説明

ヘッドカバー、記録ヘッド及び記録装置

【課題】 リボンカートリッジの交換時の安全性を確保しつつ交換の作業性を向上させる。
【解決手段】 ヘッド本体を覆うカバー本体60を備えたヘッドカバーにおいて、ヘッド本体の高温時に、ヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、ヘッド本体の低温時に、係合部への係合が解除される非係合位置に移動する爪部67を備えたロック部材66が、カバー本体60に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド本体を覆うヘッドカバー、ヘッドカバーを備えた記録ヘッド及び記録ヘッドを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録装置として、キャリッジに搭載される記録ヘッドを備え、この記録ヘッドの記録部材(例えば、回動可能なレバーの先端、あるいはレバーの先端に設けたピンやワイヤ)を、リボンカートリッジから繰り出されたインクリボンを介して、プラテン上に搬送されたシートに打ち付けることで、シートに画像を記録するドットインパクトプリンタが知られている。この種の記録装置において、記録ヘッドのヘッド本体を覆うヘッドカバーを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このヘッドカバーは、カバー本体が樹脂で形成されており、記録ヘッドは、ヘッド本体が金属で形成されている。
【0003】
この記録装置において、リボンカートリッジを交換する場合、リボンカートリッジとともにヘッドカバーも取り外すように構成されており、ヘッドカバーを取り外した際には、ヘッド本体が露出することとなり、リボンカートリッジを交換する作業者の手が、このヘッド本体に触れる可能性がある。ここで、このヘッド本体を駆動した場合には、ヘッド本体が発熱し徐々に昇温して高温となる。
【0004】
従って、リボンカートリッジを交換する際には、作業者の手が触れる可能性のあるヘッド本体が高温であると想定して、ヘッド本体の駆動を停止させてからヘッド本体が十分に冷める所定の冷却時間(例えば、15分間)が経過するまでヘッド本体を放置して放熱させ、この放熱後にリボンカートリッジの交換の作業を行う必要がある。
【特許文献1】特開平5−147321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記記録装置では、ヘッド本体の駆動状態やヘッド本体の周辺環境に応じて、ヘッド本体の駆動を停止させてからヘッド本体が十分に冷めるまでの時間が異なるため、所定の冷却時間が経過するまでヘッド本体を放置しなくても、ヘッド本体が十分に冷めている場合がある。
【0006】
しかしながら、作業者は、ヘッド本体が手を触れることができる温度にまで冷めているか否かを見分けることができないため、ヘッド本体が冷めている状態でも所定の冷却時間が経過するまで待つこととなり、リボンカートリッジの交換の作業性が悪いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、ヘッド本体が冷めた状態であれば、時間を待つことなくリボンカートリッジを交換でき、リボンカートリッジの交換時の安全性を確保しつつ交換の作業性を向上させることができるヘッドカバー、記録ヘッド及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、ヘッド本体を覆うカバー本体を備えたヘッドカバーにおいて、前記ヘッド本体の高温時に、前記ヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、前記ヘッド本体の低温時に、前記係合部への係合が解除される非係合位置に移動する爪部を備えたロック部材が、前記カバー本体に設けられていることを特徴とするものである。
上記構成によれば、ロック部材の爪部が、ヘッド本体の高温時にヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、ヘッド本体の低温時に係合部への係合が解除される非係合位置に移動する。これにより、ヘッド本体が冷めた状態であれば、カバー本体をヘッド本体から外すことができるので、時間を待つことなくリボンカートリッジを交換でき、リボンカートリッジの交換時の安全性を確保しつつ交換の作業性を向上させることができる。
【0009】
このヘッドカバーにおいて、前記ロック部材は、基端が前記カバー本体に固定され、前記ヘッド本体の熱に応じて変形するアーム部を備え、前記爪部は、前記アーム部の自由端に設けられ、前記アーム部の熱変形により移動するようにしてもよい。
【0010】
また、上記ヘッドカバーにおいて、前記アーム部は、形状記憶合金を有するようにしてもよい。
【0011】
また、上記ヘッドカバーにおいて、前記カバー本体に、前記ヘッド本体の高温時に低温時とは異なる色に変化する熱変色部材を設けてもよい。
【0012】
また、上記ヘッドカバーにおいて、前記熱変色部材は、前記低温時に下地と略同色であり、前記高温時に下地と異なる色に変色するようにしてもよい。
【0013】
また、上記ヘッドカバーにおいて、前記カバー本体には、インクリボンを保持し、当該インクリボンをガイドするリボンガイドが形成されていてもよい。
【0014】
また、ヘッド本体と、このヘッド本体を覆うカバー本体とを備えた記録ヘッドにおいて、前記ヘッド本体の高温時に、前記ヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、前記ヘッド本体の低温時に、前記係合部への係合が解除される非係合位置に移動する爪部を備えたロック部材が、前記カバー本体に設けられていることを特徴とするものである。
上記構成によれば、ロック部材の爪部が、ヘッド本体の高温時にヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、ヘッド本体の低温時に係合部への係合が解除される非係合位置に移動する。これにより、ヘッド本体が冷めた状態であれば、カバー本体をヘッド本体から外すことができるので、時間を待つことなくリボンカートリッジを交換でき、リボンカートリッジの交換時の安全性を確保しつつ交換の作業性を向上させることができる。
【0015】
また、キャリッジに搭載される記録ヘッドを備え、この記録ヘッドを用いてシートに画像を記録する記録装置において、前記記録ヘッドは、ヘッド本体と、このヘッド本体を覆うカバー本体とを備え、前記ヘッド本体の高温時に、前記ヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、前記ヘッド本体の低温時に、前記係合部への係合が解除される非係合位置に移動する爪部を備えたロック部材が、前記カバー本体に設けられていることを特徴とするものである。
上記構成によれば、ロック部材の爪部が、ヘッド本体の高温時にヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、ヘッド本体の低温時に係合部への係合が解除される非係合位置に移動する。これにより、ヘッド本体が冷めた状態であれば、カバー本体をヘッド本体から外すことができるので、時間を待つことなくリボンカートリッジを交換でき、リボンカートリッジの交換時の安全性を確保しつつ交換の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヘッド本体が冷めた状態であれば、時間を待つことなくリボンカートリッジを交換でき、リボンカートリッジの交換時の安全性を確保しつつ交換の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る記録装置としてのドットインパクトプリンタの外観を示す正面斜視図である。図2は、プリンタ本体11を示す斜視図である。図3は、図1のプリンタ10を示す側断面図である。
【0019】
図1乃至図3に示す記録装置としてのドットインパクトプリンタ10は、記録ヘッド18(図2及び図3参照)が備える複数の記録ワイヤを、インクリボン40を介してシートに押し付け、このシート上にドットを形成することにより、文字を含む画像を記録するものである。
【0020】
シートとしては、所定長さに切断されたカットシートと、複数枚が連接された連続紙とがある。カットシートとしては、例えば単票紙や単票複写紙などの普通紙の他、通帳や葉書、封筒などがあり、連続紙としては、連続複写紙を含んでいる。図1に示すシート100は、例えば、通帳であり、複数枚の記録用紙が綴じられ、記録用紙の記録面を開いた場合の底面に磁気ストライプ101が設けられている。
【0021】
このプリンタ10は、記録装置本体としてのプリンタ本体11と、このプリンタ本体11を覆う外装体としての上部カバー12、上部ハウジング13及び下部ハウジング14とを備えて構成される。上部ハウジング13及び下部ハウジング14の前面には、手差口15が開口している。
【0022】
プリンタ本体11は、図2及び図3に示すように、左サイドフレーム16及び右サイドフレーム17(一対のサイドフレーム)を備えた本体フレームと、記録ヘッド18及びキャリッジ19を備えた記録機構部20と、記録ヘッド18に対向するプラテン21と、第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23を備えた第1シート搬送機構部24と、第3搬送ローラ25及び第4搬送ローラ26を備えた第2シート搬送機構部27と、シート100を整列させる整列板28と、シート100に設けられた磁気ストライプ101の磁気情報を読み取り又は書き込む磁気ヘッド34を備えた磁気データ読書部29と、磁気情報読み書き時にシート100の浮き上がりを上から押えるシート押え部30と、を有している。
【0023】
上記本体フレームの両サイドフレーム16、17間には、キャリッジ軸31が架け渡されるとともに、両サイドフレーム16、17間に平坦面形状の前方シート案内32及び後方シート案内33が固定して設けられる。これらの前方シート案内32と後方シート案内33との間に、平面形状のプラテン21が配置される。
【0024】
上記第1シート搬送機構部24は、プラテン21に対してプリンタ本体11の前方側に配置され、第2シート搬送機構部27は、プラテン21に対してプリンタ本体11の後方側に配置される。更に、第1搬送ローラ22と第2搬送ローラ23が、また第3搬送ローラ25と第4搬送ローラ26が、それぞれ上下方向に配置されて対をなす。
【0025】
このうち、第1搬送ローラ22、第3搬送ローラ25は、プラテン21とともに前方シート案内32、後方シート案内33のそれぞれの下方に配置され、第2搬送ローラ23、第4搬送ローラ26が、前方シート案内32、後方シート案内33のそれぞれの上方に配置される。第1搬送ローラ22及び第3搬送ローラ25は、図示しないシート搬送モータ及び駆動輪列部によって回転駆動される駆動ローラであり、第2搬送ローラ23及び第4搬送ローラ26は、それぞれ第1搬送ローラ22及び第3搬送ローラ25側に所定の押圧力でばね付勢されている従動ローラである。これによって、第1搬送ローラ22と第2搬送ローラ23とが互いに反対方向に回転駆動されるとともに、第3搬送ローラ25と第4搬送ローラ26とが互いに反対方向に回転駆動される。
【0026】
上記キャリッジ19は、キャリッジ軸31に摺動自在に挿通されるとともに、記録ヘッド18を搭載している。キャリッジ19は、当該キャリッジ19を駆動する不図示のキャリッジ駆動モータの正転または逆転により、不図示のタイミングベルトを介しキャリッジ軸31に案内されて、このキャリッジ軸31の軸方向及びプラテン21の長手方向と一致する主走査方向に、図2に示す一対のサイドフレーム16、17の範囲で走行(走査)される。
【0027】
プラテン21は、キャリッジ19の走行方向に延在して平面形状に形成され、その両端が、付勢部材としての付勢ばね41(図3)により記録ヘッド18に向けて付勢されるとともに、弾性支持されている。この付勢ばね41は、圧縮コイルばねである。この付勢ばね41の付勢力により、記録ヘッド18の記録動作時における記録ワイヤの突出力が支持される。また、プラテン21は、シート100の搬送中にこのシート100の厚さが変化した場合、またはプリンタ本体11に厚さの異なるシート100が搬入された場合に、付勢ばね41の付勢力に抗して、記録ヘッド18の先端により押圧されて記録ヘッド18から離れる方向に移動する。これにより、シート厚に拘わらず、記録ヘッド18の先端とシート100の記録面との間のギャップ(プラテンギャップ)が一定に確保される。
【0028】
記録ヘッド18は、キャリッジ19とともに主走査方向に走行される間に、記録ワイヤを突出させてインクリボン40に打ち当て、このインクリボン40のインクを、プラテン21と記録ヘッド18との間に搬送されるシート100に付着させて、このシート100に文字を含む画像を記録する。このインクリボン40は、リボンカートリッジ39内に折り畳まれて収納される。このリボンカートリッジ39は、キャリッジ19または本体フレームに装着される。
【0029】
このリボンカートリッジ39は、繰出アーム39Aと、引込アーム39Bとを備え、インクリボン40は、繰出アーム39Aを通じてリボンカートリッジ39の外部に繰り出されるとともに、引込アーム39Bを通じてリボンカートリッジ39の内部に収納される。
【0030】
次に、プリンタ10の動作の概略を説明する。
【0031】
例えば通帳としてのシート100が図1に示す手差口15から挿入されると、整列板28が搬送経路に突出され、シート100が第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23により挟まれて整列板28に当接するまで搬送される。
【0032】
次に、整列板28を搬送経路に突出させた状態で、第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23によりシート100が搬送される。これによって、シート100が整列板28に沿って整列することとなる。次いで、磁気データ読書部29がシート100の磁気ストライプ101を読み取ることができる読み取り位置まで、シート100が第1シート搬送機構部24により搬送される。
【0033】
次に、シート100の磁気ストライプ101から情報が磁気データ読書部29により読み取とられた後、第1及び第2シート搬送機構部24、27によってシート100がプラテン21上の記録位置まで搬送され、文字等の画像が記録ヘッド18により記録される。
【0034】
この記録ヘッド18による記録動作は、記録ヘッド18が主走査方向左向きまたは右向きに走行される間に、記録ヘッド18の記録ワイヤにより1行分の記録がなされ、この1行分の記録がなされる度に、第1搬送ローラ22、第2搬送ローラ23、第3搬送ローラ25及び第4搬送ローラ26がシート100を所定長(通常行間分)搬送させ、これらの動作が繰り返されることにより実施される。
【0035】
記録ヘッド18による記録後、シート100は、第1及び第2シート搬送機構部24、27によって上記読み取り位置まで搬送され、シート100へ記録した情報に基いて、磁気データ読書部29により磁気ストライプ101に磁気情報が書き込まれる。次に、第1シート搬送機構部24によってシート100が前側に搬送され、シート100が手差口15から排出される。
【0036】
第1、第2シート搬送機構部24、27の駆動制御、キャリッジ19の走行制御、記録ヘッド18の記録ワイヤによる記録動作の制御、及び磁気データ読書部29の読み書き制御等、プリンタ10全体を制御する制御基板部50が、例えばプリンタ本体11の後方側の下方に配置される。
【0037】
次に、記録ヘッド18の構成について説明する。図4は、記録ヘッド18の正面から見た平面図であり、この記録ヘッド18は、外表面が金属製のヘッド本体51と、ヘッドカバー52とを備えている。
【0038】
図5は、ヘッド本体51を示す斜視図であり、図6は、ヘッドカバー52を示す斜視図である。
【0039】
図5に示すように、ヘッド本体51は、金属製(例えばアルミニウム製)の放熱器53と、この放熱器53に嵌め込まれるワイヤ駆動部(不図示)と、このワイヤ駆動部に連設されるノーズ部54とを備えており、このワイヤ駆動部は、複数の記録ワイヤ55を備えるとともに、これら記録ワイヤ55をワイヤレバー(不図示)を介して駆動する複数の電磁コイル(不図示)を備えている。これら電磁コイルは、制御基板部50(図3)によって通電制御され、通電された電磁コイル対応する記録ワイヤ55がノーズ部54の先端から突出される。この電磁コイルへの通電によって電磁コイルが発熱し、この熱がヘッド本体51の放熱器53に伝達し、この放熱器53により、ヘッド本体51の放熱が促進される。ノーズ部54の先端には、上述したプラテンギャップを一定に確保するためのローラ56が設けられている。
【0040】
ヘッド本体51の放熱器53の両側面には、ヘッドカバー52を取付けるための凹部57がそれぞれ形成されている。具体的に説明すると、この凹部57は、放熱器53に形成されている複数のフィン58A、58B、58Cのうち、隣接する2つのフィン58B、58C間に形成されている。
【0041】
図6に示すように、ヘッドカバー52は、箱形状を有する樹脂製のカバー本体60を備えている。このヘッドカバー52が、図4(a)に示すように、ヘッド本体51を覆うべくヘッド本体51に取付けられる。
【0042】
図6に示すように、このカバー本体60には、ノーズ部54(図5)に対向する面にインクリボン40をガイドするリボンガイド61が形成されている。このリボンガイド61は、インクリボン40の幅方向の振れを規制すべくガイドするものであり、インクリボン40が当該リボンガイド61から容易に外れないように、インクリボン40を保持するように構成されている。
【0043】
図7は、リボンカートリッジ39及びヘッドカバー52を示す平面図である。この図7に示すように、ヘッドカバー52が、インクリボン40に取付けられた状態であるので、リボンカートリッジ39を交換する際は、ヘッドカバー52をヘッド本体51から取り外し、リボンカートリッジ39とともにヘッドカバー52も交換することとなる。
【0044】
また、図6に示すように、カバー本体60の両側には、作業者が摘んでヘッドカバー52の着脱の操作を行うための操作部62がそれぞれ設けられている。なお、カバー本体60においてノーズ部54に対向する面の反対側の面は、開口している。
【0045】
図8は、図6中矢印X方向から見たヘッドカバー52の部分斜視図である。図9は、図6中矢印Y方向から見たヘッドカバー52の背面図である。
【0046】
図8及び図9に示すように、ヘッドカバー52のカバー本体60において、ヘッド本体51の放熱器53(図5)の両側面の各面に対向する内壁63には、当該内壁63に沿って延び、揺動自在とする延出部64がそれぞれ形成され、各延出部64の先端付近に、ヘッド本体51の放熱器53に形成された凹部57(図4及び図5)に係合する突起部65が形成されている。これによって、ヘッド本体51に対するヘッドカバー52の着脱の際に、ヘッド本体51の凹部57(図4及び図5)にカバー本体60の突起部65が係脱することとなる。
【0047】
具体的には、図4を参照して説明すると、ヘッドカバー52をヘッド本体51から外す場合、図4(a)に示すように、当該ヘッドカバー52を外す矢印A方向(ヘッド本体51のノーズ部54の先端が延出する方向)にヘッドカバー52をスライド操作することにより、突起部65(図8)が、係合が解除される外方向にヘッド本体51に押圧されて、延出部64(図8)が撓んで外方向に退くこととなる。これによって、ヘッド本体51の凹部57と、カバー本体60の突起部65との係合が解除される。そして、ヘッドカバー52がヘッド本体51から外されたときに、延出部64(図8)が元の位置に復帰する。
【0048】
また、ヘッドカバー52をヘッド本体51に取付ける場合、図4(b)に示すように、矢印A方向とは反対の矢印B方向にヘッドカバー52をスライド操作することにより、突起部65(図8)がヘッド本体51に外方向に押圧されて延出部64(図8)が撓んで外方向に退き、突起部65とヘッド本体51の凹部57が対向したときに、延出部64が元の位置に復帰する。以上の動作によって、ヘッド本体51の凹部57とカバー本体60の突起部65との係脱の際に、クリック感を生じさせている。
【0049】
このように、ヘッドカバー52を矢印A方向にスライド操作した場合、作業者の手が、ヘッド本体51に触れやすいものである。この記録ヘッド18のヘッド本体51を駆動した場合には、ヘッド本体51が発熱し徐々に昇温し、最大で100℃程度にまで達する。従って、リボンカートリッジ39を交換する際に、作業者は、ヘッド本体51の駆動を停止させてからヘッド本体51が十分に冷めるまでヘッド本体51を放置して放熱させ、この放熱後にリボンカートリッジ39の交換の作業を行う必要がある。このヘッド本体51の冷める時間は、ヘッド本体51の駆動状態やヘッド本体51の周辺環境に応じて異なり、ヘッド本体51を見ただけでは、ヘッド本体51が冷めているのか否かが見分けが付かない。
【0050】
そこで、本実施形態において、ヘッド本体51には、係合部59(図5及び図9)が形成され、カバー本体60には、ヘッド本体51の係合部59に係合する係合位置と係合部59への係合が解除される非係合位置との間を移動する爪部67を備えたロック部材66が設けられている。ロック部材66の爪部67は、ヘッド本体51の高温時に係合位置に移動するとともに、ヘッド本体51の低温時に非係合位置に移動するように構成されている。ここで、図9中、カバー本体60の左側の内壁63に設けられたロック部材66の爪部67は、係合位置に移動している場合を示しており、カバー本体60の右側の内壁63に設けられたロック部材66の爪部67は、非係合位置に移動している場合を示している。
【0051】
具体的に説明すると、ヘッド本体51の係合部59は、放熱器53の複数のフィン58A、58B、58Cのうちのいずれかのフィン(本実施形態では、フィン58B)の放熱面である。そして、ロック部材66は、カバー本体60の両側のそれぞれに、カバー本体60の内壁63に沿って設けられている。これらロック部材66は、熱に応じて変形するアーム部68と、アーム部68の先端(自由端)に設けた爪部67とを備えている。アーム部68の基端は、カバー本体60の内壁63に例えば接着剤等により固定される。
【0052】
図10は、ロック部材66を示す斜視図である。この図10に示すように、ロック部材66のアーム部68は、アーム状に形成された形状記憶合金66Aと、爪部67を有する面の反対側の面に貼着される板ばね66Bとを備え、爪部67は、形状記憶合金66Aの自由端に形成されている。
【0053】
板ばね66Bは、形状記憶合金66Aを、爪部67の係合が解除される矢印C方向に付勢し、ヘッド本体51が所定温度よりも温度の低い低温時に、形状記憶合金66Aを矢印C方向に撓ませて、爪部67を非係合位置に移動させている。
【0054】
また、形状記憶合金66Aは、ヘッド本体51が所定温度(作業者がヘッド本体51に触れても安全な温度)よりも温度の高い高温時に、板ばね66Bの付勢に反して熱変形して直立するように記憶されており、高温時には爪部67を係合位置に移動させている。これによって、ヘッド本体51の高温時には、爪部67が係合位置へ自動的に移動して、ヘッド本体51の係合部59に引っ掛り、ヘッドカバー52をヘッド本体51にロックしている。
【0055】
従って、ヘッド本体51が所定温度よりも温度が高い高温時には、ロック部材66の爪部67がヘッド本体51の係合部59に引っ掛り、ヘッドカバー52がヘッド本体51にロックされているので、作業者がヘッドカバー52をヘッド本体51から取り外すようにヘッドカバー52を操作しても、ヘッドカバー52をヘッド本体51から取り外すことはできない。このようにヘッドカバー52がヘッド本体51にロックされることで、作業者は、ヘッド本体51が高温であることを把握でき、また、ヘッド本体51が高温状態のときにヘッドカバー52が外されることもない。ここで、カバー本体60もヘッド本体51の熱が伝達して昇温するが、カバー本体60は、樹脂で形成されており、作業者が火傷するほどの高温にまでは至らない。
【0056】
一方、ヘッド本体51が所定温度よりも温度が低い低温時には、ロック部材66のアーム部68が板ばね66Bの付勢力により反り返り、爪部67が非係合位置に自動的に移動し、ロックが解除される。このようにロックが解除されるので、ヘッドカバー52をヘッド本体51から取り外すことが可能となる。
【0057】
このように、リボンカートリッジ39を交換する作業者は、ロック部材66によりヘッドカバー52がヘッド本体51にロックされているか否かを確かめることで、ヘッド本体51が十分に冷めた状態であるか否かを把握することができる。
【0058】
しかも、ヘッド本体51が十分に冷めた状態のときにロックが自動的に解除され、ヘッドカバー52の取り外しが可能となるので、作業者は、わざわざヘッド本体51が冷めるまでの時間をカウントする必要がない。
【0059】
そして、ヘッド本体51の駆動を停止してから所定の冷却時間が経過する前にヘッド本体51が十分に冷めた場合には、ヘッドカバー52を外すことができるので、所定の冷却時間が経過するのを待つことなく迅速にリボンカートリッジ39を交換することができる。従って、リボンカートリッジ39の交換時の安全性を確保しつつ、交換作業の時間を短縮することができるので、リボンカートリッジ39の交換の作業性が向上する。
【0060】
また、本実施形態において、カバー本体60には、図2、図4、図6に示すように、ヘッド本体51の温度状態を示す表示部70が貼付されている。この表示部70は、上部カバー12(図1)を開いた場合に、作業者に見えるように、カバー本体60の正面に貼付されている。
【0061】
図11は、表示部70を示す正面図である。この図11に示すように、表示部70は、ヘッド本体51の高温時に低温時とは異なる色に変化する熱変色部材70A(例えば、日油技研工業株式会社製の商品名「サーモテープ」など)が設けられている。
【0062】
この表示部70の熱変色部材70Aは、ヘッド本体51の低温時に、図11(a)に示すように、下地70Bと略同色(同色を含む。)となり、ヘッド本体51の高温時に、図11(b)に示すように、下地70Bと異なる色に変色するように設定されている。従って、作業者は、ヘッドカバー52がヘッド本体51にロックされているか否か、即ち、ヘッド本体51が高温状態であるか低温状態であるかを視覚的に把握することができる。
【0063】
この表示部70の熱変色部材70Aは、ヘッド本体51が高温状態である場合に高温状態であることが分かるように形成されているのが好ましい。具体的には、熱変色部材70Aが高温状態であることを示す文字や温度を示す数字に形成されているのが好ましい。本実施形態では、熱変色部材70Aは、「Caution Hot Locked」という注意を促すような文字に形成されている。これによって、ヘッド本体51が高温状態のときは、熱変色部材70Aが熱変色して文字や数字が浮き出てくることとなる。
【0064】
従って、作業者は、ヘッドカバー52を外す操作を行わなくても、ロック部材66によりヘッドカバー52がヘッド本体51にロックされているか否か、即ち、ヘッド本体51が高温状態であるか低温状態であるかを視覚的に把握することができる。
【0065】
以上、一実施形態に基いて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0066】
例えば、上記実施形態では、カバー本体60が、ヘッド本体51に取付けられる場合について説明したが、これに限るものではなく、カバー本体60が、キャリッジあるいはリボンカートリッジに取付けられる構成としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、記録ヘッド18としてレバーの先端に取り付けた記録ワイヤ55をシートに突出させるインパクトヘッドについて説明したが、これに限るものではなく、レバーの先端あるいはレバーの先端に取り付けた記録ピンをシートに突出させるインパクトヘッドにも適用することが可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、記録装置としてドットインパクトプリンタの場合について説明したが、ドットインパクトプリンタに限らず、記録ヘッドを有するプリンタに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置としてのプリンタの外観を示す正面斜視図である。
【図2】プリンタ本体を示す斜視図である。
【図3】プリンタを示す側断面図である。
【図4】記録ヘッドの平面図であり、(a)は、ヘッド本体にヘッドカバーを取り付けた状態を示し、(b)は、ヘッド本体からヘッドカバーを取り外した状態を示している。
【図5】記録ヘッドのヘッド本体を示す斜視図である。
【図6】ヘッドカバーを示す斜視図である。
【図7】リボンカートリッジ及びヘッドカバーを示す平面図である。
【図8】図6中矢印X方向から見たヘッドカバーの部分斜視図である。
【図9】図6中矢印Y方向から見たヘッドカバーの背面図である。
【図10】ロック部材を示す平面図である。
【図11】表示部を示す正面図であり、(a)は、低温時の表示部を示し、(b)は、高温時の表示部を示している。
【符号の説明】
【0070】
10…プリンタ(記録装置)、18…記録ヘッド、19…キャリッジ、21…プラテン、39…リボンカートリッジ、40…インクリボン、51…ヘッド本体、52…ヘッドカバー、53…放熱器、55…記録ワイヤ、59…係合部、60…カバー本体、61…リボンガイド、66…ロック部材、66A…形状記憶合金、66B…板ばね、67…爪部、68…アーム部、70A…熱変色部材、70B…下地、100…シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体を覆うカバー本体を備えたヘッドカバーにおいて、
前記ヘッド本体の高温時に、前記ヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、前記ヘッド本体の低温時に、前記係合部への係合が解除される非係合位置に移動する爪部を備えたロック部材が、前記カバー本体に設けられていることを特徴とするヘッドカバー。
【請求項2】
前記ロック部材は、基端が前記カバー本体に固定され、前記ヘッド本体の熱に応じて変形するアーム部を備え、
前記爪部は、前記アーム部の自由端に設けられ、前記アーム部の熱変形により移動することを特徴とする請求項1に記載のヘッドカバー。
【請求項3】
前記アーム部は、形状記憶合金を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドカバー。
【請求項4】
前記カバー本体に、前記ヘッド本体の高温時に低温時とは異なる色に変化する熱変色部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のヘッドカバー。
【請求項5】
前記熱変色部材は、前記低温時に下地と略同色であり、前記高温時に下地と異なる色に変色することを特徴とする請求項4に記載のヘッドカバー。
【請求項6】
前記カバー本体には、インクリボンを保持し、当該インクリボンをガイドするリボンガイドが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のヘッドカバー。
【請求項7】
ヘッド本体と、このヘッド本体を覆うカバー本体とを備えた記録ヘッドにおいて、
前記ヘッド本体の高温時に、前記ヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、前記ヘッド本体の低温時に、前記係合部への係合が解除される非係合位置に移動する爪部を備えたロック部材が、前記カバー本体に設けられていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項8】
キャリッジに搭載される記録ヘッドを備え、この記録ヘッドを用いてシートに画像を記録する記録装置において、
前記記録ヘッドは、ヘッド本体と、このヘッド本体を覆うカバー本体とを備え、
前記ヘッド本体の高温時に、前記ヘッド本体の係合部に係合する係合位置に移動し、前記ヘッド本体の低温時に、前記係合部への係合が解除される非係合位置に移動する爪部を備えたロック部材が、前記カバー本体に設けられていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−15501(P2006−15501A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192724(P2004−192724)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】