説明

プロジェクタ

【課題】筐体の厚みが薄くとも、脚部を長く突出させることができるプロジェクタを提供する。
【解決手段】脚部21は、筐体10の内部からロアーケース12の底面12Aの外部に渡って配置され、底面12Aから突出している下端部の面21Aは、プロジェクタ1が設置される際に設置面TBと当接する。プロジェクタ1が略水平の姿勢において、脚部21は、下端部が当接する位置よりも前方側の設置面TBとなす角度(脚部傾斜角)が鋭角になるように傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写された画像光の高さ位置を変更することができる脚部を備えたプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、光源からの光束を、光変調素子により画像信号に応じて変調し、変調された画像光をスクリーン等に投写する光学機器であり、企業内でのプレゼンテーションや、家庭内での映画鑑賞等の種々の用途に用いられている。多くのプロジェクタには、筐体の前方側の底面から突出する脚部が備えられており、その脚部は、一部が筐体内に収納されており、底面から出し入れすることによって、底面から突出する長さを変更することができるように構成されている。そして、底面から突出する長さを変更することによって、プロジェクタの前方を持ち上げる高さを変更して、投写された画像光の高さ位置を変えることが可能である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−287252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の脚部は、底面に対して略垂直に出し入れされることによって、底面からの突出する長さを変えているため、脚部の長さは、底面に対して略垂直方向の筐体の厚みで規制される。したがって、筐体の厚みが薄いプロジェクタにおいては、充分に脚部を長くすることができないため、投写された画像光の高さ位置を所望の位置まで上げることができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクタは、画像光を前方に投写する投写部と、前記投写部を収納する筐体と、前記筐体の内部に収納され、一端が前記筐体の前記前方側の底面から突出して設置面と当接する脚部と、前記脚部の前記底面からの突出長さを調整する調整部と、を備え、前記脚部は、前記突出長さが最小となるように調整されたときに、前記脚部と当接する位置よりも前記前方側の設置面と鋭角をなすように配設されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、プロジェクタは、筐体の内部に収納され、一端が筐体の前方側の底面から突出して設置面と当接する脚部と、脚部の底面からの突出長さを調整する調整部とを備えている。そして、脚部は、突出長さが最小となるように調整されたときに、脚部と当接する位置よりも前方側の設置面と鋭角をなすように配設されているので、略垂直に配設されている場合に比べて、筐体内に収納できる脚部の長さを長くすることができる。これによって、底面から突出させる長さを長くすることができるので、プロジェクタの前方側をより持ち上げて、画像光をより高い位置に投写することが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係るプロジェクタにおいて、前記脚部は、前記底面から突出するに従って、前記設置面との角度が垂直に近づいていくことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、脚部は、底面から突出するに従って、設置面との角度が垂直に近づいていくので、脚部を突出させるに従って、脚部に加わる曲げモーメントを小さくすることが可能となる。これによって、脚部および調整部の耐力を小さくすることができるので、脚部および調整部の、小型化や低コスト材料での形成が可能となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクタにおいて、前記脚部は、前記突出長さが最大となるように調整されたときに、前記設置面に対して略垂直になることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、脚部は、突出長さが最大となるように調整されたときに、設置面に対して略垂直になるので、最も脚部を突出させた際に、脚部に加わる曲げモーメントをほとんど加わらないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のプロジェクタを上方前面側から見た斜視図。
【図2】本実施形態のプロジェクタを下方前面側から見た斜視図。
【図3】アッパーケースを外した状態を上方向から見た平面図。
【図4】プロジェクタを略水平の姿勢に設置した際の姿勢調整機構近傍の構成を示す断面図。
【図5】姿勢調整機構の斜視図。
【図6】脚部の斜視図。
【図7】脚部が摺動可能になった状態を示す図。
【図8】プロジェクタが画像光を投写する様子を示す図であり、(a)は、脚部が最小突出位置の場合の状態を示す図、(b)は、脚部を(a)の状態より長く突出させた場合の状態を示す図、(c)は、脚部が最大突出位置の場合の状態を示す図。
【図9】本実施形態の脚部および従来例の脚部を最小突出位置にした状態を示す図。
【図10】本実施形態の脚部および従来例の脚部を最大突出位置にした状態を示す図。
【図11】脚部に加わる荷重を模式的に示した図であり、(a)は、従来例の脚部に加わる荷重の模式図、(b)は、本実施形態の脚部に加わる荷重の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態のプロジェクタは、光源から射出された光束を、光変調素子により画像信号に応じて変調し、変調された画像光をスクリーン等に投写する光学機器であり、投写された画像光の高さ位置を変更することができる脚部を備えている。
【0014】
図1、図2は、本実施形態のプロジェクタの外観を示す図であり、図1は、上方前面側から見た斜視図、図2は、下方前面側から見た斜視図である。
図1、図2に示すように、プロジェクタ1は、外装を構成する筐体10で本体が囲まれた構成になっている。
筐体10は、合成樹脂製であり、上部分を構成するアッパーケース11と、下部分を構成するロアーケース12とを備えている。これらアッパーケース11およびロアーケース12は、ネジ等により固定されている。
【0015】
アッパーケース11は、上面11A、前面11B、側面11C,11Dおよび背面11Eを有して構成される。
アッパーケース11の前面11Bには、略円形状の開口部15が形成されている。そして、この開口部15から前方に画像光を投写する投写部32の前面が露出している。
【0016】
アッパーケース11の上面11Aには、開口部16が形成されており、その開口部16から投写部32のフォーカス調整、およびズーム調整の操作を行うレバー321,322が露出している。また、上面11Aには、各種指示を行うための操作パネル14が備えられている。
【0017】
ロアーケース12は、底面12A、前面12B、側面12C,12Dおよび背面12Eを有して構成される。底面12Aと前面12Bとが交差する稜部の略中央部には、凹部121が形成されている。凹部121には、脚部21を有する姿勢調整機構20が配置され、脚部21の先端は底面12Aから突出している。また、底面12Aの背面12E側の両隅部には、2つの固定脚70が備えられている。
【0018】
脚部21および固定脚70は、設置面と当接して筐体10を支持する。また、脚部21は、ロアーケース12の底面12Aから突出する長さ(以下、「突出長さ」という)を変更できるようになっており、画像光を投写する高さ位置を変えることができる。水平な設置面上にプロジェクタ1を載置した場合に、脚部21の突出長さを最も短くした状態では、プロジェクタ1は略水平の姿勢となる。そして、脚部21の突出長さを長くしていくほど、プロジェクタ1は、前面側が持ち上がって傾いた姿勢となり、より高い位置に画像光を投写する。これ以降、アッパーケース11の上面11A側を上方向、アッパーケース11の側面11Cと側面11Dとを結ぶ方向を左右方向とする。
【0019】
次に、プロジェクタ1の概略構成について、図1に加えて図3を参照して説明する。
図3は、プロジェクタ1の概略構成を示す図であり、アッパーケース11を外した状態を上方向から見た平面図である。
図1、図3に示すように、プロジェクタ1は、筐体10と、操作パネル14と、姿勢調整機構20と、略L字状の光学ユニット30と、電源ユニット40と、制御基板50と、固定脚70とを有して構成されている。
【0020】
操作パネル14は、各種指示を行うための複数のキー等を備えている。そのキーには、各種設定を行うためのメニュー画像の表示/非表示を切り換えるメニューキー、入力ソースを切り換えるソース切換えキー等がある。
【0021】
光学ユニット30は、光源31、液晶パネルやマイクロミラー等の光変調素子(図示せず)、および投写部32を備えて構成され、光源31から射出された光束を、光変調素子によって画像信号に応じて変調して画像光を形成し、その画像光を投写部32から投写する。
【0022】
電源ユニット40は、電源回路と光源駆動回路(いずれも図示せず)とを備えている。電源回路は、電源ケーブルを介して供給された電力を制御基板50や光源駆動回路等に供給する。光源駆動回路は、電源回路から供給された電力から光源を駆動するための駆動電力を生成して、その駆動電力を光源31に供給する。
【0023】
制御基板50は、ロアーケース12の側面12C寄りに備えられ、光学ユニット30の上方に配置されている。制御基板50には、プロジェクタ1の動作を制御する制御回路や、画像信号に各種処理を施す画像処理回路等が搭載されている。
【0024】
次に、姿勢調整機構20の構成について詳細に説明する。
図4は、プロジェクタ1を略水平の姿勢に設置した際の姿勢調整機構20近傍の構成を示す断面図であり、図5は、姿勢調整機構20の斜視図である。
図4、図5に示すように、プロジェクタ1が略水平の姿勢においては、ロアーケース12の底面12Aは、設置面TBと略平行になっている。また、ロアーケース12の凹部121の上側の面121Aも同様に、設置面TBと略平行になっており、面121Aには、孔部125が形成されている。
【0025】
姿勢調整機構20は、脚部21、ハウジング22、留め具23および圧縮コイルバネ24を有して構成される。ハウジング22、留め具23および圧縮コイルバネ24は、脚部21の突出長さを調整する調整部に相当するものであり、ロアーケース12の凹部121に配置されている。
【0026】
ハウジング22は、略六面体の箱状に形成されており、それぞれ略矩形状の上面22B、底面22C、前面22D、背面22A、および台形状の2つの側面22Eを有している。上面22Bは、底面22Cと略平行になっている。前面22Dおよび側面22Eは、上面22Bおよび底面22Cに対して略直角であり、背面22Aは、上面22Bと鈍角(底面22Cと鋭角)をなすように形成されている。ハウジング22には、背面22Aと略平行に、上面22Bと底面22Cとを貫通する貫通孔221が形成され、前面22Dには、開口部222が形成されている。ハウジング22は、上面22Bがロアーケース12の面121Aと当接し、前面22Dが前方を向くように配置され、貫通孔221は、ロアーケース12の孔部125と連通する。
【0027】
脚部21は、合成樹脂製であり、細長い板状に形成され、ハウジング22の貫通孔221およびロアーケース12の孔部125に挿通されている。
【0028】
図6は、脚部21の斜視図である。
図6に示すように、脚部21は、長手方向の一方の端部(下端部211)が他の部位より厚く形成され、その段差によって下端部211がハウジング22の貫通孔221に入り込まないようになっている。また、下端部211の先端は、前後方向にR面となる面21Aが形成されている。脚部21の他方の端部は、前後方向に突出した抜け止め部213が形成され、ハウジング22の貫通孔221を通らないようになっている。脚部21の前方側の面には、複数の係止溝214が形成されている。
【0029】
図4、図5に戻って、脚部21は、筐体10の内部からロアーケース12の底面12Aの外部に渡って配置され、底面12Aから突出している下端部211の面21Aは、プロジェクタ1が設置される際に設置面TBと当接する。プロジェクタ1が略水平の姿勢において、脚部21は、下端部211が当接する位置よりも前方側の設置面TBとなす角度(脚部傾斜角)が鋭角になるように傾斜している。また、脚部21は、ロアーケース12の底面12Aが設置面TBと略平行になっていることから、底面12Aに対しても同様に傾斜している。脚部21は、ハウジング22に対して摺動することができ、ロアーケース12の底面12Aから突出される長さを変えることが可能である。なお、プロジェクタ1が略水平の姿勢のときの脚部傾斜角を脚部傾斜角θ0とする。
【0030】
留め具23は、脚部21の摺動を規制して、任意の位置に固定するように構成されている。
留め具23は、断面が略L字状であり、一方の端部には、脚部21の係止溝214と係合可能な係合部231が形成され、他方の端部には、レバー部232が形成されている。留め具23の係合部231とレバー部232との間には、左右方向に突出した回動軸233が備えられている。留め具23は、回動軸233がハウジング22に支持され、ハウジング22の開口部222からレバー部232が前方に露出するようにハウジング22に収納されている。留め具23は、ハウジング22に対して、回動軸233の軸心を中心に回動することができる。
【0031】
圧縮コイルバネ24は、ハウジング22の前面22Dの内面と、留め具23の係合部231の裏面との間に配置され、係合部231が脚部21の係止溝214と係合するように、留め具23を付勢する。係合部231が脚部21の係止溝214に係合されると、脚部21は、摺動することが規制されて固定される。留め具23のレバー部232を上方向に持ち上げると、圧縮コイルバネ24を圧縮する方向に留め具23が回動するため、留め具23の係合部231と、脚部21の係止溝214との係合が外れ、脚部21が摺動可能な状態となる。
【0032】
図7は、留め具23を回動させて脚部21が摺動可能になった状態を示す図である。
図7に示すように、脚部21が摺動可能になった状態では、脚部21は、ハウジング22の貫通孔221に沿って摺動することが可能となる。そして、脚部21を摺動して所望の位置まで突出させた後、レバー部232に加えた力を解放すると、留め具23は、再び圧縮コイルバネ24によって付勢されて係合部231が係止溝214と係合し、脚部21は、固定される。脚部21は、下端部211がハウジング22の底面22Cと当接する最小突出位置から、抜け止め部213がハウジング22の上面22Bに当接する最大突出位置までの間で任意に突出位置を変更して、突出長さを変えることが可能である。
【0033】
ここで、脚部21の突出長さを変えることによる、脚部21およびプロジェクタ1の姿勢について説明する。
図8は、プロジェクタ1が画像光を投写する様子を示す図であり、図8(a)は、脚部21が最小突出位置の場合の状態を示す図、図8(b)は、脚部21を図8(a)の状態より長く突出させた場合の状態を示す図、図8(c)は、脚部21が最大突出位置の場合の状態を示す図である。
【0034】
図8(a)に示すように、脚部21を最小突出位置にした状態では、前述したように、プロジェクタ1は、略水平の姿勢となり、設置面TBに対する傾斜角(プロジェクタ傾斜角)は、0°である。この姿勢のとき、脚部21は、ほとんどの部位が筐体10内に収納され、脚部傾斜角θ0は、前述したように鋭角になっている。
【0035】
脚部21の突出長さを図8(a)の状態より長くすると、図8(b)に示すように、プロジェクタ1は、前方側が持ち上がって傾斜し(プロジェクタ傾斜角Φ1)、投写される高さ位置は、上方に移動する。この場合の脚部傾斜角θ1は、脚部傾斜角θ0より大きくなる。
【0036】
図8(b)の状態からさらに脚部21の突出長さを長くして最大突出位置にした場合は、図8(c)に示すように、プロジェクタ傾斜角Φ2は、プロジェクタ傾斜角Φ1より大きくなり、投写される高さ位置は、図8(b)の状態よりもさらに上方に移動する。この場合の脚部傾斜角θ2は、略垂直になる。つまり、脚部傾斜角θ0は、最大突出位置にした場合の脚部傾斜角θ2が略垂直になるように定められている。
【0037】
ここで、本実施形態の脚部21と、ロアーケース12の底面12Aに対して略垂直に出し入れされる従来例の脚部とを比較して説明する。
図9、図10は、本実施形態の脚部21と、底面12Aに対して略垂直に出し入れされる従来例の脚部521とを比較した図であり、図9は、脚部21,521の位置を最小突出位置にした状態を示す図、図10は、脚部21,521の位置を最大突出位置にした状態を示す図である。なお、図10における設置面TB0,TBg,TBsは、脚部21,521の姿勢の相違をわかり易くするために、プロジェクタ1に対して設置面を相対的に移動した図であり、設置面TB0は、脚部21,521の位置を最小突出位置にした場合の設置面を示し、設置面TBgは、本実施形態の脚部21の位置を最大突出位置にした場合の設置面を示し、設置面TBsは、従来例の脚部521の位置を最大突出位置にした場合の設置面を示している。
【0038】
図9に示すように、脚部21,521の位置が最小突出位置の場合には、脚部21,521のほとんどの部位が筐体10内に収納される。本実施形態の脚部21は、底面12Aに対して傾斜した姿勢となり、従来例の脚部521は、底面12Aに対して略垂直の姿勢となる。脚部21,521の下端部から抜け止め部までのそれぞれの有効長さLg,Lsは、筐体10に収納できる高さで規制されるため、底面12Aに対して傾斜した姿勢となっている脚部21の方が、垂直の姿勢になっている脚部521より長くすることができる(Lg>Ls)。
【0039】
図10に示すように、脚部21,521の位置を最大突出位置にすると、脚部21,521は、筐体10内に収納されていたほとんどの部位が底面12Aから突出し、突出長さが長くなる。前述したように脚部21の下端部から抜け止め部までの有効長さLgは、脚部521の下端部から抜け止め部までの有効長さLsより長いため、底面12Aからの突出長さは、本実施形態の脚部21の方が長くなる。また、脚部21の脚部傾斜角θ2が略垂直になることに対して、従来例の脚部521の脚部傾斜角θsは、鈍角になるため、脚部521がプロジェクタ1を持ち上げる垂直方向の高さは、突出長さより低くなる。これらのことから、本実施形態の脚部21は、従来例の脚部521より長く形成でき、その長さを有効に使用することができるので、プロジェクタ1の前方をより上方に持ち上げることが可能となる。つまり、本実施形態の脚部21を最大突出位置の姿勢にした場合のプロジェクタ傾斜角Φ2の方が、従来例の脚部521を最大突出位置の姿勢にした場合のプロジェクタ傾斜角Φsより大きくなり、投写された画像光の高さ位置を高くすることができる。
【0040】
次に、本実施形態の脚部21に加わる荷重について、従来例の脚部521を使用した場合と比較して説明する。
図3および図10に示すように、脚部21,521の上方には、構成部品の中で特に重い重量の投写部32や電源ユニット40が配置されており、それらの荷重が脚部21,521に加わる。また、使用者がフォーカス調整やズーム調整を行うためにレバー321,322を操作する際には、さらに脚部21,521に荷重が加わる。脚部21,521は、これらの荷重を支持できるように構成されている。
【0041】
図11は、図10における(最大突出位置)脚部21,521に加わる荷重を模式的に示した図であり、図11(a)は、脚部521に加わる荷重の模式図、図11(b)は、脚部21に加わる荷重の模式図である。
【0042】
図11(a)に示すように、従来の構成では、脚部521に加わる荷重Wは、脚部521が傾斜していることによって、脚部521の長手方向に加わる荷重Wvと、荷重Wvに対して垂直方向の荷重Whとに分解して考えることができる。荷重Wvは脚部521に圧縮荷重として加わり、荷重Whは、脚部521に対して曲げモーメントとして加わる。その曲げモーメントは、脚部521がハウジング22と当接する部位から下端部までの長さLmに荷重Whを乗じたWh×Lmとなる。また、脚部521を突出させるに従って脚部521の脚部傾斜角は鈍角になるため、荷重Whの割合が増加して曲げモーメントも増加し、最大突出位置の時に最大となる。このため、脚部521および調整部は、この曲げモーメントWh×Lmに耐える強度が要求される。一方、本実施形態の脚部21は、脚部21を突出させるに従って脚部21の脚部傾斜角は鋭角から増加し、最大突出位置の時に直角となる。よって荷重Whの割合は脚部21を突出させるに従って減少し、曲げモーメントも減少することになる。最大突出位置の時には図11(b)に示すように、脚部21が略垂直の姿勢になっているため、脚部21に加わる荷重Wのほとんどが圧縮方向に加わり、曲げモーメントは、ほとんど加わらない。よって、本実施形態の脚部21および調整部の耐力は従来例の脚部521の耐力よりも小さくすることができるので、脚部21および調整部の小型化や脚部を低コスト材料で形成することが可能となる。
【0043】
次に、脚部21が収納される筐体10内部の領域について説明する。
図9に戻って、制御基板50は、光学ユニット30の上方で、筐体10の前方近傍まで配置されている。
従来例の脚部521を使用する場合には、制御基板50の前面側の一部が脚部521と干渉するため、干渉する制御基板50の部位を予め取り去った形状にする必要がある。そうすると、必要な回路素子を実装するスペースや配線するスペースがなくなるため、他の部位を大きくしてそのスペースを確保する必要が生じる。
一方、本実施形態の脚部21は、上側が底面側より前方になるように傾斜して筐体10に収納されているので、制御基板50との干渉を抑制することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクタ1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のプロジェクタ1によれば、筐体10の内部に収納され、一端が筐体10の前方側の底面12Aから突出して設置面TBと当接する脚部21と、脚部21の底面12Aからの突出長さを調整する調整部と、を備えている。そして、脚部21は、突出長さが最小となるように調整されたときに、脚部21と当接する位置よりも前方側の設置面TBと鋭角をなすように配設されているので、略垂直になっている場合に比べて、筐体10内に収納できる脚部21の長さを長くすることができる。これによって、底面12Aから突出させる長さを長くすることができるので、プロジェクタ1の前方側をより持ち上げて、画像光をより高い位置に投写することが可能となる。
【0045】
(2)本実施形態のプロジェクタ1によれば、脚部21は、脚部21を突出させるに従って脚部21の脚部傾斜角は鋭角から増加し、最大突出位置の際に設置面TBに対して略垂直になるので、脚部21を突出させるに従って脚部21に加わる曲げモーメントは小さくなり、最も脚部21を突出させた際に、曲げモーメントをほとんど加わらないようにすることが可能となる。これによって、脚部21および調整部の耐力を小さくすることができるので、脚部21および調整部の、小型化や低コスト材料での形成が可能となる。
【0046】
(3)本実施形態のプロジェクタ1によれば、脚部21は、上側が底面側より前方になるように傾斜して筐体10に収納されているので、略垂直になっている場合に比べて、制御基板50を前方側に配置することができる。これによって、制御基板50を効率的に実装、配線することができるので、電気ノイズの低減や低コスト化を図ることが可能となる。
【0047】
(変形例)
なお、前記実施形態は、以下のように変更してもよい。
前記実施形態の脚部21は、板状の外形に複数の係止溝214が形成されているが、ネジ形状に形成し、そのネジ形状が係止溝になるように構成してもよい。この場合には、留め部で規制された状態においても脚部を回転させることによって、脚部の突出長さの微調整をすることが可能となる。なお、この構成の場合には、設置面TBに当接する下端部の先端は、略球状に形成された面であることが好ましい。
【0048】
前記実施形態では、脚部21を最大突出位置まで突出させた場合に、脚部傾斜角が略垂直になるように設定されているが、脚部21を最大突出位置まで突出させた場合に、脚部傾斜角が鈍角になるように設定してもよい。
【0049】
前記実施形態では、姿勢調整機構20は、底面12Aと前面12Bとが交差する稜部の略中央部に配置されているが、底面12Aと前面12Bとが交差する稜部の両隅部(側面12C,12D近傍)に姿勢調整機構20を2つ配置してもよい。なお、この場合の固定脚70は、底面12Aの背面12E側の略中央部が好ましい。
【符号の説明】
【0050】
1…プロジェクタ、θ0,θ1,θ2,θs…脚部傾斜角、Φ1,Φ2,Φs…プロジェクタ傾斜角、10…筐体、11…アッパーケース、12…ロアーケース、14…操作パネル、20…姿勢調整機構、21,521…脚部、22…ハウジング、23…留め具、24…圧縮コイルバネ、30…光学ユニット、31…光源、32…投写部、40…電源ユニット、50…制御基板、70…固定脚、121…凹部、125…孔部、211…下端部、213…抜け止め部、214…係止溝、221…貫通孔、222…開口部、231…係合部、232…レバー部、233…回動軸、321,322…レバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を前方に投写する投写部と、
前記投写部を収納する筐体と、
前記筐体の内部に収納され、一端が前記筐体の前記前方側の底面から突出して設置面と当接する脚部と、
前記脚部の前記底面からの突出長さを調整する調整部と、を備え、
前記脚部は、前記突出長さが最小となるように調整されたときに、前記脚部と当接する位置よりも前記前方側の設置面と鋭角をなすように配設されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタであって、
前記脚部は、前記底面から突出するに従って、前記設置面との角度が垂直に近づいていくことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のプロジェクタであって、
前記脚部は、前記突出長さが最大となるように調整されたときに、前記設置面に対して略垂直になることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−50741(P2013−50741A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259525(P2012−259525)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2007−266207(P2007−266207)の分割
【原出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】