説明

プールの化粧板貼構造

【目的】 FRP製下地材上に貼着されたセラミックタイルの剥離を防止できるプールのタイル貼構造を提供する。
【構成】 下地材がFRPで構成されたプールの内表面5にセラミックタイル6を貼付ける場合に、上記下地材内表面5を平面加工するとともに、該内表面5にセラミックタイル6を0.3 〜3.0 mm厚の弾性接着剤層7により貼着する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、FRPを下地材に採用したプールの内表面にセラミックタイル等の化粧板を貼着するための構造に関し、特に上記下地材と化粧板との熱膨張係数差による寸法変化を吸収できるようにした構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のプールはコンクリート又は金属を下地材として採用するとともに、外観向上あるいは高品質化を目的として上記下地材の内表面にセラミックタイル等の化粧板をモルタルで貼着しているのが一般的である。しかし、コンクリート等を下地材としたプールは、現地での施工が困難で、かつ長時間を要する。また、この種のプールを建物の上階に設置する場合、コンクリート等の重量分だけ建物に対する負荷が増大する問題がある。
【0003】そこで、上述の問題点を解決できるプールとして、従来、下地材に軽量でかつ現地での施工の簡単なFRPを採用したものがある。そして、このFRP製の下地材を使用したプールにおいても、高品質化等を目的として下地材の内表面にセラミックタイル等の化粧板を貼着することが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記FRP製下地材上に、セラミックタイルをコンクリート下地材の場合と同様の方法で貼着した場合、上記FRPと上記セラミックタイルとの熱膨張係数の差が大きいことから、環境温度の変化により上記下地材から上記セラミックタイルが剥離することが懸念される。
【0005】本発明は上記従来の状況に鑑みてなされたもので、FRP製下地材上に貼着されたセラミックタイル等の化粧板の剥離を防止できるプールの化粧板貼構造を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、下地材がFRPで構成されたプールの内表面に化粧板を貼付ける構造において、上記下地材内表面を平面加工するとともに、該内表面にFRPと線膨張係数の異なる化粧板を0.3 〜3.0 mm厚の弾性接着剤層により貼着したことを特徴としている。
【0007】請求項2の発明は、上記請求項1において、上記下地材の少なくとも縦面部分と化粧板との間に両面テープを介在させたことを特徴としている。
【0008】ここで上記下地材の内表面を平面加工するのは、該内表面の凹凸がセラミックタイルの平坦度を低下させるのを回避するためであり、この平面加工は、バフ研磨等によって行う。
【0009】また上記弾性接着剤層の層厚を0.3 〜3.0 mmに設定したのは以下の理由による。まず層厚が0.3 mmより薄いと、上記熱膨張係数の差による寸法変化の吸収機能が低く、剥離を防止することができない。また上記下地材の内表面の平面加工後に残った凹凸の影響により化粧板の表面の平坦度が低下し、外観が低下するからである。また上記弾性接着剤は固化以前は粘度が低いので、上記層厚が3.0mmより厚いと、上記各セラミックタイルが接着剤層内に沈み込んだりすることによりこの場合も平坦度が出にくくなり、外観が低下する。
【0010】
【作用】本発明に係るプールの化粧板貼構造によれば、下地材をFRPで構成したので、その大部分を工場で製作でき、それだけ現地での施工が容易となり、またコンクリート等に比べて極めて軽量であり、建物に対する負荷が小さくて済む。
【0011】また、下地材の内表面と化粧板との間に弾性接着剤層を挿入したので、環境温度の変化による上記下地材と上記化粧板との熱膨張率の差による寸法変化を上記弾性接着剤層が吸収し、上記化粧板が上記下地材から剥離するのを防止できる。また弾性接着剤層の厚さを0.3 〜3.0 mmに設定したので、下地材の凹凸の影響を回避しながら十分な寸法変化吸収機能を確保でき、また接着剤層の低粘度による化粧板の施工時の沈み込みを防止でき、外観を向上できる。
【0012】さらに また請求項2の発明では、上記下地材と化粧板との間に両面テープを介在させたので、上記弾性接着剤が固化するまで上記化粧板を固定支持することができ、下地材の縦壁あるいは傾斜壁部分の施工が容易である。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図について説明する。図1ないし図3は本発明の第1実施例によるプールのタイル貼構造を説明するための図であり、図1は該実施例プールの傾斜壁部分の断面図、図2は該プールの底壁部分の断面図、図3は該プールの断面側面図である。
【0014】図において、1は本実施例構造を備えたプールであり、該プール1はFRP製の下地材2の内表面にセラミックタイル6を貼設した構造のものである。上記下地材2は底壁11の周縁に縦周壁10を立設してなる箱状のものであり、さらに上記縦周壁10の周縁にはこれに続いて傾斜壁14が形成されている。なお、9は上記プール1に貯溜された水、3は上記傾斜壁14の縁部に形成された排水溝であり、該排水溝3の開口部には多数のスリットを有する蓋4が被せてある。
【0015】上記下地材2の内表面5には、凹凸を無くする為のバフ研磨加工が施されている。そしてこの内表面5のうち傾斜壁14には弾性接着剤層7によって四角形状のセラミックタイル6が、また縦周壁10及び底壁11にはアクリル樹脂からなるアクリルタイル6aが貼着されている。上記下地材2とセラミックタイル6又はアクリルタイル6aとの間に挿入された上記弾性接着剤層7の層厚は0.3 〜3.0 mmに設定されている。また上記下地材2の縦周壁10及び傾斜壁14については、アクリルタイル6aと内表面5との間に、上記弾性接着剤層7の層厚と略同じ厚みの両面テープ8が介在されている。なお、15は上記各セラミックタイル6,6間又はアクリルタイル6a,6a間の隙間を埋める目地である。
【0016】次に本実施例の作用効果について説明する。本実施例のプールでは、下地材2としてFRPを採用したので、その大部分を工場で製作することができ、それだけ現地での施工量が減少し、施工が容易である。またコンクリート等に比べて軽量であるので、例えば建物の上階に設置する場合でも、その重量負担が小さくて済む。
【0017】また本実施例のタイル貼構造では、上記下地材2の内表面5にセラミックタイル6又はアクリルタイル6aを弾性接着剤層7で貼着したので、環境温度の変化により下地材2とセラミックタイル6との熱膨張係数の差による寸法変化が生じても、これを上記弾性接着剤層7によって吸収でき、上記セラミックタイル6又はアクリルタイル6aが上記下地材2から剥離するのを防止できる。
【0018】また上記下地材2の内表面をバフ研磨加工するとともに、接着剤層7を0.3 mmより厚く設定したので、上記寸法変化吸収機能を確保しながら、下地材2の内表面の凹凸の影響を受けることがなく、上記セラミックタイル6,アクリルタイル6aの平坦度を出すことができ、外観を向上できる。また、上記接着剤層7の厚さを3.0 mmより薄くしたので、粘度の低い弾性接着剤層7でも、上記セラミックタイル6,アクリルタイル6aの貼付時にこれが接着剤層7内に沈み込むことはほとんどなく、従ってこの点からもセラミックタイル6,アクリルタイル6aの平坦度を容易に出すことができ、外観を向上できる。
【0019】そして、上記縦周壁10,及び傾斜壁14については、下地材2と上記アクリルタイル6aとの間に上記弾性接着剤層7の厚みと略同じ厚みの両面テープ8を介在させたので、上記縦周壁10,傾斜壁14に貼着した上記アクリルタイル6aが接着剤の固化以前にずり落ちるのを防止でき、施工が容易である。
【0020】図4及び図5は本発明の第2実施例を示し、図4はプールの縦周壁部分の断面図、図5はプールの断面斜視図であり、図中、図1ないし図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0021】本実施例では、下地材2の縦周壁10部分に支持凸部12を凸設している。この支持凸部12は、上記セラミックタイル6又はアクリルタイル6aの下側縁面に当接し、これらのタイル6,6aを支持している。
【0022】本実施例では、下地材2の縦周壁10に形成された支持凸部12でセラミックタイル6,アクリルタイル6aの下側縁面を支持したので、上記弾性接着剤層7が固化するまで上記セラミックタイル6,アクリルタイル6aがずり落ちるのを防止できる。
【0023】図6は本発明の第3実施例を示す縦周壁部分の断面図であり、図中、図1ないし図5と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0024】本実施例は、各化粧板同士の目地部分に、目地剤の垂れを防止するガイド部材を配置した例であり、FRP製下地材2の縦周壁10の表面には、弾性接着剤層7,及び両面テープ8によってアクリル樹脂からなる樹脂パネル(化粧板)16が接着されている。またこの各樹脂パネル16同士は、所定隙間(目地)を明けて配置されている。
【0025】上記縦周壁10の上記目地内部分には、塩化ビニルの押し出し成形品からなる目地ガイド18が両面テープ8aによって接着固定されている。この目地ガイド18は、紙面垂直方向に延びる帯板状のもので、基部18a上に略C字状の保持溝18bを一体形成してなるものであり、該基部18a上に上記各樹脂パネル16の下面周縁が当接している。そして上記目地ガイド18と上記各樹脂パネル16の周縁との隙間は、目地剤17が充填されている。この目地剤17は、エチレン酢ビ共重合体からなるホットメルト材を溶融させながら上記目地空間に流し込み、形状を整えることによって形成されたものである。なお、上記目地剤17には、上記のものの他、エチレン,ナイロン等の熱可塑系樹脂で耐塩素性を有するものでも良い。
【0026】本実施例では、上記第1,第2実施例と同様の効果が得られると共に、目地ガイド18を設けたので、特に縦壁の化粧板貼着時において、ホットメルト材の垂れを防止できる効果があり、施工を容易化できる。
【0027】
【発明の効果】以上のように本発明に係るプールの化粧板貼構造によれば、FRP製下地材の内表面を平面加工するとともに、該内表面に化粧板を0.3 〜3.0 mm厚の弾性接着剤層で貼着したので、下地材の凹凸の影響、及び施工時の化粧板の沈み込みを回避しながら、上記下地材と化粧板との熱膨張係数の差による寸法変化を上記弾性接着剤で吸収でき、該化粧板の下地材からの剥離を防止でき、外観を向上できる効果がある。また請求項2の発明によれば上記下地材と化粧板との間に両面テープを介在させたので、上記弾性接着剤層が固化するまで上記化粧板を支持できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例構造を備えたプールの傾斜壁部分の断面図である。
【図2】上記第1実施例プールの底壁部分の断面図である。
【図3】上記第1実施例プールの断面側面図である。
【図4】本発明の第2実施例構造を備えたプールの縦周壁部分の断面図である。
【図5】上記第2実施例プールの断面斜視図である。
【図6】本発明の第3実施例構造を備えたプールの縦周壁部分の断面図である。
【符号の説明】
1 プール
2 下地材
5 内表面
6 セラミックタイル(化粧板)
7 弾性接着剤層
8 両面テープ
10 縦周壁(縦面部分)
11 底壁(縦面部分)
16 樹脂パネル(化粧板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下地材がFRPで構成されたプールの内表面に化粧板を貼付ける構造において、上記下地材の内表面を平面加工するとともに、該内表面にFRPとは線膨張係数の異なる化粧板を0.3 〜3.0 mm厚の弾性接着剤層により貼着したことを特徴とするプールのタイル貼構造。
【請求項2】 請求項1において、上記下地材の少なくとも縦面部分と化粧板との間に両面テープを介在させたことを特徴とするプールの化粧板貼構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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