説明

プローブ

【課題】プローブの信号ケーブルの断線を防止する。
【解決手段】超音波振動子アレイ18は、挿入部の挿入軸Aと平行な軸回りに回転する。超音波振動子アレイ18は、接続された信号ケーブル23とともに、チューブ33内に収容されている。チューブ33の外周には、フレキシブルシャフト24が配設されており、本体カバー32によって保持されている。信号ケーブル23は、チューブ33の内部空間37に、フレキシブルシャフト24は、チューブ33によって信号ケーブル23と隔てられた空間36に収容されている。原動側の第1ギヤ28及び従動側の第2ギヤ29は、非接触式のマグネットギヤを構成し、第1ギヤ28はフレキシブルシャフト24に、第2ギヤ29は信号ケーブル23に取り付けられている。フレキシブルシャフト24の回転は、第1ギヤ28及び第2ギヤ29を介して超音波振動子アレイ18に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に挿入される挿入部の先端部に、変位自在なプローブヘッドが設けられたプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、超音波断層撮影法を利用して体腔内の断層画像を撮影して、生体組織内部の観察を行う超音波検査が知られている。超音波検査には、被検体の外側から超音波を照射する体外式と、体腔内から超音波を照射する体内式がある。体内式では、体腔内に挿入される長尺の挿入部を有する超音波プローブが用いられる。挿入部の先端部には、超音波ビームを照射して、照射した超音波ビームの反射波の強度(反射エコー信号)を検出する超音波振動子を有するプローブヘッドが配されており、挿入部の基端には、術者が把持して操作を行うための操作部が設けられる。
【0003】
プローブヘッドは、例えば、複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アレイからなる。超音波振動子アレイは、生体組織内部で反射した超音波ビームを、複数の超音波振動子によって走査して、反射エコー信号を検出する。超音波振動子アレイは、検出した反射エコー信号を電気信号に変換して出力する。電気信号は、超音波振動子アレイに接続された信号ケーブルを介して挿入部の基端側に伝送され、コード及びコネクタで超音波プローブと接続されたプロセッサ装置へ入力される。プロセッサ装置は、入力された電気信号に基づいて、断層画像を生成する。断層画像の断面(スライス面)の向きは、超音波振動子が超音波ビームを走査する走査方向と平行である。
【0004】
超音波プローブの中には、超音波振動子アレイを先端部内で回転可能に設けたものがある(特許文献1〜4参照)。特許文献1〜4に記載の超音波プローブは、超音波ビームの照射方向は変化させずに、超音波振動子アレイの走査方向だけが変化するように超音波振動子アレイを回転させ、断層画像のスライス面の向きを変化させるマルチプレーンタイプである。超音波振動子アレイの回転方向は様々であり、特許文献1及び2に記載の超音波プローブでは、超音波振動子アレイが挿入部の挿入軸と直交する軸回りに回転し、特許文献3及び4に記載の超音波プローブでは、超音波振動子アレイが挿入軸と平行な軸回りに回転する。
【0005】
超音波振動子アレイを回転させるための駆動力は、操作部に設けられた手動の操作ノブや、モータによって入力される。特許文献1及び2に記載の超音波プローブでは、超音波振動子アレイの回転軸と同軸上にプーリが設けられている。プーリに掛けられたワイヤを、操作ノブの操作によって牽引操作することにより、プーリに対して駆動力が伝達される。ワイヤは、信号ケーブルと同一の空間内に配設され、挿入部の先端部から基端側へ延びている。
【0006】
特許文献3及び4に記載の超音波プローブでは、挿入部内に延設されたシャフトをモータで回転させ、そのシャフトを介して超音波振動子アレイに駆動力を伝達している。シャフトは、特許文献1及び2に記載の超音波プローブと同様に、信号ケーブルと同一の空間内に配設されている。
【0007】
また、特許文献5に記載の超音波プローブは、特許文献1〜4に記載の超音波プローブと異なり、単一の超音波振動子からなるプローブヘッドを有し、超音波振動子を挿入軸回りに回転させることにより、挿入軸を中心として放射状に超音波を照射して断層画像を得る、いわゆる機械式ラジアル走査方式の超音波プローブである。この超音波プローブは、特許文献3及び4に記載の超音波プローブと同様に、シャフトを介して挿入部の基端側から挿入部の先端部内のプローブヘッドへ駆動力を伝達しており、シャフトと信号ケーブルが配設される空間も同一である。
【特許文献1】特開2000−201935号公報
【特許文献2】特開平6−335481号公報
【特許文献3】特開昭62−129038号公報
【特許文献4】特開昭60−99238号公報
【特許文献5】特開平5−92003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載の超音波プローブのように、信号ケーブルと、ワイヤやシャフトといった機械的に可動する駆動力伝達部材とを同一空間内に配設すると、駆動力伝達部材と信号ケーブルが接触して、信号ケーブルが断線する懸念があった。体腔内に挿入される挿入部を持つプローブでは、挿入部が細長く、管道内の内部空間が狭いため、信号ケーブルと駆動力伝達部材が近接せざるを得ないため、特に問題となる。
【0009】
信号ケーブルが断線すると、電気信号が伝送できないばかりか、ワイヤやシャフトの多くは金属製であるため、信号ケーブルの断線部分が、ワイヤやシャフトと接触するとショートする危険性もあり、最悪の場合には、ワイヤやシャフトを通じて漏電の危険性もある。
【0010】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたもので、プローブヘッドに接続される信号ケーブルが断線しにくいプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のプローブは、被検体内に挿入される挿入部の先端部に変位自在に設けられたプローブヘッドと、前記プローブヘッドから前記挿入部の基端に向かって延在し、前記プローブヘッドに対して入力又は出力される電気信号を伝送する信号ケーブルと、前記先端部の近傍位置に配置された、原動側の第1ギヤ及び従動側の第2ギヤを有し、磁力の作用によって非接触で前記プローブヘッドを変位させるための駆動力を伝達する1対の非接触式マグネットギヤと、前記信号ケーブル及び前記第2ギヤをチューブに収容した挿入部本体と、前記第2ギヤと対向する位置に配置される前記第1ギヤと、前記挿入部の基端側から前記第1ギヤへ駆動力を伝達するための駆動力伝達部材とを、前記挿入部本体に取り付けられ、前記チューブの内部空間と隔てられた空間に保持する保持部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
前記チューブは、絶縁材料で形成されていることが好ましい。また、前記保持部材は、例えば、前記挿入部本体に着脱自在に取り付けられる。また、前記保持部材は、前記挿入部本体の外周を覆う本体カバーであることが好ましい。
【0013】
前記駆動力伝達部材は、例えば、前記挿入部に合わせて撓むように可撓性を有する。
【0014】
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤは、例えば、複数の磁石が円環状に配列され、異なる磁石を交互に配列したリングマグネットである。
【0015】
前記駆動力伝達部材は、例えば、前記挿入部の挿入軸と平行な軸回りを回転する回転部材であり、前記回転部材の前記先端部側の端部には前記第1ギヤが設けられている。前記回転部材は、シャフト、あるいは、前記チューブの外周回りに回転自在に配設された円筒部材である。円筒部材は、その内周面に、前記第1ギヤが設けられており、前記第1ギヤの内周と前記第2ギヤの外周が、前記チューブを挟んで対向して配置されることが好ましい。
【0016】
前記信号ケーブルの外周に前記第2ギヤが取り付けられており、前記第2ギヤの回転に伴って前記信号ケーブルが軸回りに回転して、前記信号ケーブルの回転が前記プローブヘッドにダイレクトに伝達されることが好ましい。
【0017】
前記第2ギヤの取り付け位置の近傍位置であり、前記取り付け位置から前記挿入部の基端に寄った位置に配置され、前記信号ケーブルを固定して、その固定位置よりも前記基端側の信号ケーブルを回転不能にし、前記固定位置よりも前記先端部側の前記信号ケーブルのみを回転可能にする固定部が設けられており、前記信号ケーブルは、複数の信号線を束ねており、前記取り付け位置と前記固定部の間に、他の部分と比較して前記信号線の拘束力が弱く捩れ抵抗が小さい弱拘束部を有していることが好ましい。
【0018】
前記プローブヘッドは、例えば、断層画像を得るための超音波ビームを照射する超音波振動子を有する。また、前記プローブヘッドは、例えば、前記超音波振動子が複数個配列された超音波振動子アレイであり、前記超音波振動子アレイは、前記挿入軸と平行な軸回りに回転し、前記超音波ビームの照射方向を変化させる。ここで、挿入軸と平行な軸には、挿入軸と一致する回転軸も含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプローブによれば、プローブヘッドに接続される信号ケーブルと駆動力伝達部材とをチューブによって隔てられた別々の空間に配設し、非接触式のマグネットギヤを利用して駆動力伝達部材からプローブヘッドに対してプローブヘッドを変位させるための駆動力を伝達するから、信号ケーブルと駆動力伝達部材が接触することが起こらず、信号ケーブルの断線を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1及び図2に示すように、超音波プローブ10は、コード11を介して接続されるプロセッサ装置12とともに、超音波診断装置を構成する。プロセッサ装置12は、超音波プローブ10から入力される電気信号に対して画像処理を行って断層画像を生成する。生成された断層画像は、プロセッサ装置12のモニタに表示されて観察される。
【0021】
超音波プローブ10は、体腔内に挿入される挿入部13と、挿入部13の基端に連結された操作部14とからなる。挿入部13の先端部15内には、複数の超音波振動子16を基部17上に配列した超音波振動子アレイ18が設けられている。超音波振動子16は、短冊状をしており、長手方向が、挿入部13の挿入方向と一致する挿入軸Aと直交する向きで配設されている。超音波振動子16は、挿入軸Aに沿って等間隔で一列に配列されている。各超音波振動子16は、圧電体とこれを挟む一対の電極とからなる圧電素子で構成されており、一対の電極間にパルス電圧を印加することにより超音波を発し、その反射波の強度(反射エコー信号)を検出して電気信号に変換する。
【0022】
超音波振動子アレイ18は、超音波振動子16が1つずつその配列方向に沿って順次に、あるいは、所定数の超音波振動子16をまとめた素子群を配列方向に沿ってずらしながら超音波を発することで、超音波ビーム19を被観察部位に照射し、被観察部位で反射した反射波を各超音波振動子16によって走査(スキャン)して反射エコー信号を検出する。プロセッサ装置12は、電気信号に変換された反射エコー信号に基づいて、照射した被観察部位の生体組織内部の断層画像を生成する。断層画像の断面(スライス面)の向きは、走査方向と平行である。本例においては、超音波振動子16が一列に配列されているため、走査方向と配列方向は一致する。
【0023】
超音波振動子アレイ18は、超音波を発する照射面(超音波振動子16の配列面)が凸状に湾曲したコンベックスタイプであり、照射面の形状に応じた波面を持つ超音波ビーム19を照射する。断層画像の形状は、超音波ビーム19の形状に応じた形状となり、コンベックスタイプの場合には、セクタ形状となる。
【0024】
先端部15内において、超音波振動子アレイ18は、走査方向が挿入軸Aと平行になる向きで配置されており、挿入軸Aと平行な回転軸を中心に回転自在に設けられている。超音波振動子アレイ18は、図1において照射面を上方に向けた初期位置を基準に正逆各方向にそれぞれ約180°、両方向の合計で約360°の範囲で、任意の角度に回転可能である。これにより、超音波振動子アレイ18の回転角に応じて、回転軸を中心に放射状に超音波ビーム19を照射することができる。
【0025】
超音波振動子アレイ18は、走査方向と回転軸が平行を保った状態で回転するので、回転に応じて超音波振動子アレイ18の照射方向が変化しても、断層画像の断面(スライス面)の向きは、回転軸と常に平行である。このように超音波振動子アレイ18を回転させることにより、例えば、体腔内の管道の内壁の全周に超音波ビーム19を照射して、全周に渡って内壁の生体組織内部の断層画像を観察することが可能となる。
【0026】
超音波プローブ10は、内視鏡21の鉗子チャンネルを通じて体腔内に挿入される。内視鏡21は、周知のように、内視鏡21の挿入部の先端に配された照明窓21aから照明光を照射し、その反射光を観察窓21bの奥に配された撮像素子によって受光して内視鏡画像を得る。鉗子チャンネルは、鉗子などの処置具を挿通するチャンネルであり、先端の鉗子出口21cに連通している。超音波プローブ10の挿入部13は、内視鏡21の挿入部の基端側に配された鉗子口(図示せず)から鉗子チャンネルに挿入され、先端部15が鉗子出口21cから突出する。
【0027】
超音波プローブ10の挿入部13は、可撓性を有しており、挿入部13の内部には、電気信号を伝送する信号ケーブル23と、超音波振動子アレイ18を回転させるための駆動力を伝達するフレキシブルシャフト(駆動力伝達部材)24が設けられている。信号ケーブル23は、超音波振動子アレイ18が出力する反射エコー信号、及び超音波振動子アレイ18に入力される駆動信号を伝送する。
【0028】
フレキシブルシャフト24は、その長手方向が挿入軸Aに沿って配設されている。フレキシブルシャフト24は、周知のように、長尺の芯線の回りにワイヤ状の鋼線を巻き回したものであり、挿入部13の湾曲に合わせて撓む。
【0029】
フレキシブルシャフト24は、操作部14の手前で挿入部13から外部へ露出しており、露出した端部には操作つまみ26が設けられている。操作つまみ26は、術者によって操作され、超音波振動子アレイ18を回転させるための駆動力をフレキシブルシャフト24に入力する。操作つまみ26が回転すると、フレキシブルシャフト24がその軸回りに回転して、マグネットギヤ(磁気歯車)27及び信号ケーブル23を介して超音波振動子アレイ18に駆動力が伝達される。
【0030】
マグネットギヤ27は、後に詳述するように、原動側の第1ギヤ28と従動側の第2ギヤ29からなる1対のギヤであり、磁力の作用によって非接触で第1ギヤ28から第2ギヤ29へ駆動力を伝達する。第1ギヤ28は、フレキシブルシャフト24に取り付けられており、第2ギヤ29は、信号ケーブル23に取り付けられている。
【0031】
信号ケーブル23は、超音波振動子アレイ18とプロセッサ装置12とをコード11を介して接続されており、複数の超音波振動子16のそれぞれと接続する複数の信号線23a(図3参照)を束ねたものである。複数の信号線23aは、バラケてしまわないように、被覆材やバインド線によって拘束される。
【0032】
挿入部13は、挿入部本体31と、挿入部本体31の外周を覆う本体カバー32とからなる。挿入部本体31は、超音波振動子アレイ18及び信号ケーブル23と、これらを水密に収容するチューブ33とからなる。
【0033】
本体カバー32は、挿入部13の長手方向に沿った切断面を持つ、分離可能な2つのカバー部34、35からなり、挿入部本体31のうち、先端部15を除いて、挿入部本体31の外周を覆う。カバー部34、35は、例えば、チューブ33と比較して硬質な樹脂で形成されている。チューブ33は、超音波振動子アレイ18が発する超音波を効率良く透過させる必要があるため、チューブ33の周壁の肉厚が薄く、剛性が低い。本体カバー32を硬質な樹脂で形成し、本体カバー32でチューブ33を覆うことにより、挿入部本体31の剛性を補完し、挿入部13全体として必要な剛性を確保している。
【0034】
図4に示すように、カバー部34、35には、両者を係合するための係合突起34a及び係合溝35aが形成されている。係合突起34aは、付け根が細く、先端に付け根よりも直径が大きい球状の係合部を持ち、係合溝35aは、係合突起34aの断面形状に対応する断面形状を持つ。カバー部34、35は、係合突起34a及び係合溝35aを弾性変形させながら係合突起34aを係合溝35aに押し込み、両者を係合させることにより分離可能に合体される。これにより、本体カバー32が挿入部本体31に取り付けられる。挿入部本体31から本体カバー32を取り外す場合には、係合突起34aと係合溝35aの係合を解除して、カバー部34、35を分離する。
【0035】
図3において、チューブ33は、絶縁性を持ち、可撓性を有する樹脂材料で形成されており、チューブ33の内部と被検体とを電気的に絶縁する。チューブ33の先端部は、超音波振動子アレイ18を収容する、挿入部13の先端部15を構成する。先端部15は、袋状に形成されている。先端部15は、信号ケーブル23を収容する道中部33aよりも径が太くなっており、挿入軸Aと平行な断面形状が略卵型に形成されている。超音波振動子アレイ18は、チューブ33の内部で回転自在に収容されており、チューブ33自体は回転しない。超音波振動子アレイ18は、コンベックスタイプであるため照射面が凸状に湾曲しているので、その回転スペースを確保するために、先端部15が略卵型に形成される。
【0036】
チューブ33に超音波振動子アレイ18を収容する方法は、例えば、超音波プローブ10の組み立て時に、チューブ33を先端部15と道中部33aの2つの部分に分離しておき、先端部15に超音波振動子アレイ18を収容し、信号ケーブル23を道中部33aに収容した後、先端部15と道中部33aを溶着する。
【0037】
フレキシブルシャフト24は、第1ギヤ28とともに、チューブ33の道中部33aの外周に配置され、本体カバー32によって回転自在に保持される。カバー部34には、フレキシブルシャフト24及び第1ギヤ28が収容される空間36を形成するための収容溝が形成されている。空間36は、チューブ33の道中部33aの周壁によってチューブ33の内部空間37と隔てられている。
【0038】
カバー部34は、カバー部35と異なり、その断面形状が、収容溝が形成される部分を膨らませた略楕円形状になっている(図4参照)。収容溝の内壁には、フレキシブルシャフト24を支持する軸受け34bが設けられている。軸受け34bは、カバー部34と一体に成形されており、収容溝の内壁から突出した凸部に、フレキシブルシャフト24の軸方向に延びたスリット(図示せず)を形成したものである。スリットは、その断面が、入口が狭く、その奥は、フレキシブルシャフト24を回転自在に保持するために円形に形成されている。フレキシブルシャフト24は、軸受け34bを弾性変形させながらスリットを開き、スリット内に押し込まれることで、軸受け34bに取り付けられる。
【0039】
フレキシブルシャフト24には、軸受け34bの側端面と当接して、フレキシブルシャフト24の軸方向の位置を規制する位置決めリング38が取り付けられている。また、カバー部34には、フレキシブルシャフト24の先端部15側の端部と嵌合して、フレキシブルシャフト24を支持する凹部34cが形成されている。フレキシブルシャフト24は、凹部34cによって回転軸と直交する方向の位置決めがなされる。
【0040】
また、フレキシブルシャフト24の基端側には、位置決めリング38と略同形状のストッパ39が設けられている。ストッパ39は、カバー部34の後端部の内壁と当接して、フレキシブルシャフト24の軸方向の位置を規制するとともに、フレキシブルシャフト24がカバー部34から抜け出ないようにする抜け止め部材として機能する。
【0041】
第1ギヤ28は、フレキシブルシャフト24の先端部15側の端部に固定されており、フレキシブルシャフト24の回転に伴って回転する。第2ギヤ29は、チューブ33の内部空間37に収容されている。第1ギヤ28と第2ギヤ29は、チューブ33の道中部33aの周壁を挟んで対向する位置に配置されている。第2ギヤ29は、信号ケーブル23に固定されている。第2ギヤ29が回転すると、信号ケーブル23も軸回りに回転し、その回転がダイレクトに超音波振動子アレイ18に伝わる。
【0042】
信号ケーブル23を回転させると、信号ケーブル23の捩れ量の限界があるため、上述したように、第2ギヤ29及び超音波振動子アレイ18の回転範囲を、初期位置を基準に正逆各方向に約180°ずつ、両方向の合計で約360°の範囲に規制している。もちろん、この回転範囲の値は、本例に限るものではなく、例えば、正逆各方向に210°、合計420°、あるいは、正逆各方向に150°、合計300°など、計信号ケーブル23の捩れ量の限界に合わせて、適宜設定される。
【0043】
また、信号ケーブル23を、超音波振動子アレイ18に対する駆動力伝達機構を構成する部品として兼用することで、信号ケーブル23とは別に、駆動力伝達機構を構成する専用部品を使用する場合と比べて、挿入部本体31の構造を簡素化できるというメリットも得られる。また、チューブ33の内部空間37に収容する部品点数が減ることにより、チューブ33の細径化が可能になる。
【0044】
信号ケーブル23は、超音波振動子アレイ18の基部17に接続されており、基部17と信号ケーブル23の接続部40は、信号ケーブル23の撓みが生じないように、信号ケーブル23に硬化剤を塗布するなどにより固められている。このため、信号ケーブル23の回転力が超音波振動子アレイ18に効率良く伝達される。なお、硬化剤によって固める他、剛体を取り付けて接続部40を補強してもよい。
【0045】
図4に示すように、第1ギヤ28及び第2ギヤ29は、それぞれ複数の磁石41、42を円環状に配列したリングマグネットである。各磁石41、42は、異なる磁極(NとS)が交互に配列されている。第1ギヤ28と第2ギヤ29は、それぞれの外周面同士が対向し、各磁石41、42が1つずつ対向するように配置されている。
【0046】
第1ギヤ28から第2ギヤ29への駆動力の伝達は、各磁石41、42の同極同士が接近したときに発生する斥力と異極同士が接近したときに発生する吸引力を通じて行われる。例えば、第1ギヤ28の磁石41のS極と、第2ギヤ29の磁石42のN極が対向している場合には、各磁石41、42間には、吸引力が発生する。第1ギヤ28が時計方向に回転すると、磁石41のN極が第2ギヤ29の磁石42のN極に接近するため、斥力が発生し、第2ギヤ29が反時計方向に回転する。こうした非接触式のマグネットギヤ(磁気歯車)のより詳細な内容は、例えば、特開2007−244014号公報、特開2007−239765号公報、特開2007−010157号公報に開示されている。
【0047】
第1ギヤ28、第2ギヤ29のそれぞれの磁石41、42の数は、物理的に接触して噛み合う通常のギヤの歯数に相当する。第1ギヤ28は、4つの磁石41で構成され、第2ギヤ29は、8つの磁石42で構成される。したがって、第1ギヤ28と第2ギヤ29の減速比(従動側の歯数/原動側の歯数)は「2」であり、第1ギヤ28が2回転すると、第2ギヤ29が1回転する。
【0048】
また、第2ギヤ29の回転は、信号ケーブル23を介して超音波振動子アレイ18にダイレクトに伝わるため、第2ギヤ29の歯数(磁石42の数)によって超音波振動子アレイ18の最小回転角が決まる。第2ギヤ29の歯数が少ないほど最小回転角が大きく、多いほど最小回転角が小さい。最小回転角が小さいほど、超音波振動子アレイ18のより細かな角度調節が可能である。減速比や第2ギヤ29の歯数は、第1ギヤ28及び第2ギヤ29の外径、必要な駆動力等を考慮して適宜選択される。
【0049】
符合44は、第2ギヤ29を信号ケーブル23に取り付けるための台座となる円筒状のパイプである。図2及び図3に示すように、パイプ44には、その先端側の端部の外周に凸部44aが形成されている。凸部44aは、信号ケーブル23の回転範囲を規制するストッパである。凸部44aは、初期位置から第2ギヤ29が正方向又は逆方向に回転し、凸部44aが約180°回転したときに、チューブ33の内壁に形成された凸部33bと当接する。この当接により信号ケーブル23及び超音波振動子アレイ18の回転範囲が規制される。また、凸部33bは、第2ギヤ29の側端面と当接して、第2ギヤ29及び超音波振動子アレイ18のチューブ33内における軸方向の位置決め部材としても機能する。
【0050】
また、凸部33cは、第2ギヤ29、信号ケーブル23及び超音波振動子アレイ18が回転したときに、チューブ33の内壁との摩擦によってチューブ33が連れ回らないように、チューブ33の回転を規制するストッパである。凸部33cは、チューブ33の外周から突出して形成されており、カバー部35の内壁に形成された凹部と嵌合して、チューブ33の回転を規制する。図3においては、凸部33cは1つだけ示されているが、凸部33c及びそれに対応する凹部は、要所に複数箇所設けられている。
【0051】
第2ギヤ29の取り付け位置は、信号ケーブル23と超音波振動子アレイ18の接続部40の近傍である。上述したように、接続部40は、硬化剤によって硬化されているので、第2ギヤ29と超音波振動子アレイ18との間で、信号ケーブル23の捩れは少ない。しかし、第2ギヤ29と超音波振動子アレイ18の間隔を狭めることにより、信号ケーブル23の捩れをより少なくすることができる。信号ケーブル23の捩れは、駆動力の伝達ロスになるため、捩れを少なくすることで伝達ロスを抑えることができる。
【0052】
また、信号ケーブル23は、第2ギヤ29の取り付け位置の近傍で、かつ、取り付け位置から挿入部13の基端よりの位置で、例えば、固定部46によってチューブ33に固定されている。固定部46は、例えば、信号ケーブル23を挿通可能な円筒状の軸受け部材で構成される。固定部46は、その内周面が信号ケーブル23の外周面と固定される。そして、固定部46の外周とチューブ33の内壁とが接着剤で接着されて、信号ケーブル23とチューブ33が固定される。
【0053】
第2ギヤ29の回転により信号ケーブル23は回転するが、信号ケーブル23のうち、固定部46よりも基端側の部分は、固定部46によって回転不能にされているため、回転しない。このため、操作つまみ26からフレキシブルシャフト24を通じて入力する操作力の伝達ロスが軽減される。つまり、信号ケーブル23の全長のうち、固定部46から先端部15側の部分だけを回転させることで、信号ケーブル23の回転部分の重量、チューブ33の内壁との摩擦、信号ケーブル23の捩れ抵抗といった、信号ケーブル23の回転負荷が減るため、操作力の伝達ロスが少なくなる。伝達ロスが少ない分、操作つまみ26の操作力も小さくて済むので、操作しやすい。
【0054】
また、信号ケーブル23は、第2ギヤ29の取り付け位置と固定部46の間に、他の部分と比較して複数の信号線23aの拘束力が弱い弱拘束部47を有している。弱拘束部47は、例えば、複数の信号線23aを覆って拘束する信号ケーブル23の被覆材を取り除き、露出した信号線23aに弛みを持たせることで形成される。
【0055】
図3においては、弱拘束部47以外の部分における信号線23aの収容状態を示すために、第2ギヤ29の取り付け位置において、信号ケーブル23の被覆材を一部破断して図示している。この図からわかるように、弱拘束部47以外の部分では、信号線23aは被覆材で強く拘束されて、各信号線23aの間に隙間が生じないように整然と収容されている。このため、信号線23aの変形や移動が規制されるので、信号ケーブル23の捩れ抵抗が大きい。
【0056】
これに対して、弱拘束部47においては、被覆材が除去されて信号線23aを弛ませているので、各信号線23a間に隙間が生じている。このため、弱拘束部47では、信号線23aの変形や移動の自由度が高く、捩れ抵抗が減少する。信号ケーブル23の捩れ抵抗が減少すると、回転負荷が減少して操作つまみ26の操作力が軽減される。
【0057】
なお、弱拘束部47の作り方としては、被覆材を除去する方法に限らない。例えば、信号線23aの要所をバインド線で拘束する場合には、拘束力を弱めたい部分について、バインド線で拘束する部位の間隔を他の部位よりも広くして、信号線23aに弛みを持たせる。
【0058】
以下、上記構成による作用について説明する。超音波検査を行う際には、術者は、内視鏡21を被検者の体腔内に挿入し、内視鏡21の挿入部を被観察部位まで到達させる。この状態で、超音波プローブ10の挿入部13を、内視鏡21の鉗子口から挿入し、先端部15を鉗子出口21cから突出させる。超音波振動子アレイ18は、プロセッサ装置12から信号ケーブル23を通じて駆動信号が入力されて作動する。
【0059】
超音波振動子アレイ18は、超音波ビーム19を照射し、その反射エコー信号を検出し、これを電気信号に変換して、信号ケーブル23に出力する。電気信号は、信号ケーブル23を通じて伝送されて、コード11を介してプロセッサ装置12に入力される。プロセッサ装置12は、入力された電気信号に基づいて断層画像を生成し、モニタに表示する。術者は、断層画像を観察して患部や病変の状態を調べる。
【0060】
操作つまみ26が回転操作されると、フレキシブルシャフト24が回転し第1ギヤ28が回転する。第1ギヤ28が回転すると、磁力の作用によってチューブ33を隔てて対向する第2ギヤ29が回転する。第2ギヤ29が回転すると信号ケーブル23が回転し、それに接続された超音波振動子アレイ18が挿入軸A回りに回転する。これにより、超音波ビーム19の照射方向が変化して、観察方向を変化させることができる。
【0061】
フレキシブルシャフト24は、信号ケーブル23が収容される内部空間37とはチューブ33を仕切りとして隔てられた空間36に設けられているから、回転するフレキシブルシャフト24と信号ケーブル23が接触することはない。従来のように、信号ケーブルと、ワイヤやシャフトといった駆動力伝達部材とを同じ空間に配置した場合と比べて、信号ケーブル23の断線の危険性が減少する。しかも、チューブ33は絶縁材料で形成されているため、ワイヤやシャフトといった金属と信号ケーブル23の断線部分がショートする危険性もない。さらに、チューブ33に信号ケーブル33が収容されているので、仮に信号ケーブル23に断線が生じた場合でも、生体内へ漏電することもなく、電気的な安全性も高い。
【0062】
超音波検査が終了し、超音波プローブ10が体腔内から抜かれると、超音波プローブ10は、洗浄される。洗浄の際には、使用済みの超音波プローブ10は、カバー部34、35を分離して、挿入部本体31から本体カバー32が取り外される。挿入部本体31は、先端部15を除いて、本体カバー32によって覆われているので、汚れが付着する箇所が少なく、洗浄がしやすい。
【0063】
また、本体カバー32と挿入部本体31を着脱自在としたことにより、次のような効果も得られる。第1に、挿入部本体31と本体カバー32は、それぞれ構成部品が異なるため、耐用期間も異なる。両者を着脱自在とすれば、耐用期間が経過した部品、あるいは、劣化が進んだ部品のみ交換することが可能となり、ユーザのメインテナンスコストを抑えることができる。
【0064】
第2に、例えば、超音波振動子アレイ18の種類が異なる複数種類の挿入部本体31の使い分けを行う場合には、挿入部本体31のみを交換し、1つの本体カバー32を、複数種類の挿入部本体31で共用するといったことも可能となる。複数種類の挿入部本体31の例としては、超音波振動子アレイの解像力といった性能が異なるものや、超音波振動子アレイのタイプが異なるものがある。超音波振動子アレイのタイプは、照射面が平面で超音波ビームを直線状に走査するリニアタイプ、弓状に走査するアークタイプなどがある。
【0065】
上記第1実施形態では、本体カバー32に収容溝を形成し、この収容溝にフレキシブルシャフト24を収容する例で説明したが、本体カバー32の周壁に厚みがある場合には、溝の代わりに挿通穴を形成し、挿通穴にフレキシブルシャフト24を収容してもよい。この場合には、フレキシブルシャフト24が収容される空間36と、チューブ32の内部空間37の間に、チューブ32の周壁に加えて、本体カバー32の一部が介在することになる。
【0066】
上記第1実施形態においては、本体カバーを、分離可能な2つの部材(カバー部34、35)で構成した例で説明したが、図5に示す本体カバー51のように、1つの部材で構成してもよい。本体カバー51には、長手方向(挿入軸Aと平行)に沿って、切り込み51aが形成されている。切り込み51aは、フレキシブルシャフト24や挿入部本体31を着脱するためのものである。着脱の際には、切り込み51aは、二点鎖線で示すように、本体カバー51を弾性変形させて広げられる。
【0067】
この場合には、図6に示すように、バンド52を本体カバー51に取り付けて、本体カバー51を外周から拘束するとよい。バンド52は、本体カバー51の切り込み51aが不用意に開いて、フレキシブルシャフト24や挿入部本体31が本体カバー51内部で位置ずれを起こしたり、本体カバー51から脱落することを防止する。
【0068】
また、第1実施形態では、フレキシブルシャフト24に対する駆動力の入力をマニュアル操作(操作つまみ26の回転操作)で行う例で説明したが、図7に示すように、モータ56によってフレキシブルシャフト24に駆動力を入力して回転させてもよい。モータ56は、例えば、操作部14内に設けられる。操作部14には、モータ56のオンオフ、及びその回転方向を指示する操作ボタン57が設けられる。
【0069】
図8及び図9を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。図8に示す超音波プローブ60と、第1実施形態の超音波プローブ10の主要な相違点は、非接触式のマグネットギヤの形態である。以下、相違点を中心に説明し、共通な部位及び部品については、第1実施形態と同じ符合を付し、説明を省略する。
【0070】
超音波プローブ60の非接触式のマグネットギヤ61は、原動側の第1ギヤ62及び従動側の第2ギヤ63とからなり、第1実施形態と同様に1組のリングマグネットから構成される。第2ギヤ63は、第1実施形態の第2ギヤ29と共通である。第1ギヤ62は、第2ギヤ63の外径よりも大きな内径を持つ。第1ギヤ62の内周面と、第2ギヤ63の外周面とがチューブ72を挟んで対向し、第1ギヤ62及び第2ギヤ63は、同軸上を回転する。
【0071】
第1ギヤ62、63は、同数(8個)の磁石66、67を有する。第1ギヤ62の各磁石66は、第2ギヤ63の各磁石67と対向して配置されている。このため、磁石が1つだけ対向する第1実施形態と比較して、第1ギヤ62と第2ギヤ63との間で大きな駆動力が得られる。
【0072】
第1ギヤ62は、円筒部材71の内周面に固定される。円筒部材71は、第1実施形態のフレキシブルシャフト24と同様の機能を有する駆動力伝達部材である。円筒部材71は、可撓性を持ち、挿入軸A方向に沿って長く、チューブ72を収容する内径を持っている。円筒部材71には、挿入部13の基端側の端部に操作つまみ73が設けられている。操作つまみ73を回転させると、円筒部材71が回転し、第1ギヤ62が回転する。これにより、第2ギヤ63及び信号ケーブル23を通じて超音波振動子アレイ18が回転する。円筒部材71は、本体カバー76によってチューブ72の外周に回転自在に保持される。
【0073】
本体カバー76は、カバー部77、78及びキャップ79からなる分離可能な3つの部材からなる。カバー部77、78は、第1実施形態のカバー部34、35の係合突起34a、係合溝35aと同様の係合部を備えており、挿入部本体31に着脱自在に取り付けられる。
【0074】
カバー部78には、チューブ72の凸部72aと係合する凹部が形成されている。凸部72aは、第1実施形態の凸部33cに相当し、チューブ72の回転規制を行うストッパである。また、チューブ72の凸部72bは、第1実施形態の凸部33bに相当し、パイプ44の凸部44aと当接して、超音波振動子アレイ18の回転範囲を規制するストッパである。
【0075】
カバー部77、78の内周面には、円筒部材71の外周に形成された凸部71aと係合する係合溝77a、78aが形成されている。凸部71aと係合溝77a、78aの係合により、円筒部材71の軸方向の位置が規制される。また、符合71bは、円筒部材71の内周面とチューブ72の内周面のクリアランスを確保するための凸部である。また、円筒部材71の先端側の端部は、カバー部77、78に形成された溝77b、78bと嵌合して支持される。溝77b、78b及び凸部71bによって、円筒部材71は、その軸方向と直交する方向の位置が決められる。
【0076】
超音波プローブ60を組み立てる際には、まず、超音波振動子アレイ18及び信号ケーブル23を、第1実施形態と同様の手法(内蔵物を収容後、先端部と道中部を溶着)でチューブ72に水密に収容する。次に、チューブ72の後端側から円筒部材71を挿通して取り付ける。円筒部材71の取り付けに際しては操作部14が障害となるので、信号ケーブル23と操作部14とをコネクタによって着脱できるようにしておくことが好ましい。
【0077】
円筒部材71を取り付けた後、カバー部77、78を円筒部材71の外周に被せるようにして取り付ける。カバー部77、78の取り付け後、操作つまみ73の後方からキャップ79を取り付ける。キャップ79を取り付けた後、信号ケーブル23と操作部14を接続する。こうして超音波プローブ60が組み立てられる。
【0078】
上記実施形態では、チューブを回転させずに、その内部に収容した超音波振動子アレイだけを回転させる例で説明したが、超音波振動子アレイをチューブ毎回転させてもよい。また、超音波振動子アレイ、信号ケーブル及び第2ギヤを1つのチューブに収容した例で説明したが、チューブには、少なくとも信号ケーブル及び第2ギヤが収容されていればよい。超音波振動子アレイをチューブに収容しない場合には、別のチューブを被せるか、あるいは、チューブに代えて、超音波振動子アレイを水密に覆うカバーを設ける。カバーは、超音波振動子アレイの外周面に密着するものでもよい。また、超音波振動子アレイ自体が水密構造になっていれば、カバーも不要である。
【0079】
また、上記実施形態では、超音波振動子アレイを、走査方向と平行な回転軸を中心に回転させ、その回転により、回転軸を基準に放射状に照射される超音波ビームの照射方向が変化する例で説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図10に示すようなマルチプレーンタイプの超音波プローブ81に適用することもできる。マルチプレーンタイプの超音波プローブでは、上記実施形態と異なり、超音波振動子アレイが回転しても、超音波ビームの照射方向は変化せず、走査方向だけが回転する。これにより、断層画像の断面(スライス面)の向きを変化させることができる。
【0080】
超音波プローブ81は、超音波ビーム19の照射方向が先端部の前方を向き、照射方向が挿入軸Aと平行になるように超音波振動子アレイ82が取り付けられており、超音波振動子アレイ82を、挿入軸Aと平行な回転軸を中心に回転させて、超音波振動子83による走査方向を回転させるマルチプレーンタイプである。
【0081】
また、従来技術として示した、特開2000−201935号公報や特開平6−335481号公報に記載されている超音波プローブのように、超音波ビームの照射方向が挿入軸Aと直交し、その照射方向を変化させることなく、挿入軸Aと直交する回転軸を中心に回転させて、走査方向を回転させる一般的なマルチプレーンタイプの超音波プローブに、本発明を適用してもよい。この場合には、第1ギヤから伝達された第2ギヤの回転力を、傘歯ギヤなどを用いて回転軸を屈曲させて超音波振動子アレイに伝達すればよい。
【0082】
さらに、超音波振動子アレイを回転させる場合に限らず、直線的に移動させてもよい。この場合には、例えば、上記特開2007−239765号公報に記載されたウォームギヤ及びウォームホイール型の非接触式のマグネットギヤを用いて回転運動を直線運動に変換したり、マグネットギヤで伝達された回転力を、ラックアンドピニオン方式で直線運動に変換する。また、上記実施形態では、非接触式のマグネットギヤを1組使用した例で説明したが複数組使用してもよい。
【0083】
上記実施形態では、駆動力伝達部材を挿入部本体の外周に保持する保持部材として、本体カバーを使用した例で説明したが、保持部材は、本体カバーでなくてもよく、挿入部本体の外周面で駆動力伝達部材を保持可能な部材であれば、例えば、挿入部本体の外周面の一部に取り付けられるものでもよい。また、保持部材は、着脱自在でなくてもよく、挿入部本体に固定的に取り付けられるものでもよい。
【0084】
上記実施形態では、駆動力伝達部材として、シャフトや円筒部材といった回転部材を使用した例で説明したが、シャフトや円筒部材に限らず、ワイヤでもよい。例えば、本体カバーの収容溝にワイヤと、ワイヤが掛けられるプーリとを配設し、ワイヤの牽引によってプーリを回転させ、その回転力で第1ギヤを駆動するようにしてもよい。
【0085】
上記実施形態では、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通して被検体内に挿入される超音波プローブを例に説明したが、内視鏡の挿入部の先端部に撮像素子とともに超音波振動子を一体的に内蔵した超音波プローブ(超音波内視鏡)に、本発明を適用してもよい。
【0086】
上記実施形態では、挿入部が可撓性を持つ軟性タイプの超音波プローブを例に説明したが、従来技術として示した特開昭62−129038号公報に記載された超音波プローブのように、可撓性を持たない硬性タイプの超音波プローブに、本発明を適用してもよい。
【0087】
上記実施形態では、本発明のプローブヘッドとして、複数の超音波振動子を配列した超音波振動子アレイを例に説明したが、従来技術として示した特開平5−92003号公報に記載された超音波プローブのように、単一の超音波振動子を回転させる機械式ラジアル方式のプローブヘッドを有する超音波プローブに、本発明を適用してもよい。
【0088】
また、本発明は、超音波振動子を有するプローブヘッドに限らず、低コヒーレント光を利用して生体組織内部の断層画像を得るOCT(optical coherence tomography)プローブのプローブヘッドに適用してもよい。
【0089】
また、本発明は、医用プローブに限らず、配管などの検査に用いる工業用プローブに適用してもよい。また、断層画像を得るプローブに限らず、断層画像以外の情報、例えば、被検体内の温度、湿度、ガス漏れの有無といった被検体内の種々の情報を得るためのプローブに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】超音波プローブの外観図である。
【図2】超音波プローブの挿入部の分解斜視図である。
【図3】挿入部の断面図である。
【図4】非接触式のマグネットギヤの説明図である。
【図5】1部品で構成した本体カバーの説明図である。
【図6】図5の本体カバーを締め付けるバンドの説明図である。
【図7】モータ駆動の超音波プローブの説明図である。
【図8】第2実施形態の超音波プローブの断面図である。
【図9】図8の超音波プローブの非接触式のマグネットギヤの説明図である。
【図10】マルチプレーンタイプの超音波プローブの説明図である。
【符号の説明】
【0091】
10、60、81 超音波プローブ
13 挿入部
15 先端部
16、83 超音波振動子
18、82 超音波振動子アレイ
23 信号ケーブル
24 フレキシブルシャフト
27、61 マグネットギヤ
28、62 第1ギヤ
29、63 第2ギヤ
31 挿入部本体
32、51、76 本体カバー
33、72 チューブ
34、35、77、78 カバー部
36 空間
37 内部空間
41、42、66、67 磁石
40 接続部
46 固定部
47 弱拘束部
56 モータ
71 円筒部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部の先端部に変位自在に設けられたプローブヘッドと、
前記プローブヘッドから前記挿入部の基端に向かって延在し、前記プローブヘッドに対して入力又は出力される電気信号を伝送する信号ケーブルと、
前記先端部の近傍位置に配置された、原動側の第1ギヤ及び従動側の第2ギヤを有し、磁力の作用によって非接触で前記プローブヘッドを変位させるための駆動力を伝達する1対の非接触式マグネットギヤと、
前記信号ケーブル及び前記第2ギヤをチューブに収容した挿入部本体と、
前記第2ギヤと対向する位置に配置される前記第1ギヤと、前記挿入部の基端側から前記第1ギヤへ駆動力を伝達するための駆動力伝達部材とを、前記挿入部本体に取り付けられ、前記チューブの内部空間と隔てられた空間に保持する保持部材とを備えたことを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記チューブは、絶縁材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
前記保持部材は、前記挿入部本体に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載のプローブ。
【請求項4】
前記保持部材は、前記挿入部本体の外周を覆う本体カバーであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のプローブ。
【請求項5】
前記駆動力伝達部材は、前記挿入部に合わせて撓むように可撓性を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のプローブ。
【請求項6】
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤは、複数の磁石が円環状に配列され、異なる磁極が交互に配列されたリングマグネットであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のプローブ。
【請求項7】
前記駆動力伝達部材は、前記挿入部の挿入軸と平行な軸回りを回転する回転部材であり、前記回転部材の前記先端部よりの端部には前記第1ギヤが設けられていることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のプローブ。
【請求項8】
前記回転部材は、シャフトであることを特徴とする請求項7記載のプローブ。
【請求項9】
前記回転部材は、前記チューブの外周回りに回転自在に配設された円筒部材であり、
前記円筒部材の内周面に、前記第1ギヤが設けられており、
前記第1ギヤの内周と前記第2ギヤの外周が、前記チューブを挟んで対向して配置されることを特徴とする請求項7記載のプローブ。
【請求項10】
前記信号ケーブルの外周に前記第2ギヤが取り付けられており、前記第2ギヤの回転に伴って前記信号ケーブルが軸回りに回転して、前記信号ケーブルの回転が前記プローブヘッドにダイレクトに伝達されることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載のプローブ。
【請求項11】
前記第2ギヤの取り付け位置は、前記プローブヘッドと前記信号ケーブルの接続部の近傍位置であることを特徴とする請求項10記載のプローブ。
【請求項12】
前記第2ギヤの取り付け位置の近傍位置であり、前記取り付け位置から前記挿入部の基端に寄った位置に配置され、前記信号ケーブルを固定して、その固定位置よりも前記基端側の信号ケーブルを回転不能にし、前記固定位置よりも前記先端部側の前記信号ケーブルのみを回転可能にする固定部が設けられており、
前記信号ケーブルは、複数の信号線を束ねており、前記取り付け位置と前記固定部の間に、他の部分と比較して前記信号線の拘束力が弱く捩れ抵抗が小さい弱拘束部を有していることを特徴とする請求項11記載のプローブ。
【請求項13】
前記プローブヘッドは、断層画像を得るための超音波ビームを照射する超音波振動子を有することを特徴とする請求項1〜12いずれか記載のプローブ。
【請求項14】
前記プローブヘッドは、前記超音波振動子が複数個配列された超音波振動子アレイであり、
前記超音波振動子アレイは、前記挿入軸と平行な軸回りに回転し、前記超音波ビームの照射方向を変化させることを特徴とする請求項13記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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