説明

ヘッドボックス、抄紙装置及び製紙装置

【課題】ヘッドボックスからパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー上に供給する際、ヘッドボックス内にパルプ懸濁液の繊維が詰まり不具合を起こすことのないヘッドボックスの提供を目的とする。
【解決手段】パルプ懸濁液の供給路が形成されたヘッドボックス本体311にパルプ懸濁液を貯留する大気開放型の貯留部311hを備え、貯留部311h内のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤーの上面に自重落下により供給する供給部311oを前記貯留部311hの下部に設け、前記供給部311oまたはその近傍に起振装置318を配設し、当該起振装置318により少なくとも供給部311oまたはその近傍を振動可能に構成してなるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドボックス、抄紙装置及び製紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、抄紙原料としてのパルプ懸濁液を抄紙ワイヤーに供給するためのヘッドボックスについて、下記特許文献1〜3にはヘッドボックス本体内のパルプ懸濁液を振動させるための振動手段を備えたヘッドボックスに関する技術が開示されている。このように振動手段を備えることにより、抄紙ワイヤーに供給されるパルプ懸濁液を抄紙ワイヤーの幅方向に容易に拡散させることができ、抄紙された結果得られる再生紙の地合の向上が可能であるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−157394号公報
【特許文献2】特開昭57−89695号公報
【特許文献3】特開平9−49183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記各公報に記載のヘッドボックスは、大型の製紙機に用いられるものであり、加圧を行ってヘッドボックス本体内部にパルプ懸濁液を強制的に収容させるとともにノズル先端から抄紙ワイヤーに向けパルプ懸濁液を噴射するといった密閉式のものである。
【0005】
これに対しパルプ懸濁液を開放型の貯留槽に貯留し、貯留槽の下部に設けた供給口より自重落下によって抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を供給するヘッドボックスの場合には、抄紙ワイヤーの幅方向への拡散は容易であるが、ヘッドボックス本体内に貯留されたパルプ懸濁液中のパルプ繊維同士が凝集し、パルプ懸濁液の流通路が詰まりやすくなり、特に流通路が狭まった箇所となる供給口近傍等にパルプ懸濁液の繊維が詰まる不具合を起こしていた。この不具合は抄紙ワイヤーの速度に影響されるものであり、抄紙ワイヤーの速度が比較的遅い場合に顕著となる。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するものであり、ヘッドボックスからパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー上に供給する際、ヘッドボックス内にパルプ懸濁液の繊維が詰まり不具合を起こすことのないヘッドボックス、前記ヘッドボックスを備えた抄紙装置及び製紙装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のヘッドボックスは、パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーに供給するためのヘッドボックスにおいて、
パルプ懸濁液の供給路が形成されたヘッドボックス本体にパルプ懸濁液を貯留する大気開放型の貯留部を備え、
貯留部内のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤーの上面に自重落下により供給する供給部を前記貯留部の下部に設け、
前記供給部またはその近傍に起振装置を配設し、
当該起振装置により少なくとも供給部またはその近傍を振動可能に構成してなるようにしてある。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のヘッドボックスにおいて、起振装置は、供給部のうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部またはその上流側近傍位置に配設された壁部材を押圧することにより、パルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成してなるものである。
【0009】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のヘッドボックスにおいて、起振装置が、少なくとも供給部またはその近傍を回転により叩打して振動させる叩打部材と、この叩打部材を抄紙ワイヤーの駆動に連動させて回転させる連動部材とを備えてなるものである。
【0010】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のヘッドボックスにおいて、ヘッドボックス本体は、供給部より抄紙ワイヤー装置の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を供給可能に配設され、
起振装置の振動を抄紙ワイヤーに伝え、該抄紙ワイヤーを振動させる伝振部材を設けたものである。
【0011】
更に、請求項5に記載の発明は、パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーに供給するためのヘッドボックスにおいて、パルプ懸濁液の供給路が形成されたヘッドボックス本体に、パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーに供給する供給部を設け、少なくとも前記供給部またはその近傍に壁部材が揺動自在に軸支されるとともに、前記壁部材を揺動させるための揺動装置を備えてなり、当該揺動装置により少なくとも前記壁部材を揺動させることにより、少なくとも供給部におけるパルプ懸濁液の流通断面積を変動可能に構成してなるヘッドボックスである。
【0012】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のヘッドボックスにおいて、供給部は、抄紙ワイヤーの幅方向に沿って配設された幅壁部材と、前記幅壁部材の左右両端部近傍に配設された側壁部材とを備え、
前記幅壁部材が側壁部材に揺動自在に軸支されてなるものである。
【0013】
更に、請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載のヘッドボックスにおいて、揺動装置は、供給部のうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部またはその上流側近傍位置に配設された壁部材を揺動することにより、パルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成してなるものである。
【0014】
更に、請求項8に記載の発明は、請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のヘッドボックスにおいて、揺動装置が、少なくとも供給部またはその近傍を回転により叩打して振動させる叩打部材と、この叩打部材を抄紙ワイヤーの駆動に連動させて回転させる連動部材とを備えてなるものである。
【0015】
更に、請求項9に記載の発明は、請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載のヘッドボックスにおいて、ヘッドボックス本体は、供給部より抄紙ワイヤー装置の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を供給可能に配設され、揺動装置の揺動に伴って抄紙ワイヤーを振動させるよう構成したものである。
【0016】
そして、請求項10に記載の発明は、少なくとも請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のヘッドボックスと、抄紙ワイヤー装置とを備えた抄紙装置に関するものである。
【0017】
更に、請求項11に記載の発明は、少なくとも請求項10に記載の抄紙装置を備えた製紙装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載のヘッドボックスによれば、供給部に起振装置を配設し、この起振装置により少なくとも供給部またはその近傍を振動させることにより、供給部の詰まりを解消するようにしたので、パルプ懸濁液を大気開放型の貯留部から自重落下により抄紙ワイヤー上に供給する際、流通断面積が狭まった供給部を通過させてもパルプ懸濁液の繊維が詰まることなく、略一定の繊維濃度で抄紙ワイヤー上に供給することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、起振装置は、供給部のうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部またはその上流側近傍位置に配設された壁部材を押圧することにより、パルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成してなるので、起振装置によって壁部材を押圧してパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー上に強制的に押し出し狭小部の詰まりを解消することが可能である。
【0020】
そして、請求項3に記載の発明によれば、起振装置が、少なくとも供給部若しくはその近傍を回転により叩打して振動を発生させる叩打部材と、この叩打部材を抄紙ワイヤーの駆動に連動させて回転させる連動部材とを備えてなるので、叩打部材によって供給部を効率よく振動できるとともに、起振装置の駆動に抄紙ワイヤーの駆動源を利用することができ、別途駆動源を設ける必要もなくエネルギーの有効利用を図り運転コストを低減可能である。
【0021】
更に、請求項4に記載の発明によれば、ヘッドボックス本体は、供給部より抄紙ワイヤー装置の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を供給可能に配設され、起振装置の振動を抄紙ワイヤーに伝え、該抄紙ワイヤーを振動させる伝振部材を設けたので、起振装置の振動を利用して抄紙ワイヤーを容易に振動させることができ、これによりパルプ懸濁液の脱水を促進することができる。
【0022】
更に、請求項5に記載の発明によれば、少なくとも供給部またはその近傍に壁部材が揺動自在に軸支されるとともに、前記壁部材を揺動させるための揺動装置を備えてなり、当該揺動装置により少なくとも前記壁部材を揺動させることにより、少なくとも供給部におけるパルプ懸濁液の流通断面積を変動可能に構成してなるヘッドボックスであるので、パルプ懸濁液の供給路が狭まった供給部で詰まったパルプ懸濁液を容易に前記供給部から抄紙ワイヤー上に供給できる利点がある。
【0023】
更に、請求項6に記載の発明によれば、供給部は、抄紙ワイヤーの幅方向に沿って配設された幅壁部材と、前記幅壁部材の左右両端部近傍に配設された側壁部材とを備え、
前記幅壁部材が側壁部材に揺動自在に軸支されてなるので、幅壁部材をパルプ懸濁液の流通方向に略平行な向きに揺動することで、少しの揺動量であってもパルプ懸濁液の流通断面積を大幅に変動することができ、供給部における繊維の詰まりを効率よく解消することができる。
【0024】
更に、請求項7に記載の発明によれば、揺動装置は、供給部のうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部またはその上流側近傍位置に配設された壁部材を揺動することにより、パルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成してなるので、揺動装置によって狭小部またはその上流側近傍位置に配設された壁部材を揺動して供給路を圧縮し、パルプ懸濁液を抄紙ワイヤー上に強制的に押し出し狭小部の詰まりを解消することが可能である。
【0025】
更に、請求項8に記載の発明によれば、揺動装置が、少なくとも供給部またはその近傍を回転により叩打して振動させる叩打部材と、この叩打部材を抄紙ワイヤーの駆動に連動させて回転させる連動部材とを備えてなるので、叩打部材によって供給部を効率よく振動できるとともに、揺動装置の駆動に抄紙ワイヤーの駆動源を利用することができ、別途駆動源を設ける必要もなくエネルギーの有効利用を図り運転コストを低減可能である。
【0026】
更に、請求項9に記載の発明によれば、ヘッドボックス本体は、供給部より抄紙ワイヤー装置の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を供給可能に配設され、揺動装置の揺動に伴って抄紙ワイヤーを振動させるよう構成したので、揺動装置の駆動により抄紙ワイヤーを振動させることができ、これにより抄紙ワイヤー上に供給された湿紙の脱水効率を向上させることが可能である。
【0027】
更に、請求項10に記載の発明によれば、前記各構成のヘッドボックスと、抄紙ワイヤー装置とを備えたので、パルプ懸濁液の供給部が詰まるといった問題を生じることなく安定して抄紙を行うことができる抄紙装置の提供が可能である。
【0028】
また、請求項11に記載の発明によれば、前記構成の抄紙装置を備えてなるので、抄紙工程における不具合を解消でき、製紙効率の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る製紙装置の構成概略図である。
【図2】前記製紙装置のパルプ懸濁液製造部の内部構造を示す概略図である。
【図3】前記パルプ懸濁液製造部の使用態様図である。
【図4】前記製紙装置の脱墨部の斜視図である。
【図5】前記脱墨部の平面図及び断面図である。
【図6】前記製紙装置のすすぎ部の構成概略図である。
【図7】前記製紙装置の抄紙部及び仕上部の概略斜視図である。
【図8】前記抄紙部を構成するヘッドボックス及びワイヤー部の斜視図である。
【図9】前記ヘッドボックス及びワイヤー部の要部を拡大した断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態としての抄紙装置の斜視図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態としての抄紙装置の側面図である。
【図12】前記製紙装置の前記抄紙装置を斜視図である。
【図13】前記抄紙装置の要部の動作を示す部分側面図である。
【図14】本発明の更に別の実施形態としての抄紙装置の斜視図である。
【図15】前記抄紙装置の要部の動作を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる製紙装置の構成概略図である。ここで、以下の説明では製紙装置100を古紙を原料とする再生紙製造装置とする場合について説明するが、本発明にかかる製紙装置はこれに限定されず、木材等の他の原料を用いる製紙装置であってもよい。図1において、製紙装置100は、パルプ懸濁液製造部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排液処理部5を一体的に備えるものである。
【0031】
パルプ懸濁液製造部1は、古紙6を離解して再生パルプを製造するものであり、脱墨パルプ部2は、パルプ懸濁液製造部1において製造された再生パルプを脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨パルプ部2において得られた脱墨パルプを抄紙し、抄紙により得られた湿紙の乾燥を行うものであり、仕上げ部4は、抄紙部3において湿紙の乾燥を行ったものを裁断等することにより仕上げを行って再生紙7を得るものであり、排液処理部5は、前記パルプ懸濁液製造部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3においてそれぞれ生じた排液の処理を行うものである。
【0032】
(パルプ懸濁液製造部)
図2は、パルプ懸濁液製造部1の内部構造を示す概略図である。パルプ懸濁液製造部1は、古紙の裁断紙片61を離解して再生パルプを製造するものであり、古紙投入部11、シュレッダー13、金属片除去部14、押圧部15、シュレッダータンク16、裁断紙量調整部17、パルパー18、ニーダー19を備えている。
【0033】
古紙投入部11は、処理を行う古紙6をホッパー12内に投入するための開口部であり、該古紙投入部11からホッパー12内の古紙6を覗き見ることが不可能または困難な構造とすることが好ましい。即ち、例えば、古紙6の搬送手段(図示省略)をホッパー12内に備え、一度に多量の古紙6が投入された場合に古紙6を順次ホッパー12の内部に搬送可能な構造とすることなどが挙げられる。これにより古紙6となった文書の機密性を保持可能である。
【0034】
また、古紙投入部11より投入される古紙6の量を計測する計測部(図示省略)を古紙投入部11の近傍に設けてもよい。このように古紙投入部11の近傍に計測部を設ける場合には後述する裁断紙量調整部17を設けなくても構わない。そして、古紙投入部11の近傍に設けた計測部で古紙量を計測する場合には、例えば、一定量の再生紙の製造に必要となる所定量の古紙6が古紙投入部11から投入された時点で、自動的に以後の処理を進行させるようにしてもよい。これにより、古紙6をシュレッダータンク16内に大量に貯留する必要がなくなり、シュレッダータンク16を小さくすることができるとともに、再生紙製造開始の操作を手動により行わなくても自動的に再生紙の製造を開始でき、手間が省ける。
【0035】
シュレッダー13は、投入された古紙6を裁断処理して再生パルプの製造に適した所定の大きさに紙片化する裁断刃131を有する。ここで、仮に別途設けられたシュレッダー装置等の紙片裁断装置によって、既に所定の大きさに裁断処理済みの紙片を古紙投入部11より投入するような場合にはホッパー12内にシュレッダー13を設けない構成としても構わない。
【0036】
金属片除去部14は、ステープラーの針等の金属類を取り除くため設けられ、マグネット等により構成される。金属片除去部14の設置位置は、図2において実線で示すようにシュレッダー13の下方近傍としてもよいが、図2において破線で示すようにシュレッダータンク16の排出口163の下方近傍等としてもよい。
【0037】
押圧部15は、シュレッダータンク16内の裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを抑えるためのものであり、図2において2点鎖線で示すように、裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを低減させる押圧部材151と、押圧部材151を昇降する昇降手段152とを備えている。
【0038】
シュレッダータンク16は、古紙の裁断紙片61を一時的に貯留するものであり、底面162が排出口163に向けて傾斜する傾斜面をなす。
排出口163には古紙の裁断紙片61を排出する排出装置164を設けている。排出装置164としては種々のものがあるが、ここでは複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の排出装置164を示している。排出装置164の上方には紙量検知センサ165が配置してあり、紙量検知センサ165はシュレッダータンク16の内部に貯留する古紙の裁断紙片61の有無を検出するもので、ロードセル、光センサ等を用いる。
【0039】
裁断紙量調整部17は、シュレッダータンク16の排出口163の下方に配置してあり、排出口163から排出する古紙の裁断紙片61を受け止める受け皿部171と、受け皿部171を支持する計測部172を備えており、計測部172は受け皿部171に投入した古紙の裁断紙片61の重量を計測するようになっている。
【0040】
図3に示すように、受け皿部171は、受け皿171aが水平姿勢からパルパー18へ向けて傾斜する傾斜姿勢にまで傾動するものであり、受け皿171aを傾動させるモータ等の駆動手段(図示省略)を有する。また、受け皿171aはパルパー18に隣接する側壁部171bが図2に示す立ち姿勢の通常位置と、図3に示すパルパー18へ向けて傾倒する傾倒位置とにわたって開閉可能に設けてあり、該側壁部171bは受け皿171aの傾動に伴って傾倒し、受け皿171aの復動に伴って立ち姿勢に復帰するようになっている。
【0041】
図2に示すように、パルパー18は、古紙の裁断紙片61を水及び離解促進剤の液体中において、繊維、つまり再生パルプにまで離解させるものであり、古紙の裁断紙片61が投入される攪拌槽181と、攪拌槽181に給水するための給水部182と、離解促進剤供給部183とを設けている。離解促進剤供給部183から供給される古紙6の離解を促進する離解促進剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化カリウム、亜硫酸ナトリウムなどのアルカリ類から選ばれる1種以上若しくはその水溶液等を用いることができ、更に、スルファミン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸アルミニウムなどの酸類、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤、界面活性剤、漂白剤、PH安定剤、キレート剤、分散剤などを補助的に用いることもできる。
【0042】
離解促進剤供給部183は、攪拌槽181の上方に離解促進剤の供給口を開閉可能に設けており、これにより攪拌槽181に貯留するパルプ懸濁液の液面が攪拌に伴って変動する場合あっても、各供給口を開閉するだけで離解促進剤を攪拌槽181に投入することができる。ここで、パルプ懸濁液とは、攪拌槽181内で古紙の裁断紙片61(古紙6)を離解することにより得られた再生パルプを含む液体のことであり、該再生パルプの他、離解途中の古紙62、水、水中に取り出されたインク成分やトナー成分等の印刷成分、離解促進剤等を含む液体である。
【0043】
仮に、攪拌槽181の底部に離解促進剤の供給口が形成された場合には、離解促進剤供給部183の供給口に攪拌槽181内のパルプ懸濁液が流入し、水分が蒸発する等して離解途中の古紙62が乾燥して固くなり、離解促進剤供給部183の供給口を詰まらせるといったことが生じる恐れがあるが、上記のように、攪拌槽181の上方に離解促進剤の供給口を開閉可能に設けた場合にはそのようなことは起こり得ない。給水部182についても同様である。
【0044】
攪拌槽181の底部には、古紙の裁断紙片61を給水部182から給水された水とともに攪拌し離解するための攪拌羽根184が設けられ、前記攪拌羽根184を回転駆動するモータ等の駆動手段188を有している。
【0045】
攪拌槽181には攪拌槽181内に貯留する再生パルプ、古紙の裁断紙片61、水、離解促進剤を含有するパルプ懸濁液を所定温度まで加温するためのヒータ186および温度センサ185を設けてある。更に、攪拌槽181の底部には、パルパー18にて古紙6から製造された再生パルプ及び水等を含有するパルプ懸濁液を取り出すパルプ懸濁液取出部187を設けている。パルプ懸濁液取出部187は、ポンプ209a及び開閉弁208aを備えた配管207aに接続されており、パルプ懸濁液取出部187からポンプ209aにより取り出した再生パプル含有液を開閉弁208aを介してニーダー19へ送るようになっている。
【0046】
ニーダー19は、再生パルプに混入しているトナー成分等を該再生パルプから分離させるように混練するものであり、公知のニーダー装置により構成される。
【0047】
(脱墨パルプ部)
図1に示すように、 脱墨パルプ部2は、脱墨前希釈部21、脱墨部22、すすぎ部23を備え、各部の間には配管、ポンプ等からなる移送部(図示省略)を設けている。
【0048】
脱墨前希釈部21は、ニーダー19から送られたパルプ懸濁液を脱墨に適した繊維濃度、ここでは0.1重量%〜5.0重量%程度、より好ましくは0.3重量%〜2.0重量%程度にまで希釈するものであり、希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤等を投入する希釈液供給部(図示省略)を備えている。
【0049】
繊維濃度が0.1重量%以上5.0重量%以下であることにより、後の脱墨部22においてトナー成分と脱墨剤とを効率よく接触させトナー成分等を容易に除去することができる。
【0050】
図4に脱墨部22の斜視図を、図5(a)に脱墨部22の平面図を、同図(b)に図5(a)のA−A線矢視断面図を示す。脱墨部22は、フローテータと呼ばれ、インク成分、トナー成分等の印刷成分をパルプ懸濁液から分離して脱墨パルプを製造するためのものであり、パルプ懸濁液流通槽221、ブレード222及び気泡排出槽223を備えている。
【0051】
パルプ懸濁液流通槽221は、脱墨前希釈部21で希釈液の供給により所定濃度に調整されたパルプ懸濁液を流通させるものである。パルプ懸濁液流通槽221内は、複数の仕切壁224により複数の脱墨室225に区画されており、図5(a)の平面図において仕切壁224の上方または下方となる位置で示すように、仕切り壁224の左方または右方が交互に開口することで全ての脱墨室225は連通している。
【0052】
各脱墨室225の底部には、パルプ懸濁液流通槽221内を流通するパルプ懸濁液中に、微細な気泡を供給するための気泡供給部226を設けるとともに、各仕切り壁224の双方の面の高さ方向略中央部に温度センサ227と、ヒータ228とをそれぞれ配置している。
【0053】
また、パルプ懸濁液流通槽221内のうち、パルプ懸濁液の流速が低下し該パルプ懸濁液が淀みやすい所定位置に淀んだパルプ懸濁液を攪拌し下流側へと流動させるための攪拌翼(図示省略)を配置している。攪拌翼としては種々のものがあるが、例えば複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の攪拌翼等が挙げられる。更に、パルプ懸濁液をパルプ懸濁液流通槽221内に流入させる流入部229aと、脱墨処理後生じた脱墨パルプを含有するパルプ懸濁液をパルプ懸濁液流通槽221外に流出させる流出部229bとを設けている。
【0054】
ブレード222は、パルプ懸濁液流通槽221の上部を浮遊する気泡を、パルプ懸濁液流通槽221の周壁を溢流させ気泡排出槽223側へ掃き出すためのものであり、パルプ懸濁液流通槽221の上方に設けられ、モータ222aの駆動によりガイドレール222bに案内されつつ往復移動するよう構成されている。
【0055】
図5(a)に示すように、気泡排出槽223は、パルプ懸濁液流通槽221の外周を取り囲むよう平面視ロ字状に設けられ、脱墨の際パルプ懸濁液流通槽221内で生じ、ブレード222により掃き出された気泡を一旦貯留するようになっている。図4,5(b)に示すように、気泡排出槽223には、気泡排出槽223内及びブレード222等に付着した気泡を洗い流すための水などの洗浄液を噴出する洗浄液噴出部223aを設けている。洗浄液噴出部223aは、気泡排出槽内の壁面の上段部及び中段部の全周に亘って複数配備されている。
【0056】
更に、気泡排出槽223は、生じた気泡を消滅させるための消泡部(図示省略)を備えていることが好ましい。消泡部は気泡を消滅させることができればその構造は限定されないが、例えば、温風や熱風を供給する風供給部(図示省略)等が挙げられ、風供給部から気泡に温風又は熱風を吹き付けて気泡の水分を吹き飛ばすことで気泡を消滅させる。かかる風供給部を設ける場合には、風供給部からの温風や熱風を水分含有量の低い乾燥した温風又は熱風とすることがより好ましい。これにより、気泡の水分をより容易に吹き飛ばすことができるからである。
【0057】
図6に、すすぎ部23の構成概略図を示す。すすぎ部23は、脱墨部22において得られた脱墨パルプ63を含むパルプ懸濁液中の脱墨剤を洗浄し除去するものであり、離間配置された回転ローラ231の間に掛け渡して展張したメッシュベルト233を有し、該メッシュベルト233が上部の往路軌道233aと下部の復路軌道233bからなる無端軌道を形成している。
【0058】
往路軌道233aには始端側にパルプ懸濁液をメッシュベルト233の上に供給するホッパー234を設けており、該ホッパー234からメッシュベルト233の上に供給されたパルプ懸濁液に向けて水などの洗浄液を噴射する洗浄ノズル235と、洗浄ノズル235からの洗浄液により洗浄されたパルプ懸濁液を圧搾する上下一対の圧搾ローラ236とを往路軌道233aの始端側から終端側に向けて交互に複数設けている。
【0059】
復路軌道233bの始端側にはメッシュベルト233からすすぎの終了したパルプ懸濁液を剥離するためのスクレーパ237を設けている。また、往路軌道233aの下方には洗浄液を受ける洗浄液収容槽232を設置し、洗浄液収容槽232は配管(図示省略)によりすすぎ排水タンク52に接続されている。
【0060】
(抄紙部)
図7は、抄紙部3及び仕上げ部4のカレンダー部41の概略斜視図、図8は、抄紙部3を構成するヘッドボックス31及びワイヤー部32の斜視図、図9は、図8に示すヘッドボックス31及びワイヤー部32の要部を拡大した断面図である。抄紙部3は、少なくともヘッドボックス31と、抄紙ワイヤー装置Wとを備えた抄紙装置Sにより構成され、すすぎ部23によるすすぎの終了したパルプ懸濁液を抄紙するものであり、図7に示すように、ヘッドボックス31、ワイヤー部32、脱水部33、ドライヤー部34からなる。
【0061】
ヘッドボックス31は、すすぎ部23によるすすぎの終了したパルプ懸濁液をワイヤー部32に均一に供給するためのものであり、図8に示すように、パルプ懸濁液を導入するヘッドボックス本体311を備え、このヘッドボックス本体311には、パルプ懸濁液を貯留する大気開放型の貯留部311hと、前記貯留部311hの下部に貯留部311h内のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー323の上面に自重落下により供給する供給部311oとを設けている。
【0062】
供給部311oの最も下流側となる先端位置は、ヘッドボックス本体311内のうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部314となっている。狭小部314は、パルプ懸濁液の抄紙ワイヤー323への過剰な流出を制限するため設けられ、これによりパルプ懸濁液の抄紙の後乾燥して得られる再生紙の厚さの調整等を行うようになっている。
【0063】
図9に示すように供給部311oに配設された壁部材315は、抄紙ワイヤー323の幅方向に沿って配設された幅壁部材315yと、幅壁部材315yの左右両端部に配設された側壁部材315Lとを有する。更に、幅壁部材315yは横方向に配設された横壁部材315aと、該横壁部材315aの下流側において縦方向に配設され縦壁部材315dとを含んでなる。
【0064】
横壁部材315aの上流側端縁及び下流側端縁は、各々天然ゴム材等の弾性体315k,315oを介して貯留部311h及び縦壁部材315dに接続されており、また、供給部311oの左右両側面に配設された側壁部材315Lから分離されている。これにより、横壁部材315aは、貯留部311h、側壁部材315Lおよび下流側において縦方向に配設された縦壁部材315dから独立して弾性変形可能に構成されている。
【0065】
図8,9に示すように、横壁部材315aの上面の幅方向略中央部には起振装置318を配設している。起振装置318は少なくとも供給部311o若しくはその近傍を振動させることが可能であればその構造は特に限定されないが、本実施形態では小型のモータ318eと、モータ318eの回転軸に偏心して固設された錘318fとからなる小型の振動発生装置を一例として示している。
【0066】
この起振装置318は、振動によって横壁部材315aを周期的に主として上下方向に移動させ、図9(a)に示す横壁部材315aが振動していない場合にはパルプ懸濁液の流通断面の高さがHであるところ、同図(b)に示す起振装置318の振動により横壁部材315aが下方向に位置する際はパルプ懸濁液の流通断面の高さをhにまで低くする。このように、起振装置318は狭小部314の上流側近傍位置を構成する横壁部材315aを振動により押圧しパルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成され、狭小部314に詰まったパルプ懸濁液を下流側へと強制的に押し出すようになっている。
【0067】
また、図9(b)とは逆に、横壁部材315aが図9(a)に示す通常位置より上方向に位置するよう振動する場合は、パルプ懸濁液の流通断面の高さが図9(a)に示すHより更に高くなって、パルプ懸濁液の流通断面積を拡張することとなる。(図示省略)
【0068】
起振装置318による振動の周波数は、地合等抄紙の際の他の因子に影響のない程度であればよく、例えば10Hz〜150Hz、好ましくは50Hz〜100Hz程度である。
【0069】
さらに、横壁部材315aの左右両側縁近傍には正面視逆U字状の伝振部材319が設けられ、該伝振部材319の一方の端部が横壁部材315aに立設されており、該伝振部材319の他方の端部は側壁部材315Lを乗り越えて回避しつつ外方に延在し、抄紙ワイヤー323の上面に摺接し、起振装置318の振動を抄紙ワイヤー323に伝達し、抄紙ワイヤー323を上下方向に振動させるようになっている。
【0070】
供給部311oの左右の側壁部材315Lは、ワイヤー部32の抄紙ワイヤー323の両側縁部に沿って所定長さ延在して形成され、ガイド部材31bを構成している。ガイド部材31bは、ヘッドボックス31から抄紙ワイヤー323上に供給されたパルプ懸濁液が抄紙ワイヤー323の側縁から外方に流れ落ちるのを防止するようになっている。
【0071】
ワイヤー部32は、抄紙ワイヤー323を備えた抄紙ワイヤー装置Wにより構成され、抄紙ワイヤー323は駆動モータ325aの駆動により回転する複数の回転ローラ321に掛け渡して展張されている。また、抄紙ワイヤー323はメッシュ状に形成され、往路軌道323aと復路軌道323bからなる無端軌道を形成している。
【0072】
抄紙ワイヤー323の走行速度は大型の製紙機であれば非常に高速となり、一方、本第1の実施形態の場合のように、小型の装置であれば比較的低速であってもよく、例えば5mm/s〜100mm/s、好ましくは15mm/s〜50mm/s程度である。
【0073】
往路軌道323aの下方には、往路軌道323aの網目から流下する水を受ける受水部325を設けている。受水部325は後述する排液処理部5の抄紙排水タンク54に接続されている。
【0074】
図7に示すように、 脱水部33は、複数の回転ローラ331の間にそれぞれ掛け渡したフェルトからなる無端状の吸水ベルト332a,332bを上下一対有し、上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接している。この上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接した部分において、双方の吸水ベルト332a,332bを挟圧して圧搾する一対の圧搾ローラ334を複数備えている。
【0075】
上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとは設置位置を所定長さだけずらせており、上側の吸水ベルト332aの方が下側の吸水ベルト332bよりも湿紙64の走行方向上流側に配置されている。これにより、抄紙ワイヤー323上を搬送されてきた湿紙64をまず上側の吸水ベルト332aに転移し、その後、圧搾ローラ334による圧搾の直前まで湿紙64を下側の吸水ベルト332bに接触させないようにしている。
【0076】
圧搾ローラ334は、上流側の圧搾ローラ334aの方が下流側の圧搾ローラ334bよりも押圧力を弱くすることが好ましい。上流側の圧搾ローラ334aによる圧搾の時点では、下流側の圧搾ローラ334bによる圧搾の時点よりも湿紙64の含水量が高い状態である。よって、上流側の圧搾ローラ334aを下流側の圧搾ローラ334bよりも弱い力で圧搾することにより、圧搾により生じた水によって湿紙64中の繊維成分が下側の吸水ベルト332b上を圧搾ローラ334aの上流側に逆流し、均一な繊維の層を形成できなくなるといったことを防止する。一方、上流側の圧搾ローラ334aによって一旦比較的弱い押圧力で圧搾され、湿紙64の含有する水分量を減少させた後、下流側の圧搾ローラ334bによって上流側の圧搾ローラ334aより強い押圧力で圧搾することで、最終的に得られる再生紙7の強度を向上させることができる。
【0077】
ドライヤー部34は、フード(図示省略)内に複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343を配置し、この複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343の間に掛け渡した搬送ベルト342を上下一対備えている。搬送ベルト342の材質は特に限定されず、例えば、布、耐熱樹脂または金属等とし、上下の搬送ベルト342は一部が当接した状態で走行し、上下の搬送ベルト342の当接箇所に複数の乾燥ローラ343が配置されている。乾燥ローラ343は、内部にヒータ345を備えるとともに、外周面に搬送ベルト342を巻回しており、また、乾燥ローラ343の表面の温度を測定する温度センサ(図示省略)を有している。
【0078】
(仕上げ部)
図1に示すように、仕上げ部4は、カレンダー部41及びカット部42を有しており、図7に示すように、カレンダー部41は紙の平坦度を上げるための複数のプレスローラ411を備え、カット部42は紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。
【0079】
(排液処理部)
図1に示すように排液処理部5は、脱墨排水タンク53、すすぎ排水タンク52、抄紙排水タンク54の各槽体を有し、汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を行って無毒化した後製紙装置100の外部に排出するよう構成されている。汚染の程度が低く再利用が可能な抄紙排水タンク54、すすぎ排水タンク52内の排水は、フィルターを通してインク、トナー等を除去し、必要により薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、もう一度パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用可能に構成されている。
【0080】
(第1の実施形態の作用)
本実施形態にかかる製紙装置100の作用につき以下に説明する。
まず、図2に示すように、古紙6を古紙投入部11よりホッパー12内に投入すると、シュレッダー13が投入された古紙6を裁断処理して再生パルプの製造に適した所定の大きさに紙片化し、金属片除去部14がステープラーの針等の金属類を除去する。そして、シュレッダータンク16内に裁断された紙片を一時的に貯留する。
【0081】
シュレッダータンク16内に一定量以上の古紙の裁断紙片61を貯留する場合、二点鎖線で示すように、昇降手段152によって押圧部材151を降下し裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを低減させる。
【0082】
次に、排出装置164を作動して古紙の裁断紙片61を受け皿部171に徐々に投下し、計測部172で測定する。計測部172の測定値が設定値に達した時点で排出装置164を停止し、図3に示すように、駆動手段を駆動して受け皿171aを傾動し、側壁部171bを傾倒して古紙の裁断紙片61を攪拌槽181へ投入する。
【0083】
パルパー18では、古紙の裁断紙片61の攪拌槽181への投入に先立って予め投入される古紙の裁断紙片61の量に応じた量の水を、給水部182から供給しておき、駆動手段188を作動して攪拌羽根184を回転し、攪拌槽181内の水を攪拌しておく。このような状態で、上記のようにして攪拌槽181内へ古紙の裁断紙片61の投入を行う。これにより、古紙の裁断紙片61と水とを容易に混合することができる。そして、離解促進剤供給部183より離解促進剤を攪拌槽181に投入する。
【0084】
この離解促進剤供給部183からの攪拌槽181への離解促進剤の投入は、古紙の裁断紙片61の投入後、所定時間経過後に行うことが好ましい。これにより、まず水により裁断紙片61を十分膨潤させた後、膨潤した裁断紙片61の内部に離解促進剤を速やかに浸透させることができ、離解処理の時間を短縮可能である。
【0085】
そして、攪拌羽根184の回転により攪拌槽181内で古紙の裁断紙片61を攪拌してパルプ懸濁液を形成する。この間、温度センサ185で攪拌槽181内の温度を検出し、必要により温度ヒータ186を通電することで攪拌槽181内に貯留するパルプ懸濁液を離解処理に適する所定温度に維持する。
【0086】
パルパー18での滞留時間を長くすることにより古紙の裁断紙片61の離解の度合いが高くなり、逆に短くすることにより古紙6の離解の度合いが低くなる。このため単位処理量当たりの運転時間を可変調整することにより、パルパー18の離解の度合いを任意の度合いに設定することができ、この結果、処理時間の短縮を重視するか得られる再生紙7の品質を重視するかについてユーザーが任意に選択の上で、再生紙を製造することが可能となる。
【0087】
パルパー18において得られた再生パルプを含有するパルプ懸濁液をパルプ懸濁液取出部187より取り出した後は、このパルプ懸濁液をニーダー19へ送り、再生パルプを混練し、混練後の再生パルプを含むパルプ懸濁液を、図1に示すように、脱墨パルプ部2へ送る。
【0088】
脱墨パルプ部2では、まず、パルプ懸濁液を脱墨前希釈部21において脱墨に適した繊維濃度になるよう希釈液供給部から希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤を投入してパルプ懸濁液の希釈を行う。次に、所定の繊維濃度に調整されたパルプ懸濁液を脱墨部22に送る。
【0089】
脱墨部22では、図4,5に示すパルプ懸濁液流通槽221に流入部229aから流入したパルプ懸濁液を、仕切壁224の左方または右方の開口から隣接する脱墨室225へ順次流通させる。各脱墨室225では脱墨剤の存在下、パルプ懸濁液中に気泡供給部226から微細な気泡を吹き込み、脱墨剤の存在によって消失することなく多量に発生した気泡の表面にトナー粒子等の疎水性の異物を付着させて各脱墨室225の上部に浮上させる。また、必要により攪拌翼を作動し、再生パルプ流通槽221内のパルプ懸濁液の円滑な流通を促すようにする。
【0090】
親水性の繊維は、水とともに脱墨室225を順次流通していく。このようにしてパルプ懸濁液からトナー成分等を除去する脱墨を行う。その際、温度センサ227でパルプ懸濁液の温度の検出を行い、ヒータ228でパルプ懸濁液を所定温度に維持するよう加熱する温度制御を行う。
【0091】
脱墨部22にパルプ懸濁液を導入した後、所定時間経過し、脱墨処理が進行して各脱墨室225の上部に気泡が浮遊した際に、モータ222aを駆動し、ガイドレール222bに案内させつつブレード222を図5(a)において上下方向に往復移動し、パルプ懸濁液流通槽221の上部に浮遊する気泡を気泡排出槽223に掃き出す。気泡排出槽223に掃き出された気泡は、洗浄液噴出部223aから噴出した洗浄液によって洗い流され、気泡排出槽223内に溜まった洗浄液、脱墨剤、トナー成分等を含む液体は脱墨排水タンク53に送られる。
【0092】
脱墨部22では単位処理量当たりの運転時間、つまりパルプ懸濁液流通槽221での滞留時間を長くすることにより脱墨の度合いが高くなり、短くすることにより脱墨の度合いが低くなる。このため、単位処理量当たりの運転時間を可変調整可能とすることにより、脱墨部22での脱墨の度合いを任意の度合いに設定することができる。この結果、処理時間を短縮することを重視するか、または得られる再生紙7の品質を重視するかについてユーザーが任意に選択の上で、再生紙を製造することが可能となる。脱墨パルプ部2での単位処理量当たりの運転時間の制御は、パルプ懸濁液流通槽221へ供給するパルプ懸濁液の単位時間当たりの供給量を加減調整することにより行う。
【0093】
パルプ懸濁液流通槽221内の全ての脱墨室225にパルプ懸濁液を流通させ、パルプ懸濁液を脱墨して脱墨パルプ63を得て、得られた脱墨パルプ63を含むパルプ懸濁液を流出部229bから流出させ、図6に示すすすぎ部23に送る。
【0094】
図6に示すように、すすぎ部23では、回転ローラ231の駆動により走行するメッシュベルト233上に、ホッパー234からパルプ懸濁液を供給し、メッシュベルト233の走行方向上流側の洗浄ノズル235からパルプ懸濁液に洗浄液を噴射しパルプ懸濁液中の脱墨剤を洗浄する。続いて、圧搾ローラ236によってパルプ懸濁液を圧搾することで脱水を行う。かかる洗浄、脱水の動作を下流側の洗浄ノズル235及び圧搾ローラ236によって複数回繰り返す。
【0095】
すすぎを終了したメッシュベルト233上の脱墨パルプ63は、復路軌道233bの始端側に至り、スクレーパ237によってメッシュベルト233から剥離された後、加水され、パルプ懸濁液中の繊維濃度を0.3〜1.0重量%程度となるように調整された上で、抄紙部3のヘッドボックス31の貯留部311hへ送られる。また、メッシュベルト233から洗浄液収容槽232に流下した洗浄液は、すすぎ排水タンク52へ送られる。
【0096】
図8に示すように、抄紙部3では、パルプ懸濁液がヘッドボックス本体311の貯留部311hに導入され、貯留部311hに貯留されたパルプ懸濁液は供給部311oより抄紙ワイヤー323の上面に自重落下により供給される。その際、パルプ懸濁液の繊維濃度及び抄紙ワイヤー323の走行速度によっても態様が異なるが、狭小部314を通過する場合にパルプ懸濁液中の繊維成分が詰まりやすく、次第に水分のみが抄紙ワイヤー323上に供給されるようになり、繊維成分が徐々に狭小部314及びその上流側の供給路に滞留するようになる。
【0097】
そこで、起振装置318のモータ318eを駆動して錘318fを回転させ横壁部材315aを振動させる。これにより図9に示すように、錘318fの回転に伴って横壁部材315aが移動しこの結果横壁部材315aは主として上下方向に振動する。この振動によって狭小部314及びその上流側近傍位置に滞留していたパルプ懸濁液を振動させて流動を促し攪拌させて、狭小部314から抄紙ワイヤー323上へ流出させることができるようになる。
【0098】
また、起振装置318の振動によって、横壁部材315aが上下に移動する際、図9(a)に示す通常位置より図9(b)に示す低い位置に横壁部材315aが移動する場合には、パルプ懸濁液の供給路が狭小部314の上流側位置で押圧されて縮小され、流通断面の高さをHからhとし、この縮小箇所に滞留していたパルプ懸濁液を押し出し、下流側の狭小部314より強制的に流出させることができる。
【0099】
特に、ヘッドボックス本体311が大気開放型の貯留部311hを備えたものである場合には、大型の製紙機に用いられるような加圧を行ってヘッドボックス本体内部にパルプ懸濁液を強制的に収容させる密閉式のヘッドボックスである場合と異なり、小型の起振装置318であっても非常に容易に横壁部材315aを振動させることができ、少ない運転コストによって多大な効果が得られる。
【0100】
また、本第1の実施形態のように小型の古紙処理装置の場合、抄紙ワイヤー323の走行速度を比較的低速とすることが多いためにパルプ懸濁液の流通路が詰まりやすくなる傾向が顕著となるが、本実施形態にかかる起振装置318で横壁部材315aを振動させることにより、大掛かりな設備等必要とせず、占有面積が小さく且つ簡単な構造の装置により、供給部311oの詰まりを解消できる。
【0101】
起振装置318の振動による抄紙ワイヤー323上の湿紙64の地合への影響に関しては、例えば、抄紙ワイヤー323が非常に低速の5mm/s程度で走行させる場合に起振装置318による振動の周波数を上記した10Hz〜150Hzに設定すれば、湿紙64上に現れる振動の幅は0.033mm〜0.076mm程度となり、好ましい抄紙ワイヤー323の走行速度である15mm/s〜50mm/s程度の場合、湿紙64上に現れる振動の幅は最も大きくて1mm、最も小さい場合は0.03mmとなり、いずれも地合にほとんど影響しない程度となる。
【0102】
更に、抄紙ワイヤー323が本第1の実施形態で挙げたなかでは比較的速い100mm/s程度で走行させる場合は供給部311oでの繊維の凝集が起こりにくく、比較的繊維が詰まりにくくなるが、この場合にも起振装置318による振動の周波数を例えば100Hz以上に設定すれば、湿紙64上に現れる振動の幅は1mm以下とすることができ、地合への影響をほとんどなくすることができる。
【0103】
そして、供給部311oの狭小部314から走行する抄紙ワイヤー323上に、脱墨パルプ63を含むパルプ懸濁液をガイド部材31bに案内させつつ均一に供給すると、パルプ懸濁液は水切りされ、水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙64が形成される。その際、伝振部材319が横壁部材315aの振動を抄紙ワイヤー323に伝達することによって抄紙ワイヤー323を振動させ、抄紙ワイヤー323上の湿紙64の脱水をより促進させることができる。抄紙ワイヤー323の下方に流下した水は受水部325に受水され、該受水部325から抄紙排水タンク54に送られる。
【0104】
抄紙ワイヤー323上の湿紙64が往路軌道の終端部に至ると、脱水部33の上側の吸水ベルト332aに転移される。その後下側の吸水ベルト332bとの間に挟まれ、湿紙64に含まれる水分を吸水ベルト332a,332b側に吸収させることで脱水し、更に、圧搾ローラ334a,334bで圧搾して脱水する。
【0105】
この圧搾ローラ334a,334bの圧搾の際、各圧搾ローラ334a,334bの押圧力を上流側の圧搾ローラ334aの方が下流側の圧搾ローラ334bよりも弱くした場合には、圧搾で生じた水によって湿紙64を構成する繊維が上流側の圧搾ローラ334aの上流側に流されるのを防止することができ、更に、下流側の圧搾ローラ334bの押圧力を上流側の圧搾ローラ334aより強くすることで、湿紙64を乾燥し、仕上げした後に得られる再生紙の強度を向上させることができる。
【0106】
脱水部33で脱水された湿紙64は、ドライヤー部34に送られ、走行する上下一対の搬送ベルト342の間に挟持される。そして、ヒータ345により加熱され所定温度に維持された複数の乾燥ローラ343に湿紙64を搬送ベルト342を介して当接させつつ搬送することで湿紙64の乾燥を行い仕上げ前の再生紙65を得る。
【0107】
ドライヤー部34を出た仕上げ前の再生紙65はカレンダー部41に送られ、複数のプレスローラ411の間に通される。これにより、仕上げ前の再生紙65の平坦度を向上させ、更に、カット部42で所定のシートサイズに裁断して再生紙7が完成する。
【0108】
カット部42において裁断された結果不要となった仕上げ前の再生紙65の破材は、図1に示すようにシュレッダー13又はシュレッダータンク16に戻され、再度再生紙の製造に利用される。
【0109】
各工程において排液処理部5へ送られた排水のうち汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を施した後製紙装置100の外部に排出する。汚染の程度が低く再利用が可能な抄紙排水タンク54、すすぎ排水タンク52内の排水は、必要によりフィルターを通してインク成分、トナー成分等を除去し、薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用する。
【0110】
以上より、本発明にかかるヘッドボックス31は、供給部311oを構成する横壁部材315aに起振装置318を配設し、この起振装置318により少なくとも供給部311oを振動させることにより、供給部311oの詰まりを解消するようにしたので、パルプ懸濁液を大気開放型の貯留部311hから自重落下により抄紙ワイヤー323上に供給する際、流通断面積が狭まった供給部311oを通過させてもパルプ懸濁液を攪拌して分散性を高め、パルプ懸濁液の繊維が凝集するのを抑制できるので、詰まりによる不具合を生じることなく均一な繊維濃度で抄紙ワイヤー323上にパルプ懸濁液を供給することができる。特に、本実施形態のように抄紙ワイヤー323が比較的低速である場合にも供給部311oでの詰まりを容易に解消可能である。
【0111】
また、ヘッドボックス本体311は、供給部311oより抄紙ワイヤー装置Wの抄紙ワイヤー323上にパルプ懸濁液を供給可能に配設した状態で、起振装置318の振動に伴って抄紙ワイヤー323を振動させる伝振部材319を設けたので、起振装置318の振動を利用して抄紙ワイヤー323を容易に振動させることができ、これによりパルプ懸濁液の脱水を促進することができる。更に、抄紙ワイヤー323上の湿紙の地合を向上させ、得られる再生紙の品質を良好なものとすることも可能である。
【0112】
そして、起振装置318は、供給部311oのうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部314の上流側近傍位置に配設された横壁部材315aを押圧することにより、パルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成してなるので、圧縮によりパルプ懸濁液の流通断面積を縮小させて狭小部314に詰まったパルプ懸濁液を強制的に押し出すことができ、より効率よく詰まりの不具合を解消可能である。
【0113】
(第2の実施形態)
本発明にかかるヘッドボックスの第2の実施形態を以下に示す。尚、以下の説明において、上記第1の実施形態と同一の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。また、以下においては抄紙ワイヤー323を振動させる伝振部材319を図示及び説明を省略するが、上記第1の実施形態と同様に設けてもよい。
【0114】
図10は、本発明にかかる第2の実施形態としてのヘッドボックス31eと、抄紙ワイヤー装置Wdとを備えた抄紙装置Sdの右側から見た斜視図である。図10に示すように、ヘッドボックス31eは、少なくとも供給部311rまたはその近傍を回転により叩打して振動させる叩打部材312jと、この叩打部材312jを回転軸313k及びプーリ313nを介して抄紙ワイヤー323の駆動に連動させて回転させる連動部材313bとを設けてなる起振装置318dを備えている。
【0115】
叩打部材312jは、横壁部材315iの上方に架設された回転軸313kに偏心して固着されてなり、図10において3個の場合を示すように複数設けられることが好ましい。叩打部材312jを複数設けることで振動効果が高まるからである。回転軸313kは側壁部材315pを貫通して側壁部材315pの外方に突出して形成され、該側壁部材315pに回転自在に軸支されている。
【0116】
本第2の実施形態においても横壁部材315iは、弾性体315k,315oを介して貯留部311h及び縦壁部材315dに接続されており、また、供給部311rの左右両側面に配設された側壁部材315pから分離され、ヘッドボックス本体311を構成する他の壁部材315から独立して弾性変形可能となっている。
【0117】
駆動モータ325aが駆動すると抄紙ワイヤー323の走行に伴って、連動部材313b及びプーリ313nを介して回転軸313kが回転し、叩打部材312jを回転させる。すると、叩打部材312jの偏心によって横壁部材315iの上面を周期的に叩打し、これにより横壁部材315iが振動する。
【0118】
このように、第2の実施形態にかかるヘッドボックス31eは、起振装置318dが、供給部311rに配設された横壁部材315iを回転により叩打して振動させる叩打部材312jと、この叩打部材312jを抄紙ワイヤー323の駆動に連動させて回転させる連動部材313bとを備えてなるので、抄紙ワイヤー323の駆動源である駆動モータ325aの駆動を有効に活用して供給部311rを振動させることができる利点がある。
【0119】
(第3の実施形態)
本発明にかかるヘッドボックスの第の実施形態を以下に示す。図11は、第3の実施形態としてのヘッドボックス31aと、抄紙ワイヤー装置Waとを備えた抄紙装置Saの左側面図、図12は前記抄紙装置Saを右側から見た斜視図、図13は、前記ヘッドボックス31aの要部の動作を示す左側面の部分拡大図である。
【0120】
図11〜13に示すように、第3の実施形態としてのヘッドボックス31aは、上記第1,2の実施形態にかかる起振装置318,318dに替えて、少なくとも供給部311pまたはその近傍に壁部材315が揺動自在に軸支されるとともに、壁部材315を揺動させるための揺動装置318aを備えてなる。
【0121】
特に、壁部材315のうち縦方向に配設された縦壁部材315eを側壁部材315mにより揺動自在に軸支し、揺動装置318aで縦壁部材315eを所定の揺動量で揺動させることにより、少なくとも供給部311pにおけるパルプ懸濁液の流通断面積を拡大することで変動するよう構成してなる。
【0122】
揺動装置318aは、供給部311pまたはその近傍を回転により叩打して振動を発生させる叩打部材312と、この叩打部材312を抄紙ワイヤー323の駆動に連動させて回転させる連動部材313とを備えてなる。
【0123】
叩打部材312は回転により後述する被叩打部材313dを叩打可能な部材であれば特に限定されないが、例えば、図11〜13に示す歯車等により構成される。この叩打部材312は左右一対設けられ、図12において手前側に示すヘッドボックス本体311aの右側面側の叩打部材312aが抄紙ワイヤー323を駆動する駆動モータ325aにタイミングベルト等からなる連動部材313によって連結され、左側面側の叩打部材312b(図11,13参照)が右側面側の叩打部材312aに回転軸318iにより連結されることで、共に抄紙ワイヤー323の駆動に連動させて回転するようになっている。
【0124】
そして、供給部311pの下流側端縁を形成する縦方向に配設された縦壁部材315eが、横壁部材315bとは切り離され、独立して設けられるとともに、該縦壁部材315eの上端縁に設けられた揺動軸317を軸心に揺動自在に形成されており、図12において拡大した円内に示すように、この揺動軸317が側壁部材315mに揺動自在に軸支されてなる構造を有する。揺動軸317は側壁部材315mを貫通し更に外方に突出して形成され、この揺動軸317の突出した左右両端部近傍に叩打部材312によって叩打される板状の被叩打部材313dが揺動半径方向に突設されてなる。
【0125】
また、揺動軸317の側壁部材315mと被叩打部材313dとの間には捩りコイルバネ316が挿通され、揺動軸317の上方やや上流側の側壁部材315mに形成された切欠き部315nにこの捩りコイルバネ316の一端側が係止され、他端側が被叩打部材313dを下流側より係止することにより、被叩打部材313dを略鉛直下方向に沿うよう付勢するようになっている。
【0126】
また、被叩打部材313dを略鉛直下方向に沿った状態より更に時計回りに回動させないよう停止させる停止部材313gを設けている。
【0127】
第3の実施形態の抄紙装置Saの作用は、パルプ懸濁液が供給部311pから抄紙ワイヤー323に供給されるのに伴い、駆動モータ325aを駆動して抄紙ワイヤー323を走行させるとともに、駆動モータ325aより連動部材313を介して叩打部材312を回転し、被叩打部材313dを連続的に叩打する。すると、叩打部材312の叩打により図13(a)において矢印Bで示す反時計回りに被叩打部材313dを回動させ、その後捩りコイルバネ316の下流側からの付勢によって被叩打部材313dが図13(b)において矢印Cで示す時計回りに回動し、これにより揺動軸317を揺動させて縦壁部材315eを揺動軸317を軸心に揺動させる。揺動の振り量は、その際、パルプ懸濁液の繊維濃度及び抄紙ワイヤー323の走行速度によっても態様が異なるが、地合に影響のない程度とする。
【0128】
この結果、狭小部314aにおけるパルプ懸濁液の流通断面積を拡張により変形させる動作が繰り返されることとなり、よって、狭小部314aを通過できず狭小部314aより上流側の供給部311pに滞留するパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー323上に効率よく供給することができる。
【0129】
(第4の実施形態)
第4の実施形態としてのヘッドボックス31cは、上記第3の実施形態において横壁部材315bと縦壁部材315eとが独立して形成されるとともに縦壁部材315eのみを揺動自在に構成した揺動装置318aを備えることとしたところ、これに替えて、図14,15に示すように、横壁部材315c及び縦壁部材315fを一体に形成し、且つこれら横壁部材315cと一体で縦壁部材315fの下流側に延在する錘部316aを設け、図15に示すように、側面視略T字状とし、これを揺動軸317aを軸心に揺動自在とした起振装置318bを備えている。
【0130】
横壁部材315cは、貯留部311iの下流側の壁面を構成する縦壁部材311gに摺接するとともに、湾曲して形成された曲面部材315gが該横壁部材315cの上流側端縁に立設されてなる。この曲面部材315gには補強のため横壁部材315cより複数のリブ315hが立設され接続されている。尚、貯留部311iの下流側壁面を構成する縦壁部材311gは、曲面部材315gに摺接される外壁面の所定箇所が該曲面部材315gと同様の曲面状に形成され、曲面部材315gに沿って摺接可能となっている。
【0131】
錘部316aは、上記第3の実施形態における捻りコイルバネ316に替えて用いられ、被叩打部材313fが叩打部材312dに叩打された後、略鉛直下方向に沿う状態に復帰させるための錘となっている。錘部316aの下方には止め部材316cが設けられ、図15(a)に示す横壁部材315c及び錘部316aが側面視略水平方向の位置となった状態を維持し、これより更に反時計回りに回動しないよう錘部316aを下方より支持し停止させるようになっている。縦壁部材315fと錘部316aとの間にも補強のための複数のリブ315uが形成されている。
【0132】
また、上記第3の実施形態においては叩打部材312を歯車とした例を示したが、本第4の実施形態では叩打部材312dを一枚の板状体312eが回転軸312fより突設されてなる構造を有する場合を示している。
【0133】
更に、上記第3の実施形態においては右側面側の叩打部材312aが抄紙ワイヤー323を駆動する駆動モータ325aに連動部材313によって連結されたが、第4の実施形態では叩打部材312dは抄紙ワイヤー323を駆動する駆動モータ325aに直接連結されておらず、駆動モータ325aの駆動により抄紙ワイヤー323を介し従動する従動ローラ321aに連動部材313aによって連結されてなり、よって叩打部材312dは駆動モータ325aの駆動に間接的に連動して回転されるものである。
【0134】
第4の実施形態にかかるヘッドボックス31cの作用は、駆動モータ325aの駆動によって抄紙ワイヤー323を走行すると、これに伴って従動ローラ321aが回転し、連結部材313aを介して叩打部材312dを回転させる。叩打部材312dは図15(a)に示す横壁部材315c及び錘部316aが略水平の状態より矢印Dに示す向きに揺動し、同図(b)のように、揺動軸317aを軸心に横壁部材315cは水平姿勢より低くくし、逆に錘部316aは水平姿勢より高くし、縦壁部材315fは略鉛直下方向より下流側へと傾斜させる。
【0135】
この結果、横壁部材315cの下方に滞留していた繊維を横壁部材315cが押圧し、パルプ懸濁液の供給路を圧縮して強制的に押し出し、またこれと同時に、縦壁部材315fの傾斜によって狭小部314fの流通断面積を拡大し、供給部311qに滞っていたパルプ懸濁液をこの拡張された狭小部314fから容易に流出させることができる。
【0136】
よって、横壁部材315cの押圧と、縦壁部材315fの狭小部314fの拡張の相乗効果によって、供給部311qに滞留するパルプ懸濁液をより強力に狭小部314fより抄紙ワイヤー323上に流出させることができ、繊維濃度がより高いパルプ懸濁液を抄紙する場合にも供給部311qでの詰まりの不具合を解消することができる。
【0137】
尚、第4の実施形態では縦壁部材315fを横壁部材315c及び錘部316cと一体に設け、これらを一体で同時に揺動するようにしたが、本発明にかかるヘッドボックスはこれに限定されず、縦壁部材を横壁部材から分離し独立して設け、横壁部材のみ揺動可能に構成し、縦壁部材を固定式としてもよい。かかる横壁部材のみ揺動する構成のヘッドボックスにおいても横壁部材の揺動によりパルプ懸濁液の供給路を圧縮することでパルプ懸濁液を下流側へと押し出し供給部における詰まりを解消可能である。
【0138】
また、上記した第1〜4の各実施形態において、幅壁部材315yを、横方向に配設された横壁部材315a,315b,315c,315iと、該横壁部材315aの下流側において縦方向に配設され縦壁部材315d,315e,315fとを直交させた構成としたが、これに限定されず、貯留部の下流側縦壁部材より傾斜し下流側に向け突出させた1枚の幅壁部材等としてもよい。
【符号の説明】
【0139】
W,Wa 抄紙ワイヤー装置
S,Sa 抄紙装置
100 100a,100b 製紙装置
323 抄紙ワイヤー
31,31a ヘッドボックス
311,311a ヘッドボックス本体
311h,311i,311j 貯留部
311o,311p,311q,311r 供給部
312,312a,312b,312d,312j 叩打部材
313,313a,313b 連動部材
314 314a 狭小部
315 壁部材
315y 幅壁部材
318,318a,318b,318d 起振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーに供給するためのヘッドボックスにおいて、
パルプ懸濁液の供給路が形成されたヘッドボックス本体にパルプ懸濁液を貯留する大気開放型の貯留部を備え、
貯留部内のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤーの上面に自重落下により供給する供給部を前記貯留部の下部に設け、
前記供給部またはその近傍に起振装置を配設し、
当該起振装置により少なくとも供給部またはその近傍を振動可能に構成してなるヘッドボックス。
【請求項2】
起振装置は、供給部のうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部またはその上流側近傍位置に配設された壁部材を押圧することにより、パルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成してなる請求項1に記載のヘッドボックス。
【請求項3】
起振装置が、少なくとも供給部またはその近傍を回転により叩打して振動させる叩打部材と、この叩打部材を抄紙ワイヤーの駆動に連動させて回転させる連動部材とを備えてなる請求項1または請求項2に記載のヘッドボックス。
【請求項4】
ヘッドボックス本体は、供給部より抄紙ワイヤー装置の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を供給可能に配設され、
起振装置の振動を抄紙ワイヤーに伝え、該抄紙ワイヤーを振動させる伝振部材を設けた請求項1乃至請求項3に記載のいずれか一項のヘッドボックス。
【請求項5】
パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーに供給するためのヘッドボックスにおいて、
パルプ懸濁液の供給路が形成されたヘッドボックス本体に、パルプ懸濁液を抄紙ワイヤーに供給する供給部を設け、
少なくとも前記供給部またはその近傍に壁部材が揺動自在に軸支されるとともに、
前記壁部材を揺動させるための揺動装置を備えてなり、
当該揺動装置により少なくとも前記壁部材を揺動させることにより、少なくとも供給部におけるパルプ懸濁液の流通断面積を変動可能に構成してなるヘッドボックス。
【請求項6】
供給部は、抄紙ワイヤーの幅方向に沿って配設された幅壁部材と、前記幅壁部材の左右両端部近傍に配設された側壁部材とを備え、
前記幅壁部材が側壁部材に揺動自在に軸支されてなる請求項5に記載のヘッドボックス。
【請求項7】
揺動装置は、供給部のうちパルプ懸濁液の流通断面積が最も狭まった狭小部またはその上流側近傍位置に配設された壁部材を揺動することにより、パルプ懸濁液の供給路を圧縮可能に構成してなる請求項5または請求項6に記載のヘッドボックス。
【請求項8】
揺動装置が、少なくとも供給部またはその近傍を回転により叩打して振動させる叩打部材と、この叩打部材を抄紙ワイヤーの駆動に連動させて回転させる連動部材とを備えてなる請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のヘッドボックス。
【請求項9】
ヘッドボックス本体は、供給部より抄紙ワイヤー装置の抄紙ワイヤー上にパルプ懸濁液を供給可能に配設され、
揺動装置の揺動に伴って抄紙ワイヤーを振動させるよう構成した請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載のヘッドボックス。
【請求項10】
少なくとも請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のヘッドボックスと、抄紙ワイヤー装置とを備えた抄紙装置。
【請求項11】
少なくとも請求項10に記載の抄紙装置を備えた製紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−32607(P2011−32607A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180587(P2009−180587)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】