説明

ヘッドホン及び側圧付勢部

【課題】使用する人の頭部形状によって装着が不安定となることなく、最適な側圧で着用することができるヘッドホンを提供すること。
【解決手段】一対のスピーカユニット10a及び10bをヘッドバンド2で連結したヘッドホンであって、ヘッドバンド2の端部2a及び2bの近傍に、円弧形状をなすように形状が記憶された形状記憶合金からなるスタビライザー4が装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側圧調整機能を備えたヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の考案で提案されているように、従来から実用化されているヘッドホンは、一般にスピーカユニットを筐体の内部に備え、その筐体の外側をヘッドバンドなどの筐体支持手段によって接合し、スピーカユニットを耳部に保持させるものがある。このヘッドホンでは、上記筐体支持手段は、剛体からなる複数の支持部材と、これらの支持部材に接合され、筐体を側頭部方向に弾性付勢可能な弾性部材とから構成されている。
【0003】
また、特許文献2に記載の発明で提案されているように、内部にドライブユニットを収納したハウジングと、ハウジングに回動可能に連結されたハンガと、そのハンガに回動可能に取り付けられているスライドガイドと、そのスライドガイドに摺動可能に連結された摺動子と、その摺動子が両端に取り付けられているヘッドバンドとを備え、そのヘッドバンドが形状記憶合金から構成されているものがある。このヘッドホンでは、形状記憶合金から成るヘッドバンドによって左右のハウジングが連結されている。
【0004】
【特許文献1】実開平4−12789号公報
【特許文献2】特開平6−113385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載のヘッドホンでは、使用者が頭部に装着した時に支持部材に接合され弾性部材によって、スピーカユニットを側頭部方向(耳方向)に付勢することが可能となる。しかしながら、使用する人の頭部形状(例えば、顔幅や頭部の大きさ等)によって、側圧が変化するために装着が不安定となる、又は、側圧が強すぎる等の問題があった。なお、側圧とは、ヘッドホン装着時に側頭部にかかる圧力をいう。
【0006】
また、上記した特許文献2に記載のヘッドホンは、形状記憶合金から構成されている。この形状記憶合金から構成されたヘッドバンドは、左右のハウジングを側頭部方向に付勢することが可能となる。しかしながら、使用する人の頭部形状(例えば、顔幅や頭部の大きさ等)によって、側圧が変化するために装着が不安定となる、又は、側圧が強すぎる等の問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの問題を解決することが出来るヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係るヘッドホンは、一対のスピーカユニットをヘッドバンドで連結したヘッドホンであって、前記ヘッドバンドの両端部または該両端部近傍に、円弧形状をなすようにその形状が記憶された形状記憶合金からなるスタビライザーが装着されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係るヘッドホンの一例を示す斜視図、図2は、図1に示すスタビライザーの一例を示す斜視図、図3は、図1に示すスタビライザーをヘッドバンドに装着する際の位置関係を示した斜視図、図4は、図1に示すスタビライザーの係止構造の一例を示す断面図である。
【0010】
本発明に係るヘッドホン1は、図1に示すように、円弧状を呈したヘッドバンド2の両端に一対のスピーカユニット10a及び10bを備えている。スピーカユニット10a及び10bは、ハウジング11a、11b、小型スピーカ(図示せず)、パッド13a及び13bから構成されている。ここでは、後述するスタビライザー4が前面、ハウジング11a及び11bが下面として説明する。
【0011】
スピーカユニット10a及び10bを構成するハウジング11a、11bは、略皿状を呈しており、ハウジング11a及び11bの内部には、小型スピーカが収納されている。また、それぞれのハウジング11a及び11bの端部には、連結部材12a及び12bを備えており、それぞれのハウジング11a及び11bは、連結部材12a及び12bを介して、後述するヘッドバンド2の両端に連結されている。さらに、ハウジング11a及び11bの使用者の側頭部側となる放音面には、パッド13a及び13bが取り付けられている。なお、パッド13a及び13bには、耳へ接触した際のフィット感を高めるために、クッション性を有した、例えば低反発ウレタンなどからなる素材を使用する。
【0012】
また、一方のハウジング11bの端部からは、音響機器(例えば、CDプレーヤーやDVDプレーヤーなど)のヘッドホン接続端子に接続する入力コード14が取り付けられている。そして、音響機器から出力された音声信号は、入力コード14を介してハウジング11b内の小型スピーカに入力されている。また、入力コードに出力された音声出力は、ヘッドバンド2を貫通する信号線(図示せず)を介して、他方のハウジング11a内の小型スピーカに入力される。
【0013】
前記ヘッドバンド2は、使用者の頭頂部側となる内周側に、頭頂部に接するバンド3を配している。このバンド3は、伸縮自在な材質からなる、例えば合成樹脂から製造された連結ベルトによってヘッドバンド2の端部2a及び2bに連結されている。また、ヘッドバンド2の端部2a及び2bの近傍には、スタビライザー4が装着されている。そして、ヘッドバンド2の端部2a及び2bの近傍には、後述する係止部2c及び2d(図3及び図4参照)が設けられており、この係止部2c及び2dによって、スタビライザー4をバンド3の外周側で且つヘッドバンド2の前面側に着脱可能に支持している。
【0014】
図1又は図2に示す様に、スタビライザー4は、略円弧状を呈しており、アーム部4aと、アーム部4aの両端部に取り付けられたジョイント部4b及び4cから構成されている。このアーム部4aは、復元荷重の特性を有した、例えば、ニッケル・チタン合金等からなる形状記憶合金から形成されている。
【0015】
具体的には、スタビライザー4のアーム部4aは、上記形状記憶合金からなる断面形状が円形又は長方形状の線材であり、例えば元の状態に復帰する超弾性状態への変態温度を摂氏5度に設定して略円弧状に成形加工を施して製造する。このように低温下で形状記憶されると、スタビライザー4は、摂氏5度以上の温度において、成形加工時の略円弧状の形状に復帰しようとする復元荷重の特性を有することとなる。
【0016】
スタビライザー4は、予め復元荷重の異なる複数のパターン及び大きさや形状の異なる複数のパターンを製造する。そして、ヘッドホン1を販売するときに、数パターンのスタビライザー4を選択して販売するようにする。これにより、ヘッドホン1の使用者は、自分の好みのスタビライザー4を選択し、スタビライザー4を取り替えることにより、使用者の側頭部にかかる側圧を変更することが可能となる。
【0017】
また、スタビライザー4は、その表面部に前記複数のパターンを識別するためのカラー色(例えば、赤、緑、紫)の被膜層を備えるようにする。スタビライザー4に設けられたカラー色の被膜層は、側圧の異なるスタビライザー4の識別が可能となる側圧識別情報及び大きさや形状の異なるスタビライザー4の識別が可能となる形状識別情報を示している。
【0018】
次に、スタビライザー4の係止構造について説明する。図3及び図4に示すように、係止部2c及び2dは、略凸状に形成されている。その先端には、強力な磁力を有する、例えば、希土類磁石の粉末を含むボンド磁石2eが一体形成されている。
【0019】
一方、スタビライザー4のジョイント部4b及び4cは、係止部2c及び2dと嵌合するように略凹状に形成されている。また、ジョイント部4b及び4cの下面は、係止部2c及び2dに設けられたボンド磁石2eと磁着可能な、例えば、鉄合金からなる磁性材から構成されている。これにより、スタビライザー4のジョイント部4b及び4cを係止部2c及び2dに位置整合して嵌合させると、ボンド磁石2eの磁力により、スタビライザー4は、ヘッドバンド2に着脱可能に支持される。
よって、形状記憶合金の特性を利用して、復元荷重の異なる複数のスタビライザー4を用意することが出来ると共に、このスタビライザー4を付け替えることにより、容易に側圧を変更することが出来る。そして、この時にスタビライザー4のアーム部4bは、カラー色の被膜層を備えているので、大きさや側圧の異なるスタビライザー4を色によって識別可能となる。
【0020】
以上、詳述した本発明に係る実施の形態のヘッドホン1は、一対のスピーカユニット10a及び10bをヘッドバンド2で連結したヘッドホンであって、ヘッドバンド2の端部2a及び2bの近傍に、円弧形状をなすように形状が記憶された形状記憶合金からなるスタビライザー4が装着されている。
これにより、側圧を変更するための特別な機構を設けずに構成することが可能となり、外観の向上及び商品価値の向上を図ることができる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述の実施の形態では、係止部2c及び2dに一体形成されたボンド磁石2eによりスタビライザー4を着脱可能に支持する構成の例を示したが、これに限定されず、ネジ部材によってスタビライザー4を螺着するようにしたり、ジョイント部4b及び4cを係止部2c及び2dを凹凸形状に形成して嵌合するようにしたりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るヘッドホンの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すスタビライザーの一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示すスタビライザーをヘッドバンドに装着する際の位置関係を示した斜視図である。
【図4】図1に示すスタビライザーの係止構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…ヘッドホン、2…ヘッドバンド、2c,2d…係止部、2e…ボンド磁石、3…バンド、4…スタビライザー、4b,4c…ジョイント部、10a,10b…スピーカユニット、11a,11b…ハウジング、12a,12b…連結部材、13a,13b…パッド、14…入力コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスピーカユニットをヘッドバンドで連結したヘッドホンであって、前記ヘッドバンドの両端部または該両端部近傍に、円弧形状をなすようにその形状が記憶された形状記憶合金からなるスタビライザーが装着されていることを特徴とするヘッドホン。
【請求項2】
前記形状記憶合金からなるスタビライザーは、前記ヘッドバンドの両端部または該両端部近傍に着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記形状記憶合金からなるスタビライザーは、その表面部に、前記円弧形状の特性パターンを識別する形状識別情報を備えていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項4】
前記形状記憶合金からなるスタビライザーは、その表面部に、形状記憶の復元荷重の特性パターンを識別する側圧識別情報を備えていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項5】
前記形状識別情報は、所定のカラー色の被膜層からなることを特徴とする請求項3に記載のヘッドホン。
【請求項6】
前記側圧識別情報は、所定のカラー色の被膜層からなることを特徴とする請求項4に記載のヘッドホン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−290621(P2009−290621A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141804(P2008−141804)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(596125930)パイオニアデザイン株式会社 (21)
【Fターム(参考)】