プロセスカートリッジ及び画像形成装置
【課題】どのような径の帯電部材を用いても像保持体への均一な接触幅、及び像保持体への均一な帯電が得られるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】例えば、電子写真感光体1と、電子写真感光体1を帯電させるための帯電ロール21Aと、帯電ロール21Aの外周面に接して配設される押圧ロール21Bとを有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置において、帯電ロール21Aとの接触面の法線方向に帯電ロール21Aを電子写真感光体1へ押付ける力が働くように帯電ロール21Aを押圧するように、押圧ロール21Bを帯電ロール21Aに接触して配設さしている。そして、押圧ロール21Bは、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たすものである。
【解決手段】例えば、電子写真感光体1と、電子写真感光体1を帯電させるための帯電ロール21Aと、帯電ロール21Aの外周面に接して配設される押圧ロール21Bとを有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置において、帯電ロール21Aとの接触面の法線方向に帯電ロール21Aを電子写真感光体1へ押付ける力が働くように帯電ロール21Aを押圧するように、押圧ロール21Bを帯電ロール21Aに接触して配設さしている。そして、押圧ロール21Bは、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たすものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いて画像を形成する画像形成装置に適用されるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置においては、先ず、無機又は有機材料からなる光導電性感光体からなる像保持体表面に帯電部材を用い一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電濳像を形成した後、帯電したトナーで前記静電濳像を現像して可視化したトナー像が形成される。そして、該トナー像を中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の転写材に静電的に転写し、記録材に定着することにより所要の再生画像が得られる。
【0003】
近年、電子写真方式の画像形成装置では、被帯電体としての上記像保持体表面を均一に帯電させる部材として、帯電ロールが多用されている。帯電ロールは、電圧が印加された状態で像保持体に接触し、像保持体との間の微少な間隙にて放電し像保持体表面を帯電させる。
【0004】
このような帯電ロールの表面をクリーニングするためのクリーニングロールを設けた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1〜2)。
【0005】
ところで、上記帯電ロールは、像保持体を均一に帯電させるために、抵抗、形状が厳密に制御されている。帯電ロールの両端に荷重をかけて使用する為、帯電ロールシャフトが撓み、接触幅のムラが生じ、帯電ムラが生じてしまう。従来、上記問題に対して帯電ロールの長手方向中央の外径を長手方向両端部の外径よりも大きくした太鼓形状(以下、「クラウン形状」という場合もある)にすることで、帯電を均一にする技術が用いられてきた。しかし、近年のカラープリンターの小型化により各部材も小型化が強いられるようになり、φ10以下の帯電ロールの要求が出てきている。φ10以下の帯電ロールを用いる場合、帯電ロールの支持シャフトも細くなる為、支持シャフトの撓み量が大きくなる。更に、帯電ロールの弾性層の肉厚も薄くなる為、帯電ロールの硬度が高くなる傾向にある。その結果、帯電ロールをクラウン形状とし帯電ロールの長手方向中央の外径と長手方向両端部の外径との差(以下「クラウン量」という場合がある)をを大きくしても均一な接触幅が得られなくなり、画質上濃度ムラが発生してしまう。
【0006】
更には、帯電ロールを用いた電子写真用画像形成装置においては、像保持体表面に付着した転写残トナー、キャリア、紙粉等の異物が、帯電ロールと像保持体との接触部分に進入することにより、該異物が帯電ロール表面に付着し帯電ロールを汚染する。帯電ロール表面に異物が付着すると、異物付着部分は抵抗が高くなり、像保持体の帯電不良を生じたり、異物付着部分で異常放電を引き起こしたりして、現像、転写後の画像において、白点や色点といった画像欠陥を引き起こす。上記異物の付着による汚染が長期的に継続された帯電ロールは、ロール全体としても抵抗にムラができるため、像保持体の帯電ムラを生じやすく、形成された画像に、さらに濃度ムラや、画像全面に及ぶ白点や色点といった画質欠陥を引き起こす。
【0007】
その為、接触部が不均一な場合、該異物に掛かる圧力が不均一になる為、帯電ロールに付着する量が不均一に成ってしまう。その結果、像保持体の帯電ムラが起き易くなり、寿命の低下に繋がる。
【0008】
これらの改善方法として、帯電ロールの低硬度化が考えられる。帯電ロールの低硬度化により均一な接触幅を得る事は可能であるが、帯電ロールのコストアップや二次障害に繋がってしまい適用することが難しい。例えば、可塑剤を多量に添加する方法、若しくはシリコーンゴムといった柔らかいゴムを用いる事が考えられるが、コストアップだけでなく、ブリードが生じ、画質劣化等の問題となる。
【0009】
【特許文献1】特開平05−273846号公報
【特許文献2】特開2000−172055公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における問題を鑑み、小径の帯電部材を用いても像保持体への均一な接触幅、及び像保持体への均一な帯電が得られるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段により解決される。すなわち、
本発明のプロセスカートリッジは、
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって、像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電部材を押圧するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置、及び、前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング装置からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明のプロセスカートリッジにおいて、前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることが好適である。
【0013】
本発明のプロセスカートリッジにおいて、前記帯電部材は、直流電圧を印加して像保持体を帯電させることが好適である。
【0014】
本発明のプロセスカートリッジにおいて、前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることが好適である。
【0015】
一方、本発明の画像形成装置は、
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電ロールを圧接するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
帯電した前記像保持体に静電潜像形成するための露光装置と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写装置と、
を備えることを特徴としている。
【0016】
本発明の画像形成装置において、前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることが好適である。
【0017】
本発明の画像形成装置において、前記帯電部材は、直流電圧を印加して像保持体を帯電させることが好適である。
【0018】
本発明の画像形成装置において、前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、どのような径の帯電部材を用いても像保持体への均一な接触幅、及び像保持体への均一な帯電が得られるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
【0022】
図2は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図2に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、少なくとも帯電装置21を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置30と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1(像保持体)に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体1に接するに配置されている。
【0023】
プロセスカートリッジ20は、ケース内に帯電装置21とともに電子写真感光体1、現像装置25、クリーニング装置27及び繊維状部材(平ブラシ状)29を、取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0024】
そして、帯電装置21は、例えば、図1に示すように、電子写真感光体1(被帯電部材)を帯電させるための帯電ロール21Aと、帯電ロール21Aの外周面に接して配設される押圧ロール21Bとを有している。
【0025】
以下、押圧ロールについて説明する。
押圧ロール21Bは、押圧部材として設けられるものであり、電子写真感光体1と帯電ロール21Aとの接触面の法線方向に帯電ロール21Aを電子写真感光体1へ押付ける力が働くように帯電ロール21Aを押圧するように、帯電ロール21Aに接触して配設されている。
【0026】
具体的には、図11に示すように、各部材の軸と直交する断面でみたとき、電子写真感光体1と帯電ロール21Aと押圧ロール21Bとの軸点が同一線上となるように各部材を配設することがよい。無論、帯電ロール21Aを電子写真感光体1へ押付ける力が働くように帯電ロール21Aを押圧できれば、これに限られず、例えば、電子写真感光体1及び帯電ロール21Aの軸点上を通る線と、帯電ロール21A及び押圧ロール21Bの軸点上を通る線と、のなす角度θ(鋭角)が±45°の範囲内となるように、押圧ロール21Bを配設することがよい。
【0027】
また、押圧ロール21Bによる帯電ロール21Aへの押圧力は、電子写真感光体1と帯電ロール21Aとの接触面の法線方向の押圧力が1.0N〜7.0Nとなるように配置されることが好ましく、より好ましくは2.0N〜6.0Nであり、さらに好ましくは3.0N〜5.0Nである。押圧力が上記範囲とすることで、より効果的に帯電ロール21Aと電子写真感光体1と均一な接触幅、及び帯電ロール21Aによる電子写真感光体1への均一な帯電を得ることができる。
【0028】
押圧ロール21Bは、その外周面(弾性層表面)例えば、帯電ロール21Aの外周面に接離自在の状態で接し、且つ帯電ロール2の軸方向に往復移動自在に設置されていてもよい。これにより、押圧を必要としない場合(画像形成装置が長時間停止している場合等)、帯電ロール21Aから押圧ロール21Bを離間させた状態に置くことで、帯電ロール21Aの圧縮劣化を防止することができる。
【0029】
なお。押圧ロール21Bは、帯電ロール21Aと接するときは、帯電ロール21Aに押圧された状態で配置され、帯電ロール21Aの回転に伴い従動回転するようになっている。これにより、帯電ロール21Aへのスクラッチキズを防止することができる。
【0030】
押圧ロール21Bは、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たすものである。条件として好ましくはAc<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦15°、より好ましくはAc<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦10°である。
【0031】
Ac<Aeを満たさない、即ちAeの方がAc以下であると、帯電ロール21Aの撓み量を規制する事はできるが、帯電ロール21Aのクラウン量の変改に対して、帯電ムラ・画質濃度ムラのラチチュード(Latitude)が非常に小さくなり、帯電ロール21Aのクラウン量の製造公差を確保する事が難しくなる。
【0032】
また、Ac−Aeが上記範囲より大きいと帯電ロール21Aの撓みを規制することができなくなり、帯電ムラが出来、画質上濃度ムラとなる。一方、Ac−Aeが上記範囲より小さいと帯電ロール21Aの撓み量を規制することができるが、帯電ロール21Aのクラウン量の変化に対して、帯電ムラ・画質濃度ムラのラチチュード(Latitude)が非常に小さくなり、帯電ロール21Aのクラウン量の製造公差を確保することが難しくなる。
【0033】
また、長手方向中央部のアスカーC硬度Ac、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeいずれの硬度も、30°〜70°の範囲であることが好ましく、より好ましくは40°〜65°であり、さらに好ましくは50°〜60°である。いずれの硬度も上記範囲とすることで、帯電ロール表面へ傷を付けることを防止する事ができる。
【0034】
ここで、「長手方向中央部」とは、押圧部材における帯電部材への押圧面の長手方向長さの中心を意味する。一方、「長手方向両端部」とは、押圧部材における帯電部材への押圧面の長手方向両端から内側へ30cmに位置する箇所を意味する。また、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは2箇所の値の平均値とする。
【0035】
また、押圧ロール21Bを上記条件を満たすためには、例えば、弾性層の材料を中央部と端部で変える方法、弾性層の中央部と端部で厚みを変える方法、芯体の厚み・外径を小さくする方法等々により実現することができる。
【0036】
アスカーC硬度の測定は、押圧部材の長手方向両端を支持した状態で(本実施形態のロール形状の場合、その芯体両端を軸受けした状態で)、高分子計器社製アスカーC硬度硬度計を用い、長手方向中央部、長手方向両端部に対し、荷重1kgの条件で計測を行った時の値である。具体的には、図12に示すように、押圧ロール21Bの芯体21B−1の両端を、支持台70に設けた軸受け部材71により軸受けした状態で、押圧ロール21Bの弾性層21B−2の長手方向中央部Tc、長手方向両端部Teに対し、測定を行う。
【0037】
押圧ロール21Bは、例えば、棒状の芯体外周面に弾性層を設けた構成とすることができる。なお、押圧部材はロール形状のみならず、シート状(板状)であってもよい。シート状の場合、板状の芯体表面(押圧面となる側)に弾性層を設けた構成とすることができる。
【0038】
芯体(棒状、板状含む)の材質としては、金属(快削鋼、ステンレス鋼等)、樹脂(ポリオキシメチレン(POM)等)などが挙げられ、摺動性等の用途に応じて材質を選択することができる。また、芯体には、摺動性等の用途に応じて表面処理を施すこともできる。材質が特に金属の場合、防錆の観点からメッキ処理するのが好ましい。また、樹脂等で導電性を有さない材質の場合、メッキ処理等一般的な処理により加工して導電化処理を行っても良いし、そのまま使用しても良い。
【0039】
弾性層の構成としては1層構成でも積層構成でも構わないし、ソリッド層でも発泡層であっても良し、ソリッド層と発泡層の2層の構成でも構わない。
【0040】
弾性層の材料としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、又はポリプロピレン等の発泡性の樹脂、又はシリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、EPDM、NBR、CR、塩素化ポリイソプレン、イソプレン、アクリロニトリル―ブタジエンゴム、スチレン―ブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム等のゴム材料を1種類、又は、2種類以上をブレンドしてなる材料を用いることができる。これらには必要に応じて、発泡助剤、整泡剤、触媒、硬化剤、可塑剤、加硫促進剤等の助剤を加えてれば良い。
【0041】
特に、擦れによる帯電ロールの表面に傷を付けない為に、また、長期に渡り千切れや破損が生じないようにする為に引き裂き、引っ張りに強い発泡ポリウレタンを用いることが好ましい。ポリウレタンとして特に制限するものではないが、ポリエステルポリオール、ポリーエテルポリエステルやアクリルポリールなどのポリオールと、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネートの反応を伴っていれば良く、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど鎖延長剤が混合されていることが好ましい。また、水やアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物などの発泡剤を用いて発泡させるのが一般的である。さらに必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えるとよい。
【0042】
なお、押圧ロール21Bは、弾性層を帯電ロール21Aのクリーニングに可能な構成にすれば、具体的には例えば弾性層を発泡ウレタンを含む構成にすれば、クリーニングロールとしての機能も持たせることができる。
【0043】
クリーニングロールとしての機能を持った押圧ロール21Bは、帯電ロール21Aと接するときに圧縮され、離反するときに圧縮されて歪んだ状態から元の状態に戻るための復元力が作用して、この復元するときに生じる力によって帯電ロール21A上の付着物を除去することできる。これにより、帯電ロール21A表面に付着する物質を除去し、帯電ロール21A表面への転写残トナーや異物の付着及び蓄積による汚染に起因する画像欠陥の発生を防止することが可能となる。
【0044】
以下、帯電ロールについて説明する。なお、符号は省略して説明する。
帯電ロール21Aは、接触帯電方式の部材であり、電子写真感光体1の感光層膜厚の減少を抑制することができる。また、接触帯電方式の帯電ロール21Aは、電子写真感光体1表面に接触させ、電圧を印加することにより電子写真感光体1表面を帯電させるものである。
【0045】
帯電ロール21Aは、芯体と、その外周面に例えば弾性層、抵抗層が順次形成したものが挙げられる。さらに必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることもできる。
【0046】
帯電ロール21Aは、押圧ロール21Bにより電子写真感光体1押圧させて、電子写真感光体1の回転に伴い従動回転させるように、電子写真感光体1に圧接して配置されることがよい。また、帯電ロールに駆動手段を取り付け、電子写真感光体1とは異なる周速度で回転させるように配置してもよい。
【0047】
次に、帯電ロール21Aの各部材について説明する。芯体としては、導電性を有するもので、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の成型品が用いられる。また、その他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0048】
次に弾性層について説明する。弾性層としては、例えば、導電性あるいは半導電性を有するもので、一般にはゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものである。
【0049】
ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
【0050】
導電性粒子あるいは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いることができ、これらの材料は単独あるいは2種以上混合して用いても良い。
【0051】
抵抗層及び保護層としては、結着樹脂に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したもので、体積抵抗率として103〜1014Ωcm、望ましくは105〜1012Ωcm、さらに望ましくは107〜1012Ωcmがよい。抵抗層及び保護層の膜厚としては0.01〜1000μm、望ましくは0.1〜500μm、さらに望ましくは0.5〜100μmがよい。
【0052】
結着樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン 樹脂等が用いられる。
【0053】
導電性粒子あるいは半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。
【0054】
これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0055】
帯電ロール21Aは、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることがよい。好ましくは、外径がφ6〜10mmであり、且つその表面のマイクロ硬度が40°以上60°以下あり、より好ましくは、外径がφ8〜10mmであり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上55°以下ある。
【0056】
ここで、帯電ロール21Aの外径はφ10mm以上であると周面1ヶ所当たりの外添剤に接触する回数が減り、また放電回数が減るので、汚れや帯電性能に対する長期安定性には優れるものの画像形成装置の小型化の観点からφ10mm以下が好ましい。なお、外径φ6mm以下では帯電ロール周面1ヶ所当たりの外添剤に接触する回数が増え、また放電回数が増えるので、長期安定性に対して不利となることがある為、φ8〜10mmが好ましい。
【0057】
なお、帯電ロール21Aの外径の測定方法としては市販のノギスやレーザー方式外径測定装置を用いて測定することができる。
【0058】
一方、帯電ロール21Aのマイクロ硬度が60°より硬くなると、押圧ロール21Bを取付けた場合でも電子写真感光体1との接触安定性が確保できなくなることがあり、画質濃度ムラが発生することがある。また、マイクロ硬度が45°より柔らかくなると、押圧ロール21Bが設けなくても電子写真感光体1との接触安定性が確保できることがある。しかし、低硬度化にする為には可塑剤添加量を増量する方法、シリコーンゴムのような低硬度の材料を使用することが考えられる。前者の場合、可塑剤がブリードし、画質劣化等の問題を引起してしまうことがある。後者の場合、コストアップになるために好ましくない。
【0059】
また、帯電ロール21Aのマイクロ硬度は高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1型を用いて23℃の条件下において測定した値である。
【0060】
帯電ロールのクラウン量は0〜130μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μmであり、さらに好ましくは40〜80μmである。クラウン量を上記範囲とすると、電子写真感光体1への帯電均一性・画質濃度ムラ防止が可能となる。
【0061】
ここで、クラウン量とは、帯電ロールの両端部の外径がD1、中央部分の外径がD1+ d1であるとき、d1の値を意味する。
【0062】
帯電ロール21Aを用いて電子写真感光体1を帯電させる方法としては、帯電ロールに直流電圧を印加する方法、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳して印加する方法が挙げられる。これらの方式は特に制限されるものではないが、直流電圧を印加する方法が望ましい。特に、直流電圧のみで電子写真感光体1表面を帯電すると、交流電圧が印加されないので、電子写真感光体1への流入電流量が非常に少ない。つまり、電子写真感光体1へのパルス放電も減少していることを示しており、結果として電子写真感光体1へのエッチング作用が低減され電子写真感光体1の膜減が少なく抑えられると考えられる。
【0063】
ここで、電圧の範囲としては、直流電圧は要求される電子写真感光体1の帯電電位に応じて正又は負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが望ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800V、望ましくは800〜1600V、さらに望ましくは1200〜1600Vが望ましい。交流電圧の周波数は50〜20,000Hz、望ましくは100〜5,000Hzである。
【0064】
次に、電子写感光体1について説明する。図6は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図6に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有している。
【0065】
また、図7〜10は、それぞれ本発明の電子写真感光体の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。図7〜8に示す電子写真感光体は、図6に示す電子写真感光体と同様に電荷発生層5と電荷輸送層6とに機能が分離された感光層3を備えるものである。また、図9〜10は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものである。
【0066】
図7に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。また、図8に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0067】
また、図9に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、単層型感光層8及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。また、図10に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に単層型感光層8及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0068】
なお、図6〜10に示す電子写真感光体において、下引き層4は必ずしも設けられなくてもよい。
【0069】
電子写真感光体1が備える感光層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する単層型感光層、又は電荷発生材料を含有する層(電荷発生層)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層)とを別個に設けた機能分離型感光層のいずれであってもよい。機能分離型感光層の場合、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序はいずれが上層であってもよい。なお、機能分離型感光層の場合、それぞれの層がそれぞれの機能を満たせばよいという機能分離ができるため、より高い機能を実現できる。
【0070】
電子写真感光体1としては、特に限定されるものではない。以下、代表例として図6に示す電子写真感光体1に基づいて、各要素について説明する。
【0071】
導電性支持体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、金属ベルト等が挙げられる。また、導電性支持体2としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も使用できる。
【0072】
導電性支持体2の表面は、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、中心線平均粗さ(Ra)で0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。導電性支持体2の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向がある。他方、中心線平均粗さ(Ra)が0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が不十分となる傾向がある。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性支持体2表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0073】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行なう湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行なうセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0074】
また、他の粗面化の方法としては、導電性支持体2表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も好ましく用いられる。
【0075】
上記陽極酸化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は、化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行なう。
【0076】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0077】
また、導電性支持体2には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0078】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行なうことができる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0079】
下引層4は、導電性支持体2上に形成される。下引層4は、例えば、有機金属化合物及び/又は結着樹脂を含有して構成される。
【0080】
有機金属化合物としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物等が挙げられる。
【0081】
有機金属化合物としては、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、特に有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物が好ましく使用される。
【0082】
結着樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知のものが挙げられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0083】
また、下引層4には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させてもよい。
【0084】
また、下引層4中には、低残留電位化や環境安定性の観点から、電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0085】
これらの顔料の中では、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、酸化亜鉛又は酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。
【0086】
また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、結着樹脂等で表面処理してもよい。
【0087】
電子輸送性顔料は多すぎると下引層4の強度を低下させ、塗膜欠陥の原因となるため、下引層4の固形分全量を基準として望ましくは95質量%以下、より望ましくは90質量%以下で使用される。
【0088】
また、下引層4には、電気特性の向上や光散乱性の向上等の目的により、各種の有機化合物の微粉末若しくは無機化合物の微粉末を添加することが望ましい。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が有効である。
【0089】
添加微粉末の体積平均粒子径は、0.01μm以上2μm以下のものが望ましい。微粉末は必要に応じて添加されるが、その添加量は下引層4の固形分全量を基準として、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがより望ましい。
【0090】
下引層4は上述した各構成材料を含有する下引層形成用塗布液を用いて形成される。下引層形成用塗布液に使用される有機溶剤としては、有機金属化合物や結着樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合及び/又は分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであればよい。
【0091】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常のものが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0092】
各構成材料の混合及び/又は分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、振動ボールミル、コロイドミル、ペイントシェーカー超音波等を用いる常法が適用される。混合及び/又は分散は有機溶剤中で行われる。
【0093】
下引層4を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0094】
乾燥は、通常、溶剤を蒸発させ、成膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った導電性支持体2は、基材の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引層4を形成することが望ましい。
【0095】
下引層4の膜厚は、望ましくは0.01μm以上30μm以下、より望ましくは0.05μm以上25μm以下である。
【0096】
電荷発生層5は、電荷発生材料、さらには必要に応じて結着樹脂を含んで構成される。
電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料や三方晶セレン、酸化亜鉛等の無機顔料等公知のものを使用することができる。電荷発生材料としては、特に、380〜500nmの露光波長の光源を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料、三方晶セレン、ジブロモアントアントロン等が望ましい。その中でも、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報及び特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に望ましい。
【0097】
また、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニンの中でも特に、分光吸収スペクトルで、810nm以上839nm以下に吸収極大を有し、一次粒子径が0.10μm以下であり、且つ、BET法による比表面積値が45m2/g以上であるものが望ましい。
【0098】
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0099】
電荷発生層5は、電荷発生材料を蒸着により、又は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する電荷発生層形成用塗布液により形成される。電荷発生層5を、電荷発生層形成用塗布液を用いて形成する場合、電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0100】
電荷発生層形成用塗布液に、上記各構成材料を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができる。この際、分散によって顔料の結晶型が変化しない条件が必要とされる。さらにこの分散の際、粒子を望ましくは0.5μm以下、より望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0101】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0102】
電荷発生層形成用塗布液を用いて電荷発生層5を形成する際には、塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0103】
電荷発生層5の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5μm以下、より望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0104】
電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して構成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物が挙げられるが、特にこれらに限定されない。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0105】
また、電荷輸送材料としては、モビリティーの観点から、下記一般式(a−1)、(a−2)又は(a−3)で示される化合物が望ましい。
【0106】
【化1】
【0107】
上記式(a−1)中、R16は水素原子又はメチル基を、n10は1又は2を示す。また、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−C6H4−CH=CH−CH=C(Ar)2を示し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。また、R38、R39、R40は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
【0108】
【化2】
【0109】
上記式(a−2)中、R17及びR17’はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R18、R18’、R19及びR19’はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を、R38、R39及びR40はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。また、n2及びn3はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。
【0110】
【化3】
【0111】
上記式(a−3)中、R21は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を示す。Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。R22、R23はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
【0112】
電荷輸送層6に用いる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1乃至1:5が望ましい。
【0113】
また、高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に望ましいものである。
【0114】
高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層6の構成材料として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0115】
電荷輸送層6は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液の溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0116】
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0117】
電荷輸送層6の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
【0118】
感光層3には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0119】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
【0120】
また、感光層3には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
【0121】
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に望ましい。
【0122】
保護層7は、例えば、以下の樹脂により構成することができる。
樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの内、フェノール樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及びポリベンズイミダゾール樹脂などの熱硬化性樹脂が望ましい。これらの内、特に、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂が好ましく用いられ、これらの樹脂又はその前駆体を主成分として含む塗布液を塗布後、溶剤を乾燥させる工程において同時に加熱処理を行い、硬化させ不溶の硬化膜を形成する。
【0123】
フェノール樹脂としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーの混合物が挙げられる。このようなフェノール樹脂は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるものである。フェノール樹脂としては、一般にフェノール樹脂として市販されているものを使用できる。また、フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂が望ましい。なお、本明細書では、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
【0124】
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。
【0125】
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる傾向がある。そのため、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが望ましい。
【0126】
メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂としては、メチロール基がそのままのメチロールタイプ、メチロール基がすべてアルキルエーテル化されたフルエーテルタイプ、又はフルイミノタイプ、メチロールとイミノ基の混合タイプなど種々のものが使用できる。これら中でも、塗布液の安定性の観点から、エーテルタイプのものが望ましい。
【0127】
ウレタン樹脂としては、多官能イソシアネート、イソシアヌレート又はこれらをアルコールやケトンでブロックしたブロックイソシアネートなどが使用できる。これらの中でも、塗布液の安定性の観点から、ブロックイソシアネート又はイソシアヌレートが好ましく、これらは本発明の電子写真感光体用添加物と過熱架橋するので望ましい。
【0128】
シリコーン樹脂としては、後述の一般式(X)で示される化合物などから誘導される樹脂を使用できる。
【0129】
これらの樹脂は単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0130】
保護層7には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより望ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層7の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に望ましい。
【0131】
また、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物には、保護層7の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(X)で示される化合物を添加することもできる。
【0132】
Si(R50)(4−c)Qc (X)
[上記式(X)中、R50は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。]
【0133】
上記一般式(X)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが望ましい。
【0134】
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
【0135】
また、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物には、保護層7の強度を高めるために、下記一般式(XI)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも望ましい。
【0136】
B−(Si(R51)(3−d)Qd)2 (XI)
[上記式(XI)中、Bは2価の有機基を、R51は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、dは1〜3の整数を示す。]
【0137】
上記一般式(XI)で示される化合物としては、より具体的には、下記化合物(XI−1)〜(XI−16)が望ましいものとして挙げることができる。Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
【0138】
【表1】
【0139】
さらに、膜特性のコントロール、液寿命の延長等のため、アルコール系、ケトン系溶剤に可溶な樹脂を添加してもよい。このような樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。特に、電気特性を向上させる観点から、ポリビニルアセタール樹脂が望ましい。
【0140】
また、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長等の目的で種々の樹脂を添加することができる。本実施形態においては、アルコールに溶解する樹脂を更に加えることが望ましい。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂等が挙げられる。特に、電気特性を向上させる観点から、ポリビニルアセタール樹脂が望ましい。
【0141】
上記樹脂の重量平均分子量は2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに望ましい。重量平均分子量は2000より小さいと所望の効果が得られなくなる傾向があり、100000より大きいと溶解度が低くなり添加量が限られてしまったり、塗布時に製膜不良の原因になったりする傾向がある。添加量は1質量%以上40質量%以下が好ましく、さらに望ましくは1質量%以上30質量%以下であり、5質量%以上20質量%以下が最も望ましい。添加量が1質量%よりも少ない場合は所望の効果が得られにくくなり、40質量%よりも多くなると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる恐れがある。また、上記の樹脂は単独で用いてもよいが、それらを混合して用いてもよい。
【0142】
また、ポットライフの延長、膜特性のコントロールのため、下記一般式(XII)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、若しくはその化合物からの誘導体を含有させることが望ましい。
【0143】
【化4】
【0144】
[上記式(XII)中、A1及びA2は、それぞれ独立に一価の有機基を示す。]
一般式(XII)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンを挙げることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0145】
更に、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物には、各種粒子を添加することもできる。
【0146】
粒子の一例として、ケイ素原子含有粒子を挙げることができる。ケイ素原子含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素原子含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、体積平均粒子径が望ましくは1nm以上100nm以下、より望ましくは10nm以上30nm以下であり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。硬化性樹脂組成物中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性、強度の面から硬化性樹脂組成物中の固形分全量を基準として望ましくは0.1質量%以上50質量%以下の範囲、より望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0147】
ケイ素原子含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、球状で、体積平均粒子径が望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下であり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。
【0148】
シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。硬化性樹脂組成物中のシリコーン粒子の含有量は、硬化性樹脂組成物中の固形分全量を基準として望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲であり、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0149】
また、その他の粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系粒子や”第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物を挙げることができる。
【0150】
また、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、シリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物中に予め添加してもよいし、感光体を作製後、減圧、或いは加圧下等で含浸処理してもよい。
【0151】
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を含有することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。
【0152】
また、ヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0153】
酸化防止剤としては以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製。ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」以上三共ライフテック社製、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」以上旭電化製、「スミライザーTPS」以上住友化学社製、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」以上住友化学社製、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」以上旭電化製が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が望ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
【0154】
さらに、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの架橋構造を有する樹脂から、合成時の触媒を除去するために、該樹脂をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿などの処理を行うか、例えば、以下に例示する材料を用いて処理することが望ましい。かかる材料としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製)、レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製)、ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製)、スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製)、ナフィオン−H(デュポン社製)などの陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)などの陰イオン交換樹脂;Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2などのプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなどのプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸などのイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなどの単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類などの複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;LiSO4,MgSO4などの金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなどの金属リン酸塩;LiNO3,Mn(NO3)2などの金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体などのアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂などのアミノ基を含有するポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0155】
また、硬度、接着性、可とう性などの膜特性の調整のために、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルビスフェノール類、フェノールエポキシ樹脂などのエポキシ含有化合物、テレフタル酸、マレイン酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸など、又はそれらの無水物を添加してもよい。添加量としては、本発明の電子写真感光体用添加物1質量部に対し、望ましくは0.05〜1質量部、より望ましくは0.1〜0.7質量部で用いられる。
【0156】
さらに、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を所望の割合で混合することもできる。これにより、電荷輸送層6との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥などを抑制することもできる。
【0157】
保護層7は、上述した各構成材料を含有する保護層形成用塗布液を用いて形成される。すなわち、保護層形成用塗布液を電荷輸送層6上に塗布して硬化させることで、保護層7は形成する。
【0158】
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶媒が使用される。また、これらの他、種々の溶媒が使用できるが、電子写真感光体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系又はケトン系溶剤、或いはそれらの混合系溶剤が好ましくい。また、沸点は50〜150℃のものが好ましく、任意に混合して使用することができる。溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1質量部に対し0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより望ましい。
【0159】
さらに、架橋する際には、保護層形成用塗布液に硬化触媒を使用してもよい。硬化触媒としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類(g)ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類などの光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、及び、無水カルボン酸化合物などが好ましく挙げられる。
【0160】
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等が挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばBF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
【0161】
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられる。
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等が挙げられる。
ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
これらの触媒の使用量は特に制限されないが、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
【0163】
保護層形成用塗布液を電荷輸送層6上に塗布する場合、塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。そして、塗布後、塗膜を乾燥させることで保護層7が形成する。
【0164】
なお、塗布の際には1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布すことにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
【0165】
架橋構造を有する樹脂を用いて保護層7を形成する場合、架橋させる際には硬化温度は望ましくは100〜170℃、より望ましくは100〜160℃である。また、硬化時間は、望ましくは30分〜2時間、より望ましくは30分〜1時間であり、加熱温度を他段階に変化させてもよい。
【0166】
架橋反応を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどのいわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気下で行うことにより、電気特性の悪化を防止することができる。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気下よりも硬化温度を高く設定することができ、硬化温度は望ましくは100〜180℃、より望ましくは110〜160℃である。また、硬化時間は、望ましくは30分〜2時間、より望ましくは30分〜1時間である。
【0167】
保護層7の膜厚は、0.5〜15μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、1〜5μmがさらに好ましい。
【0168】
保護層7の25℃における酸素透過係数は、4×1012fm/s・Pa以下であることが好ましく、3.5×1012fm/s・Pa以下であることがより好ましく、3×1012fm/s・Pa以下であることがさらに好ましい。
【0169】
ここで、酸素透過係数は層の酸素ガス透過のし易さを表す尺度であるが、見方を変えると、層の物理的な隙間率の代用特性と捕らえることもできる。なお、ガスの種類が変われば透過率の絶対値は変わるものの、検体となる層間で大小関係の逆転は殆どない。したがって、酸素透過係数は、一般的なガス透過のし易さを表現する尺度と解釈してよい。
【0170】
つまり、保護層7の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たす場合には、保護層7においてガスが浸透しにくい。したがって、画像形成プロセスにより生じる放電生成物の浸透が抑制され、保護層7に含有される化合物の劣化が抑制され、電気特性を高水準に維持することができ、高画質化、長寿命化に有効である。
【0171】
なお、電子写真感光体1において、単層型感光層を構成する場合、単層型感光層は、電荷発生材料と結着樹脂を含有して形成される。電荷発生材料としては機能分離型感光層における電荷発生層に使用されるものと同様のものを、結着樹脂としては機能分離型感光層における電荷発生層及び電荷輸送層に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層中の電荷発生材料の含有量は、単層型感光層における固形分全量を基準として望ましくは10〜85質量%、より望ましくは20〜50質量%である。単層型感光層には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送材料や高分子電荷輸送材料を添加してもよい。その添加量は単層型感光層における固形分全量を基準として5〜50質量%とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。単層型感光層の膜厚は、5〜50μm程度が好ましく、10〜40μmとすることがさらに好ましい。
【0172】
次に、現像装置25について説明する現像装置25は、電子写真感光体1上の静電潜像を現像してトナー像を形成するものである。
【0173】
現像装置25に使用されるトナーについて説明する。かかるトナーとしては、平均形状係数SF1(SF1=ML2/A×π/4×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が110以上135以下であることがより好ましい。平均形状係数(SF1)は、スライドガラス上に載置したトナー粒子の像を、ビデオカメラを通じて、光学顕微鏡により測定し、画像解析装置(LUZEXIII、NIRECO社製)に取り込み、トナーの最大長(ML)、および投影面積(A)を算出し、これらの値を上記式に代入して形状係数が求められる。なお平均形状係数は、任意の100個のトナー粒子における上記式より算出された形状係数の平均値である。平均形状係数はトナーの丸さ度合いを示すものであり、形状が丸いほどクリーニングブレードをすり抜ける転写残トナーが増え、帯電ロールの汚染を増加させてしまうことがある。また反対に不定形過ぎると、転写性が低下し、転写残トナーの増えることによって帯電ロールの汚染を増加させてしまうことがある。
【0174】
さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。この体積平均粒径が小さ過ぎるとクリーニングブレードをすり抜ける転写残トナーが増え、帯電ロールの汚染を増加させてしまうことがある。同時にトナーの流動性の悪化や、キャリアから十分な帯電能を付与されにくくなるりやすく、背景部へのカブリが生じたり、濃度再現性が低下しやすくなることもある。また体積平均粒径が大き過ぎる場合には、結果的に粒径分布も拡大してトナー帯電量分布が不均一となり、逆極性トナーが増えることによって、帯電ロールの汚染を増加させてしまう問題が生じ易くなるとともに、微細なドットの再現性や階調性が悪化することがある。
【0175】
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0176】
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
【0177】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0178】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0179】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることもできる。
【0180】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
【0181】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
【0182】
また、帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが好ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0183】
現像装置25に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0184】
現像装置25に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。但し、体積平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0185】
現像装置25に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えることができる。
【0186】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0187】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましく使用される。
【0188】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0189】
粒子径としては、体積平均平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。体積平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが好ましい。
【0190】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行なう為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために好ましい。
【0191】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
【0192】
クリーニング装置27は、繊維状部材(ロール形状)27aと、クリーニングブレード(ブレード部材)27bとを備える。
【0193】
クリーニング装置27は、繊維状部材27a及びクリーニングブレード27bが設けられているが、クリーニング装置としてはどちらか一方を備えるものでもよい。繊維状部材27aとしては、ロール形状の他に歯ブラシ状としてもよい。また、繊維状部材27aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、さらに感光体軸方向にオシレーション可能に支持されていてもよい。繊維状部材27aとしては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等や、トレシー(東レ社製)等の極細繊維からなる布状のもの、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維を基材状又は絨毯状に植毛したブラシ状のもの等を挙げることができる。また、繊維状部材27aとしては、上述したものに、導電性粉末やイオン導電剤を配合して導電性を付与したり、繊維一本一本の内部又は外部に導電層が形成されたもの等を用いることもできる。導電性を付与した場合、その抵抗値としては繊維単体で102Ω以上109Ω以下のものが望ましい。また、繊維状部材27aの繊維の太さは、望ましくは30d(デニール)以下、より望ましくは20d以下であり、繊維の密度は望ましくは2万本/inch2以上、より望ましくは3万本/inch2以上である。
【0194】
クリーニング装置27には、クリーニングブレード、クリーニングブラシで感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められる。この目的を長期に渡って達成すると共にクリーニング部材の機能を安定化させるために、クリーニング部材には、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑性物質(潤滑成分)を供給することが望ましい。
【0195】
例えば、繊維状部材27aとしてロール状のものを用いる場合、金属石鹸、ワックス等の潤滑性物質と接触させ、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが望ましい。クリーニングブレード27bとしては、通常のゴムブレードが用いられる。このようにクリーニングブレード27bとしてゴムブレードを使用する場合には、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することは、ブレードの欠けや磨耗を抑制することに特に効果的である。
【0196】
以上説明したプロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0197】
露光装置30としては、帯電した電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成させるものであればよい。また、露光装置30の光源としては、マルチビーム方式の面発光レーザを用いることが望ましい。
【0198】
転写装置40としては、電子写真感光体1上のトナー像を被転写媒体(中間転写体50)に転写するものであればよく、例えば、ロール形状の通常使用されるものが使用される。
【0199】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。なお、この中間転写体を備えていない直接転写方式の画像形成装置もあるが、本発明の電子写真感光体はこのような画像形成装置に好適である。その理由は、直接転写方式の画像形成装置では、プリント用紙からの紙粉やタルク等が発生しそれが電子写真感光体へ付着しやすく、付着物に起因する画質欠陥が発生する傾向にある。しかし、本発明の電子写真感光体によれば、クリーニング性に優れているため紙粉やタルク等の除去が容易であり、直接転写方式の画像形成装置であっても安定した画像を得ることができる。
【0200】
なお、本発明でいう被転写媒体とは、電子写真感光体1上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体1から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体50を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
【0201】
図3は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。図3に示す画像形成装置110は、電子写真感光体1が画像形成装置本体に固定され、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。
【0202】
画像形成装置110においては、電子写真感光体1とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27が画像形成装置本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
【0203】
耐磨耗性に優れた電子写真感光体を用いた場合、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置21、現像装置25又はクリーニング装置27をそれぞれ本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもでき、それにより1プリント当りの部材コストをさらに低減することができる。
【0204】
なお、画像形成装置110は、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0205】
図4は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。画像形成装置120は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0206】
タンデム方式の画像形成装置120では、各色の使用割合により各電子写真感光体の磨耗量が異なってくるために、各電子写真感光体の電気特性が異なってくる傾向がある。これに伴い、トナー現像特性が初期の状態から除々に変化してプリント画像の色合いが変化し、安定な画像を得ることができなくなる傾向にある。特に、画像形成装置を小型化するために、小径の電子写真感光体が使用される傾向にあり、直径φ30mm以下のものを用いたときにはこの傾向が顕著になる。ここで、電子写真感光体に、本発明の電子写真感光体の構成を採用すると、その直径をφ30mm以下とした場合にもその表面の磨耗が抑制される。したがって、本発明の電子写真感光体は、タンデム方式の画像形成装置に対して特に有効である。
【0207】
図5は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。図5に示した画像形成装置130は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、所謂4サイクル方式の画像形成装置である。画像形成装置130は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で図中の矢印Aの方向に回転される感光体ドラム1を備えており、感光体ドラム1の上方には、感光体ドラム1の外周面を帯電させる帯電装置21が設けられている。
【0208】
また、帯電装置21の上方には面発光レーザアレイを露光光源として備える露光装置30が配置されている。露光装置30は、光源から射出される複数本のレーザービームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、感光体ドラム1の外周面上を感光体ドラム1の軸線と平行に走査させる。これにより、帯電した感光体ドラム1の外周面上に静電潜像が形成される。
【0209】
感光体ドラム1の側方には現像装置25が配置されている。現像装置25は回転可能に配置されたロール状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器25Y,25M,25C,25Kが設けられている。現像器25Y,25M,25C,25Kは各々現像ロール26を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の色のトナーを貯留している。
【0210】
画像形成装置130でのフルカラーの画像の形成は、感光体ドラム1が4回転する間に行われる。すなわち、感光体ドラム1が4回転する間、帯電装置21は感光体ドラム1の外周面の帯電、露光装置30は、形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザビームを感光体ドラム1の外周面上で走査させることを、感光体ドラム1が1回転する毎にレーザビームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また現像装置25は、現像器25Y,25M,25C,25Kの何れかの現像ロール26が感光体ドラム1の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、感光体ドラム1の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、感光体ドラム1の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、感光体ドラム1が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。これにより、感光体ドラム1が1回転する毎に、感光体ドラム1の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、感光体ドラム1が4回転した時点で感光体ドラム1の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0211】
また、感光体ドラム1の下方には無端の中間転写ベルト50が配設されている。中間転写ベルト50はロール51,53,55に巻掛けられており、外周面が感光体ドラム1の外周面に接触するように配置されている。ロール51,53,55は図示しないモータの駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト50を図2矢印B方向に回転させる。
【0212】
中間転写ベルト50を挟んで感光体ドラム1の反対側には転写装置(転写器)40が配置されており、感光体ドラム1の外周面上に形成されたトナー像は転写装置40によって中間転写ベルト50の画像形成面に転写される。
【0213】
また、感光体ドラム1を挟んで現像装置25の反対側には、感光体ドラム1の外周面に潤滑剤供給装置29及びクリーニング装置27が配置されている。感光体ドラム1の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト50に転写されると、潤滑剤供給装置29により感光体ドラム1の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち転写されたトナー像を保持していた領域がクリーニング装置27により清浄化される。
【0214】
中間転写ベルト50よりも下方側には用紙受け60が配置されており、用紙受け60内には記録材料としての用紙Pが複数枚積層された状態で収容されている。用紙受け60の左斜め上方には取り出しロール61が配置されており、取り出しロール61による用紙Pの取り出し方向下流側にはロール対63、ロール65が順に配置されている。積層状態で最上方に位置している記録紙は、取り出しロール61が回転されることにより用紙受け60から取り出され、ロール対63、ロール65によって搬送される。
【0215】
また、中間転写ベルト50を挟んでロール55の反対側には転写装置42が配置されている。ロール対63、ロール65によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト50と転写器42の間に送り込まれ、中間転写ベルト50の画像形成面に形成されたトナー像が転写装置42によって転写される。転写装置42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ロール対を備えた定着装置44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着装置44によって溶融定着された後に画像形成装置130の機体外へ排出され、排紙用紙受け(図示せず)上に配置される。
【0216】
なお、本発明のプロセスカートリッジ、及び本発明の画像形成装置の構成としては、特に限定されるわけではなく、公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0217】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0218】
[実施例1]
(帯電ロールの作製)
−弾性層の形成−
下記混合物をオープンロールで混練りし、SUS416からなる直径6mmの導電性支持体表面に、厚さ3mmとなるように円筒状に被覆し、内径11.0mmの円筒型の金型に入れ、170℃で30分間加硫させ、金型から取り出した後、研磨し円筒状の導電性弾性層Aを得た。また、研磨条件変更により帯電ロールのクラウン量を変えた物を4水準(0μm、50μm、100μm、150μm)作製した。
【0219】
・ゴム材 ・・・・100質量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム)Gechron3106:日本ゼオン社製)
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製)・・・・・25質量部
・導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製) ・・・・・・8質量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム) ・・・・・・1質量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・・・2.0質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製) ・・・・0.5質量部
【0220】
−表面層の形成−
下記混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液Aを、メタノールで希釈し、弾性層の表面に浸漬塗布した後、140℃で15分間加熱乾燥し、厚さ4μmの表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0221】
・高分子材料 ・・・・100質量部
(共重合ナイロン)アラミンCM8000:東レ社製
・導電剤 ・・・・・30質量部
(アンチモンドープ酸化スズ)SN−100P:石原産業社製
・溶剤(メタノール) ・・・・500質量部
・溶剤(ブタノール) ・・・・240質量部
【0222】
−帯電ロールの評価−
得られた帯電ロールは、高分子計器社製マイクロ硬度計MD1を用いて測定した結果、54°であった。また、アサカ理研社製レーザー外径測定機による測定結果より、クラウン量を算出したところ、外径(両端部の外径)はφ9mmで、4水準(0、50、100、150μ)のクラウン量であった。
【0223】
(押圧ロールの作製)
押圧ロールとしては、発泡ウレタンシート((株)イノアックコーポレーション社製EPM70)を所定の大きさに加工後、シートにφ3mmの穴を開け、その穴へホットメルトを塗布した外径4mmのシャフト(芯体)を挿入し、加熱により接着を行った。冷却後、研磨により弾性層として発泡ウレタン層を有する押圧ロールを作製した。この押圧ロールは、外径がφ8mm、弾性層肉厚は2mm、弾性層の長さが220mm、になるように作製した。
【0224】
このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは51°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは60°であり、硬度差(Ae-Ac)は9°であった。
【0225】
[実施例2]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1同様の物を用いた。
【0226】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した押圧ロールの中央部に幅50mm、厚み4mmの発泡ウレタンシート((株)イノアックコーポレーション社製EPM70)を貼り付けた。
【0227】
このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは40°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは60°であり、硬度差(Ae-Ac)は20°であった。
【0228】
[実施例3]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1と同様の物を用いた。
【0229】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した押圧ロールの長手方向両端から内側へ50mmに位置する個所の発泡ウレタンを切取り、切取り部分に実施例1で作製した押圧ロールと同様な組成の弾性層を外径がφ13mmになるようにして貼り付けた。このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは51°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは57°であり、硬度差(Ae-Ac)は6°であった。
【0230】
[実施例4]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1と同様の物を用いた。
【0231】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した押圧ロールの長手方向両端から内側へ50mmに位置する個所を除いた長手方向中央部の発泡ウレタンを切取り、切取り部分に実施例1で作製した押圧ロールと同様な組成の弾性層を外径がφ13mmになるようにして貼り付けた。このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは60°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは45°であり、硬度差(Ae-Ac)は15°であった。
【0232】
[実施例5]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは、シャフト外径を10mm、帯電ロール外径を14mmにした以外は実施例1と同じものを用いた。
【0233】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した物と同じ物を作製した。
【0234】
[実施例6]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは、帯電ロール外径を8mmにした以外は実施例1と同じものを用いた。
【0235】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した物と同じ物を作製した。
【0236】
[実施例7]
(帯電ロール)
ポリジメチルシロキサン 100質量部に導電剤としてカーボンブラック アサヒサーマル(旭カーボン社製)25質量部とケッチェンブラックEC(ライオン社製)8質量部、架橋剤として、2,5―ジ―t―ブチルパーオキシヘキサン0.5部を混練した。この混合物を得た以降は実施例1と同様に作製した。
得られた帯電ロールのマイクロ硬度は高分子計器社製マイクロ硬度計MD1で44°であった。
【0237】
(押圧ロール)
実施例1で作製した同じ物を作製した。
【0238】
[実施例8]
(帯電ロール)
弾性層の組成として充填剤であるカオリン5質量部添加した以外は、実施例1と同じように作製した。
得られた帯電ロールのマイクロ硬度は高分子計器社製マイクロ硬度計MD1で68°であった。
【0239】
(押圧ロール)
実施例1で作製した同じ物を作製した。
【0240】
[比較例1]
(帯電ロールの作製)
実施例5と同じ帯電ロールを作製した。
【0241】
(押圧ロールの作製)
押圧ロールは使用しなかった。
【0242】
[比較例2]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1と同じものを用いた。
【0243】
(押圧ロールの作製)
押圧ロールは使用しなかった。
【0244】
[比較例3]
(帯電ロール作製)
帯電ロールは実施例1と同じものを作製した。
【0245】
(押圧ロール作製)
支持シャフトの外径を5mmにした以外は実施例1と同様の物を作製した。このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは77°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは78°であり、硬度差(Ae-Ac)は1°であった。
【0246】
[比較例4]
(帯電ロール作製)
帯電ロールは実施例1と同じものを用いた。
【0247】
(押圧ロール作製)
実施例1で作製した押圧ロールの長手方向両端から内側へ50mmに位置する箇所の発泡ウレタンを切取り、切取り部分に実施例1で作製した帯電ロールと同様な組成の弾性層を外径がφ8mmになるようにして貼り付けた。
【0248】
このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは51°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは78°であり、硬度差(Ae-Ac)は27°であった。
【0249】
[評価]
実施例、比較例で作製した押圧ロール・帯電ロールを、帯電ロールへ印加する電圧を直流電源のみに改造、押圧ロールを取り付けられるように改造したカラー複写機DocuCentre Color400CP:富士ゼロックス社製に装着し、A4用紙5枚印字テストした。押圧ロール、帯電ロール、感光体の位置関係は各軸点が一直上に位置するように配置した(図11参照)。また、押圧ロールの押圧力(帯電ロールと感光体との接触面の法線方向の押圧力)が4Nとなるようにした。また、帯電ロールに直流電圧900Vのみを印加するようにした。
【0250】
画質評価は、5枚の画像について、ハーフトーン画像中での濃度ムラの有無により以下の基準で判定した。
A:濃度ムラ発生無し
B:濃度ムラが発生しているが、良く見ないと分からないレベル。
C:濃度ムラ発生し、直ぐに分るレベル。
【0251】
また、クリーン性評価についても次のように評価した。上記画質濃度ムラ評価後、A3用紙にてハーフトーンを50,000枚印字後のハーフトーン印字を行い、帯電ロール表面の汚れのムラを観察することにより行った。。評価基準は以下の通りである。
A:汚れムラ発生無し。
B:汚れムラは発生しているが、よく見ないと分らないレベルであり、画質上濃度ムラが発生しないレベル。
C:汚れムラが発生しており、画質上も濃度ムラが発生する。
【0252】
以上の評価結果を表2及び表3にまとめて示した。
【0253】
【表2】
【0254】
【表3】
【0255】
上記結果から、押圧ロールを取付けていない場合、帯電ロールの外径が14mmでは帯電ロールのクラウン量を0〜150μmの範囲で変化させると画質濃度ムラが発生しない領域が存在する(比較例1)。この現象は以下の様に説明できる。クラウン量が小さい場合、帯電ロールの両端より荷重をかけて像保持体へ押付けている為、帯電ロールが撓み、中央部が浮き気味になってしまい、像保持体軸方向の帯電量が不均一になる。その結果、画質濃度ムラが発生する。クラウン量の増加、つまり、帯電ロールの中央部のみ肉厚を太くしていくと、帯電ロールの撓みによる中央部の浮きを補償することができるので、像保持体上の帯電量が均一になり、画質濃度ムラがなくなる。更に、クラウン量を増加させると、帯電ロール両端部が浮き気味になる為に帯電量が不均一になる。つまり、クラウン量の適正領域が広い程使い勝手がよい。
【0256】
比較例1に対して、帯電ロールの外径が9mmでは帯電ロールのクラウン量が0〜150μmの範囲では画質濃度ムラが発生しない領域が存在しない。これは、帯電ロールの小径化に撓み量が増加すること、更には弾性層肉厚薄膜化の為に、帯電ロールの高硬度化が進む事での感光体との接触幅減少化により、帯電ロールの撓み量を補償するクラウン量と帯電ロール端部の浮き始めるクラウン量が殆ど同じであり、クラウン量の適正領域が存在しない為である(比較例2)。
【0257】
比較例2に対して、中央部と端部のアスカーC硬度硬度差が1°しかない押圧ロールを取付けると(比較例3)、クラウン量の適正領域が存在していることが分る。これは、押圧ロールにより帯電ロールの撓み量を抑制した結果である。しかし、従来技術である比較例1に比べて、クラウン量適正領域が小さく、帯電ロールのクラウン量の製造公差を考慮すると実用するのは困難である。
【0258】
比較例3に対して、中央部と端部のアスカーC硬度硬度差が6〜20°である押圧ロールを取付けると(実施例1〜6)、クラウン量の適正領域が大きくなっている。比較例3では押圧ロールの撓みの変動量が小さい為に帯電ロールが撓む軸方向中央部で像保持体に押付ける力が大きくなる。その結果、クラウン量を0μmより増加してくと、50μm程度で中央部に比べて端部が浮き気味になり、中央部の感光体との帯電ロール接触形状と端部の接触形状が異なり、帯電ムラが起こる。
【0259】
それに対して、実施例1〜6では押圧ロールの撓みの変動量が大きい為に、帯電ロールが撓む軸方向中央部で像保持体を押付ける力が小さくなる。その結果、クラウン量を0より増大していくと、100μmでも像保持体と帯電ロールの接触形状の軸方向ムラが小さくなる。つまり、クラウン量の適正領域が広がる。
【0260】
前記帯電ロールのクラウン量の適正領域は、帯電ロールのマイクロ硬度が柔らかい程広がる(実施例1、7、8)。
【0261】
一方、実施例2より押圧ロールの中央部と端部のアスカーC硬度硬度差を27°と大きくすると、帯電ロールの撓み量の抑制力が小さくなる為、クラウン量の適正領域が小さくなり、使用が困難となる(比較例4)。
【0262】
従って、長手方向中央部と長手方向両端部との間で所定の関係を持つ実施例では、どのような径の帯電ロールを用いても像保持体への均一な接触幅、及び像保持体への均一な帯電が得られることがわかる。
【0263】
また、帯電ロールのクリーニング性に関しては、押圧ロールを取付けていない場合は帯電ロール上の汚れムラが発生し、画質上も濃度ムラが発生する(比較例1,2)。帯電均一性に問題が無く画質濃度ムラの発生が無い状態になる条件で押圧ロールを取付けた場合、帯電ロール上の汚れムラも、画質濃度ムラも発生しない上、帯電ロール上の汚れ量も少なくなっており、クリーニングロールとして使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】本発明の帯電装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す模式図である。
【図6】電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図7】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図8】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図9】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図10】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図11】電子写真感光体(像保持体)、帯電部材(帯電ロール)、及び押圧部材(押圧ロール)の位置関係を示す模式図である。
【図12】アスカーC硬度の測定方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0265】
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、20…プロセスカートリッジ、100,110,120,130…画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いて画像を形成する画像形成装置に適用されるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置においては、先ず、無機又は有機材料からなる光導電性感光体からなる像保持体表面に帯電部材を用い一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電濳像を形成した後、帯電したトナーで前記静電濳像を現像して可視化したトナー像が形成される。そして、該トナー像を中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の転写材に静電的に転写し、記録材に定着することにより所要の再生画像が得られる。
【0003】
近年、電子写真方式の画像形成装置では、被帯電体としての上記像保持体表面を均一に帯電させる部材として、帯電ロールが多用されている。帯電ロールは、電圧が印加された状態で像保持体に接触し、像保持体との間の微少な間隙にて放電し像保持体表面を帯電させる。
【0004】
このような帯電ロールの表面をクリーニングするためのクリーニングロールを設けた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1〜2)。
【0005】
ところで、上記帯電ロールは、像保持体を均一に帯電させるために、抵抗、形状が厳密に制御されている。帯電ロールの両端に荷重をかけて使用する為、帯電ロールシャフトが撓み、接触幅のムラが生じ、帯電ムラが生じてしまう。従来、上記問題に対して帯電ロールの長手方向中央の外径を長手方向両端部の外径よりも大きくした太鼓形状(以下、「クラウン形状」という場合もある)にすることで、帯電を均一にする技術が用いられてきた。しかし、近年のカラープリンターの小型化により各部材も小型化が強いられるようになり、φ10以下の帯電ロールの要求が出てきている。φ10以下の帯電ロールを用いる場合、帯電ロールの支持シャフトも細くなる為、支持シャフトの撓み量が大きくなる。更に、帯電ロールの弾性層の肉厚も薄くなる為、帯電ロールの硬度が高くなる傾向にある。その結果、帯電ロールをクラウン形状とし帯電ロールの長手方向中央の外径と長手方向両端部の外径との差(以下「クラウン量」という場合がある)をを大きくしても均一な接触幅が得られなくなり、画質上濃度ムラが発生してしまう。
【0006】
更には、帯電ロールを用いた電子写真用画像形成装置においては、像保持体表面に付着した転写残トナー、キャリア、紙粉等の異物が、帯電ロールと像保持体との接触部分に進入することにより、該異物が帯電ロール表面に付着し帯電ロールを汚染する。帯電ロール表面に異物が付着すると、異物付着部分は抵抗が高くなり、像保持体の帯電不良を生じたり、異物付着部分で異常放電を引き起こしたりして、現像、転写後の画像において、白点や色点といった画像欠陥を引き起こす。上記異物の付着による汚染が長期的に継続された帯電ロールは、ロール全体としても抵抗にムラができるため、像保持体の帯電ムラを生じやすく、形成された画像に、さらに濃度ムラや、画像全面に及ぶ白点や色点といった画質欠陥を引き起こす。
【0007】
その為、接触部が不均一な場合、該異物に掛かる圧力が不均一になる為、帯電ロールに付着する量が不均一に成ってしまう。その結果、像保持体の帯電ムラが起き易くなり、寿命の低下に繋がる。
【0008】
これらの改善方法として、帯電ロールの低硬度化が考えられる。帯電ロールの低硬度化により均一な接触幅を得る事は可能であるが、帯電ロールのコストアップや二次障害に繋がってしまい適用することが難しい。例えば、可塑剤を多量に添加する方法、若しくはシリコーンゴムといった柔らかいゴムを用いる事が考えられるが、コストアップだけでなく、ブリードが生じ、画質劣化等の問題となる。
【0009】
【特許文献1】特開平05−273846号公報
【特許文献2】特開2000−172055公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における問題を鑑み、小径の帯電部材を用いても像保持体への均一な接触幅、及び像保持体への均一な帯電が得られるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段により解決される。すなわち、
本発明のプロセスカートリッジは、
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって、像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電部材を押圧するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置、及び、前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング装置からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明のプロセスカートリッジにおいて、前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることが好適である。
【0013】
本発明のプロセスカートリッジにおいて、前記帯電部材は、直流電圧を印加して像保持体を帯電させることが好適である。
【0014】
本発明のプロセスカートリッジにおいて、前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることが好適である。
【0015】
一方、本発明の画像形成装置は、
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電ロールを圧接するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
帯電した前記像保持体に静電潜像形成するための露光装置と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写装置と、
を備えることを特徴としている。
【0016】
本発明の画像形成装置において、前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることが好適である。
【0017】
本発明の画像形成装置において、前記帯電部材は、直流電圧を印加して像保持体を帯電させることが好適である。
【0018】
本発明の画像形成装置において、前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、どのような径の帯電部材を用いても像保持体への均一な接触幅、及び像保持体への均一な帯電が得られるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
【0022】
図2は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図2に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、少なくとも帯電装置21を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置30と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1(像保持体)に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体1に接するに配置されている。
【0023】
プロセスカートリッジ20は、ケース内に帯電装置21とともに電子写真感光体1、現像装置25、クリーニング装置27及び繊維状部材(平ブラシ状)29を、取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0024】
そして、帯電装置21は、例えば、図1に示すように、電子写真感光体1(被帯電部材)を帯電させるための帯電ロール21Aと、帯電ロール21Aの外周面に接して配設される押圧ロール21Bとを有している。
【0025】
以下、押圧ロールについて説明する。
押圧ロール21Bは、押圧部材として設けられるものであり、電子写真感光体1と帯電ロール21Aとの接触面の法線方向に帯電ロール21Aを電子写真感光体1へ押付ける力が働くように帯電ロール21Aを押圧するように、帯電ロール21Aに接触して配設されている。
【0026】
具体的には、図11に示すように、各部材の軸と直交する断面でみたとき、電子写真感光体1と帯電ロール21Aと押圧ロール21Bとの軸点が同一線上となるように各部材を配設することがよい。無論、帯電ロール21Aを電子写真感光体1へ押付ける力が働くように帯電ロール21Aを押圧できれば、これに限られず、例えば、電子写真感光体1及び帯電ロール21Aの軸点上を通る線と、帯電ロール21A及び押圧ロール21Bの軸点上を通る線と、のなす角度θ(鋭角)が±45°の範囲内となるように、押圧ロール21Bを配設することがよい。
【0027】
また、押圧ロール21Bによる帯電ロール21Aへの押圧力は、電子写真感光体1と帯電ロール21Aとの接触面の法線方向の押圧力が1.0N〜7.0Nとなるように配置されることが好ましく、より好ましくは2.0N〜6.0Nであり、さらに好ましくは3.0N〜5.0Nである。押圧力が上記範囲とすることで、より効果的に帯電ロール21Aと電子写真感光体1と均一な接触幅、及び帯電ロール21Aによる電子写真感光体1への均一な帯電を得ることができる。
【0028】
押圧ロール21Bは、その外周面(弾性層表面)例えば、帯電ロール21Aの外周面に接離自在の状態で接し、且つ帯電ロール2の軸方向に往復移動自在に設置されていてもよい。これにより、押圧を必要としない場合(画像形成装置が長時間停止している場合等)、帯電ロール21Aから押圧ロール21Bを離間させた状態に置くことで、帯電ロール21Aの圧縮劣化を防止することができる。
【0029】
なお。押圧ロール21Bは、帯電ロール21Aと接するときは、帯電ロール21Aに押圧された状態で配置され、帯電ロール21Aの回転に伴い従動回転するようになっている。これにより、帯電ロール21Aへのスクラッチキズを防止することができる。
【0030】
押圧ロール21Bは、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たすものである。条件として好ましくはAc<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦15°、より好ましくはAc<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦10°である。
【0031】
Ac<Aeを満たさない、即ちAeの方がAc以下であると、帯電ロール21Aの撓み量を規制する事はできるが、帯電ロール21Aのクラウン量の変改に対して、帯電ムラ・画質濃度ムラのラチチュード(Latitude)が非常に小さくなり、帯電ロール21Aのクラウン量の製造公差を確保する事が難しくなる。
【0032】
また、Ac−Aeが上記範囲より大きいと帯電ロール21Aの撓みを規制することができなくなり、帯電ムラが出来、画質上濃度ムラとなる。一方、Ac−Aeが上記範囲より小さいと帯電ロール21Aの撓み量を規制することができるが、帯電ロール21Aのクラウン量の変化に対して、帯電ムラ・画質濃度ムラのラチチュード(Latitude)が非常に小さくなり、帯電ロール21Aのクラウン量の製造公差を確保することが難しくなる。
【0033】
また、長手方向中央部のアスカーC硬度Ac、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeいずれの硬度も、30°〜70°の範囲であることが好ましく、より好ましくは40°〜65°であり、さらに好ましくは50°〜60°である。いずれの硬度も上記範囲とすることで、帯電ロール表面へ傷を付けることを防止する事ができる。
【0034】
ここで、「長手方向中央部」とは、押圧部材における帯電部材への押圧面の長手方向長さの中心を意味する。一方、「長手方向両端部」とは、押圧部材における帯電部材への押圧面の長手方向両端から内側へ30cmに位置する箇所を意味する。また、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは2箇所の値の平均値とする。
【0035】
また、押圧ロール21Bを上記条件を満たすためには、例えば、弾性層の材料を中央部と端部で変える方法、弾性層の中央部と端部で厚みを変える方法、芯体の厚み・外径を小さくする方法等々により実現することができる。
【0036】
アスカーC硬度の測定は、押圧部材の長手方向両端を支持した状態で(本実施形態のロール形状の場合、その芯体両端を軸受けした状態で)、高分子計器社製アスカーC硬度硬度計を用い、長手方向中央部、長手方向両端部に対し、荷重1kgの条件で計測を行った時の値である。具体的には、図12に示すように、押圧ロール21Bの芯体21B−1の両端を、支持台70に設けた軸受け部材71により軸受けした状態で、押圧ロール21Bの弾性層21B−2の長手方向中央部Tc、長手方向両端部Teに対し、測定を行う。
【0037】
押圧ロール21Bは、例えば、棒状の芯体外周面に弾性層を設けた構成とすることができる。なお、押圧部材はロール形状のみならず、シート状(板状)であってもよい。シート状の場合、板状の芯体表面(押圧面となる側)に弾性層を設けた構成とすることができる。
【0038】
芯体(棒状、板状含む)の材質としては、金属(快削鋼、ステンレス鋼等)、樹脂(ポリオキシメチレン(POM)等)などが挙げられ、摺動性等の用途に応じて材質を選択することができる。また、芯体には、摺動性等の用途に応じて表面処理を施すこともできる。材質が特に金属の場合、防錆の観点からメッキ処理するのが好ましい。また、樹脂等で導電性を有さない材質の場合、メッキ処理等一般的な処理により加工して導電化処理を行っても良いし、そのまま使用しても良い。
【0039】
弾性層の構成としては1層構成でも積層構成でも構わないし、ソリッド層でも発泡層であっても良し、ソリッド層と発泡層の2層の構成でも構わない。
【0040】
弾性層の材料としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、又はポリプロピレン等の発泡性の樹脂、又はシリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、EPDM、NBR、CR、塩素化ポリイソプレン、イソプレン、アクリロニトリル―ブタジエンゴム、スチレン―ブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム等のゴム材料を1種類、又は、2種類以上をブレンドしてなる材料を用いることができる。これらには必要に応じて、発泡助剤、整泡剤、触媒、硬化剤、可塑剤、加硫促進剤等の助剤を加えてれば良い。
【0041】
特に、擦れによる帯電ロールの表面に傷を付けない為に、また、長期に渡り千切れや破損が生じないようにする為に引き裂き、引っ張りに強い発泡ポリウレタンを用いることが好ましい。ポリウレタンとして特に制限するものではないが、ポリエステルポリオール、ポリーエテルポリエステルやアクリルポリールなどのポリオールと、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネートの反応を伴っていれば良く、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど鎖延長剤が混合されていることが好ましい。また、水やアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物などの発泡剤を用いて発泡させるのが一般的である。さらに必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えるとよい。
【0042】
なお、押圧ロール21Bは、弾性層を帯電ロール21Aのクリーニングに可能な構成にすれば、具体的には例えば弾性層を発泡ウレタンを含む構成にすれば、クリーニングロールとしての機能も持たせることができる。
【0043】
クリーニングロールとしての機能を持った押圧ロール21Bは、帯電ロール21Aと接するときに圧縮され、離反するときに圧縮されて歪んだ状態から元の状態に戻るための復元力が作用して、この復元するときに生じる力によって帯電ロール21A上の付着物を除去することできる。これにより、帯電ロール21A表面に付着する物質を除去し、帯電ロール21A表面への転写残トナーや異物の付着及び蓄積による汚染に起因する画像欠陥の発生を防止することが可能となる。
【0044】
以下、帯電ロールについて説明する。なお、符号は省略して説明する。
帯電ロール21Aは、接触帯電方式の部材であり、電子写真感光体1の感光層膜厚の減少を抑制することができる。また、接触帯電方式の帯電ロール21Aは、電子写真感光体1表面に接触させ、電圧を印加することにより電子写真感光体1表面を帯電させるものである。
【0045】
帯電ロール21Aは、芯体と、その外周面に例えば弾性層、抵抗層が順次形成したものが挙げられる。さらに必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることもできる。
【0046】
帯電ロール21Aは、押圧ロール21Bにより電子写真感光体1押圧させて、電子写真感光体1の回転に伴い従動回転させるように、電子写真感光体1に圧接して配置されることがよい。また、帯電ロールに駆動手段を取り付け、電子写真感光体1とは異なる周速度で回転させるように配置してもよい。
【0047】
次に、帯電ロール21Aの各部材について説明する。芯体としては、導電性を有するもので、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の成型品が用いられる。また、その他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0048】
次に弾性層について説明する。弾性層としては、例えば、導電性あるいは半導電性を有するもので、一般にはゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものである。
【0049】
ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
【0050】
導電性粒子あるいは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いることができ、これらの材料は単独あるいは2種以上混合して用いても良い。
【0051】
抵抗層及び保護層としては、結着樹脂に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したもので、体積抵抗率として103〜1014Ωcm、望ましくは105〜1012Ωcm、さらに望ましくは107〜1012Ωcmがよい。抵抗層及び保護層の膜厚としては0.01〜1000μm、望ましくは0.1〜500μm、さらに望ましくは0.5〜100μmがよい。
【0052】
結着樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン 樹脂等が用いられる。
【0053】
導電性粒子あるいは半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。
【0054】
これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0055】
帯電ロール21Aは、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることがよい。好ましくは、外径がφ6〜10mmであり、且つその表面のマイクロ硬度が40°以上60°以下あり、より好ましくは、外径がφ8〜10mmであり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上55°以下ある。
【0056】
ここで、帯電ロール21Aの外径はφ10mm以上であると周面1ヶ所当たりの外添剤に接触する回数が減り、また放電回数が減るので、汚れや帯電性能に対する長期安定性には優れるものの画像形成装置の小型化の観点からφ10mm以下が好ましい。なお、外径φ6mm以下では帯電ロール周面1ヶ所当たりの外添剤に接触する回数が増え、また放電回数が増えるので、長期安定性に対して不利となることがある為、φ8〜10mmが好ましい。
【0057】
なお、帯電ロール21Aの外径の測定方法としては市販のノギスやレーザー方式外径測定装置を用いて測定することができる。
【0058】
一方、帯電ロール21Aのマイクロ硬度が60°より硬くなると、押圧ロール21Bを取付けた場合でも電子写真感光体1との接触安定性が確保できなくなることがあり、画質濃度ムラが発生することがある。また、マイクロ硬度が45°より柔らかくなると、押圧ロール21Bが設けなくても電子写真感光体1との接触安定性が確保できることがある。しかし、低硬度化にする為には可塑剤添加量を増量する方法、シリコーンゴムのような低硬度の材料を使用することが考えられる。前者の場合、可塑剤がブリードし、画質劣化等の問題を引起してしまうことがある。後者の場合、コストアップになるために好ましくない。
【0059】
また、帯電ロール21Aのマイクロ硬度は高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1型を用いて23℃の条件下において測定した値である。
【0060】
帯電ロールのクラウン量は0〜130μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μmであり、さらに好ましくは40〜80μmである。クラウン量を上記範囲とすると、電子写真感光体1への帯電均一性・画質濃度ムラ防止が可能となる。
【0061】
ここで、クラウン量とは、帯電ロールの両端部の外径がD1、中央部分の外径がD1+ d1であるとき、d1の値を意味する。
【0062】
帯電ロール21Aを用いて電子写真感光体1を帯電させる方法としては、帯電ロールに直流電圧を印加する方法、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳して印加する方法が挙げられる。これらの方式は特に制限されるものではないが、直流電圧を印加する方法が望ましい。特に、直流電圧のみで電子写真感光体1表面を帯電すると、交流電圧が印加されないので、電子写真感光体1への流入電流量が非常に少ない。つまり、電子写真感光体1へのパルス放電も減少していることを示しており、結果として電子写真感光体1へのエッチング作用が低減され電子写真感光体1の膜減が少なく抑えられると考えられる。
【0063】
ここで、電圧の範囲としては、直流電圧は要求される電子写真感光体1の帯電電位に応じて正又は負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが望ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800V、望ましくは800〜1600V、さらに望ましくは1200〜1600Vが望ましい。交流電圧の周波数は50〜20,000Hz、望ましくは100〜5,000Hzである。
【0064】
次に、電子写感光体1について説明する。図6は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図6に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有している。
【0065】
また、図7〜10は、それぞれ本発明の電子写真感光体の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。図7〜8に示す電子写真感光体は、図6に示す電子写真感光体と同様に電荷発生層5と電荷輸送層6とに機能が分離された感光層3を備えるものである。また、図9〜10は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものである。
【0066】
図7に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。また、図8に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0067】
また、図9に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、単層型感光層8及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。また、図10に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に単層型感光層8及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0068】
なお、図6〜10に示す電子写真感光体において、下引き層4は必ずしも設けられなくてもよい。
【0069】
電子写真感光体1が備える感光層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する単層型感光層、又は電荷発生材料を含有する層(電荷発生層)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層)とを別個に設けた機能分離型感光層のいずれであってもよい。機能分離型感光層の場合、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序はいずれが上層であってもよい。なお、機能分離型感光層の場合、それぞれの層がそれぞれの機能を満たせばよいという機能分離ができるため、より高い機能を実現できる。
【0070】
電子写真感光体1としては、特に限定されるものではない。以下、代表例として図6に示す電子写真感光体1に基づいて、各要素について説明する。
【0071】
導電性支持体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、金属ベルト等が挙げられる。また、導電性支持体2としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も使用できる。
【0072】
導電性支持体2の表面は、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、中心線平均粗さ(Ra)で0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。導電性支持体2の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向がある。他方、中心線平均粗さ(Ra)が0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が不十分となる傾向がある。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性支持体2表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0073】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行なう湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行なうセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0074】
また、他の粗面化の方法としては、導電性支持体2表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も好ましく用いられる。
【0075】
上記陽極酸化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は、化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行なう。
【0076】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0077】
また、導電性支持体2には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0078】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行なうことができる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0079】
下引層4は、導電性支持体2上に形成される。下引層4は、例えば、有機金属化合物及び/又は結着樹脂を含有して構成される。
【0080】
有機金属化合物としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物等が挙げられる。
【0081】
有機金属化合物としては、残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、特に有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物が好ましく使用される。
【0082】
結着樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知のものが挙げられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0083】
また、下引層4には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させてもよい。
【0084】
また、下引層4中には、低残留電位化や環境安定性の観点から、電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0085】
これらの顔料の中では、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、酸化亜鉛又は酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。
【0086】
また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、結着樹脂等で表面処理してもよい。
【0087】
電子輸送性顔料は多すぎると下引層4の強度を低下させ、塗膜欠陥の原因となるため、下引層4の固形分全量を基準として望ましくは95質量%以下、より望ましくは90質量%以下で使用される。
【0088】
また、下引層4には、電気特性の向上や光散乱性の向上等の目的により、各種の有機化合物の微粉末若しくは無機化合物の微粉末を添加することが望ましい。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が有効である。
【0089】
添加微粉末の体積平均粒子径は、0.01μm以上2μm以下のものが望ましい。微粉末は必要に応じて添加されるが、その添加量は下引層4の固形分全量を基準として、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがより望ましい。
【0090】
下引層4は上述した各構成材料を含有する下引層形成用塗布液を用いて形成される。下引層形成用塗布液に使用される有機溶剤としては、有機金属化合物や結着樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合及び/又は分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであればよい。
【0091】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常のものが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0092】
各構成材料の混合及び/又は分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、振動ボールミル、コロイドミル、ペイントシェーカー超音波等を用いる常法が適用される。混合及び/又は分散は有機溶剤中で行われる。
【0093】
下引層4を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0094】
乾燥は、通常、溶剤を蒸発させ、成膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った導電性支持体2は、基材の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引層4を形成することが望ましい。
【0095】
下引層4の膜厚は、望ましくは0.01μm以上30μm以下、より望ましくは0.05μm以上25μm以下である。
【0096】
電荷発生層5は、電荷発生材料、さらには必要に応じて結着樹脂を含んで構成される。
電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料や三方晶セレン、酸化亜鉛等の無機顔料等公知のものを使用することができる。電荷発生材料としては、特に、380〜500nmの露光波長の光源を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料、三方晶セレン、ジブロモアントアントロン等が望ましい。その中でも、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報及び特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に望ましい。
【0097】
また、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニンの中でも特に、分光吸収スペクトルで、810nm以上839nm以下に吸収極大を有し、一次粒子径が0.10μm以下であり、且つ、BET法による比表面積値が45m2/g以上であるものが望ましい。
【0098】
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0099】
電荷発生層5は、電荷発生材料を蒸着により、又は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する電荷発生層形成用塗布液により形成される。電荷発生層5を、電荷発生層形成用塗布液を用いて形成する場合、電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0100】
電荷発生層形成用塗布液に、上記各構成材料を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができる。この際、分散によって顔料の結晶型が変化しない条件が必要とされる。さらにこの分散の際、粒子を望ましくは0.5μm以下、より望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0101】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0102】
電荷発生層形成用塗布液を用いて電荷発生層5を形成する際には、塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0103】
電荷発生層5の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5μm以下、より望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0104】
電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して構成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物が挙げられるが、特にこれらに限定されない。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0105】
また、電荷輸送材料としては、モビリティーの観点から、下記一般式(a−1)、(a−2)又は(a−3)で示される化合物が望ましい。
【0106】
【化1】
【0107】
上記式(a−1)中、R16は水素原子又はメチル基を、n10は1又は2を示す。また、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−C6H4−CH=CH−CH=C(Ar)2を示し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。また、R38、R39、R40は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
【0108】
【化2】
【0109】
上記式(a−2)中、R17及びR17’はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R18、R18’、R19及びR19’はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を、R38、R39及びR40はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。また、n2及びn3はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。
【0110】
【化3】
【0111】
上記式(a−3)中、R21は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を示す。Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。R22、R23はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
【0112】
電荷輸送層6に用いる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1乃至1:5が望ましい。
【0113】
また、高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に望ましいものである。
【0114】
高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層6の構成材料として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0115】
電荷輸送層6は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液の溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0116】
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0117】
電荷輸送層6の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
【0118】
感光層3には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0119】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
【0120】
また、感光層3には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
【0121】
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に望ましい。
【0122】
保護層7は、例えば、以下の樹脂により構成することができる。
樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの内、フェノール樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及びポリベンズイミダゾール樹脂などの熱硬化性樹脂が望ましい。これらの内、特に、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂が好ましく用いられ、これらの樹脂又はその前駆体を主成分として含む塗布液を塗布後、溶剤を乾燥させる工程において同時に加熱処理を行い、硬化させ不溶の硬化膜を形成する。
【0123】
フェノール樹脂としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーの混合物が挙げられる。このようなフェノール樹脂は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるものである。フェノール樹脂としては、一般にフェノール樹脂として市販されているものを使用できる。また、フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂が望ましい。なお、本明細書では、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
【0124】
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。
【0125】
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる傾向がある。そのため、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが望ましい。
【0126】
メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂としては、メチロール基がそのままのメチロールタイプ、メチロール基がすべてアルキルエーテル化されたフルエーテルタイプ、又はフルイミノタイプ、メチロールとイミノ基の混合タイプなど種々のものが使用できる。これら中でも、塗布液の安定性の観点から、エーテルタイプのものが望ましい。
【0127】
ウレタン樹脂としては、多官能イソシアネート、イソシアヌレート又はこれらをアルコールやケトンでブロックしたブロックイソシアネートなどが使用できる。これらの中でも、塗布液の安定性の観点から、ブロックイソシアネート又はイソシアヌレートが好ましく、これらは本発明の電子写真感光体用添加物と過熱架橋するので望ましい。
【0128】
シリコーン樹脂としては、後述の一般式(X)で示される化合物などから誘導される樹脂を使用できる。
【0129】
これらの樹脂は単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0130】
保護層7には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより望ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層7の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に望ましい。
【0131】
また、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物には、保護層7の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(X)で示される化合物を添加することもできる。
【0132】
Si(R50)(4−c)Qc (X)
[上記式(X)中、R50は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。]
【0133】
上記一般式(X)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが望ましい。
【0134】
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
【0135】
また、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物には、保護層7の強度を高めるために、下記一般式(XI)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも望ましい。
【0136】
B−(Si(R51)(3−d)Qd)2 (XI)
[上記式(XI)中、Bは2価の有機基を、R51は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、dは1〜3の整数を示す。]
【0137】
上記一般式(XI)で示される化合物としては、より具体的には、下記化合物(XI−1)〜(XI−16)が望ましいものとして挙げることができる。Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
【0138】
【表1】
【0139】
さらに、膜特性のコントロール、液寿命の延長等のため、アルコール系、ケトン系溶剤に可溶な樹脂を添加してもよい。このような樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。特に、電気特性を向上させる観点から、ポリビニルアセタール樹脂が望ましい。
【0140】
また、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長等の目的で種々の樹脂を添加することができる。本実施形態においては、アルコールに溶解する樹脂を更に加えることが望ましい。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂等が挙げられる。特に、電気特性を向上させる観点から、ポリビニルアセタール樹脂が望ましい。
【0141】
上記樹脂の重量平均分子量は2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに望ましい。重量平均分子量は2000より小さいと所望の効果が得られなくなる傾向があり、100000より大きいと溶解度が低くなり添加量が限られてしまったり、塗布時に製膜不良の原因になったりする傾向がある。添加量は1質量%以上40質量%以下が好ましく、さらに望ましくは1質量%以上30質量%以下であり、5質量%以上20質量%以下が最も望ましい。添加量が1質量%よりも少ない場合は所望の効果が得られにくくなり、40質量%よりも多くなると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる恐れがある。また、上記の樹脂は単独で用いてもよいが、それらを混合して用いてもよい。
【0142】
また、ポットライフの延長、膜特性のコントロールのため、下記一般式(XII)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、若しくはその化合物からの誘導体を含有させることが望ましい。
【0143】
【化4】
【0144】
[上記式(XII)中、A1及びA2は、それぞれ独立に一価の有機基を示す。]
一般式(XII)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンを挙げることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0145】
更に、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物には、各種粒子を添加することもできる。
【0146】
粒子の一例として、ケイ素原子含有粒子を挙げることができる。ケイ素原子含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素原子含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、体積平均粒子径が望ましくは1nm以上100nm以下、より望ましくは10nm以上30nm以下であり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。硬化性樹脂組成物中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性、強度の面から硬化性樹脂組成物中の固形分全量を基準として望ましくは0.1質量%以上50質量%以下の範囲、より望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0147】
ケイ素原子含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、球状で、体積平均粒子径が望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下であり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。
【0148】
シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。硬化性樹脂組成物中のシリコーン粒子の含有量は、硬化性樹脂組成物中の固形分全量を基準として望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲であり、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0149】
また、その他の粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系粒子や”第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物を挙げることができる。
【0150】
また、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、シリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは、保護層7を形成するための硬化性樹脂組成物中に予め添加してもよいし、感光体を作製後、減圧、或いは加圧下等で含浸処理してもよい。
【0151】
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を含有することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。
【0152】
また、ヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0153】
酸化防止剤としては以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製。ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」以上三共ライフテック社製、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」以上旭電化製、「スミライザーTPS」以上住友化学社製、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」以上住友化学社製、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」以上旭電化製が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が望ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
【0154】
さらに、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの架橋構造を有する樹脂から、合成時の触媒を除去するために、該樹脂をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿などの処理を行うか、例えば、以下に例示する材料を用いて処理することが望ましい。かかる材料としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製)、レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製)、ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製)、スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製)、ナフィオン−H(デュポン社製)などの陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)などの陰イオン交換樹脂;Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2などのプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなどのプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸などのイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなどの単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類などの複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;LiSO4,MgSO4などの金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなどの金属リン酸塩;LiNO3,Mn(NO3)2などの金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体などのアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂などのアミノ基を含有するポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0155】
また、硬度、接着性、可とう性などの膜特性の調整のために、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルビスフェノール類、フェノールエポキシ樹脂などのエポキシ含有化合物、テレフタル酸、マレイン酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸など、又はそれらの無水物を添加してもよい。添加量としては、本発明の電子写真感光体用添加物1質量部に対し、望ましくは0.05〜1質量部、より望ましくは0.1〜0.7質量部で用いられる。
【0156】
さらに、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を所望の割合で混合することもできる。これにより、電荷輸送層6との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥などを抑制することもできる。
【0157】
保護層7は、上述した各構成材料を含有する保護層形成用塗布液を用いて形成される。すなわち、保護層形成用塗布液を電荷輸送層6上に塗布して硬化させることで、保護層7は形成する。
【0158】
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶媒が使用される。また、これらの他、種々の溶媒が使用できるが、電子写真感光体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系又はケトン系溶剤、或いはそれらの混合系溶剤が好ましくい。また、沸点は50〜150℃のものが好ましく、任意に混合して使用することができる。溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1質量部に対し0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより望ましい。
【0159】
さらに、架橋する際には、保護層形成用塗布液に硬化触媒を使用してもよい。硬化触媒としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類(g)ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類などの光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、及び、無水カルボン酸化合物などが好ましく挙げられる。
【0160】
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等が挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばBF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
【0161】
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられる。
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等が挙げられる。
ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
これらの触媒の使用量は特に制限されないが、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
【0163】
保護層形成用塗布液を電荷輸送層6上に塗布する場合、塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。そして、塗布後、塗膜を乾燥させることで保護層7が形成する。
【0164】
なお、塗布の際には1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布すことにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
【0165】
架橋構造を有する樹脂を用いて保護層7を形成する場合、架橋させる際には硬化温度は望ましくは100〜170℃、より望ましくは100〜160℃である。また、硬化時間は、望ましくは30分〜2時間、より望ましくは30分〜1時間であり、加熱温度を他段階に変化させてもよい。
【0166】
架橋反応を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどのいわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気下で行うことにより、電気特性の悪化を防止することができる。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気下よりも硬化温度を高く設定することができ、硬化温度は望ましくは100〜180℃、より望ましくは110〜160℃である。また、硬化時間は、望ましくは30分〜2時間、より望ましくは30分〜1時間である。
【0167】
保護層7の膜厚は、0.5〜15μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、1〜5μmがさらに好ましい。
【0168】
保護層7の25℃における酸素透過係数は、4×1012fm/s・Pa以下であることが好ましく、3.5×1012fm/s・Pa以下であることがより好ましく、3×1012fm/s・Pa以下であることがさらに好ましい。
【0169】
ここで、酸素透過係数は層の酸素ガス透過のし易さを表す尺度であるが、見方を変えると、層の物理的な隙間率の代用特性と捕らえることもできる。なお、ガスの種類が変われば透過率の絶対値は変わるものの、検体となる層間で大小関係の逆転は殆どない。したがって、酸素透過係数は、一般的なガス透過のし易さを表現する尺度と解釈してよい。
【0170】
つまり、保護層7の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たす場合には、保護層7においてガスが浸透しにくい。したがって、画像形成プロセスにより生じる放電生成物の浸透が抑制され、保護層7に含有される化合物の劣化が抑制され、電気特性を高水準に維持することができ、高画質化、長寿命化に有効である。
【0171】
なお、電子写真感光体1において、単層型感光層を構成する場合、単層型感光層は、電荷発生材料と結着樹脂を含有して形成される。電荷発生材料としては機能分離型感光層における電荷発生層に使用されるものと同様のものを、結着樹脂としては機能分離型感光層における電荷発生層及び電荷輸送層に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層中の電荷発生材料の含有量は、単層型感光層における固形分全量を基準として望ましくは10〜85質量%、より望ましくは20〜50質量%である。単層型感光層には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送材料や高分子電荷輸送材料を添加してもよい。その添加量は単層型感光層における固形分全量を基準として5〜50質量%とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。単層型感光層の膜厚は、5〜50μm程度が好ましく、10〜40μmとすることがさらに好ましい。
【0172】
次に、現像装置25について説明する現像装置25は、電子写真感光体1上の静電潜像を現像してトナー像を形成するものである。
【0173】
現像装置25に使用されるトナーについて説明する。かかるトナーとしては、平均形状係数SF1(SF1=ML2/A×π/4×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が110以上135以下であることがより好ましい。平均形状係数(SF1)は、スライドガラス上に載置したトナー粒子の像を、ビデオカメラを通じて、光学顕微鏡により測定し、画像解析装置(LUZEXIII、NIRECO社製)に取り込み、トナーの最大長(ML)、および投影面積(A)を算出し、これらの値を上記式に代入して形状係数が求められる。なお平均形状係数は、任意の100個のトナー粒子における上記式より算出された形状係数の平均値である。平均形状係数はトナーの丸さ度合いを示すものであり、形状が丸いほどクリーニングブレードをすり抜ける転写残トナーが増え、帯電ロールの汚染を増加させてしまうことがある。また反対に不定形過ぎると、転写性が低下し、転写残トナーの増えることによって帯電ロールの汚染を増加させてしまうことがある。
【0174】
さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。この体積平均粒径が小さ過ぎるとクリーニングブレードをすり抜ける転写残トナーが増え、帯電ロールの汚染を増加させてしまうことがある。同時にトナーの流動性の悪化や、キャリアから十分な帯電能を付与されにくくなるりやすく、背景部へのカブリが生じたり、濃度再現性が低下しやすくなることもある。また体積平均粒径が大き過ぎる場合には、結果的に粒径分布も拡大してトナー帯電量分布が不均一となり、逆極性トナーが増えることによって、帯電ロールの汚染を増加させてしまう問題が生じ易くなるとともに、微細なドットの再現性や階調性が悪化することがある。
【0175】
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0176】
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
【0177】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0178】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0179】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることもできる。
【0180】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
【0181】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
【0182】
また、帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが好ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0183】
現像装置25に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0184】
現像装置25に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。但し、体積平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0185】
現像装置25に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えることができる。
【0186】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0187】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましく使用される。
【0188】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0189】
粒子径としては、体積平均平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。体積平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが好ましい。
【0190】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行なう為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために好ましい。
【0191】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
【0192】
クリーニング装置27は、繊維状部材(ロール形状)27aと、クリーニングブレード(ブレード部材)27bとを備える。
【0193】
クリーニング装置27は、繊維状部材27a及びクリーニングブレード27bが設けられているが、クリーニング装置としてはどちらか一方を備えるものでもよい。繊維状部材27aとしては、ロール形状の他に歯ブラシ状としてもよい。また、繊維状部材27aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、さらに感光体軸方向にオシレーション可能に支持されていてもよい。繊維状部材27aとしては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等や、トレシー(東レ社製)等の極細繊維からなる布状のもの、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維を基材状又は絨毯状に植毛したブラシ状のもの等を挙げることができる。また、繊維状部材27aとしては、上述したものに、導電性粉末やイオン導電剤を配合して導電性を付与したり、繊維一本一本の内部又は外部に導電層が形成されたもの等を用いることもできる。導電性を付与した場合、その抵抗値としては繊維単体で102Ω以上109Ω以下のものが望ましい。また、繊維状部材27aの繊維の太さは、望ましくは30d(デニール)以下、より望ましくは20d以下であり、繊維の密度は望ましくは2万本/inch2以上、より望ましくは3万本/inch2以上である。
【0194】
クリーニング装置27には、クリーニングブレード、クリーニングブラシで感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められる。この目的を長期に渡って達成すると共にクリーニング部材の機能を安定化させるために、クリーニング部材には、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑性物質(潤滑成分)を供給することが望ましい。
【0195】
例えば、繊維状部材27aとしてロール状のものを用いる場合、金属石鹸、ワックス等の潤滑性物質と接触させ、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが望ましい。クリーニングブレード27bとしては、通常のゴムブレードが用いられる。このようにクリーニングブレード27bとしてゴムブレードを使用する場合には、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することは、ブレードの欠けや磨耗を抑制することに特に効果的である。
【0196】
以上説明したプロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0197】
露光装置30としては、帯電した電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成させるものであればよい。また、露光装置30の光源としては、マルチビーム方式の面発光レーザを用いることが望ましい。
【0198】
転写装置40としては、電子写真感光体1上のトナー像を被転写媒体(中間転写体50)に転写するものであればよく、例えば、ロール形状の通常使用されるものが使用される。
【0199】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。なお、この中間転写体を備えていない直接転写方式の画像形成装置もあるが、本発明の電子写真感光体はこのような画像形成装置に好適である。その理由は、直接転写方式の画像形成装置では、プリント用紙からの紙粉やタルク等が発生しそれが電子写真感光体へ付着しやすく、付着物に起因する画質欠陥が発生する傾向にある。しかし、本発明の電子写真感光体によれば、クリーニング性に優れているため紙粉やタルク等の除去が容易であり、直接転写方式の画像形成装置であっても安定した画像を得ることができる。
【0200】
なお、本発明でいう被転写媒体とは、電子写真感光体1上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体1から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体50を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
【0201】
図3は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。図3に示す画像形成装置110は、電子写真感光体1が画像形成装置本体に固定され、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。
【0202】
画像形成装置110においては、電子写真感光体1とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27が画像形成装置本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
【0203】
耐磨耗性に優れた電子写真感光体を用いた場合、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置21、現像装置25又はクリーニング装置27をそれぞれ本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもでき、それにより1プリント当りの部材コストをさらに低減することができる。
【0204】
なお、画像形成装置110は、帯電装置21、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0205】
図4は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。画像形成装置120は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0206】
タンデム方式の画像形成装置120では、各色の使用割合により各電子写真感光体の磨耗量が異なってくるために、各電子写真感光体の電気特性が異なってくる傾向がある。これに伴い、トナー現像特性が初期の状態から除々に変化してプリント画像の色合いが変化し、安定な画像を得ることができなくなる傾向にある。特に、画像形成装置を小型化するために、小径の電子写真感光体が使用される傾向にあり、直径φ30mm以下のものを用いたときにはこの傾向が顕著になる。ここで、電子写真感光体に、本発明の電子写真感光体の構成を採用すると、その直径をφ30mm以下とした場合にもその表面の磨耗が抑制される。したがって、本発明の電子写真感光体は、タンデム方式の画像形成装置に対して特に有効である。
【0207】
図5は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。図5に示した画像形成装置130は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、所謂4サイクル方式の画像形成装置である。画像形成装置130は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で図中の矢印Aの方向に回転される感光体ドラム1を備えており、感光体ドラム1の上方には、感光体ドラム1の外周面を帯電させる帯電装置21が設けられている。
【0208】
また、帯電装置21の上方には面発光レーザアレイを露光光源として備える露光装置30が配置されている。露光装置30は、光源から射出される複数本のレーザービームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、感光体ドラム1の外周面上を感光体ドラム1の軸線と平行に走査させる。これにより、帯電した感光体ドラム1の外周面上に静電潜像が形成される。
【0209】
感光体ドラム1の側方には現像装置25が配置されている。現像装置25は回転可能に配置されたロール状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器25Y,25M,25C,25Kが設けられている。現像器25Y,25M,25C,25Kは各々現像ロール26を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の色のトナーを貯留している。
【0210】
画像形成装置130でのフルカラーの画像の形成は、感光体ドラム1が4回転する間に行われる。すなわち、感光体ドラム1が4回転する間、帯電装置21は感光体ドラム1の外周面の帯電、露光装置30は、形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザビームを感光体ドラム1の外周面上で走査させることを、感光体ドラム1が1回転する毎にレーザビームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また現像装置25は、現像器25Y,25M,25C,25Kの何れかの現像ロール26が感光体ドラム1の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、感光体ドラム1の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、感光体ドラム1の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、感光体ドラム1が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。これにより、感光体ドラム1が1回転する毎に、感光体ドラム1の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、感光体ドラム1が4回転した時点で感光体ドラム1の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0211】
また、感光体ドラム1の下方には無端の中間転写ベルト50が配設されている。中間転写ベルト50はロール51,53,55に巻掛けられており、外周面が感光体ドラム1の外周面に接触するように配置されている。ロール51,53,55は図示しないモータの駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト50を図2矢印B方向に回転させる。
【0212】
中間転写ベルト50を挟んで感光体ドラム1の反対側には転写装置(転写器)40が配置されており、感光体ドラム1の外周面上に形成されたトナー像は転写装置40によって中間転写ベルト50の画像形成面に転写される。
【0213】
また、感光体ドラム1を挟んで現像装置25の反対側には、感光体ドラム1の外周面に潤滑剤供給装置29及びクリーニング装置27が配置されている。感光体ドラム1の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト50に転写されると、潤滑剤供給装置29により感光体ドラム1の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち転写されたトナー像を保持していた領域がクリーニング装置27により清浄化される。
【0214】
中間転写ベルト50よりも下方側には用紙受け60が配置されており、用紙受け60内には記録材料としての用紙Pが複数枚積層された状態で収容されている。用紙受け60の左斜め上方には取り出しロール61が配置されており、取り出しロール61による用紙Pの取り出し方向下流側にはロール対63、ロール65が順に配置されている。積層状態で最上方に位置している記録紙は、取り出しロール61が回転されることにより用紙受け60から取り出され、ロール対63、ロール65によって搬送される。
【0215】
また、中間転写ベルト50を挟んでロール55の反対側には転写装置42が配置されている。ロール対63、ロール65によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト50と転写器42の間に送り込まれ、中間転写ベルト50の画像形成面に形成されたトナー像が転写装置42によって転写される。転写装置42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ロール対を備えた定着装置44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着装置44によって溶融定着された後に画像形成装置130の機体外へ排出され、排紙用紙受け(図示せず)上に配置される。
【0216】
なお、本発明のプロセスカートリッジ、及び本発明の画像形成装置の構成としては、特に限定されるわけではなく、公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0217】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0218】
[実施例1]
(帯電ロールの作製)
−弾性層の形成−
下記混合物をオープンロールで混練りし、SUS416からなる直径6mmの導電性支持体表面に、厚さ3mmとなるように円筒状に被覆し、内径11.0mmの円筒型の金型に入れ、170℃で30分間加硫させ、金型から取り出した後、研磨し円筒状の導電性弾性層Aを得た。また、研磨条件変更により帯電ロールのクラウン量を変えた物を4水準(0μm、50μm、100μm、150μm)作製した。
【0219】
・ゴム材 ・・・・100質量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム)Gechron3106:日本ゼオン社製)
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製)・・・・・25質量部
・導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製) ・・・・・・8質量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム) ・・・・・・1質量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・・・2.0質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製) ・・・・0.5質量部
【0220】
−表面層の形成−
下記混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液Aを、メタノールで希釈し、弾性層の表面に浸漬塗布した後、140℃で15分間加熱乾燥し、厚さ4μmの表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0221】
・高分子材料 ・・・・100質量部
(共重合ナイロン)アラミンCM8000:東レ社製
・導電剤 ・・・・・30質量部
(アンチモンドープ酸化スズ)SN−100P:石原産業社製
・溶剤(メタノール) ・・・・500質量部
・溶剤(ブタノール) ・・・・240質量部
【0222】
−帯電ロールの評価−
得られた帯電ロールは、高分子計器社製マイクロ硬度計MD1を用いて測定した結果、54°であった。また、アサカ理研社製レーザー外径測定機による測定結果より、クラウン量を算出したところ、外径(両端部の外径)はφ9mmで、4水準(0、50、100、150μ)のクラウン量であった。
【0223】
(押圧ロールの作製)
押圧ロールとしては、発泡ウレタンシート((株)イノアックコーポレーション社製EPM70)を所定の大きさに加工後、シートにφ3mmの穴を開け、その穴へホットメルトを塗布した外径4mmのシャフト(芯体)を挿入し、加熱により接着を行った。冷却後、研磨により弾性層として発泡ウレタン層を有する押圧ロールを作製した。この押圧ロールは、外径がφ8mm、弾性層肉厚は2mm、弾性層の長さが220mm、になるように作製した。
【0224】
このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは51°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは60°であり、硬度差(Ae-Ac)は9°であった。
【0225】
[実施例2]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1同様の物を用いた。
【0226】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した押圧ロールの中央部に幅50mm、厚み4mmの発泡ウレタンシート((株)イノアックコーポレーション社製EPM70)を貼り付けた。
【0227】
このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは40°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは60°であり、硬度差(Ae-Ac)は20°であった。
【0228】
[実施例3]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1と同様の物を用いた。
【0229】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した押圧ロールの長手方向両端から内側へ50mmに位置する個所の発泡ウレタンを切取り、切取り部分に実施例1で作製した押圧ロールと同様な組成の弾性層を外径がφ13mmになるようにして貼り付けた。このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは51°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは57°であり、硬度差(Ae-Ac)は6°であった。
【0230】
[実施例4]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1と同様の物を用いた。
【0231】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した押圧ロールの長手方向両端から内側へ50mmに位置する個所を除いた長手方向中央部の発泡ウレタンを切取り、切取り部分に実施例1で作製した押圧ロールと同様な組成の弾性層を外径がφ13mmになるようにして貼り付けた。このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは60°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは45°であり、硬度差(Ae-Ac)は15°であった。
【0232】
[実施例5]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは、シャフト外径を10mm、帯電ロール外径を14mmにした以外は実施例1と同じものを用いた。
【0233】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した物と同じ物を作製した。
【0234】
[実施例6]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは、帯電ロール外径を8mmにした以外は実施例1と同じものを用いた。
【0235】
(押圧ロールの作製)
実施例1で作製した物と同じ物を作製した。
【0236】
[実施例7]
(帯電ロール)
ポリジメチルシロキサン 100質量部に導電剤としてカーボンブラック アサヒサーマル(旭カーボン社製)25質量部とケッチェンブラックEC(ライオン社製)8質量部、架橋剤として、2,5―ジ―t―ブチルパーオキシヘキサン0.5部を混練した。この混合物を得た以降は実施例1と同様に作製した。
得られた帯電ロールのマイクロ硬度は高分子計器社製マイクロ硬度計MD1で44°であった。
【0237】
(押圧ロール)
実施例1で作製した同じ物を作製した。
【0238】
[実施例8]
(帯電ロール)
弾性層の組成として充填剤であるカオリン5質量部添加した以外は、実施例1と同じように作製した。
得られた帯電ロールのマイクロ硬度は高分子計器社製マイクロ硬度計MD1で68°であった。
【0239】
(押圧ロール)
実施例1で作製した同じ物を作製した。
【0240】
[比較例1]
(帯電ロールの作製)
実施例5と同じ帯電ロールを作製した。
【0241】
(押圧ロールの作製)
押圧ロールは使用しなかった。
【0242】
[比較例2]
(帯電ロールの作製)
帯電ロールは実施例1と同じものを用いた。
【0243】
(押圧ロールの作製)
押圧ロールは使用しなかった。
【0244】
[比較例3]
(帯電ロール作製)
帯電ロールは実施例1と同じものを作製した。
【0245】
(押圧ロール作製)
支持シャフトの外径を5mmにした以外は実施例1と同様の物を作製した。このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは77°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは78°であり、硬度差(Ae-Ac)は1°であった。
【0246】
[比較例4]
(帯電ロール作製)
帯電ロールは実施例1と同じものを用いた。
【0247】
(押圧ロール作製)
実施例1で作製した押圧ロールの長手方向両端から内側へ50mmに位置する箇所の発泡ウレタンを切取り、切取り部分に実施例1で作製した帯電ロールと同様な組成の弾性層を外径がφ8mmになるようにして貼り付けた。
【0248】
このように作製した押圧ロールの長手方向中央部のアスカーC硬度Acは51°、長手方向両端部のアスカーC硬度Aeは78°であり、硬度差(Ae-Ac)は27°であった。
【0249】
[評価]
実施例、比較例で作製した押圧ロール・帯電ロールを、帯電ロールへ印加する電圧を直流電源のみに改造、押圧ロールを取り付けられるように改造したカラー複写機DocuCentre Color400CP:富士ゼロックス社製に装着し、A4用紙5枚印字テストした。押圧ロール、帯電ロール、感光体の位置関係は各軸点が一直上に位置するように配置した(図11参照)。また、押圧ロールの押圧力(帯電ロールと感光体との接触面の法線方向の押圧力)が4Nとなるようにした。また、帯電ロールに直流電圧900Vのみを印加するようにした。
【0250】
画質評価は、5枚の画像について、ハーフトーン画像中での濃度ムラの有無により以下の基準で判定した。
A:濃度ムラ発生無し
B:濃度ムラが発生しているが、良く見ないと分からないレベル。
C:濃度ムラ発生し、直ぐに分るレベル。
【0251】
また、クリーン性評価についても次のように評価した。上記画質濃度ムラ評価後、A3用紙にてハーフトーンを50,000枚印字後のハーフトーン印字を行い、帯電ロール表面の汚れのムラを観察することにより行った。。評価基準は以下の通りである。
A:汚れムラ発生無し。
B:汚れムラは発生しているが、よく見ないと分らないレベルであり、画質上濃度ムラが発生しないレベル。
C:汚れムラが発生しており、画質上も濃度ムラが発生する。
【0252】
以上の評価結果を表2及び表3にまとめて示した。
【0253】
【表2】
【0254】
【表3】
【0255】
上記結果から、押圧ロールを取付けていない場合、帯電ロールの外径が14mmでは帯電ロールのクラウン量を0〜150μmの範囲で変化させると画質濃度ムラが発生しない領域が存在する(比較例1)。この現象は以下の様に説明できる。クラウン量が小さい場合、帯電ロールの両端より荷重をかけて像保持体へ押付けている為、帯電ロールが撓み、中央部が浮き気味になってしまい、像保持体軸方向の帯電量が不均一になる。その結果、画質濃度ムラが発生する。クラウン量の増加、つまり、帯電ロールの中央部のみ肉厚を太くしていくと、帯電ロールの撓みによる中央部の浮きを補償することができるので、像保持体上の帯電量が均一になり、画質濃度ムラがなくなる。更に、クラウン量を増加させると、帯電ロール両端部が浮き気味になる為に帯電量が不均一になる。つまり、クラウン量の適正領域が広い程使い勝手がよい。
【0256】
比較例1に対して、帯電ロールの外径が9mmでは帯電ロールのクラウン量が0〜150μmの範囲では画質濃度ムラが発生しない領域が存在しない。これは、帯電ロールの小径化に撓み量が増加すること、更には弾性層肉厚薄膜化の為に、帯電ロールの高硬度化が進む事での感光体との接触幅減少化により、帯電ロールの撓み量を補償するクラウン量と帯電ロール端部の浮き始めるクラウン量が殆ど同じであり、クラウン量の適正領域が存在しない為である(比較例2)。
【0257】
比較例2に対して、中央部と端部のアスカーC硬度硬度差が1°しかない押圧ロールを取付けると(比較例3)、クラウン量の適正領域が存在していることが分る。これは、押圧ロールにより帯電ロールの撓み量を抑制した結果である。しかし、従来技術である比較例1に比べて、クラウン量適正領域が小さく、帯電ロールのクラウン量の製造公差を考慮すると実用するのは困難である。
【0258】
比較例3に対して、中央部と端部のアスカーC硬度硬度差が6〜20°である押圧ロールを取付けると(実施例1〜6)、クラウン量の適正領域が大きくなっている。比較例3では押圧ロールの撓みの変動量が小さい為に帯電ロールが撓む軸方向中央部で像保持体に押付ける力が大きくなる。その結果、クラウン量を0μmより増加してくと、50μm程度で中央部に比べて端部が浮き気味になり、中央部の感光体との帯電ロール接触形状と端部の接触形状が異なり、帯電ムラが起こる。
【0259】
それに対して、実施例1〜6では押圧ロールの撓みの変動量が大きい為に、帯電ロールが撓む軸方向中央部で像保持体を押付ける力が小さくなる。その結果、クラウン量を0より増大していくと、100μmでも像保持体と帯電ロールの接触形状の軸方向ムラが小さくなる。つまり、クラウン量の適正領域が広がる。
【0260】
前記帯電ロールのクラウン量の適正領域は、帯電ロールのマイクロ硬度が柔らかい程広がる(実施例1、7、8)。
【0261】
一方、実施例2より押圧ロールの中央部と端部のアスカーC硬度硬度差を27°と大きくすると、帯電ロールの撓み量の抑制力が小さくなる為、クラウン量の適正領域が小さくなり、使用が困難となる(比較例4)。
【0262】
従って、長手方向中央部と長手方向両端部との間で所定の関係を持つ実施例では、どのような径の帯電ロールを用いても像保持体への均一な接触幅、及び像保持体への均一な帯電が得られることがわかる。
【0263】
また、帯電ロールのクリーニング性に関しては、押圧ロールを取付けていない場合は帯電ロール上の汚れムラが発生し、画質上も濃度ムラが発生する(比較例1,2)。帯電均一性に問題が無く画質濃度ムラの発生が無い状態になる条件で押圧ロールを取付けた場合、帯電ロール上の汚れムラも、画質濃度ムラも発生しない上、帯電ロール上の汚れ量も少なくなっており、クリーニングロールとして使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】本発明の帯電装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す模式図である。
【図6】電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図7】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図8】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図9】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図10】電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図11】電子写真感光体(像保持体)、帯電部材(帯電ロール)、及び押圧部材(押圧ロール)の位置関係を示す模式図である。
【図12】アスカーC硬度の測定方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0265】
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、20…プロセスカートリッジ、100,110,120,130…画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって、像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電部材を押圧するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置、及び、前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング装置からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電ロールを圧接するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
帯電した前記像保持体に静電潜像形成するための露光装置と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項1】
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって、像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電部材を押圧するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置、及び、前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング装置からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
像保持体と、
前記像保持体と接するように配設される帯電部材であって像保持体を帯電させるための帯電部材と、
前記像保持体と前記帯電部材との接触面の法線方向に前記帯電部材を前記像保持体へ押付ける力が働くように前記帯電ロールを圧接するための押圧部材であって、長手方向中央部のアスカーC硬度をAc、長手方向両端部のアスカーC硬度をAeとしたとき、条件:Ac<Ae、且つ5°<Ac−Ae≦20°を満たす押圧部材と、
帯電した前記像保持体に静電潜像形成するための露光装置と、
前記像保持体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電部材は、その外径がφ10mm以下であり、且つその表面のマイクロ硬度が45°以上60°以下あることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記押圧部材は、前記帯電部材のクリーニング部材であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−26400(P2008−26400A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195955(P2006−195955)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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