説明

プロジェクター、及びプロジェクターの制御方法

【課題】台形歪補正操作を知らないユーザーが誤って台形歪補正操作を行おうとした場合に、実行前に確認させることができるプロジェクターを提供する。
【解決手段】画像投写手段10と、台形歪補正手段15と、入力操作手段23とを備えたプロジェクター1において、台形歪補正手段15による台形歪補正が、所定時間行われなかった場合、次に入力操作手段23により、台形歪補正操作を受け付けたときに、台形歪補正を行うか否かの確認画面を画像投写手段10により投写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、及びプロジェクターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像をスクリーン等の投写面に投写するプロジェクターにおいて、投写面に対してプロジェクターを傾けた状態で画像を投写した場合には、投写面に表示される画像が台形状に歪む現象(台形歪)が生じる。このため、プロジェクターの傾斜(設置角度)を検出して、この傾斜に起因する台形歪を自動的に補正するプロジェクターが提案されている。特許文献1には、設置角度に変化があった場合に、設置角度に応じて台形歪補正を行うプロジェクターが開示されている。このようなプロジェクターによれば、プロジェクターの操作に不慣れなユーザーであっても、容易に台形歪補正がなされた画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−283963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなプロジェクターの場合、角度検出部の検出結果の変動による画面のちらつきを防止するために、最後に台形歪補正が行われた後、一定以上の角度変化が生じなければ、次の台形歪補正は行われないようになっている。このため、台形歪補正の微調整が必要な場合、カーソルキーなどの手動操作によって調整を行う方法が用いられている。しかしながら、操作に不慣れなユーザーにとっては、手動操作による台形歪補正(以下、手動台形歪補正という)の微調整は複雑で煩雑な操作となっていた。また、誤って手動台形歪補正の操作キーを押してしまった場合、その後の対処方法がわからなくなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクターは、光源から射出された光を画像情報に応じて変調して投写面に投写する画像投写手段を備えたプロジェクターであって、前記投写面に投写された投写画像の台形歪を補正するための台形歪補正手段と、前記台形歪を補正するための補正操作キーを有する入力操作手段と、当該プロジェクターの動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記台形歪補正手段による台形歪補正が、所定時間行われなかった場合、次に前記入力操作手段により、台形歪補正操作を受け付けたときに、台形歪補正を行うか否かの確認画面を前記画像投写手段により投写することを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、台形歪補正が所定時間行われなかった場合、次に台形歪補正操作を受け付けた場合に台形歪補正を行うか否かの確認画面を投写する。これにより、台形歪補正操作に不慣れなユーザーでも、簡易に台形歪補正操作の要否を判断することができ、誤って台形歪補正が行われることが防止できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載のプロジェクターにおいて、前記台形歪補正を行うか否かの確認画面に対し、前記台形歪補正を実行する操作を検出した場合に、前記台形歪補正を実行することを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、台形歪補正が所定時間行われなかった場合において、台形歪補正操作を検出した場合、台形歪補正を実行するか否かを使用者に選択させる。これにより、台形歪補正操作に不慣れなユーザー、または台形歪補正を理解しているユーザーでも、台形歪補正の要否を簡易に選択させることが可能となる。これにより、台形歪補正操作に不慣れなユーザーでも、簡易に台形歪補正操作の要否を判断することができ、誤って台形歪補正が行われることが防止できる。
【0010】
[適用例3]本適用例に係るプロジェクターの制御方法は、光源から射出された光を画像情報に応じて変調して投写面に投写する画像投写手段と、前記投写面に投写された投写画像の台形歪を補正するための補正操作キーを有する入力操作手段と、を備えたプロジェクターの制御方法であって、前記補正操作キーによる台形歪補正操作を検出する検出ステップと、前記検出ステップにより検出された台形歪補正操作に基づき、台形歪補正を実行する、台形歪補正ステップと、前記台形歪補正ステップによる台形歪補正が、所定時間行われなかった場合、次に前記台形歪補正操作を受け付けたときに、台形歪補正を行うか否かの確認画面を前記画像投写手段により投写する、台形歪補正確認ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、台形歪補正が所定時間行われなかった場合、次に台形歪補正操作を受け付けた場合に台形歪補正を行うか否かの確認画面を投写する。これにより、台形歪補正操作に不慣れなユーザーでも、簡易に台形歪補正操作の要否を判断することができ、誤って台形歪補正が行われることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プロジェクターの回路構成を示すブロック図。
【図2】液晶ライトバルブを示す正面図。
【図3】プロジェクターの設置角度検出の原理を示す説明図。
【図4】台形歪を説明するための説明図であり、画像データに対して台形歪補正を施していない状態を示す図であり、(a)は、液晶ライトバルブを光入射面側から見た正面図、(b)は、プロジェクターが水平に投写を行う様子を示す側面図、(c)は、スクリーンに表示される投写画像を示す正面図、(d)は、プロジェクターを傾けた状態で投写する様子を示す側面図、(e)は、スクリーンに表示される投写画像を示す正面図。
【図5】台形歪補正を説明するための説明図であり、(a)は、液晶ライトバルブを光入射面側から見た正面図、(b)は、傾斜投写を行う場合にスクリーンに表示される投写画像を示す正面図。
【図6】台形歪補正を実行するか否かを確認するために投写される確認画面。
【図7】プロジェクターの動作を示すフローチャートであり、(a)は電源オン時の動作、(b)はタイマーが所定時間を経過したときの動作、(c)は角度検出手段が所定値以上の角度変化を検出したときの動作、(d)は入力操作手段が台形歪補正操作を受けつけたときの動作、をそれぞれ示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態における特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のプロジェクター1の回路構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、画像投写手段10、制御手段20、記憶手段21、光源制御手段25、入力操作手段23、画像信号入力手段18、画像信号処理手段17、OSD処理手段16、台形歪補正手段15、角度検出手段19、電源端子30、電源部31等で構成されており、これらは図示しない筐体内部に収容されている。
【0015】
画像投写手段10は、光源11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12R、12G、12B、投写光学系としての投写レンズ13、液晶駆動手段14等を含んでいる。画像投写手段10は、光源11から射出された光を、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bで変調し、投写レンズ13から投写することによってスクリーンSC等に画像を表示する。
【0016】
光源11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、光源ランプ11aが放射した光を液晶ライトバルブ12R、12G、12B側に反射するリフレクター11bとを含んで構成されている。光源11から射出された光は、図示しないインテグレーター光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、図示しない色分離光学系によって光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ12R、12G、12Bに入射する。
【0017】
図2は、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bを示す正面図である。液晶ライトバルブ12、12G、12Bは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。図2に示すように、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bの透明基板は、矩形の領域(画素領域12a)内に、液晶に対して微小領域(画素12p)毎に駆動電圧を印加可能な透明電極(画素電極)が、マトリックス状に形成されている。
【0018】
液晶駆動手段14が、入力される画像情報に応じた駆動電圧を各画素12pに印加すると、各画素12pは、画像情報に応じた光透過率に設定される。このため、光源11から射出された光は、この液晶ライトバルブ12R、12G、12Bを透過することによって変調され、画像情報に応じた画像光が色光毎に形成される。
形成された各色の画像光は、図示しない色合成光学系によって画素12p毎に合成されてカラーの画像光となった後、投写レンズ13によってスクリーンSC等に拡大投写される。
【0019】
本実施形態では、光源として光源ランプ11aを用いて投写するプロジェクター1を例示したが、本発明は、光源としてLED(Light Emitting Diode)光源やレーザー光源などを用いて投写するプロジェクターにも適用することができる。
【0020】
なお、本実施形態では、画像投写手段10は、光源11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いた透過型液晶方式の投写光学系を例示したが、反射型液晶表示方式やマイクロミラーデバイス方式(ライトスイッチ表示方式)など、他の表示方式の光変調装置を採用しても良い。
【0021】
図1に戻り、制御手段20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)や、各種データ等の一時記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等を備え、記憶手段21に記憶されている制御プログラム(図示せず)に従って動作することによりプロジェクター1の動作を統括制御する。つまり、制御手段20は、記憶手段21とともにコンピューターとして機能する。また、制御手段20は時間を計時するタイマー20aを備える。
【0022】
記憶手段21は、フラッシュメモリーやFeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリー)等の書き換え可能な不揮発性のメモリーにより構成されている。記憶手段21には、プロジェクター1の動作を制御するための制御プログラムや、プロジェクター1の動作条件等を規定する各種設定データ等が記憶されている。本実施形態では記憶手段21は、台形歪補正確認フラグ21aを保存する。台形歪補正確認フラグ21aがセットされている状態において、台形歪補正操作を受け付けた場合、台形歪補正を実行するか否かの確認画面を投写する。
【0023】
入力操作手段23は、ユーザーがプロジェクター1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。入力操作手段23が備える操作キーとしては、電源のオン・オフを交互に切り替えるための電源キーや、画像信号入力手段18に入力される複数の画像入力端子を切り替えるための入力切替キー、各種設定を行うための設定メニューを重畳表示させるメニューキー、メニューからユーザーが設定項目を選択するカーソルキー、各種設定を決定するための決定キー、設定中の画面を戻すためのエスケープキー、台形歪を補正するための補正操作キーとしての台形歪補正キー等がある。
【0024】
ユーザーが入力操作手段23の各種操作キーを操作すると、入力操作手段23は、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御手段20に出力する。なお、入力操作手段23は、リモートコントローラー(リモコン)信号受信手段(図示せず)と遠隔操作が可能なリモートコントローラー(図示せず)を有した構成としてもよい。この場合、リモートコントローラーは、使用者の操作内容に応じた赤外線等の操作信号を発し、リモコン信号受信手段がこれを受信して制御情報として制御手段20に伝達する。
【0025】
角度検出手段19は、加速度センサー19a等を有して構成され、制御手段20の指示に基づいて、プロジェクター1の設置角度を検出する。そして、検出した設置角度を制御手段20に通知する。
【0026】
ここで、プロジェクター1の設置角度を検出する方法について説明する。図3は、プロジェクター1の設置角度検出の原理を示す説明図である。本図は、プロジェクター1とその設置面H、およびスクリーンSCを投写方向の右側側面から表した図である。設置面Hは水平であるものとする。本実施形態ではプロジェクター1の設置角度の検出に、加速度センサー19aを用いる。加速度センサー19aは、プロジェクター1内部に実装されており、図3の一点鎖線上の図中左側方向(プロジェクター1後方)に働く加速度を検出する。
【0027】
図3に示すように、プロジェクター1を設置角度θ傾斜して設置すると、図示するように、一点鎖線上の加速度成分は、g・sinθとなる。加速度センサー19aは、この加速度成分に応じた電圧を出力する。これにより、角度検出手段19は、加速度センサー19aから出力された電圧値に基づいてプロジェクター1の設置角度を検出することができる。
なお、本実施形態では、加速度センサー19aを用いるものとしたが、プロジェクター1の設置角度を検出できる機構であれば、加速度センサー19aに限定するものではない。
【0028】
図1に戻り、光源制御手段25は、制御手段20の指示に基づいて、光源11に対する電力の供給と停止とを制御し、光源11の点灯、及び消灯を切り替える。
【0029】
画像信号入力手段18は、上述したように複数の画像入力端子を備えており、各画像入力端子より、ビデオ再生装置やパーソナルコンピューター等、外部機器から、図示しないケーブルを介して画像信号(画像情報ともいう)が入力される。
【0030】
画像信号処理手段17は、画像信号入力手段18から入力される画像情報を、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bの各画素の階調を表す画像情報に変換する。ここで、変換された画像情報は、R,G,Bの色光別になっており、各液晶ライトバルブ12R、12G、12Bのすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素を透過し射出する光の強弱(階調)が規定される。
【0031】
OSD処理手段16は、制御手段20の指示に基づいて、投写画像上に、メニュー画像やメッセージ画像等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)画像を重畳して表示するための処理を行う。OSD処理手段16は、図示しないOSDメモリーを備えており、OSD画像を形成するための図形やフォント等を表すOSD画像情報を記憶している。
【0032】
制御手段20が、OSD画像の重畳表示を指示すると、OSD処理手段16は、必要なOSD画像情報をOSDメモリーから読み出し、投写画像上の所定の位置にOSD画像が重畳されるように、画像信号処理手段17から入力される画像情報にこのOSD画像情報を合成する。OSD画像情報が合成された画像情報は、台形歪補正手段15に出力される。
なお、制御手段20からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理手段16は、画像信号処理手段17から入力される画像情報を、そのまま台形歪補正手段15に出力する。
【0033】
台形歪補正手段15は、スクリーンSCに対してプロジェクター1を傾けた状態で画像を投写する場合に、投写画像が傾斜方向に拡大してしまう歪(台形歪)を抑制するために、入力される画像情報としての画像データの補正(台形歪補正)を行う。入力操作手段23から入力される台形歪補正指示の情報や、角度検出手段19が検出したプロジェクター1の設置角度の情報に基づいて、制御手段20は、台形歪補正手段15に対して台形歪補正の実施を指示し、台形歪補正手段15は台形歪補正を実施する。
【0034】
台形歪補正とは、画像データから画素値の間引きを行って、傾斜方向に向かうほど投写画像を縮小させるものであり、台形歪補正手段15は、補正後の画像データを液晶駆動手段14に出力する。なお、台形歪補正を行わない場合には、OSD処理手段16から出力される画像データが、そのまま液晶駆動手段14に出力される。液晶駆動手段14が、入力される画像データ、即ち画素12p毎の画素値に従って液晶ライトバルブ12R、12G、12Bを駆動すると、画像データに応じた画像がスクリーンSCに投写される。
【0035】
次に、台形歪補正手段15による台形歪補正について、図4、および図5を用いて説明する。
図4は、台形歪を説明するための説明図であり、画像データに対して台形歪補正を施していない状態を示す図である。ここで、図4(a)は、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bを光入射面側から見た正面図、図4(b)は、プロジェクター1が水平に投写を行う様子を示す側面図、図4(c)は、そのときにスクリーンSCに表示される投写画像を示す正面図である。また、図4(d)は、プロジェクター1を傾けた状態で投写する様子を示す側面図であり、図4(e)は、そのときにスクリーンSCに表示される投写画像を示す正面図である。
【0036】
なお、図4において、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bに向かって左右方向(水平方向の左右)を±x方向、上下方向(垂直方向の上下)を±y方向とし、スクリーンSCに向かって左右方向(水平方向の左右)を±X方向、上下方向(垂直方向の上下)を±Y方向とする。ここで、スクリーンSCのX方向及びY方向は、それぞれ液晶ライトバルブ12のx方向、及びy方向に対応するものであり、例えば、画素領域12aの右上(+x,+y側)の画素を透過した光は、スクリーンSCの右上(+X,+Y側)に投写される。
【0037】
また、図4、および図5において、画素領域12aや投写画像Ga内に示した格子状の模様は、画素領域12aに形成された画像と、スクリーンSCに投写された投写画像Gaとの対応を示すために補助的に付加した線であり、実際にこのような模様を表示することを意味するものではない。
【0038】
図4(a)に示すように、台形歪補正を行わない場合には、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bは、台形歪補正手段15から入力される画像データに基づいた画像(入力画像Gi)を画素領域12aの全体で形成する。つまり、この場合には、入力画像Giを形成するための領域(画像形成領域12i)は、画素領域12aと一致する。ここで、図4(b)、(c)に示すように、プロジェクター1が水平に設置され、スクリーンSCに対して傾きのない投写を行う場合には、スクリーンSCに表示される投写画像Ga(入力画像Gi)は、画素領域12aと同じ矩形状となる。
【0039】
一方、図4(d)、(e)に示すように、プロジェクター1をスクリーンSCに対して傾けて設置し、上方(+Y方向)に向けて投写を行う場合には、スクリーンSCに表示される投写画像Gaは、傾斜方向(+Y方向)に向かうほど、±X方向及び+Y方向に拡大されて台形状に歪む。本実施形態では、このように+Y方向(垂直方向)の傾斜投写を行った場合の台形歪補正について記載する。
【0040】
図5は、台形歪補正を説明するための説明図であり、図5(a)は、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bを光入射面側から見た正面図、図5(b)は、傾斜投写を行う場合にスクリーンSCに表示される投写画像を示す正面図である。
【0041】
台形歪補正手段15は、OSD処理手段16から入力される画像データから画素値の間引きを行い、補正を行わない場合に比べて、投写画像Gaが傾斜方向(+Y方向)に向かうほど縮小するような補正を施す。
【0042】
具体的には、図5(a)に示すように、液晶ライトバルブ12R、12G、12Bの画素領域12aに、補正を行わない投写画像Gaと反対向きの台形形状、即ち傾斜方向(+y方向)に向かうほど横幅が縮小する形状の画像形成領域12iを設定する。さらに、画像データから、あおり投写による拡大の程度が高い位置ほど多くの画素値を間引くことにより、この画像形成領域12i内に入力画像Giを形成する。
また、台形歪補正手段15は、画像形成領域12iの外側の領域(画像形成外領域)12nに含まれる各画素12pの光透過率が最小となるように画像データを補正する。
【0043】
この結果、図5(b)に示すように、傾斜投写による入力画像Giのゆがみが補正されるとともに、画像形成外領域12nに対応する投写画像Ga内の領域Gnには光がほとんど照射されないことから、入力画像Giは、歪みの無い形状(矩形状)でスクリーンSCに表示される。
なお、画素値の間引きに伴う階調情報の欠落を補うために、間引きの対象となる画素に近接する画素の画素値を、間引かれる画素値に応じて補正することが望ましい。
【0044】
図1に戻り、電源部31には、電源端子30を介してAC100V等の電力が外部から供給される。電源部31は、入力した電力(交流電力)を所定の直流電力に変換して、プロジェクター1の各部に電力を供給する。また、電源部31は、制御手段20の指示に基づいて、画像の投写に必要な電力(動作電力)を各部に供給する状態(電源オン状態)と、動作電力の供給を停止して、電源をオンにするための操作を待機する状態(スタンバイ状態)とを切り替えることができる。
【0045】
次に、本実施形態のプロジェクター1の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。
〔電源オン時の動作〕
図7(a)はプロジェクター1が電源オン操作を検出したときの動作を示すフローチャートである。
図7(a)に示すように、プロジェクター1が入力操作手段23の電源キー操作などによる電源オン操作を検出すると(ステップS101)、制御手段20は、光源制御手段25により、光源11を点灯させ(ステップS102)、ステップS103に遷移する。
【0046】
ステップS103において、制御手段20は、角度検出手段19が検出した設置角度に基づく台形歪補正(自動台形歪補正)を実行し、ステップS104に遷移する。
【0047】
ステップS104において、制御手段20は、台形歪補正確認フラグ21aをクリアし、ステップS105に遷移する。
【0048】
ステップS105において、制御手段20は、タイマー20aをリセットした上で計時をスタートし、ステップS106に遷移する。
【0049】
ステップS106において、プロジェクター1は画像投写を開始し、本フローを終了する。
【0050】
〔タイマーが所定時間を経過したときの動作〕
図7(b)はプロジェクター1が動作中に、タイマー20aによる計時が所定時間を経過したときの動作を示すフローチャートである。
図7(b)に示すように、プロジェクター1が動作中に、タイマー20aによる計時が所定時間である時間T1(例えば30秒)を経過すると(ステップS201)、制御手段20はタイマー20aによる計時を停止させ終了し、台形歪補正確認フラグ21aをセットする(ステップS202)。以上で本フローを終了する(ステップS203)。
【0051】
〔角度検出手段が所定値以上の角度変化を検出したときの動作〕
図7(c)はプロジェクター1が動作中に、角度検出手段19が所定値以上の角度変化を検出したときの動作を示すフローチャートである。
図7(c)に示すように、プロジェクター1が動作中に、角度検出手段19が所定値以上の角度変化を検出すると(ステップS301)、制御手段20は、角度検出手段19が検出した設置角度に基づく台形歪補正(自動台形歪補正)を実行し(ステップS302)、ステップS303に遷移する。
【0052】
ステップS303において、制御手段20は、台形歪補正確認フラグ21aをクリアし、ステップS304に遷移する。
【0053】
ステップS304において、制御手段20は、タイマー20aをリセットした上で計時をスタートし、ステップS305に遷移する。
【0054】
ステップS305において、本フローを終了する。
【0055】
〔入力操作手段が台形歪補正操作を受けつけたときの動作〕
図7(d)はプロジェクター1が動作中に、入力操作手段23が台形歪補正操作を受けつけたときの動作を示すフローチャートである。
図7(d)に示すように、プロジェクター1が動作中に、入力操作手段23の台形歪補正キー(補正操作キー)による台形歪補正操作を検出すると(ステップS401:検出ステップ)、ステップS402に遷移する。
【0056】
ステップS402において、制御手段20は、台形歪補正確認フラグ21aがセットされているか否かを調べる(ステップS402)。台形歪補正確認フラグ21aがセットされている場合(ステップS402:Y)、ステップS403に遷移する。
台形歪補正確認フラグ21aがセットされていない(クリアされている)場合(ステップS402:N)、ステップS406に遷移する。
【0057】
ステップS403において、制御手段20は、台形歪補正を実行する(行う)か否かの確認画面M1を画像投写手段10により、投写し(台形歪補正確認ステップ)、ステップS404に遷移する。このときの確認画面M1を図6に示す。
【0058】
ステップS404において、制御手段20は、ステップS403の確認画面M1に対する応答を調べる。台形歪補正を実行する確認操作を受け付けた場合(ステップS404:Y)、ステップS405に遷移する。台形歪補正を実行しない操作を受け付けた場合(ステップS404:N)、ステップS408に遷移する。
【0059】
ステップS405において制御手段20は、台形歪補正確認フラグ21aをクリアし、ステップS406に遷移する。
【0060】
ステップS406において、制御手段20は、ステップS401において検出された台形歪補正操作に基づく台形歪補正を実行し(台形歪補正ステップ)、ステップS407に遷移する。
【0061】
ステップS407において、制御手段20は、タイマー20aをリセットした上で計時をスタートし、ステップS408に遷移する。
【0062】
ステップS408において、本フローを終了する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば台形歪補正が所定時間(時間T1)行われなかった場合、次に入力操作手段23による台形歪補正操作を受け付けた場合に台形歪補正を行うか否かの確認画面M1を投写する。これにより、台形歪補正操作に不慣れなユーザーでも、簡易に台形歪補正操作の要否を判断することができ、誤って台形歪補正が行われることが防止できる。
また、台形歪補正が所定時間行われなかった場合において、台形歪補正操作を検出した場合、台形歪補正を実行するか否かを使用者に選択させる。これにより、台形歪補正操作に不慣れなユーザーまたは、台形歪補正を理解しているユーザーの如何に係らず、台形歪補正の要否を簡易に選択させることが可能となる。
【0064】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
(変形例1)
上述した実施形態ではプロジェクター1を垂直方向(+Y方向)に傾けて設置して台形歪補正を実行するものとしたが、他の方向(−Y方向、±X方向(水平方向))に傾けて設置して台形歪補正を行うものとしてもよい。−Y方向に傾ける場合については、上記実施形態と同様に、加速度センサー19aを使用して設置角度を検出して台形歪補正を実行することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…プロジェクター、10…画像投写手段、11…光源、12R,12G,12B…液晶ライトバルブ、13…投写レンズ、14…液晶駆動手段、15…台形歪補正手段、16…OSD処理手段、17…画像信号処理手段、18…画像信号入力手段、19…角度検出手段、19a…加速度センサー、20…制御手段、20a…タイマー、21…記憶手段、21a…台形歪補正確認フラグ、23…入力操作手段、25…光源制御手段、30…電源端子、31…電源部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された光を画像情報に応じて変調して投写面に投写する画像投写手段を備えたプロジェクターであって、
前記投写面に投写された投写画像の台形歪を補正するための台形歪補正手段と、
前記台形歪を補正するための補正操作キーを有する入力操作手段と、
当該プロジェクターの動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記台形歪補正手段による台形歪補正が、所定時間行われなかった場合、次に前記入力操作手段により、台形歪補正操作を受け付けたときに、台形歪補正を行うか否かの確認画面を前記画像投写手段により投写することを特徴とする、プロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記台形歪補正を行うか否かの確認画面に対し、前記台形歪補正を実行する操作を検出した場合に、前記台形歪補正を実行する、プロジェクター。
【請求項3】
光源から射出された光を画像情報に応じて変調して投写面に投写する画像投写手段と、
前記投写面に投写された投写画像の台形歪を補正するための補正操作キーを有する入力操作手段と、
を備えたプロジェクターの制御方法であって、
前記補正操作キーによる台形歪補正操作を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された前記台形歪補正操作に基づき、台形歪補正を実行する、台形歪補正ステップと、
前記台形歪補正ステップによる台形歪補正が、所定時間行われなかった場合、次に前記台形歪補正操作を受け付けたときに、台形歪補正を行うか否かの確認画面を前記画像投写手段により投写する、台形歪補正確認ステップと、
を有することを特徴とする、プロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−5251(P2013−5251A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134870(P2011−134870)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】