説明

プロテクターの取付位置の修正方法

【課題】 流動床ボイラの過熱器及び再熱器の管を保護するプロテクターの取付位置の修正を容易に、短時間で、安い費用で行う。
【解決手段】 流動床ボイラ1の内部に設けられた過熱器4及び再熱器7の管6、9に取り付けられて、管6、9を保護するプロテクター10の取付位置の修正方法であって、取付位置のずれが生じたプロテクター10を、修正手段を遠隔から操作して元の位置に戻して固定する。修正手段は、取付位置のずれが生じたプロテクター10を、過熱器4及び再熱器7の管6、9上を移動させて元の位置に戻す移動手段21と、元の位置に戻したプロテクター10の表面、及びプロテクター10を固定する固定側の部材の表面を研磨する研磨手段27と、元の位置に戻したプロテクター10を固定側の部材に固定する溶接手段31と、プロテクター10の画像を取得して表示する撮像手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクターの取付位置の修正方法に関し、特に、火力発電設備の加圧流動床ボイラの内部に設けられた過熱器及び再熱器の管の外面に取り付けられ、管の磨耗を防止するプロテクターの取付位置の修正に有効なプロテクターの取付位置の修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧流動床ボイラを用いた火力発電設備の一例が非特許文献1に記載されている。この加圧流動床ボイラは、石炭と石灰石と水とを混合させたペースト状の燃料を用い、この燃料を火炉の内部に投入して燃焼させることにより蒸気を発生させ、この蒸気で蒸気タービン(高圧タービン、中圧タービン、及び低圧タービン)を駆動させるとともに、火炉からの排ガスでガスタービンを駆動させるように構成したものである。
【0003】
上記のような構成の加圧流動床ボイラにあっては、火炉の内部に過熱器及び再熱器が設けられ、過熱器で生成された過熱蒸気は、蒸気タービンの高圧タービンに送られて高圧タービンを駆動させ、この過熱蒸気は、高圧タービンで仕事をした後に再熱器に戻され、再熱器で再度加熱されて過熱蒸気とされた後に中圧タービン及び低圧タービンに送られ、中圧タービン及び低圧タービンを駆動させている。
【0004】
ところで、上記のような構成の加圧流動床ボイラにあっては、火炉の内部において流動媒体(燃料、燃料を燃焼させることによって生じた灰等)が流動し、この流動媒体が過熱器及び再熱器の管に衝突することにより、管の外面が磨耗し、減肉する問題が生じる。
【0005】
このため、過熱器及び再熱器の管の外面に半管状、管状等のプロテクターを取り付け、このプロテクターによって管の外面を保護することにより、管の外面が流動媒体で磨耗し、減肉するのを防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−189602号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】中国電力ホームページ、加圧流動床複合発電方式(PFBC)、[online]、[平成23年3月3日検索]、インターネット<URL:http://www.energia.co.jp/energy/general/thermal/thermal7.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような構成のプロテクターにあっては、加圧流動床ボイラの運転中に熱膨張することにより、過熱器及び再熱器の管の外面との間の隙間が大きくなり、この状態で流動媒体が衝突することにより、プロテクターが本来の取付位置からずれてしまう。このため、過熱器及び再熱器の管の外面が露出し、この露出した部分に流動媒体が衝突することにより、管の外面が磨耗、減肉する問題が生じる。
【0009】
このような問題に対処するため、加圧流動床ボイラの運転を停止させ、過熱器及び再熱器の管の一部を切断して過熱器及び再熱器を吊り上げ、対象のプロテクターを元の位置に戻して、磨耗し、減肉した管の外面を保護する作業が必要になり、その作業に多大な労力、時間、及び費用がかかることになる。
【0010】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、過熱器及び再熱器の管の外面に取り付けられたプロテクターの位置を修正する作業を、容易に、短時間で、かつ安い費用で行うことができるプロテクターの取付位置の修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、流動床ボイラの内部に設けられた過熱器及び再熱器の管に取り付けられて、該管を保護するプロテクターの取付位置の修正方法であって、取付位置のずれが生じたプロテクターを、修正手段を遠隔から操作して元の位置に戻して固定することを特徴とする。
【0012】
本発明によるプロテクターの取付位置の修正方法によれば、取付位置のずれが生じたプロテクターを、修正手段を遠隔から操作して元の位置に戻して固定することができる。従って、プロテクターを元の位置に戻す作業を、容易に、短時間で、安い費用で行うことができる。
【0013】
また、本発明において、前記修正手段は、取付位置のずれが生じた前記プロテクターを、前記過熱器及び再熱器の管上を移動させて元の位置に戻す移動手段と、元の位置に戻した前記プロテクターの表面、及び該プロテクターを固定する固定側の部材の表面を研磨する研磨手段と、元の位置に戻した前記プロテクターを前記固定側の部材に溶接する溶接手段と、前記プロテクターの画像を取得して表示する撮像手段とを備えていることとしてもよい。
【0014】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、取付位置のずれが生じたプロテクターを、移動手段によって過熱器及び再熱器の管上を移動させて元の位置に戻し、元の位置に戻したプロテクターの表面、及びプロテクターを固定する固定側の部材の表面を研磨手段で研磨し、元の位置に戻したプロテクターを固定側の部材に溶接手段により溶接することにより、取付位置のずれが生じたプロテクターを元の位置に戻し、その位置に固定することができる。そして、これらの作業を撮像手段により取得して表示したプロテクターの画像を目視しながら行うことができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記過熱器及び前記再熱器は、前記流動床ボイラの内部に吊り下げられた状態に設けられ、前記過熱器及び前記再熱器の上方から、前記移動手段、前記研磨手段、前記溶接手段、及び前記撮像手段を操作することとしてもよい。
【0016】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、流動床ボイラの内部に吊り下げられた状態に設けられている過熱器及び再熱器の上方から、移動手段、研磨手段、溶接手段、及び撮像手段を操作することができるので、取付位置のずれが生じたプロテクターの位置を修正する場合に、過熱器及び再熱器の管の複数箇所を切断して、過熱器及び再熱器を吊り上げる必要はなく、取付位置のずれが生じたプロテクターの取付位置を修正する作業を容易に、短時間で、安い費用で行うことができる。
【0017】
さらに、本発明において、前記撮像手段は、支持部材によって支持されたカメラと、該カメラを介して取得した画像を表示するモニターとからなり、前記カメラを、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入することにより、前記プロテクターの画像を取得して表示することとしてもよい。
【0018】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、カメラを、過熱器及び再熱器の管間の隙間を利用して過熱器及び再熱器の内部に挿入し、支持部材を操作してカメラの位置を調整することにより、カメラを介して取付位置のずれが生じたプロテクターの画像を取得することができ、この取得した画像をモニターに表示することができる。従って、モニターを過熱器及び再熱器の上方に配置することにより、過熱器及び再熱器の上方に配置したモニターの表示を目視しながら、移動手段、研磨手段、及び溶接手段を操作することができる。
【0019】
さらに、本発明において、前記移動手段は、振動工具と、該振動工具に取り付けられた振動部材とからなり、前記振動部材を、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して、前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入し、該振動部材を前記プロテクターに接触させることにより、前記プロテクターを前記管上を移動させることとしてもよい。
【0020】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、振動部材を、過熱器及び再熱器の管間の隙間を利用して過熱器及び再熱器の内部に挿入して、取付位置のずれが生じたプロテクターに接触させ、この状態で、振動工具を作動させて振動部材を振動させることにより、振動部材の振動をプロテクターに伝達させることができ、プロテクターを管上を移動させることができる。また、振動部材の振動をプロテクターに伝達させることにより、プロテクターの表面、固定側の部材の表面、及び管の表面に固着している灰等の異物を除去することができる。
【0021】
さらに、本発明において、前記振動部材は、先端がL形状に屈曲されていることとしてもよい。
【0022】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、振動部材は、先端がL形状に屈曲されているので、過熱器及び再熱器の隣接する管間の隙間を利用して過熱器及び再熱器の内部に挿入した振動部材を、振動工具を介して振動部材の向きを調整することにより、振動部材のL形状に屈曲された先端をプロテクターの端部に斜め上方から接触させることができ、プロテクターを管上を固定側部材の方向に移動させることができる。
【0023】
さらに、本発明において、前記研磨手段は、支持部材と、該支持部材によって支持された研磨工具とからなり、前記研磨工具を、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して、前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入し、該研磨工具を前記プロテクターと前記固定側の部材との溶接面に接触させることにより、前記プロテクターと前記固定側の部材との溶接面を研磨することとしてもよい。
【0024】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、研磨工具を、過熱器及び再熱器の管間の隙間を利用して過熱器及び再熱器の内部に挿入し、支持部材を操作することによって研磨工具の位置を調整して、研磨工具をプロテクターと固定側の部材との溶接面に接触させるにより、プロテクターと固定側の部材との溶接面を研磨することができる。
【0025】
さらに、本発明において、前記溶接手段は、支持部材によって支持された溶接棒と、支持部材によって支持された溶接トーチとからなり、前記溶接棒及び前記溶接トーチを、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して、前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入し、前記溶接棒を前記プロテクターの溶接部に配置し、前記溶接トーチを前記溶接棒に接触させることにより、前記プロテクターを前記固定側の部材に溶接することとしてもよい。
【0026】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、溶接棒及び溶接トーチを、過熱器及び再熱器の管間の隙間を利用して過熱器及び再熱器の内部に挿入する。そして、支持部材を操作して溶接棒をプロテクターの溶接部に配置し、支持部材を操作して溶接トーチを溶接棒に接触させる。そして、溶接棒と両プロテクターとの間にアークを生じさせることにより、プロテクターを固定側の部材に溶接することができる。
【0027】
さらに、本発明において、前記プロテクターは、筒状に形成されるとともに、前記溶接棒は、前記プロテクターの半周を囲むように、円弧状に形成されていることとしてもよい。
【0028】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、プロテクターは筒状に形成され、溶接棒はプロテクターの半周を囲むように円弧状に形成されているので、プロテクターの半周を固定側の部材に溶接することができる。
【0029】
さらに、本発明において、前記固定側の部材は、前記過熱器及び前記再熱器の管に取り付けられるとともに、前記管を支持する支持管に固定されたプロテクターであることとしてもよい。
【0030】
本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、取付位置のずれが生じたプロテクターは、そのプロテクターに隣接する支持管に固定されたプロテクターに固定されることになる。
【発明の効果】
【0031】
以上、説明したように、本発明のプロテクターの取付位置の修正方法によれば、流動床ボイラの内部に設けられた過熱器及び再熱器の管に取り付けられたプロテクターのうち、取付位置のずれが生じたプロテクターを、遠隔から修正手段を操作して、元の位置に戻して固定することができる。従って、過熱器及び再熱器の管の複数箇所を切断して、過熱器及び再熱器を吊り上げて作業を行う必要はなく、取付位置のずれが生じたプロテクターを元の位置に戻して固定する作業を容易に、短時間で、安い費用で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるプロテクターの取付位置の修正方法が適用される加圧流動床ボイラを示した概略図である。
【図2】加圧流動床ボイラの過熱器及び再熱器の断面図である。
【図3】図2の過熱器及び再熱器の側面図である。
【図4】過熱器及び再熱器の管の外面に取り付けられたプロテクターを示した説明図であって、プロテクターが本来の取付位置からずれた状態を示した説明図である。
【図5】取付位置のずれが生じたプロテクターを元の位置に戻した状態を示した説明図である。
【図6】本発明によるプロテクターの取付位置の修正方法の一実施の形態を示した概略図であって、移動手段によりプロテクターを移動させている状態を示した説明図である。
【図7】研磨手段によりプロテクターと固定側の部材との溶接面を研磨している状態を示した説明図である。
【図8】溶接手段によりプロテクターを固定側の部材に溶接している状態を示した説明図である。
【図9】図6の部分拡大説明図である。
【図10】図6の部分拡大説明図である。
【図11】図7の部分拡大説明図である。
【図12】図8の部分拡大説明図である。
【図13】図8の部分拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図13には、本発明によるプロテクターの取付位置の修正方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態のプロテクターの取付位置の修正方法は、火力発電設備の加圧流動床ボイラの火炉の内部に設けられた過熱器及び再熱器の管を保護するプロテクターの取付位置の修正に有効なものである。
【0034】
火力発電設備の加圧流動床ボイラ1は、例えば、図1に示すように、圧力容器2の内部に火炉3が設けられ、火炉3の内部に過熱器4及び再熱器7が設けられ、火炉3の内部に石炭と石灰石と水とを混合させたペースト状の燃料を投入し、この燃料を火炉3の底部から上方に向けて噴出させた空気によって流動状態にして燃焼させることにより蒸気を生成するものである。
【0035】
加圧流動床ボイラ1の過熱器4で生成された主蒸気(過熱蒸気)は、蒸気タービンの高圧タービン13に送られ、高圧タービン13を駆動させた後に再熱器7に戻され、再熱器7で再度加熱されて再熱蒸気(過熱蒸気)とされた後に、蒸気タービンの中圧タービン14及び低圧タービン15に送られ、中圧タービン14及び低圧タービン15を駆動させる。また、火炉3の内部で燃料を燃焼させることによって発生した高温、高圧の排ガスは、ガスタービンに送られてガスタービンを駆動させる。
【0036】
過熱器4及び再熱器7は、例えば、図2及び図3に示すように、管6、9が縦方向に複数段(本実施の形態では32段)に配置されるように、1本の管6、9をジグザグに折り曲げてパネル状に形成した管パネル5、8を、過熱器4の管パネル5と再熱器7の管パネル8とが火炉3の内部に交互に配置されるように、横並びに複数枚(本実施の形態では48枚)配置したものであって、各管パネル5、8は、火炉3の内部に支持管11によって吊り下げられた状態に支持されている。
【0037】
過熱器4及び再熱器7の管6、9の外面の複数箇所には、図4に示すように、過熱器4及び再熱器7よりも硬度の高い材料(ステンレス鋼等)からなる管状のプロテクター10(10a、10b)が取り付けられ、これらのプロテクター10(10a、10b)によって管6、9の外面が覆われ、管6、9の外面が流動媒体によって磨耗、減肉するのが防止される。
【0038】
本実施の形態においては、各管パネル5、8の各段の管6、9の外面の複数箇所にプロテクター10(10a、10b)が溶接等の手段によって取り付けられ、各段の複数のプロテクター10(10a、10b)のうち、支持管11に対応する部分に取り付けられる固定側の部材としてのプロテクター10bは管6、9にボルトを介して固定されている。
【0039】
各管パネル5、8の各段の管6、9の外面に取り付けられる各プロテクター10(10a、10b)は、加圧流動床ボイラ1の運転中に、火炉3の内部が燃料を燃焼させることによって高温になることにより熱膨張し、各プロテクター10(10a、10b)の内面と管6、9の外面との間に隙間が形成される。
【0040】
このような隙間が形成された状態で、火炉3の内部を流動する流動媒体(燃料、燃料を燃焼させることによって生じた灰等)がプロテクター10(10a、10b)に衝突すると、図4に矢印で示すように、プロテクター10(10a、10b)のうち、支持管11に支持されていないプロテクター10aが流動媒体の流れによる衝突及び管6、9の振動で管6、9上を移動し、プロテクター10aが本来の取付位置からずれてしまう。このため、プロテクター10aで保護すべき管6、9の外面が露出し、この露出した管6、9の部分に流動媒体が衝突することにより、その部分が磨耗、減肉する問題が生じる。これを防止すべく、図5に示すように、ずれが生じたプロテクター10aを元の位置に戻して、管6、9の磨耗、減肉部6a、9aをプロテクター10aで覆う作業が必要になり、この作業に本実施の形態のプロテクターの取付位置の修正方法を用いる。なお、プロテクター10bは、管6、9にボルトを介して固定されているので、ずれが生じることはない。
【0041】
本実施の形態のプロテクターの取付位置の修正方法は、取付位置のずれが生じたプロテクター10aを、修正手段を遠隔から操作して元の位置に戻して固定する方法である。修正手段は、例えば、取付位置のずれが生じたプロテクタ10a(以下、対象のプロテクター10aとする。)を管6、9上をプロテクター10b(以下、固定側のプロテクター10bとする。)の方向に移動させる移動手段24と、対象のプロテクター10aの表面、及び固定側のプロテクター10bの表面を研磨する研磨手段27と、対象のプロテクター10aを固定側のプロテクター10bに溶接する溶接手段31と、対象のプロテクター10aの画像を取得して表示する撮像手段20とを備えている。
【0042】
撮像手段20は、例えば、図6に示すように、棒状の支持部材22の先端に取り付けられたCCDカメラ等のカメラ21と、カメラ21によって取得した対象のプロテクター10aの画像を表示するモニター23とから構成されている。
【0043】
撮像手段20によって対象のプロテクター10aの画像を取得して表示するには、図6に示すように、過熱器4及び再熱器7の上部にモニター23を配置し、支持部材22を操作して、先端のカメラ21を、過熱器4及び再熱器7の上方から、過熱器4及び再熱器7の隣接する管6、9間の隙間を利用して、過熱器4及び再熱器7の内部に挿入する。そして、支持部材22を操作して、カメラ21の位置、向き等を調整することにより、カメラ21を、対象のプロテクター10aを撮影することが可能な位置に配置し、カメラ21を介して対象のプロテクター10aの画像を取得する。カメラ21で取得した対象のプロテクター10aの画像は、過熱器4及び再熱器7の上部に配置されたモニター23に表示され、このモニター23の表示を目視しながら、後述する移動手段24、研磨手段27、及び溶接手段31を操作する。
【0044】
移動手段24は、例えば、図6、図9、及び図10に示すように、振動工具25と、振動工具25に着脱可能に取り付けられる棒状の振動部材26とから構成される。振動部材26の先端は、L形状等の形状に屈曲されている。振動工具25としては、例えば、空圧式、油圧式、又は電動式のチッパーが有効である。振動工具25の先端に振動部材26が着脱可能に取り付けられる。
【0045】
図6及び図9に示すように、撮像手段20のモニター23に表示された画像を目視しながら、振動工具25の振動部材26を、過熱器4及び再熱器7の上方から、過熱器4及び再熱器7の隣接する管6、9間の隙間を利用して過熱器4及び再熱器7の内部に挿入し、振動部材26の位置を調整することにより、振動部材26の先端を対象のプロテクター10aの上部(固定側のプロテクター10bと反対側の端部)に当接させる。
【0046】
そして、この状態で、振動工具25を作動させて、振動部材26を固定側のプロテクター10bの方向に振動させることにより、振動部材26の振動が対象のプロテクター10aに伝達され、図10に示すように、対象のプロテクター10aを管6、9上を固定側のプロテクター10bの方向に移動させて、固定側のプロテクター10bに近接又は接触させることができる。
【0047】
この場合、対象のプロテクター10aを振動させることにより、対象のプロテクター10a、固定側のプロテクター10b、及び管6、9の表面に固着している灰等の異物を同時に除去することができるので、対象のプロテクター10aを固定側のプロテクター10bの方向に容易に移動させることができる。
【0048】
研磨手段27は、例えば、図7及び図11に示すように、研磨工具28と、研磨工具28を支持する棒状の支持部材30とから構成される。研磨工具28は、例えば、先端に砥石29が取り付けられた電動式のハンドグラインダーであって、支持部材30の先端に粘着テープ、バンド等によって取り付けられる。
【0049】
図7及び図11に示すように、撮像手段20のモニター23に表示された画像を目視しながら、研磨工具28を、過熱器4及び再熱器7の上方から、過熱器4及び再熱器7の隣接する管6、9間の隙間を利用して過熱器4及び再熱器7の内部に挿入し、支持部材30を操作して研磨工具28の位置を調整することにより、研磨工具28の砥石29を対象のプロテクター10aの表面、又は固定側のプロテクター10bの表面に接触させる。
【0050】
そして、この状態で、研磨工具28を作動させて砥石29を回転させることにより、対象のプロテクター10aの溶接面、及び固定側のプロテクター10bの溶接面を研磨し、両プロテクター10a、10bの溶接面に固着している灰等の異物を除去し、両プロテクター10a、10bの溶接面の地肌を露出させる。
【0051】
溶接手段31は、例えば、図8及び図12に示すように、棒状の支持部材30の先端に取り付けた溶接棒32と、棒状の支持部材35の先端に取り付けた溶接トーチ34とから構成される。
【0052】
図8及び図12に示すように、撮像手段20のモニター23に表示された画像を目視しながら、溶接棒32及び溶接トーチ34を、過熱器4及び再熱器7の上方から、過熱器4及び再熱器7の隣接する管6、9間の隙間を利用して過熱器4及び再熱器7の内部に挿入し、支持部材30、35を操作して、溶接棒32を対象のプロテクター10aと固定側のプロテクター10bとの間に配置し、溶接トーチ34を溶接棒32に接触させる。
【0053】
この場合、図8に示すように、溶接棒32の先端を、両プロテクター10a、10b間の半周を囲むように、予め円弧状に屈曲させておき、この状態で溶接棒32を両プロテクター10a、10b間に配置することにより、両プロテクター10a、10b間の溶接部の半周に対応するように溶接棒32を配置することができる。
【0054】
そして、溶接トーチ34に通電して、溶接棒32と両プロテクター10a、10b間にアークを発生させることにより、両プロテクター10a、10b間の半周を点付け溶接し、対象のプロテクター10aを固定側のプロテクター10bに接合する。
【0055】
これにより、図13に示すように、流動媒体によって取付位置のずれが生じた対象のプロテクター10aを元の位置に戻すことができ、管6、9の表面に流動媒体が衝突することによって磨耗、減肉した管6、9の部分を対象のプロテクター10aで保護することができる。また、対象のプロテクター10aを固定側のプロテクター10bに溶接によって固定することにより、取付位置の修正をした対象のプロテクター10aが再度流動媒体の流れによる衝突及び管6、9の振動によって移動するようなことはなく、管6、9の表面を保護し続けることができる。
【0056】
なお、対象のプロテクター10aと固定側のプロテクター10bとの間は、必ずしも半周の全体を溶接する必要はなく、周方向に所定の間隔ごとに複数箇所を点付け溶接するように構成してもよい。要は、流動媒体の流れによる衝突及び管6、9の振動でも、ずれが生じることがない程度の接合強度が得られるように、溶接箇所の数を設定すればよい。
【0057】
上記のように構成した本実施の形態のプロテクターの取付位置の修正方法にあっては、過熱器4及び再熱器7の管6、9の外面に取り付けられた対象のプロテクター10aの取付位置を修正する場合に、遠隔から(過熱器4及び再熱器7の上方から)修正手段(移動手段24、研磨手段27、溶接手段31、及び撮像手段20)を操作し、過熱器4及び再熱器7の隣接する管6、9間の隙間を利用して行うことができる。
【0058】
従って、過熱器4及び再熱器7の管6、9の複数箇所を切断して、過熱器4及び再熱器7を吊り上げる必要はなく、過熱器4及び再熱器7をそのままの状態にして、各作業を行うことができるので、プロテクター10aの取付位置の修正を容易に、短時間で、安い費用で行うことができる。
【0059】
なお、上記の説明においては、取付位置のずれが生じたプロテクター10aを元の位置に戻した後に、固定側のプロテクター10bに溶接によって固定するように構成したが、過熱器4及び再熱器7の管6、9に設けられた、プロテクター10b以外の固定側の部材に溶接によって固定するように構成してもよい。
【0060】
また、上記の説明においては、移動手段24に振動工具25を用いたが、これに限らず、対象のプロテクター10aを管6、9上を移動させることができる工具を用いてもよい。
【0061】
さらに、上記の説明においては、本発明によるプロテクターの取付位置の修正方法を、加圧流動床ボイラの火炉の内部に設けられた過熱器及び再熱器の管の外面に取り付けられたプロテクターの取付位置の修正に適用したが、各種の管の外面に取り付けられたプロテクターの取付位置の修正に適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 加圧流動床ボイラ
2 圧力容器
3 火炉
4 過熱器
5 管パネル
6 管
6a 磨耗、減肉部
7 再熱器
8 管パネル
9 管
9a 磨耗、減肉部
10 プロテクター
10a 対象のプロテクター
10b 隣接するプロテクター
11 支持管
13 高圧タービン
14 中圧タービン
15 低圧タービン
20 撮像手段
21 カメラ
22 支持部材
23 モニター
24 移動手段
25 振動工具
26 振動部材
27 研磨手段
28 研磨工具
29 砥石
30 支持部材
31 溶接手段
32 溶接棒
33 支持部材
34 溶接トーチ
35 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床ボイラの内部に設けられた過熱器及び再熱器の管に取り付けられて、該管を保護するプロテクターの取付位置の修正方法であって、
取付位置のずれが生じたプロテクターを、修正手段を遠隔から操作して元の位置に戻して固定することを特徴とするプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項2】
前記修正手段は、取付位置のずれが生じた前記プロテクターを、前記過熱器及び再熱器の管上を移動させて元の位置に戻す移動手段と、
元の位置に戻した前記プロテクターの表面、及び該プロテクターを固定する固定側の部材の表面を研磨する研磨手段と、
元の位置に戻した前記プロテクターを前記固定側の部材に溶接する溶接手段と、
前記プロテクターの画像を取得して表示する撮像手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項3】
前記過熱器及び前記再熱器は、前記流動床ボイラの内部に吊り下げられた状態に設けられ、前記過熱器及び前記再熱器の上方から、前記移動手段、前記研磨手段、前記溶接手段、及び前記撮像手段を操作することを特徴とする請求項2に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項4】
前記撮像手段は、支持部材によって支持されたカメラと、該カメラを介して取得した画像を表示するモニターとからなり、前記カメラを、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入することにより、前記プロテクターの画像を取得して表示することを特徴とする請求項3に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項5】
前記移動手段は、振動工具と、該振動工具に取り付けられた振動部材とからなり、前記振動部材を、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して、前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入し、該振動部材を前記プロテクターに接触させることにより、前記プロテクターを前記管上を移動させることを特徴とする請求項3又は4に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項6】
前記振動部材は、先端がL形状に屈曲されていることを特徴とする請求項5に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項7】
前記研磨手段は、支持部材と、該支持部材によって支持された研磨工具とからなり、前記研磨工具を、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して、前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入し、該研磨工具を前記プロテクターと前記固定側の部材との溶接面に接触させることにより、前記プロテクターと前記固定側の部材との溶接面を研磨することを特徴とする請求項3〜6の何れか1項に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項8】
前記溶接手段は、支持部材によって支持された溶接棒と、支持部材によって支持された溶接トーチとからなり、前記溶接棒及び前記溶接トーチを、前記過熱器及び前記再熱器の管間の隙間を利用して、前記過熱器及び前記再熱器の内部に挿入し、前記溶接棒を前記プロテクターの溶接部に配置し、前記溶接トーチを前記溶接棒に接触させることにより、前記プロテクターを前記固定側の部材に溶接することを特徴とする請求項3〜7の何れか1項に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項9】
前記プロテクターは、筒状に形成されるとともに、前記溶接棒は、前記プロテクターの半周を囲むように、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。
【請求項10】
前記固定側の部材は、前記過熱器及び前記再熱器の管に取り付けられるとともに、前記管を支持する支持管に固定されたプロテクターであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のプロテクターの取付位置の修正方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−237516(P2012−237516A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107439(P2011−107439)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)