説明

プロセス制御システムエレメント

【課題】高度の制御活動、シミュレーション活動、および表示活動を可能にする統合型制御・シミュレーション・表示環境を実現するための実行環境を提供する。
【解決手段】スマートプロセスオブジェクトは、一または複数のグラフィック表示画面と、一または複数のプロセスシミュレーションモジュールとを作成するために利用される。制御モジュール29はプロセスモジュール39により作成されたシミュレーションされたデータを利用することが可能になり、プロセスモジュールは制御モジュールからの実際のプラントデータを使用してシミュレーションを実行することが可能で、グラフィック表示画面は制御モジュールおよびプロセスモジュールにより作成される通りの実際のプロセスデータおよび/またはシミュレーションされたプロセスデータを表示するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、プロセスプラントに関するものであり、さらに詳細には、プロセスプラント制御構造のシステムレベルにおいてユーザによる閲覧、シミュレーション、および制御を統合することを可能にするインテリジェント制御・シミュレーション環境に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学プロセス、石油プロセス、または他のプロセスにおいて利用される分散型プロセス制御システムは、アナログバス、デジタルバス、またはアナログ/デジタルを組み合わせたバスを介して一または複数のフィールドデバイスに通信可能に接続された一または複数のプロセスコントローラを備えているのが一般的である。これらのフィールドデバイスは、たとえば、バルブ、バルブポジショナ、スイッチ、およびトランスミッタ(たとえば、温度センサ、圧力センサ、レベルセンサ、および流量センサ)などであってもよく、プロセス環境内に設置され、バルブの開閉およびプロセスパラメータの測定の如きプロセス機能を実行する。また、周知のFieldbus(フィールドバス)プロトコルに準拠するフィールドバスデバイスの如きスマートフィールドバスは、制御計算、アラーム機能、および一般的にコントローラ内に実装されている他の制御機能も実行する。また、プロセスコントローラもプラント環境内に設置されているのが一般的であり、フィールドデバイスにより作成されるプロセス測定値および/またはこれらのフィールドデバイスに関連する他の情報を表す信号を受信し、プロセス制御決定を行い、受信した情報に基づいて制御信号を生成し、たとえば、HARTフィールドデバイスおよびFieldbusフィールドデバイスの如きフィールドデバイスにおいて実行される制御モジュールまたは制御ブロックと協調するさまざまな制御モジュールを実行する。コントローラ内の制御モジュールは、通信回線を介してこれらの制御信号をフィールドデバイスに送信してプロセスの動作を制御する。
【0003】
フィールドデバイスおよびコントローラからの情報は、過酷なプラント環境から離れた制御室または他の場所に通常設置されているオペレータワークステーション、パーソナルコンピュータ、データヒストリアン、レポート作成装置、集中型データベースなどの如き一または複数の他のハードウェアデバイスがデータハイウェイを介して入手することが可能なようにされていることが一般的である。これらのハードウェアデバイスは、たとえば、プロセス制御ルーチンの設定変更、コントローラまたはフィールドデバイス内の制御モジュールの動作修正、プロセスの現行の状態の閲覧、フィールドデバイスおよびコントローラにより発生させられたアラームの閲覧、作業員のトレーニングまたはプロセス制御ソフトウェアの試験、などの目的でプロセス動作のシミュレーション、コンフィギュレーションデータベースの更新などの如きプロセスに関連した機能をオペレータが操作することを可能にし得るアプリケーションを実行する。
【0004】
一例としては、エマソンプロセスマネッジメント社により販売されているDeltaV(登録商標)制御システムは、プロセスプラント内のさまざまな場所に設置されているさまざまなデバイス内に格納されかつこれらのデバイスにより実行される複数のアプリケーションを有している。一または複数のワークステーションに搭載されているコンフィギュレーションアプリケーションは、ユーザがプロセス制御モジュールを作成または変更し、データハイウェイを介して専用の分散型コントローラにこれらの制御モジュールをダウンロードすることを可能にする。通常、これらの制御モジュールは通信可能に相互に接続された機能ブロックから構成されており、これらの機能ブロックは、オブジェクト指向プログラミングプロトコルにおけるオブジェクトであり、入力に基づいて制御スキーム内で機能を実行し、制御スキーム内の他の機能ブロックに出力を提供する。また、このコンフィギュレーションアプリケーションは、データをオペレータに表示するために、また設定ポイントの如きプロセス制御ルーチン内の設定をオペレータが変更することを可能にするために、閲覧アプリケーションにより利用されるオペレータインターフェイスを設計者が作成または変更することを可能にする。各専用コントローラおよび、場合によっては、フィールドデバイスは、実際のプロセス制御機能を実現するために割り当てられかつダウンロードされる制御モジュールを実行するコントローラアプリケーションを格納・実行する。閲覧アプリケーションは、一または複数のオペレータワークステーションにより実行され、データハイウェイを介してコントローラアプリケーションからデータを受信し、ユーザインターフェイスを利用してこのデータをプロセス制御システムの設計者、オペレータ、またはユーザに表示し、オペレータビュー、エンジニアビュー、テクニシャンビューなどの如き複数の異なるビューのうちのいずれかを提供しうる。データヒストリアンアプリケーションは、データハイウェイ上で提供されるデータの一部または全部を収集・格納するデータヒストリアンデバイスに格納され、このデバイスにより実行されることが一般的であり、一方、コンフィギュレーションデータベースアプリケーションは、このデータハイウェイに接続されるさらなるコンピュータ内で実行され、現行のプロセス制御ルーチンの設定およびそれに関連したデータを格納しうる。あるいは、コンフィギュレーションデータベースは、コンフィギュレーションアプリケーションと同一のワークステーションに搭載されうる。
【0005】
上述のように、通常、オペレータ表示アプリケーションは、システム全体に亘り、一または複数のワークステーション内で実行され、プラント内の制御システムまたはデバイスの動作状態に関する、事前にコンフィギュレーションされた表示画面をオペレータまたは保守作業員に提供する。一般的に、これらの表示画面は、プロセスプラント内のコントローラまたはデバイスにより生成されるアラームを受信するアラーム表示画面、プロセスプラント内のコントローラおよび他のデバイスの動作状態を示す制御表示画面、プロセスプラント内のデバイスの動作状態を示す保守表示画面などの形態をとる。これらの表示画面は、プロセスプラント内のプロセス制御モジュールまたはデバイスから受信した情報またはデータを公知の方法で表示するように事前にコンフィギュレーションされていることが一般的である。公知のシステムによっては、物理的エレメントまたは論理的エレメントに関連するグラフィックを有し、物理的エレメントまたは論理的エレメントについてのデータを受信すべく物理的エレメントまたは論理的エレメントに通信可能に結合されるオブジェクトを利用して表示画面が作成される場合もある。このオブジェクトは、受信したデータに基づいて表示スクリーン上でグラフィックを変更し、たとえば、タンクが半分充填されていることを示し、流量センサにより測定された流量を示す。表示画面に必要な情報はプロセスプラント内のデバイスまたはコンフィギュレーションデータベースから送信されるが、その情報を有する表示画面をユーザに提供するためのみにその情報が利用されている。この結果、アラームの生成およびプラント内の問題の検出などに利用されるすべての情報およびプログラミングは、プロセスプラント制御システムのコンフィギュレーション中に、プラントに関連するコントローラおよびフィールドデバイスの如き異なるデバイスにより生成され、その内でコンフィギュレーションされなければならない。その後でのみ、この情報は、プロセス動作中に、オペレータ表示画面に送信・表示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エラー検出プログラミングおよび他のプログラミングは、さまざまなコントローラに実行される制御ループに関連する状態、エラー、アラームなどと、個々のデバイス内の問題とを検出するために有効であるが、プロセスプラント内で分散して設置されうるさまざまなデバイスからのデータを解析することにより検出されなければならないシステムレベルの状態またはエラーを認識するように、プロセス制御システムをプログラミングすることは容易ではない。さらに、オペレータ表示画面は、オペレータまたは保守作業員にそのようなシステムレベルの状態情報を示すまたは提示するために利用されてこなかったのが普通であり、いずれにしても、表示画面内のさまざまなエレメントに対するこのようなさまざまな供給源からの情報またはデータを用いて、オペレータ表示画面内のオブジェクトをアニメ化することは困難である。この事実は、流体の配管内における流れ、コンベヤベルト上における原料の移動などの如き物質流動のアニメ化およびモデル化に関してとくにあてはまる。物質の流れは、表示画面上の二つのデバイス間を単一のラインにより繋ぐことにより表されることが一般的である。さらに、材料がプラント全体に亘って移動するので、流動状態および物質収支(マスバランス)の如き、プラント内における特定の状態を検出する系統的な方法が現時点において存在しない。ましてや、システムレベルにおいてこれらの機能を実行するシステムを実現することなどは決して容易なことではない。
【0007】
同様に、シミュレーション活動は、通常、表示画面とは別に実行される必要があり、制御活動は、プロセスプラントのオンライン環境において実行される必要があるので、プロセスプラントまたはプロセスプラントの一部のシミュレーションを作成することは困難である。さらに、プラントのシミュレーションが作成される場合、このシミュレーションをオペレータ表示画面またはプラント内で実行されている制御モジュールと統合することは不可能ではないにしても困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
2002年10月22日に出願された、表題が「プロセスプラントにおけるスマートプロセスモジュールおよびオブジェクト」であり、本明細書において参照することによりその特許の開示すべてをここで明示的に援用する米国特許出願番号第10/278,469号にも開示されているとおり、プラントまたはプラントの一部の動作を表現し、モデル化するために、グラフィカルエレメントおよびシミュレーションエレメントの両方を有するスマートプロセスオブジェクトが利用されている。一般的にいえば、各スマートプロセスオブジェクトは、プロセスプラント内の物理的デバイスまたは物理的エンティティ(たとえば、バルブ、タンク、パイプなど)を表現し、その物理的エレメントを表すためにグラフィカル表示画面内で利用されうるグラフィカルエレメントと、プラントにおいて動作しているときにそのプロセスエレメントの動作をモデル化またはシミュレーションする、アルゴリズムの如きモデル化エレメントまたはシミュレーションエレメントとを備えている。具体的には、スマートプロセスオブジェクトは、オペレータに表示される表示画面エレメントと、プラント内の関連エンティティに属しかつその関連エンティティから受信されるデータを格納するデータ格納部と、他のプロセスオブジェクトと通信するための入力部および出力部と、漏洩、エラーおよび他の状態の如きプラント状態またはデバイス状態を検出ために格納データおよび受信データに対して実行されうるメソッドと、プロセスエンティティの動作をシミュレーションするために利用されうるシミュレーションアルゴリズムとを備えている。
【0009】
プロセスプラントのさまざまな部分の動作を表す表示画面を作成するために、またプロセスプラントの一部の動作をモデル化またはシミュレーションするプロセスモジュールを作成するために、複数のスマートプロセスオブジェクトを相互に接続することが可能である。その通信路により、各プロセスモジュール(そして、プロセスモジュールに関連する各表示画面)は、プランと全体に亘り移動する流体、気体、または他の材料に関する入力を受信し、出力を発生し、プロセスプラント内のプロセスエレメントの動作を、プラント全体に亘り移動する材料に対するそのエレメントの影響面からモデル化またはシミュレーションする。この方法で、スマートプロセスオブジェクトのグラフィック表示画面部を利用してプラント内のエレメントの動作(およびそのエレメントのプラントにおける役割または影響)を表し、スマートプロセスオブジェクトのシミュレーションエレメント部を利用してプラントにおける流体または他の材料の移動に対する実際の物理的エレメントの影響をシミュレーションすることが可能である。また、実際のプラントからのデータ(たとえば、プラント内で測定されたようなデータ)も、スマートプロセスオブジェクトを利用して作成されるグラフィック表示画面に通信され、その表示画面に表示されうる。
【0010】
さらに高度かつ正確なシミュレーションを実行するために、プラント内の材料のストリームがモデル化されうる。そのようなストリームは、プラント全体に亘り流れるまたは移動する流体、固体、気体を表しうるし、各ストリームは、ストリームがプロセスモジュールのさまざまなエレメントを通過して移動するにつれて変化しうる圧力、体積、流量、組成などの如きそのストリームのプロパティまたはパラメータを有しうる。ストリームはプロセス制御エレメントの入力部および出力部を通過して流れるので、ストリームのプロパティは、ストリームが通過して流れるプロセスエレメント(バルブ、タンクなど)により影響を受けることが一般的であり、したがって、プロセスモジュール内における個々のエレメントは、プロセスエレメントの入力部においてそのプロセスエレメントにより与えられる上述のストリームへの影響をシミュレーションするためにアルゴリズムを有しうる。
【0011】
スマートプロセスオブジェクトから作成されるグラフィック表示画面またはプロセスモジュールの動作に影響を与えるために、オペレータワークステーションまたは他のコンピュータは、作成されたグラフィック表示画面またはプロセスモジュールを実行する実行エンジンを実行する。この作業の一部として、プロセスモジュールは、フローアルゴリズムと呼ばれるメソッドを実行する。これらのメソッドは、プロセス状態を、とくにシステムレベルで検出するために、またプラントを通過して流れるストリームに対するプロセスエレメントの影響をシミュレーションするために利用されることが可能である。この結果、スマートプロセスオブジェクトから作成されたプロセスモジュールおよびグラフィック表示画面は、オペレータ表示画面における状態検出ルーチンおよびエラー検出ルーチンの実行を可能にし、この機能と一体になって動作するか、またはプラントのコントローラおよびフィールドデバイス内にこの機能を搭載する必要性を排除しうる。また、プロセスモジュールは、プロセスプラント内においてさらなるプログラミングの自由度をもオペレータまたはコンフィギュレーションエンジニアに提供する。このプログラミング自由度は、さらに優れそしてより完全な情報をオペレータに提供するために利用されることが可能であり、それにもかかわらず、依然として容易に使用・実行されることが可能である。さらに、グラフィック表示画面は、オペレータにさらなる情報を提供するために、プロセスフローモジュールのフローアルゴリズムにより決定または計算される情報を用いてアニメ化されうる。
【0012】
さらに、プロセスモジュールは、プロセスプラント内においてさらに優れたシミュレーションおよび制御を提供するために、表示画面および制御モジュールと通信可能に相互接続されうる。具体的には、プロセスパラメータの実際の数値は、制御モジュールにより測定され、制御されているプラントの一部をシミュレーションするプロセスモジュールに提供され、次いで、これらの実測値は、センサ故障などの如き、プラント内で起こりうる問題を検出するために、プロセスモジュールにより作成される予測値と比較されうる。あるいは、プロセスモジュールの一または複数のシミュレーション出力は、制御モジュール内の機能ブロックまたは他のエレメントの一または複数のシミュレーション入力部に供給され、測定したバルブにエラーを制御モジュールが検出した場合、または制御モジュールが正確に機能していないことを制御モジュールそれ自体(またはその制御モジュールの動作を監視しているオペレータ)が検出した場合に、制御モジュールがこれらのシミュレーション入力を利用して制御活動を実行しうる。
【0013】
この機能強化のための統合の有用性を最大化するために、コンフィギュレーションエンジニアは、プロセスプラント内で利用するプロセスモデルをコンフィギュレーションするときに、プロセスモジュール内のさまざまなオブジェクトにより実行される任意の数の標準または所与のアルゴリズムから選択しうるし、実際のプラントの動作をさらに正確にモデル化またはシミュレーションするために、所有権を主張できるまたはユーザが指定するアルゴリズムを提供してもよい。さらに、コンフィギュレーションエンジニアは、MIMIC、HYSYSなどにより提供されるような高忠実度シミュレーションパッケージをプロセスモジュールに結合してもよい。これにより、プロセスモジュールは、高忠実度シミュレーションパケージを実行し、まるでそれらの数値がプロセスモジュールそれ自体により生成されたかのように、高忠実度シミュレーションパッケージにより作成されるシミュレーションパラメータ値にアクセスすることが可能になる。このような多用性により、オペレータまたは他のユーザは、プロセスグラフィック表示画面に供給されることが可能な、またプロセスプラント内にさらに優れたまたは機能強化された制御を提供するために制御モジュールにより利用されることが可能な、さまざまな自由度のシミュレーション機能を有することが可能になる。また、この統合化されたシミュレーションは、プロセスプラント内で高度エラー検出または高度問題検出を提供するためにも、また実際のまたは測定された制御入力が使用可能でない場合にコントローラにシミュレーション制御入力を提供するためにも利用されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プロセスモジュールを作成するためにスマートプロセスオブジェクト利用し、プロセスプラントの動作をシミュレーションするためにグラフィック表示画面を利用する表示ルーチンを実行するオペレータワークステーションを有するプロセスプラント内に設置される分散型プロセス制御ネットワークのブロック線図である。
【図2】図1の前記オペレータワークステーション内に格納され、プロセスプラント内で高度の機能を実現するために利用され、スマートプロセスオブジェクトおよびプロセスモジュールを有する、アプリケーションと他のエンティティとからなるセットの論理ブロック線図である。
【図3】オブジェクトライブラリに格納されるスマートプロセスオブジェクトを利用してプロセス表示画面またはプロセスモジュールを作成するためにコンフィギュレーションエンジニアにより利用されるコンフィギュレーションスクリーンの略図である。
【図4】複数のスマートプロセスオブジェクトのグラフィック表示画面エレメントを相互接続することにより作成された、プロセスプラント内のストリームおよび接続エレメントの表示画面を有するプロセスグラフィック表示画面の一例の詳細図である。
【図5】相互接続されることによりさらに大規模な、前記プラントのためのグラフィック表示画面になり、図4の前記プロセスグラフィック表示画面を含む一組の最小プロセスグラフィック表示画面の図である。
【図6】高忠実度シミュレーションルーチンとの相互接続も例示する、図4の前記プロセスグラフィック表示画面に関連するプロセスモジュールの図である。
【図7A】プロセスプラント内において統合されている通りの、グラフィック表示画面と、プロセスモジュールと、制御モジュールとの間の通信の相互接続を例示する論理ブロック線図である。
【図7B】プロセスプラント内において統合されている通りの、グラフィック表示画面と、プロセスモジュールと、制御モジュールとの間の通信の相互接続を例示する論理ブロック線図である。
【図8】高度制御およびシミュレーション機能を提供するために、制御モジュール内の機能ブロックと相互接続されるブロックを有するプロセスモジュールの一例の略図である。
【図9】スマートプロセスオブジェクトを利用するプロセスモジュールが既存のプロセス制御ネットワークにおいて作成され、その中で実行されうるメソッドの論理ブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、プラント環境内で高度の制御およびシミュレーションを提供するために制御モジュールと統合されうるグラフィカル表示画面およびプロセスモジュールの両方を形成するために利用されるスマートプロセスオブジェクトが詳細に例示されている。具体的には、プロセスプラント10は、一または複数のコントローラ12を有する分散型プロセス制御システムを利用しており、各コントローラ12は、たとえばFieldbus(フィールドバス)インターフェイス、Profibusインターフェイス、HARTインターフェイス、標準4−20ミリアンペアインターフェイスなどでありうる入力/出力(I/O)デバイスまたは入力/出力(I/O)カード18を介して、一または複数のフィールドデバイス14、16に接続されている。また、コントローラ12は、たとえばイーサネット(登録商標)リンクでありうるデータハイウェイ24を介して、一または複数のホストワークステーションまたはオペレータワークステーション20、22にも結合されている。データベース28は、データハイウェイに接続され、プロセス10内のコントローラおよびフィールドデバイスに関連するパラメータデータ、ステータスデータ、および他のデータを収集・格納するデータヒストリアンとして、ならびに/または、コントローラ12およびフィールドデバイス14、16にダウンロードされ、その内に格納されている、プラント10内のプロセス制御システムの現時点における設定を格納するコンフィギュレーションデータベースとして動作しうる。コントローラノード12、入力/出力カード18、およびフィールドデバイス14、16は、過酷な状態になりうるプラント環境内に設置され、そのようなプラント環境全体に亘り分散されていることが一般的であるが、一方、オペレータワークステーション20、22およびデータベース28は、コントローラ作業員または保守作業員が容易にアクセスすることが可能な制御室またはあまり過酷でない他の環境内に設置されることが多い。
【0016】
公知のように、各コントローラ12は、一例として、エマソンプロセスマネッジメント社により販売されているDeltaVコントローラであってもよく、複数の異なるかつ個別に実行される制御モジュールまたは制御ブロック29を利用して制御戦略を実現するコントローラアプリケーションを格納・実行する。これらの制御モジュール29の各々は機能ブロックと一般的に呼ばれるブロックから構成され、各機能ブロックは、制御ルーチン全体の一部またはサブルーチンであり、プロセス制御プラント10内でプロセス制御ループを実行するために(リンクと呼ばれる通信を介して)他の機能ブロックと協動して動作する。周知のように、機能ブロックは、オブジェクト指向型プログラミングプロトコルにおけるオブジェクトであり、トランスミッタ、センサ、もしくは他のプロセスパラメータ測定デバイスに関連する入力機能、PID制御、ファジー論理制御などを実行する制御ルーチンに関連する制御機能、またはプロセス制御システム10内でなんらかの物理的機能を実行するためにバルブの如きあるデバイスの動作を制御する出力機能のうちのいずれかを実行することが一般的である。いうまでもなく、モデル予測コントローラ(MPC)、オプチマイザの如きハイブリッド機能ブロックおよび他のタイプの複雑な機能ブロックも存在する。FieldbusプロトコルおよびDeltaVシステムプロトコルは、オブジェクト指向型プログラミングプロトコルで設計・実行される制御モジュールおよび機能ブロックを利用するが、これらの制御モジュールは、たとえばシーケンシャル機能ブロック、ラダー論理などを含む所望の任意の制御プログラミングスキームを利用して設計されることが可能であり、したがって、機能ブロックまたはその他の特定のプログラミング技術を利用して設計・実行されるということには限定されない。
【0017】
図1に例示するプラント10では、コントローラ12に接続されたフィールドデバイス14、16は、標準型4−20ミリアンペアデバイスであってもよく、プロセッサとメモリとを備えたHARTフィールドデバイス、Profibusフィールドデバイス、もしくはFOUNDATION(登録商標)Fieldbusデバイスの如きスマートフィールドデバイスであってもよく、またはその他の所望のタイプのデバイスであってもよい。(図1の符号16によりラベリングされている)Fieldbusフィールドデバイスの如きこれらのデバイスのなかには、コントローラ12により実現される制御戦略に関連する機能ブロックの如きモジュールまたはサブモジュールを格納・実行するデバイスがある。機能ブロック30は、図1において、Fieldbusフィールドデバイス16のうちの二つの異なるデバイス内に配置されるように例示されているが、公知のように、プロセス制御を実現するためにコントローラ12内のモジュールの実行と協動して実行されてもよい。もちろん、フィールドデバイス14、16は、センサ、バルブ、トランスミッタ、ポジショナなどの如きいかなるタイプのデバイスであってもよく、I/Oデバイス18は、HART、Fieldbus、Profibusなどの如き任意の所望の通信プロトコルまたはコントローラプロトコルに準拠すればいかなるタイプのI/Oデバイスであってもよい。
【0018】
図1のプロセスプラント10で、ワークステーション20はオペレータインターフェイスアプリケーションと他のデータ構造とからなるパッケージを有しており、許可されたユーザ(他のタイプのユーザも存在しうるが、本明細書においてコンフィギュレーションエンジニアおよびオペレータとして時折参照されるユーザ)ならば誰でも、このパッケージにアクセスし、プロセスプラント10内で接続されているデバイス、ユニットなどを閲覧し、それらに関する機能を提供することが可能である。このオペレータインターフェイスアプリケーションのパッケージ32は、ワークステーション20のメモリ34に格納され、アプリケーションのパッケージ32内のアプリケーションまたはエンティティの各々は、ワークステーション20に関連するプロセッサにより実行されるように構成される。アプリケーションのパッケージ32の全体がワークステーション20内に格納されているように例示されているが、これらのアプリケーションまたは他のエンティティの一部がプラント10内のまたはそれに関連する他のワークステーションまたはコンピュータ内で格納・実行されてもよい。さらに、上述のアプリケーションのパッケージは、ワークステーション20に関連する表示スクリーン37に、または携帯用デバイス、ラップトップ、他のワークステーション、プリンタなどを含むその他の所望の表示スクリーンもしくは表示デバイスに、表示出力を提供することが可能である。同様に、アプリケーションのパッケージ32内のアプリケーションは、分離され、二つ以上のコンピュータまたはマシンにより実行され、互いに協働して動作するように構成されうる。
【0019】
一般的にいえば、アプリケーションパッケージ32は、三つの異なるタイプのエンティティを提供するか、またはそれらを作成し、使用することを可能にする。これらの三つの異なるタイプのエンティティの動作は、プロセスプラント10内で高度の制御、シミュレーション、および表示機能を実現するために相互に統合されうる。さらに詳細には、アプリケーションパッケージ32は、プロセスグラフィック表示画面35(一般的に、プロセスプラントの一部に属するオペレータ表示画面を提供する表示画面)と、プロセスモジュール39(一般的に、プロセスプラントの一部のシミュレーションを提供するモジュール)と、プロセスのオンライン制御を提供または実行する制御モジュール29の如きプロセス制御モジュールとを作成・実行するために利用されうる。プロセス制御モジュール29は当該技術分野において一般的に周知の技術であり、機能ブロック制御モジュールなどの如き任意のタイプの制御モジュールを有しうる。以下でさらに詳細に記載するプロセスグラフィック表示エレメント35は、プロセスプラントの動作、コンフィギュレーション、または設定とその内のエレメントとについての情報をオペレータの如きユーザに提供するためにオペレータ、エンジニア、または他の表示画面により利用されるエレメントであることが一般的である。プロセスモジュール39は、プロセスグラフィック表示エレメント35に近接して結合されていることが一般的であり、プロセスプラントの動作またはそのプロセスプラント内でプロセスグラフィック表示画面35に示されている方法で接続されているさまざまなエレメントのうちの一部の動作のシミュレーションを実行するために利用されうる。プロセスグラフィック表示画面35およびプロセスモジュール39は、ワークステーション20、22内に格納され、それらにより実行されるものとして例示されているが、プロセスグラフィック表示画面35およびプロセスモジュール39は、ラップトップ、携帯用デバイスなどを含むプロセスプラント10に関連付けされたその他のコンピュータにダウンロードされ、その内で実行されてもよい。
【0020】
図2は、ワークステーション20のアプリケーションパッケージ32内のアプリケーションおよびデータ構造または他のエンティティの一部を例示している。具体的には、アプリケーションパッケージ32は、制御モジュールと、(プロセスフローモジュールとも呼ばれる)プロセスモジュールと、それらに関連するグラフィック表示画面を作成するためにコンフィギュレーションエンジニアにより利用されるグラフィック表示コンフィギュレーションアプリケーション38とを有している。グラフィック表示コンフィギュレーションアプリケーション38は、任意の標準または公知の制御モジュールコンフィギュレーションアプリケーションであってもよいが、プロセスモジュールおよびグラフィック表示コンフィギュレーションアプリケーションは、一または複数のスマートプロセスオブジェクトを利用してプロセスモジュールおよびグラフィック表示画面を作成しうる。スマートプロセスオブジェクトの特性については以下でさらに詳細に記載する。さらに、プロセスモジュールとグラフィック表示コンフィギュレーションアプリケーション38とは別々に示されているが、一つのコンフィギュレーションアプリケーションがこれらのタイプのエレメントの両方を作成してもよい。
【0021】
スマートプロセスオブジェクト42のライブラリ40は、プロセスモジュール39およびグラフィック表示画面35を作成するためにコンフィギュレーションアプリケーション38によりアクセスされ、コピーされ、利用されうるスマートプロセスオブジェクトの見本またはテンプレートを有している。いうまでもなく、コンフィギュレーションアプリケーション38を利用して一または複数のプロセスモジュールを作成することが可能であり、各モジュールは、一または複数のスマートプロセスオブジェクト42から構成されるかまたはそれらにより作成され、プロセスモジュールメモリ46に格納されうる一または複数のプロセスフローアルゴリズムまたはシミュレーションアルゴリズム45を有しうる。さらに、コンフィギュレーションアプリケーション38を利用して一または複数の表示画面35を作成することが可能であり、各表示画面は、一または複数のスマートプロセスオブジェクト42から構成されるかまたはそれらにより作成され、相互に接続される任意の数の表示エレメントを有しうる。これらのグラフィック表示画面35bのうちの一つは、図2に拡大されて例示され、パイプ、導管、パワーケーブル、コンベヤなどでありうる接続部材により相互に接続されるパイプ、タンク、センサ、流量トランスミッタの如き一組のプロセスエレメントの表示を有している。
【0022】
実行エンジン48は、グラフィック表示画面35により定義される一または複数のプロセス表示画面をオペレータのために作成すべく、またプロセスモジュール39に関連するシミュレーション機能を実行すべく、実行時間中に、グラフィック表示画面35およびプロセスモジュール39の各々を作動または実行する。実行エンジン48は、全体としてはプロセスモジュール39により、そして詳細にはそれらのモジュール内のスマートプロセスオブジェクトにより履行されるべき論理を定義するルールデータベース50を利用しうる。また、実行エンジン48は、プロセスモジュール39の機能を実現するために、プラント10およびプロセスモジュール39の内のプロセスエレメント間の接続を定義する接続行列52も利用しうる。
【0023】
図2は、スマートプロセスオブジェクト42eのうちの一つをさらに詳細に例示している。このスマートプロセスオブジェクト42eはスマートプロセスオブジェクトテンプレートのうちの一つであるように例示されているが、いうまでもなく、他のスマートプロセスオブジェクトも上述のスマートプロセスオブジェクト42eに関連して記載された同一または同様のエレメント、特徴、パラメータなどを有していることが一般的であり、これらのエレメント、特徴、およびパラメータの詳細または数値は、スマートプロセスオブジェクトの特性および用途に依存してスマートプロセスオブジェクトごとに変更されうる。さらに、スマートプロセスオブジェクト42eは、オブジェクト指向型プログラミング環境内のオブジェクトであり、したがってデータ格納部、データ入出力部、およびそれに関連するメソッドを有しているが、このスマートプロセスオブジェクトは、その他の所望のプログラミングパラダイムまたはプロトコルにより作成され、その中で実行されてもよい。
【0024】
いうまでもなく、スマートプロセスオブジェクト42eは、インスタント化されるまえは、図1のプロセスプラント10内の物理的エンティティまたは論理エンティティの如き特定のタイプのエンティティに関連するオブジェクトである。しかしながら、このスマートプロセスオブジェクト42eがコピーされ、インスタント化されたあとは、プロセスプラント内の特定のエンティティに固定されうる。いずれの場合であっても、スマートプロセスオブジェクト42eは、該スマートプロセスオブジェクト42eが関連付けられている論理エンティティから受信したまたはそれに属するデータを格納するデータ格納部53を備えている。このデータ格納部53は、製造業者、更新、名称、タイプなどの如き、スマートプロセスオブジェクト42eが属するエンティティについての一般的な情報または恒久的な情報を格納するデータ格納部53aを有していることが一般的である。データ格納部53bは、スマートプロセスオブジェクト42eが属するエンティティについてのパラメータデータ、状態データ、入出力データ、または他のデータ、たとえばプロセスプラント10内におけるそのエンティティの過去の時点またはそのエンティティの現在の時点でのそのエンティティに関連するデータの如き変数データまたは変わりつつあるデータを格納するデータ格納部53aを備えうる。もちろん、スマートプロセスオブジェクト42eは、任意の所望の通信リンクを介してそのエンティティ自体から、イーサネット(登録商標)バス24を介してヒストリアン28から、またはその他の所望の方法で、周期的にまたは非周期的にこのデータ(たとえば、コストデータ)を受信するように構成またはプログラミングされてもよい。データ格納部53cは、スマートプロセスオブジェクト42eが属し、図1のワークステーション20に関連するスクリーン37の如きオペレータインターフェイスを介してオペレータへの実際の表示画面に利用されるエンティティのグラフィカル表現を格納しうる。もちろん、このグラフィカル表現は、データ格納部53bに格納されているエンティティについてのパラメータデータまたは他の変数データにより定義される情報の如き、エンティティについての情報のための(、そしてデータ格納部53c内のアンダーラインによりマーキングされている)プレースホルダもまた有している。このパラメータデータは、グラフィカル表現が表示デバイス上でオペレータに提示される場合には、グラフィカル表示画面35のうちの一つの表示画面の一部として、グラフィカルプレースホルダに表示されうる。また、グラフィカル表現(およびスマートプロセスオブジェクト42e)は、グラフィカル表現により記載されているとおりに上流側構成要素または下流側構成要素をプロセスエレメントにオペレータまたはコンフィギュレーションエンジニアが取り付けることを可能にする(、そしてデータ格納部53c内の「X」によりマーク付けされている)事前定義接続ポイントを有しうる。もちろん、これらの接続ポイントは、プロセスモジュール内にコンフィギュレーションされているとおりにそのスマートオブジェクトにエレメントが接続されていることをスマートプロセスオブジェクト42eが認識することも可能にし、パイプ、ダクトなどの如き使用する必要のある接続部材のタイプ、そのエレメントに関連するストリームなども指定しうる。
【0025】
また、スマートプロセスオブジェクト42eは、スマートプロセスオブジェクト42が利用されているプロセスモジュールの内部または外部の他のスマートプロセスオブジェクトとの通信を可能にするために一または複数の入力部54および出力部56も備えうる。他のスマートプロセスオブジェクトへのこれらの入力部54および出力部56の接続は、プロセスフローモジュールのコンフィギュレーション中に、他のスマートプロセスオブジェクトをこれらの入力部および出力部に単に接続することにより、またはスマートプロセスオブジェクト間で生じる必要のある特定の通信を指定することにより、コンフィグレーションエンジニアによりコンフィグレーションされうる。これらの入力部および出力部のなかには、上述のように、スマートプロセスオブジェクトの事前定義接続ポイントにおいて接続されるスマートプロセスオブジェクトに接続されるものとして定義されたものもある。また、これらの入力部54および出力部56は、プラント10内のさまざまなデバイスまたはエンティティの間の接続を定義するルールデータベース50内の一組のルールと接続行列52とにも決定または定義されうる。入力部54および出力部56は、それらに関連するデータ格納部またはデータバッファを有し、一般的には、他のスマートプロセスオブジェクトからスマートプロセスオブジェクト42eへのデータ通信を提供すべく、またはスマートプロセスオブジェクト42e内に格納されたデータまたはそれにより生成されたデータの他のスマートプロセスオブジェクトへの通信を提供すべく利用される。また、これらの入力部および出力部は、スマートプロセスオブジェクト42eと、プロセス制御システム内のコントローラ12、フィールドデバイス14、16などの内にある制御モジュールの如き他のオブジェクトとの間の通信を提供すべく利用されうる。
【0026】
図2に例示されるように、スマートプロセスオブジェクト42eは、該スマートプロセスオブジェクト42eが利用されるプロセスモジュールの実行中において該スマートプロセスオブジェクト42eにより実行されうる(、そして図2にメソッド60a、60b、60cとして例示されている)零、一、または複数のメソッド60を格納するために利用されるメソッド格納部58も有している。一般的に、メソッド格納部58に格納されるメソッド60は、データ格納部53a、53b内に格納されたデータと、入力部54および出力部56を介して、他のスマートプロセスオブジェクトから得られたデータまたはコンフィギュレーションデータベースもしくはヒストリアン28の如き他の供給源からのデータとを利用することにより、プロセスプラント10またはそのプラント内の任意のエンティティについての情報を決定する。たとえば、メソッド60は、スマートプロセスオブジェクト42eにより定義されるエンティティに関連する劣化動作状態または不良動作状態、そのエンティティまたはプロセスプラント10内の他のエンティティに関連するエラーなどを決定しうる。メソッド60は、スマートプロセスオブジェクトのタイプまたはクラスに基づいて事前にコンフィギュレーションまたは提供されることが可能であり、実行時間中に、スマートプロセスオブジェクト42eが実行エンジン48内で実行される毎に実行されることが一般的である。スマートプロセスオブジェクト42eの如きスマートプロセスオブジェクト内に設けられうるメソッド60の一例としては、漏洩検出、不感帯検出、むだ時間検出、移動検出、変動検出、状態監視の検出、コンピューティングコスト、またはそのエンティティに関連する他の状態の検出などが挙げられる。
【0027】
また、メソッド60は、プロセスエンティティを通過して流れる材料のスマートプロセスオブジェクトに関連付けされた該プロセスエンティティの動作をシミュレーションすることを容易にするためにも提供されうる。したがって、メソッド60は、物質収支(マスバランス:MASS BALANCE)、エネルギ収支、流量、温度、組成、蒸気状態、およびプラント10内の材料に関連する他のシステムレベルまたはストリームレベルでのパラメータを計算するために、提供された入力に基づいて予測出力を計算するようにエレメントの動作をシミュレーションなどをするために提供されうる。もちろん、これらは、スマートプロセスオブジェクト42e内に格納され、それにより実行されるメソッドのほんの数例に過ぎなく、利用されうるメソッドは他にも多くある。そのようなメソッドは、表現されるエンティティのタイプと、プロセスプラントにおいてエンティティが接続・利用されるメソッドと、他の因子とにより決定されるのが一般的である。なお、スマートプロセスオブジェクト42eは、システムレベルでの状態、エラーなどを検出するメソッドを格納・実行することが可能であるが、これらのメソッドは、デバイスと、プロセス制御モジュールおよびプロセス制御ループの如き論理エレメントと、システムレベルではない他のエンティティとについての他の情報を決定するためにも利用されうる。所望の場合には、メソッド60は、C、C++、C#などの如き任意の所望のプログラミング言語でプログラミングされても実現されてもよく、または、実行中に、スマートプロセスオブジェクト42eのために実行される必要があるルールデータベース50を参照させられてもそのルールデータベース50内の適応可能ルールを定義してもよい。
【0028】
所望の場合には、各スマートプロセスオブジェクトは、適用可能アルゴリズムライブラリまたは適用可能メソッドライブラリを有しうる。これらのライブラリは、プロセスモジュール内で接続されると、スマートプロセスオブジェクトのシミュレーション動作を定義するために利用されうる。そのようなライブラリが図2のスマートプロセスオブジェクト42eにプルダウンメニュー61に例示されており、他のスマートプロセスオブジェクトの各々に同様のメニューが関連付けされうる。コンフィギュレーションエンジニアは、たとえばプルダウンメニュー61を介して(メソッド1、メソッド2などと呼ばれる)シミュレーションアルゴリズムのライブラリのうちの一つを選択することによりスマートプロセスオブジェクトをプロセスモジュール39内に配置した場合に、該スマートプロセスオブジェクトのシミュレーション動作を定義することが可能になる。この方法で、コンフィギュレーションエンジニアは、スマートプロセスオブジェクトを用いてモデル化するプロセスのタイプまたは特性に応じてこのスマートプロセスオブジェクトに対してさまざまなシミュレーション動作を定義しうる。
【0029】
所望ならば、これに代えて、コンフィギュレーションエンジニアは、スマートプロセスブロックにより定義されるプロセスエレメントのシミュレーション動作を定義するために、所有権を主張できるアルゴリズムまたは他のユーザにより指定されたアルゴリズム提供してもよい。そのようなユーザ指定のアルゴリズム(プルダウンメニュー61において「ユーザ指定」項目として例示されているアルゴリズム)は、スマートプロセスオブジェクトがプロセスモジュール39内に配置されるかまたはその中で使用された場合に、そのスマートプロセスオブジェクトに提供・格納されうる。この機能により、必要に応じてシミュレーション動作のユーザによるカスタム化が可能になり、よってさらに優れたまたはより正確なシミュレーションを実現することが可能になる。所望の場合には、以下でさらに詳細に記載するように、スマートプロセスオブジェクト42または各プロセスモジュール39は、スマートプロセスオブジェクト内でシミュレーションアルゴリズムの使用を無効にし、これに代えて、HYSYSにより提供されるような高忠実度シミュレーションパッケージまたは高忠実度シミュレーションプログラムにより決定されるプロセスモジュールの動作を引き起こすオペレータ始動可能スイッチを有しうる。この場合、スマートプロセスオブジェクトまたはプロセスモジュールは、該スマートプロセスオブジェクトそれ自体の内でシミュレーションアルゴリズムを利用することとは対照的に、高忠実度シミュレーションからシミュレーションパラメータを取得する。
【0030】
実行エンジン48によりグラフィック表示画面35またはプロセスモジュールが実行されている間に、実行エンジン48は、グラフィック表示画面35またはプロセスモジュール39内のスマートプロセスオブジェクトの各々への入力部54および出力部56により定義される通信を実行し、メソッド60により実現される機能を実行するためにそれらのオブジェクトの各々のメソッド60を実行しうる。上述のように、メソッド60の機能は、プログラミングによりスマートプロセスオブジェクト内に設けられてもよく、またはデータベース50内の一組のルールにより定義されてもよい。実行エンジン48は、その一組のルールにより定義された機能を実現するために、スマートプロセスオブジェクトのタイプ、クラス、識別、タグ名などに基づいてその一組のルールを実行する。
【0031】
なお、スマートプロセスオブジェクト42eのインスタンスは、該スマートプロセスオブジェクト42eが関連付けされているプロセスモジュールのコンテキスト内でタグまたは固有の名前を有しており、このタグまたは固有の名前は、スマートプロセスオブジェクト42eの通信を実現するために利用され、実行時間中に実行エンジン48により参照されうる。プロセスモジュールタグは、制御システムコンフィギュレーション内において固有のものである必要がある。このタグ規定により、プロセスモジュール39内のエレメントは、プロセスグラフィック表示画面35と、プロセスモジュール39と、さらに制御モジュール内のエレメントとにより参照されることが可能になる。さらに、スマートプロセスオブジェクト42eのパラメータは、簡易な数値の如き簡易パラメータ、構造化パラメータ、またはパラメータに関連するユニットを予測判断するスマートパラメータでありうる。プロセスルールエンジンまたは実行エンジン48は、スマートパラメータを解釈・利用して、すべての信号が同一のユニットで送信されること、またはすべての信号が正確に変換されることを確実にすることが可能である。また、オペレータのためにスマートアラーム戦略および/またはスマートアラームインターフェイスを作成するために、スマートプロセスオブジェクト(またはプロセスモジュール)に対するアラームの群をオンオフすべくスマートルールを利用することも可能である。さらに、プラント10のプロセス制御戦略内の装置クラスおよびモジュールクラスとスマートプロセスオブジェクトクラスとを関連付けし、スマートプロセスオブジェクトとそれが解釈またはアクセスする必要のあるプロセス変数との間に既知の関係を提供することが可能である。
【0032】
また、スマートプロセスオブジェクトは、プロセスグラフィック表示画面またはプロセスモジュール内で用いられる場合には、動作モードと、ステータスと、アラーム動作とを有してもおり、これにより、これらのスマートオブジェクトは、実行時間中に、停止モード、開始モード、標準モードの如き異なるモードに切り換えられ、現行の動作状態に基づいてそのオブジェクトに関連するステータスを提供し、パラメータ範囲外、パラメータ制限、パラメータ高変動などの如き、検出状態に基づいてアラームを提供しうる。また、スマートプロセスオブジェクトは、クラス/サブクラス階層構造も有しており、この階層構造は、スマートプロセスオブジェクトが、クラスライブラリにおいて分類され、複合構造でともに収集されることなどを可能にする。さらに、スマートプロセスオブジェクトは、関連エンティティが忙しい時、または、たとえば、関連エンティティがプラント10内のバッチ制御プロセスにより束縛されている時のスマートプロセスオブジェクトによる認識を可能にするために、制御モジュールおよび他のオブジェクトの如き他のエレメントからの情報を利用しうる。
【0033】
スマートプロセスオブジェクトは、ポンプ、タンク、バルブなどのような物理デバイス、または、プロセス領域、計測もしくはアクチュエータ、制御戦略などのような論理エンティティの如き任意の所望のプロセスエンティティに関連付けされうる。場合によっては、スマートプロセスオブジェクトは、配管、導管、配線、コンベヤベルトの如き接続部材、またはプロセス内の一つの地点から他の地点まで、材料、電気、ガスなどを移動するその他のデバイスもしくはエンティティに関連付けされうる。また、本明細書において時折スマートリンクまたは接続エレメントと呼ばれる接続部材に関連するスマートプロセスオブジェクトも、(デバイス自体または接続部材自体がマーキングされていない場合であっても、またはプロセス10内で通信することが可能でない場合であっても)タグが付けられ、プロセス内の他のエレメント間における材料の流動を表すべく利用されることが普通である。
【0034】
スマートリンクは、さまざまな材料または(電流の如き)現象(たとえば、蒸気、電流、水、汚水など)が接続部を通過して流動する方法を定義するプロパティまたはパラメータを有している。これらのパラメータは、接続部を通る流れのタイプおよび特性(たとえば、通常速度、摩擦係数、乱流または非乱流のような流れのタイプ、電磁気など)と、その接続部を通る流れの方向とを示しうる。スマートリンクは、接続元のユニットとスマートリンクが接続する接続先オブジェクトのユニットを一致させ、一致しない場合には変換を実行するプログラミングまたはメソッドを有しうる。また、スマートリンクのメソッドは、実際の接続部材を通る流れの速度または特性、物理的接続部の長さおよびサイズ、輸送遅延などを推定するモデルまたはアルゴリズムを利用して、その接続部材を通る流れをモデル化しうる。スマートプロセスオブジェクトのために格納されているパラメータ(たとえば、摩擦パラメータ)は、これらのメソッドにおいて利用されうる。このように、スマートリンクまたは接続部材は、本質的に、スマートプロセスオブジェクトがその他の上流側および下流側のオブジェクトまたはエンティティを認識することを可能にする。もちろん、スマートリンクは、任意の所望の方法または簡便な方法で、たとえば他のオブジェクト間の接続、システム内の液体、気体、電流などの如き流体のタイプ、このスマートプロセスオブジェクトのためのエンティティの上流側および下流側に存在する他のエンティティ特定、材料、流体、電流などの移動方向を定義しうる。一つの実施例では、接続行列52は、プロセスフローモジュールの実行に先立って作成され、プラント内のさまざまなデバイス間の相互接続、したがってさまざまなスマートプロセスオブジェクト間の相互接続をスマートリンクのために定義しうる。実際のところ、実行エンジン48は、接続行列52を利用して上流側および下流側のエンティティを確認し、これにより、スマートプロセスオブジェクトとそのスマートプロセスオブジェクトに関連するメソッドとの間の通信を定義しうる。さらに、スマートプロセスオブジェクト内のメソッドの必要性に応じて、相互に作用して相互にデータを取得し合うために、出力接続部に関連するスマートオブジェクトの影響を解明するために、スマートプロセスオブジェクトにより利用されるべく一または複数の組のルールが提供されうる。
【0035】
所望の場合には、スマートプロセスオブジェクト42eは、URLの如きホットリンクを主要ドキュメンテーションに提供することも可能である。このドキュメンテーションは、オブジェクトのタイプに適用可能であるか、または(その重要性およびアプリケーションに応じて)スマートプロセスオブジェクト42eの属するデバイスのインスタンスに限定されうる。ドキュメンテーションは、販売会社により提供されても、ユーザにより指定されてもよい。ドキュメンテーションの一例としては、コンフィギュレーションドキュメンテーション、開始手続ドキュメンテーションおよび停止手続ドキュメンテーション、操作ドキュメンテーション、および保守ドキュメンテーションが挙げられる。所望の場合には、オペレータは、オペレータ表示画面に表示されるオブジェクトをクリックし、そのオブジェクトまたはそれに関連するデバイスのインスタンス限定ドキュメンテーション(存在する場合)および包括的ドキュメンテーションを表示しうる。また、オペレータは、システムソフトウェアから独立して、保守要求、動作問題の記録などの如きドキュメンテーションを追加/削除/変更することが可能であってもよい。さらに、これらのホットリンクは、オペレータインターフェイスにおいてオブジェクトへの知識リンクを追加する機能を提供するために、オブジェクトに関連する適切な情報への迅速なナビゲーションを提供するために、顧客限定の作業指示、オブジェクトタイプ限定の作業指示、またはオブジェクトのインスタンス限定の作業指示を追加する機能を提供するために、ユーザによりコンフィギュレーション・変更されることが可能である。
【0036】
プロセスモジュールおよびプロセスグラフィックは、さまざまなスマートプロセスオブジェクトの相互接続により一緒に作成されるものとして上述されているが、別々に作成されてもよい。たとえば、プロセスグラフィックはスマートプロセスオブジェクトを用いて作成され、そして完成したときに、そのグラフィック表示画面内のグラフィックエレメントおよびそれらの相互接続に基づいて、そのグラフィックのためのプロセスモジュールが生成されてもよい。他の方法としては、スマートプロセスオブジェクトを用いてプロセスモジュールがまず作成され、いったんそれが作成されると、プロセスモジュールを作成するために利用したスマートプロセスオブジェクト内のグラフィック表示エレメントを利用して、そのプロセスモジュールのためのグラフィック表示画面がコンフィギュレーションアプリケーション38により自動的に作成されてもよい。さらに、プロセスモジュールとグラフィック表示画面とが別々に作成され、(たとえば、グラフィック表示画面およびプロセスモジュール内のエレメントのタグプロパティを利用して)相互に参照することにより、これらの二つのエンティティ内の個々のエレメントが相互に結合されてもよい。この仕組みにより、一つのスマートプロセスオブジェクトは、複数の表示画面により参照されうる。いずれの場合であっても、いったん作成されると、プロセスグラフィック表示画面とそれに関連するプロセスモジュールは独立してまたは別々に実行されうる。ただし、所望または必要に応じて、プロセスグラフィック表示画面とそれに関連するプロセスモジュールは、パラメータおよび情報を相互に通信することが一般的である。
【0037】
さらに理解を深めるために、プロセスグラフィック表示画面およびプロセスモジュール内で利用されうるまたはそれらを作成するために利用されうるスマートプロセスオブジェクトのいくつかの可能な特徴および例を以下に詳細に記載する。次に、記載されたエレメントおよび特徴を用いて作成されるプロセスグラフィック表示画面およびプロセスモジュールが高度の制御およびシミュレーション能力を実現するために制御モジュールと統合される方法を記載する。もちろん、いうまでもなく、スマートプロセスオジェクトのエレメントおよび特徴は本明細書において記載するエレメントおよび特徴に限定されるわけではなく、所望の場合には、プロセスグラフィックおよびプロセスモジュールの一方または両方の内において、またはそれらを作成するために、他の特徴およびエレメントを利用してもよい。
【0038】
一般的にいえば、プロセスプラントを反映するオペレータ表示画面またはグラフィック表示画面をユーザが構築することを可能にするために一組の事前定義グラフィックエレメントをコンフィギュレーションアプリケーション内に設けうる。これらのグラフィックエレメントは、制御システムとインターフェイスするオンライン測定およびオンラインアクチュエータを動的に示すように設計されている。これに加えて、プロセス動作を反映する非計測パラメータは、プロセスモジュール内に設けられるオンラインプロセスシミュレーションを利用して計算され、関連グラフィック表示画面の不可分の部分として表示されうる。
【0039】
さらに、エンジニアリングシミュレーションの目的またはトレーニングシミュレーションの目的のために利用されるオフライン環境においては、プロセスモジュールにより提供されるプロセスシミュレーションは、グラフィックエレメントおよびそれに関連する制御モジュールにおいてプロセス測定値の代りに用いられうる。関連プロセスモジュールにより計算されるこれらの数値は、プロセスグラフィックにおいて示されるアクチュエータの位置または状態および手動による外乱値に基づきうる。この方法で、グラフィック表示画面および制御モジュールがオンラインまたは制御状況とオフラインまたはシミュレーション状況との両方において利用される。また、ほとんどの場合、グラフィックエレメントの静的部分が公知のグラフィックライブラリに含まれる三次元構成成分に類似しているように見えるが、これらのグラフィックエレメントのさらなる固有の特徴またはプロパティと、これらのエレメントにより表示される情報と、制御システムI/Oおよびプロセスシミュレーションモジュールへのこれらのエレメントのリンクとを、グラフィックエレメントの複数の可能なタイプおよび例に関連させて以下に記載する。
【0040】
一般的にいえば、スモールプロセスオブジェクトに関連するプロセスモジュール内のグラフィックエレメントおよびシミュレーションアルゴリズムは、ストリームエレメントと、プロセス接続エレメントと、アクチュエータエレメントと、処理エレメントと、測定エレメントと、プロパティ推測エレメントとを含む複数の異なるタイプのプロセスエレメントのうちの一つに分類される。ストリームエレメントは、プロセスプラント内の材料のストリームを定義することが一般的であり、組成、密度、流量、温度、圧力、重量、および/または材料のストリームを定義するその他のパラメータを表すためにグラフィック表示画面に表示されうる。ストリームエレメントは、プロセスモジュールの入力部で定義され、プロセスモジュール内のエレメントに供与され、それにより、材料の流動がプロセスモジュールによりモデル化され、グラフィック表示画面に表示されることを可能にし得る。同様に、ストリームエレメントは、グラフィック表示画面により示されるプロセスプラントの一部の材料出力部をグラフィック表示画面に表示するためにプロセスモジュールの出力部または端部において示されうる。また、ストリームエレメントは、さまざまなグラフィック表示画面(およびそれに関連するプロセスモジュール)が相互に接続される方法を定義するためにも利用されうる。たとえば、一方のプロセスモジュールにおける出力ストリームは他方のプロセスモジュールにおける入力ストリームであり、その他方のプロセスモジュールの入力ストリームで用いられる数値を供給しうる。ストリームは次の四つの部分を有しうる:名称(たとえば、pHストリーム)、方向(たとえば、流入部)、測定(たとえば、流量、圧力、温度)、および組成(窒素、アンモニアなど)を包含しうる。しかしながら、ストリームは、所望の場合には、他の部分またはパラメータを有してもよい。
【0041】
プロセス接続エレメントは、固体材料、液体および蒸気、ならびに気体の如きプラント内の材料が一つのデバイスから他のデバイスに配送または搬送される方法を定義する。プロセス全体に亘る材料の流れを明確に説明するために、配管、ダクト、コンべヤを含む三つのタイプのプロセス接続部材が使用されうる。もちろん、電気化学プロセスなどにおける電力潮流に対処する電気ケーブルの如き他のタイプの接続エレメントも同様に使用してもよい。配管はプラント内の液体流動および高圧蒸気流動または高圧気体流動を示す(およびシミュレーションする)ために使用されることが一般的である。ダクトはプラント内の低圧気体流動を示す(およびシミュレーションする)ために使用されることが一般的である。コンベヤは処理ユニット間の固体材料の移動を示す(およびシミュレーションする)ために使用されることが一般的である。この結果、各プロセス接続エレメントは、デバイスの入力部または出力部で材料を供給するために使用される配管接続、ダクト接続、またはコンベヤ接続の如き接続のタイプを定義する。
【0042】
所望の場合には、接続部材により輸送される材料のプロパティは上流側入力により判断される。この情報と、接続が完了しているか否かを定義する接続ステータス変数とを足したものがその接続エレメントのプロパティとしてグラフィック表示画面上において入手可能にされうる。接続エレメントは、処理エレメント出力部、アクチュエータエレメント出力部、またはストリームエレメント出力部で始まりうる。同様に、接続エレメントは、処理エレメント入力部、アクチュエータエレメント入力部、またはストリーム入力部で終了しうる。
【0043】
接続エレメントのプロパティは、グラフィック表示画面内の接続部材上にカーサが置かれたときに自動的に表示されうる。また、接続エレメントに関連するプロパティは、(以下に定義される)測定エレメントまたは予測プロパティエレメントを接続エレメント上に置くことにより恒久的に表示画面に表示されうる。所望の場合には、接続エレメントは、エレメント出力部(たとえば、ストリーム出力部、処理エレメント出力部、またはアクチュエータエレメント出力部)上でマウスの左側ボタン押し、マウスのボタンを押したまま、カーサをエレメント入力部上に移動することにより作成されうる。接続の確立を成功させるためには、上流側エレメントおよび下流側エレメントの入力タイプと出力タイプ(パイプ、ダクト、またはコンベヤ)が一致しなければならない。上述の接続では、上流側エレメントのタイプを自動的にまねる。
【0044】
所望の場合には、配管エレメントはパイプ接続部材としてプロセスグラフィック表示画面に表され、ダクトエレメント(たとえば、空気または気体)はダクトとして表され、コンベヤエレメントはコンベヤベルトとして表されてもよい。配管エレメント接続部材、ダクトエレメント接続部材、コンベヤエレメント接続部材は、処理エレメント間で自動的に経路が決定され、流れの方向を示すためにこれらのエレメント表示の外側に矢印が表示されうる。上流側出力部が二つの接続部材に共通である場合には「T」エレメントがパイプ、ダクト、またはコンベヤに含まれる。同様に、「T」エレメントを利用して複数の出力部を結合しうる。コンベヤエレメントの色彩または他のグラフィクプロパティは、たとえば動作中/停止中、流動中/非流動中、詰まりなどの如きそのステータスを示すために変化しうる。一般的にいえば、コンベヤに沿った材料の流動はそのコンベヤに接続されたモータドライブにより決定される。したがって、コンベヤにはモータドライブアクチュエータ(以下でさらに詳細に記載するアクチュエータエレメント)が接続されうる。これに加えて、(以下で記載する)測定エレメントは、パイプエレメント、ダクトエレメント、およびコンベヤエレメントに接続され、そのパイプエレメント、ダクトエレメント、またはコンベヤエレメントに関連する測定量を表示することを可能にする。これらの測定量には、たとえばコンベヤの速度、パイプ内またはダクト内での材料の流量、コンベヤ、パイプ、またはダクトの上または中の材料のたとえば湿気、重量のようなプロパティが含まれる。また、パイプ、ダクト、またはコンベヤの上または中の材料の測定されないプロパティ、たとえばその材料の組成を表示するために表示プロパティエレメントを追加することも可能である。
【0045】
所望ならば、配管接続エレメント、ダクト接続エレメント、およびコンベヤ接続エレメントの各々は、接続損傷や、選択されたプロパティ(圧力、温度、長さなど)がコンフィギュレーションされたリミットの外にあることを、画像的かつ動的に(たとえば、色彩の変化により)反映しうる。さらに、関連プロセスモジュールにより計算されたパラメータは画像で表示しうる。たとえば、上流側接続部材により提供されるプロパティ、たとえば接続ステータスが良好であるかまたは不良であるか否かや、接続エレメントの一または複数の選択されたパラメータのリミットなどが、接続エレメントまたはその接続エレメントにより転送されるストリームについての情報を提供するためにグラフィック表示画面に表示されうる。
【0046】
一般的にいえば、アクチュエータエレメントは、ストリームに対してあるアクチュエーション機能を実行するエレメントであり、さまざまな接続エレメント間に、または処理エレメントと接続エレメントとの間に配置されうる。アクチュエータエレメントの一例としては、調整バルブ(アクチュエータ付き)、オンオフバルブ(アクチュエータ付き)、ポンプ(モータ付き)、押し込み送風機(モータ付き)、吸出し送風機(モータ付き)、排出装置(オンオフバルブ付き)、ダンパ(ドライブ付き)、フィーダ(可変速度モータ付き)、コンベヤモータドライブ(コンベヤエレメントに取り付けられうる)などが挙げられる。
【0047】
バルブエレメントのグラフィック表示は、(たとえば、アニメーションにより)予測バルブ位置と、(たとえば、色彩の変化により)バルブ不良と、(たとえば、色彩の変化により)バルブの全開/全閉の位置と、(たとえば、数字列または他のしるしにより)そのバルブを制御する担当制御ブロックのAO、DO,DC,設定値、PV,OUT,モードなどとを動的に反映しうる。(プロセスモジュール内で用いられる)バルブエレメントに関連するシミュレーションエレメントは、排出圧、質量流量、液体温度、液体組成、入口圧、および出口圧の如きバルブアクチュエータに関連するパラメータを計算するシミュレーションアルゴリズムを有しうる。これらのシミュレーションパラメータ値または計算パラメータ値は、所望な場合には、プロセスグラフィックに表示されうる。しかしながら、ユーザまたはコンフィギュレーションエンジニアは、そのバルブのタイプ(たとえば、線形性、急速開放、イコールパーセンテージ特性、バルブ寸法)とともに、そのバルブに関連する制御モジュール内のAOブロック、DOブロック、またはDCブロックへの参照、さらには開放から閉止に至るストローク時間をコンフィギュレーションしなければならないことが多い。もちろん、バルブを通過して流れる材料へのそのバルブの動作をシミュレーションするために利用可能なシミュレーションアルゴリズムは、そのバルブのタイプおよび寸法の情報に依存しうる。
【0048】
ポンプエレメントのグラフィック表示は、(たとえば、色彩の変化を利用して)モータのステータスと、(たとえば、ストリングを利用して)それに関連するDO機能ブロックモードまたはDC機能ブロックモードおよび設定量と、(可変速度ドライブが利用されている場合には)モータ速度と、AO設定量と、PVと、(可変速度ドライブが利用されている場合には)OUTモードと、他の所望のパラメータとを動的に反映しうる。同様に、(プロセスモジュール内で利用される、)このエレメントに対するプロセスシミュレーションは、排出圧、液体組成、液体温度、および質量流量の如きパラメータを決定または計算することが可能であり、これらのパラメータ値は、グラフィック表示画面内に表示されうる。ユーザは、ポンプタイプに基づいてポンプ曲線を定義する必要のある場合があるが、しかしながら、ユーザは、モータの始動/停止に関連するDOブロックまたはDCブロックへの参照と、(可変速度ドライブが使用されている場合には、)上述のブロックに関連する、可変速度ドライブのためのAO機能ブロックへの参照と、ポンプの動作を定義するためのポンプ曲線(たとえば、圧力―流量)とをコンフィギュレーションしうる。
【0049】
押し込み通風機用アクチュエータエレメントまたは吸出し送風機用アクチュエータエレメントのグラフィック表示は、モータのステータスと、DO機能ブロックモードまたはDC機能ブロックモードおよび設定値と、(可変速度ドライブが使用されている場合には)モータ速度と、AO設定値と、(可変速度ドライブが使用されている場合には)PV機能ブロックモード、OUT機能ブロックモード、DO機能ブロックモード、またはDC機能ブロックモードと、他の所望のパラメータとを動的に反映する表示を有することが可能であり、これらのうちのいずれかをグラフィック表示画面内に表示することが可能である。プロセスモジュール内で用いられるこのエレメントのためのプロセスシミュレーションエレメントは、排出圧、気体組成、気体温度、および気体の質量流量の如きパラメータを決定または計算することが可能であり、これらのパラメータ値はグラフィック表示画面内に表示されることが可能である。ユーザは、モータの始動/停止に関連するDCブロックへの参照と、(可変速度ドライブが使用されている場合には、)可変速度ドライブのためのAO機能ブロックへの参照と、送風機のシミュレーションされる動作を定義するための送風機曲線(圧力―流量)とをコンフィギュレーションしうる。
【0050】
場合によっては、特定のタイプのアクチュエータが、特定のタイプの、パイプ、ダクト、またはコンベヤの如き接続部材とのみ使用されることがある。以下のテーブルは、典型的なアクチュエータエレメントに対する例示的な接続制限の一部を規定している。
【0051】
【表1】

【0052】
処理エレメントは、なんらかの方法でプラント内の材料またはストリームを処理するプラント装置を備えている。一般的にいえば、処理エレメントの入力および出力はすべて接続エレメントを介して行われる。標準的な処理エレメントは、タンク(垂直型および水平型)と、ヒータと、固定混合器と、反応器と、混合器と、空気加熱機と、なんらかのタイプの単純処理活動または標準処理活動を実行するその他のエレメントとを備えている。標準処理エレメントの場合は、ユーザは、物理的な装置プロパティ、たとえば寸法、容積などとともに、そのエレメントの入出力数を指定しうる。これらの標準処理エレメントのシミュレーションアルゴリズムおよび静的表現は、それらがユーザにより変更されることが可能ではないように、しかしコンフィギュレーション時に上述の通り選択可能であるように設定されうる。もちろん、所望の場合には、他の、通常さらに複雑なプラント装置(たとえば、蒸留コラム、エバポレータ、セパレータ、ボイラなど)をカスタム処理エレメントとして実装しうる。そのようなカスタム処理エレメントの静的表現、入出力数、およびシミュレーションアルゴリズムは、ユーザインターフェイスの要求項目を充たすように修正されうる。カスタム処理エレメントがいったん定義されると、他の処理エレメントの作成の開始点として再使用または使用されうる複合体またはテンプレートとして保存されうる。
【0053】
タンク標準処理エレメント(垂直型または水平型のうちのいずれでも)は、タンクへのパイプ接続に基づいてコンフィグレーションされることが可能であり、そのタンクエレメントは、(たとえば、動的アニメーションを利用して)タンク内の水面レベルと、(たとえば、色彩の変化を利用して)100%充満した状態または空っぽの状態とを反映しうる。そのタンクのプロセスモジュールシミュレーションは、出口温度、出口組成、液体温度、およびタンクのシミュレーション水面レベルの如きパラメータを、グラフィック表示画面を介して計算・表示しうる。しかしながら、タンクをシステムに結合するために、ユーザまたはコンフィギュレーションエンジニアは、入出力接続の数、タンクへの完全な接続、サイズ(たとえば、直径および高さ)の如きタンクプロパティなどをコンフィギュレーションする必要がある場合もある。
【0054】
ヒータ処理エレメントは、グラフィック表示画面を介して、(たとえば、色彩の変化を利用して)熱伝達係数と、出口製品温度と、入口製品温度と、(一定圧力降下を想定して)出口圧などとを動的に計算・反映しうる。ユーザまたはコンフィギュレーションエンジニアは、ヒータへの完全な接続、ヒータの表面積、および(きれいなときの)熱伝達係数をコンフィギュレーションする必要がある場合もある。
【0055】
もちろん、固定混合器、反応器、混合器、空気加熱機、熱交換器などの如き他の処理エレメントは、これらのタイプのデバイスに合わせた表示能力およびシミュレーション能力を有しうる。蒸留コラム、エバポレータ、セパレータ、ボイラなどの如き非標準処理エレメントは、カスタム処理エレメントを利用して画像的に表示されることが可能であり、該カスタム処理エレメントにおいては、容器に関連するシミュレーションは、標準選択肢に含まれていない場合にはユーザにより定義されうる。これらのエレメントにおける処理は、ステップ応答モデルとして説明または定義されることが可能であり、容器の各入力はその各出力に関連付けられる。入力は、気体ストリームおよび/または液体ストリームでありうる。ユーザは、選択的に、処理エレメントの入力と出力との間の関係を説明する方程式を定義することが可能であり、これらの方程式は、シミュレーションを実行するためにそのエレメントを利用するプロセスモジュール内に格納されうる。所望の場合には、カスタム処理エレメントに関連する静的グラフィックをユーザが迅速に作成することを補助するために、なんらかの簡易な静的グラフ表現が提供されてもよい。これらの簡易グラフィックが利用される場合、ユーザは、所望の数の入出力接続と、カスタム処理エレメントによりサポートされる接続のタイプ(たとえば、パイプ、ダクト、コンベヤ)とを指定する必要があるのみである。これに応答して、グラフィック項目が、表示され、オペレータグラフィックの作成のために直ぐに使用されることが可能になる。所望の場合には、ユーザがシミュレーションアルゴリズムをステップ応答として指定することを選択するならば、処理エレメントの各入出力に関連するゲインおよび任意の動態を指定することが可能になる。ユーザがカスタムアルゴリズムを選択すると、ユーザがシミュレーションアルゴリズムを定義するために表現エディタが提供されうる。選択された方法に基づいて、カスタム処理エレメント出力のプロパティが別々に計算されうる。さらに、ユーザは、個別のソフトウェアアセンブリで定義されたアルゴリズムのうちの一または複数を参照しうる。
【0056】
さらに、カスタム処理エレメントを作成するために、複数の事前定義複合体または事前定義テンプレートが用意されうる。これらのテンプレートは、たとえば、流出気体O2、流出気体CO、発生蒸気、ボイラドラムレベル、およびボイラドラフトを計算するカスタムアルゴリズムを有するボイラテンプレートを有している。そのようなテンプレートは単一燃料入力に基づいていてよい。しかしながら、そのテンプレートを修正することにより、複数の燃料を有するボイラをシミュレーションすることが可能になる。他の事前定義テンプレートとしては、容器―サイクロンセパレータ専用テンプレートを挙げることが可能であり、該テンプレートは、噴霧乾燥機カスタム処理エレメントともに利用され、セパレータの動作をモデル化するためにステップ応答モデルを有しうる。同様に、コラムテンプレート、噴霧乾燥機、およびエバポレータ本体は、予測プロセス応答を定義するためにステップ応答モデルを利用しうる。エバポレータにおいては、エネルギ入力および入力流の濃度に基づいて、出口流の濃度および蒸気の放出を計算することが可能である。多重効果エバポレータを作成するために、熱交換器エレメントおよび排出装置エレメントとともに複数のエバポレータエレメントを相互に接続しうる。同様に、容器―排気筒専用カスタムテンプレートはボイラ処理エレメントとともに使用されうる。この場合、入口流のプロパティは、所望ならばなんらの修正も加えられずに排気筒を通過して輸送されてもよく、または排気筒内で実行される排ガス削減を反映するように輸送されてもよい。
【0057】
グラフィック表示画面およびプロセスモジュールを作成するために利用可能な他のタイプのエレメントとしては、測定エレメントとプロパティエレメントとが挙げられる。測定エレメントはトランスミッタエレメントを有しており、該トランスミッタエレメントは、物理的トランスミッタに関連する測定値と、スイッチエレメントとにアクセスするためにグラフィック表示画面において利用されうる。一般的に、トランスミッタエレメントは、実際のトランスミッタ(センサ)に関連する劣悪または不確定なステータス、制御ブロック内の関連AI機能ブロックのモード、測定値または測定単位などを動的に反映するか、または実際のトランスミッタに関連する他のデータを動的に反映しうる。オフラインモード(またはシミュレーションモード)においては、トランスミッタエレメントは、AIブロックまたはPCIブロックに関連する数値よりもむしろプロセスモジュールにより提供されるシミュレーション値にアクセスしてそれを表示するために利用されるか、またはシミュレーションされた制御ルーチンにおいて使用される測定結果として制御モジュール内の関連AIブロックへ測定値を提供するために利用されうる。トランスミッタエレメントは接続エレメントまたは処理エレメントに追加されることが可能であり、そのようなトランスミッタエレメントが表示画面に追加される場合には、ユーザは、コントローラスキームにおいて上述の測定値を提供している関連AIブロック、PCIブロック、またはDIブロックを特定する必要があることが一般的である。オンラインモードにおいては、上述の測定値は測定エレメントの隣に表示されうる。オフラインモード(またはシミュレーションモード)においては、(対応するプロセスモジュールにより作成される、)上述のシミュレーション測定値が自動的に表示されうる。オンライン動作においては、ユーザは、測定不良の状況下では、シミュレーション数値に制御および表示を切り換えることを選択することが可能である。
【0058】
スイッチエレメントは、劣悪または不確定なステータス、その関連するDI(たとえば、手動またはOS)、およびスイッチの離散値(オン、オフなど)を動的に反映する。オフラインシミュレーションモードの場合には、ユーザは、シミュレーション値または手動値とステータスとを選択し、そのスイッチの数値とステータスとを手動で入力することにより、グラフィック表示画面内でスイッチパラメータにアクセスし、それを変更するために、スイッチ表示エレメントを利用しうる。しかしながら、ユーザは、制御スキームにおいて関連するDIブロックへの参照と、スイッチを作動するエレメントプロパティへの参照と、スイッチの状態の変更に関連する制限および不感帯とを提供することにより、そのスイッチエレメントをコンフィギュレーションしなければならない。
【0059】
推定プロパティエレメントは、プロセスモジュールにより決定されるとおりにシステムの推定プロパティを表示することが一般的であり、そのエレメントの任意のプロパティを表示するために接続エレメントまたは処理エレメントに追加されうる。このエレメントが接続エレメントまたは一つの装置に搭載された場合には、ユーザは、表示されるプロパティをブラウジングまたは選択することが可能である。したがって、物理的な測定により入手することが可能でないシミュレーションプロパティは推定プロパティエレメントを利用して表示することが可能である。そのような推定プロパティエレメントは、良好接続/不良接続と、推定プロパティ値と、付随する制限外または変更外のプロパティとを動的に反映しうる。ユーザは、表示される必要のあるプロパティへの参照と、そのプロパティが制限を越える場合にそのエレメントに対する制限および色彩の変更とをコンフィギュレーションしなければならないことが一般的である。
【0060】
いうまでもなく、トランスミッタエレメントと推定プロパティエレメントとを、処理エレメントとアクチュエータエレメントと接続エレメントとに搭載することにより、これらのプロセスエレメントの入出力に関連するプロパティが、オンライン動作中またはオフラインシミュレーション中に参照されてもよい。これらプロパティをグラフィック表示画面で見ることができるようにしてもよい。
【0061】
一般的にいえば、オペレータは、コンフィギュレーションアプリケーション38を実行して一または複数のプロセスモジュール39またはグラフィック表示画面を作成し、プロセス10の動作中またはシミュレーション環境下でそれを実行することが可能である。一つの実施例では、コンフィギュレーションアプリケーション38は、図3に例示されるような表示画面をコンフィギュレーションエンジニアに提示する。図3より分かるように、コンフィギュレーション表示画面64は、ライブラリ区域またはテンプレート区域65とコンフィギュレーション区域66とを備えている。テンプレート区域65は、スマートプロセスオブジェクトテンプレート67のセットの画像を有しており、該セットは、図2のスマートプロセスオブジェクト42を含んでおり、また、上述の接続エレメント、測定エレメント、処理エレメント、および推定プロパティエレメントのうちのいずれかでありうる。所望の場合には、グラフィック定義を有しているのみの非スマートエレメント68もまた提供されうる。本質的には、テンプレート67、68は包括的オブジェクトであり、これらの包括的オブジェクトをドラッグしてコンフィギュレーション区域66にドロップすることにより、プロセスモジュールもしくはグラフィック表示画面(または両方)内にスマートプロセスオブジェクトのインスタンスを作成することが可能である。部分的に完成されたプロセスグラフィック表示画面35cは、流路接続部材により相互に接続された、一つのバルブと、二つのタンクと、二つのポンプと、一つの流量トランスミッタと、二つのセンサとを有しているものとして例示されているが、上述の流路接続部材は、スマートリンク、またはストリーム出力を提供する上述の接続部材エレメントであってもよい。なお、グラフィック表示画面35cは、スマートプロセスオブジェクトおよび非スマートオブジェクトの両方より構成されてもよい。
【0062】
グラフィック表示画面35c(またはプロセスモジュール)の如きグラフィック表示画面を作成する場合、コンフィギュレーションエンジニアは、テンプレート区域65内のスマートプロセスオブジェクト67およびエレメント68を選択し、コンフィギュレーション区域67にドラッグし、そこの任意の所望の位置にドロップしうる。一般的に、コンフィギュレーションエンジニアは、デバイスを示す一または複数のスマートデバイスプロセスオブジェクト67aまたは非スマートエレメント68を選択し、コンフィギュレーション区域66にドラッグする。次いで、コンフィギュレーションエンジニアは、コンフィギュレーション区域66内のスマートデバイスプロセスオブジェクトをスマート接続部材オブジェクト67bと相互接続し、その表示画面に入出力ストリーム67cを落とし込む。さらに、非スマートエレメントをその表示画面に追加してもよい。コンフィギュレーションエンジニアは、ポップアッププロパティメニューなどを利用してこの工程中にスマートプロセスオブジェクトの各々のプロパティ、とくに、これらのスマートプロセスオブジェクトに関連するメソッド、パラメータ、タグ、名称、ホットリンク、モード、クラス、入出力などを変更しうる。プロセスエンジニアまたはコンフィギュレーションエンジニアが、所望のエレメントをそれぞれ用いてプロセスモジュールを作成し、プロセスコンフィギュレーション、領域などを表した場合には、コンフィギュレーションエンジニアはそのモジュールに関連するルールまたは他の機能を定義しうる。そのようなルールは、物質収支(マスバランス)および流量計算の如きシステムレベルでのメソッドの実行に関連するルールの如き実行ルールであってもよい。また、プロセスエンジニアまたはプロセスオペレータは、プロセス表示画面がオンライン状態である場合に有益であるトレンドおよびフェースプレートも追加することを決定しうる。グラフィック表示画面35cを作成したあと、コンフィギュレーションエンジニアは、その表示画面をメモリ内に保存し、そのときにまたはそのあとで、実行エンジン48がグラフィック表示画面を提供しうる方法でその表示画面をインスタント化し、実行エンジン48にダウンロードすることが可能である。もちろん、コンフィギュレーションエンジニアは、同一または同様の方法でプロセスモジュールを作成することが可能である。ただし、プロセスグラフィック表示エレメントとは対照的な異なるグラフィックがプロセスモジュールには表示されうる。さらに、オペレータは、プラントの運転をしながら、詳細レベルを作動させることを選択しうる。たとえば、詳細レベルのうちの一つは各接続部において組成を表示することである。
【0063】
上述のように、プロセスグラフィックまたはプロセスモジュールには、特定のタグが設けられる。たとえば、グラフィカル表示画面またはプロセスモジュール内のスマートプロセスオブジェクトには、たとえば、装置もしくはプロセス制御システム内で選択されたルートの如き他の因子に基づいて、実行時間中に実行エンジン48により書き込まれることが可能なエイリアスを有するタグが提供されうる。プロセス制御システムにおけるエイリアス名の利用および間接的参照は米国特許番号第6,385,496号に詳細に記載されており、該特許は、本発明の譲受人に譲渡され、本明細書において引用することにより明確にここで援用される。本明細書で記載するスマートプロセスオブジェクトのためのタグにエイリアスを提供・解析するためにこれらの技術のうちのいずれかが利用されうる。エイリアスなどを利用すると、同一のプロセスフローモジュールは、複数の組の装置に対して異なるビューを有しうるか、または複数の組の装置に対して異なるビューをサポートするために利用されうる。
【0064】
図3の表示画面64は、プロセスモジュールまたはグラフィック表示画面のさまざまなビューのタグ(View1、View2,およびView3)を例示する。これらのタグを利用し、プロセスに関連するさまざまなユーザのさまざまなビューにアクセスし、それらの中の同一のスマートプロセスオブジェクトの一部を利用してさまざまなビューを作成することが可能である。
【0065】
一般的にいえば、コンフィグレーションエンジニアがプロセスフローモジュールまたはグラフィック表示画面を作成する場合、コンフィギュレーションアプリケーション38は、スマートプロセスオブジェクトとともに、それらの間の接続を自動的にデータベース内に格納する。次いで、このデータベースを利用して他のプロセスモジュールおよびグラフィック表示画面を作成することが可能になる。このグラフィック表示画面は、たとえば、同一のスマートプロセスオブジェクトのうちの一または複数を用いるさまざまなビューを提供しうる。したがって、第二のビューを作成するときには、コンフィグレーションエンジニアは、すでに作成されてデータベースに格納されているスマートプロセスオブジェクトとそれとともに格納されている任意のメソッドとを参照するのみで、そのスマートプロセスオブジェクトを第二のビューに配置することが可能である。このような方法で、プロセス制御モジュールおよびグラフィック表示画面が作成されるにつれて、データベースを増加することが可能であり、プロセスフローデータベース内にすでに存在するスマートプロセスオブジェクトを利用して他のビュー、モジュール、およびグラフィック表示画面を作成・実行するためにこのデータベースをいつでも使用することが可能である。このようなデータベースを利用して、そのデータベース内の各スマートプロセスオブジェクトは、プロセスモジュールをサポートし、またはそれらの中で利用され、複数のグラフィック表示画面内により参照されうる。また、いうまでもなく、これらのモジュールの表示画面を構築し、次いで、プロセスモジュール内で利用されているかまたはそれに関連付けされているフローアルゴリズムを指定することにより、プロセスモジュールを構築してもよい。もちろん、個々のプロセスモジュールは、さまざまなコンピュータに分散され、それらにより実行されてもよく、また、プロセスモジュールは、同一のコンピュータまたは異なるコンピュータ上で互いに協働して動作するために、互いに通信可能に接続されてもよい。これが完了すると、入力ストリームおよび出力ストリームは、プロセスモジュールを相互に接続するために外部から参照される。
【0066】
上述のように、プロセスモジュールまたはグラフィック表示画面の作成の一部として、コンフィギュレーションエンジニアは、プロセスモジュールのシミュレーションアルゴリズムを搭載または提供することが可能である。これらのシミュレーションアルゴリズムは、プロセスモジュールにより表示またはモデル化されるプロセスに関して、物質収支計算、流量計算、効率計算、経済性計算などの如き特定のプロセスプロパティまたはシステムレベルプロパティを計算または決定するために事前にコンフィギュレーションされうる。この結果、プロセスモジュール自体が、モード動作と、状態動作と、アラーム動作とを有し、ワークステーションに割り当てられ、表示画面ダウンロードの一部としてダウンロードされうる。所望の場合には、シミュレーションアルゴリズムは、プロセスモジュールのスマートプロセスオブジェクトに提供されているデータを利用して、物質収支もしくは熱収支、フロールーチング、フロー効率、フロー最適化、プロセスシミュレーションに関連する経済性計算、または他の所望のフロー関連の計算を実行するために、実行エンジン48により実行されてもよい。さらに、これらのシミュレーションアルゴリズムは、制御戦略からのパラメータ、すなわちコントローラ、フィールドデバイスなどに関連付けされ、それらによりダウンロードされる制御モジュールからのパラメータにアクセスすることが可能であり、またそれとは逆に、これらの制御モジュールへデータまたは情報を提供することが可能である。
【0067】
いうまでもなく、すべての表示画面でコンフィギュレーションされたすべてのプロセスオブジェクトとプロセスリンクとの合同体の全体に亘りプロセスアルゴリズムが実行されることを可能にするために、実行エンジン48が必要である。したがって、(プロセスモジュール内の)シミュレーションアルゴリズムは、なんらかの関連グラフィック表示画面がロード、すなわち呼び出され、情報をユーザに表示しているか否かにかかわらず、実行されることが一般的である。もちろん、シミュレーションアルゴリズムは、プロセス10の全体に亘りまたはプロセス10の定義されたサブセットの全体に亘り、相互に点検されうる。また、いうまでもなく、どのような特定のプロセスフローモジュールの実行中であっても、実行エンジン48は、そのプロセスモジュールに関連するグラフィック表示画面に基づいて、そのプロセスモジュール内で相互に接続されているオブジェクトまたはエンティティを表示する表示画面をオペレータインターフェイス上でオペレータへ提供しうる。その表示画面のパラメータ、グラフィックなどは、そのプロセスモジュール内のスマートエレメントのコンフィギュレーションおよび相互接続により決定される。さらに、この表示画面上または他の表示画面上に提供されるアラームおよび他の情報は、スマートプロセスオブジェクト内のメソッドと、特定のプロセスモジュールに関連するシミュレーションアルゴリズムとにより定義・生成される。所望の場合には、実行エンジン48は、一を超えるオペレータインターフェイスにプロセスモジュールの表示画面を提供してもよく、または実行エンジン48がプロセスフローモジュールを実行し続け、それにより、それに関連するメソッド、アラーム機能、フローアルゴリズムなどを実行しているにもかかわらず表示画面を提供しないようにコンフィギュレーションまたは設定されてもよい。
【0068】
所望の場合には、プロセスモジュールはグラフィック表示画面から自動的に生成されることが可能であり(その逆もまた同様)、そのプロセスモジュールが利用可能な機能はプロセスグラフィックエレメントにより決定される。明確にしておく必要があるのは、プロセスモジュールはプロセスグラフィック表示画面を追従するように構築されることが好ましいということである。その結果、ユーザがプロセスグラフィック表示画面をコンフィギュレーションする場合に、ユーザは、質量ストリームまたはエネルギストリームの如き、プロセスモジュールのための情報をさらに包含することが可能になる。これらのストリームは、シミュレーション機能ブロックにより必要とされる開始条件を確立するためにプロセスモジュール内で利用される。
【0069】
これに加えて、プロセスモジュールは、実質的には、コンピュータ内で実行されるソフトウェアモジュールであるので、コントローラモジュールに関連するパラメータ、制御戦略、表示画面などを利用するために、コントローラモジュールを参照することも、またコントローラモジュールにより参照されることも可能である。また、この能力を利用して、プロセスモジュールをプロセスグラフィック表示画面から独立させて作成することも可能である。
【0070】
一般的にいえば、プロセスモジュールは、処理エレメント、ストリーム、およびそれらに関連する接続部材から構成される。プロセスグラフィックエレメントと(プロセスモジュール内の)シミュレーションエレメントとの間は一対一に対応しているので、ユーザは、グラフィック表示画面を構築し、その表示画面から、対応するプロセスモジュールを自動的に作成することが可能である。もちろん、所望の場合には、ユーザは、プロセスモジュールを作成し、次いで、スマートプロセスオブジェクト内のグラフィックを利用してそのモジュールからグラフィック表示画面を自動的に作成してもよい。しかしながら、プロセスモジュールの自動生成を許容するために、ユーザは、測定エレメントおよび推定プロパティエレメントに関連するアクチュエータエレメントプロパティ、接続エレメントプロパティ、または処理エレメントプロパティを特定する必要がある場合がある。また、ユーザは、プロセスグラフィックを作成するまえに、または場合によっては、制御モジュールが構築されるまえに、プロセスシミュレーションを作成する必要がある場合もある。シミュレーションが構築されたあと、制御モジュール内のI/Oブロックの参照に書き込むことが可能である。また、関連グラフィック表示画面が作成されると、プロパティ参照を設定するために既存のプロセスモジュールにブラウジングすることが可能になる。
【0071】
場合によっては、プロセスグラフィックは、プロセスシミュレーションを構築するために必要な詳細をすべて有しているわけではない場合がある。したがって、プロセスグラフィックから自動的に作成されたシミュレーションモジュールまたはプロセスモジュールをユーザが編集することを可能にするエディタを設けることが望ましい。また、複数のプロセスグラフィックが同一の装置を表示する必要がある場合があるので、プロセスグラフィックの構築の際に、既存のプロセスモジュールをエレメントが参照することが可能であることが必要である。
【0072】
一般的にいえば、処理エレメントに対応するシミュレーションは共通の構造を有する。所望の場合には、そのシミュレーションのブロック入力接続部およびパラメータは、制御モジュールへの参照が必要なくなるように、プロセスモジュール内に格納される。さらに、シミュレーションによりサポートされる入出力接続の数は拡張可能であるとして定義されてもよく、シミュレーションの実行からの結果はシミュレーション出力接続にまたはシミュレーションのパラメータとして反映されてもよく、シミュレーションアルゴリズムはステップ応答として定義されてもユーザにより入力されてもよい。シミュレーションアルゴリズムがユーザにより入力される場合は、ユーザは各出力のダイナミックスを独立して指定しうる。
【0073】
さらに、共通のパラメータセットが入出力の接続においてサポートされうる。入出力接続に関連するパラメータは、アレイパラメータまたはアレイ構造としてブロック間で通信され、接続ステータス(たとえば、良好、不良、制限されているなど)、質量流量パラメータ、圧力パラメータ、温度パラメータ、比熱パラメータ、密度パラメータ、またはその他の所望のパラメータの如きパラメータを有しうる。場合によっては、ストリームの組成の如き他のパラメータをシミュレーションアルゴリズム内に提供・利用される場合がある。この要件をサポートするために、標準ストリームエレメントおよび拡張ストリームエレメントが提供される場合がある。この拡張ストリームエレメントコンフィギュレーションの一部として、ユーザは、そのストリームエレメントを定義するために、一組の事前定義データグループを選択しうる。そのような拡張された接続は、この情報を利用するブロックに接続するためのみに許容される。一般的に、拡張パラメータは、グループ名称と特定エレメント数とを有しうる。たとえば、ボイラ処理エレメントへの燃料入力ストリームは、燃料セットと、その燃料内の炭素量、水素量、硫黄量、酸素量、水分量、および窒素量(所望ならばすべて重量%)とを含む、その燃料の構成要素を有しうる。他の例としては、ターボ発電機処理エレメントは蒸気ストリームを利用し、それに関連するシミュレーションへの接続は、蒸気セット、ステージに入る(実際の)蒸気エンタルピ、ステージから出る(実際の)蒸気エンタルピ、(等エントロピ膨張の場合の)蒸気エンタルピなどを有する拡張パラメータセットを利用しうる。
【0074】
また、拡張グループセットは、プロセスモジュール内のシミュレーションエレメントが高忠実性シミュレーションパッケージへのインターフェイスとして用いられる場合にも利用されうる。この場合、プロセスグラフィック内において一部のストリームの組成を目視可能にすることが可能である。また、所望の場合には、グラフィック表示画面上、その関連フェースプレート上、およびグラフィック表示画面に提示される制御モジュールの詳細画面上の数値を作成または修正することを容易にするために、対話型のエディタが提供されてもよい。
【0075】
図4は、上述のエレメントおよびコンフィギュレーションアプリケーションを利用して作成されうる例示のグラフィック表示画面100を示している。具体的には、グラフィック表示画面100は、水と酸と塩とから白酢を生産するプロセスプラントの一部を示している。図4に例示されるように、プロセスグラフィック表示画面は、その入力部において四つのストリームエレメントを有し、塩供給部、酸供給部、水供給部、および冷却水のストリームを規定している。塩供給部ストリーム102は、配管接続エレメント104を通過して、バルブ106の形態を有するアクチュエータエレメントに送給されている。バルブ106の出力部は配管接続エレメント104を介して、混合器108の第一の入力部に接続されている。同様に、酸供給部102は、トランスミッタエレメント110、次いでさらなるバルブ112に接続されており、該バルブ112は、混合器108に接続されている。酸供給部102とトランスミッタエレメント110との間、トランスミッタエレメント110とバルブ112との間、およびバルブ112と混合器108との間は、配管接続エレメント114を介してそれぞれ接続されている。
【0076】
容易に理解できるように、混合器108の出力部は、配管と二つのトランスミッタ124、126を介して熱交換器122に接続されている。冷却水ストリーム102は、バルブ128を通って熱交換器122に送給され、バルブ130を通って熱交換器から流出し、還流水ストリームエレメント131を生ずる。同様に、熱交換器122の出力は、トランスミッタエレメント132とバルブ134とを通過して搬送され、出力酢酸ストリームエレメント136を提供する。具体的には常時ではないが、このグラフィック表示画面のエレメントは、すべての場合において、配管接続エレメントを介して相互に接続されている。
【0077】
表示ボックス140がグラフィック表示画面100内に例示され、さまざまなエレメントに関連するプロセス変数(PV)、設定値(SP)、OUT値の如きパラメータ値を表示している。いうまでもなく、表示ボックス140は、表示エレメントそれ自体のプロパティとして生成されてもよく、またはトランスミッタエレメントおよび推定プロパティエレメント、もしくは制御モジュール内のブロックを参照するエレメントの形態を有する別のエレメントであってもよい。さらに、ユーザが上述のエレメントのいずれかの上にカーサ(CURSOR)を置くと、表示画面100は、その参照されたエレメントに関連する他の数値を表示しうる。たとえば、ストリームエレメントのうちの一つのエレメント(たとえば、酢酸ストリーム出力部136)の上にカーサを置くと、そのグラフィックは、そのプロセスの現時点におけるその酢酸ストリームの組成、圧力、温度、密度、流量などを表示する。もちろん、グラフィック表示画面100上に表示された数値およびパラメータ値は、プロセス制御システム内の実際に参照されたトランスミッタ(たとえば、その制御システムのAIブロック)から、またはそのエレメントの機能をシミュレーションするプロセスモジュールシミュレーションエレメントから搬送されうる。図4のグラフィック表示画面100は、白酢を生産するプロセスの動作中にユーザに提供されてもよく、またはたとえば設計活動もしくはオペレータトレーニング活動を行うために利用可能なそのプロセスのシミュレーションを実現すべく提供されてもよい。
【0078】
図5は、プロセスプラントをより多く説明(またはシミュレーション)するさらにハイレベルな表示画面を形成するために、さまざまなグラフィカル表示画面(そして同様に、さまざまなプロセスモジュール)が相互に接続されうる方法を例示している。図5の表示画面150において、プロセスグラフィック100は、名称またはラベルと、接続ポイントとして示される一組の入出力部とを有するボックスへと簡略化されている。所望の場合には、ユーザは、上述のグラフィックを選択し、そして、たとえばダブルクリックすることにより、図5のプロセスグラフィック100を拡大して図4に示されているプロセスグラフィックにしてもよい。さらに、他の簡略化されたグラフィック表示画面152、154は、塩供給部、酸供給部、および水供給部に接続され、さらに入力ストリームエレメント156、158を介して冷却水に接続されているものとして示されている。プロセスグラフィック表示画面100のストリーム出力部136は、白酢の保持タンク162のストリーム入力部160へ接続される。同様に、プロセスグラフィック表示画面152のストリーム出力部はモルツ酢の保持タンク163のストリーム入力部に接続され、プロセスグラフィック表示画面154のストリーム出力部はピッケリング酢の保持タンク164のストリーム入力部に接続されている。いうまでもなく、プロセスグラフィック152は、モルツ酢を製造するプロセスプラントの一部のグラフィックを提供するようにコンフィギュレーションされてもよく、プロセスグラフィック154は、ピッケリング酢を製造するプロセスプラントの一部のグラフィックを提供するようにコンフィギュレーションされてもよく、このプロセスプラントのこれらの区域に関するデータビューおよびグラフィックビューはこれらの表示画面を拡大することにより閲覧されてもよい。
【0079】
しかしながら、図5は、プロセスプラントのさまざまなグラフィカル区域がストリームエレメント間の接続により相互に接続されうることを示している。具体的には、接続エレメントに関連する初期プロパティを定義するために、ストリームエレメントを表示画面内に含みうる。また、ストリームエレメントは、表示画面間の接続ポイントとしても利用されうる。表示画面間のそのようなオフシート接続の場合には、ユーザは、ストリームをクリックし、参照される接続を包含する関連表示画面を即座に呼び出しうる。したがって、一般的にいえば、ストリームエレメントの質量/組成はプロセス入力の初期プロパティ、すなわち初期供給原料組成などを定義するため、または他の表示画面上のストリーム接続へのリンクを定義をするために利用されるのが正常である。質量/組成ストリームエレメントの入力部または出力部に接続が形成されてもよい。ストリームエレメントの場合、ユーザは、ストリームの名称(システム内において一意である必要がある)と、ストリームのプロパティ(参照入力または入力接続が存在しない場合)と、ストリームのさまざまな構成成分の質量分率(ストリームが一を超える構成成分から構成されている場合)と、圧力または質量流量と、温度と、比熱と、密度と、必要な接続タイプ(パイプ、ダクト、コンベヤ)と、参照入力ストリーム(他の表示画面上のストリームにアクセスするために利用される場合)とをコンフィギュレーションすることが一般的である。同様に、エネルギストリームエレメントは、プロセス入力に関連する初期エネルギ、たとえばBTU/HRトランスファなどを定義するために、または他の表示画面上のストリーム接続のエネルギプロパティへのリンクを定義するために利用されうる。
【0080】
図5は、さまざまな縮小されたグラフィック表示画面を相互に接続するためのストリームの利用を例示しているが、さまざまなプロセスモジュールを相互に接続するために(およびその相互接続を表示するために)、同一の手続きを利用してもよい。具体的には、プロセスモジュールを縮小し、名称と、ストリームエレメント入力およびストリームエレメント出力とを表示することが可能であり、これらの縮小されたプロセスモジュールは、さまざまなプロセスモジュールのストリーム出力部とストリーム入力部との間の通信接続または通信リンクの表示を利用して他のプロセスモジュールへ通信可能に結合または接続されることが可能である。
【0081】
図6は、図4のグラフィック表示画面100に対応するプロセスモジュール100aを例示する。理解されるように、プロセスモジュール100aは、図4のグラフィック表示画面内に示された物理エレメントの各々に対するスマートオブジェクトシミュレーションを表現するブロックを有している。理解を容易にするために、図4内のエレメントに対応する図6内の各シミュレーションブロックには、同一の符号に「a」を追加した符号が与えられている。したがって、図6の混合器シミュレーションブロック108aは、図4に示される混合器108に対応するシミュレーションである。同様に、バルブシミュレーションブロック106aは、図4に示されているバルブ106に対応しかつそれに通信可能に結合され、バルブシミュレーションブロック112aは、バルブ112に対応しかつそれに通信可能に結合され、バルブシミュレーションブロック118aは、バルブ118に対応しかつそれに通信可能に結合されている。
【0082】
したがって、図6のプロセスモジュール100aは、グラフィック表示画面100に表示されている各エレメントに対するプロセスシミュレーションエレメント(スマートプロセスオブジェクトに関連する機能ブロックまたはそれにより指定される機能ブロックとして表現されうるプロセスシミュレーションエレメント)を有しており、これらのシミュレーションブロックは、グラフィック表示画面100内で指定される方法で、かつグラフィック表示画面100内で指定される接続エレメントを用いて相互に接続される。所望の場合には、プロセスモジュール100aは、グラフィック表示画面100を作成したあとに、またはグラフィック表示画面100の作成中でさえ、自動的に作成されてもよい。
【0083】
上述のように、プロセスモジュール100内のプロセスシミュレーションエレメントの各々は、プロセス内で用いる機械デバイスの動作と、これらのシミュレーッションエレメントの入力部で提供される材料のストリームの特性とに基づくシミュレーション機能(たとえば、アルゴリズム、ルール、伝達関数など)を有する。これらのシミュレーションは、処理エレメント、アクチュエータエレメント、およびトランスミッタエレメントの各々の内のSIMブロックにより図6に例示されている。これらにより、デバイスのダイナミックスおよびストリームへの影響は、プロセスモジュール100a内でモデル化されまたはシミュレーションされうる。アクチュエータエレメントおよび処理エレメントに関連するシミュレーションブロックのために利用可能なプロパティとしては、(入口温度、入口流量、入口熱容量に基づく)出口温度、(入口質量流量、エレメント内の蓄積に基づく)出口流量、(ユニット前後における仮定圧力降下または下流側圧力に基づく)出口圧力、および(完全混合および入口組成に基づく)出口組成が挙げられる。カスタム計算が実行される場合には、プロセス入力の変化に対して、たとえば一次プラスむだ時間応答に基づいて、出口プロパティに関連する組み込み式ダイナミックスが追加されうる。ユーザは、所望の場合には、計算されたプロパティの各々に関連するむだ時間および遅れを指定しうる。プロセス測定エレメント、たとえばトランスミッタおよびスイッチと、接続エレメントとの場合には、参照プロパティにはダイナミックスが導入されないと仮定してもよい。しかしながら、所望の場合には、遷移および他のプロパティがモデル化されてもよい。しかしながら、ほとんどの場合には、上流側接続からのプロパティが下流側接続に瞬時に反映されうる。
【0084】
プロセスモジュール100aを利用して、プロセスグラフィック100内に示されているプラントの一部の動作がシミュレーションされることが可能である。このシミュレーションは、プロセスモジュール100a内のシミュレーションエレメントからの数値がグラフィック表示画面100のグラフィックに瞬時に通信され、その中に表示され、制御モジュール内で利用される。同様に、トレーニングインストラクタは、その表示画面を利用し、プロセスモジュール100aにより実行されるシミュレーションのプロパティに影響または変更を与えうる。
【0085】
所望の場合には、測定エレメントおよびアクチュエータエレメントのI/O参照を定義し、シミュレーションにおいてI/Oを実行するためにたとえばHYSYSにおいて現在利用されているDCSインターフェイステーブルを自動的に作成することにより、HYSYS、CAPEなどにより提供される高忠実度シミュレーションの如き高忠実度シミュレーションをシミュレーション機能に追加してもよい。高忠実度プロセスシミュレーションを構築するために利用されうる各HYSYS(または他の高忠実度シミュレーション)構成要素に対して標準処理エレメントテンプレートを定義しうる。そのような高忠実度シミュレーション165が、プロセスモジュール100aに通信可能に接続されているものとして図6に例示されている。この場合、ユーザは、プロセスモジュール100a内のシミュレーションエレメントの各々の内に提供されるシミュレーションを動作不能にすることを選択し、この代わりに、高忠実度シミュレーション165により提供されるシミュレーションパラメータを使用しうる。ユーザは、(プロセスモジュール100a内で設定される電子スイッチ、フラッグなどでありうる)スイッチ166を作動させることにより高忠実度シミュレーションの使用を指定しうる。
【0086】
一般的にいえば、高忠実度シミュレーション165を使用するためにスイッチ166が設定されると、プロセスモジュール100a内の関連するシミュレーション機能ブロックは、シャドーブロックとして動作する。すなわち、それらのシミュレーションアルゴリズム(SIMブロック)は実行されず、代りに、そのブロックパラメータが高忠実度シミュレーション165により読み込まれ、書き込まれる。しかしながら、プロセスモジュール100a内のそのブロックは、依然として、同一のパラメータおよび他の情報をプロセスグラフィックおよび制御モジュールに通信し、プロセスグラフィック100からの情報(最終的には高忠実度シミュレーション165において利用)および制御モジュール29からの情報を受信する。
【0087】
いうまでもなく、この方法でプロセスモジュールを使用することにより、オペレータ、エンジニアなどにより閲覧・利用されうる方法で(すなわち、プロセスモジュール100aに関連するプロセスグラフィック表示画面100を利用して)、プロセスプラント内で高忠実度シミュレーションパッケージを接続する容易かつ便利な方法が実現する。具体的には、プロセスモジュールのストリームパラメータは、高忠実度シミュレーション内でモデル化される流量に接続または関連付けされ、プロセスモジュール内におけるルートは、高忠実度シミュレーション内で自動的に構築されるか、またはその中のルートと自動的に関連付けされうる。要するに、この場合、プロセスモジュールは、高忠実度シミュレーションパッケージ内のデータをプロセスプラント制御・シミュレーション環境において利用される制御モジュールおよびグラフィック表示画面へマッピングする便利な方法を実現する変数またはデータ用のプレースホルダとして利用されている。
【0088】
さらに、プロセスモジュールおよびそれに関連するグラフィック表示画面は、高忠実度シミュレーション用に別の表示画面を用意する必要性を削減または排除する。該高忠実度シミュレーション用表示画面は、現在、高忠実度シミュレーションプロバイダによりユーザにとっては高いコストで生産されていることが一般的である。これに代えて、プロセスモジュールはすでにグラフィック表示画面に結合されているので、そのプロセスモジュールが高忠実度シミュレーションパッケージに接続される場合には、グラフィック表示画面は、高忠実度シミュレーションパッケージにより計算される情報をユーザに提供するために、またユーザまたはオペレータが高忠実度シミュレーションパッケージへの入力を操作することを可能にするために利用されうる。さらに、プロセスモジュールが制御モジュールに通信可能に接続されているので、高忠実度シミュレーションパッケージにより生成されるパラメータまたはデータは、オンライン制御活動を実行するために制御モジュール内で利用されうる。この方法でプロセスモジュールを利用することにより、高忠実度シミュレーションパッケージは、制御モジュールに統合されていることに加えて、制御モジュールと平行して実行されることが可能になる。
【0089】
上述の説明から明らかなように、プロセスモジュールおよびグラフィック表示画面は、グラフィック表示画面により示されるプロセスプラントの動作をシミュレートするプロセスモジュールとともにプロセスプラント10の一区域のオペレータビューを提供するために、統合された方法で作成実行されうる。有利なことには、プロセスモジュールおよびグラフィック表示画面は、プロセスプラントの上述の区域または一部に対して制御活動を実行する一または複数の制御モジュールとさらに統合(たとえば、通信可能に接続)されうる。したがって、図1に例示される制御モジュール29は、図1に例示されているプロセスモジュール39およびグラフィック表示画面35のうちの一または複数と通信可能に統合されうる。もちろん、制御モジュール29、プロセスモジュール39、およびグラフィック表示画面35は、どのような特定の場合であっても、所望ならばまたは必要に応じて、図1に例示されているコンピュータまたはデバイス以外の、プラント10内のその他のコンピュータまたはデバイス内において実現されてもよい。
【0090】
図7Aおよび図7Bは、制御モジュール29、プロセスモジュール39、およびグラフィック表示画面35の統合をさらに詳細に例示している。具体的には、グラフィック表示画面35は、リサイクルタンク182の入力部に接続されたバルブ180と、リサイクルタンク182の出力部に、バルブ186とともに直列に接続されたポンプ184とを有している。エレメント180〜186は、配管接続エレメント(ラベリングせず)により一緒に接続されており、ストリームエレメントは、グラフィック表示画面35の入力部および出力部において提供され、それらの地点での材料のストリームを定義する。
【0091】
グラフィック表示画面35のコンフィギュレーションの結果として、グラフィック表示画面35と同時に作成されうるプロセスモジュール39は、グラフィック表示画面35に示された物理エレメントに対応するバルブエレメント180a、タンクエレメント182a、ポンプエレメント184a、およびバルブエレメント186aの形態を有するプロセスシミュレーションエレメントを有する。グラフィック表示画面35に関連する(示される)物理エレメントの少なくとも一部を制御する制御モジュール29は、グラフィック表示画面35およびプロセスモジュール39により示されるエレメント内の制御またはそれに関連する制御を提供する一組の相互に接続された機能ブロックを有する。この例では、制御モジュール39は、二つの制御ループ190、192を有している。最初の制御ループ190は、タンク182への流体の流れについての入力流量情報を受信するアナログ入力(AI)機能ブロックと、比例積分微分(PID)制御を実行する比例積分微分(PID)制御機能ブロックと、所望の流量の材料をタンク182へ流入させるバルブ180を作動させるアナログ出力(AO)機能ブロックとを有している。同様に、制御ループ192は、タンク182内のレベルセンサにより測定されるとおりにタンクの液面レベルの情報を提供するAI機能ブロックと、PID制御ブロックと、タンク182内の流体の液面レベルを制御するバルブ186を動作させるためにPID制御ブロックから制御信号を受信するAO機能ブロックとを有する。また、制御モジュール29は、たとえばポンプ184のオン/オフ状態または動作を表し、また所望ならばタンク182に対して制御活動を実行するために制御ループ190、192により利用される離散入力(DI)機能ブロックも有している。
【0092】
いうまでもなく、グラフィック表示画面35、プロセスモジュール39、および制御モジュール29のうちのいずれかの中のエレメントのうちのいずれかは、これらのエレメントのうちの他のエレメントと(付随する通信タグを介して)通信し、これらの異なるエンティティ間で情報を相互に提供し合い、これにより、さらに優れたまたはさらに向上した制御、シミュレーション、およびオペレータ表示画面を実現することが可能になる。その詳細をさらに説明する。たとえば、図7Bに例示されているように、ループ190のPID制御ブロックは、PID制御エレメントにより用いられている現行の流量設定値を表示するためにグラフィック表示画面35に情報を提供するようにコンフィギュレーションされても、またグラフィック表示画面35から制御モジュール29内で用いられる設定値をよみだしてもよい。このことは、これらのエレメント間の矢印付きラインにより示される。同様に、プロセスモジュール39のタンクエレメント182aは、該エレメント182a内のシミュレーションアルゴリズムにより決定されたとおりに、そのタンクのシミュレーションされた液面レベルを示すシミュレーション出力を、プロセス制御モジュール29の制御ループ192のAI機能ブロックに提供してもよい。また、このシミュレーションされたタンク液面レベルは、オペレータによる閲覧のためのさらなる情報として、グラフィック表示画面29上に表示されてもよい。
【0093】
所望の場合には、制御ループ192のAOブロックは、グラフィック表示画面35のバルブ186へ情報を提供し、またそれから情報を受信してもよい。さらに、制御ループ192のAOブロックは、その制御出力をプロセスモジュール39のバルブエレメント186aに提供するようにコンフィギュレーションされることが可能である。この場合、バルブエレメント186aは、バルブ位置の予測値を、制御ループ192内で測定されている実際のバルブ位置と比較し、その物理エレメントになんらかの機能不良があるか否かを判別しうる。一定量以上の差がある場合には、プロセスモジュール39は、不良センサなどの如き、プロセスプラント内で発生しうる問題を示すアラームまたはアラートをグラフィック表示画面35上に生成するソフトウェアを有しうる。また、図7Bにも例示されているように、バルブエレメント186aは、オペレータへ表示されるかまたはオペレータによる利用を可能にするために、シミュレーション測定値またはシミュレーションパラメータ値を提供しうる。そのようなシミュレーション測定値またはシミュレーションパラメータ値は、バルブ186からのシミュレーション流量もしくは予測流量またはバルブ186に関連するその他のシミュレーションパラメータ値を表しうる。もちろん、実測値、シミュレーションデータまたはグラフィック表示画面データを含むその他の所望の情報またはデータを、さらに優れたまたはさらに機能強化された制御、シミュレーション、または表示画面を実現するために、グラフィック表示画面35、プロセスモジュール39、および制御モジュール29内のエレメントに提供されてもよい。
【0094】
一般的にいえば、プロセスモジュールを制御モジュールと、そして所望ならば、さらにグラフィック表示画面と統合することにより複数の利点が生じる。一つの場合には、上述のように、プロセスモジュールにより実行されるシミュレーションは、システム内で発生しうる問題を検出するために、シミュレーションまたは予測した測定値、パラメータ値、または他のプロセス値を、制御モジュールにより提供されたパラメータ測定値またはパラメータ計算値と比較する。たとえば、プロセスモジュール39により計算されたバルブからの流出量とプロセスそれ自体内で測定されたバルブからの流出量との間の差が大きければ、なんらかのデバイス問題が存在することを示すアラームが発生されることになりうる。この逆に、制御モジュール29は、不良センサまたは動作不能状態の他のエレメントもしくは該制御モジュールによる使用が不可能である他のエレメントを認識した状況下において機能強化制御を実現するためにシミュレーションパラメータ値を利用しうる。この場合、制御モジュール29は、オペレータが関与する必要もプロセスを停止する必要もなく、(不良であると考えられうる、不良ステータスを有しうる等の)測定値または測定パラメータ値を、プロセスモジュールにより提供されるシミュレーション出力値と自動的に交換することが可能である。また、シミュレーション制御データと実際の制御データとの両方を同一の表示画面上に表示することは、オペレータまたはユーザによるプラント内の問題の検出を容易にし、シミュレーションモードにおいて便利であり、さらに優れたデザイン活動を実行する上でも有益である。
【0095】
図8は、制御モジュール200がプロセスモジュール202(およびプロセスモジュール202に関連する任意のグラフィック表示画面)と通信可能に統合されうる方法のさらに詳細なダイアグラムである。図8の制御モジュール200は、三つのAI機能ブロック204、205、206を有しており、該機能ブロックは、制御機能ブロック207に接続される出力部を有している。制御機能ブロックは、たとえば、モデル予測制御(MPC)機能ブロックの如き多重入力/多重出力制御ブロックであってもよい。制御ブロック207からの三つの制御出力は、三つのAO機能ブロック208、209、210の制御入力部に搬送される。該AO機能ブロックは、たとえば、さまざまな流体を混合器に提供して混合するプロセス内のバルブを制御しうる。
【0096】
プロセスモジュール202は、制御モジュール200により制御される混合器とバルブとを有するプロセスの一部に関連付けされる。具体的には、プロセスモジュール202は、バルブ(アクチュエータエレメント)211、212、213を有しており、該バルブは、混合器エレメント214への三つのストリーム(プロセスモジュール202の左側で矢印により示されるストリーム)の流れをシミュレーションする。バルブエレメント215は、プロセスモジュール202の右側の出力ストリームを定義するために、混合器エレメント214からの流体の流れをシミュレーションし、トランスミッタエレメント217は、混合器エレメント214から流出する流体の測定組成を表しうる(またはシミュレーションしうる)。なお、明確にするために、接続エレメントはプロセスモジュール202において単線として示されている。
【0097】
この場合、AO機能ブロック208〜210は、(プロセスモジュール202内の)バルブ211〜213により示されるプロセスプラント内のバルブの動作を制御すること可能であり、一方、AI機能ブロック204〜206への制御入力は、(プロセスモジュール202内の)トランスミッタ217により示される組成センサ、流量センサ、または他のセンサにより提供されることが可能である。
【0098】
理解されるように、プロセスモジュール202および制御モジュール200の内の論理エレメントは、所望の方法または有益な方法でプロセスモジュール202からの情報を制御モジュール200へ提供し、制御モジュール200からの情報をプロセスモジュール202に提供するために、通信可能に相互に接続されてもよい。一つの例では、(点線218により例示される)通信接続は、プロセスモジュール202のトランスミッタエレメント217の出力(混合器214内の材料組成のシミュレーション測定値を表す出力)とプロセス制御モジュール200内のAIブロック216のシミュレーション入力SIM_INとの間に構築されることが可能である。この方法で、混合器214内の流体の液面レベルのシミュレーション測定値は、AIブロック206へ提供され、AIブロック206は、たとえばそのブロックの制御入力(IN)部における信号が不良ステータスを有しているかまたはなんらかの理由により不良であることが分かっている場合に、このシミュレーション入力を利用することが可能である。この方法で、AIブロック206は、実際の物理的な測定が有効でないかまたは入手可能でない場合であっても、そのAIブロック206に関連する測定の近似値を提供することが可能であり、これにより、制御モジュール200は、不良センサの存在下においてさえ、機能し続け、制御を提供し続けることが可能になる。また、そのような接続により、制御モジュールは、(シミュレーションプロセスモジュール202により提供される)有効なシミュレーションデータが、オフラインオペレータトレーニング中に利用されるか、または制御モジュール200を検査するために利用されるシミュレーションモードで動作することが可能になる。
【0099】
これに代えてまたはこれに加えて、(点線219により例示されている)通信接続は、プロセス制御モジュール200内のAOブロック208の出力部とプロセスプラント内のAOブロック208により制御されている実際のバルブをモデル化するバルブエレメント211の入力部との間に構築されうる。ここでは、バルブエレメント211は、シミュレーションデータ(すなわち、バルブエレメント211のSIMブロックにより計算された測定値およびパラメータ値)は正しいかまたは実際の制御ルーチン200内で用いられるデータと一致しているか否かを判断するために、実際のバルブから得られたデータまたは実際のバルブに送信されたデータを利用しうる。著しい差がある場合には、プロセスモジュール202は、発生しうる問題を示したアラームまたはアラートを生成することが可能であり、または実際のデータを使用してさらに優れたまたはより正確なシミュレーションをプロセスモジュール202内に実現することが可能である。たとえば、バルブエレメント211は、シミュレーションにおいて実際のバルブ位置を反映するために、SIMブロック内においてバルブエレメント211の位置に関して実際の制御データを使用しうる。もちろん、機能の強化された制御および/またはシミュレーションを実現するために、プロセスモジュール202および制御モジュール200の内の他のエレメント間で形成される接続では、これらの二つのモジュール間においてデータの流れる方向がいずれの方向であってもよい。さらに、プロセスモジュール202または制御モジュール200からのデータのうちのいずれのデータであっても、自動的に、プロセスモジュール202に関連するグラフィック表示画面を介してオペレータが利用できるようにしてもよい。
【0100】
所望の場合には、プロセスモジュールは、プロセス制御ネットワークまたはプロセスプラント内に冗長機能を提供・シミュレーションしてもよい。具体的には、プロセスモジュールは、プロセスプラント内で配置された冗長デバイス、冗長制御ブロックなどの如き実際の冗長エレメントの動作をシミュレーションすることが可能であり、実際の冗長エレメントの動作を検出またはシミュレーションすることが可能である(たとえば、バックアップ冗長エレメントが交替する場合などが含まれる)。さらに、所望の場合には、シミュレーション能力を有するプロセスモジュールは、一つのプロセスプラントにおいて一対の冗長エレメントのうちの一つとして利用されてもよい。この場合には、そのプロセスモジュール(または、そのモジュールの任意の部分)は、主要(および、実際の物理)デバイスの故障の場合またはそれに関連する問題が検出された場合には、バックアップまたは冗長データ(信号、計算値など)を提供するバックアップデバイスとして動作することが可能である。この場合、冗長エレメントとして動作するプロセスモジュールは、冗長能力を提供するために、任意の公知の方法で、(制御動作または感知動作を実行する)制御モジュールと通信可能に相互に接続されることが可能である。プロセスプラント内で冗長エレメントとしてプロセスモジュールをこのように利用することは、それらのプロセスモジュールが上述の方法で一または複数の高忠実度シミュレーションパッケージに接続されている場合にとくに有益である。
【0101】
いうまでもなく、本明細書において記載されているスマートプロセスオブジェクト、グラフィック表示エレメント、およびプロセスモジュールは、オペレータワークステーション20において動作することが可能であり、プラント10内のコントローラ、フィールドデバイスなどにダウンロードされる必要も、それらの内でコンフィギュレーションされる必要もなく、よって、この機能の実現、閲覧、変更などが容易になる。さらに、この機能により、プロセスデバイス、コントローラなどの内でシステムレベルの決定を下すよりもさらに容易にシステムレベルの決定を下すことが可能になる。この理由は、デバイスに関するシステムレベルの情報が、一般的には、すべてオペレータワークステーション20において利用可能であることが普通であり、詳細には、すべて実行エンジン48において利用可能であることが普通であるのに対して、これらの情報のすべてが、プロセスプラント内のそれぞれのコントローラおよびフィールドデバイスにより利用されることが可能な状態にはなっていないことが普通であるからである。しかしながら、そのようにすることが有益である場合には、基本命令の如き、プロセスモジュールに関連する論理の一部をプロセスプラント内のデバイス、装置、およびコントローラに組み込んでもよい。プロセス制御モジュールとグラフィック表示画面とを統合したものを作成するためにスマートプロセスモジュールを利用すると、実行エンジン48は、ユーザによる最小限のコンフィギュレーション活動により自動的に漏洩を検出してアラームを発生し、プラント10内の流量収支および物質収支を計算・追跡し、プラント10内の損失を追跡し、プラント10のための高度診断を提供し、エンジニアリングデザイン中およびオペレータトレーニング中にプラントの動作をシミュレーションすることが可能になる。
【0102】
図9は、実行エンジン48と、それによりプロセスプラント内で用いられるプロセスモジュールおよびグラフィック表示画面とを統合する一つの可能な方法を表している。プロセスプラントは分散型制御戦略を有している。図9に例示されているように、実行エンジン48による実行中、オペレータに表示画面を提供するプロセスモジュールにより作成されるかまたはそれに関連付けされる表示画面クラス定義220は、制御コンフィギュレーションデータベースおよびエンジニアリングツール222に提供され、該ツールは、制御戦略ドキュメンテーション内において、任意の所望の方法で、これらの表示画面クラス定義を利用・編成することが可能である。プロセスアルゴリズム224は、実行時間に先行してこれらの表示画面クラス定義へ接続されることが可能であり、次いで、この表示画面クラス定義およびそれに接続されたフローアルゴリズムはインスタント化され、グラフィック表示画面/プロセスモジュール実行時間環境226へ提供されうる(この環境は、一または複数のワークステーション内において一または複数の実行エンジン48の形態で実現されうる)。グラフィック表示画面/プロセスモジュール実行時間環境126は、実行中にコードを解析するために(すなわち、ジャストインタイム状態でオブジェクトコード変換を実行するために)ダウンロードスクリプトパーサ228を利用し、表示画面クラスのために提供されるかまたは表示画面クラスに結合されるフローアルゴリズムまたは他のルールベース手順を実行するためにルールベース実行エンジン230を利用する。この工程中、グラフィック表示画面/プロセスモジュール実行時間環境226は、制御モジュール実行時間環境232と通信しうる。該制御モジュール実行時間環境232は、プロセスに関連するコントローラおよびフィールドデバイス内で実行され、データおよび情報を制御モジュール実行時間環境232へ提供するか、または制御モジュール実行時間環境232からのデータまたは他の情報にアクセスしうる。もちろん、グラフィック表示画面/プロセスモジュール実行時間環境226は、図1のイーサネット(登録商標)バス24の如き任意の所望のまたは事前にコンフィギュレーションされた通信ネットワークを利用して、制御モジュール実行時間環境232と通信してもよい。さらに、本明細書において記載されているグラフィック表示画面と、プロセスモジュールと、制御モジュールとを統合して標準プロセス制御システムまたは標準プロセスプラントにならしめる他の方法もまた同様に利用してよい。
【0103】
実現される場合には、本明細書において記載されるソフトウェアはいずれも、磁気ディスク、レーザディスク、または他の格納媒体の如き任意のコンピュータ読み取り可能メモリに、コンピュータまたはプロセッサのRAMまたはROMなどに格納されうる。同様に、このソフトウェアは、任意の公知または所望の搬送方法を利用して、ユーザ、プロセスプラント、またはオペレータワークステーションに搬送されうる。上述の任意の公知または所望の搬送方法には、たとえば、コンピュータ読み取り可能ディスクもしくは他の移送可能コンピュータ格納機構による方法、または電話回線、インターネット、ワールドワイドウェブ、その他のローカルエリアネットワークもしくはワイドエリアネットワークなどの如き通信チャネルを利用する方法が含まれる。上述の電話回線、インターネット、ワールドワイドウェブ、その他のローカルエリアネットワークもしくはワイドエリアネットワークなどの如き通信チャネルを利用する方法での搬送は、移送可能格納媒体を介してかかるソフトウェアを提供することと同一または相互変換可能であると考えられる。さらに、このソフトウェアは、変調もしくは暗号化せずに直接提供されてもよく、または通信チャンネルを利用して伝送される前に任意の適切な変調用搬送波および/もしくは暗号化技術を利用して変調および/もしくは暗号化されてもよい。
【0104】
本発明は特定の例を参照して記載されたが、それらは、例示のみを意図したものであり、本発明を制限することを意図したものではない。したがって、本発明の精神および範疇から逸脱することなく開示された実施例に変更、追加、または削除を加えうることは当業者にとり明らかである。
【符号の説明】
【0105】
10 プロセスプラント
12 コントローラ
14、16 フィールドデバイス
20、22 ワークステーション
28 コンフィギュレーションデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスプラントのオペレーションをモデル化するためにコンピュータ処理デバイスにより使用されるモデル化システムであって、
コンピュータ読取可能メモリと、
前記コンピュータ読取可能メモリに格納され、かつ、中央演算処理装置で実行されたときに、プロセスプラント内の異なる物理的エンティティをモデル化するように構成された複数のモデル化ルーチンとを備え、前記複数のモデル化オブジェクトルーチンは、
プロセスプラント内の材料の流動に関連する材料の流動パラメータデータを格納するように構成されたストリームパラメータメモリを使用し、ディスプレイデバイスで材料の流動のグラフィック表示を表示するように構成された、プロセスプラント内の材料の流動に関連するストリームオブジェクトルーチンであって、材料の流動の特性の一つが、方向、圧力、密度、組成、材料タイプ又は流量を表す、ストリームオブジェクトルーチンと、
プロセスプラント内の物理的デバイスに関連するさらなるモデル化オブジェクトルーチンであって、中央演算処理装置で実行されたときに、該さらなるモデル化オブジェクトルーチンは、デバイスパラメータメモリ内の物理的デバイスに関するデバイスパラメータデータを格納し、およびディスプレイデバイス上で物理的デバイスのデバイスグラフィック表示を表示するように構成された、モデル化オブジェクトルーチンと
を有する、モデル化システム。
【請求項2】
さらに、前記ストリームオブジェクトルーチンは、ストリームオブジェクトルーチンがさらなるモデル化オブジェクトルーチンに通信可能に接続されるように定義される接続仕様を有する、請求項1に記載のモデル化システム。
【請求項3】
前記さらなるモデル化オブジェクトルーチンは、前記プロセスプラント内に配置されるフィールドデバイス及び前記プロセスプラント内に配置される材料輸送デバイスの一つをモデル化するように動作する、請求項2に記載のモデル化システム。
【請求項4】
前記接続仕様は、材料の流動をモデル化するために、ストリームオブジェクトルーチンが通信可能に接続され得るさらなるモデル化オブジェクトルーチンのタイプの仕様を有する、請求項2に記載のモデル化システム。
【請求項5】
前記さらなるモデル化オブジェクトルーチンのタイプの仕様は、ダクト、パイプ及びコンベヤに関連するモデル化オブジェクトルーチンの内の一つを指示し、
前記さらなるモデル化オブジェクトルーチンは、物理的ダクト、物理的パイプ及び物理的コンベヤの内の一つのオペレーションをモデル化する、請求項4に記載のモデル化システム。
【請求項6】
前記ストリームオブジェクトルーチンは、前記プロセスプラント内の材料の流動のタイプを定義するストリームパラメータメモリ内の材料の流動パラメータデータを格納するように構成され、
前記材料の流動のタイプは、液体、気体及び一つ以上の固体の組成物の内の一つである、請求項1に記載のモデル化システム。
【請求項7】
前記ストリームオブジェクトルーチンは、プロセスプラント内の材料の流動に関連する材料の組成に関するストリームパラメータメモリ内の材料の流動パラメータデータを格納するように構成されている、請求項1に記載のモデル化システム。
【請求項8】
前記ストリームオブジェクトルーチンは、さらなるモデル化オブジェクトルーチンによる材料の流動パラメータデータの通信を行う一つ以上の出力部を有する、請求項1に記載のモデル化システム。
【請求項9】
前記材料の流動パラメータデータは、さらに温度を表している、請求項1に記載のモデル化システム。
【請求項10】
前記ストリームオブジェクトは、中央演算処理装置で実行されたとき、プロセスプラント内の材料の流動に関連する出力を生成するために材料の流動パラメータデータを使用するように構成された方法を有する、請求項1に記載のモデル化システム。
【請求項11】
前記方法は、ユニット交換アルゴリズム、流動進路アルゴリズム、マスバランスアルゴリズム及びシミュレーションアルゴリズムの内の一つ以上を有する、請求項10に記載のモデル化システム。
【請求項12】
前記ストリームオブジェクトルーチンは、プロセスプラント内の材料の流動に関連する一つ以上の測定パラメータを受信し、かつ、材料の流動パラメータデータとして一つ以上の測定パラメータを格納するように構成された一つ以上の通信入力部を備えている、請求項1に記載のモデル化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−256366(P2012−256366A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195268(P2012−195268)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2010−108486(P2010−108486)の分割
【原出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【出願人】(512132022)フィッシャー−ローズマウント システムズ,インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】