説明

プロバイオティック含有摂取製品

【課題】従来の乾燥プロセスや濃縮プロセスによってプロバイオティックスを培養した発酵培地中に存在する代謝産物が破壊されたり失われることのない、プロバイオティックス代謝産物摂取製品の提供。
【解決手段】プロバイオティックスによって産生された代謝産物を含み、その代謝産物が、発酵培地中で培養されたプロバイオティックスから分離された発酵培地中に含まれていたものである摂取製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティックスを含有する摂取製品、及びそれを得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティックス微生物(probiotic micro−organism)は、その腸内細菌バランスを改善することによって宿主に有益な影響を及ぼす微生物である。一般に、このような細菌は、腸管中の病原細菌の成長及び/又は代謝を抑制し又はこれに影響を及ぼす。プロバイオティックス微生物によって、宿主の免疫機能が活性化されることも想定される。この理由により、食材にプロバイオティックス微生物を取り入れる多くの様々な手法が存在する。
【0003】
WO98/10666(SOCIETE DES PRODUITS NESTLE S.A.)は、熱空気流中で、食品組成物と、酸素に敏感なプロバイオティックス乳酸菌培養物とをいっしょに併せて噴霧する、生きたプロバイオティックス酸菌(acid bacteria)を含む乾燥食品組成物の製造方法を開示している。
【0004】
EP0862863(SOCIETE DES PRODUITS NESTLE S.A.)は、プロバイオティックス微生物を含有するコーティング又は充填物を含むゼラチン化デンプンマトリックスを含む乾燥即席シリアル製品を開示している。
【0005】
US4943437(AB MEDIPHARM)は、生物学的活性材料が不溶性である場合、それを不活性担体中でスラリーにして均質な懸濁液を生成し、その後主食材に懸濁液を適用する、主食材への生物学的活性材料の供給方法を開示している。
【0006】
GB2205476(UNILEVER)は、小麦粉の不活性細分支持体(subdivided support)及び生存可能ミクロフローラの水性懸濁液を含む支持体付き細菌組成物を開示している。この混合物は、次いで乾燥させるものであり、乳酸菌の種菌としてサワー・ドウ・ブレッドの調製に適する。
【0007】
しかし、食材にプロバイオティックス微生物(以下では「プロバイティクス」)を組み込むことには、いくつかの難点が伴う。達成すべき最初の1目標は、1日あたりの十分なcfu(コロニー形成単位)数を備えることである。製品中のプロバイオティックスの濃度がある一定の閾値を超えなければ、有益な効果はもたらされない。したがって、有効量が1人1日あたり10cfuの範囲であるという観察を基にし、消費者が日常摂取の範囲内でこれを食さなければならないことを想定して、その量のcfuを1〜3皿分の範囲で対象に送達することが目標となる。
【0008】
従来、この手法は、プロバイオティックスそれ自体又はそれと支持物質を乾燥させたものを使用することであった。したがって、適切な培地で発酵させた後、通常はプロバイオティックスを、たとえば遠心分離又は濾過によって濃縮し、次いで噴霧乾燥、流動床乾燥、又は凍結乾燥によって乾燥させる。この乾燥プロセスから、別の深刻な問題が生じる。すなわち、特別な測定法を採用しない限り、適用した技術に応じて、60%、より多い場合では90〜99%のcfuを実質的に損失するのである。乾燥ステップに非常にエネルギー費用がかかることは言うまでもない。しかし、高温乾燥法は、他の不利点をもつ。高温乾燥法では、プロバイオティックス自体又はこれを培養した発酵培地中に存在する代謝産物が破壊され、又は失われることがある。したがって、そのような代謝産物の有益な効果がなくなるといえる。濃縮ステップの不利点も、同様に、発酵培地中にもたらされた代謝産物の損失である。
【0009】
次いで、乾燥によって得た粉末を所望の食品にかける。たとえば、上で引用したEP0862863によると、乾燥プロバイオティックスと油、水、又はタンパク質消化物のいずれかの液体担体物質とを混合する。次いでこの物質を食品上に噴霧する。
【0010】
一食の範囲内で比較的高い数字のcfuが必要であり、かつ乾燥中の損失が多いので、有効な数字のcfuを含む食品を取ることが問題となる。上で引用した参照文献でも扱われている別の問題は、食品上のプロバイオティックスが長期間安定であることであり、すなわちプロバイオティックスを含む食品は、周囲温度で貯蔵安定性でなければならない。別の問題点は、胃腸におけるプロバイオティックスの生存である。プロバイオティックスは、腸にうまくコロニーを形成するために、胃の酸性環境及び胆汁酸に十分な耐性がなければならない。その上、プロバイオティックスを含む食品は、消費者の口に合わなくてはならない。その官能的性質に著しい影響を及ぼすことなく、食品にプロバイオティックスを適用することが求められている。
【0011】
プロバイオティックスを含有する完成品の味、外観、及びテクスチャーを、プロバイオティックスを含まない同じ製品と比べてほとんど又はまったく変化させないことがまさに問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、言及した問題を処理するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明は、プロバイオティックスを含み、プロバイオティックスが新鮮な状態で適用された摂取製品を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、プロバイオティックスによって産生された代謝産物を含み、その代謝産物が、そこで培養されていたプロバイオティックスから分離した発酵培地中に含まれていたものである摂取製品を提供する。
【0015】
同様に、本発明による、プロバイオティックスを含む摂取製品を得る方法は、液体培地中での発酵によって新鮮なプロバイオティックス・バイオマスを生成することと、摂取製品にその新鮮なバイオマスを直接適用することとを含む。
【0016】
さらに、第4の態様では、本発明による、プロバイオティックスによって産生された代謝産物を含む摂取製品を得る方法は、液体培地でプロバイオティックスを培養すること、プロバイオティックスから液体培地を分離すること、及び摂取製品にその液体培地を直接適用することを含む。
【0017】
妥当な予想に反して、高温乾燥を行わなくても、発酵プロセスから得られたバイオマスを摂取製品に直接かつ新鮮な状態で適用できることがまさに判明した。この方法によって、貯蔵安定性に優れ、かつプロバイオティックスを含まない類似の摂取製品の外観及び官能的性質と同様の外観及び官能的性質を有する、プロバイオティックス含有摂取製品が得られる。
【0018】
さらに、この摂取製品は、期待された量又は妥当な量で消費されれば、有益な効果を発揮するのに十分なcfu量を含む。
【0019】
有利なことに、代謝産物及び微生物は、もはや乾燥プロセス及び濃縮によって失われない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この記述の全体を通して、「摂取製品」という表現は、たとえば、ヒト及び/又はイヌやネコなどのペット類に摂取される製品を意味する。
【0021】
本発明に関して、「新鮮なプロバイオティックス」又は「新鮮な状態で適用されたバイオマス」は、発酵プロセスの後、たとえば、噴霧、流動床、又は凍結乾燥によって乾燥させていないプロバイオティックスを指す。しかし、「新鮮なプロバイオティックス」は、ある特定の制限時間内に摂取製品に適用されたバイオマスであると理解されるものではない。「新鮮なバイオマス」を損失なしに一定の期間貯蔵することはたいてい可能である。またほとんど損失なしに、バイオマスを一定期間凍結させ、解凍できている場合、これも新鮮であるとみなす。適用プロセスの間、たとえば、摂取製品に噴霧する間、製品を貯蔵する間だけでなく、摂取製品が消化管を通過する間、たとえば乳酸菌の生存を向上させることが知られている保護剤を「新鮮なバイオマス」に加えることもできる。WO98/10666は、このような効果を備えた若干の物質に言及したことに加え、プロバイオティックス微生物の生存の向上に関する従来技術を広範囲に列挙している。高温乾燥プロセスを経ないので、このような添加物に関係なく、このバイオマスを「新鮮なバイオマス」とみなすことができる。
【0022】
本発明の意図では、用語「プロバイオティックス」、「プロバイオティックス微生物」、又はプロバイオティックス・バイオマスには、宿主に有益な影響を及ぼす任意の微生物、細胞内容物、又は微生物由来の代謝産物が含まれると理解される。したがって、酵母、カビ、及び細菌が含まれよう。EP0862863は、現在知られているプロバイオティックスのいくつかの例を列挙している。たとえば、ラクトバチルス ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)(CNCM I−1225)、ビフィドバクテリウム ラクティス(Bifidobacterium lactis)(DSM20215)、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)(TH4、Chr.Hansen、DK)、又はラクトバチルス パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(CNCM I−2116)の株を使用してよい。異なるプロバイオティックス株の選択例は、Christian Hansen BioSystems A/S(CHL)、10−12 Boge Alle,P.O Box 407,DK−2970 Horsholm,Denmarkから提供を受けた。
【0023】
本発明の意図では、用語「プロバイオティックス」にはさらに、別段の指摘がない限り、発酵プロセスの間に微生物によって産生された代謝産物も含まれるものとする。このような代謝産物は、発酵培地に遊離していても、微生物内に貯蔵されていてもよい。このような代謝産物が、特定のプロバイオティックス微生物の有益な効果の一部又はすべてを引き起こしている可能性がかなりある。
【0024】
驚くべきことに、プロバイオティックスは、必ずしも濃縮する必要がなければ、高温で乾燥させる必要もなく、食品に直接かつ新鮮な状態で適用できることがわかった。したがって、本発明はまた、プロバイオティックスによって産生された代謝産物の有効性を損ない、又は破壊することさえある高温処理がないという大きな有利点を有する。濃縮ステップを省けることには、発酵培地中に存在する有効な代謝産物がたとえば濾過によって失われないという有利点が伴う。
【0025】
したがって、驚くべきことに、貯蔵安定性に優れ、外観及び官能的性質が、プロバイオティックスを含まない類似の摂取製品の外観及び官能的性質と同様なプロバイオティックス含有摂取製品を提供することがまさに可能であることがわかった。あらゆる予想に反して、プロバイオティックス・バイオマスを新鮮な状態で、かつ直接に摂取製品に適用すると、プロバイオティックスを含有する完成品の味、外観、及びテクスチャーに変化が生じない、又は極めて軽度にしか生じないことが判明した。
【0026】
プロバイオティックス食品技術における最近の見解とは逆に、バイオマスにかける前、最中、又は後に高温乾燥プロセスを行う必要なしに、新鮮なバイオマスを乾燥食品、たとえば朝食シリアルに噴霧することも可能である。本発明の意味の範囲では、発酵プロセスから得られた比較的少量の液体又はスラリーのみを乾燥食品上に噴霧する必要がある。発酵は、比較的高濃度のcfuが得られるまで続けることが好ましい。食品は、それぞれの食品の水分活性をほとんど増大させることなく、水分のほとんどを吸収することになる。そのため、文献が示す限りでは、プロバイオティックスを含む摂取製品にさらに乾燥又は他の処理の加工を施す必要もない。興味深いことに、今日まで、たくさんのプロバイオティックスを加え、次いで最終製品を乾燥させることは常に問題であった。通常、乾燥プロセスを経て生き残るのは僅かなcfuだけである。この損失を埋め合わせるために、たとえば水としての担体中の非常に多量のプロバイオティックスを適用する必要がある。これによって、特に最後に乾燥させる予定の製品では、乾燥プロセスが必要となった。これとは対照的に、本発明は、破壊的な乾燥プロセスを避けるものであり、したがって、今後は摂取製品に非常に多量のプロバイオティックスを適用する必要がない。結果として、プロバイオティックスを含む発酵槽からの比較的少量のスラリー又は液体を摂取製品に適用する必要がある。当然、本発明でも、貯蔵中、並びに製品が消化管を通過する際の避けられない損失を埋め合わせる目的で、それよりも若干多量のプロバイオティックスは摂取製品に適用することもできる。
【0027】
驚くべきことに、貯蔵寿命研究によって、バイオマスを直接適用して得られた食品上のプロバイオティックス生存度が非常に高いことが明らかになった。使用したプロバイオティックス生物によるが、プロバイオティックスは、実質的な損失を伴わずに最高で365日その活性を保持する。
【0028】
さらに、驚くべきことに、そのプロバイオティックス生物の種及び株にもよるが、食品に適用されたプロバイオティックスは、胃の環境、胃酸、及び胆汁酸に十分な耐性を示すことが判明した(in vitro試験)。
【0029】
本発明によって提供された摂取製品によれば、たとえば、摂取製品に適用する前に、プロバイオティックスに少なくとも1種の保護剤を加えてもよい。
【0030】
本発明によるプロバイオティックスは、発酵によって得てもよく、発酵後かつ摂取製品に適用する前に、たとえば、プロバイオティックスのcfuの実質的に損失させない時間及び温度で貯蔵することができる。発酵又は培養の終了後、バイオマスをある一定の期間貯蔵することができることは明らかである。実験では、異なるプロバイオティックスのバイオマスを5℃で4日間貯蔵したが、検出可能な損失はなかった。さらに、胃酸又は胆汁酸への耐性(in vitro試験)にも、貯蔵時間による影響がなかった。
【0031】
本発明の実施については、プロバイオティックスは、たとえば、発酵培地1mlあたり10〜5×1010、好ましくは10〜3×1010、より好ましくは1.5×10〜1010、更に好ましくは10〜9.5×10、特に2〜9×10cfuの最終濃度に達するまで発酵させればよい。
【0032】
たとえば、食品にかけるプロバイオティックスは、発酵培地1mlあたり10〜1012、好ましくは10〜5×1011、より好ましくは1.5×10〜1011、更に好ましくは10〜5×1010cfuの最終濃度まで濃縮することができる。
【0033】
発酵については、任意のプロバイオティックス微生物を使用すればよい。
【0034】
本発明によれば、プロバイオティックス株は、酵母、好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)属、カビ、好ましくはアスペルギルス(Aspergillus)属、細菌、好ましくはラクトバチルス(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、及びこれらの混合物を含む群から選択すればよい。たとえば、Lactobacillus johnsonii、Bifidobacterium lactis、Streptococcus thermophilus、又はLactobacillus paracasei種からの株を使用すればよい。たとえば、細菌のプロバイオティックスを生成する場合、Lactobacillus属、Streptococcus属、Bifidobacterium属、Bacteroides属、Clostridium属、Fusobacterium属、Melissococcus属、Propionibacterium属、Enterococcus属、Lactococcus属、Staphylococcus属、Peptostreptococcus属、Bacillus属、Pediococcus属、Micrococcus属、Leuconostoc属、Weissella属、Aerococcus属、Oenococcus属から株を選択すればよい。
【0035】
したがって、本発明の実施形態では、たとえば、Bifidobacterium lactis(DSM20215)、Lactobacillus johnsonii(I−1225 CNCM)、Lactobacillus paracasei(I−2116 CNCM)、Streptococcus thermophilus(TH4、Chr.Hansen、DK)、これらの混合物、及び他のプロバイオティックス微生物も含む混合物を含む群からプロバイオティックス株を選択してもよい。
【0036】
本発明によれば、摂取製品に添加した新鮮なプロバイオティックス・バイオマスの百分率は、たとえば、摂取製品の0.05〜4重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、最も好ましくは0.2〜1重量%でよい。
【0037】
したがって、摂取製品に適用されたプロバイオティックスの最終濃度は、摂取製品総重量について、たとえば10〜10、より好ましくは10〜10、最も好ましくは2〜8×10cfu/gでよい。
【0038】
プロバイオティックスによって産生された代謝産物を含む摂取製品によれば、摂取製品に発酵培地を直接適用してよい。
【0039】
本発明の方法によれば、たとえば、発酵培地1mlあたり10〜5×1010、好ましくは10〜3×1010、より好ましくは1.5×10〜1010、更に好ましくは10〜9.5×10、特に2〜9×10のプロバイオティックスcfuの最終濃度に達するまで発酵を続けてよい。
【0040】
本発明の方法は、最終摂取製品の所望の濃度及び水分活性(Aw)に従って、摂取製品に新鮮なバイオマスを適用する前に、たとえば、発酵培地1mlあたり10〜1012、好ましくは10〜5×1011、より好ましくは1.5×10〜1011、更に好ましくは10〜5×1010cfuの最終濃度までバイオマスを濃縮することを含んでよい。
【0041】
たとえば、最初及び/又は貯蔵寿命中の摂取製品のAwは、0.5未満である。Awは、0.4未満であることが好ましく、0.3より低いことがより好ましい。最も好ましくは、摂取製品のAwは0.2未満である。たとえば、摂取製品の貯蔵寿命中のAwは、0.005〜0.3又は0.01〜0.15の範囲内である。
【0042】
製品が有し得るAwは、株が特定の条件で生存する能力に応じて変わり、株によって異なるといえる。
【0043】
摂取製品は、環境からの水分の取り込みを実質的に制限する包装材料を備えていることが好ましい。したがって、摂取製品包装材料のO透過率は、4.2ml/md未満、好ましくは3.8ml/md未満であることが好ましい。同様に、摂取製品包装材料の透湿速度(WVTR)は、好ましくは3.5g/md未満、より好ましくは3g/md未満である。当業者ならば、このような特性を有する材料を選択できる。たとえば、包装材料は、同時押出架橋配向低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでよい。袋は、気密密閉、たとえばヒートシールすればよい。
【0044】
上のことを特徴とする包装の目的は、摂取製品の貯蔵寿命中に好ましいAw値を維持することである。製品の貯蔵寿命は、最高で6カ月、好ましくは最高で12カ月、より好ましくは最高で18カ月、最も好ましくは最高で2年でよい。
【0045】
別の実施形態では、この方法が、発酵後、たとえば、プロバイオティックスを実質的に損失させない時間及び温度で、新鮮なバイオマスを貯蔵することをさらに含んでよい。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態では、この方法が、プロバイオティックスの新鮮なバイオマスを生成する前、最中、又は後に、たとえば、発酵培地又は新鮮なプロバイオティックス・バイオマスに少なくとも1種の保護剤を加えることをさらに含んでもよい。
【0047】
本発明による発酵プロセスは、たとえば、使用したプロバイオティックス微生物系統に応じて、6時間〜3日、好ましくは6〜20時間、より好ましくは7〜17時間続行してよい。
【0048】
本発明による方法によれば、上でプロバイオティックス含有摂取製品に関して述べたものと同じ株を使用すればよい。
【0049】
摂取製品に加わった新鮮なプロバイオティックス・バイオマスの百分率は、たとえば、摂取製品重量の0.05〜4重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、最も好ましくは0.2〜1重量%とすることが可能である。
【0050】
したがって、本発明の実施形態によれば、摂取製品にかけられたプロバイオティックスの最終濃度は、10〜10、より好ましくは10〜10、最も好ましくは2〜8×10、特に5×10cfu/摂取製品gでよい。
【0051】
必要ではないかもしれないが、発酵プロセスから新しく得たバイオマスを濃縮することができる。このような濃縮はたとえば、遠心分離又は濾過によって実現できる。濃縮のレベルによって、摂取製品1グラムあたりのcfu量を正確に加えることが可能になる。この濃度では、食品の貯蔵寿命中又は消化管を通過する間の、その後のcfuの損失を考慮に入れてもよい。製品全体の水分活性が決定的に増大しないように、摂取製品に未濃縮、若しくは比較的軽度にしか濃縮していないバイオマスを噴霧し、又は別な方法で適用することによって、高温乾燥プロセスを回避できる。「吸収による乾燥(absorbtive drying)」のために、高温乾燥プロセスの必要がなく、すでに乾燥した食品は、プロバイオティックス・バイオマスと混在し、かつそれに含まれている水をすばやく吸収する。適用プロセスの際に室温に曝せば、最終製品の水分活性が決定的に増大するのを十分に防げる。
【0052】
バイオマスを濃縮した場合、それによって得られた上清を捨てる必要はない。プロバイオティックスで発酵させた後の培地は、通常、プロバイオティックス自体と同様に有益な効果を有する代謝産物を含んでいる。したがって、バイオマスを濃縮した後の上清の培地も、摂取製品に適用してよい。
【0053】
本発明による方法の実施については、あらゆる種類の出発摂取製品を使用してよい。人間向けの食品及び飲料だけでなく、ペットフードもプロバイオティックスで強化してよい。当然、どの目的もすべて考えた栄養フォーミュラにプロバイオティックスを加えて供給してもよい。たとえば、スポーツマン又は運動競技者向け、特定の自然食品成分にアレルギーのある者や胃腸疾患のある者など、特別な栄養素を必要とする者向けの膨大な種類の栄養フォーミュラが存在する。たとえば、チョコレートや他の甘味製品にプロバイオティックスを加えて供給してもよい。実際、押出、加熱、又は別な方法で調製したあらゆる種類の食品にプロバイオティックスを添加してよい。たとえば、乾燥ペットフード、又はたとえば、粉類、すなわち小麦粉、粉乳、穀物粉、若しくは穀物フレークのような他の乾燥食品など、乾燥製品を使用すればよい。たとえばあらゆる種類の朝食シリアルにかけるのにプロバイオティックスを使用してよい。摂取製品の成分、原材料、又は出発材料にもプロバイオティックスを噴霧してもよい。たとえば、主にデンプン質材料を含む1種又は複数の加熱穀物生地粒子が適する。加熱穀物生地粒子は、たとえば、フレーク状シリアル、細切り全粒(shredded whole grains)、押出シリアル及び他の細切りシリアル、押し延ばし(rolled)シリアル、膨化穀粒(gun puffed grains)、焼成膨化(oven−puffed)シリアル、押出膨化シリアル、フレーク及び/又は加熱押出シリアル、押出膨張(extruded expanded)シリアル、焼成(baked)朝食シリアル、圧縮フレーク・ビスケットとして当分野の技術者に知られているもののいずれかでよい。フレーク状シリアルは、穀物グリッツ又は穀粒を酒と共に調理し、そうして得た調理済みの塊の外にペレットを形成させ、押し延ばし、トーストし、さらに可能性としてたとえば糖でコーティングすることによって調製すればよい。
【0054】
プロバイオティックス・バイオマスの製造は、当技術分野でよく知られているプロセスである。通常、特殊装備した発酵ユニット又はタンクを使用する。とはいえ、原則として、微生物を培養するのには、培地を含む無菌タンクも適するといえる。ある特定のプロバイオティックス株に特有の好みに応じて、培地組成を選択する。特定のプロバイオティックス株用の最適な培地組成は、一般に、供給業者から得たスターターのプロバイオティックス生物を含む。発酵が完了した後、バイオマスを摂取製品に直接適用する。摂取製品に適用できる適性を変えることなく、バイオマスを一定期間貯蔵することも可能である。特に、摂取製品の製造場所までの輸送が強いられる場合、プロバイオティックスのcfuを損失させない目的で、プロバイオティックス・バイオマスを一時的に凍結させてもよい。
【0055】
バイオマスを摂取製品に適用する前に、バイオマスを濃縮してもよい。強制するものではないが、たとえば、末端製品水分含有量の若干の増加でさえ避ける必要があるなら、濃縮ステップが相応するといえる。たとえば、1皿分が少ない摂取製品に限って十分な数字のcfuを含む必要があるからであろうと、他の理由であろうと、製品上のプロバイオティックスの最終濃度を特に高くする必要がある場合にも、濃縮を行ってよい。濃縮プロセスも、当技術分野でよく知られている。一般に、選択される方法は、濾過又は遠心分離である。
【0056】
最後に、濃縮されていようとなかろうと、プロバイオティックス・バイオマスを摂取製品にかける。この適用は、食品コーティングの一般規則に従って行えばよい。たとえば、製品をコンベヤ上で移送しながら、あるいはコーティング・ドラム中で行えばよい。噴霧系の設計においては、折れ曲がったパイプからスピニング円盤まで、非常に多くの選択肢が利用できる。いくつかの製品は、コーティング・ドラム、たとえば回転ドラム中で処理するのに適するといえる。コーティング・ドラムは、混合機と、穀類をスプレーに曝す機構の両方として役立つ。市販の2相(気相/液相)スプレー・ノズルを使用して、回転している穀類の頂上に噴霧してもよい。一般に、朝食シリアルとしての乾燥製品には、たとえば、ビタミン溶液でコーティングするのと同じ噴霧系を使用してよい。このような技術は、当技術分野でよく知られている。
【0057】
特殊性及び好みに応じて、cfuが実質的に損失しないことを考慮して、その時点でプロバイオティックスを含む食品を周囲温度又は高められた温度に曝してもよい。その性質又は最終食品の目的に応じて、食品を凍結させることもできる。当然、末端製品、又は摂取製品の目的に応じて、他の更なる処理又は加工を行ってもよい。例を挙げるとすれば、最終製品にNやN/COのような不活性なガス又はガス混合物を給気(aeration)することである。
【0058】
以下に示す実施例では、実例によって本発明による方法及び製品をより詳細に述べる。
【実施例】
【0059】
実施例に使用した株は以下のもの、すなわち、
−Bifidobacterium lactis:DSM20215(German Culture Collection)
−Streptococcus thermophilus(TH4)
−Lactobacillus johnsonii:I−1225(CNCM)
−Lactobacillus paracasei:I−2116(CNCM)
である。
Christian Hansen BioSystemsA/S(CHL)、10−12 Boge Alle,P.O Box407,DK−2970 Horsholm,Denmarkから入手した。
【0060】
実験については、ジュニア向けシリアル製品、朝食シリアルフレーク、シリアル/牛乳スナック、及び幼児用シリアル粉末を使用した。以下の表1に、これらの製品の組成及び製造方法を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
例1
異なる製品に適用したBifidobacterium lactisバイオマス:
Bifidobacterium lactisによる発酵を行い、次いで遠心分離によって濃縮した。発酵の詳細は、以下の表2及び3に示す。濃縮物に標準の保護剤を加えた。このバイオマスを卓上規模で種々の市販シリアル製品(上の表1を参照されたい)に加えた。
【0063】
卓上規模の適用では、回転式バッチ・コーティング・ドラムに1.5〜2kgのシリアル製品を装入し、2相(気相/液相)ノズルを備えた市販の噴霧ピストルを使用して、回転しているシリアルの頂上にバイオマスを噴霧した。噴霧前後に、バイオマスを含むピストルを慎重に秤量して、シリアルにかけたバイオマスの量が正確であったことを判断した。すべての例において、シリアル全体量の0.5%を加えた。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
表4が異論なく示すように、摂取製品1gあたりの生存数が高かった。水分活性は、貯蔵目的で許容される枠内に収まったままである。
【0068】
例2
ジュニア向けシリアル製品に適用したBifidobacterium lactis、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、 Streptococcus thermophilusバイオマス
種々の株で発酵を行い(発酵の詳細は、表5〜12に示す)、遠心分離によって濃縮した。濃縮物に標準の保護剤を加えた。市販のジュニア向けシリアル製品に全製品の0.5重量%の異なるバイオマスを卓上規模で加えた。(例1と同じ方法)
【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
ジュニア向けシリアル製品に適用した他の株も、生存数が十分であり、最終水分活性が低いことが明らかになった。
【0079】
例3
Lactobacillus johnsoniiを用いたジュニア向けシリアル製品の貯蔵寿命データ
Lactobacillus johnsoniiで発酵を行い、次いで遠心分離によって濃縮した(発酵の詳細については表14及び15を参照されたい)。濃縮物に標準の保護剤を加えた。このバイオマスを試験規模でジュニア向けシリアル製品に加えた。
【0080】
試験規模の適用では、100kg/hのジュニア向けシリアル製品を連続装荷(continuous enrobing)ドラムに導入した。0.5kg/hのLactobacillus johnsoniiバイオマスを一連の2相(気相/液相)ノズルでシリアル頂上に噴霧した。
【0081】
完成品をアルミニウム・ライナーに詰め、20℃で貯蔵寿命研究を行った(結果は表16を参照されたい)。
【0082】
【表14】

【0083】
【表15】

【0084】
【表16】

【0085】
貯蔵寿命研究では、最高で1年間貯蔵しても、製品上のcfu数がほとんど減少しないことが明らかになっている。
【0086】
例4
濃縮及び非濃縮Bifidobacterium lactisの、ジュニア向けシリアル製品への直接の添加、及びバイオマスを4日間貯蔵した後での添加
Bifidobacterium lactisで発酵を行い(表17及び18に詳細を示す)、標準の保護剤を加え、このバイオマスの一部分を直接に使用し、別の部分を遠心分離によって濃縮した。ジュニア向けシリアル製品に両方のバイオマスを卓上規模で加えた。かける前に5℃で4日間貯蔵した同じバイオマスを用い、別の系列の試験を行った。
【0087】
ベンチスケールでの適用では、2kgのシリアル製品を回転式バッチ・コーティング・ドラムに入れ、2相(気相/液相)ノズルを備えた市販の噴霧ピストルを使用して、回転しているシリアルの頂上にバイオマスを噴霧した。すべての例において、シリアル全体量の0.5%を加えた。ある例では、発酵後にバイオマスを直接使用し、他の例では、バイオマスを濃縮し、次いでかける前に4日間(5℃)貯蔵したバイオマスで同じステップを繰り返した。
【0088】
また消化管(gastric tract)への耐性について完成品をin vitroで分析した。
【0089】
【表17】

【0090】
【表18】

【0091】
【表19】

【0092】
表19が示すとおり、擬似腸内環境での損失は、許容される範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティックスによって産生された代謝産物を含み、その代謝産物が、発酵培地中で培養されたプロバイオティックスから分離された発酵培地中に含まれていたものである摂取製品。
【請求項2】
摂取製品に発酵培地を直接適用した請求項1に記載の摂取製品。
【請求項3】
プロバイオティックスによって産生された代謝産物を含む摂取製品を得る方法であって、液体培地中でプロバイオティックスを培養すること、プロバイオティックスから液体培地を分離すること、及び摂取製品に液体培地を直接適用することを含む方法。

【公開番号】特開2008−109945(P2008−109945A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18414(P2008−18414)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【分割の表示】特願2002−565417(P2002−565417)の分割
【原出願日】平成14年2月12日(2002.2.12)
【出願人】(590002013)ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー (31)
【Fターム(参考)】