説明

ベルトコンベア乗継部のシュートへの粉体付着防止装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば鉄鉱石や石炭等、粉状物或いは塊状物等の搬送物を搬送するベルトコンベアの乗継部でシュートに粉体が付着することを防止する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、粉状物或いは塊状物等を複数のベルトコンベアで搬送する場合、上流側ベルトコンベアの搬出端部と、その下方に設けられた下流側ベルトコンベアの搬入端部との間に乗り継シュートが設置されている。このシュートに案内されて、上流側ベルトコンベアの搬出端から放り出された搬送物は下流側ベルトコンベア上に移動する。
【0003】この時、一部の粉体はシュート内壁面に付着し堆積する。この堆積が次第に成長すると搬送の妨げとなるばかりでなく、堆積粉体によるベルトの異常摩耗を起こしたり、シュート付近への落鉱や落炭により作業環境を汚染したりする。このため、シュート内壁面の付着物を定期的に除去してやらなければならない。
【0004】このような付着物の除去方法として、付着物を金棒で突き落としたり、水で洗い流したりしていた。しかし、このような作業をベルトコンベア運転中に行うことは極めて危険であり、運転を停止して行うとベルトコンベアの稼働率が低下し生産性を阻害する等の弊害があった。更に、水洗いでは飛び散る水や搬送物の湿りの影響で、他のシュートでの付着を助長したり搬送物使用先でのトラブル発生なども起こしていた。
【0005】又、エアーノッカやバイブレータを用いてシュート外面に衝撃を与え、継続的に粉体を剥離して除去する方法等も提案されたが、適切な効果を得るために何台もの機器を必要とし、駆動用動力源もさることながら機器配置の空間も必要としあまり実用的ではなかった。加えて、衝撃によるシュート本体の亀裂や割れなどの損傷も見られた。
【0006】従来、上記のような問題に対処して、粉体をシュートに付着させない方法が提案されている。例えば、実開昭50−147385号公報には、上流側ベルトコンベアの搬出端から放出された搬送物がシュートに直接ぶつからないように、複数本の棒からなるバープレートを配置する付着防止装置が記載されている。
【0007】この装置を図5に示す。(a)図はバープレートの設置された乗継部の縦断面図で、上流側ベルトコンベア1の搬出端の先に、シュート2の中央部に位置するようにバープレート5が設けられている。3は下流側ベルトコンベアで上流側ベルトコンベアとは搬送方向が90度異なる。(b)図はバープレート5の詳細で、何本もの遮蔽棒8が支持軸9により独立してバラバラに揺動できるように支持され、且つ一列に配置されている。放出された搬送物を遮蔽棒8に当てて落下させ、直接シュートに当たらないようにするものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のバープレートでは、遮蔽棒の間隔により、その効果が異なり、安定した効果が得られないと言う問題があった。即ち、遮蔽棒の間隔が狭いと独立した揺動を互いに妨げ合い、バープレートが一体化した板のようになり、放出された搬送物が強く反射され、粉体がシュートの手前側の側壁に付着する。
【0009】また、反対に遮蔽棒の間隔が広いと、その間隙を放出された搬送物が通過してしまい、粉体が先側の側壁に付着する。又、遮蔽棒が支持部の摩耗により落下して下流側のベルトを損傷することもあった。
【0010】この発明はこのような問題を解決するために行われたもので、放出された搬送物の流路を柔軟に規制することによって、粉体がシュート側壁に付着することを効率よく防ぐことを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的を達成する手段は次の発明である。第一の発明は、上流側ベルトコンベアの搬出端部に設けられた乗り継部シュート内に、上方から複数本のリンクチエーンが、シュート出口に向けて支持棒により吊り下げられ、かつ、搬送物の放物線状流路を遮るように密に配列され、シュート出口に向けて吊り下げられているベルトコンベア乗継部シュートの粉体付着防止装置である。
【0012】搬送物は、上流側ベルトコンベアの搬出端まで搬送されて来るとその後放出され、放物線の軌跡を描いてシュートに落下する。これらの搬送物の放物線状の流路を遮るように、上方から多数のリンクチエーンが吊り下げられていると、搬送物はこれらのリンクチエーンに衝突してこれを前方に押しやるが、搬送物自体は上流側ベルトコンベアで与えられた進行方向の運動量を失い、垂直に落下しシュート出口に向かうことになる。又、リンクチエーンは柔軟性に富むので、これに衝突した搬送物が強く反射されることもない。このため、シュート壁面に衝突する搬送物は激減し、粉体の付着・堆積が防止される。
【0013】なお、リンクチエーンを密に配列するのは、リンクチエーン間の隙間を通り抜ける搬送物がないようにするためであるが、密に配列してもリンクチエーンを構成するリングが自由な動きを許されるので、リンクチエーン同志がその揺動を妨げることがない。
【0014】第二の発明は、前記複数本のリンクチエーンを吊り下げて支持している支持棒が、ベルトコンベア上の搬送物が搬送される方向に凸の形状になっていることを特徴とするベルトコンベア乗継部シュートの粉体付着防止装置である。
【0015】リンクチエーンを吊り下げる支持棒は直線状であってもよいが、その形状が湾曲しており、図2に示すように、ベルトコンベア上の搬送物が搬送される方向に凸の形状になっている方がよい。この形状の支持棒7にリンクチエーン6が吊り下げられていると、搬送物の流路を流れの方向のみならず流れの幅方向にも制限し、シュートの両側への搬送物の飛散を防ぐことになる。これによりシュート壁面に衝突する搬送物は一層減少する。
【0016】
【発明の実施の形態】リンクチエーンが吊り下げられている状態を図1に示す。図1は、リンクチエーンと搬送物の流路との位置関係を示すもので、4は搬送物、6はリンクチエーン、7は支持棒である。リンクチエーンは上流側ベルトコンベア1の先方に吊り下げられ、その先端はシュート2の下端部である出口に向いている。支持棒7は複数本のリンクチエーン6を吊り下げ、リンクチエーン6が搬送物4の放物状流路10を横切る。
【0017】リンクチエーン支持棒の形状が湾曲している場合を図2に示した。この場合には、搬送物の流れの方向に凸の形状である方がよい。搬送物の流路を流れの方向のみならず流れの幅方向にも制限し、シュートの両側への搬送物の飛散を防ぐ作用がある。凸の形状は、円弧状であっても良いし、或いは、多角形状であっても良い。
【0018】リンクチエーン6は柔軟な動きができるように、支持棒7への取り付けも、固定することなく回動自在に取り付ける。リンクチエーン6の取り付け及び配列を図3に示す。(a)図に示すようにリンクチエーン6は支持棒7の連結金具7aに取り付ける。連結金具7aには、リンクチエーン6の揺動を妨げないよう回転ピンを用いるとよいが、フックを用いてこれにリンクチエーン6を引っかけてもよい。(b)図は、連結金具7aとしてUボルトを用い、これにリンクチエーン6を引っかけたものである。
【0019】連結金具7a同士の間隔は、隣合うリンクチエーンとの間に、上流側ベルトコンベア走行方向から見て、隙間が空かないように設定する。このように設定しても、リンクチエーン6が互いに制限されず独立して揺動することができるようにするには、リンクチエーン6の連結金具7a上の位置がずれるように、自由度をもって取り付ければよい。
【0020】更に厳密に取り付けるならば、図4に示す取り付け方がある。同図で、(a)図は、支持棒7が直線状の場合で、リンクチエーン6の連結金具7a上の位置を互いに少しずらしてある。(b)図は支持棒が湾曲した凸の形状の場合で、連結金具7aの間隔がリンクチエーン6の幅よりも必ずしも小さくなくても上記の隙間は空かない。
【0021】なお、万一磨耗等でリンクチエーンが切れて落下しても、剛体である棒とは異なりその衝撃効果は小さいので、下流側ベルトコンベアを損傷することはない。
【0022】
【実施例】鉄鉱石を搬送するコンベアに発明のベルトコンベア乗継部シュートの粉体付着防止装置を設けて、コンベアを運転した。支持棒は円形に湾曲させ、円の直径をベルト幅よりやや大き目にし、連結金具にはUボルトを用いた。リンクチエーンの材質は鋼でJIS規格によるSBC690相当材で、一般に市販されているものである。
【0023】又、リンクチエーンの長さについては、リンクチエーンがない場合に最も先まで飛ぶ搬送物の落下軌跡を予想し、リンクチェーンの下端がこの軌跡よりも下方に位置するようにした。但し、荷切れの際には所定の位置に容易に戻ることが出来るよう、下端がシュート出口よりも上方に位置するようにした。
【0024】1か月間運転を続け粉体の付着度合いを調べた結果、シュートに付着した粉体は、従来のバープレートを用いた粉体付着防止装置を使用した場合の10分の1以下であった。又、従来の遮蔽棒では磨耗が見られたが、リンクチエーンでは殆ど磨耗は見られなかった。
【0025】これはバープレートよりもリンクチエーンの方が柔軟で鉄鉱石塊の運動量を高率で吸収したためと考えられる。更に、バープレートではバー自体に粉体が付着し堆積したが、リンクチエーンでは付着粉体が堆積するまでに至らなかった。リンクチエーンでは、鉄鉱石塊の衝撃に応じて一本毎に更にはリンクチエーンを構成する個々のリング毎にそれぞれ異なったばらばらの動きをするので、付着した粉体を自ら剥離除去したためである。
【0026】なお、リンクチエーンには、市販の一般品を使用したので安価に装置が出来上がり、且つリンクチエーンの点検や交換など保全も容易であった。
【0027】
【発明の効果】以上述べたように、この発明のベルトコンベア乗継部シュート粉体付着防止装置では、シュート内に、上方から独立して揺動するリンクチエーンを密に吊り下げた構造となっている。このため、上流側ベルトコンベアから放り出された粉体を含む搬送物は、柔軟なリンクチエーンに衝突しこれを押しやって前進力を失い、自身は真下のシュート出口に向かって落下する。したがって、シュート壁面には、搬送物は衝突することがないので、粉体が付着しない。このように、簡単且つ保守の容易な装置で長期間にわたるベルトコンベアの連続運転を可能とし、その稼働効率を高めたこの発明の効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明のベルトコンベア乗継部シュート粉体付着防止装置の縦断面図である。
【図2】湾曲した支持棒とリンクチエーンを示す粉体付着防止装置の斜視図である。
【図3】リンクチエーンを取り付ける連結金具の斜視図及び縦断面図である。
【図4】リンクチエーンの取り付け方を示す、支持棒、連結金具及びリンクチエーンの上面図である。
【図5】従来のベルトコンベア乗継部シュート粉体付着防止装置の縦断面図及びバープレートの斜視図である。
【符号の説明】
1 上流側ベルトコンベア
2 シュート
3 下流側ベルトコンベア
4 搬送物
5 バープレート
6 リンクチエーン
7 支持棒
7a 連結金具
8 遮蔽棒
9 支持軸
10 放物状流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上流側ベルトコンベアから下流側ベルトコンベア−ヘの搬出端部に設けられた乗り継部シュート内に、上方から複数本のリンクチエーンがシュート出口に向けて支持棒により吊り下げられ、かつ、搬送物の落下放物線状流路を遮るように密に配列されていることを特徴とするベルトコンベア乗継部シュートの粉体付着防止装置。
【請求項2】 前記複数本のリンクチエーンを吊り下げて支持している支持棒が、ベルトコンベア上の搬送物が搬送される方向に凸の形状になっていることを特徴とする請求項1記載のベルトコンベア乗継部シュートの粉体付着防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2948766号
【登録日】平成11年(1999)7月2日
【発行日】平成11年(1999)9月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−234705
【出願日】平成8年(1996)8月16日
【公開番号】特開平10−59530
【公開日】平成10年(1998)3月3日
【審査請求日】平成10年(1998)7月9日
【出願人】(000004123)日本鋼管株式会社 (1,044)
【出願人】(000001258)川崎製鉄株式会社 (8,589)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【参考文献】
【文献】特開 平5−124720(JP,A)
【文献】特開 平7−228319(JP,A)
【文献】実開 昭60−75341(JP,U)
【文献】実開 平6−87314(JP,U)
【文献】実公 平2−42668(JP,Y2)