】
1 自動分析装置
3 サーバ
5 利用者端末
11 検体容器保持部
12 試薬容器保持部
13 反応容器保持部
14 検体分注部
15 試薬分注部
16 攪拌部
17 測光部
18 反応容器洗浄部
21、31 入力部
22、32 出力部
23、34 送信部
24、33 受信部
25、35 制御部
26、36 記憶部
51 表示部
71 検体容器
72 試薬容器
73 反応容器
81 ラック
91 テーブル
101 測定ユニット
201 データ処理ユニット
251 データ生成部
261 プログラム格納領域
351 抽出部
352 検索部
361 バージョン情報データベース
362 プログラムデータベース
363 検証用プログラムデータベース
N 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバが、前記自動分析装置の動作を制御するプログラムのバージョンを管理するプログラムバージョン管理方法であって、
前記自動分析装置が送信する前記プログラムのバージョン情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した前記プログラムのバージョン情報を記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記記憶手段が記憶する前記プログラムのバージョン情報を読み出し、この読み出した前記プログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべきプログラムを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出した前記プログラムを前記自動分析装置へ送信するプログラム送信ステップと、
前記プログラム送信ステップで送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する際に用いる検証用情報を前記自動分析装置へ送信する検証用情報送信ステップと、
を有することを特徴とするプログラムバージョン管理方法。
【請求項2】
前記検証用情報は、前記プログラム送信ステップで送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理を実行させる検証用プログラムであることを特徴とする請求項1記載のプログラムバージョン管理方法。
【請求項3】
前記検証用情報は、前記プログラム送信ステップで送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理の実行を前記自動分析装置の利用者に促す情報を含むことを特徴とする請求項1記載のプログラムバージョン管理方法。
【請求項4】
検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続されるサーバであって、
前記自動分析装置によって送信される前記自動分析装置の動作を制御するプログラムのバージョン情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記プログラムのバージョン情報を少なくとも記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する前記プログラムのバージョン情報を読み出し、この読み出した前記プログラムのバージョン情報に基づいてバージョンを変更すべき前記プログラムを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した前記プログラムを前記自動分析装置へ送信するとともに、前記自動分析装置へ送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する際に用いる検証用情報を前記自動分析装置へ送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とするサーバ。
【請求項5】
前記検証用情報は、前記送信手段が送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理を実行させる検証用プログラムであることを特徴とする請求項4記載のサーバ。
【請求項6】
前記検証用情報は、前記送信手段が送信した前記プログラムにしたがう前記自動分析装置の動作の正当性を検証する処理の実行を前記自動分析装置の利用者に促す情報を含むことを特徴とする請求項4記載のサーバ。
【請求項7】
前記記憶手段は、
前記プログラムの複数のバージョンおよび前記検証用情報を記憶することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項記載のサーバ。
【請求項8】
前記通信ネットワークを介して利用者端末と通信可能に接続され、
前記受信手段は、前記利用者端末が送信する前記プログラムのバージョン情報の閲覧要求を受信し、
前記送信手段は、前記閲覧要求に応じた前記プログラムのバージョン情報を前記利用者端末へ送信することを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項記載のサーバ。
【請求項9】
通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続されており、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
当該自動分析装置の動作を制御するプログラムを記憶する記憶手段と、
所定のタイミングで前記記憶手段が記憶する前記プログラムのバージョン情報を前記サーバへ送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−85885(P2009−85885A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259147(P2007−259147)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】