説明

ヘモグロビン類の測定方法

【課題】ヘモグロビン類を短時間で高精度に測定することができ、かつ、カラム寿命を向上させることのできるヘモグロビン類の測定方法を提供する。
【解決手段】カラム充填剤を充填したカラムに溶離液を送液する液体クロマトグラフィーによってヘモグロビン類を測定する方法において、1分子中にスルホン酸基を1個以上含む単量体10〜200重量部、スルホン酸基を有さず、1分子中に水酸基を1個以上有する架橋性単量体5〜100重量部、及び、スルホン酸基及び水酸基を有さない架橋性単量体100重量部を構成単位とする重合体からなる粒子を前記カラム充填剤として用い、かつ、測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上、9.8×10Pa未満に設定するヘモグロビン類の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィーを用いた、ヘモグロビン類の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査の分野においては、糖尿病の診断を目的としてヘモグロビンA1cの測定が汎用的に行なわれている。ヘモグロビンA1cは、液体クロマトグラフィー、免疫法、酵素法等により測定されているが、なかでも液体クロマトグラフィーは精度が良く、短時間で測定できるため、特に糖尿病患者のヘモグロビンA1c値の管理に用いられている。この用途では、測定値のCV値(%)が1%以下程度の精度が要求される。
【0003】
液体クロマトグラフィーによりヘモグロビンA1cを測定する際、ヘモグロビンA1cを短時間で高精度に測定するための、カラム充填剤に必要な要件の1つは、ヘモグロビンA1cと他のヘモグロビン類との分離性能が良いことである。
分離性能が悪いと、他のヘモグロビン類の影響を受けやすいため、クロマトグラムの形状が変化しやすく、ヘモグロビンA1c値の測定精度が低下する。
【0004】
高い分離性能を得るための一般的な手段は、カラム充填剤粒子の粒径を小さくし、より均一にすることである。例えば特許文献1には、粒径が3〜4μmの微小な充填剤を用いてヘモグロビン類を測定する方法が開示されている。しかしその結果、測定系にかかる圧力は5MPa以上と大きくなる。
【0005】
そのため、使用する液体クロマトグラフは高い耐圧性能が必要になり、高価で複雑な機構となる。また、測定系に常時高圧がかかる場合、長期間使用した場合の配管系の詰まりや劣化、カラム寿命の短縮等の弊害をもたらす。ヘモグロビンA1cの測定のような多数の検体を測定する項目においては、カラム寿命はコストに直接影響を及ぼすため、短期間で測定精度が低下するカラムは実用上使用できない。
【0006】
また測定系に生じる圧力は低いほど有利であると考えられるが、低すぎる場合においても、送液が不安定になり、測定時間が延長する等の欠点が生じる。測定系に生じる圧力値と、分離性能やカラム寿命の詳細な関係はほとんど検討されていない。
【0007】
臨床検査の現場においては、より安価なシステムで、ヘモグロビンA1c等のヘモグロビン類を、短時間で高精度に測定したいという強い要望がある。またヘモグロビン類を測定するための、液体クロマトグラフィーに用いられるカラム充填剤に対しては、より高い分離性能とより長いカラム寿命が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−005730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ヘモグロビン類を短時間で高精度に測定することができ、かつ、カラム寿命を向上させることのできるヘモグロビン類の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カラム充填剤を充填したカラムに溶離液を送液する液体クロマトグラフィーによってヘモグロビン類を測定する方法において、1分子中にスルホン酸基を1個以上含む単量体10〜200重量部、スルホン酸基を有さず、1分子中に水酸基を1個以上有する架橋性単量体5〜100重量部、及び、スルホン酸基及び水酸基を有さない架橋性単量体100重量部を構成単位とする重合体からなる粒子を上記カラム充填剤として用い、かつ、測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上、9.8×10Pa未満に設定するヘモグロビン類の測定方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定において、測定精度が最も向上する圧力範囲を見出し、かつ、該圧力範囲における測定を安定して維持することにより、カラム寿命を延長させることができることを見出した。
また、低い圧力で精度の高い測定を行うためには、低い圧力で高い分離性能を有するカラム充填剤を用いる必要がある。更に、測定系に生じる圧力を特定の低く狭い範囲で維持するためには、カラムの圧力を安定化させる必要がある。本発明者は、特定の組成を有するカラム充填剤を用いることにより、高い分離性能を維持したまま、測定系の圧力値を上記圧力範囲内に安定させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明のヘモグロビン類の測定方法(以下、本発明方法ともいう)では、測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上、9.8×10Pa未満となるように設定する。
なお、本発明でいう「測定系に生じる圧力値(以下、単に圧力値ともいう)」とは、クロマトグラフィーの流路系において、カラムを含む、送液ポンプ以降の配管系流路全体により発生する圧力値を意味する。具体的には例えば、送液ポンプとカラムとの間に接続した圧力計から上記圧力値を読み取ることにより測定できる。
【0013】
上記圧力値が9.8×10Pa未満になるように設定した場合は、ヘモグロビン類の測定値の精度が低下したり、測定時間が長くなったりする。また、圧力値が非常に小さいため、圧力値の制御が困難となる。上記圧力値が9.8×10Pa以上になるように設定した場合は、測定精度が低下し、カラム寿命が短くなる。
本発明方法では、以下のカラム充填剤を用いることにより、分離性能を悪くしたり、測定時間を長くしたりすることなく、上記圧力値を9.8×10Pa未満と極めて小さな値にできる。
【0014】
本発明方法に用いられるカラム充填剤は、1分子中にスルホン酸基を1個以上含む単量体(以下、単量体(A)ともいう)10〜200重量部、スルホン酸基を有さず、1分子中に水酸基を1個以上有する架橋性単量体(以下、単量体(B)ともいう)5〜100重量部、及び、スルホン酸基及び水酸基を有さない架橋性単量体(以下、単量体(C)ともいう)100重量部を重合して得られる架橋重合体粒子より構成される。以下、単量体(A)、単量体(B)、及び、単量体(C)について説明する。
【0015】
上記単量体(A)としては、例えば、1分子中に1個以上のスルホン酸基と1個以上のビニル基を有する単量体等が挙げられる。具体的には例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体類、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(3−スルホプロピル)−イタコン酸、及び、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(3−スルホプロピル)−イタコン酸の誘導体等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸誘導体類等のアクリル系単量体であることが好ましい。また、上記単量体(A)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において「アクリル系」とは、アクリル基又はメタクリル基を有することを意味する。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリルレート又はメタクリレート」であることを示し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸又はメタクリル酸」であることを示す。
【0016】
上記単量体(A)の添加量は、上記単量体(C)100重量部に対して、下限が10重量部、上限が200重量部である。上記単量体(A)の添加量が10重量部未満であると、得られる重合体のイオン交換容量が小さく、ヘモグロビン類との充分なイオン交換反応が行われないため、分離性能が悪くなる。上記単量体(A)の添加量が200重量部を超えると、重合中に凝集が発生して粒子状の重合体が得られにくくなったり、重合体粒子の耐圧性が低下し、測定中に膨潤や収縮が起きて測定精度が低下しやすくなったりする。上記単量体(C)100重量部に対する上記単量体(A)の添加量の好ましい下限は15重量部、好ましい上限は180重量部である。
【0017】
上記単量体(B)としては、例えば、1分子中に1個以上の水酸基と2個以上のビニル基を有する単量体等が挙げられる。なかでも、上記単量体(B)は、アクリル系単量体であることが好ましく、下記式(1)に示す単量体であることがより好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式(1)中、Rは直鎖部の炭素原子数が1〜10の整数であって、水素原子が1個以上の水酸基で置換されているアルキレン基、又は、直鎖部の炭素原子数と酸素原子数の和が2〜10の整数であって、水素原子が1個以上の水酸基で置換されているオキサアルキレン基を表す。式中Rは、水素原子及びメチル基を表す。
なお、上記アルキレン基は、直鎖パラフィン炭化水素の両端の炭素原子から水素原子各1個を除いた2価の基を示す。また、上記オキサアルキレン基は、上記アルキレン基の少なくとも1つのメチレン基を酸素原子に置換してエーテル結合としたものを示す。
【0020】
上記式(1)で表される単量体(B)としては、具体的には例えば、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリルロキシプロパン、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−5−メチル−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,11−ジ(メタ)アクリロキシ−4,8−ジオキサウンデカン−2,6,10−トリオール等が挙げられる。
上記単量体(B)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記単量体(B)の添加量は、上記単量体(C)100重量部に対して、下限が5重量部、上限が100重量部である。上記単量体(B)の添加量が5重量部未満であると、得られた重合体粒子に試料中のタンパク質等の成分が非特異吸着を抑制する効果が充分に得られなくなる。上記単量体(B)の添加量が100重量部を超えると、重合中に凝集が発生して粒子状の重合体が得られにくくなったり、重合体粒子の耐圧性が低下し、測定中に膨潤や収縮が起きて測定精度が低下したりする。上記単量体(C)100重量部に対する上記単量体(B)の添加量の好ましい下限は7重量部、好ましい上限は90重量部である。
【0022】
上記単量体(C)は、上記単量体(A)及び上記単量体(B)に含まれるものを除く、1分子中にビニル基を2個以上有する単量体である。上記単量体(C)は、イオン交換基を有さない単量体、又は、イオン交換基を有していても微量である単量体であって、単量体(A)及び単量体(B)よりも疎水性であるものが好ましい。また、上記単量体(C)は、アクリル系単量体であることがより好ましい。
【0023】
上記単量体(C)としては、具体的には例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)−ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ウレタン(メタ)ジアクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−5−メチル−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,11−ジ(メタ)アクリロキシ−4,8−ジオキサウンデガン−2,6,10−トリオール等が挙げられる。
上記分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記単量体(C)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記カラム充填剤は、上記単量体(A)、上記単量体(B)、及び、上記単量体(C)以外に、必要に応じてスルホン酸基を有さない非架橋性単量体(以下、単量体(D)ともいう)を構成単位の一部として用いてもよい。上記単量体(D)は、アクリル系単量体であることが好ましく、親水性の非架橋性アクリル系単量体であることがより好ましい。
上記単量体(D)としては、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸アルキル類、水酸基を有する非架橋性アクリル系単量体等が挙げられる。
【0025】
上記(メタ)アクリル酸アルキル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0026】
上記水酸基を有する非架橋性アクリル系単量体としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、その他の水酸基を有する(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記その他の水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記単量体(D)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記単量体(D)を用いる場合、上記単量体(D)の添加量は、上記単量体(B)及び上記単量体(C)の合計量100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましい。上記単量体(B)及び上記単量体(C)の合計量100重量部に対する上記単量体(D)の添加量が100重量部を越えると、重合体粒子の耐圧性が低下し、膨潤や収縮が起きて分離精度が低下しやすくなる。
【0028】
上記カラム充填剤を製造する方法としては、例えば、上記単量体(A)と、上記単量体(B)と、上記単量体(C)と、更に必要に応じて上記単量体(D)とを混合し、得られた単量体混合物を分散媒中に分散して、重合開始剤の存在下で重合する方法が挙げられる。また、上記単量体(B)、及び、上記単量体(C)を用いて架橋重合体粒子を調製した後、得られた架橋重合体粒子及び上記単量体(A)を分散媒中に分散して、重合開始剤の存在下で重合する方法も挙げられる。
【0029】
上記カラム充填剤を得る重合方法は特に限定されず、例えば、重合開始剤の存在下での、乳化重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、懸濁重合法、シード重合法等の公知の重合法が挙げられる。なかでも、分散重合法、懸濁重合法、シード重合法が好ましい。
例えば、懸濁重合法の場合、上記単量体混合物に重合開始剤を溶解し、適当な分散媒中に分散させた後、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下にて攪拌しながら加温することにより、カラム充填剤として適当な、架橋重合体粒子を真球状粒子として得ることができる。
【0030】
上記カラム充填剤は、上記重合を行った後に、公知の技術による親水化処理を表面に行ってもよい。上記親水化処理としては、例えば、特開2001−91505号公報に開示されている、ヘモグロビン、アルブミン、グロブリン等の蛋白質、糖類、ノニオン系界面活性剤等の親水基を有する化合物を吸着させる方法、特開2004−295368号公報に記載の方法によるオゾン処理を行う方法等を好適に用いることができる。
【0031】
本発明方法に用いる上記カラム充填剤の平均粒子径の好ましい下限は3μm、好ましい上限は40μmである。上記カラム充填剤の平均粒子径が3μm未満であると、溶離液をカラムに流すために必要となる圧力が増大し、本発明方法が規定する圧力範囲を逸脱しやすくなる。また、液体クロマトグラフに、耐圧性付与のための特殊な部品等が必要となることがある。上記カラム充填剤の平均粒子径が40μmを超えると、カラム内の空隙率が増大し、試料が拡散しやすくなり、ピークのブロード化等により測定精度が低下する場合がある。上記カラム充填剤の平均粒子径のより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は35μmである。
【0032】
本発明方法に用いる液体クロマトグラフは、溶離液送液用のポンプ、検出器等を備えた公知の液体クロマトグラフに、上記カラム充填剤を充填したカラムを接続することにより構成することができる。
送液用ポンプによる溶離液の送液速度の好ましい下限は0.1mL/分、好ましい上限は2.5mL/分である。上記溶離液の送液速度が0.1mL/分未満であると、流速が遅いために測定時間が長くなることがある。上記溶離液の送液速度が2.5mL/分を超えると、測定系に生じる圧力値が大きくなり、本発明で規定する圧力範囲を逸脱することがある。上記溶離液の送液速度のより好ましい下限は0.2mL/分、より好ましい上限は2.0mL/分である。
【0033】
本発明方法に用いるカラムのカラム長の好ましい下限は1mm、好ましい上限は100mmである。上記カラム長が1mm未満であると、測定対象との相互作用が不充分となり、分離性能が悪くなって測定精度が低下することがある。上記カラム長が100mmを超えると、測定時間が長くなり、測定系に生じる圧力値が大きくなり、本発明で規定する圧力範囲を逸脱することがある。上記カラム長のより好ましい下限は5mm、より好ましい上限は70mmである。
【0034】
本発明方法に用いるカラムの内径の好ましい下限は0.5mm、好ましい上限は10mmである。上記カラムの内径が0.5mm未満であると、測定系に生じる圧力値が大きくなり、本発明で規定する圧力範囲を逸脱することがある。上記カラムの内径が10mmを超えると、カラム内で試料の拡散しやすくなり、測定精度が低下することがある。上記カラムの内径のより好ましい下限は1mm、より好ましい上限は8mmである。
【0035】
本発明方法の液体クロマトグラフィーに用いる溶離液としては、公知の塩化合物を含む緩衝液類や有機溶媒類を用いることが好ましく、具体的には例えば、有機酸、無機酸、及び、これらの塩類、アミノ酸類、グッドの緩衝液等が挙げられる。
上記有機酸は特に限定されず、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
上記無機酸は特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等が挙げられる。
上記アミノ酸類は特に限定されず、例えば、グリシン、タウリン、アルギニン等が挙げられる。
また、上記緩衝液には、他に一般に添加される物質、例えば、界面活性剤、各種ポリマー、親水性の低分子化合物、カオトロピックイオン類等を適宜添加してもよい。
ヘモグロビンA1cの測定を行う際の上記緩衝液の塩濃度の好ましい下限は10mmol/L、好ましい上限は1000mmol/Lである。上記緩衝液の塩濃度が10mmol/L未満であると、イオン交換反応が行なわれず、ヘモグロビン類を分離することができなくなることがある。上記緩衝液の塩濃度が1000mmol/Lを超えると、塩が析出しシステムに悪影響を及ぼすことがある。
【0036】
本発明方法の液体クロマトグラフィーにより、種々のヘモグロビン類を測定することができる。具体的には例えば、本発明方法により、ヘモグロビンA0、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンF(胎児性ヘモグロビン)やヘモグロビンA2を測定することができる。
更に、一般に異常ヘモグロビンと呼ばれるヘモグロビン類の一部をも測定することができる。本発明方法により測定できる異常ヘモグロビン類としては、例えば、ヘモグロビンS、ヘモグロビンC、ヘモグロビンD、ヘモグロビンE等が挙げられる。
【発明の効果】
【0037】
本発明方法は、測定系に生じる圧力値が9.8×10〜9.8×10Paとなるように設定して実施する、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法である。圧力値を上記範囲に設定することで、従来よりも高精度でヘモグロビン類を測定でき、かつ、長期間に亙って精度を維持することができる。
また本発明方法では、単量体(A)、単量体(B)、及び、単量体(C)を、所定量用いて重合反応を行って得られた、カラム充填剤を用いるため、分離性能を損なうことなく、上記範囲内の圧力を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1のカラム及び測定条件を用いて、健常人血のヘモグロビンA1cの測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。
【図2】比較例1のカラム及び測定条件を用いて、健常人血のヘモグロビンA1cの測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。
【図3】実施例1のカラム及び測定条件を用いて、異常ヘモグロビン類の測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。
【図4】比較例1のカラム及び測定条件を用いて、異常ヘモグロビン類の測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。
【図5】実施例1のカラム及び測定条件を用いて、ヘモグロビンA2の測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。
【図6】比較例1のカラム及び測定条件を用いて、ヘモグロビンA2の測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。
【図7】実施例2、実施例4、及び、実施例6の測定条件を用いた耐久性評価におけるヘモグロビンA1c値の推移である。
【図8】比較例2、比較例6、比較例7、及び、比較例8の測定条件を用いた耐久性評価におけるヘモグロビンA1c値の推移である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(製造例1)
製造例1では、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=20:10:100のカラム充填剤を調製した。
テトラエチレングリコールジメタクリレート(単量体C、新中村化学工業社製)150g、トリエチレングリコールジメタクリレート(単量体C、新中村化学工業社製)150g、及び、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン(単量体B、新中村化学工業社製)30gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gを溶解した。得られた溶解物を、5重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液1500mLに分散させ、回転数220rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱し1時間重合反応を行った。
次に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(単量体A、東亞合成社製)60gを、メタノール100g、及び、イオン交換水200mLの混合液に溶解した。得られた混合物を上記の反応系に添加して、撹拌しながら窒素雰囲気下で、更に80℃で2時間重合反応を行った。得られた重合物を洗浄して、カラム充填剤を得た
粒度分布測定装置(ナイコンプ社製、「アキュサイザー780」)により、平均粒子径を測定した結果、17.2μmであった。
【0040】
(製造例2)
製造例2では、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=70:20:100のカラム充填剤を調製した。
テトラエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)150g、トリエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)150g、及び、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン(単量体B)60gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル1.0gを溶解した。得られた溶解物を、5重量%のポリビニルアルコール水溶液1500mLに分散させ、回転数220rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱し1時間重合反応を行った。
次に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(単量体A)210g、及び、ポリエチレングリコールメタクリレート(単量体D、日油社製)40gを、メタノール100g、及び、イオン交換水200mLの混合液に溶解した。得られた混合物を上記の反応系に添加して、撹拌しながら窒素雰囲気下で、更に80℃で2時間重合反応を行った。得られた重合物を洗浄して、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様に平均粒子径を測定した結果、16.4μmであった。
【0041】
(製造例3)
製造例3では、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=100:80:100のカラム充填剤を調製した。
テトラエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)150g、トリエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)50g、及び、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン(単量体B)160gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル1.0gを溶解した。得られた溶解物を、5重量%のポリビニルアルコール水溶液1500mLに分散させ、回転数220rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱し1時間重合反応を行った。
次に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(単量体A)200gを、メタノール100g、及び、イオン交換水200mLの混合液に溶解した。得られた混合物を上記の反応系に添加して、撹拌しながら窒素雰囲気下で、更に80℃で2時間重合反応を行った。得られた重合物を洗浄して、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様に平均粒子径を測定した結果、16.4μmであった。
【0042】
(製造例4)
製造例4では、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=150:10:100のカラム充填剤を調製した。
テトラエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)150g、トリエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)150g、及び、1,10−ジメタクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール30g(単量体B、共栄社化学社製)30gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル1.0gを溶解した。得られた溶解物を、5重量%のポリビニルアルコール水溶液1500mLに分散させ、回転数120rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱し1時間重合反応を行った。
次に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(単量体A)450gを、メタノール100g、及び、イオン交換水200mLの混合液に溶解した。得られた混合物を上記の反応系に添加して、撹拌しながら窒素雰囲気下で、更に80℃で2時間重合反応を行った。得られた重合物を洗浄して、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様に平均粒子径を測定した結果、32.8μmであった。
【0043】
(製造例5)
製造例5では、単量体Aを含まないカラム充填剤、すなわち、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=0:20:100のカラム充填剤を調製した。
製造例2において、単量体Aを用いなかったこと以外は製造例2と同様に重合を行い、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様にして平均粒子径を測定した結果、17.0μmであった。
【0044】
(製造例6)
製造例6では、単量体Bを含まないカラム充填剤、すなわち、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=70:0:100のカラム充填剤を調製した。
製造例2において、単量体Bを用いなかったこと以外は製造例2と同様に重合を行い、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様にして平均粒子径を測定した結果、18.6μmであった。
【0045】
(製造例7)
製造例7では、単量体Aの添加量が本発明方法の規定範囲よりも多いカラム充填剤、すなわち、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=220:20:100のカラム充填剤を調製した。
製造例2において、単量体Aの添加量を660gに変更したこと以外は製造例2と同様にして重合を行った。得られた重合物を洗浄して、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様にして平均粒子径を測定した結果、25.1μmであった。
【0046】
(製造例8)
製造例8では、単量体Bの添加量が本発明方法の規定範囲よりも多いカラム充填剤、すなわち、単量体の重量比が、単量体A:単量体B:単量体C=100:120:100のカラム充填剤を調製した。
テトラエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)100g、トリエチレングリコールジメタクリレート(単量体C)100g、及び、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン(単量体B)240gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル1.0gを溶解した。得られた溶解物を、5重量%のポリビニルアルコール水溶液1500mLに分散させ、回転数220rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱し1時間重合反応を行った。
次に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(単量体A)200g、及び、ポリエチレングリコールメタクリレート(単量体D)40gを、メタノール100g、及び、イオン交換水200mLの混合液に溶解した。得られた混合物を上記の反応系に添加して、撹拌しながら窒素雰囲気下で、更に80℃で2時間重合反応を行った。得られた重合物を洗浄して、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様に平均粒子径を測定した結果、15.4μmであった。
【0047】
(製造例9)
製造例9では、平均粒径値の小さなカラム充填剤の調製例を示す。
製造例2において用いた5重量%のポリビニルアルコール水溶液を、10重量%のポリビニルアルコール水溶液に変更したこと以外は、製造例2と同様に重合を行い、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様に平均粒子径を測定した結果、2.3μmであった。
【0048】
(製造例10)
製造例10では、平均粒径値の大きなカラム充填剤の調製例を示す。
製造例2において用いた5重量%のポリビニルアルコール水溶液を、1重量%のポリビニルアルコール水溶液に変更したこと以外は、製造例2と同様に重合を行い、カラム充填剤を得た。
製造例1と同様に平均粒子径を測定した結果、45.3μmであった。
【0049】
(実施例1〜7及び比較例1〜9)
製造例1〜10で得られたカラム充填剤を種々のサイズのカラムに充填し、液体クロマトグラフ(島津製作所社製、「LC−10Aシステム」)に接続した。送液ポンプとカラムの間に、デジタル圧力計(長野計器社製、「GC61」)を接続し、溶離液として200mmol/Lのリン酸緩衝液(pH5.3)を様々な流速で送液して圧力表示値を読み取った。測定条件及び結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
<評価>
実施例及び比較例のカラム及び測定条件を用いて、以下の評価を行った
【0052】
(1)健常人血試料の測定
実施例1のカラム及び測定条件を用いて、健常人血試料の測定を行った。
測定試料として、フッ化ナトリウム採血したヒト健常人血液を、0.05%のTritonX−100(Sigma−Aldrich社製)を含むリン酸緩衝液(pH6.7)により180倍に溶血希釈したものを用いた。溶離液Aとして180mmol/Lのリン酸緩衝液(pH5.4)、及び、溶離液Bとして420mmol/Lのリン酸緩衝液(pH8.0)の2種の溶離液を用い、流速1.0mL/分で送液して溶離液Aから溶離液Bへのステップワイズグラジエント法により分離し、415nmの吸光度を測定した結果、図1のクロマトグラムを得た。図1中、1がヘモグロビンA1c、2がヘモグロビンA0である。ヘモグロビンA1cと他のヘモグロビン分画とが短時間内に良好に分離された。他の実施例の測定条件でも同様の良好なクロマトグラムが得られた。一方、比較例の測定条件では図2のように分離が悪かった。なお、比較例4は、単量体(A)を用いない製造例5のカラム充填剤を用いたため、ヘモグロビン類は全く分離できなかった。
【0053】
(2)同時再現性評価
得られた健常人血試料を用いて、ヘモグロビンA1cの測定を10回連続で行い、同時再現性の比較を行った。A1c値とA1c成分の保持時間のCV値(%)の結果を表2に示す。
各実施例の測定条件においては、各CV値は1%未満であり、糖尿病患者のA1c値の管理を行うための充分な測定精度を示した。一方、各比較例の測定条件では、CV値が3.10%〜8.24%と悪く、実用上問題のあるレベルであった。
【0054】
(3)修飾ヘモグロビン類の測定
上記(1)における健常人血試料の代わりに、修飾ヘモグロビン類を含む試料を人為的に調製して測定し、修飾ヘモグロビン類とヘモグロビンA1cとの分離性能を評価した。
修飾ヘモグロビン類を含む試料としては、レイバイルヘモグロビンA1c含有試料(試料L)、アセチル化ヘモグロビン含有試料(試料A)、カルバミル化ヘモグロビン含有試料(試料C)の3種類を、公知の方法により調製した。
即ち、試料Lは、健常人血試料に、グルコースを2500mg/dLとなるように添加し、37℃で3時間加温することにより調製した。試料Aは、健常人血試料に、アセトアルデヒドを60mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。試料Cは、健常人血試料に、シアン酸ナトリウムを60mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。
得られた修飾ヘモグロビン類を含む試料(試料L、試料A、試料C)と、修飾ヘモグロビン類を含む試料の調製に用いた健常人血試料(非修飾品)とを、実施例及び比較例で調製した充填剤を用いて、上記(2)の方法によって測定し、ヘモグロビンA1cの測定値を比較した。分離性能は、修飾ヘモグロビン類を含む試料のヘモグロビンA1c値から非修飾品のヘモグロビンA1c値を差し引いた値(Δ値)を算出して比較することにより評価した。結果を表2に示す。
各実施例の測定条件においては、Δ値は0.2%以下であり、修飾ヘモグロビン類が含まれる試料においても、正確にヘモグロビンA1cが測定できることがわかった。一方、各比較例の測定条件では、Δ値が0.25%〜2.31%と悪く、ヘモグロビンA1cの測定時において、修飾ヘモグロビン類の影響を受けることが確認された。
【0055】
【表2】

【0056】
(4)異常ヘモグロビン類の測定
実施例及び比較例の測定条件を用いて、異常ヘモグロビンとしてヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含む試料(ヘレナ研究所社製、「AFSCヘモコントロール」)の測定を行った。
実施例1の測定条件を用いて測定した結果、得られたクロマトグラムを図3に示す。図3中、1はヘモグロビンA1c、2はヘモグロビンA0、3はヘモグロビンF(胎児性Hb)、4はヘモグロビンS、5はヘモグロビンCを示す。実施例1の測定条件においては、異常ヘモグロビン類であるヘモグロビンS及びヘモグロビンCを良好に分離することができた。他の実施例の測定条件においても、ほぼ同様の分離性能を示した。
一方、比較例1の測定条件を用いて測定した場合は、図4に示すように異常ヘモグロビン類を分離することはできなかった。他の比較例の測定条件においても、同様に異常ヘモグロビン類を分離することはできなかった。
【0057】
(5)ヘモグロビンA2の測定
実施例及び比較例の測定条件を用いて、ヘモグロビンA2を含む試料として、A2コントロール(レベル2)(バイオラッド社製)を測定した。
実施例1の充填剤を用いて測定して得られたクロマトグラムを図5に示す。図5中、1はヘモグロビンA1c、2はヘモグロビンA0、3はヘモグロビンF(胎児性Hb)、6はヘモグロビンA2を示す。実施例1の測定条件において、ヘモグロビンA2を良好に分離することができた。他の実施例の測定条件においても、ほぼ同様の分離性能を示した。
一方、比較例1の測定条件を用いて測定した場合は、図6に示すようにヘモグロビンA2を分離することはできなかった。他の比較例の測定条件においても、同様にヘモグロビンA2を分離することはできなかった。
【0058】
(6)カラム耐久性の評価
実施例2、4、6、比較例2、6、7、及び、8の測定条件を用いて、上記(1)の健常人血液試料を繰り返し測定し、ヘモグロビンA1c値の推移を確認した。それぞれの結果を図7、及び、図8に示す。
ヘモグロビンA1c値(HbA1c(%))の推移は、各実施例の測定条件では、2000回測定まで安定していた。一方、各比較例の測定条件では、HbA1c値が大きく低下し、カラム寿命が短いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、ヘモグロビン類を短時間で高精度に測定することができ、かつ、カラム寿命を向上させることのできるヘモグロビン類の測定方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ヘモグロビンA1c
2 ヘモグロビンA0
3 ヘモグロビンF(胎児性Hb)
4 ヘモグロビンS
5 ヘモグロビンC
6 ヘモグロビンA2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラム充填剤を充填したカラムに溶離液を送液する液体クロマトグラフィーによってヘモグロビン類を測定する方法において、
1分子中にスルホン酸基を1個以上含む単量体10〜200重量部、スルホン酸基を有さず、1分子中に水酸基を1個以上有する架橋性単量体5〜100重量部、及び、スルホン酸基及び水酸基を有さない架橋性単量体100重量部を構成単位とする重合体からなる粒子を前記カラム充填剤として用い、かつ、
測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上、9.8×10Pa未満に設定する
ことを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
【請求項2】
1分子中に水酸基を1個以上含む架橋性単量体は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載のヘモグロビン類の測定方法。
【化1】

式(1)中、Rは、直鎖部の炭素原子数が1〜10の整数であって、水素原子が1個以上の水酸基で置換されているアルキレン基、又は、直鎖部の炭素原子数と酸素原子数の和が2〜10の整数であって、水素原子が1個以上の水酸基で置換されているオキサアルキレン基を表す。また、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項3】
1分子中にスルホン酸基を1個以上含む単量体、1分子中に水酸基を1個以上含む架橋性単量体、及び、スルホン酸基及び水酸基を有さない架橋性単量体は、アクリル系単量体であることを特徴とする請求項1又は2記載のヘモグロビン類の測定方法。
【請求項4】
架橋重合体粒子の平均粒子径が3〜40μmであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のヘモグロビン類の測定方法。
【請求項5】
溶離液の流速が0.1〜2.5mL/分であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のヘモグロビン類の測定方法。
【請求項6】
カラムの長さが1〜100mm、カラムの内径が0.5〜10mmであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のヘモグロビン類の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−73183(P2012−73183A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219700(P2010−219700)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(390037327)積水メディカル株式会社 (111)