説明

ヘルメット用またはゴーグル用のシールド構造およびこのようなシールド構造を備えているヘルメット

【課題】
補助シールド取り付け機構22が、全体として、比較的簡単な構造で安価で見栄えがよいにもかかわらず、複数種類のヘルメットに対して互換性があるシールド構造を提供する。
【解決手段】
本発明の1つの観点によれば、主シールド21に配設された左側および右側の補助シールド取り付け機構22のそれぞれが、内側補助シールド取り付け部66と外側補助シールド取り付け部67との両方を共通に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主シールドと、この主シールドにそれぞれ配設された左側および右側の補助シールド取り付け機構とを備えているヘルメット用またはゴーグル用のシールド構造に関するものである。また、本発明は、このようなシールド構造を備えているヘルメットにも関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルフェイス型ヘルメットなどにおいては、雨降りのときのように本来のシールド(本文においては、「主シールド」という。)が曇りやすいときには、例えば特許文献1に開示されているように、防曇シートなどと称される防曇用の補助シールドが主シールドに取り付けられたシールド構造が用いられることがある。そして、この特許文献1に開示されているヘルメットのシールド構造(以下、「特許文献1のシールド構造」という。)においては、防曇用補助シールドが、主シールドに対して僅かな間隙を保持するように、主シールドの内側面に着脱自在に取り付けられる。この場合、防曇用内側補助シールドの左右両端部には、ほぼ半円形状にそれぞれ構成された左側および右側の係合用の切り欠き凹部がそれぞれ配設される。また、主シールドには、これら左側および右側の係合用切り欠き凹部(すなわち、係合用スリット)にそれぞれ対応するように、防曇用内側補助シールドのための抜け止め用頭部をそれぞれ有する左側および右側の係合用の頭付き軸部が、主シールドの内側面に突出した状態でもって、配設される。このような係合用頭付き軸部は、主シールドに対する防曇用補助シールドの張り具合を調整し得るように、偏心軸構造である。また、係合用頭付き軸部の基端側の非偏心軸部は、主シールドの外側面側からこの主シールドの取り付け孔に回動可能に挿入されている。そして、偏心軸部には、抜け止め用頭部が固着されている。したがって、上記偏心軸部を回動させることによって、上記張り具合を調整することができる。
【特許文献1】特表2003−507594号公報
【0003】
上述のような特許文献1のシールド構造において、防曇用内側補助シールドを主シールドの内側面に取り付ける場合には、主シールドの左側および右側の係合用頭付き軸部を防曇用内側補助シールドの左側および右側の係合用切り欠き凹部に順次相対的に係合させる。この係合の際には、左側および右側の係合用頭付き軸部の抜け止め用頭部と主シールドの内側面との間に存在している偏心軸部に防曇用内側補助シールドの左端部および右端部を順次相対的に差し込むことによって、上記係合を行えばよい。また、防曇用内側補助シールドを主シールドから取り外す場合には、この係合の場合とは逆の操作を行って、左側および右側の係合用切り欠き凹部から左側および右側の係合用頭付き軸部を順次相対的に取り外せばよい。そして、上述のように構成された特許文献1のシールド構造によれば、外側の主シールドと内側の防曇用補助シールドとの間に断熱層となる密閉状空間を形成することができる。したがって、この断熱層の働きによって、2枚のシールドの1枚当りの内外の温度差を減少させることができるから、主シールドおよび防曇用内側補助シールドのそれぞれの曇り止めを行うことができる。
【特許文献1】特表2003−507594号公報
【0004】
一方、フルフェイス型ヘルメットなどにおいては、モトクロスの場合のように悪路をオートバイで走行するときには、主シールドが泥などで汚れやすいので、泥除けシート、ティアオフフィルム、捨てシートなどと称される泥除け用の補助シールドが、本出願人のホームページ中の非特許文献1に開示されているように、1枚または複数枚積層された状態でもって、主シールドの外側面に順次取り外し自在に取り付けられたシールド構造が用いられることがある。このように泥除け用外側補助シールドが取り付けられるヘルメットのシールド構造(以下、「非特許文献1のシールド構造」という。)においては、泥除け用外側補助シールドの左右両端部には、左側および右側の係合用の開孔がそれぞれ配設される。このような係合用開孔のそれぞれは、ほぼ円形状の中心孔と、この中心孔から径方向外方に向かって互いに逆方向に延在する上下一対のスリット部とから成っている。また、主シールドには、これら左側および右側の係合用開孔にそれぞれ対応するように、泥除け用外側補助シールドのための抜け止め用頭部をそれぞれ有する左側および右側の係合用の頭付き軸部が、主シールドの外側面に突出した状態でもって、配設される。このような係合用頭付き軸部は、主シールドに対する泥除け用外側補助シールドの張り具合を調整し得るように、偏心軸構造である。また、係合用頭付き軸部の基端側の非偏心軸部には、主シールドの内側面側からこの主シールドの取り付け孔に挿入された止めねじがねじ込まれているので、係合用頭付き軸部は主シールドに固定されている。したがって、上記係合用頭付き軸部を回動させることによってこの止めねじのねじ込みを緩めてから、上記係合用頭付き軸部および上記止めねじの全体を適当量回動させた後に、上記係合用頭付き軸部を上記止めねじに対して回動させて止めねじを係合用頭付き軸部に再びねじ込み固定すれば、上記張り具合を調整することができる。
【非特許文献1】http://jp.shoei.com/products/ja/parts_list.php?parts_id=1
【0005】
非特許文献1のシールド構造において、泥除け用外側補助シールドを主シールドの外側に取り付ける場合には、主シールドの左側および右側の係合用頭付き軸部を泥除け用外側補助シールドの左側および右側の係合用開孔に順次相対的に係合させる。この係合の際には、1枚または複数枚積層された状態の泥除け用外側補助シールドの左側および右側の係合用開孔に左側および右側の係合用頭付き軸部を順次相対的に挿入させることによって、上記係合を行えばよい。
【非特許文献1】http://jp.shoei.com/products/ja/parts_list.php?parts_id=1
【0006】
非特許文献1のシールド構造において、泥などで汚れた泥除け用外側補助シールド(複数枚積層されているときには、最も外側の泥除け用外側補助シールド)を主シールドから取り外す場合には、つぎに記載の操作を行えばよい。すなわち、まず、ヘルメット装着者などの操作者がこの泥除け用外側補助シールドの左端部付近または右端部付近を手で持ってほぼ前方に引張ればよい。この場合、主シールドの左側または右側(換言すれば、一方)の係合用頭付き軸部は、泥除け用外側補助シールドの左側または右側の係合用開孔から相対的に抜き出される。ついで、泥除け用外側補助シールドを手でほぼ前方にさらに引張ると、主シールドの右側または左側(換言すれば、他方)の係合用頭付き軸部も、泥除け用補助シールドの右側または左側の係合用開孔から相対的に抜き出される。したがって、泥除け用補助シールドを主シールドから完全に取り外すことができる。
【非特許文献1】http://jp.shoei.com/products/ja/parts_list.php?parts_id=1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように構成された特許文献1のシールド構造に用いられている主シールドが、防曇用内側補助シールドだけではなく、非特許文献1のシールド構造に用いられている主シールドの場合のように泥除け用外側補助シールドも取り付けることができれば、特許文献1に開示されているヘルメットおよび非特許文献1に開示されているヘルメットのような2種類のヘルメットに1種類の主シールド構造を共通に用いることができるので、主シールド構造の互換性があって好都合である。この場合、非特許文献1のシールド構造の主シールドに配設されているような左側および右側の係合用頭付き軸部を、泥除け用外側補助シールドのための第2の係合用頭付き軸部として、特許文献1のシールド構造の主シールドに配設することが考えられる。具体的には、上記第2の係合用頭付き軸部は、この主シールドの外側面に突出した状態でもって、主シールドに配設される。しかし、この場合には、主シールド構造は、その構造が複雑になるとともに、部品点数が多くなるから、高価になる。しかも、防曇用内側補助シールドおよび泥除け用外側補助シールドのために、多数個の係合用頭付き軸部が主シールドに設けられることになるから、主シールド(ひいては、シールド構造)の見栄えが悪くなる。
【特許文献1】特表2003−507594号公報
【非特許文献1】http://jp.shoei.com/products/ja/parts_list.php?parts_id=1
【0008】
また、非特許文献1のシールド構造に用いられている主シールドが、泥除け用外側補助シールドだけでなく、特許文献1のシールド構造に用いられている主シールドの場合のように防曇用内側補助シールドも取り付けることができれば、非特許文献1に開示されているヘルメットおよび特許文献1に開示されているヘルメットのような2種類のヘルメットに1種類の主シールド構造を共通に用いることができるので、主シールド構造の互換性があって好都合である。この場合、特許文献1のシールド構造の主シールドに配設されているような左側および右側の係合用頭付き軸部を、防曇用内側補助シールドのための第2の係合用頭付き軸部として、非特許文献1のシールド構造の主シールドに配設することが考えられる。具体的には、上記第2の係合用頭付き軸部は、この主シールドの内側面に突出した状態でもって、主シールドに配設される。しかし、この場合にも、主シールド構造は、その構造が複雑になるとともに、部品点数が多くなるから、高価になる。しかも、泥除け用外側補助シールドおよび防曇用内側補助シールドのために、多数個の係合用頭付き軸部が主シールドに設けられることになるから、主シールド(ひいては、シールド構造)の見栄えが悪くなる。
【非特許文献1】http://jp.shoei.com/products/ja/parts_list.php?parts_id=1
【特許文献1】特表2003−507594号公報
【0009】
さらに、非特許文献1のシールド構造の場合には、主シールドに対する泥除け用外側補助シールドの張り具合を調整する際に、前述のように、係合用頭付き軸部を回動させることによって止めねじのねじ込みを緩めてから、係合用頭付き軸部および止めねじの全体を適当量回動させた後に、係合用頭付き軸部を止めねじに対して回動させて止めねじを係合用頭付き軸部に再びねじ込み固定する必要がある。したがって、上記張り具合の調整操作が煩雑である。特に、モトクロスの場合のように悪路をオートバイで走行するときには、泥除け用外側補助シールドが泥などで汚れやすい。このために、泥除け用外側補助シールドが複数個積層された状態でもって主シールドの外側面に取り付けられている場合には、泥除け用外側補助シールドを比較的短時間のインターバルで順次一枚ずつ取り外す必要がある。そして、取り外された泥除け用外側補助シールドの下側にある新しい泥除け用外側補助シールドの張り具合を外側補助シールドの取り外しのたびに(換言すれば、比較的短時間のインターバルで)調整する必要がある。したがって、このような場合には、泥除け用外側補助シールドの張り具合の調整がさらに煩雑である。
【非特許文献1】http://jp.shoei.com/products/ja/parts_list.php?parts_id=1
【0010】
本発明は、特許文献1のシールド構造および非特許文献1のシールド構造における上述のような欠点を、比較的簡単な構成でもって、効果的に是正し得るようにしたものである。
【特許文献1】特表2003−507594号公報
【非特許文献1】http://jp.shoei.com/products/ja/parts_list.php?parts_id=1
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その第1の観点によれば、主シールドと、この主シールドにそれぞれ配設された左側および右側の補助シールド取り付け機構とを備えているシールド構造において、上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のそれぞれが、内側補助シールド取り付け部と外側補助シールド取り付け部との両方を共通に備えていることを特徴とするヘルメット用またはゴーグル用のシールド構造に係るものである。
【0012】
そして、本発明の上記第1の観点における第1の態様によれば、上記内側補助シールド取り付け部が、内側補助シールドの第1の係合用切り欠き凹部または第1の係合用開孔に係合させるための第1の係合用軸部と、上記第1の係合用切り欠き凹部または上記第1の係合用開孔からの上記第1の係合用軸部の抜け止めのための第1の抜け止め部とを備えるとともに、上記外側補助シールド取り付け部が、外側補助シールドの第2の係合用切り欠き凹部または第2の係合用開孔に係合させるための第2の係合用軸部と、上記第2の係合用切り欠き凹部または上記第2の係合用開孔からの上記第2の係合用軸部の抜け止めのための第2の抜け止め部とを備えている。この場合、上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構の上記内側補助シールド取り付け部が、上記主シールドに対して回動可能に構成され、上記第1の係合用軸部が、上記内側補助シールド取り付け部の回動中心に対して偏心している第1の係合用偏心軸部によって構成され、上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構の上記外側補助シールド取り付け部が、上記主シールドに対して回動可能に構成され、上記第2の係合用軸部が、上記外側補助シールド取り付け部の回動中心に対して偏心している第2の係合用偏心軸部によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシールド構造。
【0013】
また、本発明は、その第2の観点によれば、主シールドと、この主シールドにそれぞれ配設された左側および右側の補助シールド取り付け機構とを備えているシールド構造において、上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構が、上記主シールドに対して固定側である第1の凹凸係合部と凹凸係合することができる第2の凹凸係合部を有する補助シールド用保持部材を備え、上記補助シールド用保持部材が、補助シールドの係合用切り欠き凹部または係合用開孔に相対的に係合させるための係合用軸部と、上記係合用切り欠き凹部または上記係合用開孔からの上記係合用軸部の抜け止めのための抜け止め部とを備え、上記補助シールド用保持部材が、上記主シールドに対して回動可能に構成され、上記係合用軸部が、上記補助シールド用保持部材の回動中心に対して偏心している係合用偏心軸部として構成され、上記補助シールド用保持部材をその回動中心にほぼ沿った方向に往動させたときに、上記第2の凹凸係合部が上記第1の凹凸係合部との係合を解除するように構成されていることを特徴とするヘルメット用またはゴーグル用のシールド構造に係るものである。
【0014】
そして、本発明の上記第2の観点における第1の態様によれば、上記左側および右側の補助シールド取り付け機構の両方が、上記主シールドに対して固定側である上記第1の凹凸係合部と凹凸係合する上記第2の凹凸係合部を有する上記補助シールド用保持部材を備えている。また、本発明の上記第2の観点における第2の態様によれば、上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構が、上記主シールドの取り付け孔に嵌合されてこの主シールドに取り付けられる支持軸部材と、この支持軸部材の内周囲に相対的にかつ回動可能に嵌合される第1の補助シールド用保持部材と、上記支持軸部材の外周囲に相対的にかつ回動可能に嵌合される第2の補助シールド用保持部材とを備え、上記第1の補助シールド用保持部材が、内側補助シールドまたは外側補助シールドの第1の係合用切り欠き凹部または第1の係合用開孔に相対的に係合させるための第1の係合用軸部と、上記第1の係合用切り欠き凹部または上記第1の係合用開孔からの上記第1の係合用軸部の抜け止めのための第1の抜け止め部とを備え、上記第2の補助シールド用保持部材が、上記外側補助シールドまたは上記内側補助シールドの第2の係合用切り欠き凹部または第2の係合用開孔に相対的に係合させるための第2の係合用軸部と、上記第2の係合用切り欠き凹部または上記第2の係合用開孔からの上記第2の係合用軸部の抜け止めのための第2の抜け止め部とを備えている。
【0015】
さらに、本発明は、その第3の観点によれば、上記第1の観点または上記第2の観点によるシールド構造が、頭部保護体に回動可能に取り付けられていることを特徴とするヘルメット。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、左側および右側の補助シールド取り付け機構のそれぞれが、内側補助シールド取り付け部と外側補助シールド取り付け部との両方を共通に備えている。したがって、補助シールド取り付け機構が、全体として、比較的簡単な構造で安価で見栄えがよいにもかかわらず、内側補助シールドおよび外側補助シールドのうちのいずれか一方を選択的にまたは両方を一緒に主シールドに取り付けることができ、このために、複数種類のヘルメットまたは複数種類のゴーグルに対する主シールド構造の互換性があって好都合である。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、内側補助シールドおよび外側補助シールドを主シールドに簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、主シールドに対する内側補助シールドおよび外側補助シールドの張り具合を比較的簡単かつ確実に調整することができる。
【0019】
また、請求項4に係る発明によれば、少なくとも一方の補助シールド取り付け機構においては、補助シールド用保持部材をその回動中心にほぼ沿った方向に往動させてから回動させることによって、係合用偏心軸部による補助シールドの張り具合を調整するようにしたから、補助シールドの張り具合が不測に調整されることがなくて、この張り具材を正確かつ確実に調整することができる。
【0020】
また、請求項5に係る発明によれば、左側の補助シールド取り付け機構と右側の補助シールド取り付け機構との両方において、係合用偏心軸部による補助シールドの張り具合の調整を行うことができるから、この張り具合の調整をさらに正確かつ容易に行うことができる。
【0021】
また、請求項6に係る発明によれば、比較的簡単な構成でもって、内側補助シールドおよび外側補助シールドを主シールドに簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0022】
さらに請求項7に係る発明によれば、請求項1に係る発明または請求項4に係る発明によって奏する効果を同様に奏するヘルメットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
つぎに、本発明をフルフェイス型ヘルメットのシールド構造に適用した一実施例を、「1、ヘルメット全体の概略的構成」、「2、シールド構造の構成」、「3、補助シールド取り付け機構の構成」および「4、補助シールド取り付け機構の動作」に項分けして、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
1、ヘルメット全体の概略的構成
フルフェイス型ヘルメット1は、図1および図2に示すように、
(a)オートバイのライダなどのヘルメット装着者の頭部に装着されるフルフェイス型の頭部保護体2、
(b)ヘルメット装着者の額部と顎部との間(すなわち、顔面の中央部分)に対向するように頭部保護体2の前面に形成された窓孔3を開閉し得るシールド構造4、
(c)頭部保護体2の内側にそれぞれ取り付けられた左右一対の顎掛け用バンド(図示せず)、
から構成されている。そして、頭部保護体2のうちのヘルメット装着者の顎部、額部などとそれぞれ対向する部分には、頭部保護体2の換気を行うための1個または複数個のベンチレータ(図示せず)が必要に応じてそれぞれ設けられている。また、シールド構造4の左右両側部付近は、左右一対のシールド取り付け機構(換言すれば、主シールド取り付け機構)5によって、頭部保護体2の外周壁を構成する外側シェル6に回動可能にそれぞれ取り付けられている。なお、主シールド取り付け機構5は、本発明の要部ではないので、本文においては、その詳細な説明を省略する。
【0025】
外側シェル6は、周知なように、FRP、その他の合成樹脂などの強度の大きい硬質材料から成っていてよい。また、図1および図2に示すように、頭部保護体2の窓孔3を形成するために外側シェル6に形成された窓孔7のほぼ全周囲にわたって、周知なように、断面がほぼU字状、ほぼE字状などの窓孔用縁部材11が接着剤、両面接着テープなどによる接着などによって取り付けられている。そして、図1および図2に示すように、窓孔用縁部材11の下端部に窓孔7の下端部に沿ってほぼ水平に連設されている突状部11aは、全閉位置にあるシールド構造4の下端部が当接するように構成されている。さらに、外側シェル6の下端部のほぼ全周囲にわたって、断面がほぼU字状などの下端用縁部材12が接着剤、両面接着テープなどによる接着などによって取り付けられている。なお、窓孔用縁部材11は、周知なように、合成ゴム、その他の可撓性に富んだ弾性材料から成っていてよい。また、下端用縁部材12は、周知なように、発泡塩化ビニール、合成ゴム、その他の軟質合成樹脂などの軟質材料から成っていてよい。さらに、図1および図2において、符号13は、ヘルメット装着者がシールド構造4を上方および下方に往復回動させる際に指を掛けるために、シールド構造4のほぼ中央部分の下端部に一体的に設けられた指掛け部である。
【0026】
2、シールド構造の構成
シールド構造4は、基本的には、図1および図2に示すように、本来のシールドである主シールド21と、窓孔3の左右両側部分にそれぞれ対向するようにこの主シールド21の左右両側に配設された左右一対の補助シールド取り付け機構(換言すれば、補助シールド取り付け用部材の組み立て体)22とから構成されている。そして、シールド構造4は、図1に示すように、左右一対の補助シールド取り付け機構22によって主シールド21の内側面に着脱自在に取り付けられる防曇用内側補助シールド23を含むことができる。また、シールド構造4は、図2に示すように、左右一対の補助シールド取り付け機構22によって主シールド21の外側面に着脱自在に取り付けられる泥除け用外側補助シールド24を含むことができる。そして、シールド構造4の主シールド21の左右両端部付近が、左右一対の主シールド取り付け機構5によって、外側シェル6に回動可能にそれぞれ取り付けられている。また、窓孔用縁部材11の突状部11aには、主シールド21の下端部が当接するように構成されている。さらに、指掛け部13は、主シールド21のほぼ中央部分の下端部に一体的に形成されている。さらに、主シールド21は、風防のためにヘルメット1に設けられるが、必要に応じて、透光性を阻害しないように着色されることによって日よけ(すなわち、バイザー)を兼用することもでき、ポリカーボネート、その他の合成樹脂などの透明または半透明の硬質材料から成っていてよい。
【0027】
図1に示す防曇用内側補助シールド23は、酢酸セルロース、セルロース・プロピオネートなどの高吸湿性の合成樹脂、その他の合成樹脂などの透明または半透明の軟質または硬質材料から成っていてよい。この防曇用内側補助シールド23は、主シールド21に対して僅かな間隙25を保持するようにかつ主シールド21に着脱自在に取り付けられる。この取り付けのために、防曇用内側補助シールド23の左右両端部のそれぞれのほぼ上下方向におけるほぼ中央部分よりも多少下方には、左右一対の舌片部23aが突設されている。そして、左右一対の舌片部23aには、図8および図12に示すように、後方に向かって開口している左右一対のスリット形状、ほぼ半円形状などの係合用切り欠き凹部26がそれぞれ形成されている。また、防曇用内側補助シールド23が主シールド21に対して僅かな間隙25を保持するとともに、この間隙25を気密に保持するために、シリコンゴムなどの弾性材料から成るパッキン用突条部27が、防曇用内側補助シールド23のうちの左右一対の舌片部23aを除く領域の外周囲に沿って、ほぼループ状に形成されている。そして、主シールド21には、図6に示すように、これら左側および右側の係合用切り欠き凹部26にほぼ対応して、厚み方向に貫通している左側および右側の取り付け孔20が形成されている。
【0028】
図2に示す泥除け用外側補助シールド24は、主シールド21を一回り小さくした形状であってよく、オレフィン樹脂、プロピロピレン、その他の合成樹脂などの透明または半透明の軟質または硬質材料から成っていてよい。この泥除け用外側補助シールド24は、一枚または複数枚積層された状態でもって、主シールド21の外側面に取り外しが順次自在なように取り付けられる。この取り付けのために、泥除け用外側補助シールド24の左右両端部付近には、左側および右側の係合用開孔28がそれぞれ形成されている。このような係合用開孔28のそれぞれは、図8に示すように、ほぼ円形状などの中心孔28aと、この中心孔28aから径方向外方に向かって互いに逆方向(すなわち、ほぼ上方およびほぼ下方)に延在している上下一対のスリット部28b、28cとから成っている。そして、これら左側および右側の係合用開孔28は、主シールド21に形成されている左側および右側の取り付け孔20にそれぞれほぼ対応している。
【0029】
3、補助シールド取り付け機構の構成
左側の補助シールド取り付け機構22と右側の補助シールド取り付け機構22とは、相互に実質的に同一の構成であってよい。したがって、以下において、左側の補助シールド取り付け機構22について、図3〜図10を参照しつつ説明する。この点は、「4、補助シールド取り付け機構の動作」の項においても、同様である。なお、これらの図3〜図10においては、補助シールド取り付け機構22は、主シールド21に取り付けられた状態で示されている。
【0030】
補助シールド取り付け機構22は、図6および図7に示すように、
(a)主シールド21の外側面側からこの主シールド21の取り付け孔20に嵌合されてこの主シールド21に取り付けられる支持軸部材31、
(b)支持軸部材31の後端側からこの支持軸部材31の外周囲に相対的に嵌合される外側補助シールド用の保持部材32、
(c)支持軸部材31の後端側からこの支持軸部材31の内周囲に相対的に嵌合される内側補助シールド用の保持部材33、
(d)内側補助シールド用の保持部材33にこの保持部材33のほぼ径方向に延在するように形成された孔またはねじ孔34にこの保持部材33の前端側からセルフタップまたはねじ係合によってねじ込まれるプラスねじなどのねじ部材35、
を備えている。換言すれば、補助シールド取り付け機構22は、支持軸部材31、外側補助シールド用保持部材32、内側補助シールド用保持部材33およびねじ部材35から成る4種類の補助シールド取り付け用部材の組み立て体として構成されている。
【0031】
支持軸部材31の前部には、図8に示すように、ねじ部材35の頭部35aが支持軸部材31の前端側から嵌合する嵌合凹部36と、ねじ部材35の軸部35bがこの支持軸部材31の前端側から挿通されるねじ挿通孔37とが、支持軸部材31の前端側から順次形成されている。また、支持軸部材31の中央部から後部にかけては、内側補助シールド用保持部材33が嵌合する嵌合孔38がねじ挿通孔37に連なるように形成されている。そして、支持軸部材31の前端部の外周囲の全周には、ほぼギヤ形状の凹凸係合部41が形成されている。また、支持軸部材31の後端部の全周には、主シールド保持部としての肉薄部42が形成されている。そして、この主シールド保持部42の内周面は、嵌合孔38にほぼ滑らかに連なるように、後端から前端に向かって次第に径小になるほぼ円錐台形状の円錐台面56に構成されている。さらに、支持軸部材31の外周囲には、軸支部52と主シールド保持部42との間において段差部54が形成されている。そして、この段差部54は、径大の軸支部52と径小の主シールド保持部42との間をつないでいる。また、主シールド保持部42の外周面は、その軸心方向において、ほぼ等径(換言すれば、ほぼ円柱面)になっている。
【0032】
外側補助シールド用保持部材32は、図6〜図10に示すように、ほぼボタン形状の保持部材本体43を備えている。そして、保持部材本体43はその径が約15mmで厚みが約10mmと小さいから、この保持部材本体43の外周囲には、操作者が2本の指で摘みやすいようにほぼギヤ形状に構成された操作摘み部兼用の抜け止め部(換言すれば、抜け止め頭部)44が形成されている。また、保持部材本体43には、この保持部材本体43に対して偏心している開孔45が形成されている。さらに、外側補助シールド用保持部材32には、保持部材本体43の開孔45の後端からさらに後方に延在しているほぼ円筒形状などの筒状部46が、開孔45とはほぼ同心状に形成されている。そして、筒状部46の開孔47は、図8に示すように、段差部48が存在するために、保持部材本体43の開孔45よりも多少径小になっている。
【0033】
保持部材本体43の開孔45の内周面には、段差部48にこの段差部48の前端側から隣接するように、ほぼギヤ形状の凹凸係合部51が形成されている。また、この凹凸係合部51の内周囲は、支持軸部材31の凹凸係合部41の外周囲とはほぼ同形に構成されている。そして、外側補助シールド用保持部材32の前端側からこの保持部材32の開孔45、47に支持軸部材31を嵌合させたときには、図9および図10に示すように、保持部材本体43が支持軸部材31の凹凸係合部41にほぼ対向するとともに、筒状部46が支持軸部材31の軸支部(すなわち、凹凸係合部41と肉薄部42との間の部位)52にほぼ対向する。また、保持部材本体43の後面には、図7に示すように、この保持部材本体43よりは1回り径小でほぼ円筒形状の補助シールド保持部(換言すれば、補助シールド係合用軸部または係合用偏心軸部)49がこの保持部材本体43とは一体的に形成されている。したがって、保持部材本体43と補助シールド保持部49との間には、ほぼリング状の段差部40が形成されている。また、係合用偏心軸部49および抜け止め頭部44によって、頭部付き係合用軸部が構成されている。そして、補助シールド保持部49には、この保持部49の後端から段差部40付近まで外側補助シールド用保持部材32のほぼ径方向に延在している複数本のスリット50がそれぞれ形成されている。具体的には、互いに比較的近接している3本ずつのスリット50の組が、保持シールド保持部43にほぼ等間隔で(換言すれば、ほぼ90°ずつずれた状態)4組設けられている。そして、各組のスリット50の間には、比較的肉薄に構成されたばね部53の基部53aがこの各組ごとに2本ずつ形成されている。また、これら2本の基部53aのそれぞれの先端側には、基部53aから斜め後方で外方に延在している先端部53bが連設されている。したがって、比較的肉薄に構成された多数のばね部53が保持部材本体43の外周囲に沿って一体成形されている。そして、これらのばね部53は、保持部材本体43の後面からほぼ後方に向かって延在してから斜め後方で外方に向かって開くように、ほぼL字形状に構成されている。
【0034】
内側補助シールド用保持部材33は、支持軸部材31の嵌合孔38の後端側からこの嵌合孔38に嵌合される被軸支部55を、この保持部材33の前部から中央部にかけて、備えている。そして、この被軸支部55の外周面の後端部は、支持軸部材31の主シールド保持部42の内周面とほぼ対応するように、この後端部の後端から前端に向かって次第に径小になるほぼ円錐台形状の円錐台面57に構成されている。また、この円錐台面57の前端には、いわゆる段差部に類似した形状を有する第2の円錐台面58が形成されている。さらに、被軸支部55には、内側補助シールド用保持部材33の前端に開口している前記孔またはねじ孔34が、この被軸支部55の軸心方向に延在するように、袋穴として形成されている。
【0035】
内側補助シールド用保持部材33には、図8に示すように、円錐台面57の後端にほぼ隣接するように、仕切り壁部61が被軸支部55とは一体に形成されている。そして、保持部材33には、この仕切り壁部61の後端にほぼ隣接するように、係合用偏心軸部(換言すれば、係合用軸部)62が仕切り壁部61とは一体に形成されている。また、係合用偏心軸部62の後端には、操作摘み部兼用の抜け止め部(換言すれば、抜け止め頭部)63が係合用偏心軸部62とは一体に形成されている。なお、抜け止め部63は、係合用偏心軸部62の頭部を構成するものである。そして、係合用偏心軸部62および抜け止め部63によって、特許文献1のシールド構造における前記頭付き係合用軸部が構成されている。また、抜け止め部63は、最大径が約6mmと小さいから、操作者が摘みやすいように、偏平な六角形などの偏平な多角形であってよい。さらに、ねじ部材35は、支持軸部材31の前端側から嵌合凹部36およびねじ挿通孔37に挿通されてから、内側補助シールド用保持部材33の孔またはねじ孔34にねじ込まれる。また、図7に示すように、仕切り壁部61に突設された指針部65は、保持部材33による内側補助シールド23の張り具合を示すためのものである。そして、この指針部65が上方または下方を向いているときには、保持部材33による内側補助シールド23の張り具合の調整状態がほぼ中ぐらいであることを示している。
【特許文献1】特表2003−507594号公報
【0036】
支持軸部材31およびねじ部材35の軸心方向を中心線(換言すれば、共通中心線)Lとした場合、外側補助シールド用保持部材32の開孔45、凹凸係合部51、段差部48および筒状部46のそれぞれの軸心は、図8に示すように、補助シールド取り付け機構22の共通中心線Lとほぼ一致している。また、主シールド21の取り付け孔20の軸心方向も、共通中心線Lとほぼ一致している。さらに、内側補助シールド用保持部材33の被軸支部55、ねじ孔34、仕切り壁部61および操作摘み部兼用の抜け止め部63のそれぞれの軸心方向も、共通中心線Lとほぼ一致している。これに対し、外側補助シールド用保持部材32の保持部材本体43と、摘み部44と、多数のばね部53によって全体としてほぼ円筒形状に構成されているばね機構64とのそれぞれの軸心は、共通中心線Lとは偏心している外側補助シールド24のための中心線(すなわち、第1の偏心中心線)Lとほぼ一致している。また、内側補助シールド用保持部材33の係合用偏心軸部62の軸心は、共通中心線Lとは偏心している内側補助シールド23のための中心線(すなわち、第2の偏心中心線)Lとほぼ一致している。なお、第1の偏心中心線Lが共通中心線Lから偏心している距離(換言すれば、共通中心線Lと第1の偏心中心線Lとの相互の間隔)は、第2の偏心中心線Lが共通中心線Lから偏心している距離(換言すれば、共通中心線Lと第2の偏心中心線Lとの相互の間隔)の1/2〜4倍の範囲であってよく、図示の実施例においては、約2倍である。
【0037】
4、補助シールド取り付け機構の動作
補助シールド取り付け機構22を主シールド21に取り付ける手順の一例を説明すると、つぎの(a)項〜(d)項に記載のとおりである。
(a)まず、図10に示すように、支持軸部材31を外側補助シールド用保持部材32の開孔45および開孔47にこの開孔45の前端側から相対的に嵌合する。この場合、支持軸部材31の凹凸係合部41を保持部材32の凹凸係合部51に係合させることによって、図3および図9に示すように、保持部材32を支持軸部材31に対して回動ロック状態(換言すれば、回動不能状態)にするのが好ましい。また、支持軸部材31の凹凸係合部41の後端面(すなわち、段差部)39は、保持部材32の段差部48にほぼ当接することができる。
(b)ついで、図9に示すように、支持軸部材31の肉薄部(換言すれば、主シールド保持部)42を主シールド21の取り付け孔20にこの主シールド保持部42の後端側から嵌合させる。この場合、主シールド21の前面を支持軸部材31の段差部54にほぼ当接させるのが好ましい。
(c)ついで、図10に示すように、内側補助シールド用保持部材33の被軸支部55を支持軸部材31の嵌合孔38にこの被軸支部55の前端側から相対的に嵌合させる。この場合、保持部材33の仕切り壁部61の前面を主シールド21の後面にほぼ当接させるのが好ましい。
(d)ついで、図10に示すように、ねじ部材35を内側補助シールド用保持部材33の孔またはねじ孔34にこの保持部材33の前端側からセルフタップまたはねじ係合によってねじ込む。このねじ込みによって、支持軸部材31の主シールド保持部42が保持部材33の円錐台面58および円錐台面57に順次乗り上げる。したがって、この薄い主シールド保持部42の内径および外径が拡大されるので、この主シールド保持部42の外周面が結果的には主シールド21の取り付け孔20の周面に強く圧入された状態になって、支持軸部材31(ひいては、補助シールド取り付け機構22全体)が取り付け孔20に対して空回りするのが防止される。これとともに、主シールド21が支持軸部材31の段差部54と内側補助シールド用保持部材33の仕切り壁部61の前面との間に強固に固定される。これによって、補助シールド取り付け機構22が主シールド21に強固に固定される。また、支持軸部材31の主シールド保持部42と保持部材33の円錐台面57との間の摩擦係合も強固になる。さらに、外側補助シールド用保持部材32は、そのばね部53の先端部53bを主シールド21によって押圧されるので、前方に向かって付勢され、このために、その段差部48が支持軸部材31の段差部39に弾性的に圧着する。
【0038】
主シールド21に取り付けられた左側および右側の補助シールド取り付け機構22に図1に示すように防曇用内側補助シールド23を取り付ける手順の一例を説明すると、つぎの(e)項および(f)項に記載のとおりである。
(e)まず、図11および図12に示すように、左側および右側の補助シールド取り付け機構22の内側補助シールド用保持部材33の係合用偏心軸部62を防曇用内側補助シールド23の左側および右側の係合用切り欠き凹部26(図8参照)に順次相対的に差し込むことによってそれぞれ相対的に挿入または嵌合させる。この場合、補助シールド23は、係合用切り欠き凹部26において、係合用偏心軸部62に係合する。
(f)上記(e)項に記載のようにして主シールド21に取り付けられた防曇用内側補助シールド23の張り具合を調整したい場合には、まず、左側および/または右側の補助シールド取り付け機構22のねじ部材35を内側補助シールド用保持部材33の孔またはねじ孔34から多少ねじ戻す。ついで、保持部材33の操作摘み部兼用の抜け止め頭部63を操作者の2本の指で摘んで左回りまたは右回りの方向に適当角度回動させることによって、内側補助シールド23の張り具合を調整する。ついで、ねじ部材35を孔またはねじ孔34に再び十分にねじ込む。
【0039】
上述のようにして構成されたシールド構造4においては、外側の主シールド21と内側の防曇用補助シールド23との間に断熱層となる密封状空間が形成される。したがって、この断熱層の働きによって、2枚のシールド21、23の1枚当たりの内外の温度差を減少させることができるから、主シールド21および防曇用内側補助シールド23のそれぞれの曇り止めを行うことができる。また、防曇用内側補助シールド23を主シールド21から取り外す場合には、上記(e)項に記載の取り付けの場合とは逆の操作を行って、左側および右側の係合用切り欠き凹部26から左側および右側の係合用偏心軸部62を順次相対的に取り外せばよい。上述のとおりであるから、左側および右側の補助シールド取り付け機構22のそれぞれは、係合用偏心軸部(換言すれば、内側シールド係合用軸部)62および操作摘み部兼用の抜け止め頭部(換言すれば、内側シールド抜け止め部)63から構成された内側補助シールド取り付け部66を備えている。
【0040】
主シールド21に取り付けられた左側および右側の補助シールド取り付け機構22に図2に示すように泥除け用外側補助シールド24を取り付ける手順の一例を説明すると、つぎの(g)項および(h)項に記載のとおりである。
(g)まず、図11および図13に示すように、左側および右側の補助シールド取り付け機構22の外側補助シールド用保持部材32の保持部材本体43(換言すれば、抜け止め部44)を1枚または複数枚積層された状態の泥除け用外側補助シールド24の左側および右側の係合用開孔28(図8参照)に順次相対的に挿入させる。この場合、補助シールド24は、係合用開孔28において、補助シールド保持部49にそれぞれ相対的に係合する。
(h)上記(g)項に記載のようにして主シールド21に取り付けられた泥除け用外側補助シールド24の張り具合を調整したい場合には、まず、左側および/または右側の補助シールド取り付け機構22の外側補助シールド用保持部材32の操作摘み部兼用の抜け止め頭部44を操作者の2本の指で摘んで主シールド21に向かって押し込む。このために、保持部材32の多数本のばね部53(換言すれば、ほぼ円筒形状のばね機構64)は、主シールド21の外側面に強く押しつけられてさらに弾性変形するので、操作摘み部兼用の抜け止め頭部44は、主シールド21に向かって前進する。したがって、支持軸部材31の凹凸係合部41に相対的に係合していて支持軸部材31に対する回動を阻止されていた保持部材32の凹凸係合部51も、この凹凸係合部41から主シールド21に向かって前進するので、この凹凸係合部41との係合を解除されて、支持軸部材31に対して回動可能な状態(換言すれば、回動ロック解除状態)になる。ついで、保持部材32の操作摘み部兼用の抜け止め頭部44を操作者の2本の指で摘んだままで左回りまたは右回りの方向に適当角度回動させることによって、外側補助シールド24の張り具合を調整した後に、操作摘み部44から指を離す。なお、凹凸係合部41は、前方側から後方側(換言すれば、凹凸係合部41側から軸支部52側)に向かって多少尻すぼまりになっている。したがって、上述のように指を離したときに、凹凸係合部41は、凹凸係合部51に対して回動方向に多少位置ずれしていても、多数本のばね部53の弾性復元力によってこの凹凸係合部51に確実に係合することができる。また仮に、両者が位置ずれしたままで互いに係合しない場合でも、操作摘み部44を少し回動させると、両者を良好に係合させることができる。
【0041】
泥除け用外側シールド24を主シールド21から1枚ずつ取り外す場合には、つぎに記載の操作を行えばよい。すなわち、まず、操作者が最も外側の泥除け用外側補助シールド24の左端部付近または右端部付近を手で持ってほぼ前方に引っ張ればよい。この場合、主シールド21の左側または右側の抜け止め頭部44は、この泥除け用外側補助シールド24の左側または右側の係合用開孔28から相対的に抜き出される。ついで、この泥除け用外側補助シールド24を手でさらにほぼ前方に引っ張ると、主シールド21の右側または左側の抜け止め頭部44も、この泥除け用外側補助シールド24の右側または左側の係合用開孔28から相対的に抜き出される。したがって、泥除け用外側補助シールド24を必要に応じて主シールド21から1枚ずつ完全に取り外すことができる。
【0042】
上述のとおりであるから、左側および右側の補助シールド取り付け機構22のそれぞれは、係合用偏心軸部(換言すれば、外側シールド係合用軸部)46および操作摘み部兼用の抜け止め頭部(換言すれば、外側シールド抜け止め部)44から構成された外側補助シールド取り付け部67を備えている。したがって、左側および右側の補助シールド取り付け機構22のそれぞれは、単一の取り付け機構でありながら、上記内側補助シールド取り付け部66と上記外側補助シールド取り付け部67との両方を共通に備えている。また、左側および右側の補助シールド取り付け機構22によれば、上記(e)項および(f)項に記載の手順でもって図1に示すように防曇用内側補助シールド23を取り付けた状態において、上記(g)項および(h)項に記載の手順でもって図2に示すように泥除け用外側補助シールド24を取り付けることによって、単一の主シールド21に内側補助シールド23と外側補助シールド24との両方を一緒に取り付けることも可能である。
【0043】
以上において、本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正が可能である。
【0044】
例えば、上述の実施例においては、フルフェイス型ヘルメット1のシールド構造4に本発明を適用したが、顎覆い部が上昇可能なジェット型兼用のフルフェイス型ヘルメット、ジェット型ヘルメット、セミジェット型ヘルメットなどのシールド構造や、ゴーグルのシールド構造にも、本発明を適用することができる。
【0045】
また、上述の実施例においては、支持軸部材31は、主シールド21とは別体に構成されているが、主シールド21と一体に形成することもできる。
【0046】
また、上述の実施例においては、ほぼ円筒形状などのほぼ筒形状のばね機構64は、外側補助シールド用保持部材32と一体に形成されているが、保持部材32とは別体に構成されたコイルばねなどのばね機構、その他の弾性附勢手段であってよい。
【0047】
また、上述の実施例においては、左側および右側の補助シールド取り付け機構22を主シールド21に配設したが、主シールド21に配設する補助シールド取り付け機構22の個数は必ずしも2個である必要はなく、主シールド21の中央部分の上端附近および/または下端附近なども補助シールド取り付け機構22を配設することができる。
【0048】
また、上述の実施例においては、内側補助シールド23を防曇用にするとともに、外側補助シールド24を泥除け用にしたが、必ずしもこのようにする必要はなく、例えば、外側補助シールド24が防曇用であってもよい。
【0049】
また、上述の実施例においては、支持軸部材31の凹凸係合部41および外側補助シールド用保持部材32の凹凸係合部51のそれぞれは、多数の凸部と多数の凹部とを有するほぼギヤ形状に構成されているが、これら一対の凹凸係合部41、51のうちのいずれか一方に、多数の凸部が形成されるとともに、残りの他方に、これら多数の凸部にそれぞれ対応する多数の凹部が形成されていてもよく、要するに、一対の凹凸係合部41、51が互いに凹凸係合することができればよい。
【0050】
また、上述の実施例においては、内側補助シールド23に左右一対の係合用切り欠き凹部26を設けるとともに、外側補助シールド24に左右一対の係合用開孔28を設けたが、内側補助シールド23に左側および/または右側の係合用開孔28を設けることもでき、また、外側補助シールド24に左側および/または右側の係合用切り欠き凹部26を設けることもできる。
【0051】
さらに、上述の実施例においては、保持部材32を外側補助シールド用にするとともに、保持部材33を内側補助シールド用にしたが、補助シールド取り付け機構22の前後を互いに逆にして、保持部材32を内側補助シールド用にするとともに、保持部材33を外側補助シールド用にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例によるフルフェイス型ヘルメットのシールド構造に防曇用内側補助シールドを取り付けた状態におけるフルフェイス型ヘルメット全体の概略的な左側面図である。(実施例1)
【図2】図1のシールド構造に泥除け用外側シールドを取り付けた状態におけるフルフェイス型ヘルメット全体の概略的な左側面図である。(実施例1)
【図3】図1の補助シールド取り付け機構の、外側補助シールド取り付け部の回動ロック状態での斜視図である。(実施例1)
【図4】図3の補助シールド取り付け機構の、外側補助シールド取り付け部の回動ロック解除状態での斜視図である。(実施例1)
【図5】図3の補助シールド取り付け機構の、図3とは逆の方向から見た斜視図である。(実施例1)
【図6】図3の補助シールド取り付け機構の分解斜視図である。(実施例1)
【図7】図6の補助シールド取り付け機構の、図6とは逆の方向から見た斜視図である。(実施例1)
【図8】図6の補助シールド取り付け機構の、縦断状態における分解斜視図である。(実施例1)
【図9】図3の補助シールド取り付け機構の、縦断状態における斜視図である。(実施例1)
【図10】図4の補助シールド取り付け機構の、縦断状態における斜視図である。(実施例1)
【図11】内側補助シールド取り付け部および外側補助シールド取り付け部の位置関係および動作状態を概略的に示す正面図である。(実施例1)
【図12】内側補助シールド取り付け部の位置関係および動作状態を概略的に示す正面図である。(実施例1)
【図13】外側補助シールド取り付け部の位置関係および動作状態を概略的に示す正面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0053】
1 フルフェイス型ヘルメット
2 フルフェイス型頭部保護体
4 シールド構造
20 取り付け孔
21 主シールド
22 補助シールド取り付け機構
23 防曇用内側補助シールド
24 泥除け用外側補助シールド
26 係合用切り欠き凹部
28 係合用開孔
31 支持軸部材
32 外側補助シールド用保持部材
33 内側補助シールド用保持部材
41 凹凸係合部
44 操作摘み部兼用の抜け止め部
49 補助シールド保持部(係合用軸部)
51 凹凸係合部
62 係合用偏心軸部(係合用軸部)
63 操作摘み部兼用の抜け止め部
66 内側補助シールド取り付け部
67 外側補助シールド取り付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主シールドと、この主シールドにそれぞれ配設された左側および右側の補助シールド取り付け機構とを備えているシールド構造において、
上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のそれぞれが、内側補助シールド取り付け部と外側補助シールド取り付け部との両方を共通に備えていることを特徴とするヘルメット用またはゴーグル用のシールド構造。
【請求項2】
上記内側補助シールド取り付け部が、内側補助シールドの第1の係合用切り欠き凹部または第1の係合用開孔に係合させるための第1の係合用軸部と、上記第1の係合用切り欠き凹部または上記第1の係合用開孔からの上記第1の係合用軸部の抜け止めのための第1の抜け止め部とを備えるとともに、
上記外側補助シールド取り付け部が、外側補助シールドの第2の係合用切り欠き凹部または第2の係合用開孔に係合させるための第2の係合用軸部と、上記第2の係合用切り欠き凹部または上記第2の係合用開孔からの上記第2の係合用軸部の抜け止めのための第2の抜け止め部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のシールド構造。
【請求項3】
上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構の上記内側補助シールド取り付け部が、上記主シールドに対して回動可能に構成され、
上記第1の係合用軸部が、上記内側補助シールド取り付け部の回動中心に対して偏心している第1の係合用偏心軸部によって構成され、
上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構の上記外側補助シールド取り付け部が、上記主シールドに対して回動可能に構成され、
上記第2の係合用軸部が、上記外側補助シールド取り付け部の回動中心に対して偏心している第2の係合用偏心軸部によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシールド構造。
【請求項4】
主シールドと、この主シールドにそれぞれ配設された左側および右側の補助シールド取り付け機構とを備えているシールド構造において、
上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構が、上記主シールドに対して固定側である第1の凹凸係合部と凹凸係合することができる第2の凹凸係合部を有する補助シールド用保持部材を備え、
上記補助シールド用保持部材が、補助シールドの係合用切り欠き凹部または係合用開孔に相対的に係合させるための係合用軸部と、上記係合用切り欠き凹部または上記係合用開孔からの上記係合用軸部の抜け止めのための抜け止め部とを備え、
上記補助シールド用保持部材が、上記主シールドに対して回動可能に構成され、
上記係合用軸部が、上記補助シールド用保持部材の回動中心に対して偏心している係合用偏心軸部として構成され、
上記補助シールド用保持部材をその回動中心にほぼ沿った方向に往動させたときに、上記第2の凹凸係合部が上記第1の凹凸係合部との係合を解除するように構成されていることを特徴とするヘルメット用またはゴーグル用のシールド構造。
【請求項5】
上記左側および右側の補助シールド取り付け機構の両方が、上記主シールドに対して固定側である上記第1の凹凸係合部と凹凸係合する上記第2の凹凸係合部を有する上記補助シールド用保持部材を備えていることを特徴とする請求項4に記載のシールド構造。
【請求項6】
上記左側および右側の補助シールド取り付け機構のうちの少なくとも一方の補助シールド取り付け機構が、上記主シールドの取り付け孔に嵌合されてこの主シールドに取り付けられる支持軸部材と、この支持軸部材の内周囲に相対的にかつ回動可能に嵌合される第1の補助シールド用保持部材と、上記支持軸部材の外周囲に相対的にかつ回動可能に嵌合される第2の補助シールド用保持部材とを備え、
上記第1の補助シールド用保持部材が、内側補助シールドまたは外側補助シールドの第1の係合用切り欠き凹部または第1の係合用開孔に相対的に係合させるための第1の係合用軸部と、上記第1の係合用切り欠き凹部または上記第1の係合用開孔からの上記第1の係合用軸部の抜け止めのための第1の抜け止め部とを備え、
上記第2の補助シールド用保持部材が、上記外側補助シールドまたは上記内側補助シールドの第2の係合用切り欠き凹部または第2の係合用開孔に相対的に係合させるための第2の係合用軸部と、上記第2の係合用切り欠き凹部または上記第2の係合用開孔からの上記第2の係合用軸部の抜け止めのための第2の抜け止め部とを備えていることを特徴とする請求項4または5に記載のシールド構造。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載のシールド構造が、頭部保護体に回動可能に取り付けられていることを特徴とするヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−299202(P2009−299202A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151847(P2008−151847)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(390005429)株式会社SHOEI (14)
【Fターム(参考)】