説明

プロテインAの結晶および架橋した結晶ならびにその使用方法

プロテインAの結晶およびプロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)が記載されている。調製方法および使用方法も開示されている。本発明は、プロテインAの結晶および架橋した形態またはそれらの誘導体、ならびに、免疫グロブリン/抗体または対応するFab断片またはFc断片、例えば、ポリクローナル抗体、細胞培養物由来のモノクローナル抗体、治療用抗体、細菌培養物、血清、血漿由来の抗体を精製するための、それらの使用、免疫沈降、および体外デバイスのための、そのようなプロテインAの結晶の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2009年9月15日に出願された米国仮出願番号61/242,537の利益を主張し、上記米国仮出願の開示は、その全容が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
プロテインAは、もともとは細菌Staphylococcus aureusの細胞壁において見いだされた40〜60kDaの表面タンパク質である。プロテインAは、免疫グロブリンに結合することができるので、生化学の研究における用途が見いだされている。プロテインAは、多くの哺乳動物種由来のタンパク質、とりわけIgGに結合する。プロテインAは、免疫グロブリンのFc領域に、重鎖と相互作用することによって結合する。免疫学および他の生物学的の研究において使用するために、組換え型のStaphylococcusのプロテインAがE.coliにおいて作製されることも多い。プロテインAは多くの場合、蛍光色素、酵素、ビオチン、コロイド金または放射性ヨウ素などの他の分子と、抗体結合部位に影響を及ぼすことなくカップリングされる。同様に、プロテインAは、磁気、ラテックスおよびアガロースビーズとカップリングされて広く利用されている。プロテインAは多くの場合、固体支持体上に固定化され、血清または腹水などの粗製のタンパク質混合物から総IgGを精製するための信頼できる方法として使用されているか、または上記のマーカーの1つとカップリングされて抗体の存在を検出する。ビーズと結合体化したプロテインAを用いた免疫沈降試験も、タンパク質またはタンパク質複合体を、目的のタンパク質またはタンパク質複合体に対する抗体によって間接的に精製するために一般に使用されている。さらに、プロテインAは、多種多様な供給源からのモノクローナル抗体の精製において広く使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の概要
本発明は、一部において、例えば、抗体を精製するための革新的なプロテインAシステム(例えば、クロマトグラフィーシステム)を開発するために作製される、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)を調製することに関する。プロテインAのCLPCにより、高い安定性および耐化学性と共に、高度に濃縮されたプロテインA活性という利点が提供される。プロテインAの濃度が濃縮されることにより、カラムサイズ(使用する場合)、緩衝液の容積およびプロセスの時間が縮小する。さらに、プロテインAの結晶を架橋することにより、例えば、免疫グロブリン(例えば、抗体)を精製(例えば、クロマトグラフィーを使用して)する間にプロテインAが浸出することを防ぐかまたは減少させることができる。全体として、これにより抗体作製の時間および費用が縮小する。
【0004】
本発明は、プロテインAの結晶および架橋した形態(「プロテインA−CLPCまたはCLPC」)またはそれらの誘導体、ならびに、免疫グロブリン/抗体または対応するFab断片またはFc断片、例えば、ポリクローナル抗体、細胞培養物由来のモノクローナル抗体、治療用抗体、細菌培養物、血清、血漿由来の抗体を精製するための、それらの使用、免疫沈降、および体外デバイスのための、そのようなプロテインAの結晶の使用に関する。
【0005】
本明細書には、結晶形態のプロテインAを含有する組成物が開示されている。これの実施形態は、架橋した結晶(CLPC)の形態のプロテインAを含有する組成物である。別の実施形態では、プロテインAの結晶は、グルタルアルデヒドによって架橋している。一部の実施形態では、プロテインAの結晶は、約0.02%から約4%(w/v)グルタルアルデヒドによって架橋している。さらに他の実施形態では、プロテインAの結晶は、約1.00%(w/v)グルタルアルデヒドによって架橋している。
【0006】
本明細書に開示されている組成物は、非結晶形態のプロテインAよりも高い結合能を有するので、それよりも活性が高い。これのある実施形態では、結晶形態のプロテインAの結合能は、pH7において、可溶性の固定化された形態の結合能の少なくとも約100%超である。さらに別の実施形態では、架橋したプロテインAの結晶は、非結晶の固定化された形態のプロテインAの少なくとも約150%の結合能を有する。
【0007】
本発明のある実施形態では、約pH2から約pH12において本発明のプロテインAの結晶は安定である(それらの結合能を保持する)。
【0008】
別の実施形態では、本明細書に開示されているプロテインAの結晶は、固定化された非結晶性のプロテインAと比較して、0.0%のタンパク質浸出を有する。
【0009】
本明細書には、結晶性のプロテインA組成物の、予め充填されたカラムにおけるカラム材料としての使用、または膜中(含浸(imipregnate))、もしくは体外デバイスにおける使用も開示されている。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態において、本明細書には、本明細書に開示されている結晶性のプロテインA組成物を含有するキットが開示されている。そのようなキットは、他の試薬、精製装置、および本明細書に記載の結晶性のプロテインA組成物を使用するための説明書を含有してよい。
【0011】
一実施形態では、結晶性のプロテインAをカラムに予め充填して、抗体および抗体断片を精製すること、例えば、哺乳動物の細胞培養物からモノクローナル抗体を精製すること、トランスジェニックのミルクにおいて発現されているモノクローナル抗体または血清中で生成されたポリクローナル抗体を精製することの材料として使用することができる。
【0012】
さらに、組換え型の可溶性のプロテインAからタンパク質の結晶を作製する方法が開示されている。プロテインAの結晶およびその架橋した形態(「CLPC」)を含めた組成物、例えば、薬学的組成物も開示されている。
【0013】
一態様では、本発明は、架橋したプロテインAの結晶を提供する。架橋剤は多官能性であってよく、ある特定の実施形態では、作用剤は、グルタルアルデヒドなどの二官能性作用剤である。ある特定の実施形態では、プロテインAの結晶は、結合能を実質的に変化させない濃度、例えば、少なくとも約0.02%(w/v)の濃度でのグルタルアルデヒドによって架橋している。一部の実施形態では、プロテインAの結晶の架橋のレベルは、0.02%(w/v)グルタルアルデヒドで処理することによって作製したものと等しい。架橋のレベルは、当技術分野で公知の方法または本明細書に開示されている方法、例えば、タンパク質浸出のレベルを決定することによって決定することができる。
【0014】
本発明は、さらに、プロテインAの結晶、例えば、可溶性のプロテインAと比較して高い結合能、例えば、少なくとも約100%、200%、300%、400%、500%、またはそれ以上の結合能を有するプロテインAの結晶を提供する。
【0015】
本発明は、さらに、酸性条件において、同様の酸性条件(例えば、約2から3の酸性pH)において可溶性のプロテインAが保持する結合能および/または安定性よりも少なくとも2、3倍高い結合能および/または安定性を保持する、安定化された、例えば、架橋したプロテインAの結晶を提供する。一部の実施形態では、安定化されたプロテインAの結晶は、酸性条件において、可溶性のプロテインAよりも少なくとも約200%、300%、400%高い結合能および/または安定性を有する。
【0016】
本発明は、さらに、プロテアーゼの存在下で、同様の条件において可溶性のプロテインAが保持する結合能および/または安定性よりも少なくとも2、3倍高い結合能および/または安定性を保持する、安定化された、例えば、架橋したプロテインAの結晶を提供する。一部の実施形態では、安定化されたプロテインAの結晶は、プロテアーゼの存在下で、可溶性のプロテインAよりも少なくとも約200%、300%、400%高い結合能および/または安定性を有する。プロテアーゼは、例えば、ペプシン、キモトリプシンまたはパンクレアチンの1つまたは複数から選択することができる。
【0017】
他の実施形態では、安定化された結晶性のプロテインAまたは可溶性のプロテインAを、酸性条件および/またはプロテアーゼに所定の長さの時間、例えば、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間または5時間曝露させた後、安定化されたプロテインAまたは可溶性のプロテインAの結合能を測定する。
【0018】
関連する態様では、本発明は、pHが変動し得る条件下(例えば、約pH2.0もしくは3から約pH7.5、または約pH8.5から約pH10〜14)、および/または、例えば、ペプシン、キモトリプシンまたはパンクレアチンの1つまたは複数から選択することができるプロテアーゼの存在下で実質的に安定である、架橋したプロテインAの結晶を特徴とする。さらに他の実施形態では、本明細書に記載の通り、酸性条件下(例えば、約2から3の酸性pH)で、およびプロテアーゼの存在下で、架橋した結晶が保持する結合能は、可溶性のプロテインAが保持する結合能よりも少なくとも約2、3倍高い。他の実施形態では、本明細書に記載の通り、酸性条件下(例えば、約2から3の酸性pH)で、およびプロテアーゼの存在下で、安定化されたプロテインAの結晶は、可溶性のプロテインAよりも少なくとも200%、300%、400%安定性が高い。
【0019】
本明細書には、結晶および/または架橋したプロテインAの結晶を含む組成物、例えば、薬学的組成物も開示されている。
【0020】
一部の実施形態では、結晶は、Staphylococcus aureusまたは関連株などの天然の供給源に見いだされるプロテインAの配列と同一のまたは実質的に同一の配列を有するプロテインAを含む。他の実施形態では、プロテインAは、組換え手段によって作製する。
【0021】
別の態様では、本発明は、例えば、抗体および抗体断片を精製することおよび透析療法の間に免疫グロブリンを除去することを含めた種々の適切な適用のための、架橋したタンパク質の結晶を含浸させた膜、デバイス、システムならびにその作製方法および使用方法を提供する。この点について、本発明のプロテインAを含浸させた膜を、抗体および抗体断片に結合させることができる。これにより、精製のために必要な緩衝液の量を有効に最小限にすること、したがって、費用を最小限にすることができる。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、約3.25mg/cm以下の架橋したタンパク質の結晶を含浸させた膜を含む材料を提供する。膜に、架橋したプロテインAの結晶(「プロテインACLPC」)を含浸させることが好ましい。プロテインA−CLPCを含浸させた膜は、免疫グロブリンを単離し、精製するために使用することができ、固定化されたプロテインAと同様に再使用することができる。
【0023】
さらに別の実施形態では、本発明は、架橋したタンパク質の結晶、好ましくはプロテインA−CLPCを含浸させた膜を作製する方法を提供する。この方法は、膜キャスティング溶液を調製する工程を含む。キャスティング溶液は、1−メチル−2−ピロリジノン(「NMP」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、同様のもの、またはそれらの組み合わせなどの溶媒中にポリウレタンなどのポリマー基材を含む。膜キャスティング溶液は、酸化ジルコニウムなどの充填剤、および、例えば膜にさらなる親水性を与えるためのポリビニルピロリドン(「PVP」)などの作用剤も含んでよい。
【0024】
次いで、膜に約3.25mg/cmのプロテインA−CLPCが含浸されるように、キャスティング溶液を適量のプロテインA−CLPCと混合する。次いでこの溶液を合成メッシュ材料などの支持材料の上に広げ、適切な条件下で水性媒質に浸漬し、これによって膜沈殿物を形成することができる。その後に膜沈殿物をグリセロール溶液、好ましくは、比率40:60のグリセロールと水の混合物中で乾燥させる。
【0025】
本発明の利点は、抗体の精製および免疫沈降などの種々の異なる適用において使用するために適した改善されたタンパク質を含浸させた膜を提供することである。
【0026】
本発明の別の利点は、固定化されたプロテインAとは異なり、いかなる不活性な支持体も必要とせずに抗体を結合させることができる改善された材料を提供することである。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、プロテインAの結晶、例えば、本明細書に開示されている架橋したプロテインAの結晶を含む組成物、例えば、薬学的組成物を投与することによって、被験体における免疫グロブリン濃度(免疫グロブリン濃度の上昇に関連する障害)を低下させる方法を提供する。この態様の一実施形態では、プロテインAの結晶を、グルタルアルデヒドなどの架橋剤によって安定化する。組成物を投与することにより、免疫グロブリン濃度を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、または少なくとも約40%、またはそれ以上低下させることができる。一部の実施形態では、組成物は、経口的に、または体外デバイスを通して与えられる。別の実施形態では、体外デバイスは、カテーテル、例えば、プロテインAの結晶でコーティングしたカテーテルである。さらに別の実施形態では、哺乳動物において免疫グロブリン濃度を低下させる方法は、哺乳動物の生体試料、例えば、血液、血漿、または血清試料中の免疫グロブリン濃度をアッセイする工程を含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、プロテインAの結晶、例えば、架橋したプロテインA(例えば、本明細書に開示されている結晶および/または架橋した結晶)を含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、プロテインAの結晶、例えば、架橋したプロテインAの結晶(例えば、本明細書に開示されている結晶および/または架橋した結晶)を含む薬学的組成物を有効量で、透析機器(体外デバイス)における吸着剤として加えることによって哺乳動物を処置する方法を提供する。
【0030】
さらに別の実施形態では、結晶化工程は、精製されたタンパク質を濃縮し、その後、沈殿試薬を加え、それによって、結晶化されたタンパク質を形成することを含む。結晶化工程は、結晶化されたタンパク質を架橋剤、例えば、本明細書に開示されている架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)と接触させることをさらに含んでよい。使用する架橋剤の濃度は、約0.01%〜20%w/vの範囲内であってよく、一般には、約0.02%〜10%w/vであり、より一般には、約0.02%、0.5%または1%w/vである。
【0031】
他の実施形態では、調製における結晶化されたタンパク質の収率は、可溶性のプロテインA懸濁物において見いだされる特定のタンパク質の少なくとも約50%、60%、70%、80%である。他の実施形態では、結晶化されたタンパク質の収率は、可溶性の調製物において見いだされるタンパク質の少なくとも約90%、95%またはそれよりも高い。さらに他の実施形態では、結晶化されたタンパク質の収率は、可溶性の調製物において見いだされるタンパク質の少なくとも約50%、60%、70%、80%である。
【0032】
本発明は、さらに、本明細書に開示されている方法によって作製されるタンパク質の結晶(例えば、プロテインAの結晶)を提供する。
【0033】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶を特徴とする。
【0034】
一部の態様では、本開示は、例えば本明細書に記載の通り架橋した、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)を特徴とする。
【0035】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶および別の成分(例えば、緩衝剤、例えば、トリス緩衝剤)を含有する組成物を特徴とする。
【0036】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)および別の成分(例えば、緩衝剤、例えば、トリス緩衝剤)を含有する組成物を特徴とする。
【0037】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶を、例えば本明細書に記載の通り作出する方法を特徴とする。
【0038】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)を、例えば本明細書に記載の通り作出する方法を特徴とする。
【0039】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶および別の構成成分(例えば、使用説明書)を含有するキットを特徴とする。
【0040】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)および別の構成成分(例えば、使用説明書)を含有するキットを特徴とする。
【0041】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶を、例えば免疫グロブリン、例えば抗体、例えば治療用抗体を精製するために、例えば本明細書に記載の通り使用する方法を特徴とする。一部の実施形態では、プロテインAの浸出が防止されるか、または減少する(例えば、非結晶形態のプロテインAを同じ状態で使用した場合の浸出量と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%減少するか、または約2分の1、約5分の1または約10分の1に減少する)。
【0042】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)を、例えば、免疫グロブリン、例えば抗体、例えば治療用抗体を精製するために、例えば、本明細書に記載の通り使用する方法を特徴とする。一部の実施形態では、プロテインAの浸出が防止されるか、または減少する(例えば、非結晶形態のプロテインAまたは架橋していない形態のプロテインAの結晶を同じ状態で使用した場合の浸出量と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%減少するか、または約2分の1、約5分の1または約10分の1に減少する)。
【0043】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶を、例えば、免疫グロブリン、例えば抗体、例えば治療用抗体を精製するために、例えば、本明細書に記載の通り使用する方法を特徴とする。一部の実施形態では、1mL当たりのプロテインAの結合能が増加する(例えば、非結晶形態のプロテインAを固定化した状態で(例えば、支持体を使用して)使用した場合の結合量と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%以上、または約2倍、約5倍または約10倍以上増加する)。
【0044】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)を、例えば、免疫グロブリン、例えば抗体、例えば治療用抗体を精製するために、例えば、本明細書に記載の通り使用する方法を特徴とする。一部の実施形態では、プロテインAの結合能が増加する(例えば、非結晶形態のプロテインAまたは架橋していない形態のプロテインAの結晶を固定化した状態で(支持体を使用して)使用した場合の結合量と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%以上、または約2倍、約5倍または約10倍以上増加する)。
【0045】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶を含有するカラム(例えば、クロマトグラフィーカラム)を特徴とする。
【0046】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)を含有するカラム(例えば、クロマトグラフィーカラム)を特徴とする。
【0047】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの結晶を含有する膜(例えば、ホロファイバー(holofiber)系)を特徴とする。
【0048】
一部の態様では、本開示は、プロテインAの架橋したタンパク質の結晶(CLPC)を含有する膜(例えば、ホロファイバー系)を特徴とする。
【0049】
本明細書には、プロテインAを結晶化する方法であって、プロテインAを可溶化または濃縮し、可溶化または濃縮されたタンパク質に沈殿試薬を加えて結晶を形成する方法が開示されている。
【0050】
本明細書には、免疫グロブリンを精製するためのプロセスであって、(a)免疫グロブリンを含有する媒質を、約pH7.0からpH10の範囲のpHを有し、陽イオンと陰イオンの組み合わせを含有する緩衝溶液と混合して、緩衝免疫グロブリン媒質をもたらす工程と、(b)前記緩衝免疫グロブリン媒質を固定化されたプロテインA(プロテインA−CLPC:プロテインAは、結晶化および架橋したプロテインA分子によって固定化されている)吸着剤と接触させて、前記緩衝免疫グロブリン媒質中に存在する免疫グロブリンを前記固定化されたプロテインA吸着剤の上に吸着させる工程と、(c)免疫グロブリンが吸着したプロテインA−CLPC吸着剤を前記緩衝溶液で洗浄する工程と、(d)前記免疫グロブリンが吸着したプロテインA−CLPC吸着剤を、約pH2からpH6の範囲のpHを有する緩衝溶液と接触させて、吸着した免疫グロブリンをプロテインA−CLPC吸着剤から取り出す工程と、(e)取り出された免疫グロブリンを実質的に純粋な形態で回収する工程とを含むプロセスが開示されている。このプロセスの別の実施形態では、プロセスは、本明細書に記載のプロテインAの結晶性組成物を含有するカラムにおいて実現される。このプロセスのさらに別の実施形態では、緩衝免疫グロブリン媒質をプロテインA−CLPC吸着剤と接触させる工程は、プロテインA−CLPC吸着剤を含有するカラムにおいて実現される。このプロセスの別の実施形態では、免疫グロブリンを含有する媒質は、正常な哺乳動物の血清または免疫哺乳動物の血清、例えば血漿または腹水などである。他の実施形態では、免疫グロブリン媒質は、ハイブリドーマ、組織培養液、細胞培養液、哺乳動物の細胞培養液、細菌の細胞培養液、トランスジェニック供給源の液体、植物抽出物、または酵母培養液から得られる。
【0051】
精製するためのプロセスの一部の実施形態では、緩衝溶液は、約pH7.0から約pH10の範囲のpHを有し、緩衝剤は、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(aninomethane)緩衝剤、またはリン酸緩衝剤である。精製プロセスのさらに他の実施形態では、緩衝溶液は、約0.01Mから約0.25M、または約0.05Mから約0.5Mの濃度範囲を有する。
【0052】
精製するためのプロセスのさらに他の実施形態では、緩衝溶液は、約pH2から約pH6の範囲のpHを有し、約0.01Mから0.25Mの範囲の濃度を有する。精製プロセスの一部の実施形態では、緩衝溶液は、酢酸−酢酸塩緩衝液であり、約pH2から約pH6の範囲のpHを有する。
【0053】
精製するためのプロセスの別の実施形態では、緩衝溶液は、カリウムイオンおよびリン酸イオンを、約1.0Mから約1.5Mの濃度で含有する。
【0054】
精製するためのプロセスのさらに別の実施形態では、緩衝溶液は、アンモニウムイオンおよびリン酸イオンを、約1.0Mから約1.5Mの濃度で含有する。精製するためのプロセスさらに別の実施形態では、緩衝溶液は、アンモニウムイオンおよび硫酸イオンを、約1.0Mから約1.5Mの濃度で含有する。精製するためのプロセスの一部の実施形態では、緩衝溶液は、ナトリウムイオンおよび硫酸イオンを、約1.0Mから約1.25Mの濃度で含有する。さらに他の実施形態では、緩衝溶液は、ナトリウムイオン、リン酸イオンおよび塩化物イオンを、約1.0Mから約1.25Mの濃度で含有する。
【0055】
この精製するためのプロセスの別の実施形態では、固定化されたプロテインA吸着剤は、いかなる支持体も伴わない結晶性の架橋したプロテインAである。さらに他の実施形態では、吸着剤は、いかなる磁気粒子に付着した支持体も伴わない結晶性の架橋したプロテインAである。
【0056】
本明細書には、プロテインAクロマトグラフィーを使用して、混入溶液からタンパク質を精製するための方法であって、(a)精製されるタンパク質を、固定化された固相の結晶化され架橋したプロテインAに吸着させる工程と、(b)固相を、約5から約7までにわたる範囲のpHを有し、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)、塩化テトラプロピルアンモニウムおよび塩化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される電解質を含有する電解質溶媒で洗浄することによって固相に結合した混入物質を除去する工程と、(c)固相からタンパク質を回収する工程とを含む方法が開示されている。この方法の一部の実施形態では、精製されるタンパク質は、免疫グロブリン、抗体、またはその断片である。この方法のさらに別の実施形態では、精製されるタンパク質は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはキメラ抗体またはその断片である。この方法の他の実施形態では、固相は、カラム中の結晶性のプロテインAまたはカラム中の結晶性の架橋したプロテインAである。
【0057】
混入溶液からタンパク質を精製するための方法の一部の実施形態では、電解質溶媒は、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)または塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)を含有する。この方法のさらに別の実施形態では、電解質溶媒中の電解質の濃度は、約0.1Mから約1.0Mまでの範囲内、または約0.25Mから約0.5Mまでの範囲内である。
【0058】
混入溶液からタンパク質を精製するための方法の他の実施形態では、混入物質は、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)である。この方法の一部の実施形態では、混入溶液は、組換え抗体を含む収集された細胞培養液(HCCF)を含む。
【0059】
混入溶液からタンパク質を精製するための方法の実施形態において、溶出緩衝液の工程(c)は、約2.0から約5.0まで、または約2.5から約3.5までの範囲のpHを有する溶出緩衝液を使用してタンパク質を溶出することを含む。
【0060】
本明細書には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生されたタンパク質を、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製するための方法であって、(a)プロテインAを結晶化し、架橋して固相を作り出すことによって固定化したプロテインAにタンパク質を吸着させる工程と、(b)固相を、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)、塩化テトラプロピルアンモニウムおよび塩化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される電解質を含む電解質溶媒で洗浄することによって、固相に結合したチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)混入物質を除去する工程と、(c)固相からタンパク質を回収する工程とを含む方法が開示されている。
【0061】
本明細書には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生されたタンパク質を、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製するための方法であって、(a)結晶化し、架橋して固相を作り出すことによって固定化したプロテインAにタンパク質を吸着させる工程と、(b)固相を、約5から約7までの範囲のpHを有し、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)、塩化テトラプロピルアンモニウムおよび塩化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択される電解質(electrolyte solvent)を含有する電解質溶媒であって、その中の電解質の濃度が約0.25Mから約0.5Mまでの範囲である、電解質溶媒で洗浄することによって、固相に結合したチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)混入物質を除去する工程と、(c)固相からタンパク質を回収する工程とを含む方法も開示されている。
【0062】
本明細書には、哺乳動物における免疫グロブリン濃度の上昇に関連する障害を処置する方法であって、プロテインAの結晶を、障害に関連する1つまたは複数の症状を低下させるために十分な量で哺乳動物に投与する工程を含む方法が開示されている。この方法の一部の実施形態では、障害は、免疫機能に関連する。
【0063】
本明細書には、膜を作製する方法であって、(a)溶媒中のポリマー基材で構成されるキャスティング溶液を調製する工程と、(b)十分な量の架橋したタンパク質の結晶をキャスティング溶液に加える工程と、(c)膜キャスティング溶液を支持材料に適用する工程と、(d)膜キャスティング溶液および支持材料を水性媒質に浸漬する工程と、(e)膜複合材料を形成させる工程と、(f)流体媒質を用いて膜複合材料を乾燥させる工程とを含む方法が開示されている。この方法の一部の実施形態では、ポリマー基材は、ポリウレタンを含めた適切なポリマーで構成される。この方法のさらに他の実施形態では、架橋したタンパク質の結晶は、プロテインA、プロテインG、プロテインLおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質を含む。この方法のさらに他の実施形態では、溶媒は、1−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。この方法の一部の実施形態では、流体媒質はグリセロールを含む。
【0064】
プロテインAを含浸させた膜を作製する方法であって、(a)溶媒中にポリウレタンおよび充填剤を含む膜キャスティング溶液を形成する工程と、(b)プロテインA−CLPCを膜キャスティング溶液に加える工程と、(c)膜キャスティング溶液を水性媒質中で処理する工程と、(d)プロテインA−CLPCを含浸させた膜沈殿物を形成させる工程とを含む方法が開示されている。この方法の一部の実施形態では、充填剤は、酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭素およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。別の実施形態では、含浸膜を作製する方法は、グリセロール溶液を用いて膜沈殿物を乾燥させる追加的な工程を含む。
【0065】
本明細書には、透析療法の間に透析液または体液から免疫グロブリンを除去することができる材料であって、架橋したタンパク質の結晶を含浸させ、流体媒質を用いて乾燥させた膜を含む材料が開示されている。この方法のある実施形態では、架橋したタンパク質の結晶は、プロテインA、プロテインG、プロテインLおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質を含む。さらに別の実施形態では、膜は、酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭素およびそれらの組み合わせからなる群より選択される充填剤を含む。この方法のさらに他の実施形態では、流体媒質はグリセロールを含む。
【0066】
本明細書には、透析療法の間に使用される透析液または体液から免疫グロブリンを除去するためのデバイスであって、入口および出口で内部を規定する本体を含み、該内部が、架橋したタンパク質の結晶を含浸させ、流体媒質を用いて乾燥させた膜の層を含有する、デバイスが開示されている。このデバイスの一部の実施形態では、架橋したタンパク質の結晶は、プロテインA、プロテインG、プロテインLおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質を含む。このデバイスの他の実施形態では、流体媒質はグリセロールを含む。
【0067】
本明細書には、透析療法を提供するためのシステムであって、入口および出口で内部を規定する本体を含み、該内部が、架橋したタンパク質の結晶を含浸させ、流体媒質を用いて乾燥させた膜の層を含有する、透析の間に免疫グロブリンを除去することができるデバイスを含む、システムが開示されている。このシステムの実施形態では、架橋したタンパク質の結晶は、プロテインA、プロテインG、プロテインLおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質を含む。他の実施形態では、流体媒質はグリセロールを含む。
【0068】
本明細書には、透析療法を提供する方法であって、(a)透析液または体液を、架橋したタンパク質の結晶を含浸させ、グリセロール溶液を用いて乾燥させた膜の層を含むデバイスを通過させる工程と、(b)透析液または体液から治療有効量の免疫グロブリンを除去する工程とを含む方法が開示されている。この方法のある実施形態では、架橋したタンパク質の結晶は、プロテインA、プロテインG、プロテインLおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質を含む。
【0069】
本明細書には、結晶形態のプロテインAを含む組成物が開示されている。一部の実施形態では、プロテインAの供給源は、Staphylococccus aureus株である。さらに他の実施形態では、プロテインAは、組換え手段によって作製するか、または化学的に合成する。一部の実施形態では、プロテインAは、全長の天然のタンパク質配列を有する。さらに他の実施形態では、プロテインAは、少なくとも1つの抗体結合ドメインを含有する。さらに他の実施形態では、プロテインAは化学修飾されている。他の実施形態では、プロテインAは変異を有するか、または天然のプロテインAの機能性誘導体である。
【0070】
本明細書には、架橋した結晶形態のプロテインAを含む組成物が開示されている。一部の実施形態では、組成物は、グルタルアルデヒドによって架橋している。
【0071】
本明細書には、免疫グロブリンを精製する方法であって、前記免疫グロブリンを、結晶形態のプロテインAおよび/または架橋した結晶形態のプロテインAを含む組成物に結合させる工程を含む、方法が開示されている。一部の実施形態では、免疫グロブリンは、抗体、モノクローナル抗体、Fab断片、Fc断片、単鎖抗体、キメラ抗体、完全ヒト抗体、またはヒト化抗体である。他の実施形態では、免疫グロブリンはIgGクラスに属する。この方法のさらに他の実施形態では、免疫グロブリンは化学修飾されている。
【0072】
本明細書には、懸滴蒸気拡散結晶化法またはバッチ結晶化法を使用して結晶形態のプロテインAを作出する方法であって、(a)脱イオン水中のプロテインAを1:1のタンパク質対試薬比の状態にする工程であって、前記試薬が、2Mの硫酸アンモニウム、0.1Mのカコジル酸緩衝液、pH6.5および0.2MのNaClを含有する組成物;クエン酸緩衝液中2Mの硫酸アンモニウム、pH5.5を含有する組成物;1Mのクエン酸ナトリウム、0.1Mのトリス−HCl緩衝液、pH7、および0.2MのNaClを含有する組成物;0.1Mの酢酸緩衝液中0.8MのNaHPO/1.2MのKPO、pH4.5を含有する組成物;ならびに2Mの硫酸アンモニウム、トリス−HCl緩衝液、pH7および0.2Mの硫酸リチウムを含有する組成物からなる群より選択される、工程と、(b)結晶が出現するまでインキュベートする工程とを含む方法が開示されている。この方法の一部の実施形態では、工程(a)におけるプロテインAの濃度は、脱イオン水中、約10mg/mlまたは約300mg/mlのプロテインAである。この方法のさらに他の実施形態では、工程(a)におけるプロテインAの濃度は、脱イオン水中、約50mg/mlまたは約120mg/mlのプロテインAである。
【0073】
本明細書では、架橋した結晶形態のプロテインAを作出する方法であって、結晶形態のプロテインAをグルタルアルデヒドと混合する工程を含む方法が開示されている。この方法の一部の実施形態では、グルタルアルデヒド(glutaraldeyde)の最終濃度は、約0.2%から約4%である。この方法の他の実施形態では、グルタルアルデヒドの最終濃度は、約1%である。
【0074】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が優先する。さらに、材料、方法および実施例は単に例示的なものであり、それに限定されるものではない。
【0075】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図および以下の説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、懸滴中のプロテインAの結晶である。組換え型のプロテインA(DI HO中120mg/ml)を、懸滴中で、WizardII結晶化スクリーニングを用いて結晶化した。
【図2】図2は、バッチ中のプロテインAの結晶である。組換え型のプロテインA(HO中53mg/ml)を、1mlのバッチ中で、WizardII結晶化スクリーニングを用いて結晶化した。
【図3】図3は、架橋したプロテインAの結晶である。プロテインAの結晶を、グルタルアルデヒド1%を用いて20分間、およびグルタルアルデヒド0.33%を用いて1時間、架橋した。
【発明を実施するための形態】
【0077】
詳細な説明
本発明は、結晶性のプロテインAおよび架橋したプロテインAを含む組成物、および、そのような結晶性組成物を作出し、微生物、血清、血漿、哺乳動物の細胞培養物から免疫グロブリン/抗体またはFc断片、Fab断片、単鎖抗体およびモノクローナル抗体を分離するために使用する方法に関する。本明細書に記載の結晶性組成物は、他の物質との混合物における免疫グロブリンを含有する液体由来の少なくとも1種の免疫グロブリンに、そのFc部分を通じて結合することができる。
【0078】
いかなる特定の理論にも制約されることなく、本発明は、前記免疫グロブリン/抗体を含有する液体を、前記液体に不溶性であり、少なくとも1種、または複数種の免疫グロブリンまたはそのFc断片が結合する領域を有する、結晶性の架橋したプロテインA物質からなる固相と接触させることを特徴とする。免疫グロブリンのFcパート、またはFc断片は、プロテインA−CLPCと結合することができ、したがって、前記プロテインA−CLPCは液体中の前記免疫グロブリン/抗体のFcパートに、またはFc断片に結合するが、混入している物質には結合せず、そこで、残りの混入している物質を伴う液体を固相から分離し、結合した抗体も場合によって前記固相から分離する。
【0079】
本発明の方法は、とりわけ、イオン交換クロマトグラフィーさらにアガロースなどの追加的な固体支持体を使用する複雑な多段階の操作を回避するという点で、同じ目的のために使用する公知の方法と区別される。新しい方法によって、問題の免疫グロブリン/抗体/断片が、驚くほど純粋な形態で、非常に単純な様式で、都合のよい条件下で、かつ高収率で得られる。問題のプロテインA−CLPCは、免疫グロブリンに、従来の固定化されたプロテインAと比較して、非常に高い結合能で特異的に可逆的に結合することができるので(これは、結合が、免疫グロブリンのFcパートにおいて行われることによる)、非常に価値がある。
【0080】
問題の免疫グロブリンは、様々な動物種、主として脊椎動物、好ましくは哺乳動物に由来してよい。公知の通り、免疫グロブリンは、様々な免疫グロブリンのクラス、例えば、クラスA(IgA)、D(IgD)、E(IgE)、G(IgG)およびM(IgM)に属し得る。IgGクラスがとりわけ免疫グロブリンの中で量的に優位を占めるので、このクラスに属する免疫グロブリンに結合することができるプロテインA−CLPCとの関連において適用することができるものが、本発明の1つの価値がある態様である。免疫グロブリンのFcパートは、公知の酵素的な方法によって免疫グロブリンから切り離すことができ、それによって遊離のFc断片が得られる。特定の免疫グロブリンのFcパートは、多くの場合、異なる動物種で構造的に類似している。例えば、S.aureus由来のプロテインAはIgGのFcパートと反応するので、本発明の方法では、多くの場合、異なる動物種由来のIgGを互いに置き換えることができる。
【0081】
本発明によると、ポリペプチド(プロテインA−CLPC)は、Staphylococcus aureus由来のいわゆるプロテインAまたは前記タンパク質の断片であってよく、前記断片は、ポリペプチドの性質があり、また、少なくとも1種の免疫グロブリンにそのFcパートにおいて結合する能力を有してよい。S.aureusに由来する前記ポリペプチド(プロテインAおよび断片)を、IgGクラスに属する免疫グロブリンに、それらのFcパートにおいて結合させることができる。他の例は、Staphylococcus epidermidis由来のポリペプチドおよび他の細菌株由来のポリペプチドである。
【0082】
本発明に従って、方法を実施する場合、少なくとも1種の免疫グロブリンまたはそのFc断片が結合する領域を有する、液体に不溶性のプロテインA−CLPC(ポリマー物質)を使用するべきである。したがって、プロテインA−CLPCは固相の外に溶解されないか、または洗浄操作の間にそこから除去されないだろう。プロテインA−CLPCは、プロテインAの結晶を共有性の結合によって架橋することによって形成することが好ましい。
【0083】
プロテインA−CLPCは、カラムに予め充填された結晶の粒子の形態の架橋したプロテインAからなるカラムにおいて使用することができ、これは、種々の供給源由来のポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fab断片の容易な親和性精製をもたらす。結晶性の架橋したプロテインAは、優れたタンパク質の安定性および結合特性をもたらす架橋方法を使用して調製する。カラムは、伝統的な重力流手順用が意図される。
【0084】
あるいは、プロテインA−CLPCは、ポリマー(固体表面)または磁気粒子に、ポリペプチド(例えばタンパク質)をポリマー物質に結合させる場合に慣習的に使用される方法によって、結合させることができる(例えばハロゲン化シアン、イソシアネートなどによる)。使用する不溶性のポリマー物質は、同様の目的のために一般に入手可能なもの、すなわち、タンパク質をポリマーに結合させる際に使用することができる官能基を持つポリマーであってよい。そのような官能基の例は、ヒドロキシル基、メルカプト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボニル基、ヒドラジド基、ジアゾ基およびカルボキシル基である。これらの基を、ポリマーからタンパク質、この場合はプロテインA−CLPCに、従来の方法によって橋を形成する際に使用することができる。使用する液体に不溶性のポリマーは、前記液体中で膨張してよい。例えば、水性液体を使用する場合に水中で膨張してよい。ポリマーは、例えば、多糖などのポリマーを架橋することによって得られた3次元網目構造からなってよい。したがって、非常に様々なポリマー、例えば、セルロース、アガロース、ポリアミノスチレン、架橋ポリマー(例えば、エピクロルヒドリン(Sephadex(登録商標))で、もしくはジエポキシド(例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4−butanediol diglycide ether))で架橋したデキストランなどの架橋した多糖)、またはデンプンもしくはセルロースの誘導体、またはエピクロルヒドリンもしくはジエポキシドで架橋したポリビニルアルコールを使用することができる。他の例は、テトラエチレンペンタミンまたはヘキサメチレンジアミンをエピクロルヒドリンまたはジエポキシドと反応させることによって得られる不溶性ポリマーである。別の例は、p−アミノフェニル基で置換された架橋したポリアクリルアミドポリマーである(Enzacryl(登録商標))。
【0085】
固相は、結晶性の架橋したプロテインAとして存在してもよいし、またはポリマー物質または膜に包埋されてよい。多くの場合、固相は、プロテインAを粒子の形態で使用するために適切であり得る。他の例としては、免疫グロブリンまたはそのFc断片、例えば、IgGまたはそのFc断片を精製するためにプロテインA−CLPCを結合させたポリマーの試験管壁が挙げられる。
【0086】
本明細書に記載の方法によって関連性のある免疫グロブリン/抗体/断片が分離される物質は、様々な特性のものであってよい。したがって、そのような免疫グロブリンは、関連性のある抗体が作製される微生物由来のポリペプチド(例えば、タンパク質)、多糖、核酸または低分子量の物質から離して精製することができる。
【0087】
本発明の方法は、液体の存在下で行う。使用する液体は、主として水性液体、例えば、適切なpH、例えば、中性点の付近のpHを有する緩衝NaCl水溶液である。
【0088】
本発明によるプロテインA−CLPCに結合した関連性のある抗体/その断片は、穏やかな条件下で、例えば、pHまたはイオン強度を変化させることによって、CLPCから容易に遊離させることができる。
【0089】
本明細書に記載のプロテインAの結晶(プロテインA−CLPC)は、抗体またはそのFab断片に結合することができ、いかなる固体支持体も必要とせずに、種々の供給源由来の精製において、または免疫学的試験もしくは免疫沈降試験において使用することができる。プロテインAの結晶(プロテインA−CLPC)により、哺乳動物において、血漿由来の循環免疫複合体またはIgGを、体外デバイスにおける免疫吸着によって低下させることもできる。プロテインA/CLPC結晶を使用して抗体を精製する方法が本明細書に記載されている。さらに、プロテインAの結晶および架橋した結晶(CLPC)は、それを含む組成物、およびそれを使用する組成物として提供される。さらに、可溶性の形態のプロテインAから多量のタンパク質の結晶/CLPCを作製する方法が開示されている。
【0090】
定義。本発明をより容易に理解することができるように、ある特定の用語を最初に定義している。詳細な説明の全体を通して追加的な定義が記載されている。
【0091】
本明細書で使用される「全抗体または抗体断片」は、本発明によると、機能性抗体または抗体断片である(すなわち、in vitroまたはin vivoでその特異的な抗原を認識し、それに結合することができ、抗体の結合に伴う任意のその後の作用、例えば、直接的な細胞毒性、補体依存性の細胞毒性(CDC)、抗体依存性の細胞毒性(ADCC)を開始することができる)、全抗体または抗体断片、例えば、単鎖のFv断片またはFab抗体断片を意味する。
【0092】
「抗体」という用語は、脊椎動物の免疫系の体液性アームによって、体内に外来分子が存在することに応答して産生される、おおおよそのMWが150kDの糖タンパク質を意味する。抗体は、微生物、例えば寄生生物、細菌およびウイルスによる感染を予防するため、および消散させるために不可欠である。抗体は、侵入微生物上のもの、および侵入微生物の産物を含めた抗原(またはエピトープ)と称されるタンパク質(または、時には、多糖、糖タンパク質、脂質、または核酸を含めた他の有機分子)の立体配置を高度に特異的に認識し、それに結合することによってこの機能を行う。抗体は、それらの標的抗原に、抗体上の抗原結合部位と称される超可変ドメインとエピトープ自体との間の高度に特異的な相互作用によって結合する。抗原に結合すると、抗体は、感染微生物または他の抗原を含有する実体、例えばがん細胞の中和、破壊および排除に寄与する免疫系の多くのエフェクター系の1つまたは複数を活性化する。
【0093】
抗体は、がん、炎症、心臓血管疾患、および移植片拒絶を、疾患状態に関与する細胞標的に特異的に結合し、その後中和することによって、処置するためにも使用される。例えば、モノクローナル抗体であるインフリキシマブは、腫瘍壊死因子に結合し、腫瘍壊死因子が細胞表面の受容体と相互作用することを遮断することによって、炎症における腫瘍壊死因子の役割を中和する。一方、リツキシマブは、悪性のBリンパ球の細胞表面CD20抗原に結合することによって、悪性のBリンパ球を標的とする。
【0094】
単一の抗体分子は、互いに共有結合した2つの同一の重鎖(それぞれ、おおおよそのMWが50kD)、および、それぞれが重鎖の1つに共有結合した2つの同一の軽鎖(それぞれ、おおおよそのMWが25kD)で構成される構造を有する。4つの鎖は、古典的な「Y」モチーフに配置されている。「Y」の底部の「脚」は、Fc領域と称され(「c」は、「結晶化可能」、あるいは、「補体結合性」を表す)、抗体を細胞膜内につなぎ留めるために使用され、また、マクロファージ細胞にも結合し、補体を活性化する。「Y」の上部の2つの「腕」は、Fab領域と称される(「ab」は、「抗原結合性」を表す)。各Fab領域は、定常領域(Fab領域とFc領域の接合点における)および可変領域(「Y」の先端まで伸びている)を含有する。各可変領域は、「Y」の各先端において同一の抗原結合部位を含有する(「超可変」領域と称される可変領域内の領域において)。したがって、各Fab領域は、1つの抗原結合部位を有し、したがって、完全な抗体分子は2つの抗原結合部位を有する(すなわち、「二価」である)。天然に存在する抗体上の2つの抗原結合部位は、互いに同一であり、したがって、抗体は、1つの抗原に対して特異的である(すなわち、「一価」である)。
【0095】
現在まで、抗体分子のいくつもの分子断片が単離されている。これらは、天然に生じないが、1つまたは複数の完全な抗体分子から遺伝子工学で作り出される。これらの断片は、Fab断片(完全な抗体を酵素であるパパインで消化することによって単離した単一のFab)、およびF(ab’)断片(抗体を酵素であるペプシンで消化することによって作製される互いに共有結合した2つのFab)を含む。Fab断片は単一特異性であるが、一方F(ab’)断片は二重特異性である。最近、いくつもの遺伝子工学で作り出された抗体断片が導入されている。これらは、二本鎖Fv(dsFv)断片および単鎖Fv(scFv)断片を含む(「v」は、どちらの場合も「可変性」を表す)。dsFv断片は、定常領域を抜いたFab断片からなり、すなわち、互いに共有結合した重鎖および軽鎖の可変領域のみからなる。scFv断片は、ペプチドリンカーを介して軽鎖の可変領域と連結した重鎖の可変領域からなる単一のポリペプチド鎖である。古典的には、dsFv断片およびscFv断片はどちらも一価である(したがって単一特異性である)。しかし、2つのdsFv断片または2つのscFv断片は、それら自体が連結して二重特異性断片を形成し得る(これらは、定常領域を伴わないF(ab’)断片と類似する)。さらに、異なる抗原結合部位を有する2つのdsFv断片またはscFv断片を連結して二重特異性断片を形成することが可能である(すなわち、異なる特異性)。そのような断片は、研究ツールまたは治療用試薬または診断用試薬のいずれかとして使用することができる。
【0096】
ヒトでは、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEの5つのクラスの抗体があり(免疫グロブリンとも称される)、それぞれが、それ自体の独特の特性および機能を持つ。IgG、IgD、およびIgEは全て、1つの抗体分子からなるが、一方IgAは、そのような分子の1つ、2つまたは3つからなる場合があり、IgMは、5つからなる。さらに、ヒトでは、IgGには4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)があり、IgMおよびIgAには、それぞれ2つのサブクラス(それぞれ1および2)がある。例えば、モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RituxanTM)は、IgG1抗体である。
【0097】
天然に存在する抗体は、単一の種に由来するが、遺伝子工学で作り出された抗体および抗体断片は、2以上の動物種に由来してよい(すなわち、キメラであってよい)。現在まで、マウス(mouse)(マウス(murine))/ヒトキメラ抗体が生成されているが、他の種の組み合わせが可能である。キメラ抗体は、さらに2つのサブタイプ:キメラおよびヒト化に分けられている。マウス/ヒトキメラ抗体は、それぞれ、およそ75%のヒトアミノ酸配列および25%のマウスアミノ酸配列を含有する。ヒトの配列は、抗体の定常領域を表し、一方マウスの配列は、抗体の可変領域を表す(したがって抗原結合部位を含有する)。そのようなキメラを使用することについての理論的根拠は、マウス抗体の抗原特異性は保持されるが、マウス抗体の免疫原性(マウス抗体は、マウス以外の種において、マウス抗体に対する免疫応答を引き起こすことになる)は低下し、したがってヒトの療法においてキメラを使用することができる、というものである。キメラ抗体は、異なるヒト抗体由来のCDR領域を含むものも包含する。CDR領域は超可変領域とも称される、抗原結合部位を生成する抗体分子の可変領域内の配列である。CDR領域は、結合部位の形状および電荷分布が、抗原上の認識されるエピトープと相補的であるので、そのように名づけられた。
【0098】
あるいは、キメラ抗体は、ある抗体由来のフレームワーク領域および別の抗体由来のCDR領域を含む。キメラ抗体は、少なくとも2つの異なるヒト抗体由来のCDR領域を含むものも包含する。ヒト化抗体は、およそ90%(またはそれ以上)ヒトのアミノ酸配列を含有する。存在する唯一のマウスの配列は、超可変領域(可変領域内に含有される実際の抗原結合部位である)である。ヒト化抗体は、キメラ抗体と比較して最小のマウス免疫原性を有する。
【0099】
一般に、それらの特異性によって区別することができる2種類の抗体:ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体がある。ポリクローナル抗体は、血液の免疫グロブリン画分として見いだされる抗体であり、本質的に、個体が曝露された様々な抗原に特異的な多くの異なる種類の抗体のポリクローナル混合物である(すなわち、抗体を産生する細胞であるBリンパ球(またはB細胞)の多くの異なるクローンが起源である)。
【0100】
モノクローナル抗体は、単一特異性の抗体であり、すなわち、Bリンパ球(B細胞)の単一のクローンに由来する。これらの抗体は、それらの標的抗原に対して優れた特異性を有し、さらに、大量に(すなわち、高い力価で)産生され得る。モノクローナル抗体は、特異的な抗原(例えば、がん抗原)に対するマーカーとして、診断薬として(例えば、HlV−1のようなウイルスを検出するためのアッセイにおいて)、および治療剤として有用である。全モノクローナル抗体は、2つの完全な重鎖および2つの完全な軽鎖を含む古典的な分子構造を有する抗体である。これは、Fab、F(ab’)、Fc断片、dsFv断片、およびscFv断片などの抗体断片と区別される。
【0101】
伝統的に、モノクローナル抗体は、抗体産生B細胞と不死ハイブリドーマ細胞とを融合させて、細胞培養物においてモノクローナル抗体を継続的に産生するB細胞ハイブリドーマを生成することによって作製されている。モノクローナル抗体を生成するために伝統的に使用されている別の方法は、ファージディスプレイ技術を使用してモノクローナル抗体を細菌の細胞培養物において発現させることを伴う。しかし、現在では、モノクローナル抗体は、遺伝子改変された動物、例えばウシおよびヤギ(Genzyme Transgenics)、ブタおよびウサギ(Medarex,PPL Therapeutics)、およびニワトリ(Tranxenogen)、ならびに植物、例えば、タバコおよびトウモロコシ(Epicyte,Integrated Protein Technologies,Meristem Croptech、およびその他)において、in vivoで多量に作製することができる。例えば、遺伝子改変されたヤギ(Genzyme Transgenics)のミルクにおいて大量のモノクローナル抗体を見いだすことができる。プロテインA−CLPCは、そのような供給源の全てから抗体を本発明に従って精製するために使用することができる。さらに、トランスジェニックの結果として、マウスがヒトB細胞のゲノム全体(ヒト抗体をコードする)を含有し、発現するように改変されている。したがって、そのようなトランスジェニックマウス(Abgenix)は、本発明に従ってプロテインA−CLPCを使用して精製することができるヒト抗体の供給源である。グリコシル化は抗体を産生している動物に特異的であることに留意するべきである。例えば、ヒト以外の供給源由来のヒト抗体はわずかに異なるグリコシル化プロファイルを有する。したがって、本発明の全抗体または単鎖Fv抗体断片またはFab抗体断片は、修飾されたグリコシル化を示すか、または脱グリコシル化される可能性がある。本発明に従ってプロテインA−CLPCを使用して精製することができる抗体として、誘導体化された抗体も挙げられる。そのような抗体としては、ポリエチレングリコールまたは少なくとも1つの炭水化物部分または少なくとも1つのメチル基またはエチル基で誘導体化された抗体が挙げられる。
【0102】
臨床的に関連性のある抗体は、それらが使用される治療領域によって分類することもできる。そのような抗体としては、例えば、がん(例えば、膵がん)、炎症性疾患(例えば、自己免疫疾患、関節炎)、心臓血管疾患(例えば、脳卒中)、感染症(例えば、HIV/エイズ)、呼吸器疾患(例えば、喘息)、組織移植拒絶反応および臓器移植拒絶反応を処置するための抗体が挙げられる。そのような抗体としては、放射免疫療法のための抗体も挙げられる。本発明に従って精製することができる抗体としては、例えば、アブシキシマブ、パリビズマブ、ムロモナブ(Murumonab)−CD3、ゲムツズマブ、トラスツズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプトおよびイブリツモマブチウキセタンが挙げられる。
【0103】
本明細書で使用される「水性溶媒と有機溶媒の混合物」は、n%の有機溶媒およびm%の水性溶媒を含む混合物を意味し、ここでnは1から99であり、mは100−nである。
【0104】
本明細書で使用される「生体適合性ポリマー」は、非抗原性(アジュバントとして使用しない場合)、非発がん性、無毒性ポリマーを意味し、本質的に生物体と適合する。例としては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、例えばポリ(乳酸)もしくはPLA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)もしくはPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート(hydroxybutryate))、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(ジオキサノン)など;ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギナート、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン(glycaminoglycan)、硫酸化多糖、それらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0105】
本明細書で使用される「生分解性ポリマー」は、加水分解または可溶化によって分解されるポリマーを意味する。分解は不均一であってよく(主として粒子表面において起こる)、または均一であってもよい(ポリマーマトリックス全体を通して一様に分解される)。
【0106】
本明細書で使用される「生体試料」は、細胞、組織、器官、または生物体から、例えば、分析物を検出するために採取される生物材料である。例示的な生体試料としては、流体、細胞、または組織試料が挙げられる。生体液としては、例えば、血清、血液、血漿、唾液、尿、または汗が挙げられる。細胞試料または組織試料としては、生検試料、組織、細胞懸濁物、または他の検体および試料、例えば臨床的な試料などが挙げられる。
【0107】
本明細書で使用される、コポリマーは、2つ以上の単量体種でできているポリマーを意味する。
【0108】
本明細書で使用される、乳化剤は、ポリマーでコーティングされた結晶と溶液との間の界面張力を低下させる表面活性剤である。
【0109】
「結晶」は、物質(matter)の固体の状態の1つの形態であり、3次元で周期的に繰り返されるパターンに配置されている原子を含む(例えば、Barret, Structure of Metals, 第2版、McGraw−Hill, New York(1952年)を参照されたい)。結晶形態のポリペプチドは、例えば、第2の形態(非晶質の固体の状態)とは異なる。結晶は、形状、格子構造、溶媒百分率、および例えば屈折率などの光学的な特質を含め、特徴的な特徴を示す。
【0110】
本明細書で使用される「架橋した結晶形態のタンパク質」は、溶液に加えられたときに不溶性かつ固体の状態のままであるという特質を有する。
【0111】
「体外デバイス」は、個体の処置において、体液をプロテインAの結晶と接触させるための、体内にはない構造である。体外デバイスは、腎臓透析を含めた透析のために使用するデバイス、連続的に動静脈の血液濾過をするためのデバイス、体外膜型酸素供給器、または血流から老廃物を濾過するために使用する他のデバイスであることが好ましい。同様に、老廃物を濾過するためのデバイスの構成成分は、例えば、チューブ、多孔質材料、または膜を含めて、この用語に包含される。特に、体外デバイスは、透析デバイスであってよい。体外デバイスは透析デバイスの膜であってもよい。
【0112】
プロテインAの「機能的な断片」は、プロテインAの、抗体またはそのFAb断片に対する1つまたは複数の結合活性、例えば抗体の精製において使用される能力などを保持するプロテインAポリペプチドの部分である。本明細書で使用される、機能的な断片は、別段の指定がない限り、一方または両方の末端からの末端切断物を含んでよい。例えば、機能的な断片は、プロテインAポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシル末端から1個、2個、4個、5個、6個、8個、10個、12個、15個、または20個またはそれ以上の残基が削除されている場合がある。切断は、一方または両方の末端から20アミノ酸以下であることが好ましい。機能的な断片は、場合によって1つまたは複数の異種性の配列に連結していてもよく、またはプロテインAの元の天然の配列の任意のアミノ酸に対する変異を有し得る。
【0113】
「個体」または「被験体」という用語は、これらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、霊長類、ヒヒ、チンパンジー、サル、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを含めたようなものに分類される任意の動物を含めた、任意の哺乳動物を指す。
【0114】
不溶性かつ安定な形態のタンパク質。水性溶媒、有機溶媒または水性溶媒と有機溶媒の混合物に不溶性であり、可溶性の形態のタンパク質よりも大きな安定性を示すタンパク質の形態。本発明の代替の実施形態によると、「不溶性かつ安定な形態のタンパク質」という語句は、乾性処方物および湿性処方物において不溶性のタンパク質であってよい。いずれの実施形態でも、架橋したタンパク質の結晶は不溶性の形態で活性であってよい。
【0115】
「単離された」という用語は、その天然の環境から実質的に離れている分子を指す。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来する細胞供給源または組織供給源由来の細胞材料または他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、単離されたタンパク質が、治療用組成物として投与するために十分に純粋であるか、または少なくとも70%から80%(w/w)純粋であるか、より好ましくは、少なくとも80%から90%(w/w)純粋であるか、さらに好ましくは、90%から95%純粋であるか、最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%または100%(w/w)純粋である調製物を指す。
【0116】
本明細書で使用される、「約」という用語は、この用語によって修飾される値の最大±10%までを指す。例えば、約50mMは、50mM±5mMを指し、約4%は、4%±0.4%を指す。
【0117】
本明細書で使用される、「高分子基質」は、少なくとも600〜700ダルトンの分子量を有するタンパク質または炭水化物などの大きな生体分子を意味し、また、架橋したタンパク質の結晶のタンパク質構成物によって触媒される反応の基質でもある。
【0118】
「有機溶媒」という用語は、非水系の起源の任意の溶媒を意味する。
【0119】
本発明の架橋したタンパク質の結晶処方物のタンパク質構成物は、天然に、または合成的に修飾されていてよい。それらは、糖タンパク質であってよく、修飾されていないタンパク質であってよく、または他の修飾を含有してよい。
【0120】
本明細書で使用される「タンパク質の活性」は、結合性、触媒作用、またはそのタンパク質が使用される環境内で機能的反応を生じさせる活性(例えば免疫グロブリンの結合、免疫沈降、またはそれらの組み合わせなど)からなる群より選択される活性を意味する。
【0121】
「可溶性の形態のタンパク質」という用語は、溶液中の、結晶格子から解離した個々のタンパク質分子を意味する。
【0122】
「治療有効用量」または「治療有効量」という用語は、免疫に関連する状態、例えば、成人血小板減少性紫斑病などを予防する、その症状の発症を遅延させる、または症状を回復させる化合物の量を指す。治療有効量は、例えば、免疫グロブリン/IgGまたはそのサブクラスの濃度の上昇に関連する障害の1つまたは複数の症状を処置する、妨げる、その重症度を低下させる、その発症を遅延させる、かつ/またはそれが発生する危険性を低下させるために十分である。有効量は、当技術分野で周知の方法によって決定することができる。
【0123】
「処置」、「治療方法」という用語、およびそれらの同語族は、既存の障害の処置および/または予防/防止手段を指す。処置を必要とする個体は、特定の医学的障害をすでに有している個体、ならびに障害の危険性があるかまたは障害を有する個体、または最終的に障害を得る可能性がある個体を含んでよい。処置の必要性は、例えば、障害の発症、障害の存在または進行に関連づけられる1つまたは複数の危険因子の存在によって、または障害を有する被験体における処置を受け入れる可能性によって評価する。処置は、障害の進行を遅くすること、または反転させることを含んでよい。
【0124】
「ポリマー」という用語は、小さな、単純な化学的単位の繰り返しによって築き上げられた大きな分子を意味する。繰り返し単位は、相互に接続した網目構造を形成するために直鎖状または分岐状であってよい。繰り返し単位は、通常、単量体と等しいか、または、それとほぼ等しい。
【0125】
本明細書で使用されるポリマーキャリアは、プロテインA−CLPCを精製するため、または送達するための(生物学的送達を含む)、プロテインA−CLPCの被包に使用するポリマーを意味する。そのようなポリマーとしては、生体適合性および生分解性ポリマーが挙げられる。ポリマーキャリアは、単一のポリマー種であってよく、または、ポリマー種の混合物で構成されてよい。ポリマーキャリアとして有用なポリマーとしては、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、例えばポリ(乳酸)またはPLA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(ジオキサノン)など;ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、天然ポリペプチドおよび合成ポリペプチド、アルギナート、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、修飾されたデンプン、例えば、アミロースデンプン、アミロペクチンデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、メタクリル酸デンプン、および他のデンプンなど、ならびにタンパク質の結晶を被包する任意の従来の材料が挙げられる。
【0126】
本明細書で使用される、プロテインAは、Staphylococcus aureus株由来のポリペプチドを指す。プロテインAは、免疫グロブリンまたはそのFc断片に結合することができる、当技術分野で公知のポリペプチドのグループである。プロテインAは、分子量42,000であり、炭水化物をほとんど含有しないかまたは含有しない単一のポリペプチド鎖からなる、Staphylococcus aureusのいくつかの株によって産生される細胞壁の構成成分である。プロテインAは、6つの領域からなり、そのうち5つはIgGに結合する。プロテインAは、免疫グロブリン分子、特にIgGのFc領域に特異的に結合する。プロテインA分子は、いくつかの種のFc領域と相互作用することができる4つの高親和性(Ka=10/M)結合部位を含有する。分子は熱に安定であり、4Mの尿素、4Mのチオシアネートおよび6Mの塩酸グアニジンなどの変性試薬に曝露したとき、その天然のコンフォメーションを保持する。
【0127】
固定化されたプロテインAは、哺乳動物のいくつかの種からIgGを単離するために広範囲にわたって使用されている。しかし、プロテインAとIgGとの間の相互作用は全ての種で等しいのではない。ある1つの種の中でさえも、プロテインAは、IgGのいくつかのサブグループと相互作用するが、他のものとは相互作用しない。例えば、ヒトIgG、IgGおよびIgGは、プロテインAに強力に結合するが、一方IgGはプロテインAに結合せず、マウスIgGのプロテインAへの結合は乏しい。大多数のラット免疫グロブリンなどの、プロテインAに結合しないモノクローナル抗体の例も多くある。その可変的な結合特性にもかかわらず、プロテインAは、IgG結合特性を有し、そのためIgGの親和性精製に関して理想的である。固定化されたプロテインAの1つの分子を、IgGの少なくとも2つの分子に結合させることができる。
【0128】
G群のStreptococci由来の細胞表面タンパク質である別のタンパク質、プロテインGは、III型Fc受容体であり、プロテインAの非免疫機構と同様の非免疫機構でIgGに結合する。E.coliにおいて作製される、天然のタンパク質のアルブミン結合領域が遺伝的に欠失している組換え型のタンパク質も、IgGを精製するために使用することができる。組換え型のプロテインGは、2つのFc結合領域を含有する。
【0129】
別の抗体結合性タンパク質、プロテインLは、細菌のPeptostreptoccus magnus種の細胞表面タンパク質であり、L鎖相互作用を通じてIgに結合することが見いだされている。プロテインLは、719個のアミノ酸残基からなる。Peptostreptoccus magnusの細胞壁から精製されるプロテインLの分子量は、最初、還元剤である2−メルカプトエタノールの存在下でSDS−PAGEによって95kDと推定されたが、一方6MのグアニジンHClの存在下でゲルクロマトグラフィーによって分子量は76kDであると決定された。プロテインAおよびプロテインG(これらは、免疫グロブリン(抗体)のFc領域に結合する)とは異なり、プロテインLは、軽鎖相互作用を通じて抗体に結合する。重鎖の部分は結合相互作用に関与しないので、プロテインLは、プロテインAまたはプロテインGよりも広い範囲の抗体クラスに結合する。プロテインLは、IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDを含めた全抗体クラスの代表的なものに結合する。単鎖可変性断片(ScFv)およびFab断片もプロテインLに結合する。プロテインLの結合は、カッパ軽鎖を含有する抗体に限られている。有効な結合のための特定の要件を考慮すると、固定化されたプロテインLについての主要な適用は、腹水または細胞培養物の上清から、カッパ軽鎖を有することが公知であるモノクローナル抗体を精製することである。
【0130】
本発明は、プロテインAのアイソフォーム、およびそれらのアイソフォームのグリコフォームに対する適用性を有する。
【0131】
プロテインAを使用して、本明細書に記載の方法において使用する結晶を調製する。プロテインAは、例えば天然の供給源から単離することができ、または、天然の供給源に由来してよい。本明細書で使用される、「由来する」という用語は、供給源中に天然に存在するアミノ酸配列または核酸配列を有することを意味する。例えば、Staphylococcus aureusに由来するプロテインAは、Staphylococcus aureusのプロテインAポリペプチドの主要な配列を含むか、または、Staphylococcus aureusに見いだされる、プロテインAまたはその変性物をコードする配列を含む核酸にコードされる。供給源に由来するタンパク質または核酸は、その供給源から単離された分子、組換えによって作製された分子、および/または化学的に合成または修飾された分子を包含する。本明細書において提供される結晶は、プロテインAのアミノ酸配列を含むポリペプチド、または抗体結合領域(複数可)を保持するプロテインAの機能的な断片から形成することができる。プロテインAは、天然に存在するプロテインAに特徴的な少なくとも1つの機能的結合を保持すること、例えば、少なくとも1種の抗体に結合する能力の1つまたは複数を保持することが好ましい。
【0132】
プロテインAは以前単離されており、したがって、Newman、Cowanなどを含めたStaphylococcus aureusの多くの株から入手可能である。プロテインAは、例えば、Sigma、RepligenおよびGEなどの商業的な提供者から購入することもできる。天然の供給源からプロテインAを単離するための方法が、例えば、以下の参照文献に記載されている:「Nucleotide sequence analysis of the Gene for protein A from Staphylococcus aureus Cowan 1 (NCTC8530) and its enhanced expression in Escherichia coli.」Shuttleworth H. L.、Duggleby C. J.、Jones S. A.、Atkinson T.、Minton N. P. Gene 58巻:283〜295頁(1987年);「Structural studies on the four repetitive Fc−binding regions in protein A from Staphylococcus aureus.」 Sjoedahl J. Eur. J. Biochem.、78巻:471〜490頁(1977年)。これらの単離されたプロテインAは、結晶の形成および本明細書に記載の方法に使用することができる。
【0133】
あるいは、結晶の形成および本明細書において提供される方法に組換え型のプロテインAを使用することができる。ある場合には、組換え型のプロテインAは、天然に存在するプロテインA配列由来の配列を包含するか、またはそれにコードされる。さらに、天然に存在する配列と相同であるか、または実質的に同一であるアミノ酸配列を含むプロテインAが本明細書に記載されている。また、天然に存在するプロテインAをコードする核酸と相同であるか、または実質的に同一である核酸にコードされるプロテインAが提供され、それを本明細書に記載の通り結晶化および/または投与することができる。
【0134】
本明細書で「組換え型」として言及されるポリペプチドは、人工的な組換え方法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または制限酵素を使用してベクターにクローニングすることなどによる手順によって生成されるポリペプチドを含めた、組換えDNAの方法体系によって作製されたポリペプチドである。「組換え型」ポリペプチドは、発現における変化を有するポリペプチド、例えば、細胞、例えば宿主細胞などにおいて組換えによって改変された発現を伴う天然に存在するポリペプチドでもある。
【0135】
一実施形態では、プロテインAは、Staphylococcus aureusのプロテインAの核酸配列と相同な核酸から組み換えによって作製し、時にはそれを、例えば、異種宿主における組換え体作製を増加または最適化するために改変する。
【0136】
プロテインAの結晶を形成するために有用なプロテインAポリペプチドを、宿主細胞、例えば、プロテインAポリペプチドまたはその機能的な断片のコード配列を含む核酸構築物を含む宿主細胞において発現させることができる。プロテインAを発現させるために適した宿主細胞は、例えば、酵母、細菌、真菌、昆虫、植物、もしくは哺乳動物の細胞であり得、またはトランスジェニック植物、トランスジェニック動物または無細胞系であり得る。宿主細胞は、必要であればプロテインAポリペプチドをグリコシル化することができること、ジスルフィド結合をすることができること、プロテインAを分泌することができること、および/またはプロテインAポリペプチドの多量体化を支持することができることが好ましい。好ましい宿主細胞としては、これらに限定されないが、E.coli(E.coli Origami BおよびE.coli BL21を含む)、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Bacillus subtilis、Aspergillus、Sf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、293細胞(ヒト胎児性腎臓)、および他のヒト細胞が挙げられる。トランスジェニック植物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、およびウサギを含めたトランスジェニック動物も、プロテインAを作製するために適した宿主である。
【0137】
プロテインAの組換え体を作製するために、宿主または宿主細胞は、プロテインAまたはその機能的な断片をコードする核酸を少なくとも1つ含むプラスミド、ベクター、ファージミド、または転写カセットもしくは発現カセットの形態の構築物を含むべきである。単一コピーまたは多重コピーに維持される構築物、または宿主細胞の染色体に組み込まれるようになる構築物を含めた種々の構築物が利用可能である。組換え発現用の多くの組換え発現系、構成成分、および試薬が、例えばInvitrogen Corporation(Carlsbad、CA);U.S. Biological(Swampscott、MA);BD Biosciences Pharmingen(San Diego、CA);Novagen(Madison、WI);Stratagene(La Jolla、CA);およびDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)(Braunschweig、Germany)から市販されている。
【0138】
プロテインAの組換え発現は、場合によって、構成的プロモーターおよび/または誘導性プロモーターを含めた異種プロモーターによって調節する。例えば、T7、アルコールオキシダーゼ(AOX)プロモーター、ジヒドロキシアセトンシンターゼ(DAS)プロモーター、Gal1,10プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、銅メタロチオネイン(CUP1)プロモーター、酸性ホスファターゼプロモーター、CMVおよびポリヘドリンプロモーターなどのプロモーターも適している。特定のプロモーターを宿主または宿主細胞に基づいて選択する。さらに、例えば、メタノール、硫酸銅、ガラクトースによって、低リン酸によって、アルコール、例えば、エタノールによって誘導することができるプロモーターも使用することができ、それは当技術分野で周知である。
【0139】
プロテインAをコードする核酸は、場合によって異種配列を含んでよい。例えば、一部の実施形態では、分泌配列がプロテインAポリペプチドのN末端に含まれる。α接合因子、BGL2、酵母の酸性ホスファターゼ(PHO)、キシラナーゼ、アルファアミラーゼ由来のシグナル配列、他の酵母の分泌タンパク質由来のシグナル配列、および宿主細胞からの分泌を導くことができる他の種に由来する分泌シグナルペプチド由来のシグナル配列が有用であり得る。同様に、他の異種配列、例えばリンカー(例えば、切断部位または制限エンドヌクレアーゼ部位を含む)および1つまたは複数の発現調節エレメント、エンハンサー、タミネーター、リーダー配列、および1つまたは複数の翻訳シグナルなどは、本記載の範囲内である。これらの配列を、場合によって、構築物に含めることができ、および/またはプロテインAをコードする核酸に連結することができる。別段の指定がない限り、「連結した」配列は、互いに、直接的に、または間接的に関連し得る。
【0140】
同様に、エピトープまたはアフィニティータグ、例えばヒスチジン、HA(赤血球凝集素ペプチド)、マルトース結合性タンパク質、AviTag(登録商標)、FLAG、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどを、場合によってプロテインAポリペプチドに連結することができる。タグは、場合によって、プロテインAを作製または精製した後にプロテインAから切断することができる。当業者は、適切な異種配列、例えば、適合宿主細胞、構築物、プロモーター、および/または分泌シグナル配列を容易に選択することができる。
【0141】
プロテインAのホモログまたは改変体は、プロテインA参照配列と1つまたは複数の残基が異なる。構造的に類似したアミノ酸で、例えば、特定のアミノ酸のいくつかを置換することができる。構造的に類似したアミノ酸としては、(I、LとV)、(FとY)、(KとR)、(QとN)、(DとE)、および(GとA)が挙げられる。アミノ酸の欠失、付加、または置換も、本明細書に記載のプロテインAホモログに包含される。そのようなホモログおよび改変体は、(i)多型改変体および自然変異体または人工変異体、(ii)その1つまたは複数の残基が修飾されている、修飾されたポリペプチド、および(iii)1つまたは複数の修飾された残基を含む変異体、を含む。
【0142】
プロテインAポリペプチドまたは核酸は、それが、参照配列と少なくとも約40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である場合、「相同」である(または、「ホモログ」である)。ホモログが参照配列と同一でない場合、それは、「改変体」である。ホモログは、ホモログのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が参照配列と、約1個以下、2個、3個、4個、5個、8個、10個、20個、50個またはそれ以上の残基で異なり(例えば、切断、欠失、置換、または付加によって)、かつ、免疫グロブリン/抗体またはそのFab断片に結合する能力を保持する(または保持するポリペプチドをコードする)場合、参照プロテインA配列と「実質的に同一」である。プロテインAの断片は、改変体および/または実質的に同一の配列を含めたホモログであってよい。例として、ホモログは、種々のプロテインAの供給源に由来してよく、またはホモログは、切断、欠失、置換、または付加の変異によって参照配列から得ることができるか、またはそれに関連してよい。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の同一性の百分率は、例えば、Altschulら、J. Mol Biol、215巻:403〜410頁(1990年)に記載のBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanら、J. Mol. Biol、48巻:444〜453頁(1970年)のアルゴリズム、またはMeyersら、Comput. Appl. Biosci.4巻:11〜17頁(1988年)のアルゴリズムなどの標準のアラインメントアルゴリズムによって決定することができる。そのようなアルゴリズムは、BLASTN、BLASTP、および「BLAST 2 Sequences」プログラム(McGinnisおよびMadden、Nucleic Acids Res. 32巻:W20〜W25頁、2004年に概説されている)に組み入れられる。そのようなプログラムを利用する場合、デフォルトのパラメータを使用することができる。例えば、ヌクレオチド配列について、「BLAST 2 Sequences」に対して以下の設定を使用することができる:BLASTNプログラム、マッチに対するリワード(reward)2、ミスマッチに対するペナルティ(penalty)2、オープンギャップ(open gap)ペナルティおよびエクステンションギャップ(extension gap)ペナルティ、それぞれ5および2、ギャップx_ドロップオフ(gap x_dropoff)50、エクスペクト(expect)10、ワードサイズ(word size)11、フィルター(filter)オン。アミノ酸配列について、「BLAST 2 Sequences」に対して以下の設定を使用することができる:BLASTPプログラム、マトリックス(matrix)BLOSUM62、オープンギャップ(open gap)ペナルティおよびエクステンションギャップ(extension gap)ペナルティ、それぞれ11および1、ギャップx_ドロップオフ(gap x_dropoff)50、エクスペクト(expect)10、ワードサイズ(word size)3、フィルター(filter)オン。本明細書に記載の結晶を形成するのに適したプロテインAのアミノ酸配列および核酸配列は、相同な配列、改変配列、または実質的に同一の配列を含んでよい。
【0143】
架橋したタンパク質の結晶の調製−タンパク質の結晶化
タンパク質の結晶を、水溶液または水溶液を含有する有機溶媒からタンパク質を制御結晶化することによって成長させる。制御する条件としては、例えば、溶媒の蒸発速度、適切な共溶質および緩衝剤の存在、pHならびに温度が挙げられる。タンパク質の結晶化に影響を及ぼすさまざまな因子についての包括的な総説は、McPherson、Methods Enzymol.、114巻、112〜20頁(1985年)によって公開されている。McPhersonおよびGilliland、J. Crystal Growth、90巻、51〜59頁(1988年)に、結晶化されたタンパク質および核酸、ならびにそれらが結晶化された条件の包括的な一覧が編集されている。結晶および結晶化の方法の大要、ならびに解明されたタンパク質および核酸の構造の座標のリポジトリは、Brookhaven National LaboratoryにおけるProtein Data Bankによって維持されている[http//www.pdb.bnl.gov;Bernsteinら、J. Mol. Biol.、112巻、535〜42頁(1977年)]。これらの参考文献を使用して、適切な架橋したタンパク質の結晶を形成するための前段階として、タンパク質を結晶化するために必要な条件を決定することができ、ならびに他のタンパク質に対する結晶化戦略をガイドすることができる。あるいは、知的試行錯誤検索戦略(intelligent trial and error search strategy)により、ほとんどの場合、多くのタンパク質について、適切な結晶化の条件を提示することができ、許容できるレベルの純度を実現することができる[例えば、C.W. Carter、Jr.およびC.W. Carter、J. Biol. Chem.、254巻、12219〜23頁(1979年)を参照されたい]。
【0144】
X線回析分析のために必要な大きな単一の結晶は、本明細書に記載の方法において使用するためには必要でない。微結晶性シャワーが適している。
【0145】
例えば、架橋したタンパク質の結晶は、約0.01μmから約500μm、あるいは、0.1μmから約50μmの最長寸法を有してよい。架橋したタンパク質の結晶は、球体、針、ロッド、プレート、例えば、六角形および四角など、ひし形、正六面体、両錐体(bipryamid)ならびに角柱からなる群より選択される形状を有してもよい。
【0146】
一般に、結晶は、結晶化されるタンパク質を、適切な水性溶媒または塩もしくは有機溶媒などの適切な結晶化剤を含有する水性溶媒と組み合わせることによって作製する。溶媒をタンパク質と組み合わせ、結晶化を誘導するために適し、かつタンパク質の活性および安定性を維持するために許容できることが実験的に決定された温度で撹拌に供することができる。溶媒は、場合によって、共溶質、例えば二価カチオン、補因子またはカオトロープなど、ならびに緩衝剤種(pHを調節するため)を含んでよい。結晶化を容易にするために、共溶質の必要性およびそれらの濃度を実験的に決定する。
【0147】
工業規模のプロセスでは、バッチプロセスにおいて、タンパク質、沈殿剤、共溶質、および場合によって緩衝剤を単純に組み合わせることによって、結晶化を導く制御沈殿を行うことが最良になり得る。別の選択肢として、出発材料としてタンパク質沈殿物を使用することによってタンパク質を結晶化することができる。この場合、タンパク質沈殿物を、結晶化溶液に加え、結晶が形成するまでインキュベートする。代替の実験室用の結晶化方法、例えば透析または蒸気拡散なども採用することができる。McPherson、上記、およびGilliland、上記は、結晶化についての文献の概説において、適切な条件の包括的な一覧を含む。
【0148】
時々、架橋剤と結晶化媒質との間の不適合性により、結晶をより適切な溶媒系に交換することが必要になる場合がある。
【0149】
結晶化の条件がすでに記載されている多くのタンパク質を使用して、架橋したタンパク質の結晶を本発明に従って調製することができる。しかし、上で引用した参考文献の大部分において報告された条件は、ほとんどの場合、いくらかの大きな、回析用品質の結晶を得るために最適化されていることに留意すべきである。したがって、架橋したタンパク質の結晶の作出において使用される、より小さな結晶を大規模生産するための高収率のプロセスをもたらすために、これらの条件をある程度調整することが必要であり得ることが当業者には理解されよう。
【0150】
架橋したタンパク質の結晶の調製−タンパク質の結晶の架橋
安定化された結晶。プロテインAの結晶を適切な媒質において成長させたら、それらを、場合によって、例えば架橋によって安定化することができる。架橋により、構成物である結晶のタンパク質分子間に共有結合性の連結が導入されることによって結晶格子が安定化する。これにより、タンパク質を、結晶格子が存在することと、またはさらにインタクトなタンパク質が存在することと適合しないであろう代替の環境に移すことが可能になる。プロテインAの結晶は、例えば、リシンのアミン基、チオール(スルフヒドリル)基、および炭水化物部分を通じて架橋することができる。架橋した結晶も、本明細書において「プロテインA−CLPC」、「CLPC−プロテインA」または「CLPC」と称される。
【0151】
架橋した結晶では、安定性(例えば、pH安定性、温度安定性、機械的安定性および/または化学的安定性)、抗体結合のpHプロファイル、溶解性、結晶のサイズまたは体積の均一性、結合した抗体が結晶から放出される速度、および/または基礎となる結晶格子における個々の分子間の孔サイズおよび形状が変化し得る。
【0152】
有利に、結晶が、ゲル1mL当たりの固定化されたプロテインAと比較して、少なくとも約60%、80%、100%、150%、200%、250%、300%またはそれ以上の、結晶1mL当たりの結合能(抗体の結合)を示すプロテインAを含むように、本発明に従って架橋または安定化を行う。安定性を、可溶性のプロテインAまたは固定化されたプロテインAと比較して少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%またはそれ以上増加させることができる。安定性は、例えば、pH安定性、温度安定性、プロテアーゼに対する安定性、溶解安定性などを貯蔵条件下で測定することができ、また、in vitroでカラム安定性を測定することができる。
【0153】
一部の実施形態では、架橋により、結晶中のプロテインAポリペプチドの溶液への溶解が遅くなり、タンパク質分子が微結晶粒子に有効に固定化される。架橋したタンパク質の結晶の周囲の環境において、例えば貯蔵ではなく使用する条件下でトリガーに曝露させると、タンパク質分子はゆっくりと溶解し、活性なプロテインAポリペプチドが遊離し、かつ/またはプロテインA活性が増加する。溶解速度は、例えば、以下の因子の1つまたは複数によって調節する:架橋の度合い、タンパク質の結晶を架橋剤に曝露させる時間の長さ、架橋剤をタンパク質の結晶に添加する速度、架橋剤の性質、架橋剤の鎖長、pH、温度、スルフヒドリル(sulfahydryl)試薬の存在(システイン、グルタチオンなど)、架橋したタンパク質の結晶の表面積、架橋したタンパク質の結晶のサイズ、および架橋したタンパク質の結晶の形状。
【0154】
架橋は、多官能性作用剤を含めた多種多様な架橋剤の1つまたは組み合わせを使用して、同時に(並行して)または順々に実現することができる。周囲の環境において、または所与の期間にわたってトリガーに曝露させると、そのような多官能性架橋剤で架橋したタンパク質の結晶間の架橋が少なくなるかまたは弱まり、それによってタンパク質が溶解するか、または活性が放出される。あるいは、架橋が付着ポイントで壊れ、それによってタンパク質が溶解するか、または活性が放出される可能性がある。米国特許第5,976,529号および同第6,140,475号を参照されたい。
【0155】
一部の実施形態では、架橋剤は、少なくとも2個、3個、4個、5個、またはそれ以上の活性部分を有する多官能性架橋剤である。種々の実施形態では、作用剤は、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、オクタンジアルデヒド、グリオキサール、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、3,3’ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ジメチル3,3’−ジチオビスプロピオンイミダート・HCl、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノオクタン、エチレンジアミン、無水コハク酸、フェニルグルタル酸無水物、サリチルアルデヒド、アセトイミデート、ホルマリン、アクロレイン、コハク酸セミアルデヒド、ブチルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびトランス−オクタ−2−エナールから選択することができる。
【0156】
追加的な多官能性架橋剤としては、ハロトリアジン、例えば、塩化シアヌール;ハロピリミジン、例えば、2,4,6−トリクロロ/ブロモピリミジン;脂肪族または芳香族モノカルボン酸またはジカルボン酸の無水物またはハロゲン化物、例えば、無水マレイン酸、塩化(メタ)アクリロイル、塩化クロロアセチル;N−メチロール化合物、例えば、N−メチロールクロロアセトアミド;ジイソシアネートまたはジイソチオシアネート、例えば、フェニレン−1,4−ジ−イソシアネートおよびアジリジンが挙げられる。他の架橋剤としては、エポキシド、例えば、ジエポキシド、トリエポキシドおよびテトラエポキシドなどが挙げられる。一実施形態では、架橋剤は、二官能性作用剤であるグルタルアルデヒドであり、グルタルアルデヒドを単独で、またはエポキシドと共に、順々に使用する。他の架橋試薬(例えば、Pierce Chemical Companyの1996年カタログを参照されたい)も、下記のものなどの可逆的架橋剤と共に、同時に(並行して)または順々に使用することができる。
【0157】
本発明の代替の実施形態に従って、可逆的架橋剤を並行して、または順々に使用して架橋を行うことができる。生じた架橋したタンパク質の結晶は、反応性の多官能性リンカーを特徴とし、トリガーが、別の基として組み込まれている。反応性の官能基は、タンパク質中の反応性のアミノ酸の側鎖の連結に関与し、トリガーは、周囲の環境における1つまたは複数の条件(例えば、pH、還元剤の存在、温度、または熱力学的水活性)を変化させることによって壊すことができる結合からなる。
【0158】
架橋剤は、同種官能性(homofunctional)または異種官能性(heterofunctional)であってよい。反応性の官能基(または部分)は、例えば、以下の官能基の1つから選択することができる(R、R’、R’’およびR’’’はアルキル基、アリール基または水素基であり得る):
I.反応性のアシルドナー、例えば:カルボン酸エステルRCOOR’、アミドRCONHR’、アシルアジドRCON、カルボジイミドR−N=C=N−R’、Nヒドロキシイミドエステル、RCO−O−NR’、イミドエステルR−C=NH2(OR’)、無水物RCO−O−COR’、カーボネートRO−CO−O−R’、ウレタンRNHCONHR’、酸ハロゲン化物RCOHal(Hal=ハロゲン)、アシルヒドラジドRCONNR’R’’、およびOアシルイソ尿素RCO−O−C=NR’(−NR’’R’’’)など、
II.反応性のカルボニル基、例えば、アルデヒドRCHOおよびケトンRCOR’、アセタールRCO(H)R’、およびケタールRR’CO2R’R’’など(タンパク質の固定化および架橋の当業者に公知の官能基を含有する反応性のカルボニルは、文献に記載されている(Pierceカタログおよびハンドブック、Pierce Chemical Company、Rockford、111.(1994年);S. S. Wong、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1991年))、
III.アルキルドナーまたはアリールドナー、例えば:ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールR−Hal、アジドR−N、硫酸エステルRSOR’、リン酸エステルRPO(OR’)、アルキルオキソニウム塩RO+、スルホニウムRS+、硝酸エステルRONO、MichaelアクセプターRCR’=CR’’’COR’’、フッ化アリールArF、イソニトリルRN+=C−、ハロアミンRN−Hal、アルケン、およびアルキンなど、
IV.硫黄含有基、例えば、ジスルフィドRSSR’、スルフヒドリルRSH、およびエポキシドRC_CR’など、および
V.塩、例えば、アルキルアンモニウム塩またはアリールアンモニウム塩RN+、カルボン酸塩RCOO−、硫酸塩ROSO−、リン酸塩ROPO’’、およびアミンRNなど。
【0159】
可逆的架橋剤は、例えば、トリガーを含む。トリガーとしては、アルキル、アリール、または架橋されるタンパク質と反応し得る活性化基を持つ他の鎖が挙げられる。これらの反応性基は、とりわけ、ハロゲン化物、アルデヒド、カーボナート、ウレタン、キサンタン、およびエポキシドを含めた、求核的置き換え、フリーラジカル置き換えまたは求電子的置き換えを受けやすい基などの種々の任意の基であってよい。例えば、反応性基は、酸、塩基、フッ化物、酵素、還元、酸化、チオール、金属、光分解、ラジカル、または熱に対して不安定であり得る。
【0160】
可逆的架橋剤のさらなる例は、T. W. Green、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons(編)(1981年)に記載されている。可逆的な保護基のために使用する種々の任意の戦略を、可逆的な、制御された可溶化をすることができる架橋したタンパク質の結晶を作製するために適した架橋剤に組み込むことができる。種々の手法が、Waldmannのこの対象についての総説、Angewante Chemie Inl.編、Engl、35巻:2056頁(1996年)に列挙されている。
【0161】
他の種類の可逆的架橋剤は、ジスルフィド結合を含有する架橋剤である。そのような架橋剤によって形成される架橋を壊すトリガーは、還元剤(システインなど)を、架橋したタンパク質の結晶の環境に添加することである。例示的なジスルフィド架橋剤は、Pierceカタログおよびハンドブック(1994〜1995年)に記載されている。そのような架橋剤および方法の例は、米国特許第6,541,606号に開示されており、その関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0162】
さらに、炭水化物部分間、または炭水化物部分とアミノ酸との間を架橋させる架橋剤も使用することができる。
【0163】
架橋剤の濃度は、溶液中、w/vで約0.01%から20%、約0.02%から10%、または約0.05%から5%までであってよい。一般には、架橋剤は約0.5%w/vまたは約1%w/vである。例えば、架橋剤の濃度は、例えば、溶液中、w/vで約0.01%、0.02%、0.05%、0.075%、0.1%、0.2%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、3.5%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、または20%であってよい。架橋前に緩衝液を交換することが必要になる場合がある。CLPCを含めた結晶は、場合によって凍結乾燥すること、またはそうでなければ処方することができる。
【0164】
本明細書に記載の架橋した結晶を含めた結晶は、処置方法および例えば免疫血小板減少性紫斑病における循環免疫複合体のIgGレベルを低下させるための方法において有用である。プロテインAの結晶は、精製プロセスに関する方法においても有用である(例えば、種々の供給源からのモノクローナル抗体の精製、ポリクローナル抗体の精製、免疫グロブリン、IgGおよびそのサブタイプ、Fab断片、単鎖抗体などの精製を、カラム形式で、または膜もしくはポリマーに含浸させて、または支持体上にコーティングもしくは固定化してのいずれかで)。本明細書に記載の結晶は、上記の安定化されたプロテインAの結晶の1つまたは複数の特質に基づいて、これらの使用に適用することができる。
【0165】
プロテインAの結晶/CLPCの乾燥。プロテインAの結晶を、N、空気または不活性ガスを用いた乾燥、バキュームオーブン乾燥、凍結乾燥(lyophilization)、揮発性有機溶媒で洗浄した後、溶媒を蒸発させること、ドラフト内で蒸発させること、トレイ乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、バキューム乾燥、またはローラー乾燥を含めた乾燥手段によって水、有機溶媒または液体ポリマーを除去することによって乾燥させる。一般には、乾燥は、結晶が自由に流れる(free−flowing)粉末になったときに実現される。乾燥は、湿った結晶の上を気体の流れを通過させることによって行うことができる。気体は、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、空気またはそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。
【0166】
原理上は、乾燥した結晶は、凍結乾燥(lyophilization)によって調製することができる。しかし、この技法は、材料を急速に冷却することを伴い、凍結安定性の作製物にのみ適用することができる。一実施形態では、結晶性/CLPCプロテインAを含有する水溶液を、まず−40℃から−50℃で凍結させ、その後バキューム下で除去する。
【0167】
プロテインAの結晶/CLPC、またはそのような結晶を含む処方物もしくは組成物の作製。一態様では、プロテインAの結晶/CLPC、またはそのような結晶を含む処方物もしくは組成物が開示されている。そのような組成物は、以下のプロセスに従って調製することができる。
【0168】
まず、プロテインAを結晶化する。次に、糖、糖アルコール、増粘剤、湿潤剤または可溶化剤、緩衝塩、乳化剤、抗菌剤、抗酸化剤、およびコーティング剤から選択される賦形剤または成分を直接母液に加える。あるいは、母液を除去し、その後に結晶を賦形剤溶液に最低でも1時間から最大で24時間に至るまで、懸濁させる。賦形剤の濃度は、一般には約0.01%から約10%(w/w)である。成分の濃度は約0.01%から約90%(w/w)である。結晶の濃度は、約0.01%から約99%(w/w)である。
【0169】
次いで、濾過によって、または遠心分離によってのいずれかで、母液を結晶スラリーから除去する。その後に、結晶を、場合によって、約50%から100%(w/w)の1つまたは複数の有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールまたは酢酸エチルなどの溶液を用いて、室温で、または約−20℃から約25℃の温度においてのいずれかで洗浄する。
【0170】
次いで、結晶の上を窒素、空気、または不活性ガスの流れのいずれかを通過させることによって結晶を乾燥させる。あるいは、結晶を、風乾、噴霧乾燥、凍結乾燥(lyophilization)またはバキューム乾燥によって乾燥させる。乾燥は、最低でも洗浄した後約1時間から最大で約72時間、最終産物の含水量が約10重量%を下回るまで、最も好ましくは約5重量%を下回るまで行う。最終的に、必要であれば、結晶の微粒子化(サイズを低下させること)を実施することができる。
【0171】
本発明の一実施形態に従って、プロテインAの結晶/CLPC、またはそのような結晶を含む処方物もしくは組成物を調製する際、界面活性物質などのエンハンサーは、結晶化の間には加えない。賦形剤または成分は、結晶化の後に、約1%から約10%(w/w)の濃度で、あるいは約0.1%から約25%(w/w)の濃度で、あるいは約0.1%から約50%(w/w)の濃度で母液に加える。賦形剤または成分は、母液中で結晶と共に約0.1時間から約3時間インキュベートするか、あるいはインキュベーションを約0.1時間から約12時間行うか、あるいはインキュベーションを約0.1時間から約24時間行う。
【0172】
本発明の別の実施形態では、成分または賦形剤を母液以外の溶液に溶解させ、結晶を母液から取り出し、賦形剤または成分の溶液に懸濁させる。成分または賦形剤の濃度およびインキュベーションの時間は、上記のものと同じである。
【0173】
本発明の別の利点は、ポリマーキャリアに被包されたミクロスフェアを含有する組成物を形成しているプロテインAの結晶/CLPC、またはその処方物を、凍結乾燥(lyophilization)によって乾燥させることができることである。凍結乾燥(lyophilization)、または凍結乾燥(freeze−drying)により、組成物から水を分離することができる。プロテインA/CLPC結晶組成物をまず凍結させ、次いで、高バキューム中に置く。バキューム中で、結晶水が昇華し、緊密に結合した水のみを含有するプロテインA/CLPC結晶組成物が後に残る。そのような処理により、組成物がさらに安定化し、一般に直面する外界温度で、容易に貯蔵および輸送することが可能になる。
【0174】
噴霧乾燥により、結晶調製物から水を分離することが可能になる。噴霧乾燥は、溶液、エマルジョン、およびポンプ可能(pumpable)懸濁物としての液体フィードストックから、乾燥固体を粉末、顆粒または凝集体の形態で連続作製するために大いに適している。噴霧乾燥は、液体フィードストックを液滴の噴霧液に微粒化し、液滴を乾燥チャンバー内で熱風と接触させることを伴う。噴霧は、回転式(ホイール)アトマイザーまたはノズルアトマイザーのいずれかによって生じさせる。液滴からの湿気の蒸発および乾性粒子の形成は、制御された温度および気流条件の下で進行する。噴霧乾燥操作のためには比較的高い温度が必要である。しかし、作製物の熱損傷は、一般に、臨界乾燥期間中に蒸発による冷却効果があるので、また、その後の乾燥材料を高温に曝露する時間は非常に短くてよいので、ほんのわずかである。粉末を、乾燥チャンバーから連続的に排出する。操作条件および乾燥機の設計は、作製物の乾燥特性および粉末の規格に従って選択する。噴霧乾燥は、最終製品が、粒子サイズ分布、残渣の含水量、バルク密度および粒子の形状に関する正確な品質標準に合致しなければならない場合に理想的なプロセスである。
【0175】
本発明の方法において有用なプロテインA−CLPCは、賦形剤と組み合わせることができる。本発明によると、「賦形剤」は、薬学的組成物において使用される増量剤または増量剤の組み合わせとして働く。賦形剤の例は、American Pharmaceutical AssociationおよびPharmaceutical Society of Great Britainによって共同で公開されたHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されており、さらなる例は以下に記載されている。このカテゴリーに含まれる好ましい賦形剤は、以下のいずれかの塩である:1)アミノ酸、例えば、グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アスパラギン、グルタミン、プロリンなど、2)炭水化物、例えば単糖、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボースなど、3)二糖、例えば、ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロースなど、4)多糖、例えば、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲンなど、5)アルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトールなど、6)グルクロン酸、ガラクツロン酸、7)シクロデキストリン、例えば、メチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよび同様のものなど、8)無機分子、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ナトリウムのリン酸塩、カリウムのリン酸塩、ホウ酸、炭酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウムなど、9)有機分子、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩など、10)アラビアゴム、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、および他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、ワックス、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体のような乳化剤または可溶化剤/安定化剤、および11)寒天、アルギン酸およびその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースおよびその誘導体、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チロキサポールのような増粘試薬。賦形剤の追加の好ましい群としては、スクロース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、イノシトール、ナトリウムの塩およびカリウムの塩、例えば、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩など、グリシン、アルギニン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリリシン、ポリアルギニンが挙げられる。
【0176】
本発明の一実施形態では、賦形剤は、塩、アルコール、炭水化物、タンパク質、脂質、界面活性物質、ポリマーおよびポリアミノ酸からなる群より選択される。別の実施形態では、賦形剤は、プロタミン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、デキストラン、ポリアミノ酸、例えば、ポリアルギニン、ポリリシンおよびポリグルタミン酸、ポリエチレングリコールおよびデンドリマー、ポリカルボフィルのようなポリマー、アルギナートからなる群より選択される。
【0177】
組成物。架橋した結晶を含めたプロテインAの結晶が、組成物、例えば、薬学的組成物として提供される(例えば、タンパク質の結晶処方物および組成物について記載されている米国特許第6,541,606号を参照されたい)。プロテインAの結晶を含む薬学的組成物は、プロテインAの結晶を、これらに限定されないが、糖および生体適合性ポリマーを含めた1つまたは複数の成分または賦形剤と共に含む。
【0178】
プロテインA−CLPCは、種々の生理的に許容される塩の形態のいずれかで組成物中の結晶として、ならびに/または許容できる薬学的キャリアおよび/もしくは添加物と共に(薬学的組成物の一部として)投与することができる。生理的に許容される塩の形態および標準の薬学的処方の技法および賦形剤は当業者に周知である(例えば、Physician’s Desk Reference(PDR)2003年、第57版、Medical Economics Company、2002年;およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy編 Gennadoら、第20版、Lippincott、Williams & Wilkins、2000年を参照されたい)。本出願の目的に関して、「処方物」は、「結晶処方物」を包含する。プロテインAの結晶組成物のための他の有用な成分および賦形剤としては、以下が挙げられる。
【0179】
生体適合性ポリマー。生体適合性ポリマーは、非抗原性(アジュバントとして使用しない場合)、非発がん性、無毒性ポリマーであり、本質的に、本明細書に記載のプロテインAの結晶組成物において使用され得る、生物体と適合するポリマーである。例としては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、例えばポリ(乳酸)もしくはPLA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)もしくはPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(ジオキサノン)など;ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギナート、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、それらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0180】
生分解性ポリマー、すなわち、加水分解または可溶化によって分解されるポリマーをプロテインAの結晶組成物に含めることができる。分解は、不均一であってよく(主として粒子表面で起こる)、または均一であってもよい(ポリマーマトリックス全体を通して一様に分解される)。
【0181】
1つまたは複数の賦形剤または薬学的成分もしくは薬学的賦形剤などの成分をプロテインAの結晶組成物に含めることができる。成分は、不活性成分または活性成分であってよい。
【0182】
本発明は、一般に、供給源にかかわらず、IgGに適用可能である。本発明の目的のために好ましいIgGは、ヒトおよびマウスのIgGクラスである。目的の種から分離することができるタンパク質は、例えば、IgMおよびIgEなどの他の免疫グロブリン、ならびに、例えば、アルブミンなどの他のタンパク質である。これらのタンパク質のプロテインAに対する結合親和性は、IgGの結合親和性よりもかなり低いことが公知である。
【0183】
水性媒質に可溶性の任意の無機塩を使用することができる。例としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のハロゲン化物および硫酸塩が挙げられる。アンモニウムなどの正に荷電したイオンで金属イオンを置換することができる。塩は、免疫グロブリン、プロテインAまたはプロテインAを結合させる任意の支持体に対して非反応性でもなければならない。塩濃度は、約0.5Mから最大で溶解限度まで、好ましくは約1.0Mから約4.0Mまでの範囲である。溶液の正確なpHは重要ではなく、およそ中性から弱アルカリ性にわたって広範に変動してよい。したがって、pHはおよそ7.0以上であってよく、約8.5から約9.5までであることが好ましい。
【0184】
塩は、緩衝溶液の一部として使用することが好ましく、緩衝効果は、塩自体によって、または混合物中の別の構成成分によってのいずれかで作り出される。従来の緩衝剤を使用し、適切に選択して所望のpHを実現することができる。
【0185】
固定化するために、プロテインAを、アフィニティークロマトグラフィーカラム中の充填材料などのいかなる固体支持体も伴わずに結晶化および架橋する。
【0186】
本発明を使用してアフィニティークロマトグラフィーにおける分離を増強する場合、高塩濃度を含有する緩衝溶液で洗浄することを繰り返すことによってカラム充填材を平衡化することが好ましく、試料混合物を、カラムに加える前に同じ緩衝溶液中で希釈することも好ましい。また、希釈度は広範に変動してよいが、約1:1から約1:20までの範囲の希釈度が好ましい。緩衝溶液がカラムを通過する際に、非結合性タンパク質は緩衝溶液に保たれ、それによって結合した免疫グロブリンから分離される。次いで、免疫グロブリンの回収を、好ましくは約2.0から約5.0までの範囲のpH、より好ましくは約2.5から約4.0までの範囲のpHを有する酸性緩衝液を用いて溶出することによって実現する。
【0187】
カラムの性質は重要ではなく、オープンカラムから加圧式カラムまでにわたって、非常に様々であり得る。本発明に固有の強力な結合により、オープンカラムを使用することによって有効な分離を実現することが可能になる。
【0188】
本明細書で使用される「標的タンパク質を含有する試料」は、天然由来であろうと人工的に調製されようと、標的タンパク質を含有する任意の試料を指す。試料としては、異なる液体の混合物、液体と固体の混合物、または異なる固体の混合物が挙げられる。標的タンパク質を含有する試料の例としては、血液、血清、腹水、ミルク、組織試料、細胞培養物、細胞溶解物、または細胞培養物の上清が挙げられる。
【0189】
本明細書で使用される「支持体」は、その形態またはそれを作った材料にかかわらず、プロテインAを固定化してアフィニティークロマトグラフィー担体(medium)を得ることができる任意のものを指す。例としては、アフィニティークロマトグラフィーにおいて使用されることも多いアガロース;セルロース;およびポリアクリルアミドが挙げられる。
【0190】
本明細書で使用される「クロマトグラフィー担体」は、その立体配置(カラムまたは平面)、状態(液体または固体)、またはそれを作った材料にかかわらず、クロマトグラフィーによる精製のために使用する固定相を指す。タンパク質を精製するために使用する一般的なクロマトグラフィー担体の例としては、イオン交換レジン、アフィニティー固定相、およびゲル含浸固定相が挙げられる。
【0191】
本明細書で使用される「カップリングされた」は、直接接触していること、ならびにリンカー遺伝子またはリンカータンパク質が2種類以上の遺伝子またはタンパク質の間に配備されていることを指す。これは、共有結合または非共有結合を通じたカップリングも包含する。
【0192】
本明細書で使用される「標的タンパク質」は、精製される任意のタンパク質を指す。標的タンパク質の例は、抗体であってよい。
【0193】
「融合タンパク質」は、本明細書では、2種以上の別々のポリペプチドの任意の組み合わせを指す。融合タンパク質は、共有結合的に連結している2種以上の別々のポリペプチドの組み合わせを含む。融合タンパク質は、非共有結合的に連結している2種以上の別々のポリペプチドの組み合わせを含む。2種以上の別々のポリペプチドは、いかなる介在物質も伴わずに互いに直接接触していてよい。2種以上の別々のポリペプチドは、リンカーペプチドなどの介在物質によって媒介されていてよい。
【0194】
本明細書に開示されている方法では、プロテインAと抗体などの標的タンパク質との間の高い結合特異性を使用する。
【0195】
ある実施形態では、方法は、標的タンパク質を含有する試料を、結晶性の架橋したプロテインAを固定化した支持体と接触させる工程であって、標的タンパク質が抗体であり、プロテインA−CLPCが抗体に対して特異的な結合親和性を有し、プロテインAが抗体に結合する条件下で接触させる工程と、結合していない試料の構成成分を除去する工程と、次いで、支持体から標的タンパク質/抗体を取り出す工程とを含む。一部の実施形態では、試料は、標的タンパク質を含有する細胞溶解物、細胞培養物、細胞培養物の上清、または生体液である。一部の実施形態では、架橋したプロテインAを固定化した支持体をアフィニティークロマトグラフィーカラムとして構成する。
【0196】
本明細書に開示されているタンパク質を精製するための方法およびカラムでは、使い捨てカラムを使用することができる。使い捨てカラムは、約0.1から約1.0mm、約0.3から約0.7mm、または約0.5mmの直径を有してよい。カラムは、約16×125mmのガラス試験管内に置くことができる。ある実施形態では、0.5mmの直径を有する使い捨てカラムを16×125mmのガラス試験管内に置く。クロマトグラフィー担体、例えば、プロテインA−CLPCは、当技術分野で公知の任意の方法に従ってカラム中に充填することができる。使い捨てカラムを使用するある実施形態では、カラムに、十分な容積の脱気した緩衝液/水を加えてレザバー(広口)部分まで満たし、次いで、いかなる気泡もカラムから排除する。その後、ゲル(プロテインA−CLPC)を、脱気した50%のゲルスラリー、および脱気した緩衝溶液(または水)を用いて室温でカラム中に充填することができる。十分な体積の脱気したゲルスラリーを加えて、所望の安定したゲル体積を得ることができる。少なくとも30分間、ゲルをカラム中で落ち着かせる場合がある。充填カラムは、4℃で貯蔵し、使用することができる。
【0197】
支持体から標的タンパク質を取り出す工程は、支持体から標的タンパク質を溶出させることを含んでよい。標的タンパク質の溶出は、プロテインA−CLPCと抗体との間の結合親和性を低減させるpHにおいて溶出させ、これによって支持体(プロテインA−CLPC)から標的タンパク質/抗体を取り出すことによって行うことができる。
【0198】
本発明のプロセスの第1の工程は、約pH7.0からpH10の範囲のpHおよび約0.01Mから2Mの濃度の一価の陽イオンと多塩基性陰イオンの組み合わせを有する緩衝液を必要とする。任意の緩衝剤を使用して、所望のpHをもたらすことができる。例えば、リン酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤またはトリス緩衝剤を使用することができる。緩衝剤の濃度は、約0.01Mから0.25Mの範囲内であるべきである。さらに、NaCl、KCl、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)、塩化テトラプロピルアンモニウムおよび塩化テトラブチルアンモニウムなどの塩を、約0.05Mから2.0Mの濃度範囲で緩衝液に加えることができる。
【0199】
一価の陽イオンがカリウムイオンまたはナトリウムイオンであり、多塩基性陰イオンがリン酸イオンである場合、カリウムイオンおよびリン酸イオンは、リン酸カリウムをリン酸三カリウムKPO、リン酸水素二カリウムKHPOまたはリン酸二水素カリウムKHPOのいずれかの形態で使用することによってもたらすことができる(媒質のpHによって存在する種々のリン酸イオンの割合が調節されるため)。カリウムイオンおよびリン酸イオンは、約0.6Mから1.75Mの範囲の濃度で存在するべきである。約1.0Mから1.5Mの濃度が特に申し分のないことが見いだされている。
【0200】
本発明で使用される高濃度において適切な溶解性を有する一価の陽イオンと多塩基性陰イオンの他の組み合わせとしては、約1.0Mから1.5Mの濃度のリン酸アンモニウム、約1.0Mから1.5Mの濃度の硫酸アンモニウムおよび約1.0Mから1.25Mの濃度の硫酸ナトリウムが挙げられる。他の組み合わせも、使用される濃度で塩が沈殿しない限りは同様に使用することができる。
【0201】
上で指摘した通り、吸着剤(プロテインA−CLEC)は、カラム中に使用して精製される免疫グロブリンとの接触を容易にすることが好ましい。不純な免疫グロブリンを含有する媒質をカラムに適用する前に、プロテインA−CLECを含有するカラムを、数ベッド体積の、約0.01Mから4Mの範囲の濃度の一価の陽イオンと多塩基性陰イオンの組み合わせを含有する緩衝液を用いて平衡化する。これにより、環境が、免疫グロブリンがカラムに結合するために最適であること、が確実になる。免疫血清などの精製される免疫グロブリンを含有する媒質または免疫グロブリンの他の供給源を、一価の陽イオンと多塩基性陰イオンの組み合わせを含有する緩衝液と混合する。次いで、生じた混合物をカラムに適用し、それによって免疫グロブリンをカラムに吸着させる。次いで、カラムからカラムに強力に吸着していない不純物を溶出させるために、一価の陽イオンと多塩基性陰イオンの組み合わせを含有する追加的な緩衝液でカラムを洗浄する。他方では、一価の陽イオンと多塩基性陰イオンの組み合わせを含有する緩衝液が存在することの結果として、吸着剤の免疫グロブリンに対する親和性が増強しているので、免疫グロブリンはカラムに強力に吸着する。同じ緩衝溶液で洗浄することによって、望ましくない不純物を除去した後、酸性のpH、すなわち約pH2.0からpH6.0の範囲のpHを有する緩衝液によって、精製された免疫グロブリンをカラムから溶出させる。pH6.0において、免疫グロブリンの一部、主にIgG画分が溶出する。pHを低下させるにつれて、IgG2a画分およびIgG2b画分を含めた、残りの免疫グロブリンが溶出する。免疫グロブリンは、全ての免疫グロブリンを溶出させるために有効なpH2.0の緩衝液を使用して溶出させることができる。しかし、所望であれば、pH6.0において免疫グロブリンの一部を溶出させることができる。それが所望であれば、pHをpH6.0からpH2.0に低減させることによって種々の他の画分を溶出させることができる。工程においてpHを低減させることによって、特定の免疫グロブリンを所望の通り含有する免疫グロブリンの精製された画分を単離することが可能である。任意の緩衝液を溶出のために使用することができる。例えば、酢酸−酢酸塩緩衝液またはグリシン、HCl緩衝液をこの目的ために使用することができる。約0.01Mから0.25Mの範囲の濃度の緩衝液を使用することができる。緩衝液の濃度は約0.1Mから0.2Mが特に好ましい。
【0202】
免疫グロブリンまたはその画分は、例えばアガロースなどの支持体に結合させた固定化されたプロテインAと比較して、プロテインA−CLECの短いカラムに結合させることができる。単離された免疫グロブリンまたはその画分を、90パーセント(90%)もの収率で回収することができる。さらに、以前から利用可能な最も洗練された技法を使用して得られた結合を、2%から10%も改善することができる。
【0203】
ある特定の実施形態では、一次回収試料を、アフィニティークロマトグラフィーに供して目的の抗体をHCPから離してさらに精製する。ある特定の実施形態では、クロマトグラフィーの材料を、目的の抗体に選択的に、または特異的に結合させることができる。そのようなクロマトグラフィーの材料の非限定的な例としては、プロテインA、プロテインG、プロテインLが挙げられる。特定の実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーの工程は、一次回収試料を、適切なプロテインAレジンを含むカラムに供することを伴う。プロテインAレジンは、種々の抗体のアイソタイプ、特にIgG、IgG、およびIgGを親和性精製し、単離するために有用である。
【0204】
プロテインA−CLPCを充填した適切なカラムの非限定的な例は、直径約1.0cm×長さ約21.6cmのカラム(ベッド体積約17mL)である。このサイズのカラムは、小規模の精製のために使用することができ、スケールアップために使用する他のカラムと比較することができる。例えば、ベッド体積が約6.6Lの20cm×21cmのカラムを、より大規模な精製のために使用することができる。カラムにかかわらず、プロテインA−CLPCを使用してカラムを充填することができる。
【0205】
ある特定の実施形態では、精製を特定の目的の抗体に合わせるために、プロテインAレジンの動的結合能(DBC)を同定することが有利になる。例えば、これに限定するものではないが、プロテインA−CLPCカラムのDBCを、単一流速ロードまたは二重流速ロード戦略のいずれかによって決定することができる。単一流速ロードは、全体のロード期間全体を通して1時間当たり約300cmの速度で評価することができる。二重の流速ロード戦略は、レジン1mL当たりタンパク質約35mgまでを、1時間当たり約300cmの線速度でカラムにロードし、次いで線速度を半分に低下させて、ロードの最後の部分がより長い時間滞留できるようにすることによって決定することができる。
【0206】
ある特定の実施形態では、試料をロードする前に、適切な緩衝液を用いてプロテインAカラムを平衡化することができる。適切な緩衝液の非限定的な例は、PBS緩衝液またはトリス/NaCl緩衝液、pH約7.2〜7.4である。適切な平衡化の条件の非限定的な例は、PBS緩衝液、pH7.4または25mMのトリス、100mMのNaCl、pH約7.2である。この平衡化の後、試料をカラムにロードすることができる。カラムにロードした後、例えば、平衡化緩衝液を使用してカラムを1回または複数回、洗浄することができる。異なる緩衝液を使用する洗浄を含めた他の洗浄を、カラム溶出の前に使用することができる。例えば、カラムを、1つまたは複数のカラム体積の20mMのクエン酸/クエン酸ナトリウム、0.5MのNaCl、pH約6.0を使用して洗浄することができる。場合によって、この洗浄の後に、平衡化緩衝液を使用する1回または複数回の洗浄を続けることができる。次いで、適切な溶出緩衝液を用いてプロテインAカラムからの溶出を行うことができる。適切な溶出緩衝液の非限定的な例は、酢酸/NaCl緩衝液、pH約3.5である。適切な条件は、例えば、0.1Mの酢酸、pH約3.5または0.2Mのグリシン、HCl緩衝液、pH2.0である。溶出は、当業者に周知の技法を使用してモニターすることができる。例えば、OD280における吸光度に従ってよい。カラム溶出液を、約0.5AUの最初の偏向から開始して、溶出ピークの立下り(trailing edge)における読み取り約0.5AUまで採取することができる。次いで、目的の溶出画分(複数可)をさらに処理するために調製することができる。例えば、採取した試料は、pH約10のトリス(例えば、1.0M)を使用してpH約5.0に調整(titrate)することができる。場合によって、この調整した試料を選別し、さらに処理することができる。
【0207】
本発明は、例えば、精製または免疫沈降の間に血液、血漿、血清、細胞培養物から免疫グロブリンを取り出すことを含めた、種々の適用において使用するために適したタンパク質を含浸させた材料およびそれを作製し、使用する方法を提供する。そのようなタンパク質を含浸させた膜は、治療への適用、診断への適用および他の工業への適用においても使用することができる。
【0208】
ある実施形態では、本発明は、架橋したタンパク質の結晶を含浸させた膜を含む。架橋したタンパク質は、種々の適切なタンパク質からできた任意の適切な架橋したタンパク質を含んでよい。ある実施形態では、架橋したタンパク質は、血清、血漿、血液、細胞培養物から抗体などを取り出すことができるタンパク質、例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL、同様のタンパク質またはそれらの組み合わせなどを含んでよい。架橋したタンパク質の結晶は、本明細書に記載のプロテインA−CLPCであることが好ましい。
【0209】
ある実施形態では、本発明は、架橋したタンパク質の結晶、好ましくはプロテインA−CLPCを、単独で、またはプロテインGまたはプロテインLなどの他の架橋したタンパク質の結晶と組み合わせて含浸させたポリマーの膜を含む。プロテインA−CLPC含浸膜を使用することにより、例えば、1)いくらの浸出もなく、プロテインAが良好に封じ込められること、2)カートリッジ/カラムのサイズが低下し、それによって使いやすさが増すこと、3)カートリッジ/カラム製造中の使いやすさ、および4)既存のシステムよりも安全性が増すこと(プロテインAがカートリッジに良好に封じ込められることによって)を含めた、現在利用可能な固定化技術を超えるいくつもの利益がもたらされると考えられる。
【0210】
本発明の架橋したタンパク質を含浸させた膜は、種々の適切なやり方で作出することができる。一般に、まず、ポリマーベースの膜キャスティング溶液を調製し、次いで、所望の量および種類の架橋したタンパク質の結晶と混合する。膜キャスティング溶液は、任意の適切なポリマーベースの材料から作出することができることが理解されるべきである。形成し、架橋したタンパク質を混合したら、膜キャスティング溶液を、例えば、支持材料上に広げることによって支持材料に適用し、1回または複数回の沈殿および洗浄シーケンスに供して、後で使用する前に乾燥させることができる複合膜を形成する。
【0211】
ある実施形態では、キャスティング溶液は、例えば、1−メチル−2−ピロリジノン(「NMP」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、同様のもの、またはそれらの組み合わせを含めた任意の適切な溶媒中のポリウレタンなどのポリマー基材で構成される。キャスティング溶液は、追加的な他の構成成分、例えば、充填剤、親水化剤(hydrophilic agent)(例えば、膜にさらなる親水性を与えることができる作用剤)、同様のもの、またはそれらの組み合わせなども含んでよい。ある実施形態では、充填剤は、酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭素、同様のもの、またはそれらの組み合わせを含んでよい。十分な量の充填剤を加えて膜の多孔度を調節することができる。充填剤は、最大で膜の総乾燥重量の約80%まで、好ましくは膜の総乾燥重量の約50%の量で加えることができる。ある実施形態では、充填剤および架橋したタンパク質の結晶は、等量または少なくともおよそ等量で加える。
【0212】
ある実施形態では、親水化剤はポリビニルピロリドン(「PVP」)、同様のもの、またはそれらの組み合わせである。親水化剤は、膜の親水性を増強するために任意の適切な量を加えることができる。
【0213】
次いで、キャスティング溶液を、適量の架橋したプロテインAと混合する。ある実施形態では、架橋したプロテインA−CLPCを、所望のレベルの結合活性をもたらすために有効な量で膜に加える。ある実施形態では、膜に、約3.25mg/cm以下の架橋したタンパク質を含浸させる。この点について、架橋したタンパク質の結晶は、合計で膜の重量の約80%以下になってよい。
【0214】
次いで、得られた膜溶液を、合成メッシュ材料などの支持体に適用し、水または他の適切な媒質、例えば、イソプロピルアルコールと水の混合物、好ましくは50:50の比率のイソプロピルアルコール(「IPA」)対水に浸漬させる。次いで、ポリマー膜複合材料を適切な条件下で沈澱させることができる。例えば、水沈殿の間に適量のNMPを加えて沈殿の速度を調節することができる。この点について、沈殿の速度を減少させ、したがって、より多孔質の膜のポリマーマトリックスをもたらすことができる。
【0215】
本発明のプロテインA−CLPCは、例えば、プロテインA−CLPCを患者に送達するための体外デバイスまたはカテーテルを通じて投与することができる。カテーテル、例えば、尿道カテーテルは、プロテインA−CLPC結晶を含有する組成物でコーティングすることができる。
【0216】
以下の実施例により、本発明の例示的な実施形態が提供される。当業者は、本発明の精神または範囲を変化させることなく実施することができる多数の改変および変形を理解するであろう。そのような改変および変形は、本発明の範囲に包含される。実施例は、決して本発明を限定しない。
【実施例】
【0217】
実施例1
諸言
抗体を精製するための革新的なプロテインAクロマトグラフィーシステムを開発するために、プロテインAの架橋した結晶(CLPC)を作製した。プロテインAのCLPCにより、高い安定性および耐化学性と併せて高度に濃縮されたプロテインA活性という利点が提供される。濃縮したプロテインAの濃度により、カラムサイズ、緩衝液の容積およびプロセスの時間が縮小する。さらに、プロテインAの結晶の架橋により、クロマトグラフィーの間にプロテインAが浸出することが防がれる。全体として、これにより、抗体を作成する時間および費用が低下する。
【0218】
本明細書における実施例には、組換え型のプロテインAの結晶化(懸滴およびバッチの両方における)および架橋について記載されている。
【0219】
目的
抗体を精製するための架橋したプロテインA結晶を開発すること。
【0220】
機器および材料
・組換え型のプロテインA、Repligen Corporation、カタログ番号rPA50。
・組換え型のプロテインA、Fitzgerald International、カタログ番号30−AP75。
・Amicon Ultra−4遠心濾過ユニット、Millipore、カタログ番号UFC801008。
・Nalgene MF75 Series Disposable Sterilization Filterユニット、0.2ミクロン、Fisher Scientific、カタログ番号09−740−36K。
・pH導電率計、Denver Instrument、モデル220。
・シリコン処理した円形カバースライド:Hampton Research、カタログ番号HR3−233。
・VDXTMプレート、Hampton Research、カタログ番号HR3−140。
・8453紫外可視分光光度計、Agilent Technologies。
・硫酸アンモニウム、Fisher Scientific、カタログ番号BP212R−1。
・塩酸溶液、Fisher Scientifics、カタログ番号A481−212。
・カコジル酸ナトリウム三水和物、Sigma−Aldrich、カタログ番号C0250。
・塩化ナトリウム、Fisher Scientific、カタログ番号S271−3。
・トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Trizma Base)、Sigma−Aldrich、カタログ番号T−4661。
・DI(逆浸透&脱イオン)HO。
・Crystal Screen Kit、Hampton Research、カタログ番号HR2−110。
・Crystal Screen 2 Kit、Hampton Research、カタログ番号HR2−112。
・JBScreen Classic1、Jena Bioscience、カタログ番号CS−101L。
・JBScreen Classic2、Jena Bioscience、カタログ番号CS−102L。
・JBScreen Classic3、Jena Bioscience、カタログ番号CS−103L。
・JBScreen Classic4、Jena Bioscience、カタログ番号CS−104L。
・Wizard I ランダムスパースマトリックス結晶化スクリーニング、Emerald BioSystems。
・Wizard II ランダムスパースマトリックス結晶化スクリーニング、Emerald BioSystems。
【0221】
手順
組換え型のプロテインAの結晶化を、懸滴蒸気拡散結晶化法を用いて行った。プロテインAの結晶を、1mlのバッチサイズにスケールアップし、架橋した。
【0222】
溶液の調製
3.5Mの硫酸アンモニウム
硫酸アンモニウム46.2gを100mlのDI HOに溶解させ、溶液を滅菌濾過した。
【0223】
1Mのカコジル酸ナトリウム、pH6.5
カコジル酸ナトリウム21.4gを80mlのDI HOに溶解させた。濃HCl溶液を用いてpHを6.5に調整した。次いで、DI HOを用いて緩衝溶液を100mlに調整し、0.2ミクロンのNalgene Filterユニットを用いて滅菌濾過した。
【0224】
5Mの塩化ナトリウム
塩化ナトリウム29.2gを100mlのDI HOに溶解させ、溶液を滅菌濾過した。
【0225】
Wizard II結晶化スクリーニングの社内処方4
3.5Mの硫酸アンモニウム2.86mlを、1Mのカコジル酸ナトリウム0.5ml、pH6.5、5Mの塩化ナトリウム0.2mlおよび1.44mlの濾過したDI HOと混合することによってWizard IIスクリーニングキットの社内処方♯4を調製した。
【0226】
10mMのトリス−HCl緩衝液、pH7
Trizma Base12.11gを80mlのDI HOに溶解させた。濃HCl溶液を用いてpHを7に調整した。DI HOを用いて緩衝液を100mlに調整し、滅菌濾過した。次いで、1Mのトリス−HCl緩衝液を濾過したDI HOで100倍に希釈した。
【0227】
懸滴におけるプロテインAの結晶化
最初の結晶化スクリーニングを、Fitzgerald Internationalからの組換え型のプロテインAを、DI HO中50.6mg/mlで用いて実施した。Hampton Researchからの懸滴蒸気拡散結晶化法を使用して(参考文献を参照されたい)、プロテインA試料を室温で、24ウェルプレート中、1:1のタンパク質/試薬比で、以下の8つの異なるスクリーニングキットを用いてスクリーニングした:JBScreen Classic1、JBScreen Classic2、JBScreen Classic3、JBScreen Classic4、Wizard I、Wizard II、Hampton Crystal ScreenおよびHampton Crystal Screen2。加えて、120mg/mlに濃縮したプロテインA試料を用いて、Amicon遠心濾過ユニットで結晶スクリーニングを実施した(タンパク質の濃度は、280nmにおける分光測定によって決定した)。
【0228】
バッチにおけるプロテインAの結晶化
バッチにおいて、Fitzgerald Internationalからの組換え型のプロテインAを用いて、最初の懸滴結晶化スクリーニングにおいて結晶を作製した条件の1つ(すなわち、2Mの硫酸アンモニウム、0.1Mのカコジル酸緩衝液、pH6.5および0.2MのNaClを含有するWizard IIマトリックス結晶化スクリーニングの処方♯4)を用いてプロテインAの結晶化をセットアップした。FitzgeraldのプロテインA試料を、「懸滴におけるプロテインAの結晶化」の節に記載の通り120mg/mlまで濃縮し、30μlのマイクロバッチにおいて、上記の結晶化試薬を用いて結晶スクリーニングを実施した。バッチを、6日から15日間、ひっくり返さずに室温でインキュベートした。バッチ結晶をまた、Repligen Corporationからの組換え型のプロテインAを用いて同じ結晶化の条件下で調製した。次いで、プロテインAの結晶化を、Repligenの組換え型のプロテインA(53mg/mlまたは120mg/mlのいずれか)およびWizard II結晶化スクリーニングの社内処方♯4を使用して0.5mlのバッチにスケールアップした。バッチを室温で6日間インキュベートした。同様にRepligenのプロテインAを53mg/mlで用いてプロテインAの結晶を1mlバッチにスケールアップした。プロテインA試料を、Wizard II結晶化スクリーニングの社内処方♯4と混合した。試料を、室温で、ひっくり返しながら4週間インキュベートした。
【0229】
プロテインAの結晶の架橋
15mg/mlのプロテインAの結晶を含有する試料500μl(Wizard IIスクリーニングキットの処方♯4中スラリー50%)を、20μlのグルタルアルデヒド25%を用いて架橋した(最終的なグルタルアルデヒド濃度は1%であった)。試料をすぐに5秒間ボルテックスし、室温で20分間、撹拌せずにインキュベートした。インキュベートした後、1mlのWizard II結晶化スクリーニングの処方♯4を試料に加え(最終的なグルタルアルデヒド濃度は、0.33%であった)、複合体を5秒間ボルテックスした。次いで、試料を室温で1時間、撹拌せずにインキュベートした。架橋した後、プロテインA試料をpH7、10mMのトリス−HCl緩衝液1mlで3回洗浄し(遠心分離を4,500rpmで5分間行った)、プロテインAの架橋した結晶(CLPC)をpH7、10mMのトリス−HCl緩衝液1mlに再懸濁させた。
【0230】
結果
プロテインAの懸滴結晶
懸滴結晶化法を使用して、Fitzgerald InternationalからのプロテインAの結晶を、50.6mg/mlまたは120mg/mlのいずれかのタンパク質試料、およびWizard II結晶化スクリーニングの処方♯4を用いて作製した(図1)。同様に、Wizard I結晶化スクリーニングの処方♯8(クエン酸緩衝液中2Mの硫酸アンモニウム、pH5.5)を用いて、ならびに以下のWizard II結晶化スクリーニングの処方を用いても結晶を作製した:♯31(1Mのクエン酸ナトリウム、0.1Mのトリス−HCl緩衝液、pH7、0.2MのNaCl)、♯35(0.1Mの酢酸緩衝液中0.8MのNaHPO/1.2MのKPO、pH4.5)および♯41(2Mの硫酸アンモニウム、トリス−HCl緩衝液、pH7、0.2Mの硫酸リチウム)、データは示していない。すべての条件において、結晶サイズは約5ミクロンで、なめらかな立方形(soft cubic shape)であった。
【0231】
プロテインAのバッチ結晶
図2に示されている通り、Repligen Corporationからの組換え型のプロテインAを、1mlバッチにおいて、Wizard II結晶化スクリーニングの処方♯4を用いて結晶化した。バッチにおける結晶化により、立方形の結晶および針状の結晶の両方が作製された。立方形の結晶のサイズは約10ミクロンであり、一方針状のサイズは、それよりも小さかった。同様の結晶が、Repligen CorporationおよびFitzgerald Internationalの両方からのプロテインAを用いた30μlのバッチにおいて、およびRepligenのプロテインAを用いた500μlのバッチにおいて得られた。
【0232】
架橋したプロテインA結晶
Repligen CorporationからのプロテインAの結晶を、架橋剤であるグルタルアルデヒドを用いて架橋した。プロテインAの結晶を架橋したことによって結晶の形態またはサイズは変化しなかった(図3)。
【0233】
参考文献
−Crystal Growth 101 Literature、Hanging Drop Vapor Diffusion Crystallization(2001年)、Hampton Research Corporation。
【0234】
実施例2
浸出:架橋したプロテインA結晶のpH制御溶解性
pHを7.5から2.0まで減少させた後に、種々の架橋したプロテインA結晶の溶解性を検査する。架橋した結晶を、50mMのグリシンHCl(pH2.0)中、1mg/mlでインキュベートする。37℃で撹拌しながら5時間インキュベートした後、一定分量を取り出す。溶解していない架橋した結晶を2000rpmで遠心分離することによって分離し、上清を、0.22μmのフィルターを通して濾過した後、可溶性タンパク質の濃度をOD280nmにおいて測定する。
【0235】
実施例3
目的
この実験の目的は、ヒトIgGを使用して、架橋したプロテインAの結晶の結合能を決定することであった。
【0236】
機器および材料
機器:
卓上遠心分離機:Eppendorf遠心分離機5415D
Eppendorfチューブ、1ml
バキュームポンプ
Whatman濾紙ディスク:25mmカタログ番号1825025
天秤:Mettler Toledo AG285
コニカルフラスコ。
【0237】
材料:
架橋したプロテインA結晶:社内製
ヒトIgG:ICN Biomedical,Inc.カタログ番号64145
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)錠剤:Sigmaカタログ番号P−4417
グリシン:Fluka♯50046
0.1NのNaOH:Acrosカタログ番号12419−0010。
【0238】
手順
緩衝液の調製
リン酸緩衝生理食塩水(PBS):
錠剤1つを蒸留水200mlに溶解させてリン酸緩衝生理食塩水を得た。
【0239】
0.2Mのグリシン、pH2.0:
グリシン7.5gを水90mlに溶解させた。1NのHClを用いてpHを2.0に調整した。DI水を使用して容積を100mlにした。その後にpHを確認し、必要であれば再度2.0に調整した。
【0240】
実験手順:
本実験で使用した架橋したプロテインAの結晶(CLPC)は、10mMのトリス、pH7.0中にあった。50μlのCLPCを遠心分離して、上清を除去した。抗体を結合させるために、ペレットをPBSに再懸濁させ、PBSで3回洗浄して、PBS中でCLPCを平衡化した。
【0241】
反応チューブにおいて、PBS中50μlのCLPCに、100μl容積中2mgのIgGを加えた。チューブの内容物を穏やかに混合し、室温で30分間インキュベートした。チューブを4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(通過画分)を取り出し、分析のために別にとっておいた。
【0242】
ペレットを100μlのPBSに再懸濁させ、4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(洗液)を取り出し、分析のために別にとっておいた。この工程をさらに2回繰り返して合計で3回洗浄した。この3つのPBS洗液(100μl×3)を1つのチューブ内にプールし、洗液の容積を合計300μlにした。
【0243】
ペレットをpH2.0、0.2Mのグリシン83μlに再懸濁させた。再懸濁物を穏やかに混合し、10分間インキュベートした。再懸濁物を4500rpmで5分間遠心分離し、上清(溶出液)を分析のために別にとっておいた。この工程をさらに2回繰り返し、3つのグリシン溶出液を1つのチューブ内にプールした(溶出液の容積の合計は249μlであった)。
【0244】
3回目の溶出後、ペレットを250μlの0.1NのNaOHに再懸濁させて0.2Mのグリシン、pH2.0で溶出しなかったあらゆる残りのタンパク質を溶出させた。再懸濁物を15分間インキュベートし、4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(NaOH再生液)を分析のためにとっておいた。
【0245】
280nmにおいて、通過画分、洗液、溶出液およびNaOH再生液の吸光度を読み取った。
【0246】
次いで、この実験で使用したプロテインAの量を決定するために、CLPCペレットを100μlのPBSに再懸濁させて乾燥重量秤量を実施した。
【0247】
Whatman濾紙ディスクを秤量し、重量を記録した。濾紙をバキュームに取り付けたコニカルフラスコ上に置いた。
【0248】
バキュームをオンにしている間、PBS中100μlのCLPCを濾紙に加えて、フラスコ中に液体を排出した。CLPCを、水で5回洗浄した。濾紙をしばらくの間バキュームに放置して乾燥させ、次いで、乾燥器内に一晩置いた。
【0249】
次の日に濾紙を秤量し、この実験で使用したCLPCの量をミリグラムの単位で算出した。
【0250】
結果
架橋したプロテインAの結晶の結合能を、CLPC1グラム当たりに結合し、溶出されたヒトIgGの量として算出した。実験の各工程におけるIgGの濃度が、以下の表1に示されている。
【0251】
【表1】

次式を使用して、CLPCおよびCLPCから溶出したヒトIgGの乾燥重量から結合能を算出した:
【0252】
【化1】

このデータは、下の表2に要約されている。
【0253】
【表2】

結論
これらの実験から、結合能は架橋したプロテインAの結晶1グラム当たり2406.38mgのヒトIgGであると算出された。
【0254】
実施例4
目的
この実験の目的は、ヒトIgGを使用して、架橋したプロテインAの結晶の結合能を決定することであった。
【0255】
機器および材料
機器:
卓上遠心分離機:Eppendorf遠心分離機5415D
Eppendorfチューブ、1ml
バキュームポンプ
Whatman濾紙ディスク:25mmカタログ番号1825025
天秤:Mettler Toledo AG285
コニカルフラスコ。
【0256】
材料:
架橋したプロテインA結晶:社内製
ヒトIgG:ICN Biomedical,Inc.カタログ番号64145
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)錠剤:Sigmaカタログ番号P−4417
グリシン:Fluka♯50046
0.1NのNaOH:Acrosカタログ番号12419−0010。
【0257】
手順
緩衝液の調製
リン酸緩衝生理食塩水(PBS):
錠剤を1つ蒸留水200mlに溶解させてリン酸緩衝生理食塩水を得た。
【0258】
0.2Mのグリシン、pH2.0:
グリシン7.5gを水90mlに溶解させた。1NのHClを用いてpHを2.0に調整した。DI水を使用して容積を100mlにした。その後にpHを確認し、必要であれば再度2.0に調整した。
【0259】
実験手順:
本実験で使用した架橋したプロテインA結晶(CLPC)は、10mMのトリス、pH7.0中にあった。50μlのCLPCを遠心分離して、上清を除去した。抗体を結合させるために、ペレットをPBSに再懸濁させ、PBSで3回洗浄して、PBS中でCLPCを平衡化した。
【0260】
反応チューブにおいて、PBS中50μlのCLPCに、100μl容積中2mgのIgGを加えた。チューブの内容物を穏やかに混合し、室温で30分間インキュベートした。チューブを4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(通過画分)を取り出し、分析のために別にとっておいた。
【0261】
ペレットを100μlのPBSに再懸濁させ、4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(洗液)を取り出し、分析のために別にとっておいた。この工程をさらに2回繰り返して合計で3回洗浄した。
【0262】
この3つのPBS洗液(100μl×3)を1つのチューブ内にプールし、洗液の容積を合計300μlにした。
【0263】
ペレットを、pH2.0、0.2Mのグリシン83μlに再懸濁させた。再懸濁物を穏やかに混合し、10分間インキュベートした。再懸濁物を4500rpmで5分間遠心分離し、上清(溶出液)を分析のために別にとっておいた。この工程をさらに2回繰り返し、3つのグリシン溶出液を1つのチューブ内にプールした(溶出液の容積の合計は249μlであった)。
【0264】
3回目の溶出後、ペレットを250μlの0.1NのNaOHに再懸濁させて、0.2Mのグリシン、pH2.0で溶出しなかったあらゆる残りのタンパク質を溶出させた。再懸濁物を15分間インキュベートし、4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(NaOH再生液)を分析のためにとっておいた。
【0265】
280nmにおいて、通過画分、洗液、溶出液およびNaOH再生液の吸光度を読み取った。
【0266】
次いで、この実験で使用したプロテインAの量を決定するために、CLPCペレットを100μlのPBSに再懸濁させて乾燥重量秤量を実施した。
【0267】
Whatman濾紙ディスクを秤量し、重量を記録した。濾紙をバキュームに取り付けたコニカルフラスコ上に置いた。
【0268】
バキュームをオンにしている間、PBS中100μlのCLPCを濾紙に加えて、フラスコ中に液体を排出した。CLPCを、水で5回洗浄した。濾紙をしばらくの間バキュームに放置して乾燥させ、次いで、乾燥器内に一晩置いた。
【0269】
次の日に濾紙を秤量し、この実験で使用したCLPCの量をミリグラムの単位で算出した。
【0270】
結果
架橋したプロテインAの結晶の結合能を、CLPC1グラム当たりに結合し、溶出されたヒトIgGの量として算出した。実験の各工程におけるIgGの濃度が、以下の表3に示されている。
【0271】
【表3】

次式を使用して、CLPCおよびCLPCから溶出したヒトIgGの乾燥重量から結合能を算出した:
【0272】
【化2】

このデータは、下の表4に要約されている。
【0273】
【表4】

結論
これらの実験から、平均結合能は、架橋したプロテインAの結晶1グラム当たり219.86mgのヒトIgGであると算出された。
【0274】
実施例5
目的
この実験の目的は、ヒトIgGを使用して、架橋したプロテインAの結晶の結合能を決定することであった。
【0275】
機器および材料
機器:
卓上遠心分離機:Eppendorf遠心分離機5415D
Eppendorfチューブ、1ml
バキュームポンプ
Whatman濾紙ディスク:25mmカタログ番号1825025
天秤:Mettler Toledo AG285
コニカルフラスコ。
【0276】
材料:
架橋したプロテインA結晶:社内製
ヒトIgG:ICN Biomedical,Inc.カタログ番号64145
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)錠剤:Sigmaカタログ番号P−4417
グリシン:Fluka♯50046
0.1NのNaOH:Acrosカタログ番号12419−0010。
【0277】
手順
緩衝液の調製
リン酸緩衝生理食塩水(PBS):
錠剤を1つ蒸留水200mlに溶解させてリン酸緩衝生理食塩水を得た。
【0278】
0.2Mのグリシン、pH2.0:
グリシン7.5gを水90mlに溶解させた。1NのHClを用いてpHを2.0に調整した。DI水を使用して容積を100mlにした。その後にpHを確認し、必要であれば再度2.0に調整した。
【0279】
実験手順:
本実験で使用した架橋したプロテインAの結晶(CLPC)は、10mMのトリス、pH7.0中にあった。50μlのCLPCを遠心分離して上清を除去した。抗体を結合させるために、ペレットをPBSに再懸濁させ、PBSで3回洗浄して、PBS中でCLPCを平衡化した。
【0280】
反応チューブにおいて、PBS中50μlのCLPCに、100μl容積中2mgのIgGを加えた。チューブの内容物を穏やかに混合し、室温で30分間インキュベートした。チューブを4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(通過画分)を取り出し、分析のために別にとっておいた。
【0281】
ペレットを100μlのPBSに再懸濁させ、4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(洗液)を取り出し、分析のために別にとっておいた。この工程をさらに2回繰り返して合計で3回洗浄した。
【0282】
この3つのPBS洗液(100μl×3)を1つのチューブ内にプールし、洗液の容積を合計300μlにした。
【0283】
ペレットを、pH2.0、0.2Mのグリシン83μlに再懸濁させた。再懸濁物を穏やかに混合し、10分間インキュベートした。再懸濁物を4500rpmで5分間遠心分離し、上清(溶出液)を分析のために別にとっておいた。この工程をさらに2回繰り返し、3つのグリシン溶出液を1つのチューブ内にプールした(溶出液の容積の合計は249μlであった)。
【0284】
3回目の溶出後、ペレットを250μlの0.1NのNaOHに再懸濁させて、0.2Mのグリシン、pH2.0で溶出しなかったあらゆる残りのタンパク質を溶出させた。再懸濁物を15分間インキュベートし、4500rpmで5分間、遠心分離した。上清(NaOH再生液)を分析のためにとっておいた。
【0285】
280nmにおいて、通過画分、洗液、溶出液およびNaOH再生液の吸光度を読み取った。
【0286】
次いで、この実験で使用したプロテインAの量を決定するために、CLPCペレットを100μlのPBSに再懸濁させて乾燥重量秤量を実施した。
【0287】
Whatman濾紙ディスクを秤量し、重量を記録した。濾紙をバキュームに取り付けたコニカルフラスコ上に置いた。
【0288】
バキュームをオンにしている間、PBS中100μlのCLPCを濾紙に加えて、フラスコ中に液体を排出した。CLPCを、水で5回洗浄した。濾紙をしばらくの間バキュームに放置して乾燥させ、次いで、乾燥器内に一晩置いた。
【0289】
次の日に濾紙を秤量し、この実験で使用したCLPCの量をミリグラムの単位で算出した。
【0290】
結果
架橋したプロテインAの結晶の結合能を、CLPC1グラム当たりに結合し、溶出されたヒトIgGの量として算出した。実験の各工程におけるIgGの濃度が、以下の表5に示されている。
【0291】
【表5】

次式を使用して、CLPCおよびCLPCから溶出したヒトIgGの乾燥重量から結合能を算出した:
【0292】
【化3】

このデータは、下の表6に要約されている。
【0293】
【表6】

結論
これらの実験から、結合能は、架橋したプロテインAの結晶1グラム当たり1076.4mgのヒトIgGであると算出された。
【0294】
実施例6
この実施例では、バッチおよびカラムの両方におけるプロテインAのCLPCのヒト免疫グロブリンG(IgG)結合能の決定について記載されている。
【0295】
機器および材料
5415C遠心分離機:Eppendorf International,Inc.
Ultrafree(登録商標)−MC遠心濾過ユニット:Durapore(登録商標)PVDF0.2μm、Millipore
ガラスマイクロファイバーフィルター:Whatman、Schleicher&Schuell、カタログ番号1825−025
空のSep−Pak(登録商標)Vacカラム:Waters Corporation
pH伝導率計:Denver Instrument、Model 220
8453紫外可視分光光度計:Agilent Technologies
プロテインAの架橋した結晶:Altusが所有者である技術を使用して作製した
DI(逆浸透&脱イオン)H
塩酸溶液、1N保証:Fisher Scientific、カタログ番号SA48−1
水酸化ナトリウム溶液N/2、0.5N:Fisher Scientific、カタログ番号SS270−1
水酸化ナトリウム溶液、1N保証:Fisher Scientifics、カタログ番号SS266−1
リン酸緩衝生理食塩水の錠剤:Sigma−Aldrich、カタログ番号P−4417
無水クエン酸:Fisher Scientific、カタログ番号A940−1
グリシン:Fisher Scientific、カタログ番号G48−500
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Trizma Base):Sigma−Aldrich、カタログ番号T−4661。
【0296】
手順
溶液の調製
リン酸緩衝生理食塩水溶液
Sigma−Aldrichからのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)錠剤1つを200mlのDI HOに溶解させて、以下のPBS溶液を調製した:0.01Mのリン酸緩衝液、2.7mMのKCl、137mMのNaCl、pH7.4。
【0297】
1Mのトリス−HCl緩衝液、pH8.5
12.11gのTrizma Baseを80mlのDI HOに溶解させた。1NのHCl溶液を用いてpHを8.5に調整し、DI HOを用いて溶液を100mlに調整した。
【0298】
0.2Mのグリシン緩衝液、pH2
グリシン1.5gを80mlのDI HOに溶解させた。1NのHCl溶液を用いてpHを2に調整し、DI HOを用いて溶液を100mlに調整した。
【0299】
0.1Mのクエン酸緩衝液、pH3
無水クエン酸1.9gを80mlのDI HOに溶解させた。1NのNaOH溶液を用いてpHを3に調整し、DI HOを用いて溶液を100mlに調整した。
【0300】
0.1NのNaOH溶液
0.5NのNaOH溶液100mlを400mlのDI HOで希釈した。
【0301】
プロテインAのCLPCのヒトIgG結合能
カラムにおけるIgG結合能の決定
空のWaters Sep−Pak(登録商標)Vacカラムに、プロテインAのCLPCを充填した(ベッド容積はプロテインAのCLPCを伴っておよそ500μlであった)。
【0302】
カラムを、5mlのPBSを用いて平衡化し、ICN BiomedicalsからのヒトIgGを2000mg、PBS中20mg/mlの濃度でロードした。
【0303】
通過画分を10mlの一定分量で採取し、タンパク質の濃度を280nmにおける分光測定によって決定した。
【0304】
次いで、カラムを5mlのPBSで洗浄し、1ml画分を採取した。
【0305】
ヒトIgGを、pH2、0.2Mのグリシン緩衝液5mlを用いて溶出し、グリシン溶出液を1mlの一定分量で採取し、280nmにおける分光測定によってタンパク質の濃度についてアッセイした。各溶出画分を、pH8.5、1Mのトリス−HCl緩衝液100μlを用いて生理的pHに調整した。
【0306】
グリシン溶出の後、カラムを、pH3、0.1Mのクエン酸/NaOH緩衝液5mlを用いて再生させ、上記緩衝液をカラムから溶出した後に採取した。
【0307】
最終的に、カラムから、0.1MのNaOH溶液3mlを用いて汚れを落とした。1mlの画分を採取し、カラムを5mlのPBSで洗浄した。
【0308】
A280分光光度アッセイ後、通過画分、ならびにPBS洗液画分およびNAOH洗液画分を別々にプールした。
【0309】
結果
架橋したプロテインAの結晶の結合能を、CLPC1グラム当たりに結合し、溶出されたヒトIgGの量として算出した。実験の各工程におけるIgGの濃度が、以下の表7に示されている。
【0310】
【表7】

次式を使用して、CLPCおよびCLPCから溶出したヒトIgGの乾燥重量から結合能を算出した:
【0311】
【化4】

このデータは、下の表8に要約されている。
【0312】
【表8】

結論
これらの実験から、結合能は、架橋したプロテインAの結晶1グラム当たり192.86mgのヒトIgG、または150.2mg/ml(プロテインAカラム)であると算出された。
【0313】
いくつもの本発明の実施形態が記載されている。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0314】
実験番号7
本実験では、プロテインA−CLPCの結合能に対する処理後効果を評価する。プロテインA−CLPC含浸膜を、特定の種類の溶媒中のポリウレタンを用いて膜キャスティング溶液を形成する工程と、プロテインA−CLPCをキャスティング溶液に加える工程と、含浸膜複合材料を適切な媒質に沈殿させる工程と、場合によって、使用する前に乾燥させることによって複合材料を処理する工程とによって作出する。試験含浸膜のそれぞれについて、特定の処理条件、例えば、膜キャスティング溶媒の種類、例えばDMF、プロテインA−CLPCの量、沈殿槽の媒質(50/50のIPA/水)および処理後の状態(全く乾燥されず湿っている)などを同定し、試験する。プロテインA−CLPCの結合能を、試験含浸膜のそれぞれについて試験する。
【0315】
実験番号8
本実験では、2つの群、すなわちA群およびB群の試験含浸膜を作出する。A群の膜(例えば、A1〜A2)はNMP溶媒中のポリウレタンから作出する。B群の膜(例えば、B1〜B2)はDMF溶媒中のポリウレタンから作出する。含浸膜は、直径が約1インチである。試験含浸膜のそれぞれについて、特定の処理条件、例えば、膜キャスティング溶媒の種類、例えばDMFまたはNMP、プロテインA−CLPCの量、沈殿槽の媒質(50/50のIPA/水、または水単独)および処理後の状態(全く乾燥されず湿っているか、または40%のグリセロールで乾燥された)、ガンマ線への曝露(15から40kGy)などを同定し、試験する。形成されたら、各群からの1つの膜をある特定の線量のガンマ線に曝露させる。各群の他の膜は、ガンマ線に曝露しない対照として使用する。次いで、それぞれの膜の抗体結合能を、抗体試験溶液を用いて試験する。その結果により、プロテインA−CLPCについて、有機溶媒およびガンマ線への曝露に対して結合能および安定性が保持されることがもたらされる。
【0316】
配列:
Staphylococcus aureusからのプロテインAのcDNA配列が下に示されている(GenBankアクセッション番号:X61307)(配列番号1)。
【0317】
【数1】

【0318】
【数2】

Staphylococcus aureusからの翻訳されたプロテインAタンパク質配列が下に示されている(GenBankアクセッション番号:CAA43604)(配列番号2)。
【0319】
【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態のプロテインAを含む組成物。
【請求項2】
架橋した結晶形態のプロテインAを含む組成物。
【請求項3】
免疫グロブリンを精製する方法であって、該免疫グロブリンを、請求項1または請求項2に記載の組成物を用いて接触させる工程を含む、方法。
【請求項4】
前記免疫グロブリンが抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が治療用抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫グロブリンがFab断片である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫グロブリンがFc断片である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫グロブリンが単鎖抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫グロブリンがキメラ抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫グロブリンが完全ヒト抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリンがヒト化抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫グロブリンがIgGクラスに属している、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
グルタルアルデヒドによって架橋しているものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1または2に記載の組成物を含むキット。
【請求項16】
結晶形態および/または架橋した結晶形態のプロテインAの使用について記載されている使用説明書を含有するものである、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
請求項1または2に記載の組成物を含有するカラム。
【請求項18】
前記結晶は、固定化された形態のプロテインAよりも活性(結合能)が高い、請求項2に記載の組成物。
【請求項19】
前記結晶は、約pH2から約pH12において活性(結合能)があり、かつ安定である、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
前記結晶は、固定化されたプロテインAと比較して0.0%のタンパク質浸出を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
予め充填されたカラムにおいてカラム材料として使用されるものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項22】
膜において使用される(含浸させられる)ものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項23】
体外デバイスにおいて使用されるものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項24】
免疫グロブリンを精製するためのプロセスであって、
(a)免疫グロブリンを含有する媒質を、約pH7.0からpH10の範囲のpHを有し、かつ陽イオンと陰イオンの組み合わせを含有する緩衝溶液と混合して、緩衝免疫グロブリン媒質をもたらす工程と、
(b)該緩衝免疫グロブリン媒質を固定化されたプロテインA(プロテインA−CLPC:プロテインA分子を結晶化して架橋することによってプロテインAが固定化されている)吸着剤と接触させて、該緩衝免疫グロブリン媒質中に存在する該免疫グロブリンを該固定化されたプロテインA吸着剤に吸着させる工程と、
(c)該免疫グロブリンが吸着したプロテインA−CLPC吸着剤を該緩衝溶液で洗浄する工程と、
(d)該免疫グロブリンが吸着したプロテインA−CLPC吸着剤を、約pH2からpH6の範囲のpHを有する緩衝溶液と接触させて、該吸着した免疫グロブリンを該プロテインA−CLPC吸着剤から取り出す工程と、
(e)該取り出された免疫グロブリンを実質的に純粋な形態で回収する工程と
を含む、プロセス。
【請求項25】
前記緩衝免疫グロブリン媒質を前記プロテインA−CLPC吸着剤と接触させる工程が、該プロテインA−CLPC吸着剤のカラム中で実現される、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記免疫グロブリンを含有する媒質が、正常な哺乳動物の血清である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
前記免疫グロブリンを含有する媒質が、免疫哺乳動物の血清である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項28】
前記媒質が哺乳動物の血漿である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項29】
前記媒質が哺乳動物の腹水である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項30】
前記媒質がハイブリドーマから得られる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項31】
前記媒質が組織培養液である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項32】
前記媒質が細胞培養液である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項33】
前記媒質が哺乳動物の細胞培養液である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項34】
前記媒質が細菌の細胞培養液である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項35】
前記媒質がトランスジェニック供給源の液体である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項36】
前記媒質が免疫グロブリンを含有する植物抽出物である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項37】
前記媒質が酵母培養液である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項38】
懸滴蒸気拡散結晶化法またはバッチ結晶化法を使用して結晶形態のプロテインAを作出する方法であって、
(a)脱イオン水中のプロテインAを、1:1のタンパク質対試薬比の状態にする工程であって、該試薬は、2Mの硫酸アンモニウム、0.1Mのカコジル酸緩衝液、pH6.5および0.2MのNaClを含有する組成物;クエン酸緩衝液中2Mの硫酸アンモニウム、pH5.5を含有する組成物;1Mのクエン酸ナトリウム、0.1Mのトリス−HCl緩衝液、pH7、および0.2MのNaClを含有する組成物;0.1Mの酢酸緩衝液中0.8MのNaHPO/1.2MのKPC、pH4.5を含有する組成物;ならびに2Mの硫酸アンモニウム、トリス−HCl緩衝液、pH7および0.2Mの硫酸リチウムを含有する組成物からなる群より選択される、工程と、
(b)結晶の形成が起こるまでインキュベートする工程と
を含む、方法。
【請求項39】
工程(a)におけるプロテインAの濃度が、脱イオン水中約50.6mg/mlまたは約120mg/mlのプロテインAである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
架橋した結晶形態のプロテインAを作出する方法であって、結晶形態のプロテインAをグルタルアルデヒドと混合する工程を含む、方法。
【請求項41】
前記グルタルアルデヒドの最終濃度が約1%である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
精製しようとする物質を請求項1または2に記載の組成物と接触させる工程を含む、精製の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−504621(P2013−504621A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529818(P2012−529818)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/048664
【国際公開番号】WO2011/034822
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512067090)アルシア テクノロジーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】