説明

ベジェ曲線を利用したコントラスト改善方法

【課題】画像タイプによって、コントラストを適応的に改善する空間領域でのコントラスト改善方法を提供する。
【解決手段】本発明は、撮影されるかまたは記憶媒体から読み込んだ画像からヒストグラム分布を算出して、画像をコントラスト状態によって種類別に区分して、種類別に3次元ベジェ曲線の制御点移動方向を決めて、ヒストグラム分布に存在する輝度値の個数に基づいて3次元ベジェ曲線の制御点移動距離を計算する。決められた制御点移動方向及び制御点移動距離に基づいて3次元ベジェ曲線の制御点2個を移動させて、移動された制御点2個と固定されている制御点2個を使用してベジェ曲線を生成する。それから、生成されたベジェ曲線を適用して画像の改善を遂行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像のコントラスト改善方法に関するものである。より具体的には、本発明は、撮影され、または記憶媒体に読み込まれた画像からヒストグラム分布を算出し、画像をコントラストの状態によって種類別に区分し、種類別に3次元ベジェ曲線の制御点移動方向を決め、ヒストグラム分布に存在する輝度値の個数に基づいて3次元ベジェ曲線の制御点移動距離を計算する。さらに、決められた制御点移動方向と制御点移動距離に基づいて3次元ベジェ曲線の制御点2個を移動させ、移動された制御点2個と固定されている制御点2個を使用してベジェ曲線を生成する。その後、生成されたベジェ曲線を適用して画像の改善を遂行する。
【背景技術】
【0002】
コントラストは人間の視覚的認知において、画像の品質に相当な影響を与える。画像のコントラストの改善は、基本的に人間の目のための画像情報の相互翻訳性または認識性を改善して、他の自動化された画像処理技術のための「さらに優れた」入力を提供するものである。画像の改善の主な目的は、画像の属性を変更して与えられた作業及び特定観察者にさらに適切にさせることである。このような処理過程で、画像の一つ以上の属性が変更される。
【0003】
通常、画像のコントラストは、与えられた画像で可用な輝度及び強度の範囲で定義される。数学的に、画像のコントラストは次の式(1)のように表現することができる。
コントラスト=(Lmax−Lmin)/(Lmax+Lmin) (1)
【0004】
ここで、Lmax及びLminは、それぞれ与えられた画像の最大輝度値及び最小輝度値である。
【0005】
コントラストの改善は、強度を定量化するために使用されるビット数によって提供される最大範囲の強度を使用することで、画像をより明瞭にするプロセスである。
【0006】
このようなコントラスト改善方法のなかでも、肉眼で最適化することができるようにコントラストを改善する方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、画像タイプによって、コントラストを適応的に改善する空間領域でのコントラスト改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によって、ベジェ曲線を利用したコントラスト改善方法が提供される。本発明のコントラスト改善方法は、画像を読み込む段階と、画像の輝度値分布を算出する段階と、輝度値の低輝度、中輝度、高輝度の各区間別ピクセル数を算出する段階と、区間別ピクセル数に基づいて画像タイプを決める段階と、画像タイプに基づいて制御点移動方向を決める段階と、画像の輝度値分布に基づいて制御点移動距離を計算する段階と、制御点移動方向と制御点移動距離に基づいて制御点を移動して、移動された制御点に基づいて3次元ベジェ曲線を生成する段階と、生成された3次元ベジェ曲線を使用して、コントラストの改善を遂行する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない計算量で肉眼で最適化することができるようにコントラストを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像の輝度値ヒストグラム分布による画像タイプを示す図である。
【図2】本発明の一実施例による画像のヒストグラム分布を示す図である。
【図3】本発明の一実施例によって3次元ベジェ曲線の制御点を設定する方法を示す図である。
【図4】本発明の一実施例によって、画像タイプ別に制御点を移動する方法を示す図である。
【図5】本発明の一実施例によって、輝度値分布に存在する輝度値の個数Nについて説明するための図面である。
【図6】本発明の一実施例によって、計算された制御点移動距離だけ制御点を移動する方法を示す図である。
【図7】本発明の一実施例によって、最終的に得られたベジェ曲線を利用した参照曲線を示す図である。
【図8】本発明の一実施例による、適応的コントラスト改善方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0012】
図1に、画像の輝度値ヒストグラム分布による画像のタイプ(画像タイプ)を示す。図1に示すように、画像は、同図(a)の暗画像、同図(b)の明画像、同図(c)の逆光画像、同図(d)のローコントラスト画像、同図(e)のハイコントラスト画像の各タイプの画像にそれぞれ分類することができる。
【0013】
画像のヒストグラム分布を図2のように3個の領域、すなわち、低輝度(L)、中輝度(M)、及び高輝度(H)の各領域に区分することができる。望ましくは、低輝度区間、中輝度区間、高輝度区間の各区間の幅をほぼ同一に設定する。すなわち、低輝度区間、中輝度区間、高輝度区間に含まれる輝度値は総数256個の離散的な輝度値のうち、それぞれ85個、85個、86個とすることができる。
【0014】
一方、ベジェ曲線は、コンピューターグラフィックス及びその関連分野でよく使用されるパラメトリック曲線である。ベジェ曲線は滑らかな曲線をモデリングするためにコンピューターグラフィックスの分野で広く使用される。本発明ではコントラストの改善のために3次元ベジェ曲線を使用する。
【0015】
3次元ベジェ曲線は下記の式によって定義することができる。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、P0、P1、P2、P3は、3次元ベジェ曲線の制御点である。
【0018】
3次元ベジェ曲線は、場面または画像コンテンツに基づいて動的に互いに異なるシナリオに対するコントラスト改善問題をモデリングするために使用することができる。制御点の位置を変更することでコントラスト改善のために必要な全ての曲線形態を得ることができる。制御点P0、P1、P2、P3の位置によって、生成されるベジェ曲線の形態が変わる。
【0019】
以下、本発明の一実施例によって、コントラストの改善に使用する曲線を得るために制御点の位置をどのように設定するかについて説明する。図3は、本発明の一実施例によって3次元ベジェ曲線の制御点を設定する方法を示す図である。
【0020】
先ず、4個の制御点P0、P1、P2、P3のうち、制御点P0及びP3は、互いに向かい合う対角線の方向に固定される。すなわち、図3において、P0は(0,0)に、P3は(1,1)に固定される。P1及びP2は、それぞれP0及びP3と同じ位置にあり、輝度値ヒストグラム分布の3個の領域、すなわち、低輝度、中輝度、高輝度の各区間のピクセル数によって決まる距離だけP0、P3から遠ざかる方向に移動する。P1、P2がP0、P3から遠ざかる方向は画像タイプによって変えることができる。
【0021】
画像タイプは、図1に示された5種類に分類することができ、どのタイプに属するかは輝度値ヒストグラムの各区間に属するピクセル数によって決まる。
【0022】
N(L)を低輝度区間に属するピクセル数、N(M)を中輝度区間に属するピクセル数、N(H)を高輝度区間に属するピクセル数とすれば、下記の条件式に従って画像タイプを決めることができる。
If(N(L)>N(M))&&((N(L)>N(H)))then 暗画像;
Else If(N(H)>N(M))&&((N(H)>N(L)))then 明画像;
Else If(N(L)>N(M))&&((N(H)>N(M)))then 逆光画像;
Else If(N(M)>N(L))&&((N(M)>N(H)))then ローコントラスト画像;
Else ハイコントラスト画像
【0023】
即ち、低輝度区間のピクセル数N(L)が中輝度区間のピクセル数N(M)より大きく、低輝度区間のピクセル数N(L)が高輝度区間のピクセル数N(H)より大きい場合は、暗画像と決定する。
【0024】
高輝度区間のピクセル数N(H)が中輝度区間のピクセル数N(M)より大きく、高輝度区間のピクセル数N(H)が低輝度区間のピクセル数N(L)より大きい場合は、明画像と決定する。
【0025】
低輝度区間のピクセル数N(L)が中輝度区間のピクセル数N(M)より大きく、高輝度区間のピクセル数N(H)が中輝度区間のピクセル数N(M)より大きい場合は、逆光画像と決定する。
【0026】
中輝度区間のピクセル数N(M)が低輝度区間のピクセル数N(L)より大きく、中輝度区間のピクセル数N(M)が高輝度区間のピクセル数N(H)より大きい場合は、ローコントラスト画像と決定する。
【0027】
その他の場合は、ハイコントラスト画像と決定する。
【0028】
以上のようにして、区間別ピクセル数に基づいて画像タイプを決めることができる。
【0029】
望ましくは、画像を、ハイコントラスト画像を除いた残りのタイプに分類するときは、N(L)、N(M)、N(H)のそれぞれの大きさが大きく、例えば、画像の総ピクセル数の10%以上差がある場合に限定する。N(L)、N(M)、N(H)の各値に差が存在して、算術的にはハイコントラスト以外の他のタイプに決めることができるが、その差が大きくない場合には全てハイコントラスト画像に分類することが望ましいからである。例えば、画像の総ピクセル数が1780個である場合に、N(L)=600、N(M)=590、N(H)=590とすると、上記の分類では暗画像に分類されるものの、これは区間別ピクセル数の差が大きくないために、そのままハイコントラスト画像に分類することができる。区間別ピクセル数の差が総ピクセル数1780×10%=178個以上差が生じるとき、ハイコントラスト画像を除いた残りのタイプに分類することができる。上記の10%という基準は各区間別ピクセル数の差が大きいか否かを判断するための基準として、実施例によって20%、30%等、その値を変えることができる。
【0030】
図4を参照すると、画像が図4(a)の暗画像に分類される場合は、P2は固定されてP3と同一の位置にあって、P1が上に移動する。その結果、P0、P1、P2、P3によってベジェ曲線を生成することができる。
【0031】
画像が図4(b)の明画像に分類される場合は、P1は固定されてP0と同一の位置にあって、P2が下方向に移動する。
【0032】
画像が図4(c)の逆光画像に分類される場合は、P1は上に、P2は下に移動する。
【0033】
画像が図4(d)のローコントラスト画像に分類される場合は、P1は右側に、P2は左側に移動する。
【0034】
画像が図4(e)のハイコントラスト画像に分類される場合は、制御点は移動せずに、直線状のベジェ曲線が生成される。直線状のベジェ曲線を使用してコントラストの改善を遂行すれば、入力値と改善した値が同一となり実質的に画像に変化がなくなる。
【0035】
1とP2が移動する距離は、下記の式(3)のトーンコントラスト(TC:tonal contrast)比によって決めることができる。
【0036】
TC=N/(Lmax−Lmin+1) (3)
【0037】
Nは、輝度値分布に存在する輝度値の個数であり、Lmaxは輝度値分布の最大輝度値であり、Lminは輝度値分布の最小輝度値である。
【0038】
図5を参照して輝度値分布に存在する輝度値の個数Nについて説明する。図5のようなヒストグラム分布が算出されたと仮定すると、0〜255までの全ての輝度値にピクセルが存在するものではなく、特定の輝度値のみにピクセルが存在する場合がある。図5では9個の輝度値にピクセルが集中している。この場合、N=9になる。特定の画像に対してNは1〜256の範囲となり得る。
【0039】
制御点P1、P2の制御点移動距離(D)は、下記の式(4)によって決めることができる。
D=(2^N−1)×TC (4)
【0040】
例えば、画像のヒストグラム分布から、画像タイプが逆光画像と決められ、N=9、Lmax=240、Lmin=5の場合は、トーンコントラスト比(TC)は次のようになる。
TC=9/(240−5+1)=0.038135
【0041】
画像タイプが逆光画像であるので、P1は上に、P2は下に移動するはずであり、制御点移動距離は次のように決まる。
D=(2^9−1)×0.038135=9.72457
【0042】
したがって、P1とP2はそれぞれ9.72457単位程度、すなわち、輝度値9.72457程度移動するようになる。このとき、計算量を減らすために、P1とP2の移動量を四捨五入して整数値とすることができる。例えば、9.72457を四捨五入した10単位程度移動させることができる。
【0043】
図6を参照すると、P1とP2がそれぞれ上と下に10単位程度移動する場合が示されている。図6ではx軸とy軸を[0,255]にスケーリングして表示した。x軸、y軸が[0,1]にスケーリングされている場合は計算された制御点移動距離を256に分けた距離程度移動させることができるであろう。
【0044】
このような過程を経て得られた制御点4個で3次元ベジェ曲線を生成すれば、図7のようになる。x軸は入力輝度値であり、y軸は出力輝度値である。与えられた画像を図7のような参照曲線を使用して新しい輝度値にマッピングすることでコントラストを改善することができる。
【0045】
図8は、本発明の一実施例による、適応的コントラスト改善方法を示す流れ図である。
【0046】
ステップ(S11)で、画像を読み込む。画像は、デジタルカメラで撮影することもでき、記憶媒体に保存された画像データを読み込むこともできる。
【0047】
ステップ(S12)で、読み込んだ画像のRGB値をYCbCrに変換して、ピクセル別に輝度成分であるY値を抽出し、画像の輝度値分布(輝度値のヒストグラム分布)を算出する。
【0048】
ステップ(S13)で、抽出されたピクセル別のY値に基づいて低輝度、中輝度、高輝度の各区間別ピクセル数を算出する。
【0049】
ステップ(S14)で、区間別ピクセル数に基づいて画像タイプを決める。画像タイプは、前述したように図4に示した5種類のタイプのうちの一つとすることができる。
【0050】
ステップ(S15)で、決められた画像タイプに基づいて制御点移動方向を決める。前述したように、P0及びP3は、それぞれ(0,0)及び(1,1)に固定され、P1、P2は、それぞれ上、下、右側または左側に移動される。
【0051】
ステップ(S16)で、輝度値分布(輝度値のヒストグラム分布)に基づいて制御点P1、P2の制御点移動距離を計算する。このとき、前述したように、輝度値のヒストグラム分布で0〜255の輝度値のうちでピクセルが存在する輝度値の数(N)を抽出して、前述したような方法で制御点移動距離を計算することができる。
【0052】
ステップ(S17)で、移動された制御点P1及びP2と、固定された制御点P0及びP3とに基づいて3次元ベジェ曲線を生成する。
【0053】
ステップ(S18)で生成されたベジェ曲線または0〜255にスケーリングした参照曲線を使用してコントラストの改善を遂行する。
【0054】
以上、実施例について説明したが、本発明の範囲は上記の実施例に限定されない。上述した実施例に多様な変形を加えることができるし、その変形された実施例も本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベジェ曲線を利用したコントラスト改善方法であって、
画像を読み込む段階と、
前記画像の輝度値分布を算出する段階と、
前記輝度値の低輝度、中輝度、高輝度の各区間別ピクセル数を算出する段階と、
前記区間別ピクセル数に基づいて画像タイプを決める段階と、
前記画像タイプに基づいて制御点移動方向を決める段階と、
前記画像の輝度値分布に基づいて制御点移動距離を計算する段階と、
前記制御点移動方向及び前記制御点移動距離に基づいて制御点を移動し、移動された前記制御点に基づいて3次元ベジェ曲線を生成する段階と、
生成された前記3次元ベジェ曲線を使用してコントラストの改善を遂行する段階と、
を含むことを特徴とするコントラスト改善方法。
【請求項2】
前記画像タイプは、暗画像、明画像、逆光画像、ローコントラスト画像及びハイコントラスト画像のうちの一つである、請求項1に記載のコントラスト改善方法。
【請求項3】
前記区間別ピクセル数に基づいて前記画像タイプを決める段階は、
前記低輝度区間のピクセル数が前記中輝度区間のピクセル数より大きく、前記低輝度区間のピクセル数が前記高輝度区間のピクセル数より大きい場合は暗画像と決定し、
前記高輝度区間のピクセル数が前記中輝度区間のピクセル数より大きく、前記高輝度区間のピクセル数が前記低輝度区間のピクセル数より大きい場合は明画像と決定し、
前記低輝度区間のピクセル数が前記中輝度区間のピクセル数より大きく、前記高輝度区間のピクセル数が前記中輝度区間のピクセル数より大きい場合は逆光画像と決定し、
前記中輝度区間のピクセル数が前記低輝度区間のピクセル数より大きく、前記中輝度区間のピクセル数が前記高輝度区間のピクセル数より大きい場合はローコントラスト画像と決定し、
その他の場合は、ハイコントラスト画像と決定する段階を含む、請求項1に記載のコントラスト改善方法。
【請求項4】
前記輝度値分布に基づいて前記制御点移動距離を計算する段階は、
前記輝度値分布に存在する輝度値の個数(N)を抽出する段階と、
前記輝度値の個数に基づいてトーンコントラスト比(TC)を計算する段階と、
前記トーンコントラスト比(TC)に基づいて前記制御点移動距離を計算する段階と、を含み、
前記トーンコントラスト比(TC)は、
TC=N/(Lmax−Lmin+1)
により決定され、
前記制御点移動距離(D)は、
D=(2^N−1)×TC
により決定され、
前記Lmaxは前記輝度値分布の最大輝度値であり、前記Lminは前記輝度値分布の最小輝度値である、請求項1に記載のコントラスト改善方法。
【請求項5】
前記制御点は、決定された前記制御点移動距離(D)を四捨五入した整数値だけ移動される、請求項4に記載のコントラスト改善方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−104099(P2012−104099A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130420(P2011−130420)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(510039426)エルジー イノテック カンパニー リミテッド (279)
【Fターム(参考)】