説明

プール用循環システム

【課題】安全かつ長時間除菌効果を有するプールの水中における雑菌を除菌できるプール用循環システムを提供する。
【解決手段】プール(100)と、前記プール(100)の水を濾過して循環させる循環路と、を有するプール用循環システムにおいて、前記循環路を循環する循環水を貯水する貯水タンク(61)と、前記貯水タンク(61)に貯水された循環水の水中にてストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、前記電極対(64,65)に直流電圧を印加する電源部(70)と、を備える。ストリーマ放電によって循環水中にて過酸化水素を生成して除菌を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プールの水中における雑菌を除菌できるプール用循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プールにおいて使用される水の衛生管理では主として、次亜塩素酸ソーダ(NaClO)を水に滴下することによって、病原菌を含む雑菌類の消毒が行われている。プールの衛生管理においては、残留塩素濃度が0.4mg/リットル〜0.8mg/リットルの範囲に納まるように次亜塩素酸ソーダが投入される。
【0003】
例えば、特許文献1には、強アルカリ性電解水を用いて溶解している油分を剥離させた後、次亜塩素酸ソーダを時間差で注入して有機物等を分解させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−141838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、次亜塩素酸ソーダの影響により、眼球が充血したり、毛髪が塩素に侵されて茶色に変色したりし、肌荒れ等が生じたりする等のおそれがある。また、次亜塩素酸ソーダを連続的に使用し続けるとアルカリ性側に傾く傾向性をもって除菌効果が極端に落ちることがある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、安全かつ長時間除菌効果を有するプールの水中における雑菌を除菌できるプール用循環システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、プール(100)と、前記プール(100)の水を濾過して循環させる循環路と、を有するプール用循環システムにおいて、前記循環路を循環する循環水を貯水する貯水タンク(61)と、前記貯水タンク(61)に貯水された循環水の水中においてストリーマ放電を生起するための電極対(64,65)と、前記電極対(64,65)に直流電圧を印加してストリーマ放電を生起させる電源部(70)と、を有し、前記ストリーマ放電によって前記循環水中に過酸化水素を生成するようにしたことを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、ストリーマ放電によって循環水中に発生した過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(61)内を対流して水中で拡散され、水中に含まれる被処理成分を酸化分解して冷却水を浄化する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記貯水タンク(61)と、前記電極対(64,65)と、前記電源部(70)とが組み合わせられて水中放電ユニット(500)が設けられ、前記水中放電ユニット(500)が前記循環路に設けられていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、前記貯水タンク(61)と、前記電極対(64,65)と、前記電源部(70)とが組み合わせられて水中放電ユニット(500)を構成しているため、既存のプール用循環システムに設置しやすい。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記循環路は、前記プール(100)の水を常時循環させる常時循環路(110)であることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、常時循環路(110)の循環水中の雑菌を除去できるため、プール(100)の水の洗浄度を向上できる。
【0013】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記循環路は、前記プール(100)からオーバーフローした水を循環させるオーバーフロー循環路(120)であることを特徴とする。
【0014】
第4の発明においても、オーバーフロー循環路(120)の循環水中の雑菌を除去できるため、プール(100)の水の洗浄度を向上できる。
【0015】
第5の発明は、第1乃至第4の何れかの発明において、上記貯水タンク(61)に銅イオン又は鉄イオンを供給するイオン供給部(110,124,125)を備えていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明では、イオン供給部(110,124,125)から銅イオンや鉄イオンが貯水タンク(61)へ供給される。過酸化水素を含む水中において、銅イオンや鉄イオンが共存する条件下では、いわゆるフェントン反応(Fenton反応)により、銅イオンや鉄イオンが触媒的に作用して、水酸化ラジカルが生成される。よって、貯水タンク(61)の水中では、水酸化ラジカルの生成量が増大し、有害物質の分解効率が向上する。
【0017】
第6の発明は、第1乃至第5の何れかの発明において、前記電極対(64,65)のうち放電電極(64)は前記貯水タンク(61)の底部に配置されていることを特徴とする。
【0018】
第6の発明では、活性種や過酸化水素をストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(61)内を効率よく対流させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ストリーマ放電によって循環水中にて過酸化水素を生成して除菌を行うため、発生するガスは酸素ガスであり、安全に循環水中の雑菌を除菌することができる。更に過酸化水素の残留性により、長時間除菌効果を有する。
【0020】
また、本発明では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0021】
第2の発明によれば、水中放電ユニット(500)を構成しているため、既存のプール用循環システムに設置しやすい。
【0022】
第3の発明によれば、常時循環路(110)の循環水中の雑菌を除去してプール(100)の水の洗浄度を向上できる。
【0023】
第4の発明によれば、オーバーフロー循環路(120)の循環水中の雑菌を除去してプール(100)の水の洗浄度を向上できる。
【0024】
第5の発明によれば、過酸化水素の存在下に鉄イオン又は銅イオンを供給することで、フェントン反応を利用して多量の水酸化ラジカルを発生できる。従って、この水酸化ラジカルを用いて水中の有害物質等を効果的に除去できる。
【0025】
第6の発明によれば、活性種や過酸化水素を貯水タンク(61)内を効率よく対流させることにより的確に水中の有害物質等を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施形態1に係るプール用循環システムの構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る水中放電ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る水中放電ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態2に係る水中放電ユニットの全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図7】図7は、実施形態3に係る水中放電ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態3に係る水中放電ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態3の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図10】図10は、実施形態4に係るプール用循環システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0028】
《実施形態1》
図1は本発明の実施形態1におけるプール用循環システム(900)の構成図である。プール用循環システム(900)は、プール(100)の水を循環濾過させることでプール(100)内の水質を維持させるものであり、水泳等用の水が貯留されるプール(100)と、プール(100)の水を常時循環させる常時循環路(110)と、前記プール(100)からオーバーフローした水を循環させるオーバーフロー循環路(120)と、を備える。
【0029】
常時循環路(110)は、常時プール(100)内の水を循環させているものであり、常時循環路(110)の一端はプール(100)の側面に設けられた第一循環流入口(111)に接続され、他端はプール(100)の側面に設けられた第一給水口(114)に接続される。常時循環路(110)には、循環水を矢印方向に循環させる第一循環ポンプ(112)及び循環水を濾過する第一濾過装置(113)が配設される。
【0030】
オーバーフロー循環路(120)は、オーバーフロー水を循環させるものであり、オーバーフローしたプール(100)の水を排出する第一配管(124)と、その第一配管(124)を通ってオーバーフローした循環水を貯留するオーバーフロー水槽(123)と、オーバーフロー水槽(123)に貯留されたオーバーフロー水を再びプール(100)に循環させる第二配管(125)と、を有して構成される。
【0031】
プール(100)の上面周囲にオーバーフロー溝(121)が設けられ、オーバーフロー溝(121)において所定位置の底部に第二循環流入口(122)が設けられている。また、プール(100)の側面には、第二給水口(126)が設けられている。
【0032】
第一配管(124)の一端は第二循環流入口(122)に接続されており、他端はオーバーフロー水槽(123)に接続されている。第二配管(125)の一端はオーバーフロー水槽(123)に接続されており、他端は第二給水口(126)に接続している。
【0033】
第二配管(125)には、循環水を矢印方向に循環させる第二循環ポンプ(140)と循環水を濾過する第二濾過装置(141)とが設けられている。
【0034】
第二配管(125)において、第二濾過装置(141)の下流側には、流量計や差圧計等の検知器(142)が設けられている。プール(100)をオーバーフローさせて循環濾過する時には、プール(100)内の水圧や水位等を検知器(142)により検知し、第二循環ポンプ(140)の流量をインバータ(143)によって制御させる。このように、オーバーフロー循環路(120)では、プール(100)のオーバーフローに必要な流量となるように第二循環ポンプ(140)を効率よく制御させる。
【0035】
常時循環路(110)、第一配管(124)及び第二配管(125)は、例えば銅管で構成されている。銅管で構成することにより、その内壁から銅イオンを生成することで、後述する水貯留タンク(61)に銅イオンを供給するイオン供給部を構成している。
【0036】
常時循環路(110)には、第一濾過装置(113)と第一給水口(114)との間において、水中放電ユニット(500)が配設される。
【0037】
次に水中放電ユニット(500)の詳細構造について説明する。プール用循環システム(900)は、水中放電ユニット(500)を備えている。水中放電ユニット(500)は、水中でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって冷却水の浄化を行うものである。図2に示されるように、水中放電ユニット(500)は、貯水タンク(61)と放電ユニット(72)とを有している。
【0038】
貯水タンク(61)は密閉型の容器状に形成され、貯水タンク(61)への流入側の流入側流路(110a)及び流出側の流出側流路(110b)が接続されている。
【0039】
放電ユニット(72)は、放電電極(64)及び対向電極(65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0040】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。電極対(64,65)の一方の電極である放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。絶縁ケーシング(71)は貯水タンク(61)の底部に配置されている。そのため放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の底面を介して貯水タンク(61)の底部に配置されている。放電電極(64)を貯水タンク(61)の底部に配置することにより、後述するように発生した過酸化水素をストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(61)内を対流させて拡散を促進させるためである。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。電極対(64,65)の他方の電極である対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0041】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0042】
絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0043】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0044】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0045】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を成す開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0046】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が集中することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部を成す気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0047】
以上のように構成された本実施形態に係るプール用循環システム(900)について、以下その使用態様を説明する。
【0048】
常時循環路(110)では、プール(100)内の水を第一循環流入口(111)から流出させて、第一循環ポンプ(112)及び第一濾過装置(113)を通過させ、再び第一給水口(114)からプール(100)に戻す。
【0049】
オーバーフロー循環路(120)では、プール(100)からオーバーフローした水は、第二循環流入口(122)から第一配管(124)を通ってオーバーフロー水槽(123)に流入して貯留され、更にオーバーフロー水槽(123)から第二配管(125)を通って再びプール(100)の側面に設けられた第二給水口(126)からプール(100)に流入する。
【0050】
本実施形態のプール用循環システム(900)では、水中放電ユニット(500)が運転されることで、第一循環ポンプ(112)を流れる水の浄化がなされる。このような水中放電ユニット(500)による水の浄化動作について詳細に説明する。
【0051】
水中放電ユニット(500)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。この際、放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が集中した状態となる。
【0052】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0053】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、貯水タンク(61)内の水中では、水酸化ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸化ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、貯水タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0054】
また、上述したように、貯水タンク(61)には、常時循環路(110)、第一配管(124)及び第二配管(125)から析出した銅イオンが供給される。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応(Fenton反応)により、銅イオンが触媒的に作用して水酸化ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸化ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0055】
以上のようにして、水中に拡散した水酸化ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。これにより、本実施形態のプール用循環システム(900)では、循環水の清浄度が保たれる。
【0056】
《実施形態2》
上述の実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0057】
この変形例においても、各開口(74)が、電界密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸化ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0058】
《実施形態3》
実施形態3に係るプール用循環システム(900)は、上述した実施形態1と放電ユニット(72)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0059】
図7に示すように、実施形態3の放電ユニット(72)は、貯水タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態3の放電ユニット(72)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0060】
実施形態3の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0061】
実施形態3のケース本体(72)は、例えばガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から貯水タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に貯水タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0062】
実施形態3の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、例えばセラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0063】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態3では、放電電極(64)のうち貯水タンク(61)とは反対側の端部が、貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、貯水タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0064】
放電電極(64)のうち貯水タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(貯水タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0065】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、貯水タンク(61)の壁部に固定されて放電ユニット(72)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(72)が貯水タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0066】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、貯水タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、貯水タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0067】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0068】
実施形態3のプール用循環システム(900)においても、水中放電ユニット(500)が運転されることで、常時循環路(110)を流れる水の浄化がなされる。
【0069】
水中放電ユニット(500)の運転の開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0070】
図7に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図8を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)の抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸化ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が冷却水の浄化に利用される。
【0071】
なお、上記実施形態3では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0072】
《実施形態4》
上述の実施形態1乃至3においては、水中放電ユニット(500)は常時循環路(110)に配設された。しかし本発明の範囲はこのような実施形態に限定されない。実施形態4においては、図10に示されるように、オーバーフロー循環路(120)に水中放電ユニット(500)が配設される。
【0073】
水中放電ユニット(500)は、検知器(142)と第二給水口(126)との間に配設されており、貯水タンク(61)には、貯水タンク(61)への流入側の流入側流路(125a)及び流出側の流出側流路(125b)が接続されている。その他の構成及び動作については上述の実施形態1乃至3と共通である。
【0074】
本実施形態のプール用循環システム(900)では、水中放電ユニット(500)が運転されることで、第二循環ポンプ(140)を流れる水の浄化がなされ、水中に拡散した水酸化ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。これにより、本実施形態のプール用循環システム(900)においても、循環水の清浄度が保たれる。
【0075】
《その他の実施形態》
上述した実施形態1乃至3においては、水中放電ユニット(500)は常時循環路(110)に配設され、実施形態4においてはオーバーフロー循環路(120)に配設された。しかしながら本発明の範囲はこのような実施形態に限定されることはなく、水中放電ユニット(500)は常時循環路(110)及びオーバーフロー循環路(120)の双方に配設されることも可能である。
【0076】
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、洗浄水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0077】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0078】
また、上述した各実施形態では、常時循環路(110)、第一配管(124)及び第二配管(125)を銅管とすることで、銅イオンのイオン供給部としている。しかしながら、イオン供給部としては、例えば鉄イオンを生成する鉄製の配管を用いることもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸化ラジカルの生成量を増大できる。また、例えば銅片や鉄片を貯水タンク(61)内に浸漬することで、これらをイオン供給部とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明は、雑菌が除去された冷却水を得ることができるプール用循環システムについて有用である。
【符号の説明】
【0080】
61 貯水タンク
64 放電電極
65 対向電極
66 貫通孔
70 電源部
71 絶縁ケーシング
72 放電ユニット
73 蓋部
74 開口
100 プール
110 常時循環路
111 第一循環流入口
112 第一循環ポンプ
113 第一濾過装置
114 第一給水口
120 オーバーフロー循環路
121 オーバーフロー溝
122 第二循環流入口
123 オーバーフロー水槽
124 第一配管
125 第二配管
126 第二給水口
140 第二循環ポンプ
141 第二濾過装置
142 検知器
500 水中放電ユニット
900 プール用循環システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プール(100)と、前記プール(100)の水を濾過して循環させる循環路と、を有するプール用循環システムにおいて、
前記循環路を循環する循環水を貯水する貯水タンク(61)と、前記貯水タンク(61)に貯水された循環水の水中においてストリーマ放電を生起するための電極対(64,65)と、前記電極対(64,65)に直流電圧を印加してストリーマ放電を生起させる電源部(70)と、を有し、前記ストリーマ放電によって前記循環水中に過酸化水素を生成するようにしたことを特徴とするプール用循環システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記貯水タンク(61)と、前記電極対(64,65)と、前記電源部(70)とが組み合わせられて水中放電ユニット(500)が設けられ、前記水中放電ユニット(500)が前記循環路に設けられていることを特徴とするプール用循環システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記循環路は、前記プール(100)の水を常時循環させる常時循環路(110)であることを特徴とするプール用循環システム。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記循環路は、前記プール(100)からオーバーフローした水を循環させるオーバーフロー循環路(120)であることを特徴とするプール用循環システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つにおいて、
上記貯水タンク(61)に銅イオン又は鉄イオンを供給するイオン供給部(110,124,125)を備えていることを特徴とするプール用循環システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つにおいて、
前記電極対(64,65)のうち放電電極(64)は前記貯水タンク(61)の底部に配置されていることを特徴とするプール用循環システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−75966(P2012−75966A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220430(P2010−220430)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】