説明

ヘアーブラシ

【解決手段】表面側にブラシ毛10を有する植毛体1においてその裏面側から表面側に通風孔4を貫設し、この植毛体1の表面側には通風孔4の開口9の外側で主熱伝導部8を設けるばかりでなく、その通風孔4の内側で通風孔4の開口9の周縁間に架橋した補助熱伝導部12を設け、その補助熱伝導部12を主熱伝導部8に接続してそれらの間で熱伝導可能にした。ドライヤーの熱風のうち通風孔4を通る熱風は、その表面側開口9から吹き出して主熱伝導部8を加熱するばかりでなく、通風孔4の内側で補助熱伝導部12も加熱する。
【効果】加熱された主熱伝導部8が頭髪に接触して整髪機能を高めるばかりでなく、熱が補助熱伝導部12に効率良く蓄積され、通風孔4付近の頭髪を温めて整髪機能をより一層高めることができるとともに、補助熱伝導部12に効率良く蓄積された熱が主熱伝導部8に伝わって主熱伝導部8による整髪機能をより一層高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ毛を有する植毛体の表面側に通風孔の開口と熱伝導部とを設けたヘアーブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、表面側にブラシ毛を有する植毛体においてその裏面側から表面側に通風孔が貫設され、この植毛体の表面側には通風孔の表面側開口の外側で熱伝導部が設けられている。ドライヤーの熱風の一部は植毛体の裏面側から通風孔を通って植毛体の表面側へ達して熱伝導部を加熱する。そのため、加熱された熱伝導部が頭髪に接触して整髪機能を高めることができる。
【特許文献1】特開2007−21158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、熱伝導部が通風孔の表面側開口の外側に設けられているので、通風孔の表面側開口から吹き出す熱風域から熱伝導部が外れて熱風がその熱伝導部に対し直接当りにくくなり、熱伝導部が加熱されにくい。
【0004】
この発明は、ヘアーブラシにおいて熱伝導部に対する加熱構造を改良し、整髪機能をより一層高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜3)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるヘアーブラシにおいては、表面側にブラシ毛10を有する植毛体1でその裏面側から表面側に通風孔4を貫設し、この植毛体1の表面側には通風孔4の表面側開口9の外側で主熱伝導部8を設けるばかりでなく、この植毛体1には補助熱伝導部12を通風孔4の表面側開口9に面して設けている。請求項1の発明では、ドライヤーの熱風の一部が植毛体1の裏面側から通風孔4を通って植毛体1の表面側へ達して主熱伝導部8を加熱するとともに、その熱風により補助熱伝導部12も加熱される。そのため、主熱伝導部8が頭髪に接触して整髪機能を高めることができるばかりでなく、通風孔4を通る熱風が補助熱伝導部12に直接当り易くなってその熱風による熱が補助熱伝導部12に効率良く蓄積され、ドライヤーの熱風を有効利用して通風孔4付近の頭髪を温め、整髪機能をより一層高めることができる。
【0006】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記補助熱伝導部12を前記主熱伝導部8に接続してそれらの熱伝導部8,12間で熱伝導可能にしている。請求項2の発明では、補助熱伝導部12の熱が主熱伝導部8に伝わって主熱伝導部8による整髪機能をより一層高めることができる。
【0007】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明においては、前記補助熱伝導部12を通風孔4の表面側開口9の周縁間に架橋している。請求項3の発明では、補助熱伝導部12が熱風を受け易くなるとともに頭髪に接触し易くなって整髪機能をより一層高めることができるばかりでなく、補助熱伝導部12の強度を高めることができる。
【0008】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明においては、前記補助熱伝導部12を通風孔4の内側に設けている。請求項4の発明では、通風孔4を通る熱風による熱が補助熱伝導部12により一層効率良く蓄積される。
【0009】
請求項5の発明にかかるヘアーブラシにおいては、表面側にブラシ毛10を有する植毛体1でその裏面側から表面側に通風孔4を貫設し、この植毛体1の表面側には通風孔4の表面側開口9の外側で主熱伝導部8を設けるばかりでなく、その通風孔4の内側に補助熱伝導部12を設け、その補助熱伝導部12を主熱伝導部8に接続してそれらの熱伝導部8,12間で熱伝導可能にしている。請求項5の発明では、ドライヤーの熱風の一部が植毛体1の裏面側から通風孔4を通って植毛体1の表面側へ達して主熱伝導部8を加熱するとともに、その熱風により補助熱伝導部12も加熱される。そのため、主熱伝導部8が頭髪に接触して整髪機能を高めることができるばかりでなく、通風孔4を通る熱風が補助熱伝導部12に直接当り易くなってその熱風による熱が補助熱伝導部12に効率良く蓄積されるとともに、補助熱伝導部12の熱が主熱伝導部8に伝わって主熱伝導部8による整髪機能をより一層高めることができる。
【0010】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第6の発明において、前記主熱伝導部8は植毛体1の表面側で通風孔4の表面側開口9の周縁の全体を囲んでいる。第6の発明では、ドライヤーの熱風により主熱伝導部8を加熱し易い。
【0011】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6の発明を前提とする第7の発明において、ブラシ毛10は、前記主熱伝導部8に設けた透孔11を通して植毛体1の表面側に設けられている。第7の発明では、主熱伝導部8の面積を大きくして主熱伝導部8による整髪機能をより一層高めることができる。なお、植毛体1の表面側に主熱伝導部8を設けた後に、その透孔11から植毛体1の表面側にブラシ毛10を植込むことができる。
【0012】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6の発明または第7の発明を前提とする第8の発明において、植毛体1の裏面側に凹所3を設け、その凹所3の底面6側から植毛体1の表面側に通風孔4を貫設している。第8の発明では、植毛体1を軽量化するばかりでなく、ドライヤーの熱風を凹所3に効率よく集めて通風孔4に送り込むことができる。
【0013】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6の発明または第7の発明または第8の発明を前提とする第9の発明において、前記通風孔4は複数設けられている。第9の発明では、植毛体1の強度を維持することができる。
【0014】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6の発明または第7の発明または第8の発明または第9の発明を前提とする第10の発明において、一つの通風孔4の内側には複数の補助熱伝導部12を設けている。第10の発明では、通風孔4における通風性を維持しつつ補助熱伝導部12の面積を大きくして補助熱伝導部12による整髪機能をより一層高めることができる。
【0015】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6の発明または第7の発明または第8の発明または第9の発明または第10の発明を前提とする第11の発明において、前記補助熱伝導部12を植毛体1の表面側で通風孔4の表面側開口9に設け、その補助熱伝導部12の面積は、その通風孔4の表面側開口9の面積の5〜30%を占める。第11の発明では、通風孔4における通風性を維持しつつ補助熱伝導部12の面積を大きくして補助熱伝導部12による整髪機能をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ヘアーブラシにおいて、主熱伝導部8に加え、補助熱伝導部12を設けたので、熱伝導部8,12による整髪機能をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るヘアーブラシについて図1〜3を参照して説明する。
プラスチックによりホルダ2と一体成形された植毛体1において、その裏面側には周壁3aにより囲まれた凹所3が設けられ、植毛体1の幅方向Yへ延びる複数の通路孔5が通風孔4の一部として植毛体1の長手方向Xへ並設されて凹所3の底面6側から植毛体1の表面側に貫設されている。この植毛体1の表面側には各通路孔5の開口7の外側(通風孔4の外側で且つ通路孔5の開口7の表面側域Sの外側)で金属板製の主熱伝導部8が重ねられて幅方向Yの両側の掛止め部8aで取着されている。この主熱伝導部8には、各通路孔5の表面側開口7の周縁の全体を囲む開口9が通風孔4の一部として形成されているとともに、植毛体1の表面側に植込まれた各ブラシ毛10を通す各透孔11が形成されている。通風孔4の表面側開口9については、幅方向Yへ延びる長手方向Xの両端縁部が植毛体1の裏面側から表面側へ膨らむように湾曲しているとともにホルダ2側から植毛体1の先端部側へ膨らむように湾曲している。
【0018】
前記主熱伝導部8の開口9の周縁間には主熱伝導部8と一体成形された金属板製の各補助熱伝導部12が植毛体1の長手方向Xへ架橋されるとともに幅方向Yへ互いに間隔をあけて並設されてその開口9に面するようにその開口9の内側(通風孔4の内側で且つ通路孔5の開口7の表面側域Sの内側)へ突出し、その主熱伝導部8と各補助熱伝導部12とが互いに接続されてそれらの熱伝導部8,12間で熱伝導可能になっている。この各補助熱伝導部12と各ブラシ毛10の一部とは長手方向Xで互いに並んでいる。この植毛体1の表面側で通風孔4の表面側開口9の面積は、20〜3000平方ミリメートルにすることが好ましく、その表面側開口9に設けられた補助熱伝導部12の面積は、その表面側開口9の面積の約20%を占めているが、5〜30%を占めることが好ましい。
【0019】
なお、植毛体1とホルダ2とを含むヘアーブラシについては、長手方向Xの全長が約240mm、植毛体1の幅方向Yの寸法が約45mm、通風孔4の表面側開口9で長手方向Xの寸法が約4mm、通風孔4の表面側開口9で幅方向Yの寸法が約32mm、主熱伝導部8及び補助熱伝導部12の厚さが約0.5mmにそれぞれ設定されている。
【0020】
本実施形態は下記の効果を有する。
* ドライヤーの熱風のうち通風孔4を通る熱風は、その表面側開口9から吹き出して主熱伝導部8を加熱するばかりでなく、通風孔4の内側(前記主熱伝導部8の開口9と前記通路孔5とからなる通風孔4を形取る内空間)で補助熱伝導部12も加熱するので、加熱された主熱伝導部8が頭髪に接触して整髪機能を高めることができるばかりでなく、通風孔4を通る熱風が補助熱伝導部12に直接当り易くなってその熱風による熱が補助熱伝導部12に効率良く蓄積され、通風孔4付近の頭髪を温めて整髪機能をより一層高めることができる。
【0021】
* 補助熱伝導部12に効率良く蓄積された熱は、主熱伝導部8に伝わって主熱伝導部8を早く且つ均一に温め、主熱伝導部8による整髪機能をより一層高めることができる。
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
【0022】
・ 補助熱伝導部12を主熱伝導部8の開口9に設けることなくその開口9から外側へ湾曲させることによりその開口9に面するようにその開口9側へ突出させて通風孔4を形取る内空間の外側で且つ前記表面側域Sの内側に設けてもよい。
【0023】
・ 補助熱伝導部12を主熱伝導部8の開口9に設けることなくその開口9から通路孔5の開口7側へ湾曲させることによりその開口9に面するようにその開口9側へ突出させて通風孔4の内側に設けてもよい。
【0024】
・ 通風孔4において、補助熱伝導部12を主熱伝導部8の開口9でなく植毛体1の通路孔5の内周に設けてもよい。また、その補助熱伝導部12に接続した連繋部を主熱伝導部8に接続してもよい。
【0025】
・ 通風孔4において、主熱伝導部8の開口9で複数の補助熱伝導部12を両持ち梁状に架橋して突出させることなく片持ち梁状に突出させてもよい。
・ 植毛体1の凹所3を省略してもよい。
【0026】
・ 通風孔4の内縁形状を長孔以外に変更してもよい。
・ 通風孔4を幅方向Yで複数に分けて長手方向Xへ並設してもよい。
・ 主熱伝導部8と補助熱伝導部12とを一体でなく別体で設けてもよい。また、主熱伝導部8及び補助熱伝導部12をそれぞれ複数に分けて設けてもよい。
【0027】
・ 主熱伝導部8の両掛止め部8aを着脱可能にして主熱伝導部8及び補助熱伝導部12を植毛体1に対し交換可能にしてもよい。そのため、材質や色や形や熱伝導率やコーティングの種類などの特性の差異に応じて使い分けることができる。その着脱の際、ブラシ毛10に付いた髪を主熱伝導部8及び補助熱伝導部12により取り除くことができる。
【0028】
・ 主熱伝導部8及び補助熱伝導部12の材質としては、アルミや銅が好ましいが、ステンレスや鉄などの他の材質を用いてもよい。また、金属以外でもよい。ただし、熱伝導率の値が大きいものが好ましい。
【0029】
・ 主熱伝導部8及び補助熱伝導部12の表面をセラミックコートして保温性を高めてもよい。このセラミックコート以外に、銀や銅をコーティングして殺菌作用を付与してもよい。また、酸化チタンコーティングを施して光触媒作用を付与してもよい。さらに、ふっ素樹脂コーティングを施して汚れを落ち易くしてもよい。それらのコーティングについては、主熱伝導部8及び補助熱伝導部12の表面と裏面とに施してもよいが、少なくとも表面に施して裏面には施さなくてもよい。
【0030】
・ 主熱伝導部8及び補助熱伝導部12の表面を感温塗装し、主熱伝導部8及び補助熱伝導部12の温度変化に応じてそれらの表面の色が変化し、使用者に主熱伝導部8及び補助熱伝導部12のおおよその温度が分かるようにしてもよい。
【0031】
・ 植毛体1の全体をアルミなどで形成し、それに通風孔4や主熱伝導部8及び補助熱伝導部12を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は本実施形態にかかるヘアーブラシの表面側を示す斜視図であり、(b)は同じく部分平面図である。
【図2】(a)は本実施形態にかかるヘアーブラシの裏面側を示す斜視図であり、(b)は同じく部分底面図である。
【図3】(a)は上記ヘアーブラシの植毛体を幅方向で切断した部分断面図であり、(b)は同じく長手方向で切断した部分断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…植毛体、4…通風孔、8…主熱伝導部、9…主熱伝導部の開口(通風孔の表面側開口)、10…ブラシ毛、12…補助熱伝導部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側にブラシ毛を有する植毛体においてその裏面側から表面側に通風孔を貫設し、この植毛体の表面側には通風孔の表面側開口の外側で主熱伝導部を設けるばかりでなく、この植毛体には補助熱伝導部を通風孔の表面側開口に面して設けたことを特徴とするヘアーブラシ。
【請求項2】
前記補助熱伝導部を前記主熱伝導部に接続してそれらの熱伝導部間で熱伝導可能にしたことを特徴とする請求項1に記載のヘアーブラシ。
【請求項3】
前記補助熱伝導部を通風孔の表面側開口の周縁間に架橋したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘアーブラシ。
【請求項4】
前記補助熱伝導部を通風孔の内側に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載のヘアーブラシ。
【請求項5】
表面側にブラシ毛を有する植毛体においてその裏面側から表面側に通風孔を貫設し、この植毛体の表面側には通風孔の表面側開口の外側で主熱伝導部を設けるばかりでなく、その通風孔の内側に補助熱伝導部を設け、その補助熱伝導部を主熱伝導部に接続してそれらの熱伝導部間で熱伝導可能にしたことを特徴とするヘアーブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−189560(P2009−189560A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33394(P2008−33394)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】