説明

ヘッドホン

【課題】 音漏れ防止効果の高い後掛け型のヘッドホンを提供する。
【解決手段】 後掛け型のヘッドホンにおいて、各耳掛け部1は、ドライバユニット3よりも前方から立ち上がり始め、ドライバユニット3の後端よりも前方で立ち下がることにより、各耳掛け部1の後端部は、側面から見て各ドライバユニット3と重なっており、各イヤーパッド2は、弾性を有するとともに、イヤーパッド2と耳掛け部1との間に使用者の耳介が介在したとき弾性に抗して凹むことによりイヤーパッド2と耳掛け部1との間に耳介を挟み込むことができるだけの厚みを有し、弾性に抗した凹みの復元力により耳介に押圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後ろ掛け型ヘッドホンに関する。より具体的には、後ろ掛け型ヘッドホンを構成するバンドの耳掛け部とイヤーパッドの構成を工夫することにより音漏れを防止することができるヘッドホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツジムなどで運動をしながら音楽を聞くことができるよう設計された、後掛け型のヘッドホンがある。後掛け型のヘッドホンは、左右一対のヘッドホン本体にそれぞれ音響変換ユニットを組み込み、上記左右一対のヘッドホン本体をバンドで連結し、上記バンドは使用者の後頭部を回り込むように形成されている。上記後掛け型ヘッドホンは、上記バンドの弾性力で左右一対のヘッドホン本体を使用者の耳に押し当てるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、後掛け型のヘッドホンにおいて、左右一対の支持体と、各支持体によって支持され、それぞれ左右の耳に外側から当てることができる一対の耳当て部を有してなるものが開示されている。各耳当て部には、使用者の耳の上端に掛かることができる突起が形成されている。上記後掛け型のヘッドホンは、その使用態様において、一対の各耳当て部が支持体に対して回転可能となっている。そのため、上記突起が使用者の耳に掛けられた状態で、どのような形の耳に対しても装着状態を安定に維持することができる。
【0004】
一方、耳掛け型のヘッドホンとしては、ハウジングに耳掛けアームを回転可能に設け、耳掛けアームを回転させて耳介に装着し、ハウジングを耳介に押し付けて装着させるものや、耳掛けアームとイヤーパッドで使用者の耳介を挟み込むように設計されたものがある。例えば、特許文献2には、ヘッドホン本体部と、ハウジング部に上記ヘッドホン本体部の中心の法線に対し45度以内に偏心した位置に回転可能に設けられている回転軸部と、この回転軸部に支持され放音部側に位置する耳掛けアーム部とから構成されている耳掛け型のヘッドホンが開示されている。特許文献2記載のヘッドホンによると、ヘッドホンの装着操作に際して耳掛けアームを回動したとき、ヘッドホン本体部に対して螺旋状に平行に離間させることができる。これによって、耳掛けアームの装着性を向上させることができる。
【0005】
後掛け型ヘッドホンと実質同一の技術として、例えば、特許文献3に記載されているヘッドホン型補聴器がある。この補聴器は、左右一対のヘッドホンを、後頭部を迂回するように湾曲し弾性を有する連結アームで連結し、連結アームとヘッドホンの連結部近傍に、上方に湾曲しながら隆起した耳掛け部を形成してなる。このヘッドホン型補聴器を用いると、小さな音声でも明朗に聴収でき、かつ寝た状態で使用しても当該ヘッドホンが耳から外れることがない、とされている。
【0006】
しかしながら、従来の後掛け型ヘッドホンおよび耳掛け型ヘッドホンによれば、イヤーパッドと使用者の耳介との密着性が不十分で、使用者の耳介とイヤーパッドとの間に隙間が生じるため、音漏れの問題を有しており、また、音質にこだわったものがなかった。特に、例えばスポーツジム等において運動しながら装着する目的で設計された後ろ掛け型ヘッドホンは、使用者の発汗の問題などを考慮し、イヤーパッドの素材としてウレタン、シリコーン等の薄い部材を用いている。そのため、イヤーパッドと使用者の耳介との間に隙間が生じ、音漏れの問題が顕著であった。上記隙間があると、低音領域の再生能力が低下し、高い品質の再生音を得ることも難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−208882号公報
【特許文献2】特開2001−112081号公報
【特許文献3】実用新案登録3131386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、後掛け型のヘッドホンにおいて、左右のハウジングを連結するバンドの形状を工夫することにより、上記バンドに形成されている耳掛け部とイヤーパッドとで使用者の耳介を確実に挟み込むことができ、かつ、耳掛け部とイヤーパッドで耳介を挟み込んだとき、イヤーパッドの弾力によってイヤーパッドと耳介との密着性を高め、音漏れを防止することができるとともに、低音部の再生能力を高めることができるヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、使用者の左右両耳に装着されるべきドライバユニットと、上記各ドライバユニットの放音面側に取り付けられ、上記両耳の外耳道に向かって押し当てられるイヤーパッドと、上記各ドライバユニットの放音面側の反対側に取り付けられるハウジングと、上記各ハウジングを連結し使用者の後頭部ないしは首の後部を回り込むように形成された弾性を有するバンドと、上記各ドライバユニットを使用者の両耳に装着するために上記バンドの両端近くにおいて円弧状に隆起して形成された耳掛け部と、を備えたヘッドホンにおいて、上記各耳掛け部は、上記ハウジングよりも前方から立ち上がり始め、上記ハウジングの後端よりも前方で立ち下がることにより、上記各耳掛け部の後端部は、側面から見て上記各ハウジングと重なっており、上記各イヤーパッドは、弾性を有するとともに、これらのイヤーパッドと上記耳掛け部との間に使用者の耳介が介在したとき上記弾性に抗して凹むことにより上記イヤーパッドと上記耳掛け部との間に上記耳介を挟み込むことができるだけの厚みを有し、上記弾性に抗した凹みの復元力により上記耳介に押圧されることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、後掛け型のヘッドホンにおいて、弾力のあるイヤーパッドとバンドの耳掛け部とで使用者の耳介を挟み込むことができ、ヘッドホンを確実かつ安定に装着することができる。また、弾力のあるイヤーパッドが、その弾力により耳介に押し付けられることでイヤーパッドの耳介への密着性を高めることができ、外部への音漏れを防止することができる。特に低音域の音漏れを防止することにより、低音域の再生能力を高め、高い音質のヘッドホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るヘッドホンの実施例の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るヘッドホンの実施例を示す正面図である。
【図3】本発明に係るヘッドホンの実施例を示す、(a)は使用時の概略図であり、(b)は、当該ヘッドホンの着脱時において、耳掛け部とイヤーパッドの位置関係を示すハウジングの側面図である。
【図4】本発明に係るヘッドホンの実施例の他の実施例を示す、(a)は使用時の概略図であり、(b)は、当該ヘッドホンの着脱時において、耳掛け部とヘッドパットの位置関係を示すハウジングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかるヘッドホンの実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1、図2において、ヘッドホンは、耳掛け部1と、イヤーパッド2と、使用者の左右両耳に載せるドライバユニット5と、上記各ドライバユニット5の放音面側の反対側に備えられているハウジング3と、耳掛け部1を介して左右のハウジング3を連結しているバンド4を有してなる。各ハウジング3は、図示のようにドライバユニット5の外部に適宜の形状及び方法で取り付けられ、ドライバユニット5の放音面が使用者の外耳孔に向くように構成されている。バンド4は、弾性を有する素材、例えばプラスチックからなり、使用者の後頭部ないしは首の後ろを迂回するように円弧状に湾曲して形成され、両端部は上記耳掛け部1および連結部6を経て左右のハウジング3に連結されている。各連結部6は、それぞれ左右のハウジング3から前上方に向かい斜めに立ち上がった後、左右のイヤーパッド2で挟まれる内方に向かって折り曲げられ、かつ、直ちに折り返されてU字状に形成されている。これにより、上記各耳掛け部1がそれぞれイヤーパッド2の上縁部に沿うように位置している。
【0013】
耳掛け部1は、想定される使用者の頭部上方に向かい円弧状に隆起するように成形されている。この形状は、使用者の耳介上部と側頭部の間の窪みの形状に合わせるように設計され、耳掛け部1は上記窪みに嵌め込まれやすい形になっている。また、上記耳掛け部1の隆起は、ハウジング3との相対位置関係では、ハウジング3よりも使用者の前頭部側から立ち上がり始め、上記耳掛け部1の隆起の終端は、上記各ハウジング3の上記使用者における後頭部側終端よりも前頭部側に位置している。換言すれば、各耳掛け部1は、ハウジング3よりも前方から立ち上がり始め、ハウジング3の後端よりも前方で立ち下がることにより、各耳掛け部1の後端部は、側面から見て各ハウジング3と重なっている。
【0014】
上記ヘッドホンの装着時におけるバンド4の両端部は、前記U字状の連結部6を有しており、耳掛け部1と一対のハウジング3をつないでいる。連結部6をU字状にすることにより、耳掛け部1と、イヤーパッド2の間には、使用者の耳介が挟まれる空間ができる。連結部6の撓みと後述するイヤーパッド2の弾性によって、上記連結部6に連なる耳掛け部1と、イヤーパッド2とで使用者の耳介を挟み込む力が生じ、イヤーパッド2が使用者の耳介に押し付けられる。図示のように、上記放音面と反対側にハウジング3を有するドライバユニット5は、その放音面が使用者の外耳道方向を向いて装着される。使用者の外耳道は、上記弾性のあるリング状のイヤーパッド2によって音漏れを防ぐように覆われる。このように、イヤーパッド2が外耳道方向に押し当てられることで、ヘッドホンの外部への音漏れが防止され、特に低音域の音漏れ防止効果を向上させることができる。また、低音域の音漏れを防止することにより、低音域の再生能力を高め、高い音質のヘッドホンを提供することができる。
【0015】
イヤーパッド2は、上記各ドライバユニット5の放音面の外周を囲むようにしてリング状に形成されている。イヤーパッド2の放音方向の厚さは、このイヤーパッド2と耳掛け部1との間に耳介を挟み込もうとするときの上記イヤーパッド2の弾性による凹み量を確保するのに必要にして十分な厚さになっている。上記イヤーパッド2が、上記厚さを有していることにより、その弾力によって連結部6に連なる耳掛け部1と、イヤーパッド2との間に使用者の耳介を挟み込む力が生じ、イヤーパッド2が使用者の耳介に押し付けられる。イヤーパッド2の材質としては、弾性を有している限りは適宜のものを選択することでき、例えばスポンジなどの弾性素材を適宜の生地で覆ったものや、ゴム、あるいは内部を空気や液体で満たした浮き輪状に形成された樹脂などが挙げられる。
【0016】
図2において、バンド4は、連結部6を除く長さ方向のほぼ全体の横断面形状がU字状で、溝型の断面になっており、その溝の中に左右のドライバユニット5を電気的につなぐコードが埋め込まれている。バンド4、それに連結する耳掛け部1及び連結部6は、弾性を有する樹脂からなり、ヘッドホンが使用されないときには、バンド4の弾力で左右のハウジング3が使用者の左右の耳の距離よりも接近する。したがって、使用者がヘッドホンを使用するときは、バンド4が弾力に抗して押し広げられ、バンド4の弾力で、左右のハウジングが使用者の左右の耳に適度の圧力で載るように形成されている。
【0017】
ドライバユニット5の放音面とバンド4の耳掛け部1との間隔は、U字状の連結部6を撓ませることによって広げることが可能になっており、この状態で上記ドライバユニット5の上端縁部と耳掛け部1との間に使用者の耳介の上端部を容易に導くことができる。ドライバユニット5の構成としては、目的に応じて適宜のものを選択することができ、ノイズキャンセリングのための回路を備えていてもよく、通信手段を兼ね備えていてもよい。
【0018】
図3(a)は、上記実施例に係るヘッドホンの使用例を示した概略図である。図3(b)は非使用時の主要部の状態を示す。図3(b)において、イヤーパッド2は耳掛け部1の一部と当接している。この当接部を図3(b)では符号Aで示している。図示のようにイヤーパッド2と、耳掛け部1が非使用時において当接しているので、使用者がヘッドホンを装着しようとするときは、イヤーパッド2と耳掛け部1との間に間隙が生じるように、一対のハウジング3が互いに外側に離れる向きに力が加えられる。これによって左右の連結部6がその弾力に抗して押し広げられ、イヤーパッド2と耳掛け部1が離間し、この離間した空間に耳介を導くようにしてヘッドホンを装着することができる。装着後は、連結部6の復帰力による耳掛け部1の復帰力とイヤーパッド2の弾力によって、耳掛け部1とイヤーパッド2に間に使用者の耳介を挟み込む力が生じ、イヤーパッド2が使用者の耳に押し付けられる。
【0019】
図4は、本発明に係るヘッドホンの他の実施例であって、(a)は使用者に装着した状態を示し、図4(b)は非使用時の要部を示している。図4(b)に示すように、イヤーパッド2と耳掛け部1は当接することなく離間している。イヤーパッド2と耳掛け部1との間隔は、使用者の耳介の厚さよりも小さく設定されている。上記間隔と耳輪の厚さとの関係を上記のように設定することで、前記実施例と同様に、イヤーパッド2と耳掛け部1との間に耳介を挟み込んだとき、連結部6の復帰力による耳掛け部1の復帰力と、イヤーパッド2の弾力によって使用者の耳介を挟み込む力が加わり、イヤーパッド2が使用者の耳介に押し付けられて密着する。イヤーパッド2が外耳道方向に押し当てられることでヘッドホンの音漏れが防止され、特に低音に対する音漏れ防止効果が向上する。
【0020】
以上、本発明に係るヘッドホンの実施例を図面に基づいて説明したが、その具体的な構成はこれに限定されるものではない。例えば、ヘッドホンに電池と通信手段を組み込んでコードレスヘッドホンにしてもよく、ハウジングから使用者の前方に伸ばしたアームにマイクロホンを取り付け、通信用のコミュニケーション手段(いわゆるヘッドセット)を構成してもよい。また、本発明のヘッドホンは適宜の用途に用いることができる。例えば、音楽鑑賞用、電子楽器のモニタ用、スポーツ時の着用などに用いることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 耳掛け部
2 イヤーパッド
3 ハウジング
4 バンド
5 ドライバユニット
6 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の左右両耳に装着されるべきドライバユニットと、
上記各ドライバユニットの放音面側に取り付けられ、上記両耳の外耳道に向かって押し当てられるイヤーパッドと、
上記各ドライバユニットの放音面の反対側に取り付けられるハウジングと、
上記各ハウジングを連結し使用者の後頭部ないしは首の後部を回り込むように形成された弾性を有するバンドと、
上記各ドライバユニットを使用者の両耳に装着するために上記バンドの両端近くにおいて円弧状に隆起して形成された耳掛け部と、を備えたヘッドホンにおいて、
上記各耳掛け部は、上記ハウジングよりも前方から立ち上がり始め、上記ハウジングの後端よりも前方で立ち下がることにより、上記各耳掛け部の後端部は、側面から見て上記各ハウジングと重なっており、
上記各イヤーパッドは、弾性を有するとともに、これらのイヤーパッドと上記耳掛け部との間に使用者の耳介が介在したとき上記弾性に抗して凹むことにより上記イヤーパッドと上記耳掛け部との間に上記耳介を挟み込むことができるだけの厚みを有し、上記弾性に抗した凹みの復元力により上記耳介に押圧されることを特徴とするヘッドホン。
【請求項2】
非使用状態において上記イヤーパッドの一部が、上記耳掛け部の一部と当接している請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
非使用状態において上記イヤーパッドと上記耳掛け部との間に間隙が生じていて、この間隙は、耳介の厚さよりも小さく設定されている請求項1に記載のヘッドホン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−226645(P2010−226645A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74091(P2009−74091)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】