説明

ヘッド圧調整装置及びプリンタ

【課題】ヘッド圧の調整作業を簡略化できるヘッド圧調整装置を提供する。
【解決手段】プリンタ1のヘッド圧調整装置3は、カバー2aに回転自在に支持されて雄ねじ部43aを備えた調整ネジ部材4と、サーマルヘッド21と一体化されて雄ねじ部43aと螺合するナット71と、調整ネジ部材4に回転力を付与して雄ねじ部43aとナット71とをネジ動作させるモータ5とを備えている。モータ5は、制御部6の制御で調整ネジ部材4に回転力を付与して、ラベルシートL及びインクリボンRの挟持方向にサーマルヘッド21を傾倒させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字用のサーマルヘッドのヘッド圧調整装置、及び該ヘッド圧調整装置を備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ヘッド圧調整装置が開示されている。このヘッド圧調整装置は、バネの付勢力でサーマルヘッドをプラテンローラに押圧する押圧部と、押圧部の押圧力を設定するヘッド圧設定部とを備えている。ヘッド圧設定部は、回転軸に複数の調整部を環装させて構成されている。調整部は回転軸の軸方向及び周方向に径の異なる複数の面を備えている。
【0003】
ヘッド圧設定部の回転軸が回転し、又は調整部が回転軸の軸方向にスライドして、各調整部の押圧部に対する当接面が変更されると、押圧部が備えるバネの伸縮状態が変わり、押圧部の押圧力が変化する。使用するラベルの幅に合わせて、各押圧部での押圧力が設定されて、ヘッド圧のバランスが調整される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−193396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ヘッド圧調整装置では、ヘッド圧のバランスが悪くて印字媒体であるラベルが蛇行したり、ラベルの片側に印字スレが生じると、サービスマンがその都度筐体内のヘッド圧設定部を外部に露呈させて、ヘッド圧のバランスを手作業で調整する必要があった。このため、ヘッド圧の調整に手間がかかった。
【0006】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決できるヘッド圧調整装置及びプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明のヘッド圧調整装置は、印字媒体とインクリボンとを重ね合わせてプラテンローラとの間に挟み込み、前記インクリボンから前記印字媒体にインクを転写させて印字を行うサーマルヘッドのヘッド圧調整装置であって、前記印字媒体及び前記インクリボンの挟持方向に前記サーマルヘッドを傾倒可能に支持した支持体と、前記サーマルヘッドを傾倒させる傾倒手段と、前記傾倒手段による前記サーマルヘッドの傾倒動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記制御手段が、印字に用いる印字媒体の種類に応じた前記サーマルヘッドの傾倒動作の制御量を表す制御量情報を記憶した記憶部と、前記印字媒体の種類に応じた前記制御量情報に基づき、前記傾倒手段の動作を制御する動作制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記傾倒手段が、前記支持体に回転自在に支持されて駆動ネジ部を備えた回転体と、前記サーマルヘッドと一体化されて前記駆動ネジ部と螺合する従動ネジ部と、前記回転体に回転力を付与して前記駆動ネジ部と前記従動ネジ部とをネジ動作させる駆動手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラテンローラに対するサーマルヘッドの傾倒量の調整を、制御手段の制御により傾倒手段が行うことから、ヘッド圧の調整作業を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の最良の形態のプリンタ1を図面を参照して説明する。
図1は本実施形態のプリンタ1の構成の概略を示す図である。図2は、プリンタ1が備えるヘッド圧調整装置3の構成の概略を示す図である。なお、以下の説明で用いる上下,前後,及び左右の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下,前後,及び左右は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0010】
図1に示すように、プリンタ1は、ラベルリール11に巻回されたラベルシートLとリボン送りリール12に巻回されたインクリボンRとを、印字部2のサーマルヘッド21(図2参照)とプラテンローラ14とで重ね合わせて挟み込み、ラベルシートLに貼着されたラベルにサーマルヘッド21で印字を行う。ラベルへの印字が済んだラベルシートLは、切断部15でラベル単位に切断されて排出部16に排出される。また、印字に用いたインクリボンRは、リボン巻取リール13に巻回される。
【0011】
サーマルヘッド21をプラテンローラ14に圧接させるヘッド圧は、図2に示すヘッド圧調整装置3により調整される。
【0012】
図2に示すように、ヘッド圧調整装置3は、ヘッドホルダ22に固定されたサーマルヘッド21を、揺動板7でカバー2a内に支持して構成されている。ラベルシートL上のラベルは、サーマルヘッド21の左端部に設けられた基準位置を、その左縁が通過するように搬送される。カバー2aは、サーマルヘッド21の上方で左右方向に延びる天板2a1
と、サーマルヘッド21の右側まで延びた天板2a1の右縁から下方に延びる側板2a2と、天板2a1の左縁から下方に延びる側板2a3とを備えている。
【0013】
側板2a2,2a3には、プリンタ1の筐体が備えるエンジンフレーム1aに軸支された回転軸2a4が固定されている。カバー2aは、図示しない付勢手段により前端側を上方に付勢されている。側板2a3には、エンジンフレーム1aに係止する係止部材(不図示)が設けられており、カバー2aに備えられたレバー2bの操作で、係止部材がエンジンフレーム1aに係脱される。
【0014】
カバー2aは、レバー2bの操作でエンジンフレーム1aへの係止部材(不図示)の係止が解かれると、付勢手段の付勢力で回転軸2a4を中心として前端側を上方に回動させる。また、カバー2aは、付勢手段の付勢力に抗して前端側を下方に回動させられて、レバー2bが操作されると、係止部材をエンジンフレーム1aに係止される。印字部2は、カバー2aが前端側を上下方向に回動することで、サーマルヘッド21をプラテンローラ14に圧接させ、又は、プラテンローラ14から離間させる。
【0015】
天板2a1の右端部には、調整ネジ部材4を回転自在に支持するための軸受44が、天板2a1を上下方向に貫通して固定されている。調整ネジ部材4は、かさ歯車41を備えて略円板状を呈した頭部42と、頭部42の下面から下方に延びた軸部43とを有した回転体である。軸部43の下端部には、雄ねじ部43aが備えられている。調整ネジ部材4は、頭部42を天板2a1の上側に位置させて軸部43の上端部を軸受44で支持され、天板2a1に対する上下位置を一定に保って、周方向に回転自在とされている。
【0016】
天板2a1の上面には、かさ歯車52を出力軸51に固着されたモータ5が取り付けられている。モータ5は、かさ歯車52を調整ネジ部材4のかさ歯車41に噛み合わせており、制御部6の制御で動作して調整ネジ部材4を回転させる。
【0017】
揺動板7は、サーマルヘッド21の上面に沿って左右方向へ延びる支持板7aと、支持板7aの右縁から上方に延びた後にL字状に屈曲し、支持板7aと平行に左方へ延びた接続片7bとを備えている。
【0018】
図示しないが、揺動板7は、支持板7aの左端部をカバー2aに支持されて、右端側を上下方向に揺動自在とされている。接続片7bの支持板7aと平行に延びた箇所には、ナット71が溶着されている。ナット71には、接続片7bに形成された貫通孔(不図示)を通して、調整ネジ部材4の雄ねじ部43aが螺合されている。
【0019】
支持板7aには、左右方向に所定間隔を置いて配列された複数(図に示す例では3つ)の貫通孔(不図示)が形成されている。各貫通孔には、頭部を支持板7aの上側に位置させて支持ネジ7cが挿通される。貫通孔に挿通された各支持ネジ7cは、圧縮コイルバネ7dを環装されて、ヘッドホルダ22に螺着されている。圧縮コイルバネ7dは、サーマルヘッド21と支持板7aとに挟み込まれて圧縮変形し、支持板7a及びヘッドホルダ22を互いが離間する方向に付勢している。
【0020】
支持ネジ7cのヘッドホルダ22への螺着量を変えることで、支持板7aとサーマルヘッド21との間の距離が調整され、圧縮コイルバネ7dからヘッドホルダ22を介してサーマルヘッド21に加えられる付勢力が変化する。各支持ネジ7cの螺着量を調節することで、支持板7aに対するサーマルヘッド21の左右方向の傾き、及び、サーマルヘッド21とプラテンローラ14とでラベルシートL及びインクリボンRを挟み込む際の挟持力の左右のバランスが調整される。
【0021】
制御部6は、ラベルシートLに貼着されたラベルの種類に応じたサーマルヘッド21の傾倒動作の制御量を表す制御量情報を記憶した記憶部と、印字媒体の種類に応じた制御量情報に基づき、モータ5の動作を制御する動作制御部とを備えている。制御部6は、インターネットを介して又はケーブル線で直接プリンタ1に接続されたPC(パソコン)等の操作で、記憶部に記憶した制御量情報を書き換えられるようになっている。また、上記PC等の操作で、制御部6によるモータ5の動作制御をコントロールできるようになっている。
【0022】
次に、ヘッド圧調整装置3によるヘッド圧の調整動作を説明する。図3は、ヘッド圧調整装置3によるヘッド圧調整動作を説明する図である。
【0023】
ヘッド圧調整装置3は、制御部6(図2参照)の制御でモータ5が出力軸51を回転させると、出力軸51に固着されたかさ歯車52とかさ歯車41を噛み合わせた調整ネジ部材4が周方向に回転する。この回転に伴い、軸部43の雄ねじ部43aがヘッドホルダ22のナット71に対してネジ動作されると、揺動板7は、右端部を上下動させてカバー2aへの支持板7aの支持箇所を支点として揺動する。
【0024】
支持ネジ7cを介して揺動板7と一体化されたヘッドホルダ22は、サーマルヘッド21と共にラベルシートL及びインクリボンRの挟持方向に揺動し、天板2a1に対する左右の傾きを変える。この結果、プラテンローラ14に対するサーマルヘッド21の左右の傾き角が調整される。モータ5の駆動で雄ネジ部43aとナット71とをネジ動作させることで、サーマルヘッド21は、図3(a)に示すように、プラテンローラ14と平行に配置された状態と、図3(b)に示すように右側をプラテンローラ14側に傾けた状態と、図3(c)に示すように右側をプラテンローラ14側と反対側に傾けた状態との間で傾倒動作を行う。
【0025】
このように、本実施形態のプリンタ1によれば、制御部6の制御でモータ5が雄ねじ部43aをナット71に対してネジ動作させることで、プラテンローラ14に対するサーマルヘッド21の傾倒量が調整されることから、ヘッド圧調整装置3を外部に露呈させて手作業で調整を行う手間を省くことができる。従って、ヘッド圧の調整作業を簡略化できる。
【0026】
例えば、図4に示すように、調整ネジ部材4を工具を用いて手作業で回転させる構成をヘッド圧調整装置30が備えている場合には、ヘッド圧調整装置30を外部に露呈させて手作業で調整を行う必要があるが、本実施形態のプリンタ1では、このような手間を省いて、ヘッド圧の調整作業が簡略化される。
【0027】
また、印字に用いるラベルの種類に応じたサーマルヘッド21の傾倒量の調整を、制御部6が記憶部に記憶した制御量情報に基づき行うことから、サービスマンによらずともヘッド圧を調整できるようになり、サービスマンがプリンタ1の設置場所に出向く手間も省ける。
【0028】
また、インターネットを介して又はケーブルで直接プリンタ1に接続されたPCで制御部6を操作することで、制御部6が記憶部に記憶していない細かな調整も行える。また、インターネットを介してプリンタ1に接続されたPCで制御部6を操作することで、サービスマンがプリンタ1の設置場所に出向くことなく、ヘッド圧の調整を行える。
【0029】
上記実施形態では、調整ネジ部材4の雄ねじ部43aを駆動ネジ部、ヘッドホルダ22のナット71を従動ネジ部とした場合について説明した。しかし、調整ネジ部材4の雌ネジ部を駆動ネジ部、ヘッドホルダ22の雄ネジ部を従動ネジ部としてもよい。また、雄ネジ部43aへの回転力の伝達方法は、かさ歯車41同士の噛み合わせである必要はなく任意であり、例えば、モータ5の回転軸の回転を減速させてナット71に伝達してもよい。
【0030】
上記実施形態では、サーマルヘッド21の左端部に設けられた基準位置を各ラベルの左端が通過する構成であるため、サーマルヘッド21を固定するヘッドホルダ22の左端部をカバー2aに揺動自在に支持したが、ヘッドホルダ22の支持位置は、各ラベルの通過する基準位置等に応じて適宜定めることができる。
【0031】
上記実施形態では、ヘッドホルダ22を揺動板7を介してカバー2aに支持した場合について説明したが、ヘッドホルダ22に従動ネジ部を直接設ける構成としてもよい。また、上記実施形態では、揺動板7に対するサーマルヘッド21の姿勢及びサーマルヘッド21の働かせる挟持力を、支持ネジ7cを用いて調整する構成とした場合について説明したが、揺動板7に対するサーマルヘッド21の取付姿勢が固定されていてもよい。
【0032】
なお、制御部6がサーマルヘッド21の傾倒量を変えるためにモータ5を駆動する動作は、プリンタ1の備える操作部に対する操作で行ってもよい。例えば、ラベルの種類を変える度に、新たに印字に用いるラベルの種類を選択画面等を用いて入力させ、その入力結果に基づきサーマルヘッド21の傾倒量の調整を行ってもよい。また、ラベルの種類を検知する検知手段をプリンタ1が備え、この検知手段での検知結果に基づき、サーマルヘッド21の傾倒量の調整を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態のプリンタの構成の概略を示す図である。
【図2】図1に示すプリンタが備えるヘッド圧調整装置の構成の概略を示す図である。
【図3】図2に示すヘッド圧調整装置によるヘッド圧調整動作を説明する図である。
【図4】従来のヘッド圧調整装置の構成の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 プリンタ
14 プラテンローラ
2 印字部
2a カバー
2a1 天板
21 サーマルヘッド
22 ヘッドホルダ
3 ヘッド圧調整装置
4 調整ネジ部材
41 かさ歯車
42 頭部
43 軸部
43a 雄ねじ部
44 軸受
5 モータ
51 出力軸
52 かさ歯車
6 制御部
7 揺動板
7a 支持板
7b 接続片
71 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体とインクリボンとを重ね合わせてプラテンローラとの間に挟み込み、前記インクリボンから前記印字媒体にインクを転写させて印字を行うサーマルヘッドのヘッド圧調整装置であって、
前記印字媒体及び前記インクリボンの挟持方向に前記サーマルヘッドを傾倒可能に支持した支持体と、
前記サーマルヘッドを傾倒させる傾倒手段と、
前記傾倒手段による前記サーマルヘッドの傾倒動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とするヘッド圧調整装置。
【請求項2】
前記制御手段は、印字に用いる印字媒体の種類に応じた前記サーマルヘッドの傾倒動作の制御量を表す制御量情報を記憶した記憶部と、
前記印字媒体の種類に応じた前記制御量情報に基づき、前記傾倒手段の動作を制御する動作制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載のヘッド圧調整装置。
【請求項3】
前記傾倒手段は、前記支持体に回転自在に支持されて駆動ネジ部を備えた回転体と、
前記サーマルヘッドと一体化されて前記駆動ネジ部と螺合する従動ネジ部と、
前記回転体に回転力を付与して前記駆動ネジ部と前記従動ネジ部とをネジ動作させる駆動手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッド圧調整装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のヘッド圧調整装置を備えることを特徴とするプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate