プロジェクタおよびその制御方法
【課題】ピーク輝度の変化の幅を広げることができるようにする。
【解決手段】ランプ83は、光を出射し、楕円反射鏡82は、そのランプ83からの光を反射して集光させ、液晶ライトバルブ93は、スクリーンに投影する映像に対応する画像データに基づいた変調によって、楕円反射鏡82により集光された反射光を映像光に変換し、投影レンズ94は、液晶ライトバルブ93からの映像光をスクリーンに投影する。ランプ位置調整機構91は、ランプ83の輝点を楕円反射鏡の第一焦点からずらして、液晶ライトバルブ93の有効光量が減るように、ランプ83の位置を調整することで、ピーク輝度の変化の幅を広げることができる。本発明は、デジタルシネマ用のプロジェクタに適用できる。
【解決手段】ランプ83は、光を出射し、楕円反射鏡82は、そのランプ83からの光を反射して集光させ、液晶ライトバルブ93は、スクリーンに投影する映像に対応する画像データに基づいた変調によって、楕円反射鏡82により集光された反射光を映像光に変換し、投影レンズ94は、液晶ライトバルブ93からの映像光をスクリーンに投影する。ランプ位置調整機構91は、ランプ83の輝点を楕円反射鏡の第一焦点からずらして、液晶ライトバルブ93の有効光量が減るように、ランプ83の位置を調整することで、ピーク輝度の変化の幅を広げることができる。本発明は、デジタルシネマ用のプロジェクタに適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタおよびその制御方法に関し、特に、ランプから光を出射する場合に用いて好適なプロジェクタおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像表示技術の発展に伴い、いわゆるデジタルシネマの分野に適用可能なプロジェクタ、すなわち、映画館における映画の上映の用途で使用可能なプロジェクタが登場してきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プロジェクタの動作方式には、例えば液晶ライトバルブ等のライトバルブによって、光源からの光を変調し投影する方式であるライトバルブ方式がある。固定画素のライトバルブを使用したプロジェクタにおいて、投射した映像の明るさを変える手法としては、一般的に、ランプ等の光源の明るさを変える手法が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−260423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同一のランプで入力電力を変化させるだけで、明るさを調整するには限界があり、簡単に、ピーク輝度の変化の幅を広げることができないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、既存の機構を利用して、簡単に、ピーク輝度の変化の幅を広げることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面のプロジェクタは、映像をスクリーンに投射するプロジェクタにおいて、光を出射するランプと、前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズと、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する位置調整機構とを備える。
【0008】
前記位置調整機構には、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上で移動させることができる。
【0009】
前記位置調整機構には、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上とは異なる方向に移動させることができる。
【0010】
前記位置調整機構には、前記スクリーンに表示される前記映像のアスペクト比が変わったとき、前記ランプの位置を調整させることができる。
【0011】
本発明の一側面の制御方法は、上述した本発明の一側面のプロジェクタに係る制御回路の制御方法に対応する方法である。
【0012】
本発明の一側面のプロジェクタおよびその制御方法においては、映像をスクリーンに投射するプロジェクタであって、光を出射するランプと、ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、映像に対応する画像データに基づいた変調によって、楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、スクリーンと映像表示デバイスとの間に配置され、映像表示デバイスからの映像光をスクリーンに投影する投影レンズと、ランプの位置を調整する位置調整機構とを備えているプロジェクタにおいて、次のような処理が実行される。すなわち、ランプの輝点を楕円反射鏡の第一焦点からずらして、映像表示デバイスの有効光量が減るように、ランプの位置が調整される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の一側面によれば、既存の機構を利用して、簡単に、ピーク輝度の変化の幅を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0015】
本発明の一側面のプロジェクタは、映像をスクリーン(例えば、図1のスクリーン34)に投射するプロジェクタ(例えば、図1の映画館11A乃至11Nに設置可能な図4のプロジェクタ33)において、光を出射するランプ(例えば、図6の形状を有する図9のランプ83)と、前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡(例えば、図9の楕円反射鏡82)と、前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイス(例えば、図9の液晶ライトバルブ93)と、前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズ(例えば、図9の投影レンズ94)と、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する位置調整機構(例えば、図9のランプ位置調整機構91)とを備える。
【0016】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上で移動させる(例えば、図11のステップS34の処理)。
【0017】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上とは異なる方向に移動させる(例えば、図11のステップS34の処理)。
【0018】
前記位置調整機構は、前記スクリーンに表示される前記映像のアスペクト比が変わったとき、前記ランプの位置を調整する(例えば、図11のランプ位置調整処理)。
【0019】
本発明の一側面のプロジェクタの制御方法は、上述した本発明の一側面のプロジェクタに係る位置調整機構の制御方法に対応する方法(例えば、図4のプロジェクタ33のCPU
51が実行する処理のうちの、図11のランプ位置調整処理に対応する方法)である。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明が適用される情報処理システムであって、デジタルシネマの分野に適用された場合の情報処理システムの構成例を示している。
【0022】
図1の例の情報処理システムは、映画館11A乃至11Nに設置される各種装置(詳細については後述する)と、メンテナンスサーバ12とが、インターネット等の所定のネットワーク13を介して相互に接続されて構成されている。ここに、メンテナンスサーバ12とは、例えば、各映画館11A乃至11Nに設置される各種装置のメンテナンスを役務(サービス)として提供している者の用に供する装置をいう。
【0023】
映画館11Aには、複数の映画を並行して上映できるように、複数の上映場22a乃至22nが存在する。これらの複数の上映場22a乃至22nの統括管理を行うべく、Theater Management装置21(以下、TM装置21と称する)が映画館11Aに設置されている。
【0024】
上映場22aには、Screen Management装置31a(以下、SM装置31aと称する)、素材サーバ32a、プロジェクタ33a、およびスクリーン34aが設けられている。
【0025】
同様に、上映場22nには、SM装置31n乃至スクリーン34nが設けられている。その他図示せぬ各上映場22k(kは、任意の小文字のアルファベット)にも、SM装置31k乃至スクリーン34kがそれぞれ設けられている。
【0026】
なお、以下、上映場22a乃至22nを、個々に区別する必要がない場合、それらをまとめて上映場22と単に称する。また、以下、上映場22kを単に上映場22と称している場合には、SM装置31k乃至スクリーン34kのそれぞれも、SM装置31乃至スクリーン34のそれぞれと称する。
【0027】
SM装置31は、上映場22の統括管理を行う装置であって、上映場22内の他の装置、すなわち、素材サーバ32やプロジェクタ33等を制御する。また、SM装置31は、TM装置21と通信を行い、各種情報を適宜授受する。
【0028】
素材サーバ32は、上映場22にて上映する映画(素材)のデジタルデータをプロジェクタ33に提供する。
【0029】
プロジェクタ33は、素材サーバ32から提供されたデジタルデータに対応する映像をスクリーン34に投射する。これにより、映画がスクリーン34において上映される。
【0030】
その他の映画館11B乃至11Nにも、図示はしないが同様に、1以上の上映場22が存在し、各上映場22にはそれぞれ、SM装置31乃至スクリーン34が設けられている。
【0031】
ここで、図1の情報処理システムは上述したようにデジタルシネマの分野に適用されている。かかるデジタルシネマの分野では、DCI(Digital Cinema Initiatives)と称される団体により、DCI Specと称される規格が規定されている。その規格によれば、参照されるべき映像パラメータとして、「白ピーク輝度はスクリーン中心で、48cd/m2(14ft-L)であること」と明記されている。14ft-L = 48cd/m2、とあるので、大体1m2当たりろうそく48本分の明るさがスクリーン34の中心で必要であるということになる。換言すると、スクリーン34に投影される映像の輝度(照度)は、常に一定に保つ必要がある。
【0032】
一方、スクリーン34のサイズは、上映場22の容積等に応じて多種多様な種類が存在する。
【0033】
従って、プロジェクタ33の光源としては、投射対象のスクリーン34のサイズに応じて、DCI Specを満たすことができる最適なランプ、例えばキセノン(Xenon)等のランプをそれぞれ採用する必要がある。
【0034】
また、映画の画角についても、例えば、スコープ(scope)、ビスタ(Vista)といったアスペクト比が異なる種類が存在する。従って、同一の上映場22において、すなわち、同一のスクリーン34において、これらの多種多様な画角のうちの所定の1つから別の1つへの切り替えが必要になる場合がある。このような場合には、プロジェクタ33のレンズのズーム倍率を変化させる必要がある。この変化にあわせて、上述したようにスクリーン34上の映像の輝度(照度)を一定に保つべく、ランプのパワー(入力ワット)を変更する必要があり、その結果、そのランプの光量ゲインを一定量に確保する必要がある。
【0035】
図2に示すように、ビスタサイズは、通常、縦横比が1:1.66程度の横長の画面サイズ(図2の例では1:1.85の画面サイズ)のことをいい、代表的なものとしては、1:1.66のビスタサイズ(ヨーロッパ規格)や1:1.85のビスタサイズ(アメリカ規格)等がある。また、スコープサイズは、通常、縦横比が1:2以上の横長の画面サイズ(図2の例では1:2.39の画面サイズ)のことをいい、代表的なものとしては、1:2.35のシネマスコープサイズ(登録商標)等がある。
【0036】
図2に示すように、例えば、ビスタサイズの縦方向と横方向に1.26倍したサイズが、スコープサイズとなるので、スコープサイズは、ビスタサイズの1.6倍(≒1.26×1.26)の大きさとなる。従って、ビスタサイズとスコープサイズとの切り替えにおいては、ランプパワーを1.6倍にすることで、単位面積当たりの輝度が一定になる。例えば、ビスタサイズにおけるランプパワーが50%である場合には、スコープサイズでは、その1.6倍の80%のランプパワーが必要となる。なお、図2に示すように、スコープサイズでは、上下の斜線部分は見えないようにしているが、ランプ側から考えると、その斜線部分を含めたパワーを必要とする。
【0037】
また、上述したようにスクリーン34上の映像の輝度(照度)を一定に保つ必要があるため、入力定格としての最小ワットや最大ワット等(以下、かかる入力定格をランプサイズとも称する)がその変更に対応可能なランプを採用する必要があるとともに、そのランプを駆動する側でも適切な設定を行う必要がある。すなわち、プロジェクタ33は、多種多様なランプサイズのランプを搭載する可能性がある。
【0038】
プロジェクタ33に搭載されるランプは、例えば、図3に示すような3種類のランプがある。図3によると、ランプAは、最小ワットとして2.1kW、最大ワットとして4.2kWの範囲内で駆動させられる。同様にまた、ランプBは、最小ワットとして1.5kW、最大ワットとして3.0kWの範囲内で駆動させられ、ランプCは、最小ワットとして1.0kW、最大ワットとして2.0kWの範囲内で駆動させられる。
【0039】
すなわち、ランプは所定のランプハウス(例えば本実施の形態では図4のランプハウス58)に装着されるため、その形状自体は機能確保上同一または類似となるが(例えば本実施の形態では図6の形状が採用されている)、ランプサイズについては明確な規定は存在せず、多種多様なランプサイズのランプが市場に流通する可能性がある。特に、図1の映画館11A乃至11Nが遠隔地に点在するような場合には、各地域におけるランプ製造者(製造メーカ)のランプを採用することが多い。このような場合、各地域によって異なる種類のランプサイズのランプがそれぞれ市場に流通している可能性は一段と高くなっている。従って、映画館11A乃至11Nにおいて、たとえ同一のサイズのスクリーン34に映像を投影するプロジェクタ33であっても、それに搭載させるランプとしては、ランプサイズの異なったランプがそれぞれ採用されることもある。
【0040】
このように、デジタルシネマの分野におけるプロジェクタ用のランプにはその分野特有の事情が存在する。その結果、従来のプロジェクタを採用していた映画館では、次のような種々の問題が生じていた。
【0041】
例えば、上述したように、スコープサイズとビスタサイズとを切り替えたとしても、スクリーン34に投影される映像の輝度(照度)を常に一定に確保する必要がある。この場合に、輝度を一定に確保するためには、上述したように、例えばランプの光量ゲインを1.6に確保する必要がある。しかし、従来、ランプの入力ゲインは2.0(50%乃至100%)しかないため、低入力を常時使う必要があり、そのために低入力でも十分な寿命を確保しなければならないという問題があった。また、フリッカ現象は、低入力からはじまり、ランプのパワーを上げることで止まるという性質のものであり、例えば、50%の低入力から始まり、入力を60%に上げることで止めることができる。そのため、低入力を常時使用すると、フリッカ現象が起こり易くなる。つまり、ランプの光量ゲインを1.6に確保するために低入力が必要となり、それにより、低入力時のフリッカ現象の発生が問題となっていた。以下、このような問題を、フリッカ現象問題と称する。
【0042】
また例えば、スクリーン34上の映像の輝度(照度)を一定に保つために、ランプから出射される光の光量を調整する必要がでてくるが、光量調整の方法としては、光源の電力量を調整する方法がある。光源の電力量を調整する場合、一般的にその調整範囲は最大パワーからその半分程度まで、すなわち、光量の調整範囲の最大を100%,最小を0%とするとその調整範囲は、50%乃至100%となる。例えば、図3に示すようなランプにおける調整範囲は、ランプAでは2.1kW乃至4.2kWの範囲、ランプBは1.5kW乃至3.0kWの範囲、ランプCは1.0kW乃至2.0kWの範囲となる。そのため、ランプAは2.1kW以下、ランプBは1.5kW以下、ランプCは1.0kW以下の電力で光を出射できない、つまり、50%乃至100%の調整範囲から外れた範囲の電力に対応した明るさの光を出射することができないという問題があった。また、光源の電力量を調整する他にも、光学系に絞り機構を設け、絞りの開閉により光量を調整する方法も知られている。しかし、光学絞り機構を追加することで、光量の調整範囲は、理論的には0%乃至100%とすることが可能となるが、新たに光学絞り機構を取り付けることで、追加する部品によって、物理的な制約が発生するとともに、コストの上昇が余儀なくされてしまうという問題もでてくる。以下、このような問題を、ランプ調整範囲問題と称する。
【0043】
そこで、本発明が適用される図1の情報処理システムおいては、上述した各種問題を解決可能なプロジェクタ33が、各上映場22に設置されているのである。すなわち、プロジェクタ33とは、本発明が適用されるプロジェクタの一実施の形態である。かかるプロジェクタ33の構成例が、図4に示されている。
【0044】
プロジェクタ33は、図4の例に示すように、CPU(Central Processing Unit)51、メモリ52、入出力部53、I/O(Input/Output)部54、モータドライブ55、エンコーダ56、モータ57、ランプハウス58、ランプ電源部59、光量センサ60、入出力インタフェース61、通信部62、およびドライブ63を含むようにして構成される。
【0045】
CPU51は、メモリ52に記録されているプログラム等に従って各種の処理を実行する。メモリ52にはまた、CPU51が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0046】
CPU51にはまた、入出力部53、I/O部54、および入出力インタフェース61が接続されている。
【0047】
入出力部53は、例えばタッチパネル等で構成され、ユーザ(オペレータ等)が各種操作を行うための入力部71、および、その操作内容等を表示するためのディスプレイ等よりなる表示部72を有している。
【0048】
I/O部54は、CPU51と、モータドライブ55、エンコーダ56、ランプ電源部59、または光量センサ60との間で授受される各種情報を中継する。
【0049】
ランプ83を装着するランプハウス58には、図中のXYZ軸の3方向に移動自在の電動部81が設けられており、この電動部81の可動回転軸にモータ57、および、光学的または磁気的に回転角度に応じたパルスを発生するエンコーダ56が機械的に接続される。ランプハウス58にはまた、電動部81およびランプ83の他に、光の拡散を抑え、遠方までランプ83の光を照らしつけるための楕円反射鏡82が設けられる。
【0050】
CPU51は、I/O部54を介してモータドライブ55を制御し、モータ57を駆動させる。モータ57が駆動すると、図中の3軸方向に電動部81が移動し、ランプハウス58に装着されているランプ83も移動する。またこのとき、電動部81の移動量に応じたパルス信号がエンコーダ56によって生成され、そのパルス信号は、I/O部54を介してCPU51に読み取られる。これにより、CPU51は、ランプ83の位置に関する情報を取得することが可能となる。
【0051】
光量センサ60は、ランプ83から出射される光の光量を測定できる位置に設けられ、その光量を検出する。CPU51は、I/O部54を介して光量センサ60を制御し、光量センサ60に測定された光量に関する情報を取得する。
【0052】
ランプ電源部59は、複数の種類のランプサイズのランプ83を駆動可能な電源である。すなわち、ランプ電源部59は、CPU51からI/O部54を介する制御に基づいて、ランプハウス58に装着されたランプ83に対して適切な駆動電力を提供する。
【0053】
入出力インタフェース61には、通信部62とドライブ63とが接続されている。通信部62は、SM装置31や素材サーバ32(図1)を含む他の装置との間で行う通信を制御する。この場合の通信の形態は特に限定されず、有線であってもよいし無線であってもよい。また、直接接続による通信であってもよいし、インターネットを含むネットワークを介在する通信であってもよい。
【0054】
また、通信部62は、このような通信制御により外部からプログラムを取得し、メモリ52に記憶させてもよい。
【0055】
ドライブ63は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等のリムーバブルメディア64が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータ等を取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じてメモリ52に転送され、記憶される。
【0056】
ところで、図4のランプハウス58の内部は、本実施の形態では、例えば図5に示されるような構成となる。
【0057】
図5の例に示すように、光源となるランプ83は、電動部81と固定されるようにランプハウス58に装着される。これにより、ランプ83は、電動部81が図中の矢印X81,Y81,Z81で示す3方向に移動すると、その移動した方向に対応する図中のXYZの3軸方向に移動する。
【0058】
ランプ83は、例えば本実施の形態では、図6に示される形状を有している。すなわち、本実施の形態では、プロジェクタ33にランプ83として搭載される可能性(交換可能性)があるランプは、何れも図6の形状と同一形状を有している。ただし、かかるランプは、多種多様のランプサイズを有し得る。また、ランプ83の形状は、図6の例は例示に過ぎず、ランプハウス58に装着可能な形状であれば特に限定されない。すなわち、本実施の形態のランプハウス58がたまたま、図6の形状のランプ83を搭載可能な構造を有しているのである。
【0059】
図5に戻り、楕円反射鏡82は、例えば、ランプ83からの光の進行方向を変える楕円面の反射面を有する楕円反射鏡または楕円鏡であって、図中に示すような楕円Aの長軸上の焦点B(第一焦点)にあるランプ83(の輝点)からの光を、その長軸上の焦点C(第二焦点)に集光させる。
【0060】
図7は、図5に示している楕円Aの詳細を説明する図である。つまり、図7は、光源であるランプ83の位置に対する、楕円反射鏡82による光の反射の様子を示す図である。
【0061】
図7の例においては、図中の直線で示すように、焦点Bから出た光は焦点Cに集光する。また、図中の間隔の短いほうの点線で示すように、点Eの位置から出た光は点Gに集光し、図中間隔の長いほうの直線で示すように、点Fの位置から出た光は点Hに集光する。
【0062】
すなわち、光源(ランプ83の輝点)の位置が焦点Bにあるとき、焦点Cで集光すると最大輝度が得られるように(最大輝度に近づけるように)設計されていたとすると、ランプ83の輝点の位置を図中のZ方向に、「+」または「−」に移動させることで、集光位置が変わり、最大輝度が得られる焦点Cからずれるので、光の利用効率が低下することになる。具体的には、例えば、焦点Bにあるランプ83の輝点の位置を図中のZ方向に「+」に移動させて、ランプ83の輝点の位置を点Eとしたとき、点Eから出た光は点Gに集光するので、ランプ83から出射された光の利用効率は低下する。同様にしてまた、焦点Bにあるランプ83の輝点の位置を、点Fまで、「−」のZ方向に移動させたとき、点Fから出た光は点Hに集光するので、同様にランプ83から出射された光の利用効率は低下する。
【0063】
つまり、意図的に集光位置を、最大輝度の得られる位置からずらすことで、同様にランプ83から出射された光の利用効率を下げることが可能となる。これにより、例えば、上述した、図3において、50%乃至100%の調整範囲から外れた範囲であっても、ランプ83の位置をずらして、光の利用効率を意図的に低下させることで、その範囲外の電力に応じた明るさの光を出射することが可能となる。具体的には、図3の例では、ランプAにおける2.1kW以下、ランプBにおける1.5kW以下、ランプCにおける1.0kW以下の電力に応じた明るさの光を出射することが可能となる。
【0064】
なお、上述した例では、光源であるランプ83(の輝点)の位置をZ方向に移動させる例について説明したが、もちろん、ランプ83(の輝点)の位置をX方向やY方向、XZ方向、XY方向等に移動させても明るさを変えることは可能である。要は、光源からの集光位置を、最大輝度が得られる焦点Cからずらすことができればよいのであって、その光源の移動方向は任意である。
【0065】
図8は、ランプ83を、XYZ軸の3方向のそれぞれに移動させたときの、ランプ83のランプ移動量と相対照度の関係を示すグラフである。
【0066】
図8においては、横軸はランプ83の移動量を示し、縦軸はXYZの各軸方向に移動させたときの相対的な照度を示す。つまり、XYZの各軸方向のランプ移動量が同じである場合には相対照度の値の高い軸ほど、光の利用効率が高いことを示している。また、図8では、ランプ83(の輝点)をXYZ軸の3方向に移動させたときの相対照度の値を示すグラフにおいて、X方向に移動させたときのグラフを曲線x、Y方向に移動させたときのグラフを曲線y、Z方向に移動させたときのグラフを曲線zと表現している。
【0067】
図8においては、中心の縦線の位置は、ランプ移動量が0、すなわち、最大輝度が得られる焦点Cに光を集光できる焦点Bである。従って、そのとき、ランプ83から出射された光の利用効率は最も高くなるので、相対照度は、曲線x乃至zのいずれにおいても最大値となる。
【0068】
図8において、ランプ移動量が増加すると(ランプ83の位置が焦点Bから離れると)、相対照度は徐々に低下するが、曲線xは、曲線zよりもなだらかな曲線となり、曲線yは、曲線xよりもなだらかな曲線となる。
【0069】
すなわち、同じランプ移動量で考えたとき、曲線y,曲線x,曲線zの順に相対照度が高くなるので、ランプ83は、例えば、Z方向に移動することで、X方向とY方向に同じランプ移動量だけ移動したときと比べて、より照度を低下させることが可能となる。つまり、ランプ83は、XYZ軸の3方向のうちのZ方向に移動することで、移動量に対して最も効率よく光の利用効率を低下させることになる。
【0070】
以上のように、本実施の形態では、光学系に絞り機構等の追加部品を設けずに、単に、ランプ83をXYZ軸の3方向のいずれかに移動させるだけで、光量の調整範囲を広げることが可能となる。これにより、新たに光学絞り機構を取り付けるときの追加部品等による物理的な制約から解放されるとともに、コストの上昇を最低限に抑えることができる。また、ランプ83をXYZ軸の3方向に動かす機能を有する既存の機構を利用することが可能なので、極めて簡単にこれらの機能を実現することができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、ランプ83をXYZ軸の3方向のうちのいずれかの方向に、どれだけ移動させるかは、光の利用効率をどれだけ低下させるかによって決定される。
【0072】
ところで、ランプ83から出射される光は、図9に示すように、楕円反射鏡82により反射され、その光を均一にする照明系ユニット92を介して、素材サーバ32からの上映する映画(素材)のデジタルデータに基づいた光の変調を行う液晶ライトバルブ93に出射される。そして、液晶ライトバルブ93に光を出射することにより得られた映像光は、投影レンズ94を介してスクリーン34に投射される。これにより、プロジェクタ33によって、素材サーバ32から提供されたデジタルデータに対応する映像が、スクリーン34に投射される。これにより、映画がスクリーン34において上映される。
【0073】
図9では、ランプ位置調整機構91は、例えば、図4のCPU51、I/O部54、モータドライブ55、エンコーダ56、およびモータ57等から構成され、ランプ83の位置を調整する。具体的には、ランプ位置調整機構91は、光源であるランプ83の輝点を、楕円反射鏡82の第一焦点(例えば図5の焦点B)からずらして、液晶ライトバルブ93の有効光量を減らすように(例えば図5の焦点Cからずれるように)、ランプ83の位置を図中XYZ軸の3方向に移動させる。言い換えれば、ランプ位置調整機構91は、ランプ83の輝点を楕円反射鏡82の光軸上か、または楕円反射鏡82の光軸上とは異なる方向に移動させるとも言える。
【0074】
液晶ライトバルブ93は、ライトバルブ方式のプロジェクタに用いられる固定画素の液晶ライトバルブ等の映像表示デバイスである。この映像表示デバイスとしては、液晶ライトバルブ等の反射型液晶パネルの他に、例えば、反射型のミラーデバイス(例えばDMD(Digital Mirror Device))等、ランプ83から出射された光によって、素材サーバ32からのデジタルデータに対応する映像を表示可能なデバイスを用いることが可能である。
【0075】
液晶ライトバルブ93は、素材サーバ32からのデジタルデータに基づいた変調によって、楕円反射鏡82により反射されたランプ83からの光(反射光)を映像光に変換する。
【0076】
投影レンズ94は、液晶ライトバルブ93からの映像光をスクリーン34に投影するレンズであり、スクリーン34と液晶ライトバルブ93との間に設けられる。液晶ライトバルブ93からの映像光は、投影レンズ94によって、スクリーン34に拡大出射される。
【0077】
なお、投影レンズ94は、例えば1枚以上のズーム機能を有するレンズ群として構成される。その場合、投影レンズ94の位置を変えることで、映像光に対応する映像のスクリーン34上での大きさを変えることができるが、このズームを変えることで光量が変化し、スクリーン34上の映像の輝度が明るくなり過ぎることがある。この映像の輝度が明るくなりすぎるのを、ランプ83の位置を調整して光の利用効率を低下させることで防止できる。
【0078】
また、本実施の形態では、楕円面の反射面を有する楕円反射鏡82について説明するが、この楕円反射鏡82の代わりに、放物面の反射面を有する放物面鏡を用いることもできる。この場合、放物面鏡では反射光が平行光となる為、Z方向への移動では輝度変化を得ることができないので、X方向またはY方向に移動することで、楕円反射鏡82の場合と同様の効果を得ることが可能となる。
【0079】
さらにまた、図示はしていないが、楕円反射鏡82と向き合う位置に、球面鏡を設けるようにしてもよい。つまり、この球面鏡を設けて、溢れた光を集めることにより、ランプ83の光の出射の効率を上げることができる。
【0080】
次に、図10のフローチャートを参照して、かかる構成のプロジェクタ33が実行する処理のうちの、キャリブレーションモード実施時に行われる、低入力時のフリッカ現象が発生した際に実行する処理(以下、フリッカ検出処理と称する)の一例について説明する。
【0081】
なお、プロジェクタ33においては、ランプ入力は通常50%乃至100%に設定されているが、CPU51は、例えば、キャリブレーションモードが実施された場合、図10のフリッカ検出処理を実行する。
【0082】
ステップS11において、CPU51は、I/O部54を介してランプ電源59を制御して、例えば50%に電力下限値を設定する。例えば、この50%等の設定された電力下限値の情報はメモリ52に記憶される。これにより、ランプハウス58に装着されたランプ83は、ランプ電源部59から供給される50%の駆動電力で点灯する。
【0083】
CPU51は、ステップS12において、設定されている電力下限値が100%未満となるか否かを判定し、電力下限値が100%であると判定した場合、ステップS13において、ランプ交換のアラーム(警報)を表示部72に表示させて、フリッカ検出処理は終了する。
【0084】
すなわち、電力下限値が100%である判定された場合、これ以上電力下限値を上げることができず、さらに、フリッカ現象を抑えることができないので、ランプ83の交換を促すアラームを表示部72に表示して、ユーザにランプ83を交換させる。
【0085】
このように、フリッカ現象はランプ交換の重要な目安であり、電力下限値が100%に設定されているときに、フリッカ現象が検出されると、ランプ交換を促すアラームを出力するので、ユーザに対して適切なランプ交換時期を通知し、過度の使用によるランプの破裂故障を未然に防ぐことが可能となる。
【0086】
一方、ステップS12において、電力下限値が100%未満であると判定された場合、ステップS14において、CPU51は、例えばカウンタNに1を設定し、Nを初期化する。
【0087】
CPU51は、ステップS15において、I/O部54を介して光量センサ60により測定された光量センサ値を読み込み、ステップS16において、読み込んだ光量センサ値に対応するデータを積算する。
【0088】
ステップS17において、CPU51は、Nの値が10回等の所定の回数を上回るか否かを判定する。CPU51は、ステップS17において、Nの値が10を下回っていると判定された場合、ステップS18において、Nの値を1インクリメントし、処理はステップS15に戻る。
【0089】
そして、処理は、ステップS17において、Nの値が10を上回るまで、ステップS15乃至ステップS18の処理が繰り返される。すなわち、Nの値が所定の回数である10を上回るまで、ステップS15乃至ステップS18の処理が一定間隔で10回繰り返されるので、ステップS16の処理によって、積算値は10個求められる。
【0090】
積算値が10個等、所定の個数求められると、ステップS19において、CPU51は、それらの積算値に基づいて、変動値を計算する。この変動値は、例えば、式(1)により計算される。
【0091】
変動値 = (積算値の最大値−積算値の最小値) / 積算値の平均値・・・(1)
【0092】
すなわち、式(1)においては、例えば、10個の積算値のなかから、最大と最小の積算値が選択されるとともに、それら10個の積算値の平均値が算出され、さらに、選択された最大と最小の積算値の差分を、算出した平均値で割ることで、変動値が算出される。
【0093】
ステップS20において、CPU51は、計算された変動値が、あらかじめ定められた規格値を下回るか否かを判定する。
【0094】
ここで、規格値とは、例えば、プロジェクタ33を製造するメーカ等によって、あらかじめ定められる値である。すなわち、その規格によれば、フリッカが発生していると判定するための基準(閾値)が定められており、計算された変動値がその基準を上回る場合、フリッカ現象が発生しているということになる。
【0095】
ステップS20において、変動値が規格値を上回ると判定された場合、CPU51は、ステップS21において、電力下限値を10%増加させ、ステップS22において、例えば1分等の所定の時間が経過したか判定し、所定の時間が経過するまで判定の処理が繰り返される。
【0096】
すなわち、変動値が規格値を上回ると判定された場合、フリッカ現象が起こっており、上述したように、フリッカ現象は、ランプ83のパワーを上げることで止まる性質があるので、電力下限値を、50%から60%にして、ランプ83のパワーを10%上げる。
【0097】
ステップS22において、1分等の所定の時間が経過したと判定された場合、ステップS12に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0098】
そして、処理は、ステップS20において、変動値が規格値を下回ると判定されるまで、ステップS12乃至S22の処理が繰り返される。すなわち、60%,70%,80%,90%のように電力下限値を10%ずつ増加しながら点灯するランプ83から出射された光の光量の変動値が順次計算され、その計算された変動値と規格値との比較が順次行われる。
【0099】
ステップS20において、変動値が規格値を下回ると判定された場合、CPU51は、その変動値が規格値を下回ったときの電力下限値、例えば、90%に電力下限値を設定し、フリッカ検出処理は終了する。
【0100】
以上のように、低入力駆動時に発生するフリッカ現象を検出したとき、電力下限値(ランプ入力値)をフリッカ現象が消えるまでパワーアップすることによって、低入力駆動時に発生するフリッカを抑制し、低入力駆動時に十分なランプ寿命を確保することができる。すなわち、フリッカ現象問題を解決できるようになる。
【0101】
また、低入力駆動時のフリッカ寿命を延ばすことは、実質的にランプ寿命の延命になるという効果も有する。さらにまた、フリッカはランプ交換の重要な目安となり、100%入力でフリッカ検出時にランプ交換を促すアラーム(警告)を出すことは、過度の使い過ぎによるランプ破裂防止の観点で重要である。
【0102】
次に、図11のフローチャートを参照して、かかる構成のプロジェクタ33が実行する処理のうちの、ランプ83から出射される光の光量の調整範囲を広げる際に行われる、ランプ83を移動させる処理(以下、ランプ位置調整処理)の一例について説明する。
【0103】
上述したように、上映場22のスクリーン34に投射される映像のサイズが、スコープサイズからビスタサイズに切り替えられたとき、2種類の画角における、スクリーン34に投影される映像の輝度を一定に保つように規定されており、それを実現するためにはランプ83の光量ゲインを1.6に確保する必要がある。CPU51は、例えば、図10のフリッカ検出処理終了後、ビスタサイズに切り替えられたスクリーン34に投影される映像の輝度を所望の値に保つ必要がある場合、図11のランプ位置調整処理を実行する。
【0104】
ステップS31において、CPU51は、I/O部54を介して光量センサ60により測定された光量センサ値を読み込み、ランプ83から出射される光が明るすぎるか否かを判定する。具体的には、CPU51は、例えば、ビスタサイズに切り替えられたスクリーン34に出射される光の光量を検出する光量センサ60からの光量センサ値が、ビスタサイズに必要とされる値を上回っているか否かを判定することで、ランプ83からの光が明るすぎるか否かを判定する。
【0105】
ステップS31において、ランプ83から出射される光が明るすぎない、すなわち、所望の明るさであると判定された場合、ランプ83の位置を調整する必要はないので、ステップS32乃至35の処理をスキップし、ランプ位置調整処理は終了する。
【0106】
一方、ステップS31において、ランプ83から出射される光が明るすぎると判定された場合、ステップS32において、CPU51は、ランプ83の位置が移動可能となる位置であるリミットの範囲内であるか否かを判定する。ステップS32において、ランプ83の位置がリミットの範囲外であると判定された場合、ランプ83をこれ以上移動させることができないので、ランプ位置調整処理は終了する。
【0107】
一方、ステップS32において、ランプ83の位置がリミットの範囲内であると判定された場合、ランプ83を移動させることが可能であるので、ステップS33において、CPU51は、I/O部54を介して、光量センサ60から光量センサ値、エンコーダ56から位置データを取得する。
【0108】
ステップS34において、CPU51は、取得した光量センサ値および位置データに基づいて、I/O部54およびモータドライブ55を介して、モータ57に電動部81を駆動させることで、ランプ83をXYZ軸の3方向のいずれかに移動させる。
【0109】
なお、このランプ83の位置をシフトして調整する方法であるが、例えば、シフトさせる位置の最適値はエンコーダ56に認識され、画角が切り替えられる度に、その認識された最適値に基づいてランプ83の位置を切り替えることにより、スクリーン34に投影される映像の輝度を一定に保つことができる。
【0110】
また、本実施の形態では、電動部81は、入力100%のままで、ランプ83の位置移動だけで、ランプゲイン1.6を実現できる可動量を有している。
【0111】
ステップS35において、CPU51は、ランプ83の位置移動後の光量センサ60からの光量センサ値に基づいて、ランプ83から出射される光の光量が、所望の輝度以下となるかを判定する。ステップS35において、例えば、ビスタサイズに必要とされる値をまだ上回っており、所望の輝度以上であると判定された場合、ステップS32に戻り、ステップS35において、所望の輝度以下であると判定されるまで、上述した、ステップS32乃至35の処理が繰り返される。
【0112】
一方、ステップS35において、所望の輝度以下であると判定された場合、例えば、ビスタサイズに必要とされる値を下回り、スクリーン34に投影される映像の輝度を一定に保つことができるので、ランプ位置調整処理は終了する。
【0113】
以上のように、光学系に絞り機構等の追加部品を設けずに、ランプ83をXYZ軸の3方向に移動させて、ランプ83の位置を調整するだけで、光量の調整範囲を広げることが可能となる。換言すれば、ランプ83をXYZ軸の3方向に移動させて、液晶ライトバルブ93の有効光量を積極的に減らすことで、液晶ライトバルブ93の階調を損ねることなく、ピーク輝度の調整範囲を広げることができる。すなわち、ランプ調整範囲問題を解決できるようになる。
【0114】
また、例えば、映画の画角(アスペクト比)が変えられた場合、スクリーン34上の映像の輝度を一定に保つために、ランプから出射される光の光量を調整する必要がでてくるが、図10のフリッカ検出処理の後に、図11のランプ位置調整処理を行って、ランプ83の位置を暗くなる方向にずらすことで、簡単に、映像の輝度を常に一定に確保することができる。これにより、フリッカ現象問題とランプ調整範囲問題とを同時に解決できるようになる。例えば、図10のフリッカ検出処理による、ランプ83の光出力の調整(100%乃至50%程度)と合わせると、最大輝度の100%乃至30%程度の輝度までを、調整範囲とすることが可能となる。
【0115】
さらに、上述したように、ランプ83は、多種多様のランプサイズからなるが、光量の調整範囲を広げることができるので、その種類を減らすことができる。
【0116】
なお、本実施の形態では、ランプ83の位置を調整することで、光量の調整範囲を広げることができると説明したが、ランプ83を移動させる代わりに、楕円反射鏡82や照明系ユニット92を移動させたり、回転させても同様の効果を得ることができる。
【0117】
また、図4のプロジェクタ33においては、入力部71と表示部72からなる入出力部53を設けずに、外部のパーソナルコンピュータ等によってデータを入力させたり、データを表示させたりすることも可能である。
【0118】
さらに、本実施の形態では、DCI Specに準じて説明したが、他の画角であっても、画角を切り替える上映が必要な場合に有効である。
【0119】
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータ等に、記録媒体からインストールされる。
【0120】
この記録媒体は、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk))を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、若しくは半導体メモリ等よりなる図4のリムーバブルメディア64により構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROMや記録部等で構成される。
【0121】
また、上述した一連の処理を実行させるプログラムは、必要に応じてルータ、モデム等のインタフェースを介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を介してコンピュータにインストールされるようにしてもよい。
【0122】
なお、本明細書において、記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0123】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0124】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】デジタルシネマの分野に適用された場合の情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】ビスタサイズとスコープサイズについて説明する図である。
【図3】ランプの光量の調整範囲について説明する図である。
【図4】本発明が適用されるプロジェクタの一実施の形態を示すブロック図である。
【図5】ランプを装着したランプハウスの内部を示す図である。
【図6】ランプの外観を示す図である。
【図7】光源の位置に対する楕円反射鏡による光の反射の様子を示す図である。
【図8】各軸におけるランプ移動量と相対照度との関係を示すグラフである。
【図9】ランプハウスの詳細な構成を示すブロック図である。
【図10】フリッカ検出処理について説明するフローチャートである。
【図11】ランプ位置調整処理について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0126】
33 プロジェクタ, 51 CPU, 52 メモリ, 53 入出力部, 54 I/O部, 55 モータドライブ, 56 エンコーダ, 57 モータ, 58 ランプハウス, 59 ランプ電源部, 60 光量センサ, 61 入出力インタフェース, 62 通信部, 63 ドライブ, 64 リムーバブルメディア, 71 入力部, 72 表示部, 81 電動部, 82 楕円反射鏡, 83 ランプ, 91 ランプ位置調整機構, 92 照明系ユニット, 93 液晶ライトバルブ, 94 投影レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタおよびその制御方法に関し、特に、ランプから光を出射する場合に用いて好適なプロジェクタおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像表示技術の発展に伴い、いわゆるデジタルシネマの分野に適用可能なプロジェクタ、すなわち、映画館における映画の上映の用途で使用可能なプロジェクタが登場してきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プロジェクタの動作方式には、例えば液晶ライトバルブ等のライトバルブによって、光源からの光を変調し投影する方式であるライトバルブ方式がある。固定画素のライトバルブを使用したプロジェクタにおいて、投射した映像の明るさを変える手法としては、一般的に、ランプ等の光源の明るさを変える手法が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−260423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同一のランプで入力電力を変化させるだけで、明るさを調整するには限界があり、簡単に、ピーク輝度の変化の幅を広げることができないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、既存の機構を利用して、簡単に、ピーク輝度の変化の幅を広げることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面のプロジェクタは、映像をスクリーンに投射するプロジェクタにおいて、光を出射するランプと、前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズと、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する位置調整機構とを備える。
【0008】
前記位置調整機構には、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上で移動させることができる。
【0009】
前記位置調整機構には、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上とは異なる方向に移動させることができる。
【0010】
前記位置調整機構には、前記スクリーンに表示される前記映像のアスペクト比が変わったとき、前記ランプの位置を調整させることができる。
【0011】
本発明の一側面の制御方法は、上述した本発明の一側面のプロジェクタに係る制御回路の制御方法に対応する方法である。
【0012】
本発明の一側面のプロジェクタおよびその制御方法においては、映像をスクリーンに投射するプロジェクタであって、光を出射するランプと、ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、映像に対応する画像データに基づいた変調によって、楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、スクリーンと映像表示デバイスとの間に配置され、映像表示デバイスからの映像光をスクリーンに投影する投影レンズと、ランプの位置を調整する位置調整機構とを備えているプロジェクタにおいて、次のような処理が実行される。すなわち、ランプの輝点を楕円反射鏡の第一焦点からずらして、映像表示デバイスの有効光量が減るように、ランプの位置が調整される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の一側面によれば、既存の機構を利用して、簡単に、ピーク輝度の変化の幅を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0015】
本発明の一側面のプロジェクタは、映像をスクリーン(例えば、図1のスクリーン34)に投射するプロジェクタ(例えば、図1の映画館11A乃至11Nに設置可能な図4のプロジェクタ33)において、光を出射するランプ(例えば、図6の形状を有する図9のランプ83)と、前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡(例えば、図9の楕円反射鏡82)と、前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイス(例えば、図9の液晶ライトバルブ93)と、前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズ(例えば、図9の投影レンズ94)と、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する位置調整機構(例えば、図9のランプ位置調整機構91)とを備える。
【0016】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上で移動させる(例えば、図11のステップS34の処理)。
【0017】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上とは異なる方向に移動させる(例えば、図11のステップS34の処理)。
【0018】
前記位置調整機構は、前記スクリーンに表示される前記映像のアスペクト比が変わったとき、前記ランプの位置を調整する(例えば、図11のランプ位置調整処理)。
【0019】
本発明の一側面のプロジェクタの制御方法は、上述した本発明の一側面のプロジェクタに係る位置調整機構の制御方法に対応する方法(例えば、図4のプロジェクタ33のCPU
51が実行する処理のうちの、図11のランプ位置調整処理に対応する方法)である。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明が適用される情報処理システムであって、デジタルシネマの分野に適用された場合の情報処理システムの構成例を示している。
【0022】
図1の例の情報処理システムは、映画館11A乃至11Nに設置される各種装置(詳細については後述する)と、メンテナンスサーバ12とが、インターネット等の所定のネットワーク13を介して相互に接続されて構成されている。ここに、メンテナンスサーバ12とは、例えば、各映画館11A乃至11Nに設置される各種装置のメンテナンスを役務(サービス)として提供している者の用に供する装置をいう。
【0023】
映画館11Aには、複数の映画を並行して上映できるように、複数の上映場22a乃至22nが存在する。これらの複数の上映場22a乃至22nの統括管理を行うべく、Theater Management装置21(以下、TM装置21と称する)が映画館11Aに設置されている。
【0024】
上映場22aには、Screen Management装置31a(以下、SM装置31aと称する)、素材サーバ32a、プロジェクタ33a、およびスクリーン34aが設けられている。
【0025】
同様に、上映場22nには、SM装置31n乃至スクリーン34nが設けられている。その他図示せぬ各上映場22k(kは、任意の小文字のアルファベット)にも、SM装置31k乃至スクリーン34kがそれぞれ設けられている。
【0026】
なお、以下、上映場22a乃至22nを、個々に区別する必要がない場合、それらをまとめて上映場22と単に称する。また、以下、上映場22kを単に上映場22と称している場合には、SM装置31k乃至スクリーン34kのそれぞれも、SM装置31乃至スクリーン34のそれぞれと称する。
【0027】
SM装置31は、上映場22の統括管理を行う装置であって、上映場22内の他の装置、すなわち、素材サーバ32やプロジェクタ33等を制御する。また、SM装置31は、TM装置21と通信を行い、各種情報を適宜授受する。
【0028】
素材サーバ32は、上映場22にて上映する映画(素材)のデジタルデータをプロジェクタ33に提供する。
【0029】
プロジェクタ33は、素材サーバ32から提供されたデジタルデータに対応する映像をスクリーン34に投射する。これにより、映画がスクリーン34において上映される。
【0030】
その他の映画館11B乃至11Nにも、図示はしないが同様に、1以上の上映場22が存在し、各上映場22にはそれぞれ、SM装置31乃至スクリーン34が設けられている。
【0031】
ここで、図1の情報処理システムは上述したようにデジタルシネマの分野に適用されている。かかるデジタルシネマの分野では、DCI(Digital Cinema Initiatives)と称される団体により、DCI Specと称される規格が規定されている。その規格によれば、参照されるべき映像パラメータとして、「白ピーク輝度はスクリーン中心で、48cd/m2(14ft-L)であること」と明記されている。14ft-L = 48cd/m2、とあるので、大体1m2当たりろうそく48本分の明るさがスクリーン34の中心で必要であるということになる。換言すると、スクリーン34に投影される映像の輝度(照度)は、常に一定に保つ必要がある。
【0032】
一方、スクリーン34のサイズは、上映場22の容積等に応じて多種多様な種類が存在する。
【0033】
従って、プロジェクタ33の光源としては、投射対象のスクリーン34のサイズに応じて、DCI Specを満たすことができる最適なランプ、例えばキセノン(Xenon)等のランプをそれぞれ採用する必要がある。
【0034】
また、映画の画角についても、例えば、スコープ(scope)、ビスタ(Vista)といったアスペクト比が異なる種類が存在する。従って、同一の上映場22において、すなわち、同一のスクリーン34において、これらの多種多様な画角のうちの所定の1つから別の1つへの切り替えが必要になる場合がある。このような場合には、プロジェクタ33のレンズのズーム倍率を変化させる必要がある。この変化にあわせて、上述したようにスクリーン34上の映像の輝度(照度)を一定に保つべく、ランプのパワー(入力ワット)を変更する必要があり、その結果、そのランプの光量ゲインを一定量に確保する必要がある。
【0035】
図2に示すように、ビスタサイズは、通常、縦横比が1:1.66程度の横長の画面サイズ(図2の例では1:1.85の画面サイズ)のことをいい、代表的なものとしては、1:1.66のビスタサイズ(ヨーロッパ規格)や1:1.85のビスタサイズ(アメリカ規格)等がある。また、スコープサイズは、通常、縦横比が1:2以上の横長の画面サイズ(図2の例では1:2.39の画面サイズ)のことをいい、代表的なものとしては、1:2.35のシネマスコープサイズ(登録商標)等がある。
【0036】
図2に示すように、例えば、ビスタサイズの縦方向と横方向に1.26倍したサイズが、スコープサイズとなるので、スコープサイズは、ビスタサイズの1.6倍(≒1.26×1.26)の大きさとなる。従って、ビスタサイズとスコープサイズとの切り替えにおいては、ランプパワーを1.6倍にすることで、単位面積当たりの輝度が一定になる。例えば、ビスタサイズにおけるランプパワーが50%である場合には、スコープサイズでは、その1.6倍の80%のランプパワーが必要となる。なお、図2に示すように、スコープサイズでは、上下の斜線部分は見えないようにしているが、ランプ側から考えると、その斜線部分を含めたパワーを必要とする。
【0037】
また、上述したようにスクリーン34上の映像の輝度(照度)を一定に保つ必要があるため、入力定格としての最小ワットや最大ワット等(以下、かかる入力定格をランプサイズとも称する)がその変更に対応可能なランプを採用する必要があるとともに、そのランプを駆動する側でも適切な設定を行う必要がある。すなわち、プロジェクタ33は、多種多様なランプサイズのランプを搭載する可能性がある。
【0038】
プロジェクタ33に搭載されるランプは、例えば、図3に示すような3種類のランプがある。図3によると、ランプAは、最小ワットとして2.1kW、最大ワットとして4.2kWの範囲内で駆動させられる。同様にまた、ランプBは、最小ワットとして1.5kW、最大ワットとして3.0kWの範囲内で駆動させられ、ランプCは、最小ワットとして1.0kW、最大ワットとして2.0kWの範囲内で駆動させられる。
【0039】
すなわち、ランプは所定のランプハウス(例えば本実施の形態では図4のランプハウス58)に装着されるため、その形状自体は機能確保上同一または類似となるが(例えば本実施の形態では図6の形状が採用されている)、ランプサイズについては明確な規定は存在せず、多種多様なランプサイズのランプが市場に流通する可能性がある。特に、図1の映画館11A乃至11Nが遠隔地に点在するような場合には、各地域におけるランプ製造者(製造メーカ)のランプを採用することが多い。このような場合、各地域によって異なる種類のランプサイズのランプがそれぞれ市場に流通している可能性は一段と高くなっている。従って、映画館11A乃至11Nにおいて、たとえ同一のサイズのスクリーン34に映像を投影するプロジェクタ33であっても、それに搭載させるランプとしては、ランプサイズの異なったランプがそれぞれ採用されることもある。
【0040】
このように、デジタルシネマの分野におけるプロジェクタ用のランプにはその分野特有の事情が存在する。その結果、従来のプロジェクタを採用していた映画館では、次のような種々の問題が生じていた。
【0041】
例えば、上述したように、スコープサイズとビスタサイズとを切り替えたとしても、スクリーン34に投影される映像の輝度(照度)を常に一定に確保する必要がある。この場合に、輝度を一定に確保するためには、上述したように、例えばランプの光量ゲインを1.6に確保する必要がある。しかし、従来、ランプの入力ゲインは2.0(50%乃至100%)しかないため、低入力を常時使う必要があり、そのために低入力でも十分な寿命を確保しなければならないという問題があった。また、フリッカ現象は、低入力からはじまり、ランプのパワーを上げることで止まるという性質のものであり、例えば、50%の低入力から始まり、入力を60%に上げることで止めることができる。そのため、低入力を常時使用すると、フリッカ現象が起こり易くなる。つまり、ランプの光量ゲインを1.6に確保するために低入力が必要となり、それにより、低入力時のフリッカ現象の発生が問題となっていた。以下、このような問題を、フリッカ現象問題と称する。
【0042】
また例えば、スクリーン34上の映像の輝度(照度)を一定に保つために、ランプから出射される光の光量を調整する必要がでてくるが、光量調整の方法としては、光源の電力量を調整する方法がある。光源の電力量を調整する場合、一般的にその調整範囲は最大パワーからその半分程度まで、すなわち、光量の調整範囲の最大を100%,最小を0%とするとその調整範囲は、50%乃至100%となる。例えば、図3に示すようなランプにおける調整範囲は、ランプAでは2.1kW乃至4.2kWの範囲、ランプBは1.5kW乃至3.0kWの範囲、ランプCは1.0kW乃至2.0kWの範囲となる。そのため、ランプAは2.1kW以下、ランプBは1.5kW以下、ランプCは1.0kW以下の電力で光を出射できない、つまり、50%乃至100%の調整範囲から外れた範囲の電力に対応した明るさの光を出射することができないという問題があった。また、光源の電力量を調整する他にも、光学系に絞り機構を設け、絞りの開閉により光量を調整する方法も知られている。しかし、光学絞り機構を追加することで、光量の調整範囲は、理論的には0%乃至100%とすることが可能となるが、新たに光学絞り機構を取り付けることで、追加する部品によって、物理的な制約が発生するとともに、コストの上昇が余儀なくされてしまうという問題もでてくる。以下、このような問題を、ランプ調整範囲問題と称する。
【0043】
そこで、本発明が適用される図1の情報処理システムおいては、上述した各種問題を解決可能なプロジェクタ33が、各上映場22に設置されているのである。すなわち、プロジェクタ33とは、本発明が適用されるプロジェクタの一実施の形態である。かかるプロジェクタ33の構成例が、図4に示されている。
【0044】
プロジェクタ33は、図4の例に示すように、CPU(Central Processing Unit)51、メモリ52、入出力部53、I/O(Input/Output)部54、モータドライブ55、エンコーダ56、モータ57、ランプハウス58、ランプ電源部59、光量センサ60、入出力インタフェース61、通信部62、およびドライブ63を含むようにして構成される。
【0045】
CPU51は、メモリ52に記録されているプログラム等に従って各種の処理を実行する。メモリ52にはまた、CPU51が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0046】
CPU51にはまた、入出力部53、I/O部54、および入出力インタフェース61が接続されている。
【0047】
入出力部53は、例えばタッチパネル等で構成され、ユーザ(オペレータ等)が各種操作を行うための入力部71、および、その操作内容等を表示するためのディスプレイ等よりなる表示部72を有している。
【0048】
I/O部54は、CPU51と、モータドライブ55、エンコーダ56、ランプ電源部59、または光量センサ60との間で授受される各種情報を中継する。
【0049】
ランプ83を装着するランプハウス58には、図中のXYZ軸の3方向に移動自在の電動部81が設けられており、この電動部81の可動回転軸にモータ57、および、光学的または磁気的に回転角度に応じたパルスを発生するエンコーダ56が機械的に接続される。ランプハウス58にはまた、電動部81およびランプ83の他に、光の拡散を抑え、遠方までランプ83の光を照らしつけるための楕円反射鏡82が設けられる。
【0050】
CPU51は、I/O部54を介してモータドライブ55を制御し、モータ57を駆動させる。モータ57が駆動すると、図中の3軸方向に電動部81が移動し、ランプハウス58に装着されているランプ83も移動する。またこのとき、電動部81の移動量に応じたパルス信号がエンコーダ56によって生成され、そのパルス信号は、I/O部54を介してCPU51に読み取られる。これにより、CPU51は、ランプ83の位置に関する情報を取得することが可能となる。
【0051】
光量センサ60は、ランプ83から出射される光の光量を測定できる位置に設けられ、その光量を検出する。CPU51は、I/O部54を介して光量センサ60を制御し、光量センサ60に測定された光量に関する情報を取得する。
【0052】
ランプ電源部59は、複数の種類のランプサイズのランプ83を駆動可能な電源である。すなわち、ランプ電源部59は、CPU51からI/O部54を介する制御に基づいて、ランプハウス58に装着されたランプ83に対して適切な駆動電力を提供する。
【0053】
入出力インタフェース61には、通信部62とドライブ63とが接続されている。通信部62は、SM装置31や素材サーバ32(図1)を含む他の装置との間で行う通信を制御する。この場合の通信の形態は特に限定されず、有線であってもよいし無線であってもよい。また、直接接続による通信であってもよいし、インターネットを含むネットワークを介在する通信であってもよい。
【0054】
また、通信部62は、このような通信制御により外部からプログラムを取得し、メモリ52に記憶させてもよい。
【0055】
ドライブ63は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等のリムーバブルメディア64が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータ等を取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じてメモリ52に転送され、記憶される。
【0056】
ところで、図4のランプハウス58の内部は、本実施の形態では、例えば図5に示されるような構成となる。
【0057】
図5の例に示すように、光源となるランプ83は、電動部81と固定されるようにランプハウス58に装着される。これにより、ランプ83は、電動部81が図中の矢印X81,Y81,Z81で示す3方向に移動すると、その移動した方向に対応する図中のXYZの3軸方向に移動する。
【0058】
ランプ83は、例えば本実施の形態では、図6に示される形状を有している。すなわち、本実施の形態では、プロジェクタ33にランプ83として搭載される可能性(交換可能性)があるランプは、何れも図6の形状と同一形状を有している。ただし、かかるランプは、多種多様のランプサイズを有し得る。また、ランプ83の形状は、図6の例は例示に過ぎず、ランプハウス58に装着可能な形状であれば特に限定されない。すなわち、本実施の形態のランプハウス58がたまたま、図6の形状のランプ83を搭載可能な構造を有しているのである。
【0059】
図5に戻り、楕円反射鏡82は、例えば、ランプ83からの光の進行方向を変える楕円面の反射面を有する楕円反射鏡または楕円鏡であって、図中に示すような楕円Aの長軸上の焦点B(第一焦点)にあるランプ83(の輝点)からの光を、その長軸上の焦点C(第二焦点)に集光させる。
【0060】
図7は、図5に示している楕円Aの詳細を説明する図である。つまり、図7は、光源であるランプ83の位置に対する、楕円反射鏡82による光の反射の様子を示す図である。
【0061】
図7の例においては、図中の直線で示すように、焦点Bから出た光は焦点Cに集光する。また、図中の間隔の短いほうの点線で示すように、点Eの位置から出た光は点Gに集光し、図中間隔の長いほうの直線で示すように、点Fの位置から出た光は点Hに集光する。
【0062】
すなわち、光源(ランプ83の輝点)の位置が焦点Bにあるとき、焦点Cで集光すると最大輝度が得られるように(最大輝度に近づけるように)設計されていたとすると、ランプ83の輝点の位置を図中のZ方向に、「+」または「−」に移動させることで、集光位置が変わり、最大輝度が得られる焦点Cからずれるので、光の利用効率が低下することになる。具体的には、例えば、焦点Bにあるランプ83の輝点の位置を図中のZ方向に「+」に移動させて、ランプ83の輝点の位置を点Eとしたとき、点Eから出た光は点Gに集光するので、ランプ83から出射された光の利用効率は低下する。同様にしてまた、焦点Bにあるランプ83の輝点の位置を、点Fまで、「−」のZ方向に移動させたとき、点Fから出た光は点Hに集光するので、同様にランプ83から出射された光の利用効率は低下する。
【0063】
つまり、意図的に集光位置を、最大輝度の得られる位置からずらすことで、同様にランプ83から出射された光の利用効率を下げることが可能となる。これにより、例えば、上述した、図3において、50%乃至100%の調整範囲から外れた範囲であっても、ランプ83の位置をずらして、光の利用効率を意図的に低下させることで、その範囲外の電力に応じた明るさの光を出射することが可能となる。具体的には、図3の例では、ランプAにおける2.1kW以下、ランプBにおける1.5kW以下、ランプCにおける1.0kW以下の電力に応じた明るさの光を出射することが可能となる。
【0064】
なお、上述した例では、光源であるランプ83(の輝点)の位置をZ方向に移動させる例について説明したが、もちろん、ランプ83(の輝点)の位置をX方向やY方向、XZ方向、XY方向等に移動させても明るさを変えることは可能である。要は、光源からの集光位置を、最大輝度が得られる焦点Cからずらすことができればよいのであって、その光源の移動方向は任意である。
【0065】
図8は、ランプ83を、XYZ軸の3方向のそれぞれに移動させたときの、ランプ83のランプ移動量と相対照度の関係を示すグラフである。
【0066】
図8においては、横軸はランプ83の移動量を示し、縦軸はXYZの各軸方向に移動させたときの相対的な照度を示す。つまり、XYZの各軸方向のランプ移動量が同じである場合には相対照度の値の高い軸ほど、光の利用効率が高いことを示している。また、図8では、ランプ83(の輝点)をXYZ軸の3方向に移動させたときの相対照度の値を示すグラフにおいて、X方向に移動させたときのグラフを曲線x、Y方向に移動させたときのグラフを曲線y、Z方向に移動させたときのグラフを曲線zと表現している。
【0067】
図8においては、中心の縦線の位置は、ランプ移動量が0、すなわち、最大輝度が得られる焦点Cに光を集光できる焦点Bである。従って、そのとき、ランプ83から出射された光の利用効率は最も高くなるので、相対照度は、曲線x乃至zのいずれにおいても最大値となる。
【0068】
図8において、ランプ移動量が増加すると(ランプ83の位置が焦点Bから離れると)、相対照度は徐々に低下するが、曲線xは、曲線zよりもなだらかな曲線となり、曲線yは、曲線xよりもなだらかな曲線となる。
【0069】
すなわち、同じランプ移動量で考えたとき、曲線y,曲線x,曲線zの順に相対照度が高くなるので、ランプ83は、例えば、Z方向に移動することで、X方向とY方向に同じランプ移動量だけ移動したときと比べて、より照度を低下させることが可能となる。つまり、ランプ83は、XYZ軸の3方向のうちのZ方向に移動することで、移動量に対して最も効率よく光の利用効率を低下させることになる。
【0070】
以上のように、本実施の形態では、光学系に絞り機構等の追加部品を設けずに、単に、ランプ83をXYZ軸の3方向のいずれかに移動させるだけで、光量の調整範囲を広げることが可能となる。これにより、新たに光学絞り機構を取り付けるときの追加部品等による物理的な制約から解放されるとともに、コストの上昇を最低限に抑えることができる。また、ランプ83をXYZ軸の3方向に動かす機能を有する既存の機構を利用することが可能なので、極めて簡単にこれらの機能を実現することができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、ランプ83をXYZ軸の3方向のうちのいずれかの方向に、どれだけ移動させるかは、光の利用効率をどれだけ低下させるかによって決定される。
【0072】
ところで、ランプ83から出射される光は、図9に示すように、楕円反射鏡82により反射され、その光を均一にする照明系ユニット92を介して、素材サーバ32からの上映する映画(素材)のデジタルデータに基づいた光の変調を行う液晶ライトバルブ93に出射される。そして、液晶ライトバルブ93に光を出射することにより得られた映像光は、投影レンズ94を介してスクリーン34に投射される。これにより、プロジェクタ33によって、素材サーバ32から提供されたデジタルデータに対応する映像が、スクリーン34に投射される。これにより、映画がスクリーン34において上映される。
【0073】
図9では、ランプ位置調整機構91は、例えば、図4のCPU51、I/O部54、モータドライブ55、エンコーダ56、およびモータ57等から構成され、ランプ83の位置を調整する。具体的には、ランプ位置調整機構91は、光源であるランプ83の輝点を、楕円反射鏡82の第一焦点(例えば図5の焦点B)からずらして、液晶ライトバルブ93の有効光量を減らすように(例えば図5の焦点Cからずれるように)、ランプ83の位置を図中XYZ軸の3方向に移動させる。言い換えれば、ランプ位置調整機構91は、ランプ83の輝点を楕円反射鏡82の光軸上か、または楕円反射鏡82の光軸上とは異なる方向に移動させるとも言える。
【0074】
液晶ライトバルブ93は、ライトバルブ方式のプロジェクタに用いられる固定画素の液晶ライトバルブ等の映像表示デバイスである。この映像表示デバイスとしては、液晶ライトバルブ等の反射型液晶パネルの他に、例えば、反射型のミラーデバイス(例えばDMD(Digital Mirror Device))等、ランプ83から出射された光によって、素材サーバ32からのデジタルデータに対応する映像を表示可能なデバイスを用いることが可能である。
【0075】
液晶ライトバルブ93は、素材サーバ32からのデジタルデータに基づいた変調によって、楕円反射鏡82により反射されたランプ83からの光(反射光)を映像光に変換する。
【0076】
投影レンズ94は、液晶ライトバルブ93からの映像光をスクリーン34に投影するレンズであり、スクリーン34と液晶ライトバルブ93との間に設けられる。液晶ライトバルブ93からの映像光は、投影レンズ94によって、スクリーン34に拡大出射される。
【0077】
なお、投影レンズ94は、例えば1枚以上のズーム機能を有するレンズ群として構成される。その場合、投影レンズ94の位置を変えることで、映像光に対応する映像のスクリーン34上での大きさを変えることができるが、このズームを変えることで光量が変化し、スクリーン34上の映像の輝度が明るくなり過ぎることがある。この映像の輝度が明るくなりすぎるのを、ランプ83の位置を調整して光の利用効率を低下させることで防止できる。
【0078】
また、本実施の形態では、楕円面の反射面を有する楕円反射鏡82について説明するが、この楕円反射鏡82の代わりに、放物面の反射面を有する放物面鏡を用いることもできる。この場合、放物面鏡では反射光が平行光となる為、Z方向への移動では輝度変化を得ることができないので、X方向またはY方向に移動することで、楕円反射鏡82の場合と同様の効果を得ることが可能となる。
【0079】
さらにまた、図示はしていないが、楕円反射鏡82と向き合う位置に、球面鏡を設けるようにしてもよい。つまり、この球面鏡を設けて、溢れた光を集めることにより、ランプ83の光の出射の効率を上げることができる。
【0080】
次に、図10のフローチャートを参照して、かかる構成のプロジェクタ33が実行する処理のうちの、キャリブレーションモード実施時に行われる、低入力時のフリッカ現象が発生した際に実行する処理(以下、フリッカ検出処理と称する)の一例について説明する。
【0081】
なお、プロジェクタ33においては、ランプ入力は通常50%乃至100%に設定されているが、CPU51は、例えば、キャリブレーションモードが実施された場合、図10のフリッカ検出処理を実行する。
【0082】
ステップS11において、CPU51は、I/O部54を介してランプ電源59を制御して、例えば50%に電力下限値を設定する。例えば、この50%等の設定された電力下限値の情報はメモリ52に記憶される。これにより、ランプハウス58に装着されたランプ83は、ランプ電源部59から供給される50%の駆動電力で点灯する。
【0083】
CPU51は、ステップS12において、設定されている電力下限値が100%未満となるか否かを判定し、電力下限値が100%であると判定した場合、ステップS13において、ランプ交換のアラーム(警報)を表示部72に表示させて、フリッカ検出処理は終了する。
【0084】
すなわち、電力下限値が100%である判定された場合、これ以上電力下限値を上げることができず、さらに、フリッカ現象を抑えることができないので、ランプ83の交換を促すアラームを表示部72に表示して、ユーザにランプ83を交換させる。
【0085】
このように、フリッカ現象はランプ交換の重要な目安であり、電力下限値が100%に設定されているときに、フリッカ現象が検出されると、ランプ交換を促すアラームを出力するので、ユーザに対して適切なランプ交換時期を通知し、過度の使用によるランプの破裂故障を未然に防ぐことが可能となる。
【0086】
一方、ステップS12において、電力下限値が100%未満であると判定された場合、ステップS14において、CPU51は、例えばカウンタNに1を設定し、Nを初期化する。
【0087】
CPU51は、ステップS15において、I/O部54を介して光量センサ60により測定された光量センサ値を読み込み、ステップS16において、読み込んだ光量センサ値に対応するデータを積算する。
【0088】
ステップS17において、CPU51は、Nの値が10回等の所定の回数を上回るか否かを判定する。CPU51は、ステップS17において、Nの値が10を下回っていると判定された場合、ステップS18において、Nの値を1インクリメントし、処理はステップS15に戻る。
【0089】
そして、処理は、ステップS17において、Nの値が10を上回るまで、ステップS15乃至ステップS18の処理が繰り返される。すなわち、Nの値が所定の回数である10を上回るまで、ステップS15乃至ステップS18の処理が一定間隔で10回繰り返されるので、ステップS16の処理によって、積算値は10個求められる。
【0090】
積算値が10個等、所定の個数求められると、ステップS19において、CPU51は、それらの積算値に基づいて、変動値を計算する。この変動値は、例えば、式(1)により計算される。
【0091】
変動値 = (積算値の最大値−積算値の最小値) / 積算値の平均値・・・(1)
【0092】
すなわち、式(1)においては、例えば、10個の積算値のなかから、最大と最小の積算値が選択されるとともに、それら10個の積算値の平均値が算出され、さらに、選択された最大と最小の積算値の差分を、算出した平均値で割ることで、変動値が算出される。
【0093】
ステップS20において、CPU51は、計算された変動値が、あらかじめ定められた規格値を下回るか否かを判定する。
【0094】
ここで、規格値とは、例えば、プロジェクタ33を製造するメーカ等によって、あらかじめ定められる値である。すなわち、その規格によれば、フリッカが発生していると判定するための基準(閾値)が定められており、計算された変動値がその基準を上回る場合、フリッカ現象が発生しているということになる。
【0095】
ステップS20において、変動値が規格値を上回ると判定された場合、CPU51は、ステップS21において、電力下限値を10%増加させ、ステップS22において、例えば1分等の所定の時間が経過したか判定し、所定の時間が経過するまで判定の処理が繰り返される。
【0096】
すなわち、変動値が規格値を上回ると判定された場合、フリッカ現象が起こっており、上述したように、フリッカ現象は、ランプ83のパワーを上げることで止まる性質があるので、電力下限値を、50%から60%にして、ランプ83のパワーを10%上げる。
【0097】
ステップS22において、1分等の所定の時間が経過したと判定された場合、ステップS12に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0098】
そして、処理は、ステップS20において、変動値が規格値を下回ると判定されるまで、ステップS12乃至S22の処理が繰り返される。すなわち、60%,70%,80%,90%のように電力下限値を10%ずつ増加しながら点灯するランプ83から出射された光の光量の変動値が順次計算され、その計算された変動値と規格値との比較が順次行われる。
【0099】
ステップS20において、変動値が規格値を下回ると判定された場合、CPU51は、その変動値が規格値を下回ったときの電力下限値、例えば、90%に電力下限値を設定し、フリッカ検出処理は終了する。
【0100】
以上のように、低入力駆動時に発生するフリッカ現象を検出したとき、電力下限値(ランプ入力値)をフリッカ現象が消えるまでパワーアップすることによって、低入力駆動時に発生するフリッカを抑制し、低入力駆動時に十分なランプ寿命を確保することができる。すなわち、フリッカ現象問題を解決できるようになる。
【0101】
また、低入力駆動時のフリッカ寿命を延ばすことは、実質的にランプ寿命の延命になるという効果も有する。さらにまた、フリッカはランプ交換の重要な目安となり、100%入力でフリッカ検出時にランプ交換を促すアラーム(警告)を出すことは、過度の使い過ぎによるランプ破裂防止の観点で重要である。
【0102】
次に、図11のフローチャートを参照して、かかる構成のプロジェクタ33が実行する処理のうちの、ランプ83から出射される光の光量の調整範囲を広げる際に行われる、ランプ83を移動させる処理(以下、ランプ位置調整処理)の一例について説明する。
【0103】
上述したように、上映場22のスクリーン34に投射される映像のサイズが、スコープサイズからビスタサイズに切り替えられたとき、2種類の画角における、スクリーン34に投影される映像の輝度を一定に保つように規定されており、それを実現するためにはランプ83の光量ゲインを1.6に確保する必要がある。CPU51は、例えば、図10のフリッカ検出処理終了後、ビスタサイズに切り替えられたスクリーン34に投影される映像の輝度を所望の値に保つ必要がある場合、図11のランプ位置調整処理を実行する。
【0104】
ステップS31において、CPU51は、I/O部54を介して光量センサ60により測定された光量センサ値を読み込み、ランプ83から出射される光が明るすぎるか否かを判定する。具体的には、CPU51は、例えば、ビスタサイズに切り替えられたスクリーン34に出射される光の光量を検出する光量センサ60からの光量センサ値が、ビスタサイズに必要とされる値を上回っているか否かを判定することで、ランプ83からの光が明るすぎるか否かを判定する。
【0105】
ステップS31において、ランプ83から出射される光が明るすぎない、すなわち、所望の明るさであると判定された場合、ランプ83の位置を調整する必要はないので、ステップS32乃至35の処理をスキップし、ランプ位置調整処理は終了する。
【0106】
一方、ステップS31において、ランプ83から出射される光が明るすぎると判定された場合、ステップS32において、CPU51は、ランプ83の位置が移動可能となる位置であるリミットの範囲内であるか否かを判定する。ステップS32において、ランプ83の位置がリミットの範囲外であると判定された場合、ランプ83をこれ以上移動させることができないので、ランプ位置調整処理は終了する。
【0107】
一方、ステップS32において、ランプ83の位置がリミットの範囲内であると判定された場合、ランプ83を移動させることが可能であるので、ステップS33において、CPU51は、I/O部54を介して、光量センサ60から光量センサ値、エンコーダ56から位置データを取得する。
【0108】
ステップS34において、CPU51は、取得した光量センサ値および位置データに基づいて、I/O部54およびモータドライブ55を介して、モータ57に電動部81を駆動させることで、ランプ83をXYZ軸の3方向のいずれかに移動させる。
【0109】
なお、このランプ83の位置をシフトして調整する方法であるが、例えば、シフトさせる位置の最適値はエンコーダ56に認識され、画角が切り替えられる度に、その認識された最適値に基づいてランプ83の位置を切り替えることにより、スクリーン34に投影される映像の輝度を一定に保つことができる。
【0110】
また、本実施の形態では、電動部81は、入力100%のままで、ランプ83の位置移動だけで、ランプゲイン1.6を実現できる可動量を有している。
【0111】
ステップS35において、CPU51は、ランプ83の位置移動後の光量センサ60からの光量センサ値に基づいて、ランプ83から出射される光の光量が、所望の輝度以下となるかを判定する。ステップS35において、例えば、ビスタサイズに必要とされる値をまだ上回っており、所望の輝度以上であると判定された場合、ステップS32に戻り、ステップS35において、所望の輝度以下であると判定されるまで、上述した、ステップS32乃至35の処理が繰り返される。
【0112】
一方、ステップS35において、所望の輝度以下であると判定された場合、例えば、ビスタサイズに必要とされる値を下回り、スクリーン34に投影される映像の輝度を一定に保つことができるので、ランプ位置調整処理は終了する。
【0113】
以上のように、光学系に絞り機構等の追加部品を設けずに、ランプ83をXYZ軸の3方向に移動させて、ランプ83の位置を調整するだけで、光量の調整範囲を広げることが可能となる。換言すれば、ランプ83をXYZ軸の3方向に移動させて、液晶ライトバルブ93の有効光量を積極的に減らすことで、液晶ライトバルブ93の階調を損ねることなく、ピーク輝度の調整範囲を広げることができる。すなわち、ランプ調整範囲問題を解決できるようになる。
【0114】
また、例えば、映画の画角(アスペクト比)が変えられた場合、スクリーン34上の映像の輝度を一定に保つために、ランプから出射される光の光量を調整する必要がでてくるが、図10のフリッカ検出処理の後に、図11のランプ位置調整処理を行って、ランプ83の位置を暗くなる方向にずらすことで、簡単に、映像の輝度を常に一定に確保することができる。これにより、フリッカ現象問題とランプ調整範囲問題とを同時に解決できるようになる。例えば、図10のフリッカ検出処理による、ランプ83の光出力の調整(100%乃至50%程度)と合わせると、最大輝度の100%乃至30%程度の輝度までを、調整範囲とすることが可能となる。
【0115】
さらに、上述したように、ランプ83は、多種多様のランプサイズからなるが、光量の調整範囲を広げることができるので、その種類を減らすことができる。
【0116】
なお、本実施の形態では、ランプ83の位置を調整することで、光量の調整範囲を広げることができると説明したが、ランプ83を移動させる代わりに、楕円反射鏡82や照明系ユニット92を移動させたり、回転させても同様の効果を得ることができる。
【0117】
また、図4のプロジェクタ33においては、入力部71と表示部72からなる入出力部53を設けずに、外部のパーソナルコンピュータ等によってデータを入力させたり、データを表示させたりすることも可能である。
【0118】
さらに、本実施の形態では、DCI Specに準じて説明したが、他の画角であっても、画角を切り替える上映が必要な場合に有効である。
【0119】
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータ等に、記録媒体からインストールされる。
【0120】
この記録媒体は、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk))を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、若しくは半導体メモリ等よりなる図4のリムーバブルメディア64により構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROMや記録部等で構成される。
【0121】
また、上述した一連の処理を実行させるプログラムは、必要に応じてルータ、モデム等のインタフェースを介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を介してコンピュータにインストールされるようにしてもよい。
【0122】
なお、本明細書において、記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0123】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0124】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】デジタルシネマの分野に適用された場合の情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】ビスタサイズとスコープサイズについて説明する図である。
【図3】ランプの光量の調整範囲について説明する図である。
【図4】本発明が適用されるプロジェクタの一実施の形態を示すブロック図である。
【図5】ランプを装着したランプハウスの内部を示す図である。
【図6】ランプの外観を示す図である。
【図7】光源の位置に対する楕円反射鏡による光の反射の様子を示す図である。
【図8】各軸におけるランプ移動量と相対照度との関係を示すグラフである。
【図9】ランプハウスの詳細な構成を示すブロック図である。
【図10】フリッカ検出処理について説明するフローチャートである。
【図11】ランプ位置調整処理について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0126】
33 プロジェクタ, 51 CPU, 52 メモリ, 53 入出力部, 54 I/O部, 55 モータドライブ, 56 エンコーダ, 57 モータ, 58 ランプハウス, 59 ランプ電源部, 60 光量センサ, 61 入出力インタフェース, 62 通信部, 63 ドライブ, 64 リムーバブルメディア, 71 入力部, 72 表示部, 81 電動部, 82 楕円反射鏡, 83 ランプ, 91 ランプ位置調整機構, 92 照明系ユニット, 93 液晶ライトバルブ, 94 投影レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像をスクリーンに投射するプロジェクタにおいて、
光を出射するランプと、
前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、
前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、
前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズと、
前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する位置調整機構と
を備えるプロジェクタ。
【請求項2】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上で移動させる
請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上とは異なる方向に移動させる
請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記位置調整機構は、前記スクリーンに表示される前記映像のアスペクト比が変わったとき、前記ランプの位置を調整する
請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
映像をスクリーンに投射するプロジェクタであって、
光を出射するランプと、
前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、
前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、
前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズと、
前記ランプの位置を調整する位置調整機構と
を備えるプロジェクタの制御方法において、
前記位置調整機構が、
前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する
制御方法。
【請求項1】
映像をスクリーンに投射するプロジェクタにおいて、
光を出射するランプと、
前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、
前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、
前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズと、
前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する位置調整機構と
を備えるプロジェクタ。
【請求項2】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上で移動させる
請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記位置調整機構は、前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の光軸上とは異なる方向に移動させる
請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記位置調整機構は、前記スクリーンに表示される前記映像のアスペクト比が変わったとき、前記ランプの位置を調整する
請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
映像をスクリーンに投射するプロジェクタであって、
光を出射するランプと、
前記ランプからの光を反射して集光させる楕円反射鏡と、
前記映像に対応する画像データに基づいた変調によって、前記楕円反射鏡により集光された反射光を映像光に変換する映像表示デバイスと、
前記スクリーンと前記映像表示デバイスとの間に配置され、前記映像表示デバイスからの前記映像光を前記スクリーンに投影する投影レンズと、
前記ランプの位置を調整する位置調整機構と
を備えるプロジェクタの制御方法において、
前記位置調整機構が、
前記ランプの輝点を前記楕円反射鏡の第一焦点からずらして、前記映像表示デバイスの有効光量が減るように、前記ランプの位置を調整する
制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−224870(P2008−224870A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60441(P2007−60441)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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