説明

ヘッド清掃部を有するプリンタ

【課題】液体を噴射するノズル孔を、大量の液体を用いることなく、効率的に清掃することのできる、ヘッド清掃部を備えたプリンタを提供すること。
【解決手段】本発明にかかるプリンタは、液体を噴射するノズル孔120が設けられた噴射面140を有する液体噴射ヘッド100と、噴射面140に接触して移動する払拭部200、払拭部200を噴射面140に沿って移動させる動作機構300、および動作機構300を駆動する超音波モータ400を含む払拭ユニット510を複数有するヘッド清掃部500と、を含み、ノズル孔120は、払拭部200が噴射面140と接触する領域内に設けられ、超音波モータ400は、伸縮および屈曲振動するアクチュエータ部420と、アクチュエータ部420の一端から延びる突起部と、突起部の先端に接触して該先端の振動により回転するロータ部460とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド清掃部を備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェットプリンタのように、紙等の媒体に液体を噴射して塗布する液体吐出装置には、液体を噴射するノズルの目詰まりを清掃等により防止する機能が備えられることが多い。例えば、特開2002−086743号公報には、記録ヘッドのノズル形成面をワイピング部材が回転しながら摺接するインクジェット式記録装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−086743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、液体を噴射するノズルは、狭い間隔で配置されることが望まれており、目詰まりを防止する機構に対しても、より小型化することが求められている。また、従来のワイピング機構等では、ヘッドのノズルが密に配置されると、これに適用できるほど小型化することが難しい。たとえば、ヘッドに設けられた全てのノズルを一度に清掃する方式を採っていた。したがって、ノズルの清掃のために液体を用いる場合は、大量に液体を消費してしまい、液体の無駄使いとなってしまうことがあった。
【0004】
本発明の目的の1つは、液体を噴射するノズル孔を、効率的に清掃することのできるヘッド清掃部を備えたプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるプリンタは、
液体を噴射するノズル孔が設けられた噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記噴射面に接触して移動する払拭部、前記払拭部を前記噴射面に沿って移動させる動作機構、および前記動作機構を駆動する超音波モータを含む払拭ユニットを複数有するヘッド清掃部と、
を含み、
前記ノズル孔は、前記払拭部が前記噴射面と接触する領域内に設けられ、
前記超音波モータは、
伸縮および屈曲振動するアクチュエータ部と、前記アクチュエータ部の一端から延びる突起部と、前記突起部の先端に接触して該先端の振動により回転するロータ部とを有する。
【0006】
このようなプリンタは、液体を噴射するノズル孔を、効率的に清掃することのできるヘッド清掃部を備えている。そして、このヘッド清掃部は、超音波モータを駆動源としており、回転軸の方向の厚みが薄く、小型の液体噴射ヘッドに対応することができる。
【0007】
本発明にかかるプリンタにおいて、
前記液体噴射ヘッドは、前記払拭ユニットに対応して、前記噴射面を複数有することができる。
【0008】
本発明にかかるプリンタにおいて、
前記噴射面には、前記ノズル孔を複数設けることができる。
【0009】
本発明にかかるプリンタにおいて、
前記動作機構は、ラックおよびピニオンを有することができ、
前記払拭部は、前記ラックに備えられることができる。
【0010】
本発明にかかるプリンタにおいて、
前記動作機構は、さらに、変速歯車を有することができる。
【0011】
本発明にかかるプリンタにおいて、
複数の前記払拭ユニットは、各々が独立して動作することができる。
【0012】
このようなプリンタは、各払拭ユニットが独立して動作できるため、大量の液体を用いることなく効率的にノズル孔を清掃することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例として説明するものである。
【0014】
本実施形態にかかるプリンタ600は、液体噴射ヘッド100と、ヘッド清掃部500と、を含む。以下、液体噴射ヘッド100、ヘッド清掃部500およびプリンタ600の順に説明する。
【0015】
1.液体噴射ヘッド
図1は、本実施形態のプリンタ600に含まれる液体噴射ヘッド100およびヘッド清掃部500を模式的に示す正面図である。図2は、本実施形態のプリンタ600に含まれる液体噴射ヘッド100およびヘッド清掃部500を模式的に示し、図1において符号Aの部位を下方から見た側面図である。なお、液体噴射ヘッド100は、常に図示の位置に配置されるわけではなく、ノズル孔120の目詰まり等の状況に応じて、図示のようなヘッド清掃部500との位置関係に配置されるものである。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施形態で用いられる液体噴射ヘッド100は、液体を吐出するノズル孔120が設けられた噴射面140を有する。液体噴射ヘッド100は、噴射面140を有するかぎり任意である。液体噴射ヘッド100は、液体室、液体タンク、液体カートリッジ、液体流路など、他の構成を含んでいてもよい。液体噴射ヘッド100は、たとえば、インクジェット式記録装置に一般的に用いられるヘッドであり、紙等の媒体に対して、ノズル孔120からインクを噴射し、塗布することができる。インクジェット式記録装置の場合、噴射面140は、紙等の媒体に面して走査できるような平面状の形状であることが好ましい。噴射面140は、後述するヘッド清掃部500の払拭部200が接触しながら移動できる形状であれば平面である必要はない。図示の例では噴射面140は平面状に描いてある。噴射面140の材質は、たとえば、ステンレス、シリコン、酸化シリコンなどで形成されることができる。
【0017】
噴射面140には、ノズル孔120が設けられている。1つの噴射面140に対してノズル孔120は複数設けられることができる。図1の例では、1つの噴射面140に3つのノズル孔120が設けられている。ノズル孔120の配置は、噴射面140の範囲内に設けられ、後述の払拭部200が接触できる範囲に設けられるかぎり任意である。ノズル孔120は、液体を通過させることができる。複数のノズル孔120を設けた場合、各々のノズル孔120から、異なる液体を噴射するようにすることもできる。ノズル孔120の形状は、図示の例では円形の開口を有しているが、任意に設計することができる。ノズル孔120から噴射される液体は、流動性を有するものであれば特に限定されない。液体としては、水系、有機溶媒系を問わず、たとえば、インク、エマルション、分散体などが挙げられる。
【0018】
2.ヘッド清掃部
図1および図2に示すように、本実施形態で用いられるヘッド清掃部500は、払拭ユニット510を複数有する。図1に例示したヘッド清掃部500は、払拭ユニット510を3つ有している。
【0019】
払拭ユニット510は、払拭部200、動作機構300、および超音波モータ400を含む。払拭ユニット510は、ノズル孔120の数に対応して1つずつ設けられていても、複数のノズル孔120の組に対して1つずつ設けられていてもよい。図1の例では、払拭ユニット510は、3つのノズル孔120に対して1つずつ設けられており、ヘッド清掃部500は3つの払拭ユニット510から構成されている。
【0020】
払拭部200は、液体噴射ヘッド100とヘッド清掃部500とが、図1および図2のように配置されたときに、動作機構300によって噴射面140に沿って移動できる部材である。図1および図2の例では、払拭部200は、動作機構300のラック350の先端付近に固定されている。これにより、動作機構300が動作したとき、払拭部200が噴射面140を滑走し、ノズル孔120を払拭することができる。払拭部200の形状は、特に限定されず、図示のように湾曲した板状の形状であってもよい。払拭部200は、噴射面140に接触しながら移動する。そのため、噴射面140は、払拭部200が接触する領域(接触領域142)を有する。払拭部200は、接触領域142内にノズル孔120が入るように配置される。払拭部200は、ノズル孔120の目詰まりや汚れを、掻き取る、擦り取る、または拭き取る機能を有する。この場合、対象となるノズル孔120から液体を噴射させながら、または、噴射させた後に拭き取ると、清掃の効果を高くすることができる(詳細は後述する。)。払拭部200の材質は、たとえば、クロロプレンゴムやオレフィン系エラストマーなどのエラストマーや、可とう性を有する材料を用いることができる。
【0021】
動作機構300は、払拭部200を噴射面140に沿って移動させる機構である。動作機構300は、超音波モータ400の回転運動を払拭部140の直線運動に変換する機構である。動作機構300としては、ラックアンドピニオン機構、クランク機構、カム機構、ウオーム・ラック機構等を用いることができる。動作機構300は、複数の払拭ユニット510を近接して設置できるようなものが好ましい。そのため、超音波モータ400の回転軸の方向に直交する方向に直線運動の方向を有するものが好ましい。上記した機構のうち、動作機構300は、簡易かつ省スペースに向くものとして、ラックアンドピニオン機構がより好ましい。図1および図2の例では、動作機構300は、ラックアンドピニオン機構を採用しており、ラック350およびピニオン340を有する。そして、ピニオン340は、超音波モータ400のロータ460の回転軸464に設けられている。このような動作機構300により、超音波モータ400の駆動に従って、ラック350を直線動作させ、払拭部200を噴射面140に接触させながら、図2中、滑走方向Rの方向に滑走させることができる。動作機構300は、必要に応じて、図示のような固定板330、ガイドピン310などを有することができる。
【0022】
ラック350は、ラックアンドピニオン機構のラックである。ラック350は、長手方向に往復動作することができる。図2の例では、ラック350は、平面的に見て内側に長円形の開口部を有する板状の形状を有し、枠から該開口部へ向かってピニオン340とのかみ合わせが可能な凹凸(直線歯)が形成されている。ラック350の形状は、図示のような形状には限定されず、強度等が保てる限り自由に設計することができる。ラック350の厚みは、強度等が保てる限り自由に設計することができるが、払拭ユニット510の厚みを大きくしすぎないように薄いものとすることが望ましい。ラック350の材質は、特に限定されない。
【0023】
ピニオン340は、ラック350の歯と噛み合う歯車の形状を有する。ピニオン340の回転により、ラック350は、直線運動をすることができる。図1および図2の例では、ピニオン340は、超音波モータ400の回転軸464に設けられている。ピニオン340の材質は、特に限定されない。ピニオン340およびラック350が有する歯は、上記のような動作が可能であれば、形状、ピッチなど特に限定されない。
【0024】
本実施形態で用いる超音波モータは、払拭ユニット510の厚みを小さく抑えるために、回転の軸の方向に薄い形状を有するものが望ましい。このような超音波モータの一例として、以下に示すような超音波モータ400がある。なお、本実施形態で用いる超音波モータは、以下に述べる超音波モータ400の構成に限定されない。
【0025】
図3は、超音波モータ400を模式的に示す平面図である。図4は、超音波モータ400を模式的に示す断面図である。図3のA−A線の断面が図4に相当する。
【0026】
超音波モータ400は、アクチュエータ部420と、突起部440と、ロータ部460とを有する。超音波モータ400は、動作機構300を駆動することができる。
【0027】
アクチュエータ部420は、図3および図4に示すように、振動板422と、2つの圧電体層424,424’と、2つの縦振動用電極426a,426a’と、8つの屈曲振動用電極426b,426c,426d,426e,426b’,426c’,426d’,426e’と、を有する。図4に示すように、アクチュエータ部420は、振動板422の板面を鏡面として、上下に対称な構成である。したがって、以下では、振動板422から上側の構成について詳細に説明し、振動板422より下側の構成については、詳細な説明を省略する。
【0028】
アクチュエータ部420は、平面視において略長方形となっている(図3参照)。図3および図4では、左右方向に長手方向を有するように描いてある。振動板420の厚さは、たとえば0.1μmないし200μmとすることができる。図示の例では、突起部440は、アクチュエータ部420の振動板422に一体的に設けられている(図4参照)。アクチュエータ部420は、ロータ部460の外周面に突起部440の先端442を接して、振動板422の振動をロータ部460の回転に変換できるように設けられている。振動板422は、圧電体層424に接しており、該圧電体層424の伸縮にともなって伸縮および屈曲運動が可能である。振動板422は、接触する圧電体層424に電力を供給するように導電性を有する物質で構成されることができる。また振動板422は、導電性を有さない物質で構成されてもよく、このような場合は、振動板422と圧電体層424との間に電力を供給するための電極を別途設けることができる。振動板422の材質としては、たとえば、ステンレス鋼を用いることができる。
【0029】
圧電体層424は、振動板422の上に設けられる。圧電体層424は、電圧が印加されることにより伸縮することができる。圧電体層424の伸縮の方向は、印加する電圧の極性や、圧電体層424を分極させる方向により任意に設計することができる。圧電体層424の厚さは、たとえば0.1μmないし200μmとすることができる。図3および図4の例では、4つの屈曲振動用電極426b〜426eを配しているため、圧電体層424は、単層で一方向に分極処理されている。この例では、各電極に印加する電圧の極性によってそれぞれの電極に対応する部位の圧電体の伸縮を行うことができる。圧電体層424は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O)などの圧電材料から形成されることができる。
【0030】
縦振動用電極426aは、圧電体層424の上に設けられる。縦振動用電極426aは、振動板422すなわちアクチュエータ部420を長手方向に伸縮するための電力を供給するために設けられる。
【0031】
屈曲振動用電極426b〜426eは、圧電体層424の上に設けられる。屈曲振動用電極426b〜426eは、縦振動用電極426aと電気的に絶縁されている。屈曲振動用電極426b〜426eは、振動板422すなわちアクチュエータ部200を屈曲振動させるための電力を供給するために設けられる。このような振動は、たとえば、屈曲振動用電極426cと屈曲振動用電極426eに互いに極性が反対になるような電圧を印加することによって可能である。このようにすれば一方の電極の下の圧電体がアクチュエータ部420の長手方向に伸張したときに、他方の電極の下の圧電体が同方向に収縮するため、収縮する側を内側としてアクチュエータ部420が屈曲するような動作が可能となる。このような電圧の組み合わせを交番して印加することで、アクチュエータ部420は、長手方向に垂直な方向の屈曲振動が可能となる。図示の例では屈曲振動用電極426b〜426eが4つ配置されているが、以上のような機能を有する限り、当該電極の数、配置および形状は任意に設計できる。また、この例では、電極の配置によって屈曲および伸縮を生じさせるが、そのほかに、圧電体層424の分極の配置を利用して屈曲および伸縮を生じさせる方法もある。
【0032】
縦振動用電極426a、屈曲振動用電極426b〜426eは、たとえば白金などの金属材料やランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO)などの導電性酸化物からなることができ単層でも多層構造でもよい。これらの電極の厚さは、十分に低い電気抵抗値が得られる厚さであれば良く、たとえば10nmないし5μmとすることができる。
【0033】
アクチュエータ部420は、各電極から印加される電圧の極性に従って、屈曲および伸縮することができる。各電極に印加する電圧の極性を特定の周波数で交番させるため、アクチュエータ部420は、屈曲振動と伸縮振動(縦振動)とを同時に発生させることができる。このような振動の組み合わせにより、突起部440の先端442の軌跡を楕円状にすることができる。さらにこの楕円状の振動は、印加する交流の周波数、電圧および位相などを調節することで、所望の態様を得ることができる。各電極に印加する交流の周波数は、アクチュエータ部420と突起部440を含む振動系全体の共振周波数付近であると超音波モータ400の駆動の効率を高めることができる。
【0034】
アクチュエータ部420は、突起部440と一体的に運動する。突起部440は、アクチュエータ部420(振動板422)の動きに伴って、その先端が楕円状の軌跡を描くように振動することができる。そして、この振動によって、ロータ部460の側面は接触したときの動作の方向に突き動かされ、ロータ部460が回転軸464の周りに回転する。ロータ部460の回転方向および回転速度は、上述したようにアクチュエータ部420に入力する交流電圧の周波数、電圧および位相などを変化させることで調節することができる。なお、以上の説明は、振動板422よりも上側の部材についてのみ説明したが、下側にも同様の機能を有する部材が設けられており、適宜協働させて上記の動作を行うことができる。
【0035】
アクチュエータ部420は、動作機構300の固定板330等に固定できるように固定突起428を有する。固定突起428は、アクチュエータ部420を支持するとともにロータ部460に突起部440を押しつけるように保持するために設けられる。固定突起428は、たとえば、アクチュエータ部420の振動板422と一体的に形成されていてもよい。固定突起428は、固定治具320によって、固定板330にアクチュエータ部420を固定している。固定突起428の材質としては、たとえば、ステンレス鋼が好ましい。また固定突起428と振動板422は、異なる材質であっても良い。
【0036】
突起部440は、アクチュエータ部420の長手方向の一端から延びるように設けられる。図3および図4の例では、突起部440は、アクチュエータ部420の振動板422に一体的に形成されている。突起部440は、振動板422とは別の部材として設けられていてもよい。アクチュエータ部420から突起部440が延びる方向は、本実施形態の場合アクチュエータ部420の長手方向と一致しているが、これに限定されず、長手方向から外れた方向であってもよい。
【0037】
ロータ部460は、その外周面が、アクチュエータ部420の突起部440と当接するように設けられる。ロータ部460は、回転の中心軸464を中心として回転自在に設けられる。ロータ部460は、外周面が、振動する突起部440の先端442によって蹴られることによって中心軸周りにモーメントを生じて回転駆動される。ロータ部460は、円柱状の形状であっても良いし、図示の例のように回転軸464に輪軸として機能する円盤466を設けた形状であってもよい。ロータ部460の回転は、超音波モータ400の機械的な出力となる。ロータ部460の材質は、摩耗しにくいものであることが好ましい。
【0038】
払拭ユニット510は、上述した払拭部200、動作機構300、および超音波モータ400を含む。払拭ユニット510は、機械的に干渉しないように複数個が積層される。図1の例では、ヘッド清掃部500は、払拭ユニット510が3個重なり配置されている。複数の払拭ユニット510は、それぞれ独立に動作することができる。図1には、払拭ユニット510が独立して動作する一例として、中央のユニットの払拭部200が他のユニットの払拭部200と異なる位置に移動されている様子を示した。
【0039】
以上説明したヘッド清掃部500は、超音波モータ400を駆動源としている。超音波モータ400は、回転軸464の方向の厚みが非常に薄い。そのため、払拭ユニット510を極めて薄く構成することができる。本実施形態の払拭ユニット510は、極めて薄く構成されるため、これを積層したヘッド清掃部500は、隣り合う払拭部200の間の間隔を非常に小さくすることができる。これにより、液体噴射ヘッド100にノズル孔120が高密度に配置された場合に、ノズル孔120の間隔に対応して払拭部200を設けることができる。
【0040】
また、上述のヘッド清掃部500は、各払拭ユニット510を独立して動作させることができるため、目詰まり等を起こした所望のノズル孔のみを清掃することができる。よって、清掃に要する時間を削減することができる。また、ノズル孔120を清掃する際に、液体を使用する場合において、清掃の対象となるノズル孔120のみから液体を噴射するだけで済むため、清掃のために必要な液体の吐出量を著しく削減することができる。
【0041】
3.プリンタ
次に上述した液体噴射ヘッド100およびヘッド清掃部500を有するプリンタ600について説明する。ここでは、本実施形態に係るプリンタ600がインクジェットプリンタである場合について説明する。
【0042】
図5は、本実施形態に係るプリンタ600を概略的に示す斜視図である。プリンタ600は、ヘッドユニット630と、駆動部610と、ヘッド清掃部500と、制御部660と、を含む。また、プリンタ600は、装置本体620と、給紙部650と、記録用紙Pを設置するトレイ621と、記録用紙Pを排出する排出口622と、装置本体620の上面に配置された操作パネル670と、を含むことができる。
【0043】
ヘッドユニット630は、上述した液体噴射ヘッド100(図中、Hと符号を付した。)から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット630は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ631と、ヘッドおよびインクカートリッジ631を搭載した運搬部(キャリッジ)632と、を備える。
【0044】
駆動部610は、ヘッドユニット630を往復動させることができる。駆動部610は、ヘッドユニット630の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット630を往復動させる往復動機構642と、を有する。
【0045】
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸644と、キャリッジガイド軸644と平行に延在するタイミングベルト643と、を備える。キャリッジガイド軸644は、キャリッジ632が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ632を支持している。さらに、キャリッジ632は、タイミングベルト643の一部に固定されている。キャリッジモータ641の作動により、タイミングベルト643を走行させると、キャリッジガイド軸644に導かれて、ヘッドユニット630が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0046】
ヘッド清掃部500は、往復動機構642によってヘッドユニット630が移動することによってヘッドユニット630とヘッド清掃部500とが、接触できるような位置に配置される。ヘッドユニット630の液体噴射ヘッド100のノズル孔120が目詰まりを生じたときなどに、ヘッドユニット630は、ヘッド清掃部500の払拭部200と噴射面140とが接触可能な位置に移動される。そして、ヘッド清掃部500および液体噴射ヘッド100を制御部660が適切に動作させることによって、所望の払拭動作を行わせ、任意のノズル孔120を清掃することができる。
【0047】
制御部660は、ヘッドユニット630、駆動部610、ヘッド清掃部500および給紙部650を制御することができる。
【0048】
給紙部650は、記録用紙Pをトレイ621からヘッドユニット630側へ送り込むことができる。給紙部650は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652と、を備える。給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラ652aおよび駆動ローラ652bを備える。駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されている。
【0049】
ヘッドユニット630、ヘッド清掃部500、駆動部610、制御部660、および給紙部650は、装置本体620の内部に設けられている。
【0050】
なお、上述した例では、プリンタ600がインクジェットプリンタである場合について説明したが、本発明のプリンタは、工業的な液滴吐出装置として半導体の製造工程に用いられることができる。本発明のプリンタは、商業用途として、紙以外の媒体へ液体を塗布する用途に用いられることもできる。
【0051】
本実施形態のプリンタ600は、液体を噴射するノズル孔120を、効率的に清掃することのできるヘッド清掃部500を備えている。そして、このヘッド清掃部500は、超音波モータ400を駆動源としており、回転軸464の方向の厚みが非常に薄い。そのため、本実施形態のプリンタ600は、小型の液体噴射ヘッド100を有することができ、しかも、液体を噴射させてノズル孔120を清掃する場合には、大量の液体を用いることなくノズル孔120を清掃することができる。
【0052】
4.変形例
本実施形態では、多くの変形が可能である。その変形例について以下に図面を用いて説明する。図6は、本変形例の液体噴射ヘッド150およびヘッド清掃部550を模式的に示す正面図である。図7は、本変形例の液体噴射ヘッド150およびヘッド清掃部550を模式的に示し、図6において符号Aの部位を下方から見た側面図である。なお、液体噴射ヘッド150は、ノズル孔120の目詰まり等の状況に応じて、図示のようなヘッド清掃部550との位置関係に配置されるものである。
【0053】
まず、液体噴射ヘッドの変形例について述べる。図6に示すように、本変形例の液体噴射ヘッド150は、噴射面140を複数有し、液体を吐出するノズル孔120が1つの噴射面140に複数設けられる以外は、上述した液体噴射ヘッド100と同様である。噴射面140およびノズル孔120のそれぞれの個数は、任意に設計することができる。図6の例では、1つの噴射面140に5つのノズル孔120が設けられている。そして、噴射面140が3つ平行に配列されている。
【0054】
本実施形態において、本変形例の液体噴射ヘッド150のような、噴射面140およびノズル孔120が高密度に設けられたものとすることができる。このような液体噴射ヘッド150は、ヘッド清掃部500によって噴射面140ごとにノズル孔120の列を清掃することができる。そして、本実施形態のヘッド清掃部は、払拭ユニットの間隔が狭いため、ノズル孔120および噴射面140の間隔を狭く配置しても、十分に液体噴射ヘッド150のノズル孔120を、少量の液体を用いて短時間に効率的に清掃するという効果を得ることができる。
【0055】
次に、ヘッド清掃部の変形例について述べる。図6および図7に示すように、本変形例のヘッド清掃部550は、上述のヘッド清掃部500の動作機構300において、さらに変速歯車360を有する以外は、上述のヘッド清掃部500と同様の構成である。したがって、動作機構300の変速歯車360以外の構成については詳細な説明を省略する。
【0056】
本変形例の動作機構300は、ラックアンドピニオン機構であるが、図6および図7に示すように、ピニオン340とラック350との間に、動力を伝達する変速歯車360を有する。図示のように、超音波モータ400の回転運動は、回転軸464に設けられた輪軸468の外周面469に接する変速歯車360の外周面362に伝達され、変速歯車360の回転軸364に取り付けられたピニオン340を回転させる。そしてピニオン340の回転により、ラック350が直線動作する。輪軸468は、必要に応じて設けることができる。このような変速歯車360を有すると、超音波モータ400の駆動に従って動作するラック350の速度および動作時の力を変化させることができる。図示の例では、超音波モータ400の回転を変速歯車360によって減速して、ラック350に伝達するようになっている。このようにすれば、ラック350が噴射面140を滑走する際の速度を小さくでき、かつ、滑走するときの力を大きくすることができる。これにより、ノズル孔120の目詰まりや汚れを、掻き取る、擦り取る、または拭き取る力を大きくすることができる。したがって、このような変形例のヘッド清掃部550を備えたプリンタは、より粘度の大きい液体に適用することができる。変速歯車360は、複数設けてもよく、超音波モータ400の回転数やトルクに従って自由に設計することができる。
【0057】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態の液体噴射ヘッドおよびヘッド清掃部を模式的に示す正面図。
【図2】実施形態の液体噴射ヘッドおよびヘッド清掃部を模式的に示す側面図。
【図3】実施形態にかかる超音波モータを模式的に示す平面図。
【図4】実施形態にかかる超音波モータを模式的に示す断面図。
【図5】実施形態にかかるプリンタ600を模式的に示す斜視図。
【図6】変形例の液体噴射ヘッドおよびヘッド清掃部を模式的に示す正面図。
【図7】変形例の液体噴射ヘッドおよびヘッド清掃部を模式的に示す側面図。
【符号の説明】
【0059】
100 液体噴射ヘッド、120 ノズル孔、140 噴射面、142 接触領域、
200 払拭部、300 動作機構、310 ガイドピン、320 固定治具、
330 固定板、340 ピニオン、350 ラック、360 変速歯車、
362 外周面、364 回転軸、400 超音波モータ、420 アクチュエータ部、
422 振動板、424 圧電体層、426a〜426e 電極、428 固定突起、
440 突起部、442 先端、460 ロータ部、462 外周面、464 回転軸、
466 円盤、468 輪軸、469 外周面、500,550 ヘッド清掃部、
510,560 払拭ユニット、圧電体層、600 プリンタ、610 駆動部、
620 装置本体、621 トレイ、622 排出口、630 ヘッドユニット、
631 インクカートリッジ、632 キャリッジ、641 キャリッジモータ、
642 往復動機構、643 タイミングベルト、644 キャリッジガイド軸、
650 給紙部、651 給紙モータ、652 給紙ローラ、660 制御部、
670 操作パネル、R 滑走方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル孔が設けられた噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記噴射面に接触して移動する払拭部、前記払拭部を前記噴射面に沿って移動させる動作機構、および前記動作機構を駆動する超音波モータを含む払拭ユニットを複数有するヘッド清掃部と、
を含み、
前記ノズル孔は、前記払拭部が前記噴射面と接触する領域内に設けられ、
前記超音波モータは、
伸縮および屈曲振動するアクチュエータ部と、前記アクチュエータ部の一端から延びる突起部と、前記突起部の先端に接触して該先端の振動により回転するロータ部とを有する、プリンタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記液体噴射ヘッドは、前記払拭ユニットに対応して、前記噴射面を複数有する、プリンタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記噴射面には、前記ノズル孔が複数設けられている、プリンタ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、
前記動作機構は、ラックおよびピニオンを有し、
前記払拭部は、前記ラックに備えられている、プリンタ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
前記動作機構は、さらに、変速歯車を有する、プリンタ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、
複数の前記払拭ユニットは、各々が独立して動作する、プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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