ベクター構築物
【課題】2本鎖RNAの発現に有効なベクター構築物の提供。
【解決手段】a)第一のプロモータと、b)第二のプロモータと、を含むDNA構築物であって、第一のプロモータ及び第二のプロモータは互いに対立して配位しており、c)第一のプロモータの3´末端下流及び第二のプロモータの3´末端下流に位置する、インタープロモータ領域を定義し、d)インタープロモータ領域に位置する、少なくとも1つのクローニング部位と、e)第一のプロモータの3´末端側から見て、第一のプロモータの下流及び少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する、第一の転写ターミネータであって、第一の転写ターミネータは、第一のプロモータに操作的に連結されている、を更に含む、前記DNA構築物。構築物がインビトロおよびインビボでの2本鎖RNAの発現に有効である。
【解決手段】a)第一のプロモータと、b)第二のプロモータと、を含むDNA構築物であって、第一のプロモータ及び第二のプロモータは互いに対立して配位しており、c)第一のプロモータの3´末端下流及び第二のプロモータの3´末端下流に位置する、インタープロモータ領域を定義し、d)インタープロモータ領域に位置する、少なくとも1つのクローニング部位と、e)第一のプロモータの3´末端側から見て、第一のプロモータの下流及び少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する、第一の転写ターミネータであって、第一の転写ターミネータは、第一のプロモータに操作的に連結されている、を更に含む、前記DNA構築物。構築物がインビトロおよびインビボでの2本鎖RNAの発現に有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本鎖RNAの発現に用いられる改良型ベクター構築物に関し、より詳細には、インビトロおよびインビボでの2本鎖RNAの発現に用いられる改良型ベクター構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
2本鎖RNA阻害(RNAi)効果の出現以来、遺伝子発現を制御するツールとして、WO99/32619およびWO00/01846に記述されるように、2本鎖RNA(dsRNA)の生成のために設計された専用ベクターの必要性が認識されている。
【0003】
ハイレベルのdsRNAを生成するために設計されたクローニングベクターについては、過去にPlaetinck他(WO00/01846)およびTimmons他(Nature誌395〜854(1998年))によって説明がなされている。これらのベクターは一般的にはマルチプルクローニング部位(MCS)を含み、向かい合わせの2つの転写プロモータが隣接するMCSに、目的とするDNA断片をクローニングすることができる。基本的に、これらの3つのコンポーネント(プロモータ1、MCSおよびプロモータ2)が全体システムを構成する。適切な発現システムでは、MCSにクローニングされたDNAが両方向に転写され、それによって2本の相補的RNA鎖が生成されることになる。
【0004】
周知のシステムの欠点は、クローニングされた断片以外も転写されてしまうということである。RNAポリメラーゼによる読み取りによって、ベクター全体が転写され、しかもそれは両方向での転写となる。クローニングされたDNA断片の転写に限って、RNAiに適した活性dsRNAが得られることになるので、上記ベクター部分の転写は、無用で非効率的なRNAをもたらす。より詳細には、これら転写の80%が非特異的であり、従って非効果的であるとみなすことができる。
【0005】
先行技術のプラスミドおよび発現システムによって生成される大量の非特異的RNAは、好ましくない副作用をもたらす。第1に、dsRNAを発現するE.coliのような導入媒体を介するC.elegansへのdsRNA導入に基づくRNAiプロトコルにおいて(WO 00/01846参照)、大型のRNA鎖は導入媒体にとって有毒であると考えられる。結果として、E. coliに蓄積する大量のRNAが個体数の大部分を死滅させる。第2に、おそらく更に重要となるであろうが、阻害能力が低下することである。大量の非特異的dsRNAの存在により、特定配列に拮抗的な環境をもたらす。これらの非特異的領域が大きいので、例えばC. elegans細胞内で、テンプレートに従うdsRNA配列の、目的とするタンパク質の発現を阻止する能力は低下する。また、そのような非特異的dsRNAによる阻害については、Tushl他のGenes & Development 13:3191−3197(1999年)でもショウジョウバエで示されている。遺伝子発現を阻害する能力に影響を及ぼすだけでなく、特異的dsRNAの生成量を制限する。第3に、ベクターバックボーン部の転写、より詳細には、複製および関連構造の起点の転写は、プラスミドの不安定性とプラスミドの再組織化を招くので、dsRNA生成を減少させる。効果的なdsRNAの濃度がこのように比較的低いと、今度は非効率的なRNAiを招くことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結論として、上記ベクターには以下の欠点がある。すなわち、導入媒体にとって有毒である。転写による非特異的生成の比率が高まるほど、その非特異的領域の存在によってdsRNAの阻害能力が低下する。プラスミドが再組織化したり、プラスミドが導入媒体から欠損する率が高い。従って、本発明の目的は、dsRNA生成に関し、先行技術のベクターの欠点を回避する改良型ベクターを提供することである。
【0007】
RNA転写のインビトロ合成、例えばRNAプローブの生成で用いられるベクターは、かねてから当該技術分野では周知であり、普通に用いられてきた(例えば、F.M.Ausubel他(編集人)によるCurrent Protocol in Molecular Biology(John Wiley & Sons,Inc.,1994年);Jendrisak他の米国特許第4,776,072号、クローン化DNA配列の一方の鎖のRNAコピーをインビトロで生成するためのベクター)。標準的なインビトロ転写プロトコルでは、一般的に、所望の転写物の3’末端に位置する制限部位で転写ベクターを線形化することにより、ベクター配列の転写の読み取り問題を回避する。しかしながら、テンプレートが両方向に転写されることが重要であるインビボ転写またはdsRNA生成にとってこの解決策は適切ではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで、本発明は、dsRNA生成のための先行技術のベクターが遭遇する問題に対し、転写ターミネータの活用に基づく新規の解決策を提案する。概要を述べると、この解決策は、少なくとも1つのプロモータに操作的に連結された少なくとも1つの転写ターミネータの活用から成り、ターミネータは、プロモータが開始する転写を阻止する。そしてプロモータの3’末端とターミネータの5’末端との間に挿入されたどのDNA断片も転写され、ベクターバックボーンの望ましくない転写は行わない。以下で更に述べるように、ベクターは2つのプロモータおよび2つのターミネータで構成されることが好ましい。
【0009】
従って、本発明の第一の局面によれば、インタープロモータ領域に隣接する向かい合わせの2つのプロモータを含むDNA構築物が提供され、この構築物は更に、前記プロモータのうちの一方のプロモータの転写領域下流に位置する少なくとも1つの転写ターミネータを含む。詳細には、本発明は、以下を含むDNA構築物を提供する:
a)第一のプロモータ、および
b)第二のプロモータ
を含み;
第一および第二のプロモータは相互に反対の配向にあり、かつ
c)第一のプロモータの3’末端の下流で、かつ第二のプロモータの3’末端の下流に位置するインタープロモータ領域を画成し;
DNA構築物は更に:
d)インタープロモータ領域に位置する少なくとも1つのクローニング部位;および
e)第一のプロモータの下流で、かつ少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する(第一のプロモータの3’末端から見た場合)第一の転写ターミネータ;を含み、第一の転写ターミネータは第一のプロモータに操作的に連結される。
【0010】
インタープロモータ領域は更に、以下の領域として画成することも可能である:第一のプロモータの3’末端と第二のプロモータの3’末端との間のDNA領域とし、この領域は、第一のプロモータの下流で、かつ第二のプロモータの下流にあり、第一のプロモータおよび第二のプロモータの5’末端を含まないことが好ましい。向かい合わせの第一のプロモータおよび第二のプロモータは、それぞれの5’末端から3’末端の方向への発現を促して3’末端の下流で転写を開始し、それによってインタープロモータ領域に存在するヌクレオチド配列の両鎖の転写が行われる。
【0011】
本発明のDNA構築物内にある2つのプロモータは同一であっても異なっていてもよく、基本的にどのようなタイプであってもよい。この構築物で用いられるプロモータの厳密な性質は、DNA構築物が機能すると予想される発現システムの性質に依存する(例:原核生物対真核生物宿主細胞)。バクテリオファージプロモータ、例えば、T7、T3およびSP6プロモータは、適切なRNAポリメラーゼとの結合にのみ依存する高レベルな転写を可能にする利点を備えているので、本発明の構築物での使用に好ましい。それらのプロモータは個々に独立して選択することができる。また、ファージプロモータは多様な宿主システム、すなわち、原核生物および真核生物宿主の両方で機能できる。但し適切なポリメラーゼが宿主細胞に存在するものとする。
【0012】
インタープロモータ領域に隣接する「向かい合わせの」2つのプロモータ構造は、一方のプロモータが転写の開始を促すことによってインタープロモータ領域のセンス鎖が転写され、他方のプロモータが転写の開始を促すことによってインタープロモータ領域のアンチセンス鎖が転写されるようになっており、この構造は、当該技術分野、例えば、Promega Corp(米国ウィスコンシン州マディソン)のベクターのpGEM7シリーズで周知の構造である。
【0013】
本発明のDNA構築物が先行技術のそれと異なる点は、一方のプロモータの転写領域下流に位置する少なくとも1つの転写ターミネータが存在することである。以下で説明するように、転写ターミネータは、一方向性または双方向性であり、一方向性あるいは双方向性ターミネータの選択は、インタープロモータ領域の内外のどちらにターミネータを配置するかによって影響を受ける。ターミネータは、原核生物や真核生物由来のターミネータであっても、ファージ由来のターミネータであってもよい。バクテリオファージターミネータ、例えばT7、T3およびSP6ターミネータが特に好ましい。唯一の要件は、ターミネータが転写領域下流に位置することに関連して、プロモータで開始される転写をターミネータが終結させることができなくてはならないことである。実際に、それらはプロモータとターミネータが「機能的組み合わせ」を形成しなくてはならない。すなわち、プロモータで始動するRNAポリメラーゼのタイプに対してターミネータが機能的でなくてはならないことを意味する。一例を挙げると、真核生物RNApolIIプロモータと真核生物RNApolIIターミネータは一般的に機能的組み合わせを形成する。バクテリオファージプロモータおよびターミネータを本発明の構築物に用いる場合、ファージプロモータとターミネータは両方ともポリメラーゼ特有であるので、機能的組み合わせの選択が特に重要になる。機能的組み合わせを形成するためには、プロモータとターミネータの両方が同一のポリメラーゼにとって特異的であるのがよい。例えば、T7プロモータとT7ターミネータ、T3プロモータとT3ターミネータ等。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)〜(E)は、本発明によるDNA構築物のそれぞれ異なる実施の形態の概略図であり、プロモータおよび転写ターミネータエレメントの相対的配置を示す。
【図2】(A)は、比較のために付した、先行技術のクローニングベクターの概略図である。(B)〜(E)は、本発明によるDNA構築物の更なる実施の形態の概略図であり、インタープロモータ領域内の異なるクローニング部位の活用を示す。
【図3】pGN1を図示(プラスミドマップ)する。
【図4】pGN9を図示(プラスミドマップ)する。
【図5】プラスミドpGN1の断片のヌクレオチド配列を図示し、向かい合わせのT7プロモータの位置を示すために注釈をつけた。
【図6】T7転写ターミネータのヌクレオチド配列を示す。
【図7】T7転写ターミネータをpGN1に挿入するために用いるオリゴヌクレオチド配列、oGN27、oGN28、oGN29、oGN30を示し、T7polターミネータ配列の位置および様々な制限部位の位置がマークされている。
【図8】プラスミドpGN9の断片のヌクレオチド配列を図示し、向かい合わせのT7プロモータおよびT7転写ターミネータの位置を示すために注釈をつけた。
【図9】(A)は、pGN29を図示(プラスミドマップ)し、(B)はpGN39を図示(プラスミドマップ)し、(C)はプラスミドTopoRNAiを図示(プラスミドマップ)する。
【図10】プラスミドpGN9の完全なヌクレオチド配列を示す。
【図11】プラスミドpGN29の完全なヌクレオチド配列を示す。
【図12】プラスミドpGN39の完全なヌクレオチド配列を示す。
【図13】プラスミドTopoRNAiの完全なヌクレオチド配列を示す。
【図14】プラスミドpGN49Aの完全な配列を示す。
【図15】プラスミドpGN59Aの完全な配列を示す。
【図16】pGN49Aを図示(プラスミドマップ)する。
【図17】pGN59Aを図示(プラスミドマップ)する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一実施の形態において、本発明のDNA構築物は、第一のプロモータの下流で、かつ少なくとも1つのクローニング部位の下流に配置された(第一のプロモータの3’末端から見た場合)単体の転写ターミネータを含み、第一の転写ターミネータは第一のプロモータに操作的に連結され、単体の転写ターミネータはインタープロモータ領域に配置されるように成してもよい。
【0016】
代替の編成では、DNA構築物はインタープロモータ領域外に配置された単体の転写ターミネータを含む。更に別の実施の形態では、DNA構築物が2つの転写ターミネータを含み、それぞれを2つのプロモータの一方の転写領域下流に配置させる。この構造では、何れか一方または両方のターミネータをインタープロモータ領域内に配置してもよい。本発明のDNA構築物におけるこのような様々な実施の形態については、添付図面を参照して以下でより詳細に説明する。また、インタープロモータ領域外の第一の転写ターミネータの位置を更に以下のように、すなわち、第一のプロモータの下流で、少なくとも1つのクローニング部位の下流であり、かつ第二のプロモータの5’末端の下流に第一の転写ターミネータが位置する(第一のプロモータの3’末端から見た場合)ように定めてもよい。
【0017】
また、インタープロモータ領域外の第二の転写ターミネータの位置を更に以下のように、すなわち、第二のプロモータの下流、少なくとも1つのクローニング部位の下流、および第一のプロモータの5’末端の下流に第二の転写ターミネータが位置する(第二のプロモータの3’末端から見た場合)よう定めてもよい。
【0018】
更に、ターミネータがインタープロモータ領域に配置されない場合、第一のプロモータの5’末端と第二のターミネータの3’末端との距離、または第二のプロモータの5’末端と第一のターミネータの3’末端との距離を短くすることが好ましく、言い換えれば、第一の転写ターミネータの3’末端をヌクレオチド2000個以下分だけ第二のプロモータの5’末端から離間させるが、好ましくはヌクレオチド1000個以下分で、更に好ましくはヌクレオチド500個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド200個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド100個以下分で、特に一層好ましくはヌクレオチド50個以下分で、更に一層好ましくはクレオチド20個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド10個以下分で、特にヌクレオチド6個以下分である。
【0019】
更に、第二の転写ターミネータがインタープロモータ領域外に配置される場合、好ましくは第二の転写ターミネータの3’末端をヌクレオチド2000個以下分だけ第一のプロモータの5’末端から離間させるが、好ましくはヌクレオチド1000個以下分で、更に好ましくはヌクレオチド500個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド200個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド100個以下分で、特に一層好ましくはヌクレオチド50個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド20個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド10個以下分で、特にヌクレオチド6個以下である。
【0020】
先に定義されたように、用語「インタープロモータ領域」は、2つのプロモータ間のDNA配列すべてを意味する。上記で説明したように、本発明の特定の実施の形態では、転写ターミネータがインタープロモータ領域内にあってもよい。インタープロモータ領域は、有利になるようにdsRNA生成用テンプレートを形成するヌクレオチド配列を含んでもよい。この配列の厳密な長さおよび性質は本発明において重要ではない。本発明は更に、インタープロモータ領域がクローニング部位を含むDNA構築物を提供する。dsRNA生成用テンプレートを形成するDNA断片を2つのプロモータ間に挿入する際に、クローニング部位はそれを促す機能を有する。従って本発明では、dsRNA生成のためのテンプレートベクターの構築物で汎用的な一連のクローニングベクターを提供する。また、クローニングベクターはクローニング部位へ挿入されたDNA断片を有し、そのようなクローニングベクターに由来するベクターも本発明の適用範囲に含まれる。
【0021】
クローニング部位は更に、以下を1つ以上含んでもよい:
−少なくとも1つの制限部位(当該技術分野で周知である)、または1つ以上の更なる制限部位(例:マルチプルクローニング部位を提供する(当該技術分野で周知である));
−スタッファーDNA(例:2つのBstXI制限部位、または2つのXcmI制限部位等、少なくとも2つの制限部位が隣接する);
−attR1およびattR2組換え部位;
−ccdBヌクレオチド配列;
−更にSrfI制限部位等、少なくとも1つの特異的平滑末端制限部位を備えるccdBヌクレオチド;および/または
−少なくとも1つのクローニング部位に挿入されるDNA断片。
本発明で提供されるすべてのDNA構築物が、有利になるように、例えばプラスミドベクター等の複写可能なクローニングベクターの一部を形成してもよい。向かい合わせのプロモータ、インタープロモータ領域および転写ターミネータだけでなく、ベクター「バックボーン」は更に、複写可能なベクターで共通して見られる特徴、例えば抗生物質耐性遺伝子等の宿主細胞および選択マーカー内での自律複製を可能にする複製起点等を1つ以上有する。選択マーカー遺伝子(例:抗生物質耐性遺伝子)自体はプロモータおよび転写ターミネータを有してもよいが、それらは本発明で必要なプロモータおよびターミネータエレメントとは全く無関係であり、特定のベクターが本発明の適用範囲内に収まるか否かを判定する際に考慮に入れるものでないことは言うまでもない。
【0022】
本発明によるDNA構築物は、当該技術分野において周知の、例えば F. M. Ausubel他(編集人)のCurrent Protocol in Molecular Biology(John Wiley & Sons, Inc.,1994年)に記載されるような標準的な組換え技術を用いたコンポーネント配列エレメントから容易に構築され、当該技術分野に精通する者は以下の本発明の詳細な説明および添付の実施例からそれを理解できるであろう。
【0023】
以下の概略図を参照して、本発明によるDNA構築物についてここで詳細に説明する。
【0024】
図1(A)〜(E)は、本発明によるDNA構築物のそれぞれ異なる実施の形態の概略図であり、プロモータおよび転写ターミネータエレメントの相対的配置を示す。
【0025】
図2(A)は、比較のために付した、先行技術のクローニングベクターの概略図である。
【0026】
図2(B)〜(E)は、本発明によるDNA構築物の更なる実施の形態の概略図であり、インタープロモータ領域内の異なるクローニング部位の活用を示す。
【0027】
図を参照すると、図1(A)は本発明による第一のDNA構築物で、向かい合わせの2つのプロモータ、すなわちインタープロモータ領域c)にそれぞれ隣接する第一のプロモータa)および第二のプロモータb)を含むプラスミドベクターを略示し、インタープロモータ領域は第一のプロモータの3’末端の下流で、かつ第二のプロモータの3’末端の下流にある。第一のプロモータおよび第二のプロモータは同一であっても異なっていてもよい。本実施の形態は、第一の転写ターミネータe)および第二の転写ターミネータf)を含み、両者ともインタープロモータ領域内に位置する。この実施の形態では、第一のターミネータおよび第二のターミネータは一方向性ターミネータであることが好ましい。
【0028】
DNA断片を少なくとも1つのクローニング部位d)に挿入してもよい。このような断片が、第一のプロモータa)および第二のプロモータb)の誘導により転写される(すなわち両鎖が転写される)ことで、挿入されたDNA断片の2本鎖RNAと結合する2つのRNA断片が生成される(インビトロおよびインビボの両方で)。
【0029】
ゲノムDNA配列、cDNA配列、その他コード配列等、所望のDNA配列が少なくとも1つのクローニング部位に挿入される。何れの特定の説明に制限されることなく、a)およびe)が機能的組み合わせを形成する場合、a)で転写を開始するRNAポリメラーゼは、少なくとも1つのクローニング部位、および少なくとも1つのクローニング部位に挿入されるDNA断片を含むインタープロモータ領域を転写し、RNAポリメラーゼがe)に到達すると転写を終結させられると考えられている。同様に、b)で転写を開始するRNAポリメラーゼは、少なくとも1つのクローニング部位、および少なくとも1つのクローニング部位に挿入されるDNA断片を含むインタープロモータ領域を転写し、RNAポリメラーゼがf)に到達すると転写を終結させられる。ターミネータは、RNAポリメラーゼが転写を中断、停止して、テンプレートから解離するようにさせる。これによってベクターバックボーンの無制限な転写が阻止され、重要でないDNAの非特異転写を抑制する。
【0030】
インタープロモータ領域は更に、2本鎖RNA阻害に対して目的に合致したヌクレオチド配列を含む。この配列は目的とする断片に対して「TF」と呼ばれる。dsRNAに転写される場合、この配列は目的とする遺伝子の特異的2本鎖RNA阻害を担う。目的とする断片はゲノムDNAの断片または目的とする遺伝子のcDNAから形成してもよい。その厳密な長さおよびヌクレオチド配列は本発明において重要ではない。
【0031】
図1(A)に示す編成において、2つのターミネータはインタープロモータ領域内でTFの何れかの側に位置する。各ターミネータはそれぞれ一方のプロモータの転写領域下流に位置し、第一のターミネータe)は第一のプロモータa)の転写領域下流に位置し、第二のターミネータf)は第二のプロモータb)の転写領域下流に位置する。上記のようにa)およびe)が機能的組み合わせを形成すると考えると、a)で転写を開始するRNAポリメラーゼはTFまで含むインタープロモータ領域を転写し、e)に到達すると転写を終結する。同様に、b)で転写を開始するRNAポリメラーゼは反対側の鎖のTFまで含むインタープロモータ領域を転写し、f)に到達すると転写を終結する。ターミネータは、RNAポリメラーゼが転写を中断、停止して、テンプレートから解離するようにさせる。これによってベクターバックボーンの無制限な転写が阻止され、重要でないDNAの非特異転写を抑制する。
【0032】
このベクターから生じた転写物は、ベクター内のターミネータの厳密な配置に依存し、TF領域に対応するほぼ完全な特異的dsRNAである。挿入されたDNA断片の両側にあるTF領域の下流末端にターミネータ配列を直接配置することにより、転写物の長さはテンプレートに従った配列の長さにまで完全に短くされる。従って、より多くの特異的dsRNAが得られる。ここで更に、ベクターバックボーンの非転写によりDNA構築物はより安定する。後者の特性(安定性)と、ここで相対的に高くなった特異的転写率とが相まって、より多くの短い特異的dsRNA鎖を合成するのに好適なシステムが提供される。このように転写物の量が比例して増加すると、特異的dsRNAの濃度が高まり、RNAiプロトコルにおける阻害効果が増す。導入媒体におけるdsRNAの発現に基づくRNAiプロトコルでは、RNAの発現の増加によって導入媒体にもたらされる毒性レベルが、このベクターの使用により最低レベルとなる。
【0033】
本発明者がRNAiの応用に最適な構造であるとみなしている、図1(A)に示すタイプのベクターの特定の実施例は、付帯する実施例で説明するプラスミドpGN9aである。ベクターは向かい合わせの2つのT7プロモータを含むので、pGN9で用いられる転写ターミネータはT7RNAポリメラーゼ特有のターミネータである。しかしながら、T3またはSP6プロモータ、ターミネータ、ポリメラーゼ、あるいは別の原核生物または真核生物プロモータ、ターミネータに基づく発現システム等、別のシステムを使用することもできる。
【0034】
図1(B)は本発明による更なるDNA構築物であって、インタープロモータ領域c)に隣接する向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むプラスミドベクターを概略的に示す。このベクターは2つの転写ターミネータe)およびf)を含むが、この構造では2つのターミネータがインタープロモータ領域外に位置し、実際にここではターミネータエレメントが2つのプロモータに隣接する。e)はa)の転写領域下流であり、またf)はb)の転写領域下流となるような構造である。ここで繰り返すがe)は、a)が開始する転写を終結させ、またf)は、プロモータb)が開始する転写を終結させる。図1(A)のように、プロモータ間にターミネータを配置するために一方向性ターミネータが好ましいとされる構造とは異なり、d)の外側にターミネータを配置することで、一方向性ターミネータだけでなく双方向性ターミネータを用いることが可能となる。本発明に従って多くの双方向性ターミネータを用いることができるが、それらは当該技術分野において周知である。一般的に、これらはポリメラーゼに対して非特異的であるとみなされている。
【0035】
図1(B)に示す実施の形態では、dsRNA生成のための先行技術のベクターに対し、図1(A)に示す利点と基本的に同様の利点を提供する。図1(B)に示すベクターでは、プロモータ領域をも含むわずかに長い転写物となる。このように転写物の長さに比較的小さな相違があっても、それによって、形成されたdsRNAはRNAiシステムの効率に重大な影響を及ぼすことはない。
【0036】
図1(B)に示す実施例では、プロモータの5’末端をヌクレオチド2000個以下分だけ転写ターミネータの3’末端から離間させるようにターミネータおよびプロモータの位置が近接していることが好ましいが、好ましくはヌクレオチド1000個以下分で、更に好ましくはヌクレオチド500個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド200個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド100個以下分で、特に一層好ましくはヌクレオチド50個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド20個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド10個以下分で、特にヌクレオチド6個以下分である。
【0037】
図1(C)は本発明による更なるDNA構築物であって、インタープロモータ領域c)に隣接する向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むプラスミドベクターを概略的に示す。本実施の形態では、一方のターミネータ(この場合e))はc)の内側に位置し、他方のf)はc)の外側に位置する。繰り返すが、e)は、a)が開始する転写を終結させ、f)は、プロモータb)が開始する転写を終結させる。この構造では、一方のターミネータが逆方向のポリメラーゼの活性を阻害するという問題(例:f)はb)が開始する転写を妨げる)に対して有効な解決策を提供する。このベクターは基本的に、先行技術に対して図1(a)および図1(b)に示す様々なベクターと同様の利点を提供する。一方のプロモータを転写することにより転写物の長さに比較的小さな相違があっても、RNAiシステムの効率に重大な影響を及ぼすことはない。これは、先に定めたように、インタープロモータ領域c)の外側に配置されたターミネータがプロモータに近接している場合に、より顕著となる。
【0038】
図1(D)および図1(E)は本発明による更なる2つのDNA構築物を概略的に示す。両方ともインタープロモータ領域c)に隣接する向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むプラスミドベクターである。これらの実施の形態は、単体ターミネータだけを含む。図1(D)に示す構造では、a)からの転写を終結させる単体ターミネータe)をc)外に配置する。IPRの外側にターミネータを配置することにより、このシステムで双方向性ターミネータあるいは一方向性ターミネータの何れであっても用いることができるようになる。図1(D)に示す実施の形態では、e)がc)内に配置される。従って、a)を一方向性ターミネータとすることが好ましい。
【0039】
本発明によるDNA構築物の更なる実施の形態については、図2(B)〜図2(E)で概略的に示す。
【0040】
これらの実施の形態はすべて、図1(A)に示すプロモータおよびターミネータの最適編成に基づくプラスミドクローニングベクターであり、上記のように、少なくとも1つのクローニング部位へ、DNA断片を挿入することを促すクローニング部位を含む。
【0041】
これらの実施の形態はすべて、図1(A)に示すプロモータおよびターミネータの最適編成に基づくプラスミドクローニングベクターであり、インタープロモータ領域へ、目的とするDNA断片を挿入することを促すクローニング部位を含む。
【0042】
図2(A)は、比較のために加えた、先行技術のクローニングベクターの概略図である。このベクターは向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むが、両方が同一であっても異なっていてもよく、マルチクローニング部位(MCS)に隣接する。
【0043】
図2(B)は本発明によるプラスミドクローニングベクターの第一のタイプを示す。ベクターはインタープロモータ領域に隣接する向かい合わせの第一のプロモータa)および第二のプロモータb)を含む。インタープロモータ領域は更に、以下の領域として定めることも可能である。すなわち第一のプロモータの3’末端と第二のプロモータの3’末端との間をDNA領域とし、この領域は、第一のプロモータの下流で、かつ第二のプロモータの下流にあり、第一のプロモータおよび第二のプロモータの5’末端を含まないことが好ましい。インタープロモータのプロモータ領域は更に、マルチクローニング部位(MCS)に隣接するターミネータe)およびf)を含む。MCSは少なくとも1つの単独の制限部位、好ましくは当該技術分野で周知の制限部位を2つ以上含み、その何れもDNA断片の挿入に用いてもよい。
【0044】
図2(C)は本発明によるプラスミドクローニングベクターの更に異なるタイプを示す。繰り返すがこのベクターは、ターミネータe)およびf)を含むインタープロモータ領域に隣接する、向かい合わせのプロモータa)およびb)を含む。本実施の形態ではa)およびb)は、PCR断片のクローニングを促すように成されたクローニング部位に隣接し、2つの同一の制限部位(この場合BstXI部位)が隣接するスタッファーDNAを含む。スタッファーDNAの特異的配列はそれほど重要ではない。但し、前記スタッファーDNAが本発明のDNA構築物における所望の効果および/または所望の活性を阻害しないものとする。ここでは、本発明のこのような局面によるベクターの実施例として、プラスミドpGN29について説明する。
【0045】
BstXI認識部位およびBstXIアダプタを用いるPCR産物のクローニングは、一般的に当該技術分野で周知である。BstXIアダプタは、Invitrogen (Groningen, オランダ)等から市販されている。これらのアダプタはより簡単で効率的にPCR産物をベクターにクローニングするために設計されたノンパリンドローム(非回文)配列のアダプタである。このように、これらのアダプタを用いると、非相補的な(CACA)オーバーハングを有することにより、アダプタまたはインサートDNA同士の連結が減らされる。スタッファーDNAが組み込まれているのは、単にBstXIで切断されるベクターと切断されないベクターとの差別化を、その大きさに基づき容易に行えるようにするためである。その厳密な長さおよび配列は重要ではない。
【0046】
図2(D)は本発明によるプラスミドクローニングベクターの更に異なるタイプを示す。繰り返すがこのベクターは、ターミネータe)およびf)を含むインタープロモータ領域に隣接する、向かい合わせのプロモータa)およびb)を含む。本実施の形態においてa)およびb)は、制限酵素切断および連結ではなく相同的組換えに基づく「高スループット」クローニングを促すクローニング部位に隣接する。図2(D)で概略的に示すように、クローニング部位は、E. coliに対する致死性遺伝子(この場合ccdB遺伝子)に隣接するバクテリオファージラムダのattR1およびattR2組換え部位を含む。
【0047】
DNA断片をこのベクターにクローニングする代替方法(図2(D)では不図示)は、このベクターの変形から成り、ccdB DNA配列は更に少なくとも1つの特異的制限部位を含み、その少なくとも1つの特異的制限部位はSrfI制限部位等の平滑末端制限部位であることが好ましい。その少なくとも1つの特異的制限部位へDNA断片を挿入すると、ccdB遺伝子の不活性化、更には致死性ccdB遺伝子の不活性化を招く。
【0048】
図2(D)に示すベクターの更なる変形には、attR1およびattE2が存在しない。このようなベクターは少なくとも1つのクローニング部位を含み、前記少なくとも1つのクローニング部位はccdB配列から成り、前記ccdB配列は更に少なくとも1つの特異的制限部位を含み、その少なくとも1つの特異的制限部位はSrfI制限部位等の平滑末端制限部位であることが好ましい。その少なくとも1つの特異的制限部位へDNA断片を挿入すると、ccdB遺伝子の不活性化、更には致死性ccdB遺伝子の不活性化を招く。
【0049】
ccdBヌクレオチド配列および/またはattR部位(R1および/またはR2)を含むこれらのクローニング部位は、Life Technologies, Inc. が市販する GatewayTMクローニングシステムから得られる。GatewayTMクローニングシステムについては、Hartley 他のWO96/40724(PCT/US96/10082)で詳細に説明されている。ここに記載の本発明のこの局面によるベクターの実施例はpGN39である。
【0050】
図2(E)および図2(F)は本発明による更に別のタイプのプラスミドクローニングベクターを示す。繰り返すがこのベクターは、ターミネータe)およびf)を備えるインタープロモータ領域c)に隣接する、向かい合わせのプロモータa)およびb)を含む。図2(E)に示す実施の形態においてe)およびf)は、TATMクローニングによるPCR産物の「高スループット」クローニングを促すクローニング部位に隣接する。このクローニング部位は、2つの同一の制限部位が隣接するスタッファーDNAを含み、この2つの同一の制限部位に特有の酵素は、オーバーハングするTヌクレオチドを生成する。この場合、制限部位はXcmI部位であるが、その他に、オーバーハングするTヌクレオチドを生成するために切断された部位を用いても同様の効果が得られる。オーバーハングするTヌクレオチドは、オーバーハングするAヌクレオチドを含むPCR産物のクローニングを促す。この原理はTATMクローニングとして周知である。オーバーハングするTヌクレオチドに酵素トポイソメラーゼを連結させることで、オーバーハングするTヌクレオチドに、切断されたベクターを「トポメライズ」することができ、図2(F)で概略的に示すタイプのクローニングベクターを生成する。また、その結果生じたベクターは、TOPOTMクローニングとして周知の原理によってPCR産物のクローニングを促す。
【0051】
TOPOTMおよびTATMクローニングシステムは両方とも本発明で説明したベクターに関するものではないが、Invitrogen から市販されている。TOPOTMクローニングシステムについては、ShumanのWO96/19497(PCT/US95/16099)で詳細に説明されている。TATMクローニングシステムについては、Hernstadt他のWO92/06189(PCT/US91/07147)で詳細に説明されている。
【0052】
図2(B)〜図2(F)では、図1(A)で示すタイプのベクター内に別のクローニング部位を組み込んだものを示すが、これらのクローニング部位は本発明の何れのDNA構築物(図1(B)〜図1(E)で概略的に示されるDNA構築物を含む)にも組み込むことができることは、当該技術分野に精通した読者であれば容易に理解できよう。
【0053】
RNAi技術における本発明のDNA構築物の用途
前述のように、本発明のDNA構築物/ベクターは、RNAi技術で用いる2本鎖RNAの生成において主として適用される。詳細には、この構築物はネマトーダ線虫C. elegansのインビボRNAiプロトコルで有用である。
【0054】
C. elegansでは、従来からdsRNAを線虫に注入することによりRNAiを行っていた。これらの方法については、国際出願番号WO99/32619でFire他により詳細に説明されている。一言で言えば、市販のインビトロ転写キットを用いて、RNAの両鎖をインビトロで生成する。RNAの両鎖はdsRNAを形成することが可能となり、その後dsRNAがC. elegansに注入される。本発明者が開発した新しいベクターシステムは、従来方法に大幅な改良を加えた。第一に、例えばベクターpGN9等は2つの同一プロモータを用いて、1つのステップでRNAを生成することができる。第2に、より重要であるが、ターミネータが存在することで、クローン化された目的の断片に限って転写が行われるので、転写物およびそれに伴って形成されたdsRNAはより特異的となる。この結果、より効率的なRNAiが得られる。
【0055】
C. elegansでRNAi実験を行うための更なる方法については、Plaetinck他のWO 00/01846で説明されている。この方法では、dsRNAを生成するバクテリアをC. elegans線虫に与える。あたかもdsRNAが注入されたかのように、dsRNAは線虫の腸バクテリアを通過し、同様のRNAiを誘発する。これらの実験に関しては、E. coli株はHT115(DE3)であることが好ましく、C. elegans株はnuc−l;gun−1であることが好ましい。また、有効なdsRNAに限って生成されるので、以下の実施例で示すように、本発明によって提供される改良型ベクターはこの方法におけるRNAiの効率も向上させる。
【0056】
また、RNAiを行う別の方法が、Plaetinck他のWO 00/01846で説明されている。一言で言うと、この方法は線虫自体でdsRNAを生成することに基づくものである。これは、上記のベクターに線虫プロモータを用いることによって行うことができる。またベクターに存在する非C. elegansプロモータに対して特異的なポリメラーゼを発現するトランスジェニック(形質転換)線虫を用いることもでき、このポリメラーゼがdsRNAの転写を促すようにする。プロモータは、T7、T3、SP6RNAプロモータ等、周知のバクテリオファージRNAプロモータから選択することが好ましく、それによって適切なポリメラーゼの結合にのみ依存する高レベル転写を実現させる利点を提供する。
【0057】
幾つかの方法によってプラスミドベクターDNAを線虫に導入することができる。第一に、従来の注入方法(EpsteinおよびShakes編集のMethods in Cell Biology, Vol 48, C. elegans Modern Biological Analysis of an organism)によってDNAを導入することができる。第二に、DNA供給によりDNAを導入することができる。WO 00/01846でPlaetinck他が示すように、プラスミドの宿主であるE. coli株を線虫に与えることにより線虫にプラスミドDNAを導入することができる。E. coli株はOP50またはMC1061もしくはHT115(DE3)であることが好ましいが、その他の株でも本目的に適する。C. elegans株はnuc−1変異株またはnuc−1;gun−1株であることが好ましい。E. coliのプラスミドDNAは腸バクテリアを通過してネマトーダに導入され、その結果、dsRNAが発現する。上記の他のRNAi方法と同様に、新しいベクターシステムを用いることで、特異的dsRNAに限定して生成することができ、RNAiを向上させる。
【0058】
下記のその他の図と共に、以下の実験例を参照して本発明は更に理解されるだろう。
【実施例】
【0059】
実施例1−ベクター構築物
ここで例示するベクター構築物の開始点は、プラスミドpGN1であった。このプラスミド(出願人の同時係属国際出願番号WO 00/01846に記載)はマルチクローニング部位に隣接する向かい合わせの2つのT7プロモータを含む。
【0060】
ベクター構築物は、当該技術分野において周知の、例えば F. M. Ausubel他(編集人)のCurrent Protocols in Molecular Biology(1994年John Wiley & Sons, Inc.)で説明される標準的な分子生物学技術に従って実行された。
【0061】
1)pGN9の構築物
最初に、制限酵素EcoRIおよびKpnIによってpGN1を切断した。オリゴヌクレオチドoGN27およびoGN28(図7)をアニーリングすることで2本鎖断片を生成し、その後EcoRI/KpnIで切断されたベクターに結合させた。その結果生じたプラスミドを、XbaIおよびHindIIIによって再び切断した。オリゴヌクレオチドoGN29およびoGN30をアニーリングすることで2本鎖断片を生成し、その後XbaI/HindIIIで切断されたベクターにアニーリングさせた。その結果生じたベクターはpGN9と呼ばれた(図4および図10)。
【0062】
2)更なるクローニングベクター構築物
pGN9のMCSを、BstXI部位が隣接するスタッファーDNAに置換することによってpGN29(図9(A);図11)が生成された。BstXIアダプタは、Invitrogen(Groningen,オランダ)から市販されている。
【0063】
pGN39(図9(B);図12)は以下のステップで生成された:pGN29をBstXIで切断した。BstXIアダプタ(Invitrogen (Groningen オランダ))がGATEWAYTMシステム(Life Technologies, Inc.)によって提供されたCassette Aに結合された。Cassette AはattRl、CmR、CcdA、CcdB、attR2を含む。アダプタを有するCassette Aは、その後切断したpGN29に結合され、pGN39Aとなる。pGN39AはccdB遺伝子に特異的SrfI部位を含む。
【0064】
TopoRNAiベクター(図9(C);図13)は以下の方法で生成された:pGN29をBstXIで切断した。プライマoGN103およびoGN104ならびにテンプレートpCDM8(Invitrogen (Groningen, オランダ))を用いてPCRを行い、XcmI部位を含むスタッファーが生成された。PCR産物にBstXIアダプタが結合され、その結果生じたライゲーション産物はBstXIによって切断したpGN29ベクターに結合し、TopoRNAiベクターとなる。
oGN103 : 5’TACCAAGGCTAGCATGGTTTATCACTGATAAGTTGG 3’
oGN104: 5’TACCAAGGCTAGCATGGGCCTGCCTGAAGGCTGC 3’
である。
【0065】
PGN49Aを構築して特異的非平滑制限部位を追加して挿入し、CmR遺伝子pGN39を消失させた。オーバーラップPCRを行った。1回目のPCRはプライマoGN126およびoGN127ならびにテンプレートとしてPGN39Aを用いて行った。プライマoGN128およびoGN129ならびに同様のテンプレートを用いて、第2断片を生成した。その結果生じた断片およびプライマoGN126PおよびoGN129Pを用いてオーバーラップPCRを行い、最終PCR産物を得た。このような最終PCR産物を得るために、BstXIアダプタを結合させ、BstXIで切断したpGN29にライゲーション産物を結合させた。その結果生じたベクターはpGN49Aと呼ばれる。
【0066】
コントロールベクターを生成し、pGN49Aクローニングベクターの効率を試験した。このようなベクターはT7ターミネータではなくT7プロモータを含むものとする。このためpGN49AのXbaIインサートは切り離され、同様の制限酵素で切断したpGN1にクローニングされた。その結果生じたベクターはpGN59Aと呼ばれる。
oGN126 pGATCTGGATCCGGCTTACTAAAAGCCAGATAACAGTATGC
oGN127 GGAGACTTTATCGCTTAAGAGACGTGCACTGGCCAGGGGGATCACC
oGN128 :
CCAGTGCACGTCTCTTAAGCGATAAAGTCTCCCGTGAACTTTACCCGGTGG
oGN129 pGCTGTGTATAAGGGAGCCTGACATTTATATTCCCCAG
である。
【0067】
実施例2−RNAにおける改良型ベクターの実用性を示す
この実験の目的は、先行技術で周知のベクターと比較して、2本鎖RNA阻害における本発明の改良型ベクターの効率が向上したことを示すことであった。生成されるdsRNAが有効であるほど、RNAi機能も向上するので、システム効率の大幅な上昇が見込まれた。コンセプト実験のこのような実証に関する実験システムは、dsRNAを供給したpGN−2(−ターミネータ)およびpGN−12(+ターミネータ)と共にコントロール兼ダイリュータとしてのPGN−1(空ベクター)を用いたsup35のRNAiによって、nuc−1/pha−l(e2123)tsC. elegans変異体中25℃でのC. elegans生存率を測定することである。pha−1ts/sup−35変異についてはSchnabelのWO99/49066で詳細に説明されている。
【0068】
C. elegansのnuc−1変異によって、野生型C. elegansよりも優れた取り込み能力(dsRNA複合体の取り込み等)を示すC. elegans株を提供する。この変異体を主要DNAseで消失させる。本発明者は先の同時係属出願で、ネマトーダにdsRNAを供給することにより、このC. elegans株がRNAiの向上をもたらすと証明している。
【0069】
pha−l(e2123)ts変異によって、変異体C. elegans株に15℃で生存し、25℃で死滅する表現型を提供する。sup−35発現の阻害によってこの致死性を抑制できる。従って、sup−35のRNAiは、25℃でpha−l(e2123)の生存を助けるものがよい。sup−35からdsRNAを発現させる場合、本発明のベクターは、25℃でのpha−l(e2123)ts変異体の生存率では、ターミネータを含まないベクターと比較してsup−35RNAiの効率を上昇させるものがよい。
【0070】
空ベクターとしてベクターpGN1が用いられた。ベクターpGN2(−ターミネータ)はsup−35DNAの宿主となり、適切な宿主に導入された場合にsup−35dsRNAを発現させるベクターである。このベクターには転写ターミネータを挿入しない。ベクターpGN12(+ターミネータ)は上記のようなベクターで、転写ターミネータを含み、それによって適切な宿主に導入された場合に改良型dsRNAが生成される。従って、このベクターは2つの一方向性転写ターミネータを有し、両ターミネータともインタープロモータ領域内に配置され、sup−35断片に隣接する。後者のベクターを用いることで、システム効率の上昇(ここでは25℃でpha−l(e2123)ts変異体の生存率が向上することを意味する)が見込まれた。
【0071】
実験条件
12ウェルのマイクロタイタープレートを1ウェルにつき約2mlのNGMアガーで満たした。(1リットルのNGMアガー: アガー15gと、ペプトン1gと、NaCl3gと、コレステロール溶液1ml(5mg/ml in EtOH)とをオートクレーブした後、0.1M CaCl2 9.5mlと、0.1M MgS04 9.5mlと、1M KH2P04/K2HP04バッファ(pH6) 25mlと、アンピシリン(100μg/l)と、0.1M IPTG 5mlと、ナイスタチン溶液5ml(1:1 EtOH:CH3COONH4 7.5Mに10mg/mlで溶解)とを無菌状態で加える。
【0072】
プラスミドによって形質転換したバクテリアHT115(DE3:Fire A, Carnegie Institution、メリーランド州ボルチモア)の一夜培養液約50μlを乾いたプレートにたらす。1日目は、生育段階L4のネマトーダをそれぞれ1つずつウェルに載せた。各ウェルにネマトーダ(P1)1個とする。2日目に、P1ネマトーダを新しいウェルにのせ、一日放置して培養させる。同様の手順を3日目も繰り返した。すべてのプレートを25℃で更に培養し、子孫を形成させた。子孫数をカウントして、Sup35RNAiに誘発された生存数を測定した。
【0073】
結果
sup−35dsRNAを発現させるE. coliを与え、C. elegans nuc−1/pha−l(e2123)ts変異体におけるRNAi実験である。
【0074】
【表1−1】
【表1−2】
【0075】
結論
予測したように、pGN1の宿主であるバクテリアを与えた線虫では、この温度でのpha−1変異の致死効果に因り、生存能力のある子孫は確認されなかった。pGN2またはpGN12の宿主であるE. coliをネマトーダに与えると、何れの場合も生存能力のある子孫が確認された。これはsup−35のdsRNAを線虫に与えたことによる。2つの供給実験における顕著な違いは希釈列において見られる。pGN2の宿主であるバクテリアを、pGN1の宿主であるバクテリアで希釈する場合、1/2の低希釈度であっても子孫数は激減する。この希釈列は、適切なRNAiを誘発するためには高レベルdsRNAが必要であることを示唆する。pGN12の宿主であるバクテリアを用いた供給実験では、1/8の希釈度でもかなりの数の子孫が観察されている。これは、pGN12の宿主であるバクテリアにおいて、より一層効果的なdsRNAが形成されることを示唆する。ベクターに上記のようなdsRNAを発現させるターミネータ配列を加えることで、RNAi効果の発生において大きな利点を提供することを、この実験が明確に示している。
【0076】
実施例3:T7ターミネータ(pGN49対pGN59)を用いた場合と、用いない場合のベクターのRNAi効率を比較する
3種類の異なる遺伝子をベクターpGN49AおよびpGN59Aにクローニングした。平滑末端を作るPfuIDNAポリメラーゼで遺伝子断片を増幅してクローニングを行うようにし、これらのベクターでクローニングを促した。このようなPCR断片はSrfIで切断したベクターにクローニングされた。クローンに正しい断片が挿入されたことがPCRによって確認された。ds発現およびRNAiによって、子孫の表現型が致死性となるよう断片を選択する。この手順によって素早く容易にRNAiにおける2つのベクター(pGN49、pGN59)の効率を比較することが可能となる。
【0077】
【表2】
【0078】
標準的手法によって、すべてのプラスミド(pGW系列)をE. coli AB301−105 (DE3)バクテリアで形質転換させる。その後LB/amp中で37℃に保ち、14〜18時間バクテリアを繁殖させる。これらの培養物を遠心分離機にかけ、バクテリアのペレットは1mM IPTGおよび100μg/μlアンピシリンを含有するS完全バッファに溶解した。
【0079】
100μlのS−完全バッファ(終濃度1mM IPTGおよび100μg/μlアンピシリンを含有する)および10μlのバクテリア溶液を含む96ウェルプレートにおいて、3個のネマトーダを各ウェルに入れた。ネマトーダはLl生育段階のものであった。
プレートは25℃で5〜6日間培養された。幼虫の発育や子孫F1の発生についてプレートを毎日検査する。
【0080】
結果
構築された各プラスミドに対して8倍の効率でRNAiが行われた。この結果は、T7ターミネータをベクターバックボーンに挿入すると、予測された表現型が100%発生することを示す。T7ターミネータを用いない場合、再現性は最大50%まで低下することもある。その前の実験と同様に、結果では、ターミネータを追加することによりRNAi機能が著しく向上することを示す。
【表3】
【0081】
【表4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本鎖RNAの発現に用いられる改良型ベクター構築物に関し、より詳細には、インビトロおよびインビボでの2本鎖RNAの発現に用いられる改良型ベクター構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
2本鎖RNA阻害(RNAi)効果の出現以来、遺伝子発現を制御するツールとして、WO99/32619およびWO00/01846に記述されるように、2本鎖RNA(dsRNA)の生成のために設計された専用ベクターの必要性が認識されている。
【0003】
ハイレベルのdsRNAを生成するために設計されたクローニングベクターについては、過去にPlaetinck他(WO00/01846)およびTimmons他(Nature誌395〜854(1998年))によって説明がなされている。これらのベクターは一般的にはマルチプルクローニング部位(MCS)を含み、向かい合わせの2つの転写プロモータが隣接するMCSに、目的とするDNA断片をクローニングすることができる。基本的に、これらの3つのコンポーネント(プロモータ1、MCSおよびプロモータ2)が全体システムを構成する。適切な発現システムでは、MCSにクローニングされたDNAが両方向に転写され、それによって2本の相補的RNA鎖が生成されることになる。
【0004】
周知のシステムの欠点は、クローニングされた断片以外も転写されてしまうということである。RNAポリメラーゼによる読み取りによって、ベクター全体が転写され、しかもそれは両方向での転写となる。クローニングされたDNA断片の転写に限って、RNAiに適した活性dsRNAが得られることになるので、上記ベクター部分の転写は、無用で非効率的なRNAをもたらす。より詳細には、これら転写の80%が非特異的であり、従って非効果的であるとみなすことができる。
【0005】
先行技術のプラスミドおよび発現システムによって生成される大量の非特異的RNAは、好ましくない副作用をもたらす。第1に、dsRNAを発現するE.coliのような導入媒体を介するC.elegansへのdsRNA導入に基づくRNAiプロトコルにおいて(WO 00/01846参照)、大型のRNA鎖は導入媒体にとって有毒であると考えられる。結果として、E. coliに蓄積する大量のRNAが個体数の大部分を死滅させる。第2に、おそらく更に重要となるであろうが、阻害能力が低下することである。大量の非特異的dsRNAの存在により、特定配列に拮抗的な環境をもたらす。これらの非特異的領域が大きいので、例えばC. elegans細胞内で、テンプレートに従うdsRNA配列の、目的とするタンパク質の発現を阻止する能力は低下する。また、そのような非特異的dsRNAによる阻害については、Tushl他のGenes & Development 13:3191−3197(1999年)でもショウジョウバエで示されている。遺伝子発現を阻害する能力に影響を及ぼすだけでなく、特異的dsRNAの生成量を制限する。第3に、ベクターバックボーン部の転写、より詳細には、複製および関連構造の起点の転写は、プラスミドの不安定性とプラスミドの再組織化を招くので、dsRNA生成を減少させる。効果的なdsRNAの濃度がこのように比較的低いと、今度は非効率的なRNAiを招くことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結論として、上記ベクターには以下の欠点がある。すなわち、導入媒体にとって有毒である。転写による非特異的生成の比率が高まるほど、その非特異的領域の存在によってdsRNAの阻害能力が低下する。プラスミドが再組織化したり、プラスミドが導入媒体から欠損する率が高い。従って、本発明の目的は、dsRNA生成に関し、先行技術のベクターの欠点を回避する改良型ベクターを提供することである。
【0007】
RNA転写のインビトロ合成、例えばRNAプローブの生成で用いられるベクターは、かねてから当該技術分野では周知であり、普通に用いられてきた(例えば、F.M.Ausubel他(編集人)によるCurrent Protocol in Molecular Biology(John Wiley & Sons,Inc.,1994年);Jendrisak他の米国特許第4,776,072号、クローン化DNA配列の一方の鎖のRNAコピーをインビトロで生成するためのベクター)。標準的なインビトロ転写プロトコルでは、一般的に、所望の転写物の3’末端に位置する制限部位で転写ベクターを線形化することにより、ベクター配列の転写の読み取り問題を回避する。しかしながら、テンプレートが両方向に転写されることが重要であるインビボ転写またはdsRNA生成にとってこの解決策は適切ではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで、本発明は、dsRNA生成のための先行技術のベクターが遭遇する問題に対し、転写ターミネータの活用に基づく新規の解決策を提案する。概要を述べると、この解決策は、少なくとも1つのプロモータに操作的に連結された少なくとも1つの転写ターミネータの活用から成り、ターミネータは、プロモータが開始する転写を阻止する。そしてプロモータの3’末端とターミネータの5’末端との間に挿入されたどのDNA断片も転写され、ベクターバックボーンの望ましくない転写は行わない。以下で更に述べるように、ベクターは2つのプロモータおよび2つのターミネータで構成されることが好ましい。
【0009】
従って、本発明の第一の局面によれば、インタープロモータ領域に隣接する向かい合わせの2つのプロモータを含むDNA構築物が提供され、この構築物は更に、前記プロモータのうちの一方のプロモータの転写領域下流に位置する少なくとも1つの転写ターミネータを含む。詳細には、本発明は、以下を含むDNA構築物を提供する:
a)第一のプロモータ、および
b)第二のプロモータ
を含み;
第一および第二のプロモータは相互に反対の配向にあり、かつ
c)第一のプロモータの3’末端の下流で、かつ第二のプロモータの3’末端の下流に位置するインタープロモータ領域を画成し;
DNA構築物は更に:
d)インタープロモータ領域に位置する少なくとも1つのクローニング部位;および
e)第一のプロモータの下流で、かつ少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する(第一のプロモータの3’末端から見た場合)第一の転写ターミネータ;を含み、第一の転写ターミネータは第一のプロモータに操作的に連結される。
【0010】
インタープロモータ領域は更に、以下の領域として画成することも可能である:第一のプロモータの3’末端と第二のプロモータの3’末端との間のDNA領域とし、この領域は、第一のプロモータの下流で、かつ第二のプロモータの下流にあり、第一のプロモータおよび第二のプロモータの5’末端を含まないことが好ましい。向かい合わせの第一のプロモータおよび第二のプロモータは、それぞれの5’末端から3’末端の方向への発現を促して3’末端の下流で転写を開始し、それによってインタープロモータ領域に存在するヌクレオチド配列の両鎖の転写が行われる。
【0011】
本発明のDNA構築物内にある2つのプロモータは同一であっても異なっていてもよく、基本的にどのようなタイプであってもよい。この構築物で用いられるプロモータの厳密な性質は、DNA構築物が機能すると予想される発現システムの性質に依存する(例:原核生物対真核生物宿主細胞)。バクテリオファージプロモータ、例えば、T7、T3およびSP6プロモータは、適切なRNAポリメラーゼとの結合にのみ依存する高レベルな転写を可能にする利点を備えているので、本発明の構築物での使用に好ましい。それらのプロモータは個々に独立して選択することができる。また、ファージプロモータは多様な宿主システム、すなわち、原核生物および真核生物宿主の両方で機能できる。但し適切なポリメラーゼが宿主細胞に存在するものとする。
【0012】
インタープロモータ領域に隣接する「向かい合わせの」2つのプロモータ構造は、一方のプロモータが転写の開始を促すことによってインタープロモータ領域のセンス鎖が転写され、他方のプロモータが転写の開始を促すことによってインタープロモータ領域のアンチセンス鎖が転写されるようになっており、この構造は、当該技術分野、例えば、Promega Corp(米国ウィスコンシン州マディソン)のベクターのpGEM7シリーズで周知の構造である。
【0013】
本発明のDNA構築物が先行技術のそれと異なる点は、一方のプロモータの転写領域下流に位置する少なくとも1つの転写ターミネータが存在することである。以下で説明するように、転写ターミネータは、一方向性または双方向性であり、一方向性あるいは双方向性ターミネータの選択は、インタープロモータ領域の内外のどちらにターミネータを配置するかによって影響を受ける。ターミネータは、原核生物や真核生物由来のターミネータであっても、ファージ由来のターミネータであってもよい。バクテリオファージターミネータ、例えばT7、T3およびSP6ターミネータが特に好ましい。唯一の要件は、ターミネータが転写領域下流に位置することに関連して、プロモータで開始される転写をターミネータが終結させることができなくてはならないことである。実際に、それらはプロモータとターミネータが「機能的組み合わせ」を形成しなくてはならない。すなわち、プロモータで始動するRNAポリメラーゼのタイプに対してターミネータが機能的でなくてはならないことを意味する。一例を挙げると、真核生物RNApolIIプロモータと真核生物RNApolIIターミネータは一般的に機能的組み合わせを形成する。バクテリオファージプロモータおよびターミネータを本発明の構築物に用いる場合、ファージプロモータとターミネータは両方ともポリメラーゼ特有であるので、機能的組み合わせの選択が特に重要になる。機能的組み合わせを形成するためには、プロモータとターミネータの両方が同一のポリメラーゼにとって特異的であるのがよい。例えば、T7プロモータとT7ターミネータ、T3プロモータとT3ターミネータ等。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)〜(E)は、本発明によるDNA構築物のそれぞれ異なる実施の形態の概略図であり、プロモータおよび転写ターミネータエレメントの相対的配置を示す。
【図2】(A)は、比較のために付した、先行技術のクローニングベクターの概略図である。(B)〜(E)は、本発明によるDNA構築物の更なる実施の形態の概略図であり、インタープロモータ領域内の異なるクローニング部位の活用を示す。
【図3】pGN1を図示(プラスミドマップ)する。
【図4】pGN9を図示(プラスミドマップ)する。
【図5】プラスミドpGN1の断片のヌクレオチド配列を図示し、向かい合わせのT7プロモータの位置を示すために注釈をつけた。
【図6】T7転写ターミネータのヌクレオチド配列を示す。
【図7】T7転写ターミネータをpGN1に挿入するために用いるオリゴヌクレオチド配列、oGN27、oGN28、oGN29、oGN30を示し、T7polターミネータ配列の位置および様々な制限部位の位置がマークされている。
【図8】プラスミドpGN9の断片のヌクレオチド配列を図示し、向かい合わせのT7プロモータおよびT7転写ターミネータの位置を示すために注釈をつけた。
【図9】(A)は、pGN29を図示(プラスミドマップ)し、(B)はpGN39を図示(プラスミドマップ)し、(C)はプラスミドTopoRNAiを図示(プラスミドマップ)する。
【図10】プラスミドpGN9の完全なヌクレオチド配列を示す。
【図11】プラスミドpGN29の完全なヌクレオチド配列を示す。
【図12】プラスミドpGN39の完全なヌクレオチド配列を示す。
【図13】プラスミドTopoRNAiの完全なヌクレオチド配列を示す。
【図14】プラスミドpGN49Aの完全な配列を示す。
【図15】プラスミドpGN59Aの完全な配列を示す。
【図16】pGN49Aを図示(プラスミドマップ)する。
【図17】pGN59Aを図示(プラスミドマップ)する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一実施の形態において、本発明のDNA構築物は、第一のプロモータの下流で、かつ少なくとも1つのクローニング部位の下流に配置された(第一のプロモータの3’末端から見た場合)単体の転写ターミネータを含み、第一の転写ターミネータは第一のプロモータに操作的に連結され、単体の転写ターミネータはインタープロモータ領域に配置されるように成してもよい。
【0016】
代替の編成では、DNA構築物はインタープロモータ領域外に配置された単体の転写ターミネータを含む。更に別の実施の形態では、DNA構築物が2つの転写ターミネータを含み、それぞれを2つのプロモータの一方の転写領域下流に配置させる。この構造では、何れか一方または両方のターミネータをインタープロモータ領域内に配置してもよい。本発明のDNA構築物におけるこのような様々な実施の形態については、添付図面を参照して以下でより詳細に説明する。また、インタープロモータ領域外の第一の転写ターミネータの位置を更に以下のように、すなわち、第一のプロモータの下流で、少なくとも1つのクローニング部位の下流であり、かつ第二のプロモータの5’末端の下流に第一の転写ターミネータが位置する(第一のプロモータの3’末端から見た場合)ように定めてもよい。
【0017】
また、インタープロモータ領域外の第二の転写ターミネータの位置を更に以下のように、すなわち、第二のプロモータの下流、少なくとも1つのクローニング部位の下流、および第一のプロモータの5’末端の下流に第二の転写ターミネータが位置する(第二のプロモータの3’末端から見た場合)よう定めてもよい。
【0018】
更に、ターミネータがインタープロモータ領域に配置されない場合、第一のプロモータの5’末端と第二のターミネータの3’末端との距離、または第二のプロモータの5’末端と第一のターミネータの3’末端との距離を短くすることが好ましく、言い換えれば、第一の転写ターミネータの3’末端をヌクレオチド2000個以下分だけ第二のプロモータの5’末端から離間させるが、好ましくはヌクレオチド1000個以下分で、更に好ましくはヌクレオチド500個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド200個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド100個以下分で、特に一層好ましくはヌクレオチド50個以下分で、更に一層好ましくはクレオチド20個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド10個以下分で、特にヌクレオチド6個以下分である。
【0019】
更に、第二の転写ターミネータがインタープロモータ領域外に配置される場合、好ましくは第二の転写ターミネータの3’末端をヌクレオチド2000個以下分だけ第一のプロモータの5’末端から離間させるが、好ましくはヌクレオチド1000個以下分で、更に好ましくはヌクレオチド500個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド200個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド100個以下分で、特に一層好ましくはヌクレオチド50個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド20個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド10個以下分で、特にヌクレオチド6個以下である。
【0020】
先に定義されたように、用語「インタープロモータ領域」は、2つのプロモータ間のDNA配列すべてを意味する。上記で説明したように、本発明の特定の実施の形態では、転写ターミネータがインタープロモータ領域内にあってもよい。インタープロモータ領域は、有利になるようにdsRNA生成用テンプレートを形成するヌクレオチド配列を含んでもよい。この配列の厳密な長さおよび性質は本発明において重要ではない。本発明は更に、インタープロモータ領域がクローニング部位を含むDNA構築物を提供する。dsRNA生成用テンプレートを形成するDNA断片を2つのプロモータ間に挿入する際に、クローニング部位はそれを促す機能を有する。従って本発明では、dsRNA生成のためのテンプレートベクターの構築物で汎用的な一連のクローニングベクターを提供する。また、クローニングベクターはクローニング部位へ挿入されたDNA断片を有し、そのようなクローニングベクターに由来するベクターも本発明の適用範囲に含まれる。
【0021】
クローニング部位は更に、以下を1つ以上含んでもよい:
−少なくとも1つの制限部位(当該技術分野で周知である)、または1つ以上の更なる制限部位(例:マルチプルクローニング部位を提供する(当該技術分野で周知である));
−スタッファーDNA(例:2つのBstXI制限部位、または2つのXcmI制限部位等、少なくとも2つの制限部位が隣接する);
−attR1およびattR2組換え部位;
−ccdBヌクレオチド配列;
−更にSrfI制限部位等、少なくとも1つの特異的平滑末端制限部位を備えるccdBヌクレオチド;および/または
−少なくとも1つのクローニング部位に挿入されるDNA断片。
本発明で提供されるすべてのDNA構築物が、有利になるように、例えばプラスミドベクター等の複写可能なクローニングベクターの一部を形成してもよい。向かい合わせのプロモータ、インタープロモータ領域および転写ターミネータだけでなく、ベクター「バックボーン」は更に、複写可能なベクターで共通して見られる特徴、例えば抗生物質耐性遺伝子等の宿主細胞および選択マーカー内での自律複製を可能にする複製起点等を1つ以上有する。選択マーカー遺伝子(例:抗生物質耐性遺伝子)自体はプロモータおよび転写ターミネータを有してもよいが、それらは本発明で必要なプロモータおよびターミネータエレメントとは全く無関係であり、特定のベクターが本発明の適用範囲内に収まるか否かを判定する際に考慮に入れるものでないことは言うまでもない。
【0022】
本発明によるDNA構築物は、当該技術分野において周知の、例えば F. M. Ausubel他(編集人)のCurrent Protocol in Molecular Biology(John Wiley & Sons, Inc.,1994年)に記載されるような標準的な組換え技術を用いたコンポーネント配列エレメントから容易に構築され、当該技術分野に精通する者は以下の本発明の詳細な説明および添付の実施例からそれを理解できるであろう。
【0023】
以下の概略図を参照して、本発明によるDNA構築物についてここで詳細に説明する。
【0024】
図1(A)〜(E)は、本発明によるDNA構築物のそれぞれ異なる実施の形態の概略図であり、プロモータおよび転写ターミネータエレメントの相対的配置を示す。
【0025】
図2(A)は、比較のために付した、先行技術のクローニングベクターの概略図である。
【0026】
図2(B)〜(E)は、本発明によるDNA構築物の更なる実施の形態の概略図であり、インタープロモータ領域内の異なるクローニング部位の活用を示す。
【0027】
図を参照すると、図1(A)は本発明による第一のDNA構築物で、向かい合わせの2つのプロモータ、すなわちインタープロモータ領域c)にそれぞれ隣接する第一のプロモータa)および第二のプロモータb)を含むプラスミドベクターを略示し、インタープロモータ領域は第一のプロモータの3’末端の下流で、かつ第二のプロモータの3’末端の下流にある。第一のプロモータおよび第二のプロモータは同一であっても異なっていてもよい。本実施の形態は、第一の転写ターミネータe)および第二の転写ターミネータf)を含み、両者ともインタープロモータ領域内に位置する。この実施の形態では、第一のターミネータおよび第二のターミネータは一方向性ターミネータであることが好ましい。
【0028】
DNA断片を少なくとも1つのクローニング部位d)に挿入してもよい。このような断片が、第一のプロモータa)および第二のプロモータb)の誘導により転写される(すなわち両鎖が転写される)ことで、挿入されたDNA断片の2本鎖RNAと結合する2つのRNA断片が生成される(インビトロおよびインビボの両方で)。
【0029】
ゲノムDNA配列、cDNA配列、その他コード配列等、所望のDNA配列が少なくとも1つのクローニング部位に挿入される。何れの特定の説明に制限されることなく、a)およびe)が機能的組み合わせを形成する場合、a)で転写を開始するRNAポリメラーゼは、少なくとも1つのクローニング部位、および少なくとも1つのクローニング部位に挿入されるDNA断片を含むインタープロモータ領域を転写し、RNAポリメラーゼがe)に到達すると転写を終結させられると考えられている。同様に、b)で転写を開始するRNAポリメラーゼは、少なくとも1つのクローニング部位、および少なくとも1つのクローニング部位に挿入されるDNA断片を含むインタープロモータ領域を転写し、RNAポリメラーゼがf)に到達すると転写を終結させられる。ターミネータは、RNAポリメラーゼが転写を中断、停止して、テンプレートから解離するようにさせる。これによってベクターバックボーンの無制限な転写が阻止され、重要でないDNAの非特異転写を抑制する。
【0030】
インタープロモータ領域は更に、2本鎖RNA阻害に対して目的に合致したヌクレオチド配列を含む。この配列は目的とする断片に対して「TF」と呼ばれる。dsRNAに転写される場合、この配列は目的とする遺伝子の特異的2本鎖RNA阻害を担う。目的とする断片はゲノムDNAの断片または目的とする遺伝子のcDNAから形成してもよい。その厳密な長さおよびヌクレオチド配列は本発明において重要ではない。
【0031】
図1(A)に示す編成において、2つのターミネータはインタープロモータ領域内でTFの何れかの側に位置する。各ターミネータはそれぞれ一方のプロモータの転写領域下流に位置し、第一のターミネータe)は第一のプロモータa)の転写領域下流に位置し、第二のターミネータf)は第二のプロモータb)の転写領域下流に位置する。上記のようにa)およびe)が機能的組み合わせを形成すると考えると、a)で転写を開始するRNAポリメラーゼはTFまで含むインタープロモータ領域を転写し、e)に到達すると転写を終結する。同様に、b)で転写を開始するRNAポリメラーゼは反対側の鎖のTFまで含むインタープロモータ領域を転写し、f)に到達すると転写を終結する。ターミネータは、RNAポリメラーゼが転写を中断、停止して、テンプレートから解離するようにさせる。これによってベクターバックボーンの無制限な転写が阻止され、重要でないDNAの非特異転写を抑制する。
【0032】
このベクターから生じた転写物は、ベクター内のターミネータの厳密な配置に依存し、TF領域に対応するほぼ完全な特異的dsRNAである。挿入されたDNA断片の両側にあるTF領域の下流末端にターミネータ配列を直接配置することにより、転写物の長さはテンプレートに従った配列の長さにまで完全に短くされる。従って、より多くの特異的dsRNAが得られる。ここで更に、ベクターバックボーンの非転写によりDNA構築物はより安定する。後者の特性(安定性)と、ここで相対的に高くなった特異的転写率とが相まって、より多くの短い特異的dsRNA鎖を合成するのに好適なシステムが提供される。このように転写物の量が比例して増加すると、特異的dsRNAの濃度が高まり、RNAiプロトコルにおける阻害効果が増す。導入媒体におけるdsRNAの発現に基づくRNAiプロトコルでは、RNAの発現の増加によって導入媒体にもたらされる毒性レベルが、このベクターの使用により最低レベルとなる。
【0033】
本発明者がRNAiの応用に最適な構造であるとみなしている、図1(A)に示すタイプのベクターの特定の実施例は、付帯する実施例で説明するプラスミドpGN9aである。ベクターは向かい合わせの2つのT7プロモータを含むので、pGN9で用いられる転写ターミネータはT7RNAポリメラーゼ特有のターミネータである。しかしながら、T3またはSP6プロモータ、ターミネータ、ポリメラーゼ、あるいは別の原核生物または真核生物プロモータ、ターミネータに基づく発現システム等、別のシステムを使用することもできる。
【0034】
図1(B)は本発明による更なるDNA構築物であって、インタープロモータ領域c)に隣接する向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むプラスミドベクターを概略的に示す。このベクターは2つの転写ターミネータe)およびf)を含むが、この構造では2つのターミネータがインタープロモータ領域外に位置し、実際にここではターミネータエレメントが2つのプロモータに隣接する。e)はa)の転写領域下流であり、またf)はb)の転写領域下流となるような構造である。ここで繰り返すがe)は、a)が開始する転写を終結させ、またf)は、プロモータb)が開始する転写を終結させる。図1(A)のように、プロモータ間にターミネータを配置するために一方向性ターミネータが好ましいとされる構造とは異なり、d)の外側にターミネータを配置することで、一方向性ターミネータだけでなく双方向性ターミネータを用いることが可能となる。本発明に従って多くの双方向性ターミネータを用いることができるが、それらは当該技術分野において周知である。一般的に、これらはポリメラーゼに対して非特異的であるとみなされている。
【0035】
図1(B)に示す実施の形態では、dsRNA生成のための先行技術のベクターに対し、図1(A)に示す利点と基本的に同様の利点を提供する。図1(B)に示すベクターでは、プロモータ領域をも含むわずかに長い転写物となる。このように転写物の長さに比較的小さな相違があっても、それによって、形成されたdsRNAはRNAiシステムの効率に重大な影響を及ぼすことはない。
【0036】
図1(B)に示す実施例では、プロモータの5’末端をヌクレオチド2000個以下分だけ転写ターミネータの3’末端から離間させるようにターミネータおよびプロモータの位置が近接していることが好ましいが、好ましくはヌクレオチド1000個以下分で、更に好ましくはヌクレオチド500個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド200個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド100個以下分で、特に一層好ましくはヌクレオチド50個以下分で、更に一層好ましくはヌクレオチド20個以下分で、特に好ましくはヌクレオチド10個以下分で、特にヌクレオチド6個以下分である。
【0037】
図1(C)は本発明による更なるDNA構築物であって、インタープロモータ領域c)に隣接する向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むプラスミドベクターを概略的に示す。本実施の形態では、一方のターミネータ(この場合e))はc)の内側に位置し、他方のf)はc)の外側に位置する。繰り返すが、e)は、a)が開始する転写を終結させ、f)は、プロモータb)が開始する転写を終結させる。この構造では、一方のターミネータが逆方向のポリメラーゼの活性を阻害するという問題(例:f)はb)が開始する転写を妨げる)に対して有効な解決策を提供する。このベクターは基本的に、先行技術に対して図1(a)および図1(b)に示す様々なベクターと同様の利点を提供する。一方のプロモータを転写することにより転写物の長さに比較的小さな相違があっても、RNAiシステムの効率に重大な影響を及ぼすことはない。これは、先に定めたように、インタープロモータ領域c)の外側に配置されたターミネータがプロモータに近接している場合に、より顕著となる。
【0038】
図1(D)および図1(E)は本発明による更なる2つのDNA構築物を概略的に示す。両方ともインタープロモータ領域c)に隣接する向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むプラスミドベクターである。これらの実施の形態は、単体ターミネータだけを含む。図1(D)に示す構造では、a)からの転写を終結させる単体ターミネータe)をc)外に配置する。IPRの外側にターミネータを配置することにより、このシステムで双方向性ターミネータあるいは一方向性ターミネータの何れであっても用いることができるようになる。図1(D)に示す実施の形態では、e)がc)内に配置される。従って、a)を一方向性ターミネータとすることが好ましい。
【0039】
本発明によるDNA構築物の更なる実施の形態については、図2(B)〜図2(E)で概略的に示す。
【0040】
これらの実施の形態はすべて、図1(A)に示すプロモータおよびターミネータの最適編成に基づくプラスミドクローニングベクターであり、上記のように、少なくとも1つのクローニング部位へ、DNA断片を挿入することを促すクローニング部位を含む。
【0041】
これらの実施の形態はすべて、図1(A)に示すプロモータおよびターミネータの最適編成に基づくプラスミドクローニングベクターであり、インタープロモータ領域へ、目的とするDNA断片を挿入することを促すクローニング部位を含む。
【0042】
図2(A)は、比較のために加えた、先行技術のクローニングベクターの概略図である。このベクターは向かい合わせの2つのプロモータa)およびb)を含むが、両方が同一であっても異なっていてもよく、マルチクローニング部位(MCS)に隣接する。
【0043】
図2(B)は本発明によるプラスミドクローニングベクターの第一のタイプを示す。ベクターはインタープロモータ領域に隣接する向かい合わせの第一のプロモータa)および第二のプロモータb)を含む。インタープロモータ領域は更に、以下の領域として定めることも可能である。すなわち第一のプロモータの3’末端と第二のプロモータの3’末端との間をDNA領域とし、この領域は、第一のプロモータの下流で、かつ第二のプロモータの下流にあり、第一のプロモータおよび第二のプロモータの5’末端を含まないことが好ましい。インタープロモータのプロモータ領域は更に、マルチクローニング部位(MCS)に隣接するターミネータe)およびf)を含む。MCSは少なくとも1つの単独の制限部位、好ましくは当該技術分野で周知の制限部位を2つ以上含み、その何れもDNA断片の挿入に用いてもよい。
【0044】
図2(C)は本発明によるプラスミドクローニングベクターの更に異なるタイプを示す。繰り返すがこのベクターは、ターミネータe)およびf)を含むインタープロモータ領域に隣接する、向かい合わせのプロモータa)およびb)を含む。本実施の形態ではa)およびb)は、PCR断片のクローニングを促すように成されたクローニング部位に隣接し、2つの同一の制限部位(この場合BstXI部位)が隣接するスタッファーDNAを含む。スタッファーDNAの特異的配列はそれほど重要ではない。但し、前記スタッファーDNAが本発明のDNA構築物における所望の効果および/または所望の活性を阻害しないものとする。ここでは、本発明のこのような局面によるベクターの実施例として、プラスミドpGN29について説明する。
【0045】
BstXI認識部位およびBstXIアダプタを用いるPCR産物のクローニングは、一般的に当該技術分野で周知である。BstXIアダプタは、Invitrogen (Groningen, オランダ)等から市販されている。これらのアダプタはより簡単で効率的にPCR産物をベクターにクローニングするために設計されたノンパリンドローム(非回文)配列のアダプタである。このように、これらのアダプタを用いると、非相補的な(CACA)オーバーハングを有することにより、アダプタまたはインサートDNA同士の連結が減らされる。スタッファーDNAが組み込まれているのは、単にBstXIで切断されるベクターと切断されないベクターとの差別化を、その大きさに基づき容易に行えるようにするためである。その厳密な長さおよび配列は重要ではない。
【0046】
図2(D)は本発明によるプラスミドクローニングベクターの更に異なるタイプを示す。繰り返すがこのベクターは、ターミネータe)およびf)を含むインタープロモータ領域に隣接する、向かい合わせのプロモータa)およびb)を含む。本実施の形態においてa)およびb)は、制限酵素切断および連結ではなく相同的組換えに基づく「高スループット」クローニングを促すクローニング部位に隣接する。図2(D)で概略的に示すように、クローニング部位は、E. coliに対する致死性遺伝子(この場合ccdB遺伝子)に隣接するバクテリオファージラムダのattR1およびattR2組換え部位を含む。
【0047】
DNA断片をこのベクターにクローニングする代替方法(図2(D)では不図示)は、このベクターの変形から成り、ccdB DNA配列は更に少なくとも1つの特異的制限部位を含み、その少なくとも1つの特異的制限部位はSrfI制限部位等の平滑末端制限部位であることが好ましい。その少なくとも1つの特異的制限部位へDNA断片を挿入すると、ccdB遺伝子の不活性化、更には致死性ccdB遺伝子の不活性化を招く。
【0048】
図2(D)に示すベクターの更なる変形には、attR1およびattE2が存在しない。このようなベクターは少なくとも1つのクローニング部位を含み、前記少なくとも1つのクローニング部位はccdB配列から成り、前記ccdB配列は更に少なくとも1つの特異的制限部位を含み、その少なくとも1つの特異的制限部位はSrfI制限部位等の平滑末端制限部位であることが好ましい。その少なくとも1つの特異的制限部位へDNA断片を挿入すると、ccdB遺伝子の不活性化、更には致死性ccdB遺伝子の不活性化を招く。
【0049】
ccdBヌクレオチド配列および/またはattR部位(R1および/またはR2)を含むこれらのクローニング部位は、Life Technologies, Inc. が市販する GatewayTMクローニングシステムから得られる。GatewayTMクローニングシステムについては、Hartley 他のWO96/40724(PCT/US96/10082)で詳細に説明されている。ここに記載の本発明のこの局面によるベクターの実施例はpGN39である。
【0050】
図2(E)および図2(F)は本発明による更に別のタイプのプラスミドクローニングベクターを示す。繰り返すがこのベクターは、ターミネータe)およびf)を備えるインタープロモータ領域c)に隣接する、向かい合わせのプロモータa)およびb)を含む。図2(E)に示す実施の形態においてe)およびf)は、TATMクローニングによるPCR産物の「高スループット」クローニングを促すクローニング部位に隣接する。このクローニング部位は、2つの同一の制限部位が隣接するスタッファーDNAを含み、この2つの同一の制限部位に特有の酵素は、オーバーハングするTヌクレオチドを生成する。この場合、制限部位はXcmI部位であるが、その他に、オーバーハングするTヌクレオチドを生成するために切断された部位を用いても同様の効果が得られる。オーバーハングするTヌクレオチドは、オーバーハングするAヌクレオチドを含むPCR産物のクローニングを促す。この原理はTATMクローニングとして周知である。オーバーハングするTヌクレオチドに酵素トポイソメラーゼを連結させることで、オーバーハングするTヌクレオチドに、切断されたベクターを「トポメライズ」することができ、図2(F)で概略的に示すタイプのクローニングベクターを生成する。また、その結果生じたベクターは、TOPOTMクローニングとして周知の原理によってPCR産物のクローニングを促す。
【0051】
TOPOTMおよびTATMクローニングシステムは両方とも本発明で説明したベクターに関するものではないが、Invitrogen から市販されている。TOPOTMクローニングシステムについては、ShumanのWO96/19497(PCT/US95/16099)で詳細に説明されている。TATMクローニングシステムについては、Hernstadt他のWO92/06189(PCT/US91/07147)で詳細に説明されている。
【0052】
図2(B)〜図2(F)では、図1(A)で示すタイプのベクター内に別のクローニング部位を組み込んだものを示すが、これらのクローニング部位は本発明の何れのDNA構築物(図1(B)〜図1(E)で概略的に示されるDNA構築物を含む)にも組み込むことができることは、当該技術分野に精通した読者であれば容易に理解できよう。
【0053】
RNAi技術における本発明のDNA構築物の用途
前述のように、本発明のDNA構築物/ベクターは、RNAi技術で用いる2本鎖RNAの生成において主として適用される。詳細には、この構築物はネマトーダ線虫C. elegansのインビボRNAiプロトコルで有用である。
【0054】
C. elegansでは、従来からdsRNAを線虫に注入することによりRNAiを行っていた。これらの方法については、国際出願番号WO99/32619でFire他により詳細に説明されている。一言で言えば、市販のインビトロ転写キットを用いて、RNAの両鎖をインビトロで生成する。RNAの両鎖はdsRNAを形成することが可能となり、その後dsRNAがC. elegansに注入される。本発明者が開発した新しいベクターシステムは、従来方法に大幅な改良を加えた。第一に、例えばベクターpGN9等は2つの同一プロモータを用いて、1つのステップでRNAを生成することができる。第2に、より重要であるが、ターミネータが存在することで、クローン化された目的の断片に限って転写が行われるので、転写物およびそれに伴って形成されたdsRNAはより特異的となる。この結果、より効率的なRNAiが得られる。
【0055】
C. elegansでRNAi実験を行うための更なる方法については、Plaetinck他のWO 00/01846で説明されている。この方法では、dsRNAを生成するバクテリアをC. elegans線虫に与える。あたかもdsRNAが注入されたかのように、dsRNAは線虫の腸バクテリアを通過し、同様のRNAiを誘発する。これらの実験に関しては、E. coli株はHT115(DE3)であることが好ましく、C. elegans株はnuc−l;gun−1であることが好ましい。また、有効なdsRNAに限って生成されるので、以下の実施例で示すように、本発明によって提供される改良型ベクターはこの方法におけるRNAiの効率も向上させる。
【0056】
また、RNAiを行う別の方法が、Plaetinck他のWO 00/01846で説明されている。一言で言うと、この方法は線虫自体でdsRNAを生成することに基づくものである。これは、上記のベクターに線虫プロモータを用いることによって行うことができる。またベクターに存在する非C. elegansプロモータに対して特異的なポリメラーゼを発現するトランスジェニック(形質転換)線虫を用いることもでき、このポリメラーゼがdsRNAの転写を促すようにする。プロモータは、T7、T3、SP6RNAプロモータ等、周知のバクテリオファージRNAプロモータから選択することが好ましく、それによって適切なポリメラーゼの結合にのみ依存する高レベル転写を実現させる利点を提供する。
【0057】
幾つかの方法によってプラスミドベクターDNAを線虫に導入することができる。第一に、従来の注入方法(EpsteinおよびShakes編集のMethods in Cell Biology, Vol 48, C. elegans Modern Biological Analysis of an organism)によってDNAを導入することができる。第二に、DNA供給によりDNAを導入することができる。WO 00/01846でPlaetinck他が示すように、プラスミドの宿主であるE. coli株を線虫に与えることにより線虫にプラスミドDNAを導入することができる。E. coli株はOP50またはMC1061もしくはHT115(DE3)であることが好ましいが、その他の株でも本目的に適する。C. elegans株はnuc−1変異株またはnuc−1;gun−1株であることが好ましい。E. coliのプラスミドDNAは腸バクテリアを通過してネマトーダに導入され、その結果、dsRNAが発現する。上記の他のRNAi方法と同様に、新しいベクターシステムを用いることで、特異的dsRNAに限定して生成することができ、RNAiを向上させる。
【0058】
下記のその他の図と共に、以下の実験例を参照して本発明は更に理解されるだろう。
【実施例】
【0059】
実施例1−ベクター構築物
ここで例示するベクター構築物の開始点は、プラスミドpGN1であった。このプラスミド(出願人の同時係属国際出願番号WO 00/01846に記載)はマルチクローニング部位に隣接する向かい合わせの2つのT7プロモータを含む。
【0060】
ベクター構築物は、当該技術分野において周知の、例えば F. M. Ausubel他(編集人)のCurrent Protocols in Molecular Biology(1994年John Wiley & Sons, Inc.)で説明される標準的な分子生物学技術に従って実行された。
【0061】
1)pGN9の構築物
最初に、制限酵素EcoRIおよびKpnIによってpGN1を切断した。オリゴヌクレオチドoGN27およびoGN28(図7)をアニーリングすることで2本鎖断片を生成し、その後EcoRI/KpnIで切断されたベクターに結合させた。その結果生じたプラスミドを、XbaIおよびHindIIIによって再び切断した。オリゴヌクレオチドoGN29およびoGN30をアニーリングすることで2本鎖断片を生成し、その後XbaI/HindIIIで切断されたベクターにアニーリングさせた。その結果生じたベクターはpGN9と呼ばれた(図4および図10)。
【0062】
2)更なるクローニングベクター構築物
pGN9のMCSを、BstXI部位が隣接するスタッファーDNAに置換することによってpGN29(図9(A);図11)が生成された。BstXIアダプタは、Invitrogen(Groningen,オランダ)から市販されている。
【0063】
pGN39(図9(B);図12)は以下のステップで生成された:pGN29をBstXIで切断した。BstXIアダプタ(Invitrogen (Groningen オランダ))がGATEWAYTMシステム(Life Technologies, Inc.)によって提供されたCassette Aに結合された。Cassette AはattRl、CmR、CcdA、CcdB、attR2を含む。アダプタを有するCassette Aは、その後切断したpGN29に結合され、pGN39Aとなる。pGN39AはccdB遺伝子に特異的SrfI部位を含む。
【0064】
TopoRNAiベクター(図9(C);図13)は以下の方法で生成された:pGN29をBstXIで切断した。プライマoGN103およびoGN104ならびにテンプレートpCDM8(Invitrogen (Groningen, オランダ))を用いてPCRを行い、XcmI部位を含むスタッファーが生成された。PCR産物にBstXIアダプタが結合され、その結果生じたライゲーション産物はBstXIによって切断したpGN29ベクターに結合し、TopoRNAiベクターとなる。
oGN103 : 5’TACCAAGGCTAGCATGGTTTATCACTGATAAGTTGG 3’
oGN104: 5’TACCAAGGCTAGCATGGGCCTGCCTGAAGGCTGC 3’
である。
【0065】
PGN49Aを構築して特異的非平滑制限部位を追加して挿入し、CmR遺伝子pGN39を消失させた。オーバーラップPCRを行った。1回目のPCRはプライマoGN126およびoGN127ならびにテンプレートとしてPGN39Aを用いて行った。プライマoGN128およびoGN129ならびに同様のテンプレートを用いて、第2断片を生成した。その結果生じた断片およびプライマoGN126PおよびoGN129Pを用いてオーバーラップPCRを行い、最終PCR産物を得た。このような最終PCR産物を得るために、BstXIアダプタを結合させ、BstXIで切断したpGN29にライゲーション産物を結合させた。その結果生じたベクターはpGN49Aと呼ばれる。
【0066】
コントロールベクターを生成し、pGN49Aクローニングベクターの効率を試験した。このようなベクターはT7ターミネータではなくT7プロモータを含むものとする。このためpGN49AのXbaIインサートは切り離され、同様の制限酵素で切断したpGN1にクローニングされた。その結果生じたベクターはpGN59Aと呼ばれる。
oGN126 pGATCTGGATCCGGCTTACTAAAAGCCAGATAACAGTATGC
oGN127 GGAGACTTTATCGCTTAAGAGACGTGCACTGGCCAGGGGGATCACC
oGN128 :
CCAGTGCACGTCTCTTAAGCGATAAAGTCTCCCGTGAACTTTACCCGGTGG
oGN129 pGCTGTGTATAAGGGAGCCTGACATTTATATTCCCCAG
である。
【0067】
実施例2−RNAにおける改良型ベクターの実用性を示す
この実験の目的は、先行技術で周知のベクターと比較して、2本鎖RNA阻害における本発明の改良型ベクターの効率が向上したことを示すことであった。生成されるdsRNAが有効であるほど、RNAi機能も向上するので、システム効率の大幅な上昇が見込まれた。コンセプト実験のこのような実証に関する実験システムは、dsRNAを供給したpGN−2(−ターミネータ)およびpGN−12(+ターミネータ)と共にコントロール兼ダイリュータとしてのPGN−1(空ベクター)を用いたsup35のRNAiによって、nuc−1/pha−l(e2123)tsC. elegans変異体中25℃でのC. elegans生存率を測定することである。pha−1ts/sup−35変異についてはSchnabelのWO99/49066で詳細に説明されている。
【0068】
C. elegansのnuc−1変異によって、野生型C. elegansよりも優れた取り込み能力(dsRNA複合体の取り込み等)を示すC. elegans株を提供する。この変異体を主要DNAseで消失させる。本発明者は先の同時係属出願で、ネマトーダにdsRNAを供給することにより、このC. elegans株がRNAiの向上をもたらすと証明している。
【0069】
pha−l(e2123)ts変異によって、変異体C. elegans株に15℃で生存し、25℃で死滅する表現型を提供する。sup−35発現の阻害によってこの致死性を抑制できる。従って、sup−35のRNAiは、25℃でpha−l(e2123)の生存を助けるものがよい。sup−35からdsRNAを発現させる場合、本発明のベクターは、25℃でのpha−l(e2123)ts変異体の生存率では、ターミネータを含まないベクターと比較してsup−35RNAiの効率を上昇させるものがよい。
【0070】
空ベクターとしてベクターpGN1が用いられた。ベクターpGN2(−ターミネータ)はsup−35DNAの宿主となり、適切な宿主に導入された場合にsup−35dsRNAを発現させるベクターである。このベクターには転写ターミネータを挿入しない。ベクターpGN12(+ターミネータ)は上記のようなベクターで、転写ターミネータを含み、それによって適切な宿主に導入された場合に改良型dsRNAが生成される。従って、このベクターは2つの一方向性転写ターミネータを有し、両ターミネータともインタープロモータ領域内に配置され、sup−35断片に隣接する。後者のベクターを用いることで、システム効率の上昇(ここでは25℃でpha−l(e2123)ts変異体の生存率が向上することを意味する)が見込まれた。
【0071】
実験条件
12ウェルのマイクロタイタープレートを1ウェルにつき約2mlのNGMアガーで満たした。(1リットルのNGMアガー: アガー15gと、ペプトン1gと、NaCl3gと、コレステロール溶液1ml(5mg/ml in EtOH)とをオートクレーブした後、0.1M CaCl2 9.5mlと、0.1M MgS04 9.5mlと、1M KH2P04/K2HP04バッファ(pH6) 25mlと、アンピシリン(100μg/l)と、0.1M IPTG 5mlと、ナイスタチン溶液5ml(1:1 EtOH:CH3COONH4 7.5Mに10mg/mlで溶解)とを無菌状態で加える。
【0072】
プラスミドによって形質転換したバクテリアHT115(DE3:Fire A, Carnegie Institution、メリーランド州ボルチモア)の一夜培養液約50μlを乾いたプレートにたらす。1日目は、生育段階L4のネマトーダをそれぞれ1つずつウェルに載せた。各ウェルにネマトーダ(P1)1個とする。2日目に、P1ネマトーダを新しいウェルにのせ、一日放置して培養させる。同様の手順を3日目も繰り返した。すべてのプレートを25℃で更に培養し、子孫を形成させた。子孫数をカウントして、Sup35RNAiに誘発された生存数を測定した。
【0073】
結果
sup−35dsRNAを発現させるE. coliを与え、C. elegans nuc−1/pha−l(e2123)ts変異体におけるRNAi実験である。
【0074】
【表1−1】
【表1−2】
【0075】
結論
予測したように、pGN1の宿主であるバクテリアを与えた線虫では、この温度でのpha−1変異の致死効果に因り、生存能力のある子孫は確認されなかった。pGN2またはpGN12の宿主であるE. coliをネマトーダに与えると、何れの場合も生存能力のある子孫が確認された。これはsup−35のdsRNAを線虫に与えたことによる。2つの供給実験における顕著な違いは希釈列において見られる。pGN2の宿主であるバクテリアを、pGN1の宿主であるバクテリアで希釈する場合、1/2の低希釈度であっても子孫数は激減する。この希釈列は、適切なRNAiを誘発するためには高レベルdsRNAが必要であることを示唆する。pGN12の宿主であるバクテリアを用いた供給実験では、1/8の希釈度でもかなりの数の子孫が観察されている。これは、pGN12の宿主であるバクテリアにおいて、より一層効果的なdsRNAが形成されることを示唆する。ベクターに上記のようなdsRNAを発現させるターミネータ配列を加えることで、RNAi効果の発生において大きな利点を提供することを、この実験が明確に示している。
【0076】
実施例3:T7ターミネータ(pGN49対pGN59)を用いた場合と、用いない場合のベクターのRNAi効率を比較する
3種類の異なる遺伝子をベクターpGN49AおよびpGN59Aにクローニングした。平滑末端を作るPfuIDNAポリメラーゼで遺伝子断片を増幅してクローニングを行うようにし、これらのベクターでクローニングを促した。このようなPCR断片はSrfIで切断したベクターにクローニングされた。クローンに正しい断片が挿入されたことがPCRによって確認された。ds発現およびRNAiによって、子孫の表現型が致死性となるよう断片を選択する。この手順によって素早く容易にRNAiにおける2つのベクター(pGN49、pGN59)の効率を比較することが可能となる。
【0077】
【表2】
【0078】
標準的手法によって、すべてのプラスミド(pGW系列)をE. coli AB301−105 (DE3)バクテリアで形質転換させる。その後LB/amp中で37℃に保ち、14〜18時間バクテリアを繁殖させる。これらの培養物を遠心分離機にかけ、バクテリアのペレットは1mM IPTGおよび100μg/μlアンピシリンを含有するS完全バッファに溶解した。
【0079】
100μlのS−完全バッファ(終濃度1mM IPTGおよび100μg/μlアンピシリンを含有する)および10μlのバクテリア溶液を含む96ウェルプレートにおいて、3個のネマトーダを各ウェルに入れた。ネマトーダはLl生育段階のものであった。
プレートは25℃で5〜6日間培養された。幼虫の発育や子孫F1の発生についてプレートを毎日検査する。
【0080】
結果
構築された各プラスミドに対して8倍の効率でRNAiが行われた。この結果は、T7ターミネータをベクターバックボーンに挿入すると、予測された表現型が100%発生することを示す。T7ターミネータを用いない場合、再現性は最大50%まで低下することもある。その前の実験と同様に、結果では、ターミネータを追加することによりRNAi機能が著しく向上することを示す。
【表3】
【0081】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一のプロモータと、
b)第二のプロモータと、
を含むDNA構築物であって、第一のプロモータ及び第二のプロモータは互いに対立して配位しており、
c)第一のプロモータの3´末端下流及び第二のプロモータの3´末端下流に位置する、インタープロモータ領域を定義し、
d)インタープロモータ領域に位置する、少なくとも1つのクローニング部位と、
e)第一のプロモータの3´末端側から見て、第一のプロモータの下流及び少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する、第一の転写ターミネータであって、第一の転写ターミネータは、第一のプロモータに操作的に連結されている、
を更に含む、前記DNA構築物。
【請求項2】
f)第二のプロモータの3´末端側から見て、第二のプロモータの下流及び少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する、第二の転写ターミネータであって、第二のプロモータに操作的に連結されている前記第二の転写ターミネータを更に含む、請求項1に記載のDNA構築物。
【請求項3】
第一の転写ターミネータが、インタープロモータ領域に位置している、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
【請求項4】
第一の転写ターミネータが、第一のプロモータの3´末端側から見て第一のプロモータの下流、少なくとも1つのクローニング部位の下流、及び第二のプロモータの5´末端下流に位置している、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
【請求項5】
第二の転写ターミネータ−が、インタープロモータ領域に位置している、請求項2〜4のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項6】
第二の転写ターミネータが、第二のプロモータの3´末端側から見て第二のプロモータの下流、少なくとも1つのクローニング部位の下流、及び第一のプロモータの5´末端下流に位置している、請求項2〜4のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項7】
第一の転写ターミネータの3´末端が、第二のプロモータの5´末端から、2000以下のヌクレオチド、好ましくは1000以下のヌクレオチド、より好ましくは500以下のヌクレオチド、更により好ましくは200以下のヌクレオチド、とりわけ好ましくは100以下のヌクレオチド、よりとりわけ好ましくは50以下のヌクレオチド、更によりとりわけ好ましくは20以下のヌクレオチド、特に好ましくは10以下のヌクレオチド、より特に好ましくは6以下のヌクレオチド、隔てられた、請求項4〜6のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項8】
第二の転写ターミネータの3´末端が、第一のプロモータの5´末端から、2000以下のヌクレオチド、好ましくは1000以下のヌクレオチド、より好ましくは500以下のヌクレオチド、更により好ましくは200以下のヌクレオチド、とりわけ好ましくは100以下のヌクレオチド、よりとりわけ好ましくは50以下のヌクレオチド、更によりとりわけ好ましくは20以下のヌクレオチド、特に好ましくは10以下のヌクレオチド、より特に好ましくは6以下のヌクレオチド、隔てられた、請求項4〜6のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項9】
第一のプロモータと第二のプロモータが同一である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項10】
第一のプロモータと第二のプロモータが同一でない、請求項1〜7のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項11】
第一のプロモータと第二のプロモータが、T7プロモータ、T3プロモータ、SP6プロモータから独立して選択される、請求項8又は9に記載のDNA構築物。
【請求項12】
クローニング部位が、少なくとも1つの制限部位を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項13】
クローニング部位が、スタッファーDNA配列の側面に位置している少なくとも2つの制限部位を含む、請求項11に記載のDNA。
【請求項14】
少なくとも2つの制限部位が同一である、請求項12に記載のDNA構築物。
【請求項15】
少なくとも1つの制限部位又は少なくとも2つの制限部位が、BstXI部位である、請求項12又は13に記載のDNA構築物。
【請求項16】
制限部位がXcmI部位である、請求項12又は13に記載のDNA構築物。
【請求項17】
クローニング部位が、attR1及びattR2組換え配列を更に含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項18】
クローニング部位が、ccdBヌクレオチド配列を更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項19】
ccdBヌクレオチド配列が、少なくとも1つのユニークな制限部位を更に含む、請求項17に記載のDNA構築物。
【請求項20】
少なくとも1つのユニークな制限部位が、平滑末端制限部位である、請求項18に記載のDNA構築物。
【請求項21】
平滑末端制限部位がSrfI部位である、請求項19に記載のDNA構築物。
【請求項22】
g)少なくとも1つのクローニング部位に挿入されたDNA断片、
を更に含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載のDNA。
【請求項23】
プラスミド又はベクターである、請求項1〜22のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項24】
図10、図11、図12、図13、図14又は図15に例示されたヌクレオチド配列を有する、請求項23に記載のプラスミド又はベクター。
【請求項25】
RNA阻害に対する二重鎖RNAの生産のための、請求項1〜24のいずれか一項に記載のDNA構築物の使用。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載のDNA構築物を宿している菌株。
【請求項27】
前記菌株が大腸菌株である、請求項26に記載の菌株。
【請求項28】
RNA阻害に対する二重鎖RNAの生産のための、請求項26又は27に記載の菌株の使用。
【請求項1】
a)第一のプロモータと、
b)第二のプロモータと、
を含むDNA構築物であって、第一のプロモータ及び第二のプロモータは互いに対立して配位しており、
c)第一のプロモータの3´末端下流及び第二のプロモータの3´末端下流に位置する、インタープロモータ領域を定義し、
d)インタープロモータ領域に位置する、少なくとも1つのクローニング部位と、
e)第一のプロモータの3´末端側から見て、第一のプロモータの下流及び少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する、第一の転写ターミネータであって、第一の転写ターミネータは、第一のプロモータに操作的に連結されている、
を更に含む、前記DNA構築物。
【請求項2】
f)第二のプロモータの3´末端側から見て、第二のプロモータの下流及び少なくとも1つのクローニング部位の下流に位置する、第二の転写ターミネータであって、第二のプロモータに操作的に連結されている前記第二の転写ターミネータを更に含む、請求項1に記載のDNA構築物。
【請求項3】
第一の転写ターミネータが、インタープロモータ領域に位置している、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
【請求項4】
第一の転写ターミネータが、第一のプロモータの3´末端側から見て第一のプロモータの下流、少なくとも1つのクローニング部位の下流、及び第二のプロモータの5´末端下流に位置している、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
【請求項5】
第二の転写ターミネータ−が、インタープロモータ領域に位置している、請求項2〜4のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項6】
第二の転写ターミネータが、第二のプロモータの3´末端側から見て第二のプロモータの下流、少なくとも1つのクローニング部位の下流、及び第一のプロモータの5´末端下流に位置している、請求項2〜4のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項7】
第一の転写ターミネータの3´末端が、第二のプロモータの5´末端から、2000以下のヌクレオチド、好ましくは1000以下のヌクレオチド、より好ましくは500以下のヌクレオチド、更により好ましくは200以下のヌクレオチド、とりわけ好ましくは100以下のヌクレオチド、よりとりわけ好ましくは50以下のヌクレオチド、更によりとりわけ好ましくは20以下のヌクレオチド、特に好ましくは10以下のヌクレオチド、より特に好ましくは6以下のヌクレオチド、隔てられた、請求項4〜6のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項8】
第二の転写ターミネータの3´末端が、第一のプロモータの5´末端から、2000以下のヌクレオチド、好ましくは1000以下のヌクレオチド、より好ましくは500以下のヌクレオチド、更により好ましくは200以下のヌクレオチド、とりわけ好ましくは100以下のヌクレオチド、よりとりわけ好ましくは50以下のヌクレオチド、更によりとりわけ好ましくは20以下のヌクレオチド、特に好ましくは10以下のヌクレオチド、より特に好ましくは6以下のヌクレオチド、隔てられた、請求項4〜6のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項9】
第一のプロモータと第二のプロモータが同一である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項10】
第一のプロモータと第二のプロモータが同一でない、請求項1〜7のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項11】
第一のプロモータと第二のプロモータが、T7プロモータ、T3プロモータ、SP6プロモータから独立して選択される、請求項8又は9に記載のDNA構築物。
【請求項12】
クローニング部位が、少なくとも1つの制限部位を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項13】
クローニング部位が、スタッファーDNA配列の側面に位置している少なくとも2つの制限部位を含む、請求項11に記載のDNA。
【請求項14】
少なくとも2つの制限部位が同一である、請求項12に記載のDNA構築物。
【請求項15】
少なくとも1つの制限部位又は少なくとも2つの制限部位が、BstXI部位である、請求項12又は13に記載のDNA構築物。
【請求項16】
制限部位がXcmI部位である、請求項12又は13に記載のDNA構築物。
【請求項17】
クローニング部位が、attR1及びattR2組換え配列を更に含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項18】
クローニング部位が、ccdBヌクレオチド配列を更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項19】
ccdBヌクレオチド配列が、少なくとも1つのユニークな制限部位を更に含む、請求項17に記載のDNA構築物。
【請求項20】
少なくとも1つのユニークな制限部位が、平滑末端制限部位である、請求項18に記載のDNA構築物。
【請求項21】
平滑末端制限部位がSrfI部位である、請求項19に記載のDNA構築物。
【請求項22】
g)少なくとも1つのクローニング部位に挿入されたDNA断片、
を更に含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載のDNA。
【請求項23】
プラスミド又はベクターである、請求項1〜22のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項24】
図10、図11、図12、図13、図14又は図15に例示されたヌクレオチド配列を有する、請求項23に記載のプラスミド又はベクター。
【請求項25】
RNA阻害に対する二重鎖RNAの生産のための、請求項1〜24のいずれか一項に記載のDNA構築物の使用。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載のDNA構築物を宿している菌株。
【請求項27】
前記菌株が大腸菌株である、請求項26に記載の菌株。
【請求項28】
RNA阻害に対する二重鎖RNAの生産のための、請求項26又は27に記載の菌株の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(1)】
【図12(2)】
【図12(3)】
【図13】
【図14(1)】
【図14(2)】
【図15(1)】
【図15(2)】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(1)】
【図12(2)】
【図12(3)】
【図13】
【図14(1)】
【図14(2)】
【図15(1)】
【図15(2)】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−228256(P2012−228256A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−151889(P2012−151889)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2001−585328(P2001−585328)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(500563371)デフヘン・ナムローゼ・フェンノートシャップ (5)
【氏名又は名称原語表記】DEVGEN nv
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151889(P2012−151889)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2001−585328(P2001−585328)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(500563371)デフヘン・ナムローゼ・フェンノートシャップ (5)
【氏名又は名称原語表記】DEVGEN nv
【Fターム(参考)】
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