説明

プロピレン系樹脂の重合システム

【課題】複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムであって、グレード変更(グレードチェンジ)に伴う異種グレードの製品グレードへの混入を防止し、よってコスト的に有利に高品質のプロピレン系樹脂を製造することができるという優れた効果を有するプロピレン系樹脂の重合システムを提供する。
【解決手段】複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムであって、一以上の共通の反応器を有し、かつ該反応器に接続された二以上の独立の反応器を有するプロピレン系樹脂の重合システム。対象となるプロピレン系樹脂としては、ホモポリマー、ブロック共重合体、ランダム共重合体等をあげることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂の重合システムに関するものである。更に詳しくは、本発明は、複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムであって、グレード変更(グレードチェンジ)に伴う異種グレードの製品グレードへの混入を防止し、よってコスト的に有利に高品質のプロピレン系樹脂を製造することができるという優れた効果を有するプロピレン系樹脂の重合システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系樹脂の重合システムとしては、たとえば特許文献1、特許文献2、特許文献3に少なくともチタン及び/またはバナジウムならびにマグネシウムを含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を反応器へ供給し定常的にオレフィンの重合または共重合を開始する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の方法においては、グレード変更(グレードチェンジ)に伴う異種グレードの製品グレードへの混入が発生し、製品の品質を低下させるという問題点があった。また、この問題を防止するためには、グレード変更時に前に製造したグレードが反応系から完全に排出されるための長期の移行期間を要し、コスト的に不利であるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−199940号公報
【特許文献2】特開平6−199941号公報
【特許文献3】特開平6−199944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムであって、グレード変更(グレードチェンジ)に伴う異種グレードの製品グレードへの混入を防止し、よってコスト的に有利に高品質のプロピレン系樹脂を製造することができるという優れた効果を有するプロピレン系樹脂の重合システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムであって、一以上の共通の反応器を有し、かつ該反応器に接続された二以上の独立の反応器を有するプロピレン系樹脂の重合システムにかかるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムであって、グレード変更(グレードチェンジ)に伴う異種グレードの製品グレードへの混入を防止し、よってコスト的に有利に高品質のプロピレン系樹脂を製造することができるという優れた効果を有するプロピレン系樹脂の重合システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の対象となるプロピレン系樹脂としては、ホモポリマー、ブロック共重合体、ランダム共重合体等をあげることができる。
【0009】
本発明のシステムは、一以上の共通の反応器を有する。
【0010】
また、本発明のシステムは、上記の共通の反応器に接続された二以上の独立の反応器を有する。該反応器としては、バルク重合、スラリー重合、気相重合等が行える、ベッセルタイプリアクター、ループリアクター、流動層型反応器等があげられる。
【0011】
本発明のシステムは複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムである。以下、本発明のシステムの使用用法について、具体的に説明する。
【0012】
多段連続重合により、高コモノマー含量部を生産するグレードから、低コモノマー含量部(ホモ部含む)を生産するグレードへグレード変更(グレードチェンジ)時、高コモノマー含量を生産していた槽から独立した低コモノマー含量専用の予備槽へ接続を切り替える事で、全槽をブローダウンすることなく、異種グレードの製品グレードへの混入を防止し、コスト的に有利にグレード変更(グレードチェンジ)することができる。
【実施例】
【0013】
次に本発明を実施例により説明する。
【0014】
実施例1
図1に示すループリアクター1基と流動層反応器(A)及び(B)2槽を3基連結してなる装置のバルク重合槽に、プロピレン、エチレン、水素、トリエチルアルミニウム、ターシャリーブチル-ノルマルプロピル-ジメトキシ-シランおよび予備重合触媒成分のスラリーを連続的に供給し、重合温度:52℃、重合圧力:3250kPa、反応器内の水素供給量:供給プロピレンに対して0.000207モル/モル、エチレン供給量:供給プロピレンに対して0.0225モル/モル、トリエチルアルミニウムの供給量:供給プロピレンに対して100wtppm、ターシャリーブチル-ノルマルプロピル-ジメトキシ-シランの供給量:トリエチルアルミニウムの供給量に対して0.9モル/モル、予備重合触媒成分のスラリーの供給量:固体触媒成分換算し、供給プロピレンに対して22.0wtppmの条件で重合を行い、バルク重合槽から流動層反応器(A)へ連続的に重合体粒子を移送した。
【0015】
流動層反応器(A)に、プロピレン、エチレン、水素、トリエチルアルミニウムおよびターシャリーブチル-ノルマルプロピル-ジメトキシ-シランを連続的に供給し、重合温度:69℃、重合圧力:1900kPaG、循環ガス流速:16.7cm/s、反応器内のプロピレン濃度:98.3体積%、エチレン濃度:1.5体積%、水素濃度:0.2体積%の条件で重合を行い、平均滞留時間:3.8時間となるように槽レベルを調整し、流動層反応器(A)から流動層反応器(B)へ連続的に重合体粒子を移送した。
【0016】
流動層反応器(B)に、プロピレン、エチレン、水素を連続的に供給し、重合温度:72℃、重合圧力:1300kPaG、循環ガス流速:22.4cm/s、反応器内のプロピレン濃度:93.6体積%、エチレン濃度:6.1体積%、水素濃度:0.3体積%の条件で重合を行い、平均滞留時間:3.6時間となるように、流動層反応器(B)から連続的に重合体粒子を抜き出し、プロピレン−エチレンランダム共重合体粒子を得た。
【0017】
上記グレードを生産後、バルク重合槽1槽と流動層反応器(A)及び(C)2槽を3基連結してなる装置を用いてホモグレードへグレード変更を行った。
【0018】
グレード変更時、バルク重合槽への予備重合触媒成分のスラリーの供給及び重合体粒子の抜き出しを停止し、固体触媒の種類を変更した。その間、バルク重合槽内は一旦全量ブローダウンを行い、その後、重合槽内をプロピレンで満たし、重合温度:60℃、重合圧力:3250kPaに調整を行った。
【0019】
流動層反応器(A)は、重合体粒子の抜き出しを停止し、重合温度:75℃、重合圧力:1500kPaG、循環ガス流速:14.7cm/s、反応器内のプロピレン濃度:94.1体積%、水素濃度:5.9体積%となるよう調整を行った。
【0020】
流動層反応器(B)の全量ブローダウンを行っている間に流動層反応器(C)の槽内を重合温度:75℃、重合圧力:800kPaG、循環ガス流速:17.6cm/s、反応器内のプロピレン濃度:90.0体積%、水素濃度:10.0体積%の条件に調整を行った。
【0021】
ループリアクターへの予備重合触媒成分のスラリーの供給を停止してから8時間後、ループリアクターへの予備重合触媒成分のスラリーの供給及びトリエチルアルミニウムおよびターシャリーブチル-ノルマルプロピル-ジメトキシ-シランの供給を開始した。その後、ループリアクターから流動層反応器(A)へ、流動層反応器(A)から流動層反応器(C)へと重合体粒子を移送し、プロピレンホモポリマー粒子を得た。
【0022】
比較例1
図1に示す流動層反応器(A)及び(B)を2基連結してなる装置の流動層反応器(A)に、プロピレン、エチレン、水素、トリエチルアルミニウムおよびターシャリーブチル-ノルマルプロピル-ジメトキシ-シランを連続的に供給し、重合温度:69℃、重合圧力:1900kPaG、循環ガス流速:19.6cm/s、反応器内のプロピレン濃度:98.4体積%、エチレン濃度:1.5体積%、水素濃度:0.078体積%の条件で重合を行い、平均滞留時間:5.5時間となるように槽レベルを調整し、流動層反応器(A)から流動層反応器(B)へ連続的に重合体粒子を移送した。
【0023】
流動層反応器(B)に、プロピレン、エチレン、水素を連続的に供給し、重合温度:71.1℃、重合圧力:1030kPaG、循環ガス流速:17.7cm/s、反応器内のプロピレン濃度:87.4体積%、エチレン濃度:12.5体積%、水素濃度:0.1体積%の条件で重合を行い、平均滞留時間:3.1時間となるように、流動層反応器(B)から連続的に重合体粒子を抜き出し、プロピレン−エチレンランダム共重合体粒子を得た。
【0024】
上記グレードを生産後、全ての槽内を開放して内部点検を行ったところ、特にエチレン濃度の高かった流動層反応器(B)について、壁面への共重合体粒子の付着が著しく、前グレードの次グレードへの混入が懸念された。そのため、全槽ブローダウン及び開放掃除を行う必要があり、5日間運転を停止した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のシステムの概略を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ループリアクター
2 流動層反応器(A)
3 流動層反応器(B)
4 流動層反応器(C)
5 バルク重合槽から流動層反応器(A)への重合体粒子抜き出しライン
6 流動相反応器(A)から流動層反応器(B)への重合体粒子抜き出しライン
7 流動相反応器(A)から流動層反応器(C)への重合体粒子抜き出しライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグレードのプロピレン系樹脂を製造するための重合システムであって、一以上の共通の反応器を有し、かつ該反応器に接続された二以上の独立の反応器を有するプロピレン系樹脂の重合システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−74949(P2008−74949A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255388(P2006−255388)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】