説明

プロペラ旋回式推進機の制御装置

【課題】オートパイロット航行中でもハンドル信号発信器により操舵できるようにする。
【解決手段】ハンドル信号発信器9からの直線形信号をデジタル数値として読み取るA/Dコンバータ19と、該デジタル数値を実角度に関数演算して、オートパイロット装置17から送られる船舶を目的の方位に保針させるためのデジタル角度信号を加減算演算してプロペラ旋回式推進機角度を決定し、直線形信号に関数演算するCPU演算処理装置20と、該直線形信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ21を有するマイクロコンピュータ22を備え、更に、ONにしたときハンドル信号発信器をA/Dコンバータ19に接続するようにする切り替えリレースイッチ23を備えるインターフェース18を構成する。インターフェース18の切り替えリレースイッチ23をハンドル信号発信器9と制御部6内の位置決め回路14に接続させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦装置による通常のプロペラ旋回式推進機動作とオートパイロット装置を
用いたオートパイロットによるプロペラ旋回式推進機動作で船舶を目的の方位に航行させ
るようにするプロペラ旋回式推進機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロペラ旋回式推進機を制御して船体の推進方向を所望の方向に設定する場合に、オー
トパイロット装置により設定した方位を操縦装置に触れずに保持しながら自動的に航行す
るようにしたプロペラ旋回式推進機の制御装置は、既に提案されている。
【0003】
従来のプロペラ旋回式推進機の制御装置の一例を示すと、図3(イ)(ロ)(ハ)に示
す如きのものがある。
【0004】
すなわち、図3(イ)は従来知られているプロペラ旋回式推進機の制御装置を概略的に
示すもので、船舶2の船尾部の左右両側部に設けてある2基のプロペラ旋回式推進機1は
、図示してない主機の略水平な駆動軸に連動する垂直軸1aと、該垂直軸1aを中心に船
体の外で360度旋回することができるようにしてある筐体(図示せず)と、該筐体の中
に設けられて上記垂直軸1aに連動する略水平な推進軸1bと、推進軸1bに設けられて
筐体の外で回転するプロペラ1cとを有し、主機の駆動を、駆動軸から垂直軸1a、推進
軸1bに伝えてプロペラ1cを回転させるようにしてある。又、プロペラ旋回式推進機1
は、駆動装置である油圧装置(傾転ポンプ、油圧モータ、サーボ弁)により垂直軸1aを
中心に360度旋回させられるようにしてあり、これにより船体の推進方向が所望の方向
に設定され、2基のプロペラ旋回式推進機1の角度によって、船舶2の急旋回、一点旋回
、急速前後進、横すべり、微速航行等の操船を容易に行うことができるようにしてある。
【0005】
因に、図3(ロ)は船舶2を前進させる通常運転状態を、図3(ハ)はプロペラ旋回式
推進機1をハの字状にして船舶2を前進させる微速運転状態を示している。
【0006】
図4は従来知られているプロペラ旋回式推進機の制御装置の詳細を示すもので、船舶2
(図3参照)に設けられたプロペラ旋回式推進機1を旋回させるようにする上記駆動装置
のサーボ弁のコイル3と、プロペラ旋回式推進機1の方向を検出してsin、cos信号
を出力する追従発信器4と、プロペラ旋回式推進機の方向が設定されてこれに対応するs
in、cos信号を出力する操縦部5と、操縦部5からのsin、cos信号と上記追従
発信器からのsin、cos信号との偏差が0となるように上記駆動装置を制御する制御
部6と、設定した方位を操縦装置に触れずに保持しながら自動的に航行するための装置で
あって、設定方位に対して船舶2の進路を補正するための線形の角度信号を出力するオー
トパイロット装置7と、インターフェース8とからなる構成としてある。
【0007】
上記構成における操縦部5は、sin、cosポテンショメータがハンドル信号発信器
9として設けられており、該ハンドル信号発信器9は、設定されたプロペラ旋回式推進機
1の推進方向に対応するsin、cos信号を出力するようにしてある。
【0008】
又、インターフェース8は、オートパイロット装置7からの線形の角度信号をデジタル
信号に変換して出力するA/Dコンバータ10と、該A/Dコンバータ10がデジタル化
して出力した上記オートパイロット装置7からの角度信号をsin、cos信号に変換す
るマイクロコントローラ11と、該マイクロコントローラ11が出力するsin、cos
信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ12とを直列に接続して有する構成とし
てあると共に、上記操縦部5からのsin、cos信号が入力されるようになっていて、
該操縦部5のハンドル信号発信器9からのsin、cos信号と上記D/Aコンバータ1
2からのsin、cos信号を選択的に切り替えて出力する切り替え手段13を備えた構
成としてある。
【0009】
更に、上記制御部6は、位置決め回路14と出力アンプ15とを備えた構成としてあり
、上記位置決め回路14には、上記インターフェース8の切り替え手段13の出力側とプ
ロペラ旋回式推進機1の追従発信器4が接続されていて、インターフェース8の切り替え
手段13が通常運転に設定されているときに、ハンドル信号発信器9から出力されるsi
n、cos信号が位置決め回路14に入力されるようにしてある。又、上記ハンドル信号
発信器9からのsin、cos信号と追従発信器4からのsin、cos信号との偏差が
位置決め回路14で算出され、出力アンプ15に出力され、出力アンプ15は、上記偏差
が零となるように駆動装置としての油圧装置のサーボ弁のコイル3に調整電流を与えるこ
とにより傾転ポンプの傾転斜板を調整して傾転ポンプを制御し、プロペラ旋回式推進機を
旋回させるようにしてある。
【0010】
上記構成としてある従来のプロペラ旋回式推進機の制御装置によりプロペラ旋回式推進
機1の位置決めを行うときは、現在のプロペラ旋回式推進機1の位置(角度)と操縦部5
のハンドルの位置を示す信号を、sin、cosポテンショメータである追従発信器4と
ハンドル信号発信器9から受け、それらの信号の偏差が零となるように傾転ポンプの傾転
斜板を動かすことによって行うようにしてある。
【0011】
又、船舶2を微速運転させるために、インターフェース8のA/Dコンバータ10に、
微速運転(ハ字運転)の角度設定信号を線形の角度信号として出力するポテンショメータ
16を接続し、この角度設定信号をオートパイロット装置7からの角度信号に加算した後
にsin、cos信号に変換して制御部6に与えるようにして、オートパイロット時も微
速運転ができるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】特許第3527043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記特許文献1に記載されたものは、インターフェース8の切り替え手段1
3が、操縦部5からのsin、cos信号とD/Aコンバータ12からのsin、cos
信号を選択的に制御部6に送るようにしてあるものであるため、図4に示す如く切り替え
手段13をオートパイロット側に切り替えて設定することにより、オートパイロット装置
7で設定された方位を保持しながら自動的に運行される、いわゆるオートパイロット運転
が可能であるが、この状態のときは、操縦部5のハンドル信号発信器9からのsin、c
os信号は、制御部6の位置決め回路14には入力されない。そのため、突然の障害物の
発生時等にハンドル信号発信器9にて操舵しようとする場合は、切り替え手段13を元に
戻す、すなわち、ハンドル信号発信器9側に切り替え手段13を切り替えなければならず
、オートパイロット運転中に突然の障害物発生時に対応できないおそれがある。又、イン
ターフェース8に配置されているA/Dコンバータ10は、オートパイロット装置7から
の線形の角度信号をデジタル信号に変換して出力するものとしてあり、ハンドル信号発信
器9からの信号をデジタル信号に変換するようにA/Dコンバータを配置することはでき
ないものである。更に、特許文献1に記載されたものは、船舶の微速運転の際、ハ字角設
定信号ポテンショメータ16に設定されたハ字角設定信号をA/Dコンバータ10でデジ
タル信号に変換されて出力されるようにしてあって、上記ハ字角設定信号ポテンショメー
タ16は必要不可欠のものとされている。
【0014】
そこで、本発明は、オートパイロット航行中でもハンドル信号発信器により操舵できる
ようにして、オートパイロットによる自動航行中に突然の障害物出現があってもハンドル
信号発信器による操舵に切り替え手段を切り替える必要がないようにし、更に、微速運転
や後進運転等もハンドル信号発信器による位置設定で微速オートパイロットや後進オート
パイロットができるようにするプロペラ旋回式推進機の制御装置を提供しようとするもの
である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、駆動装置により旋回させられるようにして船舶
に設けられたプロペラ旋回式推進機の旋回方向の位置を検出してそれに対応する信号を出
力する追従発信器と、上記プロペラ旋回式推進機の推進方向を任意に設定できるハンドル
信号発信器を設けている操縦部と、該操縦部からの信号と上記追従発信器からの信号の偏
差を求めて偏差が零となるように上記プロペラ旋回式推進機の旋回を補正するようにする
制御部とが備えられているプロペラ旋回式推進機の制御装置において、上記操縦部のハン
ドル信号発信器からの命令信号をデジタル数値として読み取るA/Dコンバータと、該A
/Dコンバータで読み取られたデジタル数値を実角度に関数演算し、船舶を目的の方位に
保針させるためのデジタル角度信号を通信するオートパイロット装置から送られるデジタ
ル角度信号を加減算演算してプロペラ旋回式推進機角度を決定すると共に、決定されたプ
ロペラ旋回式推進機角度を関数形信号又は直線形信号へ変換するよう更に関数演算するC
PU演算処理装置と、該CPU演算処理装置からの信号をアナログ信号に変換するD/A
コンバータとを有するマイクロコンピュータを備え、更に、ON、OFFに切り替えられ
るようにしてあって、ONにしたとき上記ハンドル信号発信器からの関数形信号又は直線
形信号をA/Dコンバータでデジタル数値として読み取れるようにしてD/Aコンバータ
の出力が上記制御部内の位置決め回路へ送られるようにすると共に、OFFにしたとき上
記ハンドル信号発信器からの関数形信号又は直線形信号がそのまま上記制御部内の位置決
め回路へ送られるようにしてある切り替えリレースイッチを備えたインターフェースを装
備させるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプロペラ旋回式推進機の制御装置によれば、操縦部のハンドル信号発信器から
の命令関数形信号又は直線形信号をデジタル数値として読み取るA/Dコンバータと、該
A/Dコンバータで読み取られたデジタル数値を実角度に関数演算した後、これに、船舶
を目的の方位に保針させるためのデジタル角度信号を通信するオートパイロット装置から
送られるデジタル角度信号を加減算演算してプロペラ旋回式推進機角度を決定すると共に
、決定されたプロペラ旋回式推進機角度を関数形信号又は直線形信号へ変換するよう更に
関数演算するCPU演算処理装置と、該CPU演算処理装置からの信号をアナログ関数形
信号又は直線形信号へ変換するD/Aコンバータとを有するマイクロコンピュータを備え
、更に、ON、OFFに切り替えられるようにしてあって、ONにしたとき上記ハンドル
信号発信器からの関数形信号又は直線形信号をA/Dコンバータでデジタル数値として読
み取れるようにしてD/Aコンバータの出力が上記制御部内の位置決め回路へ送られるよ
うにすると共に、OFFにしたとき上記ハンドル信号発信器からの関数形信号又は直線形
信号がそのまま上記制御部内の位置決め回路へ送られるようにしてある切り替えリレース
イッチを備えたインターフェースを、船舶に搭載されるハンドル信号発信器による操縦部
、制御部に接続して使用するようにしてあるので、次の如き優れた効果を奏し得る。
【0017】
(1)オートパイロット装置を使用しない場合は、上記操縦部におけるハンドル信号発信
器からの関数形信号又は直線形信号をそのまま制御部内の位置決め回路に入力されること
により通常の運転動作が得られ、オートパイロット装置を使用する場合は、上記ハンドル
信号発信器からの関数形信号又は直線形信号がA/Dコンバータでデジタル数値として読
み取られてから、CPU演算処理装置で、上記読み取られたデジタル数値を実角度に関数
演算した後、オートパイロット装置から送られる保針のためのデジタル角度信号を加減算
演算してプロペラ旋回式推進機角度を決定することができるようにしてあるので、この角
度を信号に変換してアナログ信号として制御部の位置決め回路に入力することにより、ハ
ンドル信号発信器による運転中もオートパイロットによる運転動作が得られることになる

(2)上記(1)により、切り替えリレースイッチの切り替えによりハンドル信号発信器
がどの位置からでもオートパイロットによる運転動作が可能であり、又、オートパイロッ
ト航行中でも常にハンドル信号発信器により操舵が可能であるため、オートパイロット運
転時に突然の障害物出現があってもハンドル信号発信器により容易に回避させることがで
きる。
(3)上記のようにハンドル信号発信器がどの位置からでもオートパイロット動作が可能
であることから、微速運転の際はハンドル信号発信器を微速位置(ハの字)にするだけで
微速オートパイロットが可能であり、従来必要としていたハの字運転の角度設定信号を線
形の角度信号として出力するポテンショメータをインターフェースに接続する必要性をな
くすことができる。又、後進自動の際には、ハンドル信号発信器を後進位置にするだけで
後進オートパイロットが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は直線形信号制御タイプの船に適用するようにした本発明の実施の一形態を示すも
ので、図4に示したプロペラ旋回式推進機の制御装置と同様に、プロペラ旋回式推進機1
を駆動装置である油圧装置(船舶の主機によって駆動される傾転ポンプと、該傾転ポンプ
からの作動油でプロペラ旋回式推進機1を旋回させる油圧モータと、上記傾転ポンプの傾
転斜板を調整するシリンダと、このシリンダを制御するサーボ弁とを有する)で360度
旋回させることができるようにしてあり、且つ図4に示してある場合と同様に、プロペラ
旋回式推進機1に追従発信器4を設け、更に、操縦部5、制御部6を有する構成において
、上記操縦部5のハンドル信号発信器9によりオートパイロット航行中であっても常に操
舵できるようにしてあるインターフェース18を備えた構成とする。
【0020】
詳述すると、上記操縦部5を、直線形ポテンショメータがハンドル信号発信器9として
設けてある構成とすると共に、プロペラ旋回式推進機1に、直線形信号を出力する直線形
ポテンショメータが追従発信器4として設けてある構成としたものにおいて、船舶を目的
の方位に保針させるための角度信号がデジタル通信信号として送られるようにするオート
パイロット装置17を備える。且つ上記操縦部5のハンドル信号発信器9からの命令信号
(直線形信号)をデジタル数値として読み取るA/Dコンバータ19と、該A/Dコンバ
ータ19で読み取ったデジタル数値を実角度へ関数演算し、上記オートパイロット装置1
7から送られた保針のためのデジタル角度信号を加減算演算してプロペラ旋回式推進機角
度を決定し、該決定されたプロペラ旋回式推進機角度を直線形信号へ変換するよう更に関
数演算するCPU演算処理装置20と、該CPU演算処理装置20からの信号をアナログ
信号に変換するD/Aコンバータ21とを有するマイクロコンピュータ22を備え、更に
、ON、OFFに切り替えられるようにしてあって、ONにしたときは、上記操縦部5に
おけるハンドル信号発信器9の出力ライン9aを上記マイクロコンピュータ22内のA/
Dコンバータ19に接続させると共に、D/Aコンバータ21を制御部6内の位置決め回
路14に接続させるようにし、又、OFFにしたときは、上記ハンドル信号発信器9の出
力ライン9aを制御部6内の位置決め回路14に接続させるようにしてある切り替えリレ
ースイッチ23を備えた構成のインターフェース18を構成する。該インターフェース1
8を、上記操縦部5と制御部6に接続できるように設け、操縦部5におけるハンドル信号
発信器9からの信号が常にインターフェース18を経由するようにして、オートパイロッ
ト航行中でも常にハンドル信号発信器9により操舵できるようにする。
【0021】
その他の構成は図4に示すものと同じであり、同一のものには同一符号が付してある。
【0022】
船舶の建造時に既存の操縦部5と制御部6を所定位置に搭載して組み付けると共に、本
発明の特徴をなすインターフェース18が組み付けられると、上記操縦部5のハンドル信
号発信器9の出力ライン9aと制御部6内の位置決め回路14とを、インターフェース1
8の切り替えリレースイッチ23に接続しておくようにする。
【0023】
上記構成において、船舶(たとえば、タグボート)を操舵するとき、オートパイロット
装置17を使用しない場合は、切り替えリレースイッチ23を図1に示す如くOFFに切
り替え操作する。これにより、操縦部5のハンドル信号発信器9からの命令信号(直線形
信号)は、切り替えリレースイッチ23を経てそのまま制御部6内の位置決め回路14へ
送られる。該位置決め回路14では、上記ハンドル信号発信器9から出力された直線形信
号と追従発信器4からの直線形信号との偏差が算出され、出力アンプ15に出力される。
出力アンプ15では、上記偏差が零となるように駆動装置としての油圧装置のサーボ弁の
コイル3に調整信号を与え、図4に示す従来の場合と同様に傾転ポンプの傾転斜板を制御
してプロペラ旋回式推進機1を旋回させるようにし、通常運転の動作が得られるようにす
る。
【0024】
一方、オートパイロット装置17を使用する場合は、切り替えリレースイッチ23をO
Nに切り替え操作する。これにより、図1から明らかなように操縦部5のハンドル信号発
信器9から出力される命令信号(直線形信号)が切り替えリレースイッチ23を介してマ
クロコンピュータ22内のA/Dコンバータ19へ直接入力され、該A/Dコンバータ1
9にて上記ハンドル信号発信器9からの直線形信号がデジタル数値として読み取られる。
次に、上記A/Dコンバータ19で読み取られたデジタル数値はCPU演算処理装置20
内で実角度へ関数演算された後、オートパイロット装置17から送られた保針させるため
のデジタル角度信号が加減算演算されてプロペラ旋回式推進機角度が決定される。更に、
決定されたプロペラ旋回式推進機角度は、CPU演算処理装置20で直線形信号へ変換す
るよう関数演算される。その信号はCPU演算処理装置20からD/Aコンバータ21を
経由してアナログ直線形信号に変換される。
【0025】
D/Aコンバータ21で変換されたアナログ直線形信号は、ONに切り替えられている
切り替えリレースイッチ23を経て制御部6内の位置決め回路14へ送られ、前記と同様
に追従発信器4からの直線形信号との偏差が位置決め回路14で算出され、出力アンプ1
5へ出力され、上記偏差が零となるように、出力アンプ15から油圧装置のサーボ弁のコ
イル3に調整信号が与えられる。これにより油圧装置の動作でプロペラ旋回式推進機1が
旋回させられ、オートパイロット装置17によるプロペラ旋回式推進機動作が得られるこ
とになる。
【0026】
本発明においては、切り替えリレースイッチ23をONにしてオートパイロット装置1
7を使用するようにしたときは、ハンドル信号発信器9から出力された直線形信号をイン
ターフェース18内のA/Dコンバータ19へ入力してデジタル数値として読み取らせ、
該A/Dコンバータ19で読み取ったデジタル数値をCPU演算処理装置20内で実角度
へ関数演算した後、オートパイロット装置17から送られたデジタル角度信号を加減算演
算してプロペラ旋回式推進機角度を決定させるようにしてあるため、ハンドル信号発信器
9により操舵を行っているときにオートパイロット装置17による運転動作とすることが
でき、又、オートパイロット装置17による運転動作中でもハンドル信号発信器9により
操舵を可能とすることができる。そのため、ハンドル信号発信器9がどの位置からでもオ
ートパイロット動作が可能であり、オートパイロット装置17による運転動作中でも常に
ハンドル信号発信器9により操舵できる。これにより、オートパイロット運転動作中に、
突然の障害物の発生に際してもハンドル信号発信器9による操船により容易に回避させる
ことができることになる。
【0027】
又、上記のように、ハンドル信号発信器9がどの位置からでもオートパイロット運転動
作可能であることから、たとえば、微速運転を行う際は、ハンドル信号発信器9を微速位
置(ハの字)にするだけで微速オートパイロット運転を可能にすることができる。更に、
オートパイロット運転で後進させようとする際は、ハンドル信号発信器9を後進位置にす
る操作のみで容易に後進オートパイロット運転とすることもでき、プロペラ旋回式推進機
1を360度の任意の角度位置に設定した特殊な操船を行わせることができる。
【0028】
次に、本発明のプロペラ旋回式推進機の制御装置は、関数形信号制御タイプの船にも容
易に適用することができる。
【0029】
関数形信号制御タイプの船に適用する場合は、既に船舶に装備されていて操縦部5のハ
ンドル信号発信器9により操舵するようにしてある構成に、上記インターフェース18を
用い、既に使用されている操縦部5のハンドル信号発信器9の出力ライン9aと制御部6
内の位置決め回路14とを、インターフェース18の切り替えリレースイッチ23に接続
するようにすればよい。これにより、該切り替えリレースイッチ23をON、OFFに切
り替え操作するのみでオートパイロット装置17を使用しない通常の運転動作のほかに、
オートパイロット装置17を使用するオートパイロット運転動作を行わせるものとするこ
とができ、更に、図1に示す実施の形態の場合と同様に、関数形信号制御タイプの船に装
備されて使用されていたハンドル信号発信器9により微速や後進等の特殊な操船を行わせ
ることができる。
【0030】
図2では関数形信号制御タイプの船に装備されている操縦部5、制御部6に本発明の特
徴をなすインターフェース18を用い、既に使用されている操縦部5のハンドル信号発信
器9の出力ライン9aと制御部6内の位置決め回路14とを、インターフェース18の切
り替えリレースイッチ23に接続することにより、関数形信号制御タイプの船をオートパ
イロット航行できるようにしたものにおいて、プロペラ旋回式推進機1の追従発信器4は
、関数形信号を出力する関数形ポテンショメータを用いて、該追従発信器4が、プロペラ
旋回式推進機1の旋回方向の位置を検出すると、それに対応した関数形信号を出すように
してあるものとする。又、操縦部5は、関数形ポテンショメータがハンドル信号発信器9
として設けてあるようにしたものに、インターフェース18を接続させた実施の形態を示
すものである。
【0031】
すなわち、上記のように、プロペラ旋回式推進機1には、関数形信号を出力する関数形
ポテンショメータが追従発信器4として設けられ、操縦部5は、関数形ポテンショメータ
がハンドル信号発信器9として設けてあり、又、制御部6は、位置決め回路14と出力ア
ンプ15を有するものとしてあるものにおいて、インターフェース18を装備して、該イ
ンターフェース18の切り替えリレースイッチ23を、上記操縦部5のハンドル信号発信
器9の出力ライン9aと制御部6内の位置決め回路14に接続させるようにする。
【0032】
上記インターフェース18は、図1に示したものと同様に、A/Dコンバータ19aと
CPU演算処理装置20aとD/Aコンバータ21aを有するマイクロコンピュータ22
を備えているが、上記A/Dコンバータ19aは、操縦部5のハンドル信号発信器9から
出力される命令信号(関数形信号)をデジタル数値として読み取るものとしてある。上記
CPU演算処理装置20aは、上記A/Dコンバータ19aで読み取ったデジタル数値を
実角度に関数演算すると共に、デジタル角度信号を通信するオートパイロット装置17か
らのデジタル角度信号を、上記関数演算された実角度と加減算演算してプロペラ旋回式推
進機角度を決定し、決定されたプロペラ旋回式推進機角度を関数形信号へ変換するよう更
に関数演算するようにしてある。上記D/Aコンバータ21aは、CPU演算処理装置2
0aからの信号をアナログ関数形信号に変換し、変換されたアナログ関数形信号を、ON
に切り替えてある切り替えリレースイッチ23を経て制御部5内の位置決め回路14へ出
力するようにしてある。
【0033】
この実施の形態によれば、図1に示す実施の形態の場合と同様に、オートパイロット装
置17を使用しない場合のハンドル信号発信器9による通常の運転動作と、オートパイロ
ット装置17を使用した場合のオートパイロットによるプロペラ旋回式推進機動作とが可
能で、オートパイロット航行中においてもハンドル信号発信器9による操船ができるよう
になる。
【0034】
すなわち、オートパイロット装置17を使用しない場合は、切り替えリレースイッチ2
3をOFFに切り替えることにより、ハンドル信号発信器9からの命令信号(関数形信号
)は、そのまま制御部6内の位置決め回路14へ送れることになる。これにより、通常の
運転動作が得られる。
【0035】
一方、オートパイロット装置17を使用する場合は、切り替えリレースイッチ23をO
Nに切り替えることにより、ハンドル信号発信器9からの命令信号(関数形信号)は、イ
ンターフェース18のマイクロコンピュータ22内のA/Dコンバータ19aでデジタル
数値として読み取られる。又、オートパイロット装置17の使用により、該オートパイロ
ット装置17から船舶を目的の方位に保針させるための角度信号がデジタル通信信号とし
てインターフェース18のマイクロコンピュータ22内のCPU演算処理装置20aに送
られる。該CPU演算処理装置20aでは、上記A/Dコンバータ19aで読み取ったデ
ジタル数値を実角度に関数演算して、上記オートパイロット装置17から送られた保針さ
せるためのデジタル角度信号と加減算演算してプロペラ旋回式推進機角度を決定するよう
にし、更に、決定されたプロペラ旋回式推進機角度を関数形信号へ変換するよう関数演算
を行う。CPU演算処理装置20aからの信号は、D/Aコンバータ21aでアナログ信
号に変換されて出力され、アナログ関数形信号が切り替えリレースイッチ23を経て制御
部6内の位置決め回路14へ送られることになる。これにより、オートパイロットによる
プロペラ旋回式推進機動作が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のプロペラ旋回式推進機の制御装置の実施の一形態を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明のプロペラ旋回式推進機の制御装置の実施の他の形態を示す制御ブロック図である。
【図3】従来のプロペラ旋回式推進機の制御装置におけるプロペラ旋回式推進機の概要を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は通常運転状態を示す平面図、(ハ)は微速運転状態を示す平面図である。
【図4】従来のプロペラ旋回式推進機の制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プロペラ旋回式推進機
4 追従発信器
5 操縦部
6 制御部
9 ハンドル信号発信器
14 位置決め回路
15 出力アンプ
17 オートパイロット装置
18 インターフェース
19,19a A/Dコンバータ
20,20a CPU演算処理装置
21,21a D/Aコンバータ
22 マイクロコンピュータ
23 切り替えリレースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置により旋回させられるようにして船舶に設けられたプロペラ旋回式推進機の旋
回方向の位置を検出してそれに対応する信号を出力する追従発信器と、上記プロペラ旋回
式推進機の推進方向を任意に設定できるハンドル信号発信器を設けている操縦部と、該操
縦部からの信号と上記追従発信器からの信号の偏差を求めて偏差が零となるように上記プ
ロペラ旋回式推進機の旋回を補正するようにする制御部とが備えられているプロペラ旋回
式推進機の制御装置において、上記操縦部のハンドル信号発信器からの命令信号をデジタ
ル数値として読み取るA/Dコンバータと、該A/Dコンバータで読み取られたデジタル
数値を実角度に関数演算し、船舶を目的の方位に保針させるためのデジタル角度信号を通
信するオートパイロット装置から送られるデジタル角度信号を加減算演算してプロペラ旋
回式推進機角度を決定すると共に、決定されたプロペラ旋回式推進機角度を関数形信号又
は直線形信号へ変換するよう更に関数演算するCPU演算処理装置と、該CPU演算処理
装置からの信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータとを有するマイクロコンピュ
ータを備え、更に、ON、OFFに切り替えられるようにしてあって、ONにしたとき上
記ハンドル信号発信器からの関数形信号又は直線形信号をA/Dコンバータでデジタル数
値として読み取れるようにしてD/Aコンバータの出力が上記制御部内の位置決め回路へ
送られるようにすると共に、OFFにしたとき上記ハンドル信号発信器からの関数形信号
又は直線形信号がそのまま上記制御部内の位置決め回路へ送られるようにしてある切り替
えリレースイッチを備えたインターフェースを装備させるようにしたことを特徴とするプ
ロペラ旋回式推進機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−76489(P2007−76489A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266437(P2005−266437)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(301034533)株式会社 佐浦計器製作所 (1)