説明

プロテクター付きの靴および運動靴

【課題】運動靴を履いて行うボールキックの練習において、足の甲をキックの打撃力から疲労し、損傷を与えるのを回避し、運動練習の能率を向上させる。
【解決手段】靴底部21と、足の甲を覆うように靴底部21に着装された甲皮部22と、甲皮部22の前部開口部23を隔てて対向する左右甲片24の間に設けられ足の甲を覆う舌片部25とを備えた靴20であって、舌片部25の内側にポケット状の袋部25bを設け、この袋部25bに足を保護するプロテクター30、34を収納自在に設ける。また、靴底部21と、足の甲を覆うように靴底部21に着装された甲皮部22と、甲皮部22の前部開口部23を隔てて対向する左右甲片の間に設けられ足の甲を覆う舌片部25とを備えた運動靴20であって、舌片部25または甲皮部22の内側に、舌片部25または甲皮部22の外側から外力が作用することにより発音する発音体10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足を損傷させることなく、運動の練習や競技を効果的に行えるプロテクター付きの靴および運動靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、競技や練習で選手が怪我をしないようにプロテクターを備えた運動靴が提案されている。たとえば、特許文献1では、プロテクターの下端部に設けたフランジ部を靴に縫合して安定させたスポーツシューズが提案されている。
また、サッカー競技では、サッカーシューズでサッカーボールを蹴る練習を行い、剣道では相手選手の竹刀が自身の手甲に当たらないように練習し、ボクシング競技では、グローブを相手選手に当てる練習を行う。これらスポーツの練習を効率良く行うことで、技術習得の向上を図ることは重要となるが、これには選手、スポーツファン等の練習努力で体得できるが、より効率的に体得するには、練習者の足を損傷させる事故を未然に回避し、効率的に練習を実現できる靴ないしは運動靴の開発要請が急務となっている。
【0003】
かかる要請に応える一つの手法として、例えば、サッカーシューズのような靴にあっては、靴に発音体を設け、ボールをキックした位置が靴のどの部分でキックしたかどうか、また確実にキックできたか否かを聴覚で感知しながら練習するのが効率的手段として有効である。
【0004】
靴に発音体を設けた技術として、例えば、特許文献2(特開平10−127302号公報)に記載のものが公知である。このものは、幼児が履く靴ではあるが、左右の靴のうち、一方の靴の外側面に磁石を、他方の靴の外側面に磁気センサを設けた構成のものである。そして、幼児が左右の靴を履き違えた場合に、磁気センサが磁石から発生される磁気を検知することにより、発音体から音楽メロデーが発生する。これによって、幼児に靴を誤って履き間違えたことを知らせ、正しく履いた場合には、音楽が発生しないようにしている。
【0005】
また、特許文献3(実用新案登録第3006964号公報)のものには、幼児用等の靴底に発音手段を設けた構成の技術が開示されている。靴を履いた幼児等が歩行時の踏み込みにより発音手段から音が発音することで、交通安全教育を効果あらしめるようにしている。
【0006】
また、特許文献4(特開平7−289302号公報)には、サッカー練習用シューズによりサッカーの教習や技術の習得を容易にする技術が開示されている。このものは、靴の外側表面を、キックの種類に応じた複数の部分に区分し、区分された靴の各部位を他のキック部位と外観上識別できるように、例えば、記号、絵、模様、色彩等の識別要素で識別可能に構成したものである。キック練習の指導に際しては、指導者は識別要素を指示することで練習する選手に正確に伝え、練習を効果的に行うことができる。
【0007】
また、特許文献5(特開2000−50906号公報)は、ゴルフ競技等に使用される運動靴に関する技術であって、運動靴の舌片部上方の甲皮部内側にマーカー用コインを入れるポケットを設け、且つ、このポケットにコインを挟むベルトを装着し、ベルトの一端をポケットの口から突出させた構成を有する。マーカー用コインが必要となってポケットから取り出す場合には、上記ベルトの一端を引っ張ることにより、ポケット内に収納されていたコインを簡単に取り出すことができるようにしている。このように、ベルトの一端を引っ張るだけで、容易にマーカー用コインをポケットから取り出してマーカー動作を行えるので、プレーを迅速に行うことができるものである。
【0008】
また、特許文献6(特表2001−518334号公報)は、特許文献5のようにポケットにマーカー用コインを収納してプレーを迅速に行うようにしたものではないが、舌片部に設けたポケットに緩衝部材を収納した構成を有する。これにより、足の甲に作用する圧力を減らして着用者に快適さを与え、使用中に舌片部が足の外側へ滑らないようにすることができるものである。
【特許文献1】特開平10−108710号公報
【特許文献2】特開平10−127302号公報
【特許文献3】実用新案登録第3006964号公報
【特許文献4】特開平7−289302号公報
【特許文献5】特開2000−50906号公報
【特許文献6】特表2001−518334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術では、人の足に合わせて調整されるべき箇所が固いプロテクターで固定的に覆われることになり、靴の販売業者は、靴サイズのみならず、その形状も含めて多種の靴を準備・販売する必要が生じ、ユーザも自分の足の形状に合った靴を探すために労力を要する。
【0010】
特許文献2記載の技術にあっては、幼児が左右の靴を履き違えたどうかを、磁気センサが磁石の磁気を検知することで発音体から音楽等の音を発生させ、これにより靴の履き違いを知ることができる。ところが、サッカーボールをキックするサッカーシューズ等に適用した場合に、ボールを上手くキックできたかどうか、また、シューズの内側、甲皮部の舌片部、あるいは外側のどの箇所でキックできたかを、練習者が発音体の音で確認する靴に構成されていない。このため、特許文献2の靴では、キックテクニック向上のための練習を効率的に行なことができないという問題がある。
【0011】
また、特許文献3記載のものでは、靴を履いて幼児等が歩行するときに、靴の踏み込みに応じて発音手段から音が発音するだけで、ボールをキックすることで発音するものとは構成が異なるものである。
【0012】
また、特許文献4の靴は、指導者が発する識別要素による指示に応じて、練習者は靴のどの部位をキックしたら良いかを識別要素を視覚で判断してキックし易くしたものであるので、ボールを正確にキックできたかどうかを発音体から発する音を聴覚で確認することができないものである。
【0013】
また、特許文献5のゴルフ用靴では、プレイ中にマーカー動作が必要となった場合に、直ちにベルトを引っ張るだけでマーカー用コインをポケットから取り出せるようにしたものであるが、ボールのキックが正確に行われたか否かを音で確認できるようにしたものではない。
【0014】
また、特許文献6は、舌片部に設けたポケットに緩衝部材を収納し、足の甲に作用する圧力を減らして着用者に快適さを与え、使用中に舌片部が足の外側へ滑らないようにするだけのものであり、ボールのキック練習を効率的に行うようにしたものではない。
【0015】
本発明は、上記に鑑みて工夫されたものであり、靴、剣道具の手甲、ボクシンググローブ等の運動具の内側に発音体を設け、発音体が発音することで、靴がボールを蹴ったかどうか、相手選手の竹刀に甲手が当てられたかどうか、相手選手の体にボクシンググローブが当たったかどうか等を知ることができるようにした発音体およびこれを備えた靴を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明は、プロテクター付きの靴であって、靴底部と、足の甲を覆うように前記靴底部に着装された甲皮部と、前記甲皮部の前部開口部を隔てて対向する左右甲片の間に設けられ前記足の甲を覆う舌片部とを備えた靴であって、前記舌片部の内側にポケット状の袋部を設け、この袋部に足を保護するプロテクターを収納自在に設けたことを特徴とする。
【0017】
本発明では、プロテクターを収納自在にしたので、ユーザは、プロテクター収納袋ないしポケット付きの靴と、プロテクターとを別々に購入することができる。このため、自分の足の形状や用途に応じてプロテクターのみを交換すれば良いので利便性、経済性が向上する。
好ましくは、プロテクター上面およびそれと接する袋部に滑り止め用の面ファスナーを設けるようにすると良い。また、足甲側のプロテクター下面は、クッション等の緩衝材を施すようにすると良い。なお、ここで、「甲」とは、甲上部のみならず、甲の側面外側(サッカーのいわゆるアウトサイド)や甲の側面内側(いわゆるインサイド)も含む趣旨である。
【0018】
また、請求項2記載の発明は、運動靴であって、靴底部と、足の甲を覆うように前記靴底部に着装された甲皮部と、前記甲皮部の前部開口部を隔てて対向する左右甲片の間に設けられ前記足の甲を覆う舌片部とを備えた運動靴であって、前記舌片部または前記甲皮部の内側に、前記舌片部または前記甲皮部の外側に外力が作用したときに、発音する発音体が設けられたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の運動靴に係り、前記舌片部の内側に設けられる前記発音体は、前記舌片部の内側に設けた袋部に差し込み自在に収納される前記足の甲を保護するプロテクターの上表面に設けたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の運動靴に係り、前記プロテクターの上表面に第1面ファスナーを設け、前記発音体の下面に前記第1面ファスナーに着脱可能な第2面ファスナーを設けたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の運動靴に係り、前記プロテクターは、前記足の甲の内側を覆う内側部および外側を覆う外側部が形成されるとともに、前記第1面ファスナーを前記内外両側部の各外表面に延在して設け、前記発音体の前記第2面ファスナーを、前記延在して設けた前記第1面ファスナーに着脱可能となるようにしたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の運動靴に係り、前記プロテクターは、硬質の合成樹脂材で形成される上層部と、軟質の合成樹脂材で形成される下層部とを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項7記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の運動靴に係り、前記プロテクターは、形状記憶素材で形成されたことを特徴とする。
【0024】
また、請求項8記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の運動靴に係り、前記プロテクターは、チタン材質で形成されたことを特徴とする。
スイートスポット部にチタン材などの軽量で硬質な材質を用いることによって反発力を向上させることができる。
【0025】
また、請求項9記載の発明は、請求項2〜8のいずれか一項に記載の運動靴に係り、前記甲皮部および前記舌片部に、前記発音体が受容される孔を穿つとともに、前記孔に前記発音体を外部に臨ませることを特徴とする。
【0026】
また、請求項10記載の発明は、請求項2〜9記載の運動靴に係り、前記甲皮部および前記舌片部の内側表面に第3面ファスナーを設ける一方で、前記発音体の側方に延在した側方部に前記第3面ファスナーに着脱可能な第4面ファスナーを設け、前記発音体を前記甲皮部および前記舌片部の前記孔に臨ませて取り付けるとき、前記第4面ファスナーを前記第3面ファスナーに結合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、舌片部の内側に設けたポケット状の袋部に、プロテクターを収納自在に取り付けることができるので、キックしたボールの反動や、他の競技者から足を踏み込まれることによる踏力が靴に加わっても、プロテクターが足の甲を保護してくれる。このように、プロテクター付きの靴を着用して運動を行えば、足の甲を痛めることなく安全に競技や練習を行うことができる。また、このプロテクターの材質を、例えば、合成樹脂材、形状記憶素材、チタン等の材質で形成すれば、より一層プロテクターとしての保護機能を増進し、安全な運動練習が行える。
【0028】
また、請求項2記載の発明によれば、運動靴の舌片部または甲皮部の内側に設けた発音体に、ボールをキックしたときの衝撃力としての外力が作用した場合に、発音体が作動して発音する。このように、発音体が発音したことにより、運動靴の所定部位でボールをキックしたことを認識することができる。その結果、発音体から発する音の有無で、ボールキックの練習を確認しんがら練習することが可能となり、ひいては、より一層効果的で能率的な運動練習を実現できるようになる。
【0029】
また、請求項3記載の発明によれば、舌片部の内側に設けられる発音体は、舌片部の内側に設けた袋部に差し込み自在に収納される足の甲を保護するプロテクターの上表面に設けているので、足の甲はプロテクターで、例えばボールをキックするときのキック力や、落下物から受ける衝撃力に大して足の甲を防護するだけでなく、練習者が発音体が発生した音を聴くことですることで、舌片部でキック等をできたことが練習者は認識することができ、的確な運動練習を実現できる。
【0030】
また、請求項4記載の発明によれば、発音体を、第1面ファスナーと、第2面ファスナーとにより着脱自在に取り付けられるので、ボールをキック練習する部位に合わせて、発音体をプロテクターの任意の部位に取り付けることができる。これにより、例えば、ボールのキック練習の能率を格段に向上できる。
【0031】
また、請求項5記載の発明によれば、プロテクターに、足の甲の内側を覆う内側部および外側を覆う外側部を備える形態に形成し、これら内外両側部にも発音体を着脱自在に装着できる。このため、例えば、キック練習は、足の内側でキックしたり、外側でキックしたりでき、多面的なキック練習が可能となる。
【0032】
また、請求項6記載の発明によれば、プロテクターは上層部が硬質の合成樹脂材で、下層部を、例えばスポンジなどのような発泡体でなる軟質の合成樹脂材で形成しているので、足の甲を保護して快適な履き心地を得ることができる。
【0033】
また、請求項7記載の発明によれば、プロテクターを形状記憶素材で形成しているので、プロテクターを足のサイズに合わせて調整することが可能となり、一個のプロテクターで種々の運動靴に流用でき、また、発音体を装着したり取り外したりする場合に、プロテクターを平らにのばした状態で行えるので便利となる。
【0034】
また、請求項8記載の発明によれば、プロテクターは、チタン材質で形成されているので、剛性が高い。そのため、重量の重い落下物が靴に落下しても、足の甲はプロテクターで保護され、損傷を未然に防止できる。
【0035】
また、請求項9記載の発明によれば、靴の甲皮部および舌片部に、発音体が受容される孔を穿ち、この孔に発音体が外部に臨むように設けている。このため、例えば、発音体近傍にボールを当ててキックしたとしても、発音体が異物として足の甲へ痛みを与えることを回避できる。また、発音体で発生した音は、孔から靴外部へ直接に伝播されるので、発音を練習者、競技者等に確実に伝わる。
【0036】
また、請求項10記載の発明によれば、甲皮部および舌片部の内側表面に第3面ファスナーを設ける一方で、発音体の側方に延在した側方部に第3面ファスナーに着脱可能な第4面ファスナーを設け、発音体を甲皮部および舌片部の孔に臨ませて取り付けるとき、第4面ファスナーが第3面ファスナーに結合される。したがって、発音体は確実に甲皮部および舌片部に結合できるので、例えば、ボールをキックするときに生じる衝撃力によって、発音体が甲皮部や舌片部から離脱するようなことがなく、安定した結合力を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に示す各実施例に基づいて詳述する。
【0038】
[第1実施例]
第1実施例を、図1〜6を参照して説明する。なお、ここにいう運動靴20とは、スポーツの種目を問わず、すべての靴を指すものとするが、以下の説明では、サッカーボールをキックする練習に使用する場合の運動靴を例に上げて説明することとする。
【0039】
すなわち、図1に示される運動靴20は、左側の運動靴であるが、右側の運動靴も左側のものと同一の構成であるため、左側の運動靴を図示して説明する。図1に示されるように、運動靴20は、靴底部21と、足の甲などを上方および側方から包むように形成され靴底部21に着装した甲皮部22と、甲皮部22の前部開口部23(図3(b)参照)を隔てて対向する左右甲片24の間に設けられた舌片部25とを備える。甲皮部22は、例えば、通気性に富んだメッシュ部材22aと、当該メッシュ部材22aの表面の一部を覆うようにして該メッシュ部材22aに縫合された合成皮革、革、繊維等でなる補強部材22bとを有する。甲皮部22の左右の甲片24に設けた紐孔26間に靴紐27を通して締め付けることで、練習者の足に靴20が着用されるようになっている。
【0040】
足の甲を覆う舌片部25の内側(下面側)には、例えば、繊維素材でなり、前方から後方へと前後に伸びる袋形成部材25aが縫着され、舌片部25と袋形成部材25aとの間にポケット状の袋部25bが形成される。袋部25bの大きさは、後述するプロテクター30を収納できるような大きさに形成される。また、袋形成部材25aの後方端には、上記プロテクター30を袋部25b内へ収納自在に出し入れさせる開口部25cが形成される。このプロテクター30が袋部25bに差し込み自在に収納され、収納された場合には、プロテクター30が袋部25bに位置ずれしない状態で保持されるようになっている。
【0041】
プロテクター30は、図4(a)に示すように、足の甲に沿うように上方に緩やかに出っ張った凸断面の湾曲板で形成される。この湾曲板、すなわち、プロテクターは、例えば、硬質の合成樹脂材でなる上層部31と、軟質の合成樹脂材でなる下層部32との積層構造に形成される。もっとも、積層構造は、三層構造でもよいし、プロテクター30全体として一枚の合成樹脂材で形成した態様であってもよい。また、上層部31の上表面全面には、第1面ファスナー33が設けられる。第1面ファスナー33を上層部31の全面に設けることで、発音体10を任意の位置に装着できるようになっている。こうして、発音体10に設けた第2面ファスナー17と結合することにより、発音体10をプロテクター30の任意の位置に着脱自在に取り付けられる。
【0042】
(発音体の構成と作用)
次に、各実施例に共通して使用される発音体の構成を説明する。すなわち、図6に示すように、発音体10は、例えば、平面が円盤状の底部11と、底部11の上方に一体に設けられたドーム状の本体部12とでなる合成樹脂製のケーシング部13を備える。ケーシング部13の本体部12は、比較的に薄い肉厚で形成され、略上下方向に作用する外力により弾性変形が可能である。
【0043】
また、発音体10の底部11の下面には、後述する第1面ファスナーと着脱可能な第2面ファスナー17が設けられる。係る構成の発音体10が、以下の各実施例に適用される。
【0044】
本体部12の側面に相当する部位には、ケーシング部13内部に形成される内部空間14の空気を吸入する吸気孔15と、内部空間14に吸入した空気を外部へ吐出する排気孔16とが形成される。吸気弁15の内部空間14側の本体部12には、内部空間14へ空気を吸気するときには開き、空気を吐出するときには閉じるように作動する逆止弁15aが設けられる。
【0045】
また、排気孔16には、例えばリード弁のごとき形態の振動弁16aが設けられ、これにより発音体10が形成されることとなる。したがって、ケーシング部13の本体部12に、キック力や、サッカーボール等が激突するときの外力が作用することにより、本体部12が、図3(b)の二点鎖線で示すように弾性変形し、内部空間の圧縮された高圧空気が振動弁16aを通過して外部へ噴出される。このときに、振動弁16aが振動して音を発生し、発音体10に外力が作用したことがわかるようになる。
【0046】
このように、発音体10は、本体部13が圧縮変形と復元を繰り返すことができるポンピング機能を備え、吸気孔15の逆止弁15aを通じて内部空間14に外気を取り込み、排気孔16から内部空間の圧縮空気を排出する。圧縮空気を排出するときに、振動弁を通過する高圧の圧縮空気により振動されて発音することができる。係る発音体10が、以下の各実施例に共通して使用されることとなる。
【0047】
本第1実施例において、図4(b)に示すように、プロテクター30の略中央部に発音体10を取り付け、これを袋部25bに収納する。すると、発音体10と一体になったプロテクター30は、図5に示すように、袋部25bに収納される。発音体10のドーム状をなす本体部12(図6参照)は、舌片部25の内側表面へ押し付けられてフィットする。そして、練習者は靴紐27を締め付けると、発音体10は舌片部25とプロテクター30との間に挟まれた状態で運動靴20が着用される。この状態で、運動靴20でサッカーボールをキックする練習を行うとき、ボールに当たった部位に対応する位置に配設された発音体10は、図6(b)の二点鎖線に示すように瞬間的に弾性変形する。これにより、発音体10の内部空間14の圧縮された空気は、排気孔16から外部へ排出されるとき、振動弁16aが振動して、例えば、「キュッ」、「ピュッ」という笛を吹くような音が発音する。この発音を練習者が聴くことにより、運動靴20のどの部位でボールをキックしたかを認識することができる。ボールをキックしたときの発音体10に作用する外力により、発音体10は圧縮変形と、復元とを繰り返す弾性変形が可能であるため、ボールをキックするたびに、発音体10は正確に発音する。
【0048】
したがって、本第1実施例によれば、ボールをキックする衝撃が、発音体10に加わるが、発音体10は第1、第2両面ファスナー33,17で装着されているため、発音体10がプロテクター30から離れるようなことはなく、安定的にプロテクター30に保持される。このため、運動靴によるキック練習を、発音体10から発する音を聴くことで、キックできたか否かを確認できる。また、キック練習するとき、キックする部位の発音体10が鳴ったか否かを確認しながら練習することができるので、練習を効率的に行うことができるようになる。また、プロテクター30により足の甲を保護するため、足の甲を痛めることも回避できる。また、発音体10は舌片部25の内側に配置されるので、ボールからの衝撃を直接に受けることがなく、発音体10の損傷を抑制することもできる。
【0049】
なお、上記第1実施例では、プロテクター30の形状を、図4(a)のように、緩やかに上に出っ張るように凸面断面を有する湾曲面に形成した場合であったが、プロテクターの形状はこれに限定されるものでなく、種々の形状のものが可能である。例えば、図7に示す第1変形例のように、プロテクター34における湾曲面を成す主体部34aの後方から下方に、すなわち、靴底方向に垂れるようにして左右一対の脚部34bを設けるようにしてもよい。係る形状を備えたプロテクター34の主体部34aと、左右の脚部34bとに発音体10を一個づつ装着し、これを袋形成部材25aで形成される袋部に差し込む。これにより、図8に示すように、プロテクター34は、足の甲の内側(インサイド)および外側(アウトサイド)を保護することができるとともに、インサイドキックやアウトサイドキックにも発音体10が作動して発音する。
【0050】
このため、第1変形例によっても、ボールキックの練習がより多面的に行え、効率のよい練習を実現することができるようなる。なお、この第1変形例において、発音体10は、図7の二点鎖線で示すように、プロテクター30の任意の位置に装着できるように構成することも、勿論可能である。
【0051】
また、図9に示す第1実施例の第2変形例のように、発音体10に対応する舌片部25に透孔25dを穿ち、その透孔25dに発音体10の本体部が外部に臨むように構成してもよい。係る第2変形例の構成により、発音体10が外部に露呈するため、発音体10から発せられる音量は増大する。その結果、練習者は発音を確実に聞き取ることができるようになる。
【0052】
なお、上記第1実施例、および上記第1、第2両変形例では、第1面ファスナー33をプロテクター30の全面に設け、これに発音体10を任意の部位に着脱可能に装着するように構成したが、発音体10を取り付ける部位にのみ第1面ファスナーを取り付けておき、これに発音体10を装着するようにしてもよい。また、発音体10を第1面ファスナー33と第2面ファスナー17とで着脱自在に設ける態様で説明したが、この代わりに、面ファスナーを使用しないで、発音体10をプロテクター30に接着剤を介して接着する態様であってもよいのは勿論である。
【0053】
また、プロテクター30を、軟質の合成樹脂材でなる下層部32と、硬質の合成樹脂材でなる上層部31との積層構造で構成したが、上層部31を、形状記憶合金などのような形状記憶機能を有する素材で形成してもよい。これにより、一個のプロテクターで、足の甲のサイズが異なる練習者にも共用でき、また、発音体10をプロテクター30に着脱する場合に、プロテクター30を平らに延ばした状態で行えるので、着脱を容易に行える利点がある。
【0054】
また、プロテクター30を、チタン材質で形成してもよい。チタン材質は軽量にして強靱であるため、運動靴20全体としての重量を軽くできる。その結果、練習者の練習能力を高めることができるだけでなく、強烈なキック力がプロテクター30に作用しても、足の甲を良好に保護することができる。
【0055】
[第2実施例]
第2実施例を、図10〜図13に基づいて説明する。すなわち、運動靴40(左側の運動靴)の甲皮部41の6カ所および舌片部42の3カ所に、透孔43を穿たれる。なお、舌片部42に設ける透孔43は一カ所に設定することも可能である。各透孔43には、平面円形状の発音体50が位置決めして嵌め込まれるようになっている。各透孔43近傍の内側表面に、後述する発音体50を着脱自在に装着できる第3面ファスナー44が設けられる。一方、透孔43に嵌め込まれる発音体50は、図6に示した発音体10と略同様の構造を備える。すなわち、図12に示すように、発音体50は、基本的形態として空気の吸気孔51と、排気孔52と、排気孔に設けた振動弁(図示されない)とを備えている。発音体50の底部側方には、発音体50の本体部53を取り囲むように鍔部54(側方部)が一体成形により延在するように設けられる。鍔部54の上面に、上記第3面ファスナー44と着脱自在に結合可能な第4面ファスナー55が形成される。
【0056】
図13(a)の矢印に示す方向に、発音体50を透孔43に嵌め込むと、第3面ファスナー44に第4面ファスナー55が結合する。これにより、発音体50は、図13(b)のように透孔43に臨むようにして取り付けられる。
【0057】
第2実施例では、全ての発音体50は、第3面ファスナー44と第4面ファスナー55の結合力により、全ての透孔43に嵌め込むようにして取り付けられるように構成している。このため、ボールをキックするときに、発音体50にキック衝撃力が作用しても、発音体50は透孔43から脱落するようなことがない。このため、ボールをキックしたときに、ボールに当たった発音体50は発音する。発音は、運動靴40内部にこもることなく、透孔43から外部へ伝播され、練習者は、はっきりとした発音を聞き取ることができる。
【0058】
したがって、第2実施例によれば、第1実施例の効果に加えて、発音体50を透孔43に簡単に着脱自在に装着でき、それだけ利便性が向上する。また、発音体50を取り換え交換する場合には、発音体50を容易に甲皮部41や舌片部42から取り外すだけで、容易に交換できる利点がある。さらに、上記第1実施例のようにプロテクター30を介して発音体10を取り付けるものと異なり、発音体50単体を取り付けることができるので、運動靴50のあらゆる部位に容易に取り付けられる。したがって、本来のキック位置ごとに透孔を設けることによって、キックできる部位が増え、ひいては練習を向上できるようになる。
【0059】
なお、上記第2実施例では、舌片部42にも直接に発音体50を装着するように構成したが、第1実施例の場合のように、プロテクターを併用する態様であってもよい。
また、発音体50の色を、透孔の位置が異なる毎に、互いに異なった色彩にしてもよい。これにより、透孔43から外部に露呈する発音体50の色を指導者が指示することで、練習者は指示された色を有する発音体50にボールが当たるようにキック練習することができ、能率的な練習が可能となる。
【0060】
以上、本発明の施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明の範囲に含まれるものである。
例えば、剣道具の手甲にも適用できるものである。すなわち、手甲を形成する甲皮の内側に、上記構造を備えた発音体10、50を、上記第2実施例と同様の態様で装着可能とする構成にする。これにより、剣道の練習において、相手の竹刀が自己の手甲に当たった場合に、発音体から音が発生することで、勝負有りとの判断を容易に行えるので、練習の能率が向上する。
【0061】
また、ボクシンググローブにも適用できる。ボクシンググローブの内側に、上記発音体10、50と同様の発音体を、上記第2実施例と同様の態様で装着する。これによって、自己のグローブが相手の体に当たったかどうかを発音体から発する音の有無で判断でき、ボクシングの練習の能率を向上できるようになる。
【0062】
また、発音体は、振動弁を振動させて発音する態様のものであったが、外力が作用したときに発音する構造のものであれば、どのような態様の発音体であってもよい。例えば、圧力を感知することで、電子音を発する発音体であってもよい。
【0063】
また、プロテクターなどの複数の箇所に音色や音階の異なる発音体を取り付けておけば、発音体の音色によってどの部分に当たったかを的確に知ることができる。特に、プロテクターを装着した場合は、人間の感覚によってどこに当たったかを正確に知ることが困難な場合が多いので有効である。
【0064】
さらに、発音体の取り付け位置として、たとえば、スイートスポットの位置などをプロテクターや靴等に表示するようにすれば、サッカーなどにおいて初心者でも的確な位置でボールを捉える練習ができる。
【0065】
また、プロテクター30を合成樹脂や金属製にするのではなく、内部に空気を注入することにより緩衝機能を果たすエアクッションによって構成することもできる。これを靴20の袋部25bに収納して足甲を保護したり、あるいは、靴20の舌片部25自体をエアクッションで構成することも可能である。
【0066】
また、このクッションに直接、振動弁などの発音手段を装着し、クッション内部にスポンジを入れた構成にしても良い。このようにすれば、ボールをキックしたときなどは、クッションが圧縮されることによって、空気が振動弁から排出されて音が鳴り、その後スポンジの復元作用によって元の位置復元するので、緩衝による保護機能と発音機能の両方を備えることができる。もちろん、発音体10の内部にスポンジを入れて構成するようにしても良い。
【0067】
なお、プロテクター30を収納する袋部25bは、舌片部25に限らず、たとえば靴の側面(インサイドあるいはアウトサイド)の内側に袋部を設けるなど、個別にプロテクターを収納可能にしても良い。
【0068】
また、発音体とプロテクターは、別個に使用することができることは上述のとおりであるが、たとえば、発音体を靴下に装着したり、あるいは、膝装着用のサポータに装着すれば、室内におけるボールのリフティングの練習等にも効果的である。
【0069】
さらに、発音体は空気による圧縮音の他に、靴や靴下等のスイートスポットにヒットした際の圧縮時の接点の接触によって、電子音で「スーパー・ゴーーーッル!!!(プラス観客の声)」というようなテレビアナウンサーを模した合成電子音を発するようにしても良い。このようにすれば、特に子供に対しては、エキサイティング性を与えて、練習意欲を向上させることができる。
【0070】
また、発音体内部もしくは下側に圧力センサを設け、その圧力によって電子音(アナウンサーの言葉など)を変えるようにすれば、ユーザは客観的にキック力やパンチ力等の自己のレベルを知ることができ効果的な練習を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施例における運動靴の外観側面図である。
【図2】運動靴から靴紐の図示を省略した図1の平面図である。
【図3】(a)は、図2のB−B線における一部を簡略図示して示した縦断面図、(b)は、図1のC−C線における靴紐の図示を省略した横断面図である。
【図4】(a)は、プロテクターの外観斜視図、(b)は、プロテクターに発音体を装着した状態を示す外観斜視図、(c)は、(b)のD−D線における部分拡大断面図である。
【図5】図2のE−E線における運動靴の横断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に使用される発音体に係り、(a)はその平面図、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図7】第1実施例の第1変形例に係り、プロテクターに発音体を装着した状態を示す外観斜視図である。
【図8】上記プロテクターを運動靴に取り付けた状態を側面から視た状態を示す作用説明図である。
【図9】第1実施例の第2変形例に係り、プロテクターを運動靴に取り付けた状態を示す図5と同様の横断面図である。
【図10】第2実施例に係り、運動靴に発音体を装着した状態を示す外観平面図である。
【図11】図11のF−F線における横断面図である。
【図12】第2実施例に適用される発音体に係り、(a)は、その外観平面図、(b)は、(a)の外観側面図である。
【図13】図11の丸部における要部拡大断面図で、(a)は、発音体を装着する前の状態を示す作用説明断面図、(b)は、発音体を装着した後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10 発音体
11 底部
12 本体部
13 ケーシング部
14 内部空間
15 吸気孔
16 排気孔
16a 振動弁
17 第2面ファスナー
20 運動靴
21 靴底部
22 甲皮部
23 前部開口部
24 甲片
25 舌片部
25a 袋形成部材
25b 袋部
25c 開口部
25d 透孔
30 プロテクター
31 上層部
32 下層部
33 第1面ファスナー
34 プロテクター
34a 主体部
34b 脚部
40 運動靴
41 甲皮部
42 舌片部
43 透孔
44 第3面ファスナー
50 発音体
51 吸気孔
52 排気孔
53 本体部
54 鍔部
55 第4面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底部と、足の甲を覆うように前記靴底部に着装された甲皮部と、前記甲皮部の前部開口部を隔てて対向する左右甲片の間に設けられ前記足の甲を覆う舌片部とを備えた靴であって、前記舌片部の内側にポケット状の袋部を設け、この袋部に足を保護するプロテクターを収納自在に設けたことを特徴とするプロテクター付きの靴。
【請求項2】
靴底部と、足の甲を覆うように前記靴底部に着装された甲皮部と、前記甲皮部の前部開口部を隔てて対向する左右甲片の間に設けられ前記足の甲を覆う舌片部とを備えた運動靴であって、前記舌片部または前記甲皮部の内側に、前記舌片部または前記甲皮部の外側から外力が作用することにより発音する発音体が設けられたことを特徴とする運動靴。
【請求項3】
前記舌片部の内側に設けられる前記発音体は、前記舌片部の内側に設けた袋部に差し込み自在に収納される前記足の甲を保護する前記プロテクターの上表面に設けたことを特徴とする請求項2記載の運動靴。
【請求項4】
前記プロテクターの上表面に第1面ファスナーを設け、前記発音体の下面に前記第1面ファスナーに着脱可能な第2面ファスナーを設けたことを特徴とする請求項3記載の運動靴。
【請求項5】
前記プロテクターは、前記足の甲の内側を覆う内側部および外側を覆う外側部が形成されるとともに、前記第1面ファスナーを前記内外両側部の各外表面に延在して設け、前記発音体の前記第2面ファスナーを、前記延在して設けた前記第1面ファスナーに着脱可能となるようにしたことを特徴とする請求項4記載の運動靴。
【請求項6】
前記プロテクターは、硬質の合成樹脂材で形成される上層部と、軟質の合成樹脂材で形成される下層部とを備えたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の運動靴。
【請求項7】
前記プロテクターは、形状記憶素材で形成されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の運動靴。
【請求項8】
前記プロテクターは、チタン材質で形成されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の運動靴。
【請求項9】
前記甲皮部および前記舌片部に、前記発音体が受容される孔を穿つとともに、前記孔に前記発音体を外部に臨ませることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の運動靴。
【請求項10】
前記甲皮部および前記舌片部の内側表面に第3面ファスナーを設ける一方で、前記発音体の側方に延在した側方部に前記第3面ファスナーに着脱可能な第4面ファスナーを設け、前記発音体を前記甲皮部および前記舌片部の前記孔に臨ませて取り付けるとき、前記第4面ファスナーを前記第3面ファスナーに結合させることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の運動靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−187356(P2006−187356A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382133(P2004−382133)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(505005810)
【Fターム(参考)】