説明

プロピレン系重合体およびその製造方法

【目的】 溶融張力が十分に大きく、かつ成形樹脂の均肉性および形状安定性に優れたプロピレン系重合体およびその製造方法を提供する。
【構成】 伸長粘度の非線形性の大きさを示すλ値[λ=λ1 /λ0 、λ0 は変位点での伸長粘度、λ1 は歪が変位点での歪の2倍になったときの伸長粘度であり、変位点とは伸長粘度の線形領域(微小変形領域)と非線形領域(大変形領域)が変位する点である。]が2.0以上6.0未満であることを特徴とするプロピレン系重合体および特定のメタロセン化合物とアルミノキサン化合物もしくは非配位性イオン化合物からなる触媒系を用いる該プロピレン系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融張力に優れ、伸長粘度の非線形性が大きいプロピレン系重合体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、従来のポリプロピレンの溶融特性が改善されており、成形樹脂の均肉性および形状安定性に優れたプロピレン系重合体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プロピレン系重合体は、他のポリオレフィンに比較して透明性、剛性、表面光沢性、耐熱性に優れており利用価値は大きい。しかしながら、溶融張力が小さいためにブロー成形、シート成形、ラミネート成形、発砲成形等に劣っていた。また、伸長粘度の非線形性が小さいため、特に成形樹脂の均肉性および形状安定性に劣っている。
【0003】これらの欠点を改良する方法として高圧法低密度ポリエチレンを添加する方法等が知られている。しかし、この方法ではポリプロピレンの本来の透明性、剛性、耐熱性を損なうことになり、十分な改良とは言えない。α−オレフィンと両末端ジエンの共重合により溶融張力改善をする方法が、特開昭47−43981等に記載されているが、効果が示されているのはエチレン系重合体に限られており、プロピレン系重合体では十分な改良結果は示されていない。
【0004】また、非共役ジエンとプロピレン等との共重合体の例について多数の報告がある。末端にビニル型二重結合を1つ有する分岐ジエンの例としては、特開平4−173814、特開平4−170407、特開平3−177402、特開平2−281011、特開平4−28706、特開平4−25510、特開平2−145611、特開昭62−115007等が挙げられる。これらはチーグラー・ナッタ系触媒を用いるため、非共役ジエンのポリマーへの転化率が小さい。加えて、非ビニル型である二重結合がポリマー中に導入されないために有効な架橋構造が形成されず、溶融張力は改善されていない。両末端にビニル型二重結合を有する非共役ジエンの例としては、特開平6−80729、特開平3−290416、特開平3−290417等が挙げられるが、これらもチーグラー・ナッタ系触媒を用いるため、非共役ジエンのポリマーへの転化率が小さく、有効な手段とは言えない。
【0005】最近、メタロセン系触媒を用いた非共役ジエンとプロピレン等との共重合体の例が報告されている。例えば、特開平5−222251、特開平5−222121等が挙げられる。これらの例で用いられるメタロセン系触媒は、通常の重合においてmm%が98%未満と十分に大きくなく、また分子量も不十分であり、加えて溶融張力および伸長粘度の非線形性が不十分なため実用上に供し得ない。
【0006】そのほか溶融張力の改善されたプロピレン系重合体の製造方法としては、a.放射線(高エネルギー線)の照射。
b.パーオキサイド架橋。
等の方法があり、これらも、重合後に部分的な架橋を施し、長鎖分岐を導入することで溶融特性を改善する方法である。しかし、aでは大がかりな設備を必要とし、bでは混練を必要とするのでコスト的には望ましくない。また、aおよびbの方法とも樹脂の劣化も同時におこるので樹脂本来の性能が損なわれ易い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、前記従来技術における問題点を解決し溶融張力や歪硬化時の伸長粘度が十分に大きいプロピレン系重合体およびその経済的な製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、メタロセン化合物を用いてプロピレンと少量の多価エンを共重合することで、溶融張力や歪硬化時の伸長粘度が十分に大きいプロピレン系重合体となること、およびその効果的な製造方法を見いだし本発明に到達した。
【0009】以下、本発明について詳細を説明する。本発明におけるプロピレン系重合体とは、エチレンまたはα−オレフィンを0〜10重量%含むホモポリプロピレンおよびランダムポリプロピレン、一段目でホモポリプロピレンまたはランダムポリプロピレンを重合した後に、二段目で逐次的にプロピレンとエチレンまたはα−オレフィンからなるゴム成分を5〜70重量%重合したブロックポリプロピレンを意味する。ランダムポリプロピレンに含まれるプロピレン含有量は90重量%以上であり、これ未満であると本来の剛性が損なわれる。一方、ゴム成分に含まれるプロピレン含有量は40〜70重量%が好ましい。上記で用いられるα−オレフィンは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン等が挙げられる。
【0010】本発明におけるλ値とは多価エンが存在する事により発現する伸長粘度の非線形性の大きさの指標であり、各種の成形における歪硬化の大きさをその前後の伸長粘度比で表したものである。ここで、λ=λ1 /λ0[λ0 は変位点での伸長粘度、λ1 は歪が変位点での歪の2倍になったときの伸長粘度である。変位点とは伸長粘度の線形領域(微小変形領域)と非線形領域(大変形領域)が変位する点である。]
λ値の範囲は2.0以上6.0未満である事が好ましく、特に均肉性を重要とする場合は3.0以上5.0未満であることが好ましい。λ値が2.0未満であると十分な歪硬化が発現しないために成形樹脂の均肉性および形状安定性に劣り、また6.0以上であるとポリマーの溶融流動性が低下し実際の成形が困難となる。加えて、ゲル等の発生が顕著になる。
【0011】本発明において使用される多価エンは非共役のビニル基を複数個有し、少なくともビニル型二重結合を2つ以上有する炭素数5〜80で分子量が1100以下の多価エンが有効である。さらに有効な多価エンは炭素数8〜20である。ビニル型二重結合が1つの場合、有効に溶融張力および歪硬化時の伸長粘度を上げることができない。
【0012】具体例としては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、3−メチル−1,4−ペンタジエン、4−メチル−1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,5,9−デカトリエン等が挙げられる。
【0013】本発明において、得られるポリオレフィンに導入される多価エンの含有量は、0.05〜2重量%である。0.05重量%未満であると溶融特性を上げる効果が顕著でなく、2重量%以上であるとゲル等の発生が見られ実用上問題になる。望ましくは0.05〜1重量%であり、さらに外観を重要視するフィルム等の分野には0.05〜0.2重量%が望ましい。
【0014】本発明で使用されるメタロセン化合物は、C1 対称性を有する一般式(1)またはC2 対称性を有する一般式(2)で表される。一般式(1)は、
【化3】


[式(1)中Mは、Ti、Zr、Hfのいずれかの遷移金属を意味する。X1およびX2 は、互いに同じでも異なってもよく、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基、ハロゲン原子を意味する。R1 、R2 、R5 、R6 は、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、アルキルシリル基を意味し、R1 、R2 のうちどちらか一方は水素原子でない。また、R3 、R4 は、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基を意味し、互いに結合して環を形成してもよい。Yは炭素原子またはケイ素原子を意味する。式中nは、1から3の整数である。]で示される。シクロペンタジエニル環上の置換基は、炭素数1から10の炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等)、または、アルキルシリル基(トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基等)であるが、好ましくは、メチル基以上の嵩高さを持つtert−ブチル基等の置換基である。
【0015】一般式(2)は、
【化4】


[式(2)中Mは、Ti、Zr、Hfのいずれかの遷移金属を意味する。X1およびX2 は、互いに同じでも異なってもよく、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基、ハロゲン原子を意味する。R1 は炭素原子数1から10の炭化水素基、アルキルシリル基を意味し、R4 、R5 は、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、アルキルシリル基を意味する。また、R2 、R3 は、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基を意味し、互いに結合して環を形成してもよい。Yは炭素原子またはケイ素原子を意味する。式中nは、1から3の整数である。]で示される。
【0016】一般式(1)および(2)で表されるメタロセン化合物のMがZr、X1 およびX2 が塩素原子の場合の具体例を以下に示す。一般式(1)の例としては、エチレン(4−メチル−シクロペンタジエニル)(3−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(4−メチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチル−シクロペンタジエニル)(3−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0017】一般式(2)の例としては、エチレンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−エチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2,4−ジメチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4−トリメチルシリル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(2−エチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(2,4−ジメチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(2−メチル−4−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(2−メチル−4−トリメチルシリル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−トリメチルシリル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0018】該重合に用いられるアルミノキサン化合物および非配位性イオン化合物について以下に説明する。本発明において使用されるアルミノキサン化合物は、一般式(3)または、一般式(4)で表わされる有機アルミニウム化合物である。
一般式(3)
【化5】


一般式(4)
【化6】


7 は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基などの炭化水素基であり、好ましくは、メチル基である。mは、4から100の整数であり、好ましくは6以上とりわけ10以上である。この種の化合物の製法は、公知であり例えば結晶水を有する塩類(硫酸銅水和物、硫酸アルミ水和物)の炭化水素溶媒懸濁液にトリアルキルアルミを添加して得る方法を例示することが出来る。アルミノキサン化合物は、シリカ、アルミナ、塩化マグネシウムなどの担体に担持して使用することができる。また、各プロセスに適するように改質することも可能である。例えば、非液相重合法で用いる場合には水もしくは電子供与性化合物等で改質することができる。
【0019】非配位性イオン化合物は次式で表される。
(MX1234(n-m)-・C(n-m)+(上記式中、Mは、周期律表中5族から15族から選ばれる金属、X1 ,X2,X3 ,X4 は、それぞれ水素原子、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基、有機メタロイド基または、ハロゲン原子を示す。Cは、カルボニウム、アンモニウム等のカウンターカチオンを示す。mは、Mの原子価で1〜7の整数、nは、2〜8の整数である。)
【0020】具体的にこれらの化合物を例示すると、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリ(n−ブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリプロピルアンモニウムテトラキス(3,5トリフルオロメチルフェニル)ボレ−トなどを例示することができる。好ましくは、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トあるいはジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トである。
【0021】本発明で用いられる重合方法は、液相重合(溶媒使用の溶液重合、例えば高温溶液重合、および溶媒不使用の溶融重合、例えば高圧重合)、スラリー重合(溶媒使用系および溶媒不使用系、例えばバルクスラリー重合)、気相重合のいずれも可能である。また、同種もしくは異種のプロセスを複数個連続させた多段重合も可能である。
【0022】該重合においてアルミノキサン化合物を用いる場合、メタロセン化合物およびアルミノキサン化合物の両成分を予め混合したものを反応系に供給してもよく、反応系に両成分をそれぞれ供給してもよい。いずれの場合においても両成分の重合系内に於ける濃度モル比については、とくに制限はないが、好ましくは、錯体濃度で10-3から10-10 mol/lであり、Al/錯体のモル比は、10以上、とくに100以上の範囲が好んで用いられる。
【0023】該重合において非配位性イオン化合物を用いる場合、メタロセン化合物、トリアルキルアルミニウムおよび非配位性イオン化合物の各成分を予め混合したものを反応系に供給してもよく、反応系に各成分をそれぞれ供給してもよい。いずれの場合においても各成分の重合系内に於ける濃度モル比については、とくに制限はないが、好ましくは、錯体濃度で10-3から10-10 mol/lであり、トリアルキルアルミニウム/錯体のモル比は50〜1000の範囲が、非配位性イオン化合物/錯体のモル比は0.5〜10、特に1〜5の範囲が好んで用いられる。
【0024】反応系のオレフィン圧には特に制限はないが、好ましくは、常圧から50kg/cm2 Gの範囲である。多価エンの供給量は反応系内のオレフィンに対しし0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。重合温度にも制限はないが、好ましくは−30℃から200℃の範囲であり、特に好ましくは、0℃から80℃の範囲である。重合に際しての分子量調節は、公知の手段、例えば温度の選定あるいは水素の導入により行なうことができる。
【0025】本発明で得られるプロピレン系重合体は従来使用しうる分野に適用できる。例えば、射出成形品、フィルム、シート、ブロー、ラミ、発砲あるいは繊維等の分野が挙げられる。また、通常の成形加工法によって成形できる。安定剤等の添加剤としては当該の業界で使用されるものを適用できる。さらに、通常知られる他の樹脂、例えばポリプロピレン、EPR、EBR、EPDM等のゴムと混合して使用できる。さらに、核剤、無機充填剤、繊維等と組み合わせて使用することもできる。また、従来のポリオレフィンと同様に無水マレイン酸等をグラフト反応等の変性、架橋、ビスブレーク等を行う事も可能である。
【0026】
【実施例】次に本発明を実施例によって具体的に説明する。なお物性測定に使用した分析機器を下記に示す。多価エンの含有量およびmm%は、日本電子製EX−400を用いた13C−NMR測定により求めた。MFRはJIS K6760に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。溶融張力(MT)の値は東洋精機(株)社製のメルトテンションテスターII型を用い、オレフィス径2.095±0.005mm、オレフィス長さ8.000±0.025mm、樹脂温度230℃、引き取り速度6.5m/分、押しだし速度15m/分で測定した値である。伸長粘度は東洋精機社製キャピラリー式レオメーターを用い、成形温度230℃にて得た直径3mmの均一なストランドを試料とし、東洋精機社製伸長粘度測定装置を用い、測定温度180℃、歪速度0.1s-1で測定した。また、東洋精機製の二軸延伸装置にて成形した厚み約20μmのフィルムによりゲル成分の有無を確認した。
【0027】(実施例1)特開平5−209013に従い、イソプロピリデン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成を行った。
[重合]十分に窒素置換した内容積1.2リットルのSUS製オートクレーブにトリイソブチルアルミニウムの0.5mmol/mlヘキサン溶液1.5mlと1,7−オクタジエンの0.5gを添加し、プロピレン6molを投入後、25℃に保った。次いでトリイソブチルアルミニウムの0.5mmol/mlヘキサン溶液1ml、イソプロピリデン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリドの1μmol/mlトルエン溶液1mlおよびトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トの2μmol/mlトルエン溶液0.75mlを予め窒素置換したフラスコ中で混合した溶液を追添装置より窒素で圧入することで重合を開始した。重合は60分間行い、85gのポリマーを得た。結果を表1に示す。
【0028】(実施例2)1,7−オクタジエンの代わりに1,9−デカジエンを用いた以外は実施例1に従って重合を行い、93gのポリマーを得た。
【0029】(実施例3)1,9−デカジエンの使用量を2.6gとした以外は実施例2に従って重合を行い、87gのポリマーを得た。
【0030】(実施例4)1,7−オクタジエンの代わりに1,13−テトラデカジエンの1.3gを用いた以外は実施例1に従って重合を行い、48gのポリマーを得た。
【0031】(実施例5)十分に窒素置換した内容積1.2リットルのSUS製オートクレーブに東ソー・アクゾ製メチルアルミノキサン(アルミ換算で2.7mol/lのトルエン溶液)の1mlと1,9−デカジエンの0.5gを添加し、次いでイソプロピリデン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリドの1μmol/mlトルエン溶液1mlを投入した。次いでプロピレン6molを投入し、25℃にて60分間重合を行った。79gのポリマーを得た。結果を表1に示す。
【0032】(実施例6)十分に窒素置換した300mlフラスコに東ソー・アクゾ製メチルアルミノキサン(アルミ換算で1.3mol/lのトルエン溶液)の50mlとトルエンの50mlを加え、次いでリン酸トリエチル1.16gを加え、80℃にて4時間加熱撹はんを行った。トルエンで洗浄を行い、固体状の改質メチルアルミノキサンを得た。
[重合]十分に窒素置換した内容積1.2リットルのSUS製オートクレーブにトリイソブチルアルミニウムの0.5mmol/mlヘキサン溶液2.5ml、上記で調製したリン酸トリエチル改質メチルアルミノキサンの50mg、イソプロピリデン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(3−tブチル−インデニル)ジルコニウムジクロリドの1μmol/mlトルエン溶液1mlを投入した。次いで1,9−デカジエンの0.5gをプロピレン6molと共に投入し、25℃にて60分間重合を行った。83gのポリマーを得た。結果を表1に示す。
【0033】(実施例7)十分に窒素置換した内容積1.2リットルのSUS製オートクレーブにトリイソブチルアルミニウムの0.5mmol/mlヘキサン溶液1.5mlと1,9−デカジエンの0.5gを添加した。水素1.0mmolおよびプロピレン6molを投入後、25℃に保った。次いでトリイソブチルアルミニウムの0.5mmol/mlヘキサン溶液1ml、ジメチルシリレン(4−tブチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドの1μmol/mlトルエン溶液1mlおよびトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トの2μmol/mlトルエン溶液0.75mlを予め窒素置換したフラスコ中で混合した懸濁液を追添装置より窒素で圧入することで重合を開始した。重合は60分間行い、12gのポリマーを得た。結果を表1に示す。
【0034】(実施例8)メタロセン化合物にジメチルシリレンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は実施例7に従って重合を行い、14gのポリマーを得た。
【0035】(実施例9)メタロセン化合物にジメチルシリレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は実施例7に従って重合を行い、88gのポリマーを得た。
【0036】(実施例10)十分に窒素置換した内容積1.2リットルのSUS製オートクレーブにトリイソブチルアルミニウムの0.5mmol/mlヘキサン溶液1.5mlと1,9−デカジエンの2.6gおよび1−ヘキセンの5.0gを添加した。水素1.0mmolおよびプロピレン6molを投入後、25℃に保った。次いでトリイソブチルアルミニウムの0.5mmol/mlヘキサン溶液1ml、ジメチルシリレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリドの1μmol/mlトルエン溶液1mlおよびトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トの2μmol/mlトルエン溶液0.75mlを予め窒素置換したフラスコ中で混合した懸濁液を追添装置より窒素で圧入することで重合を開始した。重合は60分間行い、86gのポリマーを得た。
【0037】(比較例1)1,7−オクタジエンを用いない以外は実施例1と同様に重合を行った。結果、70gのポリマーを得た。MFR=53と分子量は小さく、溶融特性に劣る。結果を表1に示す。
【0038】(比較例2)1,9−デカジエンの使用量を0、017gとした以外は実施例2と同様に重合を行った。結果、74gのポリマーを得た。MFR=16と分子量は小さく、溶融特性に劣る。
【0039】(比較例3)1,9−デカジエンの使用量を17g、プロピレン供給量を3molとした以外は実施例2と同様に重合を行った。結果、45gのポリマーを得た。二軸延伸フィルムの外観上ゲルが認められた。
【0040】(比較例4)1,7−オクタジエンの代わりに1,3−ブタジエンの2.6gを用いた以外は実施例1と同様に重合を行い、11gのポリマーを得た。
【0041】(比較例5)1,7−オクタジエンの代わりに1−ヘキセンの5.0gを用いた以外は実施例1と同様に重合を行い、82gのポリマーを得た。MFR=60と分子量は小さく、溶融特性に劣る。
【0042】(比較例6)1,9−デカジエンを用いない以外は実施例7と同様に重合を行い、13gのポリマーを得た。結果を表1に示す。
【0043】(比較例7)1,9−デカジエンを用いない以外は実施例8と同様に重合を行い、13gのポリマーを得た。結果を表1に示す。
【0044】(比較例8)1,9−デカジエンを用いない以外は実施例9と同様に重合を行い、88gのポリマーを得た。結果を表1に示す。
【0045】(比較例9)メタロセン化合物にエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は実施例2に従って重合を行い、41gのポリマーを得た。MFR=15と分子量が小さく、溶融特性に劣る。
【0046】
【表1】


【0047】
【発明の効果】本発明によれば、溶融張力および伸長粘度の非線形性が十分に大きく、成形樹脂の均肉性および形状安定性に優れたプロピレン系重合体を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 伸長粘度の非線形性の大きさを示すλ値が2.0以上6.0未満である事を特徴とするプロピレン系重合体。ここでλ=λ1 /λ0[λ0 は変位点での伸長粘度、λ1 は歪が変位点での歪の2倍になったときの伸長粘度である。変位点とは伸長粘度の線形領域(微小変形領域)と非線形領域(大変形領域)が変位する点である。]
【請求項2】 多価エンを0.05ないし2重量%含有する事を特徴とする請求項1記載のプロピレン系重合体。
【請求項3】 一般式(1)または(2)で示されるメタロセン化合物およびアルミノキサン化合物もしくは非配位性イオン化合物からなる触媒系を用いて重合する事を特徴とする、請求項1または2記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【化1】


[式(1)中Mは、Ti、Zr、Hfのいずれかの遷移金属を意味する。X1およびX2 は、互いに同じでも異なってもよく、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基、ハロゲン原子を意味する。R1 、R2 、R5 、R6 は、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、アルキルシリル基を意味し、R1 、R2 のうちどちらか一方は水素原子でない。また、R3 、R4 は、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基を意味し、互いに結合して環を形成してもよい。Yは炭素原子またはケイ素原子を意味する。式中nは、1から3の整数である。]
【化2】


[式(2)中Mは、Ti、Zr、Hfのいずれかの遷移金属を意味する。X1およびX2 は、互いに同じでも異なってもよく、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基、ハロゲン原子を意味する。R1 は炭素原子数1から10の炭化水素基、アルキルシリル基を意味し、R4 、R5 は、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、アルキルシリル基を意味する。また、R2 、R3 は、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、または、アルキルシリル基を意味し、互いに結合して環を形成してもよい。Yは炭素原子またはケイ素原子を意味する。式中nは、1から3の整数である。]